説明

地盤硬化材注入工法とその装置

【課題】従来、地盤硬化材を高圧噴射する噴射ノズルは、注入ロッドの側壁に設定されるため、圧送されてきた地盤硬化材はノズル部において略直角に屈折することになり、屈折部において発生する乱流によって圧送エネルギーが消耗減衰されてしまう問題がある。
【解決手段】核ノズルに連絡する材料圧送流路12を先端モニター部において拡径し、狭径部12aから拡径部12bに至る流路内壁をテーパー斜面形状に構成し、同拡径部流路の核ノズル入口に至るまでの内壁を流線湾曲面17に構成して硬化材圧送流が円滑に核ノズル入口に集中されるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構築基礎地盤の強化支保、或いは地盤の安定化や止水を目的として対象地盤に地盤硬化材を高圧注入して地盤中に地盤硬化材層を造成する地盤硬化材注入工法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤の覆工支保や強化支保、或いは止水を目的とする硬化材層造成のための地盤硬化材注入は、硬化材噴流の到達距離を少しでも延長して大径の硬化材層を造成することを理想とし様々な工夫が凝らされ、その1つとして核ノズルとこれを囲繞する環状ノズルからなる重合噴射ノズルにより硬化材噴流をエアーで包合して保護し到達距離を延長する方法(例えば特許文献1参照)が開発されている。
【0003】
また、硬化材噴流に先立って清水噴射による事前改良を行い、硬化材噴流の有効射程を延長し(例えば特許文献2参照)、或いは余剰スライムを吸引機構によって吸引し(例えば特許文献3参照)てブリージングを良くする手段等が講じられてきた。
【特許文献1】特公平7ー100931号公報
【特許文献2】特許第2865653号公報
【特許文献3】特公平6ー29506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、地盤硬化材を高圧噴射する噴射ノズルは、注入ロッドの側壁に設定されるため、圧送されてきた地盤硬化材はノズル部において略直角に屈折することになり、屈折部において発生する乱流によって圧送エネルギーが消耗減衰されてしまう問題がある。
【0005】
また、注入密度を上げるために注入圧を高圧化させれば、それだけ危険を伴うほか、地盤に不自然な負荷を掛けて地盤隆起等の現象を発生させる恐れもあり、注入材料もそれだけ多量に必要となり、経済的にも大きな負担となる。
【0006】
更に、従来の注入ロッド内における硬化材圧送流路の径は、構造上の理由から多少の容積径に差異が生ずることはあるものの大きく変化することはなく、曲折等による乱流の発生等による圧送エネルギーの消耗減衰のほか、意識的に圧送力を変化させることは行われていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題に対応してこれを解決するため、先端部に清水噴出孔、同側壁に核ノズルと囲周ノズルから成る重合噴射ノズルを設けた注入ロッドの上記核ノズルに連絡する材料圧送流路を先端モニター部において拡径した注入ロッドを、先端部から清水を噴出しつつ回動下降させて対象地盤の所定深度まで挿入し、所定深度において清水噴出孔を閉鎖すると共に、重合噴射ノズルの核部から地盤硬化材、囲周部からエアを噴射しつつ、注入ロッドを回動上昇させて円柱状の硬化材注入層を造成するように構成した。
【0008】
即ち、注入ロッドの核ノズルに連絡する材料圧送流路を先端モニター部において拡径することにより、強力な送圧は開放されて流速を一旦鈍化させるものの屈折圧による乱流の発生が防止され、同時に容積径の増加により硬化材流量を大幅に上昇させるようにしたものである。
【0009】
同時に、材料圧送流路の狭径部から拡径部に至る流路内壁をテーパー斜面形状に構成し、同拡径部流路の核ノズル入口に至るまでの内壁を流線湾曲面に構成して硬化材圧送流が円滑に核ノズル入口に集中させ、流速を高めるようにした。
【実施例】
【0010】
以下図面に従って本発明の実施の形態を説明する。1は注入ロッドで、スイベル11を介して噴射材料槽に連絡するロッド内の分隔された流路12、13から成る全体として2重管で構成され、先端部側壁には、中心部に核ノズル21、その周囲を囲んで囲周ノズル22が重合開口する重合噴射ノズル2が設定され、核ノズル21が流路12に、囲周ノズル22が流路13に連通する。
【0011】
流路12はスイベル11からモニターAの部分までの狭径部12a、モニターAの部分からノズル口までの拡径部12bから成り、拡径部12bの先端底部に設定された清水噴出孔14に連絡すると共に、モニターAの先端側壁部に設定された重合噴射ノズル2の核ノズル21に集中して連通開口する。
【0012】
清水噴出孔14は、ボール投入による噴出孔閉鎖のために拡径部12bの先端底部に形成されたボール弁座4を介して下方に開口するが、流路13は流路12の外周に沿って環状に形成され、モニターAの先端側壁部に設定された重合噴射ノズル2の囲周ノズル22に集中して連通開口し、先端側は閉鎖状態となる。なお、清水噴出孔の開閉はボール投入によらず、差圧弁によることもでき、この場合にはボール弁座4に代えて差圧弁が設定されることになる。
【0013】
流路12の狭径部12aから拡径部12bへの連絡は、モニターAのテーパー状の基部Eを介してロッド先端部を構成し重合噴射ノズル2が設定されるモニター部Aへの連通によって行われ、その外径は上部のロッド本管Bの外径より大径に構成され、モニター部の挿入掘削によりロッド本管Bと挿入孔Cの内壁の間にクリアランスが形成される。
【0014】
更に、注入ロッド1にはその外表部に、所定間隔毎に前記モニター部Aの外径と同一にした外殻体15が設定され、設定された複数の外殻体の外表が全体として注入ロッド1の外表と挿入孔Cの内壁との間のクリアランスを維持するスペーサーを形成するように構成されている。
【0015】
注入ロッド1の後端はスイベル11となっており、ロッド内の各流路の対応部とその噴射材料槽に連絡するホース8、8に連結すると共に、基台6上に装置された注入ロッド駆動部5と作動機構7に支持される。
【0016】
ロッド1は上記のように全体として2重管で構成され、その中心部は掘削下降時には清水供給路、硬化材の噴射注入を行う上昇時には硬化材供給路に切り換えられる流路12、その外周に環状に囲周ノズル22に噴射エアーを供給するエアー供給流路13が形成される。
【0017】
以上のように構成された地盤硬化材注入装置は対象地盤上に設置され、先ず、流路12に潤滑清水を供給し5メガパスカル程度で先端噴出孔14から噴出し、注入ロッド作動機構7によって注入ロッド1に対して前進、回転等の作動を与え、ロッドクラウンDの掘削刃9と注入ロッド1の回転によって注入ロッドを対象地盤Gに挿入させる。
【0018】
このように注入ロッド1を対象地盤Gに向けて推進挿入し、所定の深度に達したところで、流路12に連通するホース8の連結部からボール3を投入すると、ボール3は供給水圧によって搬送され噴出孔14に設定された弁座4に嵌入して噴出孔14を閉塞する。
【0019】
同時に、それまで清水を供給していたホース8を硬化材に切替える。地盤硬化材としてはセメントミルクを用い、硬化材圧送の送圧力を20〜30メガパスカル、硬化材吐出量を100〜200リットル/分程度の高圧噴流として囲周ノズル22からのエアー噴射と共に噴射し、上昇速度を15分/メートル程度とするものである。
【0020】
流路12に圧送された硬化材は、狭径部12aから拡径部12bに至ると、流路の拡張によって内圧が発散してモニターAのテーパー斜面壁に誘導され、更に、流線湾曲面に構成された内壁によって流速を高められ、乱流や流路抵抗が最小限に抑えられてノズル21の入口に集中する流線テーパーによって搬送されるので、ロッドの引揚げ時間を従来の2分の1程度としても注入密度を十分に維持することができる。
【0021】
エア供給路13に供給されたエアは、重合噴射ノズル2の囲周ノズル22に供給されて上記硬化材噴流の包合噴流体として噴射されるので、前記乱流や流路抵抗の減殺と相まって核ノズルの口径を拡大することを可能にし、より短時間で注入密度の高い硬化材注入層Xの造成を行えるようにした。
【0022】
このようにして重合噴射ノズル2から硬化材とエアーの包合噴流を噴射し、注入ロッド1を回転若しくは所定角度によって往復回動させながら抜去方向に1メートル当たり15分でステップアップして後退上昇させることにより、硬化材高圧噴流Yは周辺地盤を穿孔切削し土粒子を破砕して、対象地盤Gに注入ロッド1の駆動軌跡に沿って円筒状に硬化材注入層Xを造成する。
【0023】
次いで、隣接位置に注入ロッドを設定して同様に硬化材注入層の造成を行って側腹部を相互に交差接合させてを造成し、更に、同様の硬化材注入層を次々に隣接させて所定形状に並列することにより、所定の注入層構造体を造成していくものである。
【0024】
本発明は以上のように構成したので、硬化材圧送流路の曲折等による乱流の発生による圧送エネルギーの消耗減衰を防止すると共に、狭径部から拡径部に至る流路の拡張、拡径流路におけるテーパー斜面壁16と流線湾曲面17に構成された内壁によって圧送エネルギーを従来に倍加かる効率によって活用することを可能としたものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例による注入ロッド先端モニター部の要部構造を一部を省略して示す縦断面側面図
【図2】同じく、重合噴射ノズルの正面からの外観状况を示す注入ロッドのノズル設定部分拡大正面図
【図3】本発明の実施例による地盤硬化材注入層造成の施工状況を示す注入装置と地盤の全体側面図
【符号の説明】
【0026】
1 注入ロッド
11 スイベル機構
12 核ノズルに連通する流路
12a 核ノズルに連通する流路の狭径部
12b 核ノズルに連通する流路の拡径部
13 囲周ノズルに連通する流路
14 清水噴出孔
15 ロッドに設定される外殻体
16 拡径流路におけるテーパー斜面壁
17 拡径流路における流線湾曲面壁
2 重合噴射ノズル
21 同核ノズル
22 同囲周ノズル
3 ボール
4 ボール弁座
5 注入ロッド駆動部
6 基台
7 注入ロッド作動機構
8 噴射材料槽に連絡するホース
9 ロッドクラウンの掘削刃
A ロッドモニター部
B ロッド本管
C ロッド挿入孔
D ロッドクラウン
E ロッドモニターのテーパー基部
G 対象地盤
X 地盤硬化材注入層
Y 硬化材高圧噴流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に清水噴出孔、同側壁に核ノズルと囲周ノズルから成る重合噴射ノズルを設けた注入ロッドの上記核ノズルに連絡する材料圧送流路を先端モニター部において拡径した注入ロッドを、先端部から清水を噴出しつつ回動下降させて対象地盤の所定深度まで挿入し、所定深度において清水噴出孔を閉鎖すると共に、重合噴射ノズルの核部から高圧による地盤硬化材、囲周部からエアを噴射しつつ、注入ロッドを回動上昇させて円柱状の硬化材注入層を造成することを特徴とする地盤硬化材注入工法
【請求項2】
材料圧送流路の狭径部から拡径部に至る流路内壁をテーパー斜面形状に構成し、同拡径部流路の核ノズル入口に至るまでの内壁を流線湾曲面に構成した請求項1記載の地盤硬化材注入工法
【請求項3】
材料圧送の送圧力を20〜30メガパスカル、硬化材吐出量を100〜200リットル/分とした請求項1又は請求項2記載の地盤硬化材注入工法
【請求項4】
先端部に清水噴出孔、同側壁に核ノズルと囲周ノズルから成る重合噴射ノズルを設けた注入ロッドの上記核ノズルに連絡する材料圧送流路を先端モニター部において拡径した注入ロッドを、回転上下動機構に支持して成ることを特徴とする地盤硬化材注入装置
【請求項5】
材料圧送流路の狭径部から拡径部に至る流路内壁をテーパー斜面形状に構成し、同拡径部流路の核ノズル入口に至るまでの内壁を流線湾曲面に構成した請求項3記載の地盤硬化材注入装置

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−180036(P2008−180036A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15771(P2007−15771)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000128027)株式会社エヌ・アイ・ティ (18)
【出願人】(000152642)株式会社日東テクノ・グループ (6)
【Fターム(参考)】