地盤高抽出装置、地盤高抽出方法、地盤高抽出プログラム、記録媒体
【課題】簡易に3次元標高データから3次元地盤高データを求める。
【解決手段】本発明の地盤高抽出装置は、分割部、区画標高抽出部、対象外区画検出水理解析部、降雨水理解析部、3次元補正標高データ更新部を備える。分割部は、算定範囲を区画に分割する。区画標高抽出部は、区画ごとに3次元補正標高データを求める。対象外区画検出水理解析部は、初期浸水を与えた場合の所定の時間後の区画ごとの水深を、水理解析によって求め、所定より深い水深となった区画を補正対象外区画と判断する。降雨水理解析部は、3次元補正標高データに対して、雨を降らせた場合の水深を水理解析によって求める。3次元補正標高データ更新部は、水深が所定より浅い区画の標高データを、当該区画から所定の範囲内の区画であって、補正対象外区画と判断されていない区画の標高データの中で最も低い標高データに変更することで、3次元補正標高データを更新する。
【解決手段】本発明の地盤高抽出装置は、分割部、区画標高抽出部、対象外区画検出水理解析部、降雨水理解析部、3次元補正標高データ更新部を備える。分割部は、算定範囲を区画に分割する。区画標高抽出部は、区画ごとに3次元補正標高データを求める。対象外区画検出水理解析部は、初期浸水を与えた場合の所定の時間後の区画ごとの水深を、水理解析によって求め、所定より深い水深となった区画を補正対象外区画と判断する。降雨水理解析部は、3次元補正標高データに対して、雨を降らせた場合の水深を水理解析によって求める。3次元補正標高データ更新部は、水深が所定より浅い区画の標高データを、当該区画から所定の範囲内の区画であって、補正対象外区画と判断されていない区画の標高データの中で最も低い標高データに変更することで、3次元補正標高データを更新する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元の位置データと位置データに対応する標高データからなる3次元標高データから、地盤高データを求める地盤高抽出装置、地盤高抽出方法、地盤高抽出プログラム、記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
2次元の位置データと位置データに対応する標高データからなる3次元標高データには、国土交通省が整備している航空測量データ(以下、「LPデータ」という。)などがある。LPデータは、航空機に搭載された測定器によって1.2m程度の間隔で地上の標高を測定したデータである。LPデータは、位置を示す2次元の位置データと、その位置の建物や木なども含んだ地上の高さ(以下、「標高データ」という。)の組合せである。本明細書では、このように2次元の位置データとその位置データに対応する標高データからなる3次元のデータを、3次元標高データと呼ぶ。なお、3次元標高データの代表的な例がLPデータであるが、3次元標高データはLPデータに限るものではない。
【0003】
また、防災関連の分析やハザードマップを作るためには、大きさが4〜25m2の区画のデータと、区画ごとの建物や木などを取り除いた地盤の高さ(以下、「地盤高」という。)を用いて水理解析を行う。非特許文献1に示されているように、すでに多くの水理解析の手法が示されている。また、水理解析プログラムも普及している。なお、本明細書では、区画のデータと対応する地盤高データとからなる3次元のデータを、3次元地盤高データと呼ぶ。
【非特許文献1】“水理公式集−昭和60年度版−,2.開水路の水理”,社団法人土木学会,pp.11-22,第6刷,平成5年2月26日発行.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、3次元標高データは整備されてきている。また、3次元地盤高データを用いた防災関連の分析方法やハザードマップ作成方法も普及している。しかし、3次元標高データから3次元地盤高データを求める効果的な方法はない。したがって、現在は、人が、LPデータと航空写真とを比較しながら、建物などがある部分の標高データを、近傍の建物や木がない部分の標高データに書き換える作業を行って、3次元地盤高データを作成している。
【0005】
本発明は、簡易に3次元標高データから3次元地盤高データを求める方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の地盤高抽出装置は、分割部、区画標高抽出部、対象外区画検出水理解析部、降雨水理解析部、3次元補正標高データ更新部を備え、2次元の位置データと当該位置データに対応する標高データからなる3次元標高データから、3次元地盤高データを求める。分割部は、地盤高を抽出する算定範囲を、所定の大きさの区画に分割する。区画標高抽出部は、区画ごとに区画内の標高データの中で最も低い標高データを求め、その値をそれぞれの区画の標高データとし、区画のデータと対応する標高データからなる3次元補正標高データを求める。対象外区画検出水理解析部は、3次元補正標高データに対して、所定の初期浸水を与えた場合の所定の時間後の区画ごとの水深を、水理解析によって求め、所定より深い水深となった区画を補正対象外区画と判断する。降雨水理解析部は、3次元補正標高データに対して、所定の条件で雨を降らせた場合の所定の時間後の区画ごとの水深を、水理解析によって求める。3次元補正標高データ更新部は、降雨水理解析部が求めた水深が所定より浅い区画の標高データを、当該区画から所定の範囲内の区画であって、補正対象外区画と判断されていない区画の標高データの中で最も低い標高データに変更することで、3次元補正標高データを更新する。そして、本発明の地盤高抽出装置は、降雨水理解析部の処理と、3次元補正標高データ更新部の処理とを所定の回数だけ繰り返して得られた3次元補正標高データを3次元地盤高データとする。
【0007】
例えば、「所定の大きさの区画」とは、大きさが4〜25m2の区画にすればよい。「所定の初期浸水を与えた場合の所定の時間後の区画ごとの水深」とは、0.25〜1mの初期浸水を与えた場合の30分〜2時間後の区間ごとの水深とすればよい。「所定の範囲内の区画」とは、当該区画に隣接する区画にすればよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、屋根や木のように水が流れやすい範囲を広く普及している水理解析方法を利用して求めることができる。したがって、簡易に3次元標高データから3次元地盤高データを求めることができる。しかも、広く普及している水理解析に関する資産やノウハウを活用できるので、経済性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、図を用いながら、本発明について説明する。
【実施例1】
【0010】
図1に本発明の地盤高抽出装置の機能構成例を、図2に本発明の地盤高抽出装置の処理フローの例を示す。地盤高抽出装置100は、分割部110、区画標高抽出部120、対象外区画検出水理解析部130、降雨水理解析部140、3次元補正標高データ更新部150を備え、2次元の位置データと当該位置データに対応する標高データからなる3次元標高データから、3次元地盤高データを求める。分割部110は、地盤高を抽出する算定範囲を、所定の大きさの区画に分割する(S110)。例えば、「所定の大きさの区画」とは、大きさが4〜25m2の区画にすればよく、さらに具体的には2m〜5mのメッシュに分割すればよい。区画標高抽出部120は、区画ごとに区画内の標高データの中で最も低い標高データを求め、その値をそれぞれの区画の標高データとし、区画のデータと対応する標高データからなる3次元補正標高データを求める(S120)。
【0011】
対象外区画検出水理解析部130は、3次元補正標高データに対して、所定の初期浸水を与えた場合の所定の時間後の区画ごとの水深を、水理解析によって求め、所定より深い水深となった区画を補正対象外区画と判断する(S130)。「所定の初期浸水を与えた場合の所定の時間後の区画ごとの水深」とは、0.25〜2mの初期浸水を与えた場合の30分〜2時間後の区間ごとの水深とすればよい。なお、この処理は、降雨水理解析部140と3次元補正標高データ更新部150の処理で、水路や河川などの地盤高データを用いて地盤高データを求めることを防ぐための処理である。
【0012】
降雨水理解析部140は、3次元補正標高データに対して、所定の条件で雨を降らせた場合の所定の時間後の区画ごとの水深を、水理解析によって求める(S140)。「所定の条件の雨」とは、水の抵抗(粗度係数)、降雨量、降雨時間、流速制限などを地形・土地利用などの条件から定め、水深の最大値を建物の高さと地形の条件から定めた雨である。これらの条件(パラメータ)は、特定の組合せに限定する必要はなく、地形・土地利用などの条件や建物の高さと地形の条件から適宜設定(変更)すればよい。なお、一般的な水の粗度のまま降雨水理解析部140の処理を行ったのでは、水深の変化が速すぎてシミュレーションしにくいので、ある程度粗度を高くした方が解析しやすい。
【0013】
3次元補正標高データ更新部150は、降雨水理解析部140が求めた水深が所定より浅い区画の標高データを、当該区画から所定の範囲内の区画であって、補正対象外区画と判断されていない区画の標高データの中で最も低い標高データに変更することで、3次元補正標高データを更新する(S150)。「所定の範囲内の区画」とは、当該区画に隣接する区画にすればよい。例えば、メッシュに分割しているのであれば、隣接する4方の区画、または8方の区画にすればよい。
【0014】
そして、地盤高抽出装置100は、降雨水理解析部140の処理と、3次元補正標高データ更新部150の処理とを繰り返しの条件を満足するまで繰り返し、得られた3次元補正標高データを3次元地盤高データとする(S160)。例えば、あらかじめ繰り返す回数を指定しておき、指定した回数だけ繰り返すようにすればよい。
【0015】
図3は、3次元標高データの例を示す図である。図4は、図3に示した3次元標高データから本発明の地盤高抽出装置(地盤高抽出方法)によって求めた3次元地盤高データを示す図である。黒い部分が標高の高い部分である。図3の中央付近にある建物の部分が、図4では消えていることが分かる。
【0016】
また、図5から7に、図3と4に示したシミュレーションよりも狭い範囲のシミュレーション結果を示す。図5は、シミュレーションを行った範囲に対応する航空写真である。図6は、この範囲の3次元標高データを示す図である。図7は、図6に示した3次元標高データから本発明の地盤高抽出装置(地盤高抽出方法)によって求めた3次元地盤高データを示す図である。図3と4と同じように黒い部分の標高が高い。図6では建物の位置の標高が、その周りの標高よりも高くなっている。一方、図7では建物が建っている周りの標高と建物が建っている位置の標高とがほぼ同じになっている。つまり、この範囲全体の地盤高が抽出できていることが分かる。
【0017】
これらのシミュレーションの流速の計算では、等流計算である
【数1】
を用いた。ただし、vは流速、nは粗度係数、hは水深、Lはメッシュ間の勾配である。なお、上記シミュレーションでは、3次元標高データは2m×2m程度に対して1点の標高データを有しており、分割部110は5m×5mのメッシュの区画に分割した。対象外区画検出水理解析部130の初期浸水は1.5mとした。また、粗度係数は3.0、降雨強度は5000mm/hr、流速制限は3m/s(3m/s以上は3m/sとする)、水深の最大値(これ以上は水深が深くならない値)は2.5m、繰り返し回数は5回とした。
【0018】
次に、なぜ本発明の地盤高抽出装置(地盤高抽出方法)ならば3次元地盤高データが得られるかを説明する。標高データと地盤高データとが異なる位置には、屋根や木がある(地面の場合には標高データと地盤高データとは一致する)。そして、一般的に屋根や木は地盤に比べ水が流れやすい形状である。したがって、標高データを用いて雨が降った場合の水理解析を行った場合、屋根や木の上の水は比較的早くなくなる。本明細書中では、対象外区画検出水理解析部130と降雨水理解析部140で用いる条件(パラメータ)を、具体的に特定はしていない。これは、平地、山間部などの地形の違いや、畑、自然林、住宅地、工業地などの土地利用の違いによって適した条件(パラメータ)が変りやすいからである。これらの条件は、適宜設計すればよい。また、工業地のように屋根が大きい建物が多い場合は、住宅地の場合よりもステップS160の繰り返し回数を増やした方がよい。
【0019】
なお、本発明の地盤高抽出装置でも、完全には標高データを地盤高データに変えることができないことがあり得る。この場合は、さらに降雨水理解析部140と3次元補正標高データ更新部150の処理とを繰り返させるか、人が航空写真と比較しながら補正すればよい。このような処理となった場合には人手の作業も生じる。しかし、すべての標高データを地盤高データに変える作業を人手で行うことに比べると、はるかに簡易に3次元地盤高データを得ることができる。
【0020】
図8に、コンピュータの機能構成例を示す。なお、本発明の地盤高抽出装置は、コンピュータ2000の記録部2020に、本発明の各構成部としてコンピュータ2000を動作させるプログラムを読み込ませ、処理部2010、入力部2030、出力部2040などを動作させることで実現できる。また、コンピュータに読み込ませる方法としては、プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録しておき、記録媒体からコンピュータに読み込ませる方法、サーバ等に記録されたプログラムを、電気通信回線等を通じてコンピュータに読み込ませる方法などがある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の地盤高抽出装置の機能構成例を示す図。
【図2】本発明の地盤高抽出装置の処理フローの例を示す図。
【図3】シミュレーションを行った3次元標高データの例を示す図。
【図4】図3に示した3次元標高データから本発明の地盤高抽出装置(地盤高抽出方法)によって求めた3次元地盤高データを示す図。
【図5】別のシミュレーションを行った範囲の航空写真を示す図。
【図6】図5に示した航空写真に対応する3次元標高データを示す図。
【図7】図6に示した3次元標高データから本発明の地盤高抽出装置(地盤高抽出方法)によって求めた3次元地盤高データを示す図。
【図8】コンピュータの機能構成例を示す図。
【符号の説明】
【0022】
100 地盤高抽出装置
110 分割部
120 区画標高抽出部
130 対象外区画検出水理解析部
140 降雨水理解析部
150 3次元補正標高データ更新部
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元の位置データと位置データに対応する標高データからなる3次元標高データから、地盤高データを求める地盤高抽出装置、地盤高抽出方法、地盤高抽出プログラム、記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
2次元の位置データと位置データに対応する標高データからなる3次元標高データには、国土交通省が整備している航空測量データ(以下、「LPデータ」という。)などがある。LPデータは、航空機に搭載された測定器によって1.2m程度の間隔で地上の標高を測定したデータである。LPデータは、位置を示す2次元の位置データと、その位置の建物や木なども含んだ地上の高さ(以下、「標高データ」という。)の組合せである。本明細書では、このように2次元の位置データとその位置データに対応する標高データからなる3次元のデータを、3次元標高データと呼ぶ。なお、3次元標高データの代表的な例がLPデータであるが、3次元標高データはLPデータに限るものではない。
【0003】
また、防災関連の分析やハザードマップを作るためには、大きさが4〜25m2の区画のデータと、区画ごとの建物や木などを取り除いた地盤の高さ(以下、「地盤高」という。)を用いて水理解析を行う。非特許文献1に示されているように、すでに多くの水理解析の手法が示されている。また、水理解析プログラムも普及している。なお、本明細書では、区画のデータと対応する地盤高データとからなる3次元のデータを、3次元地盤高データと呼ぶ。
【非特許文献1】“水理公式集−昭和60年度版−,2.開水路の水理”,社団法人土木学会,pp.11-22,第6刷,平成5年2月26日発行.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、3次元標高データは整備されてきている。また、3次元地盤高データを用いた防災関連の分析方法やハザードマップ作成方法も普及している。しかし、3次元標高データから3次元地盤高データを求める効果的な方法はない。したがって、現在は、人が、LPデータと航空写真とを比較しながら、建物などがある部分の標高データを、近傍の建物や木がない部分の標高データに書き換える作業を行って、3次元地盤高データを作成している。
【0005】
本発明は、簡易に3次元標高データから3次元地盤高データを求める方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の地盤高抽出装置は、分割部、区画標高抽出部、対象外区画検出水理解析部、降雨水理解析部、3次元補正標高データ更新部を備え、2次元の位置データと当該位置データに対応する標高データからなる3次元標高データから、3次元地盤高データを求める。分割部は、地盤高を抽出する算定範囲を、所定の大きさの区画に分割する。区画標高抽出部は、区画ごとに区画内の標高データの中で最も低い標高データを求め、その値をそれぞれの区画の標高データとし、区画のデータと対応する標高データからなる3次元補正標高データを求める。対象外区画検出水理解析部は、3次元補正標高データに対して、所定の初期浸水を与えた場合の所定の時間後の区画ごとの水深を、水理解析によって求め、所定より深い水深となった区画を補正対象外区画と判断する。降雨水理解析部は、3次元補正標高データに対して、所定の条件で雨を降らせた場合の所定の時間後の区画ごとの水深を、水理解析によって求める。3次元補正標高データ更新部は、降雨水理解析部が求めた水深が所定より浅い区画の標高データを、当該区画から所定の範囲内の区画であって、補正対象外区画と判断されていない区画の標高データの中で最も低い標高データに変更することで、3次元補正標高データを更新する。そして、本発明の地盤高抽出装置は、降雨水理解析部の処理と、3次元補正標高データ更新部の処理とを所定の回数だけ繰り返して得られた3次元補正標高データを3次元地盤高データとする。
【0007】
例えば、「所定の大きさの区画」とは、大きさが4〜25m2の区画にすればよい。「所定の初期浸水を与えた場合の所定の時間後の区画ごとの水深」とは、0.25〜1mの初期浸水を与えた場合の30分〜2時間後の区間ごとの水深とすればよい。「所定の範囲内の区画」とは、当該区画に隣接する区画にすればよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、屋根や木のように水が流れやすい範囲を広く普及している水理解析方法を利用して求めることができる。したがって、簡易に3次元標高データから3次元地盤高データを求めることができる。しかも、広く普及している水理解析に関する資産やノウハウを活用できるので、経済性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、図を用いながら、本発明について説明する。
【実施例1】
【0010】
図1に本発明の地盤高抽出装置の機能構成例を、図2に本発明の地盤高抽出装置の処理フローの例を示す。地盤高抽出装置100は、分割部110、区画標高抽出部120、対象外区画検出水理解析部130、降雨水理解析部140、3次元補正標高データ更新部150を備え、2次元の位置データと当該位置データに対応する標高データからなる3次元標高データから、3次元地盤高データを求める。分割部110は、地盤高を抽出する算定範囲を、所定の大きさの区画に分割する(S110)。例えば、「所定の大きさの区画」とは、大きさが4〜25m2の区画にすればよく、さらに具体的には2m〜5mのメッシュに分割すればよい。区画標高抽出部120は、区画ごとに区画内の標高データの中で最も低い標高データを求め、その値をそれぞれの区画の標高データとし、区画のデータと対応する標高データからなる3次元補正標高データを求める(S120)。
【0011】
対象外区画検出水理解析部130は、3次元補正標高データに対して、所定の初期浸水を与えた場合の所定の時間後の区画ごとの水深を、水理解析によって求め、所定より深い水深となった区画を補正対象外区画と判断する(S130)。「所定の初期浸水を与えた場合の所定の時間後の区画ごとの水深」とは、0.25〜2mの初期浸水を与えた場合の30分〜2時間後の区間ごとの水深とすればよい。なお、この処理は、降雨水理解析部140と3次元補正標高データ更新部150の処理で、水路や河川などの地盤高データを用いて地盤高データを求めることを防ぐための処理である。
【0012】
降雨水理解析部140は、3次元補正標高データに対して、所定の条件で雨を降らせた場合の所定の時間後の区画ごとの水深を、水理解析によって求める(S140)。「所定の条件の雨」とは、水の抵抗(粗度係数)、降雨量、降雨時間、流速制限などを地形・土地利用などの条件から定め、水深の最大値を建物の高さと地形の条件から定めた雨である。これらの条件(パラメータ)は、特定の組合せに限定する必要はなく、地形・土地利用などの条件や建物の高さと地形の条件から適宜設定(変更)すればよい。なお、一般的な水の粗度のまま降雨水理解析部140の処理を行ったのでは、水深の変化が速すぎてシミュレーションしにくいので、ある程度粗度を高くした方が解析しやすい。
【0013】
3次元補正標高データ更新部150は、降雨水理解析部140が求めた水深が所定より浅い区画の標高データを、当該区画から所定の範囲内の区画であって、補正対象外区画と判断されていない区画の標高データの中で最も低い標高データに変更することで、3次元補正標高データを更新する(S150)。「所定の範囲内の区画」とは、当該区画に隣接する区画にすればよい。例えば、メッシュに分割しているのであれば、隣接する4方の区画、または8方の区画にすればよい。
【0014】
そして、地盤高抽出装置100は、降雨水理解析部140の処理と、3次元補正標高データ更新部150の処理とを繰り返しの条件を満足するまで繰り返し、得られた3次元補正標高データを3次元地盤高データとする(S160)。例えば、あらかじめ繰り返す回数を指定しておき、指定した回数だけ繰り返すようにすればよい。
【0015】
図3は、3次元標高データの例を示す図である。図4は、図3に示した3次元標高データから本発明の地盤高抽出装置(地盤高抽出方法)によって求めた3次元地盤高データを示す図である。黒い部分が標高の高い部分である。図3の中央付近にある建物の部分が、図4では消えていることが分かる。
【0016】
また、図5から7に、図3と4に示したシミュレーションよりも狭い範囲のシミュレーション結果を示す。図5は、シミュレーションを行った範囲に対応する航空写真である。図6は、この範囲の3次元標高データを示す図である。図7は、図6に示した3次元標高データから本発明の地盤高抽出装置(地盤高抽出方法)によって求めた3次元地盤高データを示す図である。図3と4と同じように黒い部分の標高が高い。図6では建物の位置の標高が、その周りの標高よりも高くなっている。一方、図7では建物が建っている周りの標高と建物が建っている位置の標高とがほぼ同じになっている。つまり、この範囲全体の地盤高が抽出できていることが分かる。
【0017】
これらのシミュレーションの流速の計算では、等流計算である
【数1】
を用いた。ただし、vは流速、nは粗度係数、hは水深、Lはメッシュ間の勾配である。なお、上記シミュレーションでは、3次元標高データは2m×2m程度に対して1点の標高データを有しており、分割部110は5m×5mのメッシュの区画に分割した。対象外区画検出水理解析部130の初期浸水は1.5mとした。また、粗度係数は3.0、降雨強度は5000mm/hr、流速制限は3m/s(3m/s以上は3m/sとする)、水深の最大値(これ以上は水深が深くならない値)は2.5m、繰り返し回数は5回とした。
【0018】
次に、なぜ本発明の地盤高抽出装置(地盤高抽出方法)ならば3次元地盤高データが得られるかを説明する。標高データと地盤高データとが異なる位置には、屋根や木がある(地面の場合には標高データと地盤高データとは一致する)。そして、一般的に屋根や木は地盤に比べ水が流れやすい形状である。したがって、標高データを用いて雨が降った場合の水理解析を行った場合、屋根や木の上の水は比較的早くなくなる。本明細書中では、対象外区画検出水理解析部130と降雨水理解析部140で用いる条件(パラメータ)を、具体的に特定はしていない。これは、平地、山間部などの地形の違いや、畑、自然林、住宅地、工業地などの土地利用の違いによって適した条件(パラメータ)が変りやすいからである。これらの条件は、適宜設計すればよい。また、工業地のように屋根が大きい建物が多い場合は、住宅地の場合よりもステップS160の繰り返し回数を増やした方がよい。
【0019】
なお、本発明の地盤高抽出装置でも、完全には標高データを地盤高データに変えることができないことがあり得る。この場合は、さらに降雨水理解析部140と3次元補正標高データ更新部150の処理とを繰り返させるか、人が航空写真と比較しながら補正すればよい。このような処理となった場合には人手の作業も生じる。しかし、すべての標高データを地盤高データに変える作業を人手で行うことに比べると、はるかに簡易に3次元地盤高データを得ることができる。
【0020】
図8に、コンピュータの機能構成例を示す。なお、本発明の地盤高抽出装置は、コンピュータ2000の記録部2020に、本発明の各構成部としてコンピュータ2000を動作させるプログラムを読み込ませ、処理部2010、入力部2030、出力部2040などを動作させることで実現できる。また、コンピュータに読み込ませる方法としては、プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録しておき、記録媒体からコンピュータに読み込ませる方法、サーバ等に記録されたプログラムを、電気通信回線等を通じてコンピュータに読み込ませる方法などがある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の地盤高抽出装置の機能構成例を示す図。
【図2】本発明の地盤高抽出装置の処理フローの例を示す図。
【図3】シミュレーションを行った3次元標高データの例を示す図。
【図4】図3に示した3次元標高データから本発明の地盤高抽出装置(地盤高抽出方法)によって求めた3次元地盤高データを示す図。
【図5】別のシミュレーションを行った範囲の航空写真を示す図。
【図6】図5に示した航空写真に対応する3次元標高データを示す図。
【図7】図6に示した3次元標高データから本発明の地盤高抽出装置(地盤高抽出方法)によって求めた3次元地盤高データを示す図。
【図8】コンピュータの機能構成例を示す図。
【符号の説明】
【0022】
100 地盤高抽出装置
110 分割部
120 区画標高抽出部
130 対象外区画検出水理解析部
140 降雨水理解析部
150 3次元補正標高データ更新部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元の位置データと当該位置データに対応する標高データからなる3次元標高データから、3次元地盤高データを求める地盤高抽出装置であって、
地盤高を抽出する算定範囲を、所定の大きさの区画に分割する分割部と、
前記区画ごとに区画内の標高データの中で最も低い標高データを求め、その値をそれぞれの区画の標高データとし、区画のデータと対応する標高データからなる3次元補正標高データを求める区画標高抽出部と、
前記3次元補正標高データに対して、所定の初期浸水を与えた場合の所定の時間後の区画ごとの水深を、水理解析によって求め、所定より深い水深となった区画を補正対象外区画と判断する対象外区画検出水理解析部と、
前記3次元補正標高データに対して、所定の条件で雨を降らせた場合の所定の時間後の区画ごとの水深を、水理解析によって求める降雨水理解析部と、
前記降雨水理解析部が求めた水深が所定より浅い区画の標高データを、当該区画から所定の範囲内の区画であって、補正対象外区画と判断されていない区画の標高データの中で最も低い標高データに変更することで、前記3次元補正標高データを更新する3次元補正標高データ更新部と、
を備え、
前記降雨水理解析部の処理と、前記3次元補正標高データ更新部の処理とを所定の回数だけ繰り返して得られた3次元補正標高データを3次元地盤高データとする
ことを特徴とする地盤高抽出装置。
【請求項2】
請求項1記載の地盤高抽出装置であって、
前記の所定の大きさの区画とは、大きさが4〜25m2の区画であり、
前記所定の初期浸水を与えた場合の所定の時間後の区画ごとの水深とは、0.25〜1mの初期浸水を与えた場合の30分〜2時間後の区間ごとの水深である
ことを特徴とする地盤高抽出装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の地盤高抽出装置であって、
前記の所定の範囲内の区画とは、当該区画に隣接する区画である
ことを特徴とする地盤高抽出装置。
【請求項4】
2次元の位置データと当該位置データに対応する標高データからなる3次元標高データから、3次元地盤高データを求める地盤高抽出方法であって、
地盤高を抽出する算定範囲を、所定の大きさの区画に分割する分割ステップと、
前記区画ごとに区画内の標高データの中で最も低い標高データを求め、その値をそれぞれの区画の標高データとした3次元補正標高データを求める区画標高抽出ステップと、
前記3次元補正標高データに対して、所定の初期浸水を与えた場合の所定の時間後の区画ごとの水深を、水理解析によって求め、所定より深い水深となった区画を補正対象外区画とする対象外区画検出水理解析ステップと、
前記3次元補正標高データに対して、所定の条件で雨を降らせた場合の所定の時間後の区画ごとの水深を、水理解析によって求める降雨水理解析ステップと、
前記降雨水理解析ステップで求めた水深が所定より浅い区画の標高データを、当該区画から所定の範囲内の区画であって、補正対象外区画と判断されていない区画の標高データの中で最も低い標高データに変更することで、前記補正標高データを更新する3次元補正標高データ更新ステップと、
を有し、
前記降雨水理解析ステップと前記補正標高データ更新ステップとをあらかじめ定めた回数だけ繰り返して得られた3次元補正標高データを地盤高データとする
ことを特徴とする地盤高抽出方法。
【請求項5】
請求項4記載の地盤高抽出方法によって得られた地盤高データと、上空からの写真とを比較し、前記地盤高データに建物の高さが含まれていると判断した場合には、前記地盤高データを3次元補正標高データとして、さらに前記降雨水理解析ステップと前記3次元補正標高データ更新ステップとを指定した回数だけ繰り返し、得られた3次元補正標高データを地盤高データとする
ことを特徴とする地盤高抽出方法。
【請求項6】
請求項4または5記載の地盤高抽出方法であって、
前記の所定の大きさの区画とは、大きさが4〜25m2の区画であり、
前記所定の初期浸水を与えた場合の所定の時間後の区画ごとの水深とは、0.25〜1mの初期浸水を与えた場合の30分〜2時間後の区間ごとの水深である
ことを特徴とする地盤高抽出方法。
【請求項7】
請求項4から6のいずれかに記載の地盤高抽出方法であって、
前記の所定の範囲内の区画とは、当該区画に隣接する区画である
ことを特徴とする地盤高抽出方法。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれかに記載の地盤高抽出装置としてコンピュータを動作させる地盤高抽出プログラム。
【請求項9】
請求項8記載の地盤高抽出プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項1】
2次元の位置データと当該位置データに対応する標高データからなる3次元標高データから、3次元地盤高データを求める地盤高抽出装置であって、
地盤高を抽出する算定範囲を、所定の大きさの区画に分割する分割部と、
前記区画ごとに区画内の標高データの中で最も低い標高データを求め、その値をそれぞれの区画の標高データとし、区画のデータと対応する標高データからなる3次元補正標高データを求める区画標高抽出部と、
前記3次元補正標高データに対して、所定の初期浸水を与えた場合の所定の時間後の区画ごとの水深を、水理解析によって求め、所定より深い水深となった区画を補正対象外区画と判断する対象外区画検出水理解析部と、
前記3次元補正標高データに対して、所定の条件で雨を降らせた場合の所定の時間後の区画ごとの水深を、水理解析によって求める降雨水理解析部と、
前記降雨水理解析部が求めた水深が所定より浅い区画の標高データを、当該区画から所定の範囲内の区画であって、補正対象外区画と判断されていない区画の標高データの中で最も低い標高データに変更することで、前記3次元補正標高データを更新する3次元補正標高データ更新部と、
を備え、
前記降雨水理解析部の処理と、前記3次元補正標高データ更新部の処理とを所定の回数だけ繰り返して得られた3次元補正標高データを3次元地盤高データとする
ことを特徴とする地盤高抽出装置。
【請求項2】
請求項1記載の地盤高抽出装置であって、
前記の所定の大きさの区画とは、大きさが4〜25m2の区画であり、
前記所定の初期浸水を与えた場合の所定の時間後の区画ごとの水深とは、0.25〜1mの初期浸水を与えた場合の30分〜2時間後の区間ごとの水深である
ことを特徴とする地盤高抽出装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の地盤高抽出装置であって、
前記の所定の範囲内の区画とは、当該区画に隣接する区画である
ことを特徴とする地盤高抽出装置。
【請求項4】
2次元の位置データと当該位置データに対応する標高データからなる3次元標高データから、3次元地盤高データを求める地盤高抽出方法であって、
地盤高を抽出する算定範囲を、所定の大きさの区画に分割する分割ステップと、
前記区画ごとに区画内の標高データの中で最も低い標高データを求め、その値をそれぞれの区画の標高データとした3次元補正標高データを求める区画標高抽出ステップと、
前記3次元補正標高データに対して、所定の初期浸水を与えた場合の所定の時間後の区画ごとの水深を、水理解析によって求め、所定より深い水深となった区画を補正対象外区画とする対象外区画検出水理解析ステップと、
前記3次元補正標高データに対して、所定の条件で雨を降らせた場合の所定の時間後の区画ごとの水深を、水理解析によって求める降雨水理解析ステップと、
前記降雨水理解析ステップで求めた水深が所定より浅い区画の標高データを、当該区画から所定の範囲内の区画であって、補正対象外区画と判断されていない区画の標高データの中で最も低い標高データに変更することで、前記補正標高データを更新する3次元補正標高データ更新ステップと、
を有し、
前記降雨水理解析ステップと前記補正標高データ更新ステップとをあらかじめ定めた回数だけ繰り返して得られた3次元補正標高データを地盤高データとする
ことを特徴とする地盤高抽出方法。
【請求項5】
請求項4記載の地盤高抽出方法によって得られた地盤高データと、上空からの写真とを比較し、前記地盤高データに建物の高さが含まれていると判断した場合には、前記地盤高データを3次元補正標高データとして、さらに前記降雨水理解析ステップと前記3次元補正標高データ更新ステップとを指定した回数だけ繰り返し、得られた3次元補正標高データを地盤高データとする
ことを特徴とする地盤高抽出方法。
【請求項6】
請求項4または5記載の地盤高抽出方法であって、
前記の所定の大きさの区画とは、大きさが4〜25m2の区画であり、
前記所定の初期浸水を与えた場合の所定の時間後の区画ごとの水深とは、0.25〜1mの初期浸水を与えた場合の30分〜2時間後の区間ごとの水深である
ことを特徴とする地盤高抽出方法。
【請求項7】
請求項4から6のいずれかに記載の地盤高抽出方法であって、
前記の所定の範囲内の区画とは、当該区画に隣接する区画である
ことを特徴とする地盤高抽出方法。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれかに記載の地盤高抽出装置としてコンピュータを動作させる地盤高抽出プログラム。
【請求項9】
請求項8記載の地盤高抽出プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【図1】
【図2】
【図8】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図8】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2010−140073(P2010−140073A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313072(P2008−313072)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(592090555)パシフィックコンサルタンツ株式会社 (30)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(592090555)パシフィックコンサルタンツ株式会社 (30)
【Fターム(参考)】
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