説明

地盤補強用破砕ゴム片およびその製造方法

【課題】破砕ゴム片の地盤補強材としての優れた機能、例えば、軽量、高透水性、高断熱性等を損なうことなく、優れた施工安定性を発揮する地盤補強用破砕ゴム片およびその製造方法を提供する。
【解決手段】埋設され地盤補強に供される地盤補強用破砕ゴム片1において、破砕ゴム片2が硬質コーティング材料3でコーティングされている。破砕ゴム片2が好適には廃タイヤの破砕片であり、硬質コーティング材料3がセメント、樹脂、アスファルトおよびアスファルトエマルジョンからなる群から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤補強用破砕ゴム片およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃タイヤ破砕片(シュレッズ、タイヤチップ、カット品)を、その優れた機能、例えば、軽量、高透水性、高断熱性等の特性を活かし、盛土、道路の路床等の基礎部分に軽量土、透水性材料、振動低減材料として用いることが欧米を中心に普及しつつあり、廃タイヤの再利用方法の2割近くを占めるまでに急成長している。特に軟弱地盤地域では、強度的に優れ、安定した経済的地盤材料として重宝されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、廃タイヤの破砕ゴム片の圧縮弾性率が砂等の既存の地盤材料に比べて低く、かつ弾性変形性に富むため、例えば、タイヤシュレッズを一定厚さ敷いた路床の上に路盤、表層舗装を施工する場合などには、タイヤシュレッズ層の施工後の沈下が大きく、安定するまでに1ヶ月以上かかるなど、高規格道路の盛土路床には使いにくいという課題があった。即ち、タイヤシュレッズ層はシュレッズ層施工時にあまり締め固めが効かず、路盤等、上部荷重部分を施工する度に締め固めが進行して沈下が進むため、安定化に問題があった。
【0004】
そこで本発明の目的は、破砕ゴム片の地盤補強材としての優れた機能、例えば、軽量、高透水性、高断熱性等を損なうことなく、優れた施工安定性を発揮する地盤補強用破砕ゴム片およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、破砕ゴム片に所定の改質処理を施すことにより上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明の地盤補強用破砕ゴム片は、地中に埋設され地盤補強に供される地盤補強用破砕ゴム片において、破砕ゴム片が硬質コーティング材料でコーティングされていることを特徴とするものである。
【0007】
前記破砕ゴム片としては、廃タイヤの破砕片を好適に使用することができる。また、前記硬質コーティング材料としては、セメント、樹脂、アスファルトおよびアスファルトエマルジョンからなる群から好適に選択することができる。さらに、前記破砕ゴム片と前記硬質コーティング材料との質量比は、このましくは20:1〜10:3である。
【0008】
本発明の地盤補強用破砕ゴム片の製造方法は、上記本発明の地盤補強用破砕ゴム片を製造するにあたり、前記硬質コーティング材料としてセメントを使用し、破砕ゴム片をセメントに浸漬し、次いで該破砕ゴム片の表面に付着したセメントを乾燥固化させることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の他の地盤補強用破砕ゴム片の製造方法は、上記本発明の地盤補強用破砕ゴム片を製造するにあたり、前記硬質コーティング材料として熱硬化性樹脂を使用し、破砕ゴム片を溶液状態の熱硬化性樹脂プレポリマーに浸漬し、次いで該破砕ゴム片の表面に付着した熱硬化性樹脂プレポリマーを加熱硬化させることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の更に他の地盤補強用破砕ゴム片の製造方法は、上記本発明の地盤補強用破砕ゴム片を製造するにあたり、前記硬質コーティング材料として熱可塑性樹脂を使用し、破砕ゴム片を溶融状態の熱可塑性樹脂に浸漬し、次いで該破砕ゴム片の表面に付着した熱可塑性樹脂を冷却固化させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、破砕ゴム片の地盤補強材としての優れた機能、例えば、軽量、高透水性、高断熱性等を損なうことなく、優れた施工安定性が得られ、改良された軽量地盤材料として、建設・土木分野に利用され、広い適用範囲を有する。また、廃タイヤの破砕ゴム片をそのまま軽量地盤材料として使用する従来法の場合、ランダムに破砕されたタイヤシュレッズでは大方の場合スチールコードが破断面からはみ出し、そのことが素手で取り扱いにくいなど、作業性を阻害する要因となっていたが、本発明により、スチールコードのはみ出しが大幅に改善され、作業性の向上も図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好適実施形態について説明する。図1に、本発明の地盤補強用破砕ゴム片1の断面を示す。図1に示す補強用破砕ゴム片1は、破砕ゴム片2が硬質コーティング材料3でコーティングされている。これにより、破砕ゴム片2を地盤補強に用いた際に発揮される本来の機能、例えば、軽量、高透水性、高断熱性等を損なうことなく、施工時の形態安定性を確保することが可能となり、施工後の沈下を防止することができる。
【0013】
破砕ゴム片2としては、廃タイヤの破砕片であるシュレッズ、タイヤチップ、カット品を好適に使用することができる。また、廃タイヤの破砕ゴム片を使用する際には、スチールコードのはみ出しが大幅に抑制され、作業性の向上を図ることができる。破砕ゴム片2の大きさは特に限定されるものではなく、廃タイヤの粉砕処理で得られる通常の大きさ、即ち、平均サイズ(平均最長端部間長さ)が2〜300mm、好ましくは10〜100mmのものを好適に使用することができる。
【0014】
また、破砕ゴム片2にコーティングする硬質コーティング材料3としては、汎用セメント、既知の合成樹脂、汎用アスファルト、汎用アスファルトエマルジョンなどを好適に用いることができる。樹脂は、熱硬化性、熱可塑性のいずれでよく、熱硬化性の樹脂が例えばフェノール樹脂の場合には、溶液状態のフェノール樹脂プレポリマーにタイヤシュレッズを浸漬(ディップ)し、破砕ゴム片2の表面がフェノール樹脂プレポリマーでコーティングされた後、硬化させることにより所望の補強用破砕ゴム片1が得られる。他の熱硬化性樹脂としては、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。
【0015】
また、合成樹脂が熱可塑性樹脂の場合には、溶融状態の樹脂を破砕ゴム片2の表面にコーティングし、冷却後、所望の補強用破砕ゴム片1が得られる。熱可塑型の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の汎用の熱可塑性樹脂を広く適用することができる。
【0016】
さらに、汎用のセメントを硬質コーティング材料3として使用する場合には、破砕ゴム片2をセメントに浸漬し、次いで該破砕ゴム片の表面に付着したセメントを乾燥固化させることにより所望の補強用破砕ゴム片1が得られる。なお、コーティングした硬質コーティング材料3の厚みはコーティングする際のコート材の粘度を調整することにより適宜制御することができる。
【0017】
尚、破砕ゴム片と硬質コーティング材料との質量比は、使用目的に応じ適宜変更し得るものであるが、所望の効果を得る上で、好ましくは20:1〜10:3である。
【0018】
次に、本発明の地盤補強用破砕ゴム片を盛土道路の路床の基礎部分に用いる場合について以下に説明する。図2では、盛土すべき予定領域に、必要に応じてジオグリッド(図示せず)を平たく敷き、その上に本発明の地盤補強用破砕ゴム片を盛り上げ、土手13を形成する。次いで、土手13側面および上面に砂砂利や土12を盛る。しかる後、砂砂利や土12の上面に舗装11を施す。この例では2層となっているが、ジオグリッドを適宜用いて2層以上としてもよい。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
トラックバス用廃タイヤを破砕して得られた平均サイズ20mmのタイヤチップ25kgを硬質コーティング材料としてのセメントに浸漬(ディップ)し、乾燥固化させた。得られた改質タイヤチップを用いて、圧密非排水および圧密排水の条件下で3軸圧縮試験にてせん断特性を評価した。その結果、改質タイヤチップは未処理のタイヤチップ対比圧縮時の応力ひずみ関係がコントロールで評価した豊浦標準砂に近い方向に改善され、地盤材料としての適用性に向上が見られた。また、硬質コーティング材料による処理により、タイヤチップからのスチールコードのはみ出しが大幅に抑制され、作業性の向上に繋がることが期待された。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の地盤補強用破砕ゴム片の断面図である。
【図2】本発明の地盤補強用破砕ゴム片による補強地盤を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 補強用破砕ゴム片
2 破砕ゴム片
3 硬質コーティング材料
11 舗装
12 砂砂利や土
13 土手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋設され地盤補強に供される地盤補強用破砕ゴム片において、破砕ゴム片が硬質コーティング材料でコーティングされていることを特徴とする地盤補強用破砕ゴム片。
【請求項2】
前記破砕ゴム片が廃タイヤの破砕片である請求項1記載の地盤補強用破砕ゴム片。
【請求項3】
前記硬質コーティング材料がセメント、樹脂、アスファルトおよびアスファルトエマルジョンからなる群から選択される請求項1または2記載の地盤補強用破砕ゴム片。
【請求項4】
前記破砕ゴム片と前記コーティング硬質材料との質量比が20:1〜10:3である請求項1〜3のうちいずれか一項記載の地盤補強用破砕ゴム片。
【請求項5】
請求項1記載の地盤補強用破砕ゴム片を製造するにあたり、前記硬質コーティング材料としてセメントを使用し、破砕ゴム片をセメントに浸漬し、次いで該破砕ゴム片の表面に付着したセメントを乾燥固化させることを特徴とする地盤補強用破砕ゴム片の製造方法。
【請求項6】
請求項1記載の地盤補強用破砕ゴム片を製造するにあたり、前記硬質コーティング材料として熱硬化性樹脂を使用し、破砕ゴム片を溶液状態の熱硬化性樹脂プレポリマーに浸漬し、次いで該破砕ゴム片の表面に付着した熱硬化性樹脂プレポリマーを加熱硬化させることを特徴とする地盤補強用破砕ゴム片の製造方法。
【請求項7】
請求項1記載の地盤補強用破砕ゴム片を製造するにあたり、前記硬質コーティング材料として熱可塑性樹脂を使用し、破砕ゴム片を溶融状態の熱可塑性樹脂に浸漬し、次いで該破砕ゴム片の表面に付着した熱可塑性樹脂を冷却固化させることを特徴とする地盤補強用破砕ゴム片の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−111874(P2007−111874A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302670(P2005−302670)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】