説明

地表下の坑井穴を形成するためのシステムおよび方法

地表下の坑井穴を形成するためのシステムおよび方法が説明される。システムは、ラックアンドピニオンシステムおよび自動位置制御システムを含むことができる。ラックアンドピニオンは、ドリルストリングを作動するように構成されたチャック駆動システムを含む。自動位置制御システムは、ラックアンドピニオンシステムに結合された少なくとも1つの測定センサを含む。自動位置制御システムは、ラックアンドピニオンシステムを制御してドリルストリングの位置を決定するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、炭化水素含有地層などの様々な地表下地層からの炭化水素、水素、および/または他の生成物の生成のための方法およびシステムに関する。本発明は、特に、地表下の坑井穴を形成するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下にある地層から得られる炭化水素は、エネルギー資源として、原材料として、消費財として数多く使用されている。入手可能な炭化水素資源の枯渇に対する懸念、および生成された炭化水素の全体特性を低下することに対する懸念は、入手可能な炭化水素資源のより効率的な回収、処理、および/または使用のためのプロセスの開発をもたらした。インサイチュプロセスが使用されて、地下にある地層から炭化水素材料を取り除くことが可能である。地下にある地層内の炭化水素材料の化学的性質、および/または物理的性質が変更されて、炭化水素材料が地下にある地層からより容易に取り除かれることを可能にする必要がある。化学的変化および物理的変化は、地層内の炭化水素材料の除去可能な流体、組成変化、可溶性変化、密度変化、相変化、および/または粘性変化を引き起こすインサイチュ反応を含んでいてもよい。流体は、ガス、液体、乳濁液、スラリー、および/または液体の流れに類似する流れ特性を有する固体粒子の流れであってもよいが、それらに限定されない。
【0003】
インサイチュプロセスの間に地層を加熱するために、坑井穴内に加熱器が位置することが可能である。油頁岩地層内でケロゲンを熱分解するために、油頁岩地層に熱が加えられることが可能である。熱は、また、地層を破砕して地層の浸透性を増大させることが可能である。増大された浸透性は、流体が油頁岩地層から取り除かれる生成坑井に、地層流体が移動することを可能にする。地下の地層を加熱するために熱源が使用されることが可能である。放射および/または伝導によって地下の地層を加熱するために電気加熱器が使用されることが可能である。電気加熱器は要素を抵抗加熱することが可能である。
【0004】
注入坑井と生成坑井との間の油頁岩地層における浸透性を得ることは、油頁岩が、多くの場合実質的に不浸透性であるので、困難な傾向がある。そのような坑井を掘削することは、高価で、時間がかかる可能性がある。多くの方法が、注入坑井と生成坑井とをリンクすることを試みた。
【0005】
地層に対してドリル用ビットを回転させることによって、加熱器用の坑井穴、注入坑井および/または生成坑井が掘削されることが可能である。ドリル用ビットは、地表まで延在するドリルストリングによってボアホール内につるされることが可能である。ある場合には、ドリル用ビットが地表でドリルストリングを回転させることによって回転されることが可能である。掘削の間に坑井穴を洗い流すために掘削流体が使用されることが可能である。坑井穴の洗い流しは、掘削の間に生成された泥および/または金属切削屑を取り除くことが可能である。ある場合には、坑井穴内での掘削流体の静水圧が、地層の孔隙圧力に対してより高い圧力で維持されることが可能である。他の場合では、ボアホールの開口部分における圧力は、地層流体が掘削の間に坑井穴に流れ込むように地層の圧力よりも低く維持されることが可能である。
【0006】
坑井穴の掘削の間に、方向、運転パラメーターおよび/または運転条件を決定することに役立つために、掘削システムにセンサが取り付けられることが可能である。センサの使用は、掘削システムの位置決めを決定するのに要する時間を減少することが可能である。例えば、Hansberryの米国特許第7,093,370号明細書は、ボアホールドリル配管の小さな直径に適合する、ソリッドステートまたは他のジャイロ加速度計を含む複合ジンバルを利用するボアホール内で任意の方向性のための位置および姿勢を決定することができるボアホールナビゲーションシステムを記載している。Zaeperらの米国特許出願公開第2009−027041号明細書は、少なくとも1つのセンサダウンホールを位置決めし、感知されたダウンホールのデータを処理することなく、少なくとも1つのセンサから地表に掘削しながら感知されたデータを送信することを含む、掘削しながら測定する方法を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,093,370号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/27041号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上に概説されるように、炭化水素地層内に坑井穴を掘削するために、ナビゲーションシステムおよび/またはセンサを使用する方法およびシステムを開発するためにかなりの努力があった。しかしながら、現在、坑井穴を掘削することは、困難、高価、および/または時間がかかる多くの炭化水素含有地層がまだある。したがって、様々な炭化水素含有地層からの炭化水素、水素、および/または他の生成物の生成のために、坑井穴を掘削する改良方法およびシステムの必要がまだある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に記載された実施形態は、概して、地表下の坑井穴を形成するためのシステムおよび方法に関する。ある実施形態では、本発明は、および地表下地層を処理するための1つまたは複数のシステム、1つまたは複数の方法を提供する。
【0010】
本発明は、実施形態によっては、地表下の坑井穴を形成するためのシステムであって、ドリルストリングを作動するように構成されたチャック駆動システムを含むラックアンドピニオンシステムと、ラックアンドピニオンシステムに結合された少なくとも1つの測定センサを含み、ラックアンドピニオンシステムを制御してドリルストリングの位置を決定するように構成された自動位置制御システムとを含む、システムを提供する。
【0011】
本発明は、実施形態によっては、地表下の坑井穴を形成する方法であって、自動位置制御システムに結合された少なくとも1つの測定センサから管に関する位置データを受けることと、測定センサからの位置データに基づいてラックアンドピニオンシステムを使用して、地層内の管の方向を制御することとを含む、方法を提供する。
【0012】
本発明は、実施形態によっては、地表下の坑井穴を形成するためのシステムであって、地表下の坑井穴においてドリルストリングの既存の管に少なくとも部分的に結合するように構成されるとともに、坑井穴内で掘削操作を制御するように構成され、掘削操作の間に新しい管を受けるように構成された循環スリーブを含む、下端駆動システムと、新しい管と結合するように構成されるとともに、新しい管が、既存の管に結合される場合、掘削操作の制御を担うように構成された上端駆動システムとを含む、システムを提供する。
【0013】
本発明は、実施形態によっては、新しい管をドリルストリングに加える方法であって、新しい管の上端部を上端駆動システムに結合することと、下端駆動システムが掘削操作を制御する間に、下端駆動システムの循環スリーブの開口部内に新しい管の下端部を位置決めすることと、掘削操作が継続する間に、新しい管を既存の管に結合して、結合された管を形成することと、下端駆動システムから上端駆動システムに掘削操作の制御を移動することと、掘削操作が継続する間に、上端駆動システムに向かって、結合された管の上方に下端駆動システムを移動させることと、掘削操作が継続する間に、結合された管の上端部分に下端駆動システムを結合することと、上端駆動システムから下端駆動システムに掘削操作の制御を移動することと、結合された管から上端駆動システムの接続を切ることとを含む、方法を提供する。
【0014】
さらなる実施形態では、ある実施形態からの特徴が、他の実施形態からの特徴と組み合わせられてもよい。例えば、1つの実施形態からの特徴が、他の実施形態のうちのいずれかからの特徴と組み合わせられてもよい。
【0015】
さらなる実施形態では、さらなる特徴が、本明細書に記載されたある実施形態に加えられてもよい。
【0016】
本発明の利点は、次の詳細な説明を検討し、添付図面を参照して当業者に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】炭化水素含有地層を処理するためのインサイチュ熱処理システムの一部の実施形態の概略図を示す。
【図2】ラックアンドピニオン掘削システムの実施形態の概略を表す。
【図3A】連続掘削連続工程のための実施形態の概略図を表す。
【図3B】連続掘削連続工程のための実施形態の概略図を表す。
【図3C】連続掘削連続工程のための実施形態の概略図を表す。
【図3D】連続掘削連続工程のための実施形態の概略図を表す。
【図4】図3Aから図3Dで表された下端駆動システムの循環スリーブの実施形態の断面図を表す。
【図5】図3Aから図3Dで表された下端駆動システムの循環スリーブの弁機構の概略を表す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、様々な変形および別の形態の影響を受けやすい一方、その具体的な実施形態は、図面において一例として示され、本明細書に詳細に説明される。図面は縮尺どおりではない。しかしながら、図面および詳細な説明は、本発明を開示された特定の形態に限定することを意図しないが、それどころか、その意図は、添付の請求項によって定義されるように、本発明の精神および範囲以内にある変形、均等および代替物をすべてカバーすることであることを理解するべきである。
【0019】
次の記載は、概して、地表下地層内に坑井穴を形成するためのシステムおよび方法に関する。地層内の炭化水素を処理して炭化水素生成物、水素および他の生成物を産出するために坑井穴を使用することが、本明細書に記載される。
【0020】
「API重力」は、15.5℃(60°F)でのAPI重力を指す。API重力は、ASTM法D6822またはASTM法D1298によって決まる。
【0021】
「凝縮性炭化水素」は、25℃、1気圧の絶対圧力で凝縮する炭化水素である。凝縮性炭化水素は、4より大きい炭素数の炭化水素の混合物を含んでいてもよい。「非凝縮性炭化水素」は、25℃、1気圧の絶対圧力で凝縮しない炭化水素である。非凝縮性炭化水素は、5未満の炭素数の炭化水素を含んでいてもよい。
【0022】
「流体圧力」は、地層内の流体によって発生される圧力である。「地盤圧力」(「地盤応力」と称されることもある)は、覆っている岩盤の単位面積当たりの重量に等しい地層内の圧力である。「静水圧」は、水柱によって及ぼされる地層内の圧力である。
【0023】
「地層」は、1つまたは複数の炭化水素含有層、1つまたは複数の非炭化水素層、オーバーバーデン、および/またはアンダーバーデン(underbarden)を含む。「炭化水素層」は、炭化水素を含有する地層内の層を指す。炭化水素層は、非炭化水素材料および炭化水素材料を含んでいてもよい。「オーバーバーデン」、および/または「アンダーバーデン」は、1つまたは複数の異なる種類の不浸透性材料を含む。例えば、オーバーバーデン、および/またはアンダーバーデンは、岩、頁岩、泥岩または湿性/堅固な炭酸塩を含んでいてもよい。インサイチュ熱処理プロセスの実施形態によっては、オーバーバーデン、および/またはアンダーバーデンは、比較的不浸透性であり、オーバーバーデン、および/またはアンダーバーデンの炭化水素含有層の著しい特性変化をもたらすインサイチュ熱処理プロセスの間に温度にさらされない、1つの炭化水素含有層または複数の炭化水素含有層を含んでいてもよい。例えば、アンダーバーデンは、頁岩または泥岩を含んでいてもよいが、アンダーバーデンは、インサイチュ熱処理プロセスの間に熱分解温度に加熱されなくてもよい。ある場合には、オーバーバーデン、および/またはアンダーバーデンが多少浸透性であってもよい。
【0024】
「地層流体」は、地層内に存在する流体を指し、熱分解流体、合成ガス、易動化炭化水素および水(蒸気)を含んでいてもよい。地層流体は、非炭化水素流体のみならず炭化水素流体も含んでいてもよい。用語「易動化流体」は、地層の熱処理の結果、流れることができる炭化水素含有地層内の流体を指す。「生成された流体」は、地層から取り除かれる流体を指す。
【0025】
「熱源」は、伝導熱伝導、および/または放射熱伝導によって、地層の少なくとも一部に熱を実質的に供給するための任意のシステムである。例えば、熱源は、導電材料であってもよく、および/または絶縁導電体、細長い部材、および/または導管内に配置される導体などの電気加熱器を含む。熱源は、また、地層外、または地層内で燃料を燃焼することによって熱を発生するシステムを含んでいてもよい。システムは、地表バーナー、ダウンホールガスバーナー、無炎分配型燃焼器、および自然分配型燃焼器であってもよい。実施形態によっては、1つまたは複数の熱源にもたらされる、または1つまたは複数の熱源で発生される熱は、他のエネルギー源によって供給されてもよい。他のエネルギー源は、地層を直接加熱してもよく、または、エネルギーは、地層を直接または間接的に加熱する移動媒体に適用されてもよい。当然のことながら、地層に熱を加えている1つまたは複数の熱源は、異なるエネルギー源を使用してもよい。したがって、例えば、所定の地層に関して、熱源によっては、導電材料、電気抵抗加熱器から熱を供給してもよく、熱源によっては、燃焼から熱をもたらしてもよく、熱源によっては、1つまたは複数の他のエネルギー源(例えば、化学反応、太陽エネルギー、風力エネルギー、バイオマス、または他の再生可能エネルギー源)から熱をもたらしてもよい。化学反応は、発熱反応(例えば、酸化反応)を含んでいてもよい。熱源は、また、導電材料、および/または加熱器の坑井などの、加熱位置に隣接、および/または囲むゾーンに熱をもたらす加熱器を含んでいてもよい。
【0026】
「加熱器」は、坑井内または坑井穴領域近くで熱を発生するための任意のシステムまたは熱源である。加熱器は、電気加熱器、バーナー、地層内の材料もしくは地層から生成される材料と反応する燃焼器、および/またはそれらの組み合わせであってもよいが、それらに限定されない。
【0027】
「重炭化水素」は、粘性炭化水素流体である。重炭化水素は、重油、タール、および/またはアスファルトなどの高粘性炭化水素流体を含んでいてもよい。重炭化水素は、炭素および水素のほかに、より低濃度の硫黄、酸素および窒素を含んでいてもよい。さらなる元素も、重炭化水素中に微量存在していてもよい。重炭化水素は、API重力によって分類されてもよい。重炭化水素は、一般的に、約20°未満のAPI重力を有する。重油は、例えば、一般的に、約10から20°のAPI重力を有し、一方、タールは、一般的に、約10°未満のAPI重力を有する。重炭化水素の粘性は、一般的に、15℃で約100センチポアズより大きい。重炭化水素は、芳香族化合物または他の複合環状炭化水素を含んでいてもよい。
【0028】
重炭化水素は、比較的浸透性の地層で見られてもよい。比較的浸透性の地層は、例えば、砂または炭酸塩に取り込まれた重炭化水素を含んでいてもよい。「比較的浸透性」は、地層またはその一部に対して10ミリダルシー以上(例えば、10または100ミリダルシー)の平均浸透性として定義される。「比較的低い浸透性」は、地層またはその一部に対して約10ミリダルシー未満の平均浸透性として定義される。1ダルシーは、約0.99平方マイクロメートルに等しい。不浸透性層は、一般的に、約0.1未満のミリダルシーの浸透性を有する。
【0029】
重炭化水素を含むある種の地層は、また、天然鉱ろうまたは天然アスファルタイトを含むが、それらに限定されない。「天然鉱ろう」は、幅が数メーター、長さが数キロメーター、深さが数百メーターであってもよい実質的に管状の鉱脈に典型的には生じる。「天然アスファルタイト」は、芳香族化合物組成物の固体炭化水素を含んでおり、典型的には大鉱脈に生じる。天然鉱ろうおよび天然アスファルタイトなどの地層からの炭化水素のインサイチュ回収は、液体炭化水素を形成するための溶融、および/または地層からの炭化水素のソリューションマイニングを含んでいてもよい。
【0030】
「炭化水素」は、炭素原子および水素原子によって主として形成された分子として一般的に定義される。炭化水素は、また、ハロゲン、金属元素、窒素、酸素、および/または硫黄などの他の元素を含んでいてもよいが、それらに限定されない。炭化水素は、ケロゲン、ビチューメン、ピロビチューメン、油、天然鉱ろうおよびアスファルタイトであってもよいが、それらに限定されない。炭化水素は、地球の鉱物基質内または、それに隣接して位置することができる。基質は、堆積岩、砂、シリシライト、炭酸塩、珪藻岩、および他の多孔質媒体含んでいてもよいが、それらに限定されない。「炭化水素流体」は、炭化水素を含む流体である。炭化水素流体は、水素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素、水およびアンモニアなどの非炭化水素流体を含んでも、取り込んでいてもよく、非炭化水素流体に取り込まれていてもよい。
【0031】
「インサイチュ転化プロセス」は、熱源から炭化水素含有地層を加熱して、熱分解流体が地層内で生成されるように熱分解温度より高い温度で地層の少なくとも一部の温度を上げるプロセスを指す。
【0032】
「インサイチュ熱処理プロセス」は、易動化流体、粘性低下流体、および/または熱分解流体が、地層内に生成されるように、熱源で炭化水素含有地層を加熱して、易動化流体、粘性低下、および/または炭化水素含有材料の熱分解をもたらす温度より高い温度に地層の少なくとも一部の温度を上げるプロセスを指す。
【0033】
「熱分解」は、熱の適用による化学結合の破壊である。例えば、熱分解は、熱だけによって化合物を1つまたは複数の他の物質に変えることを含んでいてもよい。熱は、地層の部分に移動されて、熱分解を引き起こすことが可能である。
【0034】
「熱分解流体」または「熱分解生成物」は、炭化水素の熱分解の間に実質的に生成される流体を指す。熱分解反応によって生成される流体は、地層内で他の流体と混ざってもよい。混合物は、熱分解流体または熱分解生成物と考えられる。本明細書で説明されるように、「熱分解ゾーン」は、熱分解流体を形成するために反応されるまたは反応する地層(例えば、タール砂地層などの比較的浸透性地層)の体積を指す。
【0035】
「タールサンド地層」は、炭化水素が、鉱物粒子枠組みまたは他の宿主岩盤(例えば、砂または炭酸塩)に取り込まれた重炭化水素、および/またはタールの形態で主に存在する地層である。タールサンド地層としては、アサバスカ地層、グロスモント地層、およびピースリバー地層(3つすべては、Alberta、Canada)、ファハ地層(Orinoco belt、Venezuela)などの地層が挙げられる。
【0036】
「U字形状の坑井穴」は、地層内の第1の開口部から、地層の少なくとも一部を介し、地層内の第2の開口部を介して延在する坑井穴を指す。この文脈では、坑井穴は、坑井穴が「u」形状であるとみなされるために、「u」の「脚部」が互いに平行である必要はなく、または「u」の「底部」に対して垂直である必要はないという条件で、単に概略的に「v」または「u」形状であってもよい。
【0037】
用語「坑井穴」は、掘削または地層への導管の挿入によって作製された地層における穴を指す。坑井穴は、実質的に円形断面または他の断面形状を有していてもよい。本明細書で使用されるように、用語「坑井」および「開口部」は、地層内の開口部を参照する場合、用語「坑井穴」で交換可能に使用されてもよい。
【0038】
地層は、様々な方法で処理されて様々な生成物を生成することが可能である。インサイチュ熱処理プロセスの間に地層を処理するために、異なる段階またはプロセスが使用されてもよい。実施形態によっては、地層の1つまたは複数の部分は、ソリューションマイニングされて、その部分から可溶性鉱物を取り除く。ソリューションマイニング鉱物は、インサイチュ熱処理プロセスの前、間、および/または後に行われてもよい。実施形態によっては、ソリューションマイニングされる1つまたは複数の部分の平均温度は、約120℃より低く維持されてもよい。
【0039】
実施形態によっては、地層の1つまたは複数の部分が加熱されて、部分から水を取り除く、および/または部分からメタンおよび他の揮発性炭化水素を取り除く。実施形態によっては、平均温度は、水および揮発性炭化水素の除去の間に、周囲の温度から約220℃より低い温度に上げられてもよい。
【0040】
実施形態によっては、地層の1つまたは複数の部分が加熱されて、地層内で炭化水素の移動、および/または粘性低下を可能にする温度に加熱される。実施形態によっては、地層の1つまたは複数の部分の平均温度は、その部分における炭化水素の易動化温度に上げられる(例えば、100℃から250℃、120℃から240℃、または150℃から230℃の範囲の温度に)。
【0041】
実施形態によっては、1つまたは複数の部分が、地層内での熱分解反応を可能にする温度に加熱される。実施形態によっては、地層の1つまたは複数の部分の平均温度は、部分における炭化水素の熱分解温度に上げられてもよい(例えば、230℃から900℃、240℃から400℃、または250℃から350℃の範囲の温度)。
【0042】
複数の熱源で炭化水素含有地層を加熱することは、地層内の炭化水素の温度を所望の加熱速度で所望の温度に上げる熱源のまわりの温度勾配を確立することが可能である。所望の生成物のための易動化温度範囲、および/または熱分解温度範囲の間の温度増加率は、炭化水素含有地層から生成される地層流体の質および量に影響することが可能である。易動化温度範囲、および/または熱分解温度範囲の間に地層の温度をゆっくり上げることは、地層から高品質、高API重力の炭化水素の生成を可能にしてもよい。易動化温度範囲、および/または熱分解温度範囲の間に地層の温度をゆっくり上げることは、炭化水素生成物として地層内に存在する大量の炭化水素の除去を可能にしてもよい。
【0043】
いくらかのインサイチュ熱処理の実施形態では、地層の一部は、温度範囲の間に温度をゆっくり加熱する代わりに所望の温度に加熱される。実施形態によっては、所望の温度は、300℃、325℃または350℃である。所望の温度として他の温度が選択されてもよい。
【0044】
熱源からの熱の重ね合わせは、所望の温度が、地層において比較的速く効率的に確立されることを可能にする。熱源から地層へのエネルギー入力が調節されて、所望の温度で地層内で温度を実質的に維持することが可能である。
【0045】
易動化、および/または熱分解生成物が、生成坑井を介して地層から生成されることが可能である。実施形態によっては、1つまたは複数の部分の平均温度が易動化温度に上げられ、炭化水素が生成坑井から生成される。1つまたは複数の部分の平均温度は、易動化による生成が選択された値より下に低下した後、熱分解温度に上げられてもよい。実施形態によっては、1つまたは複数の部分の平均温度は、熱分解温度に達する前にほとんど生成せずに熱分解温度に上げられてもよい。熱分解生成物を含む地層流体は、生成坑井を介して生成されてもよい。
【0046】
実施形態によっては、1つまたは複数の部分の平均温度は、易動化、および/または熱分解後に、合成ガスの生成を可能にするのに十分な温度に上げられてもよい。実施形態によっては、炭化水素は、合成ガスの生成を可能にするのに十分な温度に達する前にほとんど生成せずに合成ガスの生成を可能とするのに十分な温度に上げられてもよい。例えば、合成ガスは、約400℃から約1200℃、約500℃から約1100℃、または約550℃から約1000℃の温度範囲で生成されてもよい。合成ガス発生流体(例えば、蒸気、および/または水)が、合成ガスを発生するために部分へ導入されてもよい。合成ガスは、生成坑井から生成されてもよい。
【0047】
ソリューションマイニング、揮発性炭化水素および水の除去、炭化水素の易動化、炭化水素の熱分解、合成ガスの発生、および/または他のプロセスが、インサイチュ熱処理プロセスの間に行われてもよい。実施形態によっては、いくつかのプロセスが、インサイチュ熱処理プロセス後に行われてもよい。そのようなプロセスとしては、処理された部分から熱を回収すること、予め処理された部分に流体(例えば、水、および/または炭化水素)を保存すること、および/または予め処理された部分に二酸化炭素を隔離することが挙げられるが、それらに限定されない。
【0048】
図1は、炭化水素含有地層を処理するためのインサイチュ熱処理システムの一部の実施形態の概略図を表す。インサイチュ熱処理システムは、障壁坑井100を含んでいてもよい。障壁坑井は、処理領域のまわりに障壁を形成するために使用される。障壁は、処理領域への、および/または処理領域からの流体の流れを抑制する。障壁坑井としては、脱水坑井、真空坑井、捕獲坑井、注入坑井、グラウト坑井、凍結坑井、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。実施形態によっては、障壁坑井100は、脱水坑井である。脱水坑井は、液体の水を取り除く、および/または液体の水が加熱される対象の地層、もしくは加熱されている地層の一部に入ることを抑制し得る。図1で表された実施形態では、障壁坑井100は、熱源102の一方の側に沿ってのみ延在して示されているが、障壁坑井は、典型的には、地層の処理領域を加熱するために使用された、または使用されるすべての熱源102を取り囲む。
【0049】
熱源102は、地層の少なくとも一部内に置かれる。熱源102は、導電材料を含んでいてもよい。実施形態によっては、絶縁導電体、導体イン導管加熱器、地表バーナー、無炎分配型燃焼器、および/または自然分配型燃焼器などの加熱器である。熱源102は、また、他の種類の加熱器を含んでいてもよい。熱源102は、地層の少なくとも一部に熱をもたらして、地層内で炭化水素を加熱する。供給ライン104を介して熱源102にエネルギーが供給されてもよい。供給ライン104は、地層を加熱するために使用される熱源(複数可)の種類に応じて構造上異なっていてもよい。熱源用の供給ライン104は、導電材料および/または電気加熱器用に送電してもよく、燃焼器用の燃料を移動してもよく、または地層内で循環される熱交換流体を移動してもよい。実施形態によっては、インサイチュ熱処理プロセス用電気が、原子力発電所(複数可)によってもたらされてもよい。原子力の使用は、インサイチュ熱処理プロセスからの二酸化炭素排出の低減または除去を可能としてもよい。
【0050】
地層が加熱される場合、地層への入熱が、地層の膨張および地質工学的運動を引き起こすことが可能である。熱源は、脱水プロセス前、同時、または間に作動されることが可能である。コンピューターシミュレーションが、加熱に対する地層の反応をモデル化することが可能である。コンピューターシミュレーションは、地層の地質工学的運動が、熱源、生成坑井、および地層内の他の装置の機能性に悪影響を及ぼさないように、地層内の熱源を稼働するためのパターンおよび時間系列を開発するために使用されることが可能である。
【0051】
地層を加熱することは、地層の浸透性、および/または気孔率の増大を引き起こしてもよい。浸透性、および/または気孔率の増大は、水の蒸発および除去、炭化水素の除去、および/または破砕の作成により、地層の質量の低減に起因することが可能である。流体は、地層の浸透性、および/または気孔率が増大されるために、地層の加熱された部分においてより容易に流れることが可能である。地層の加熱された部分内の流体は、浸透性、および/または気孔率が増加されるために、地層を介して相当な距離を移動することが可能である。相当な距離は、地層の浸透性、流体の特性、地層の温度、および流体の移動を可能とする圧力勾配などの様々な要因に応じて1000mを超えることが可能である。流体が地層内で相当な距離を移動する能力は、生成坑井106が地層内で比較的遠く離れて間隔を置いて配置されることを可能にする。
【0052】
生成坑井106は、地層から地層流体を取り除くために使用される。実施形態によっては、生成坑井106は熱源を含む。生成坑井での熱源は、生成坑井で、または生成坑井の近くで地層の1つまたは複数の部分を加熱することが可能である。インサイチュ熱処理プロセスの実施形態によっては、生成坑井のメーター当たりの生成坑井からの地層に供給される熱量は、熱源のメーター当たりの地層を加熱する熱源から地層に加えられた熱量未満である。生成坑井から地層に加えられた熱は、生成坑井に隣接する液相流体を蒸発、除去することによって、および/または、マクロ破砕、および/またはミクロ破砕の地層によって生成坑井に隣接する地層の浸透性を増大させることによって、生成坑井に隣接する地層の浸透性を増大させることが可能である。
【0053】
2つ以上の熱源が生成坑井内に位置していてもよい。隣接した熱源からの熱の重ね合わせが、地層を十分に加熱して、生成坑井で地層を加熱することによってもたらされる利点を無効にする場合、生成坑井の低い部分内の熱源が切られてもよい。実施形態によっては、生成坑井の低い部分内の熱源が動作を停止された後、生成坑井の上部内の熱源はそのままでもよい。生成坑井の上部内の熱源は、地層流体の凝縮および還流を抑制することが可能である。
【0054】
実施形態によっては、生成坑井106内の熱源は、地層から地層流体の気相除去を可能にする。生成坑井で、または生成坑井を介して加熱をもたらすことは、以下を可能にする:(1)そのような生成された流体がオーバーバーデンに隣接した生成坑井内で移動している場合、生成された流体の凝縮、および/または還流を抑制する、(2)地層への熱入力を増大する、(3)熱源のない生成坑井に比較して生成坑井からの生成速度を増大する、(4)生成坑井での高炭素数化合物(C以上の炭化水素)の凝縮を抑制する、および/または(5)生成坑井で、または生成坑井に隣接した地層の浸透性を増大する。
【0055】
地層内の地表下の圧力は、地層内で発生された流体圧力に相当してもよい。地層の加熱された部分の温度が上昇するにつれて、加熱された部分の圧力は、インサイチュ流体の熱膨張、流体の発生の増大、および水の蒸発の結果、増大する可能性がある。地層からの流体除去の速度の制御は、地層内の圧力の制御を可能にする。地層内の圧力は、生成坑井に近接してまたは生成坑井で、熱源に近接してまたは熱源で、または観察坑井で、などの複数の異なる位置で決定されることが可能である。
【0056】
炭化水素含有地層によっては、地層内の少なくともいくつかの炭化水素が易動化され、および/または熱分解されるまで、地層からの炭化水素の生成は抑制される。地層流体が選択された品質を有する場合、地層流体が地層から生成されることが可能である。実施形態によっては、選択された品質としては、少なくとも約20°、30°または40°のAPI重力が挙げられる。少なくともいくつかの炭化水素が易動化され、および/または熱分解されるまで生成を抑制することは、重炭化水素の軽質炭化水素への変換を増大させることが可能である。初期の生成の抑制は、地層から重炭化水素の生成を最小限にすることが可能である。相当量の重炭化水素の生成は、高価な装置を必要とし、および/または生成装置の寿命を短くする可能性がある。
【0057】
炭化水素含有地層によっては、地層内の炭化水素は、実質的浸透性が地層の加熱された部分内で生成される前に、易動化温度および/または熱分解温度に加熱されることが可能である。浸透性の初期の不足は、生成坑井106に生成された流体の移送を抑制する可能性がある。初期の加熱の間に、地層内の流体圧力は、隣接した熱源102を増大することが可能である。増大された流体圧力は、解放される、観察される、変えられる、および/または1つもしくは複数の熱源102によって制御されることが可能である。例えば、選択された熱源102または別の圧力逃し坑井は、地層からいくらかの流体の除去を可能とする圧力逃しバルブを含んでいてもよい。
【0058】
実施形態によっては、生成坑井106に対する開放通路または任意の他の圧力シンクが地層内に存在しなくてもよいが、地層内で発生された易動化流体、熱分解流体または他の流体の膨張によって発生された圧力は、増大することが可能であってもよい。流体圧力は、地盤圧力に対して増大することが可能であってもよい。流体が地盤圧力に達すると、炭化水素含有地層の破砕が生じることがある。例えば、破砕は、地層の加熱された部分において、熱源102から生成坑井106まで生じることがある。加熱された部分における破砕の発生は、一部内の圧力の一部を逃がすが可能である。地層内の圧力は、選択された圧力より低く維持されて、不要な生成、オーバーバーデンもしくはアンダーバーデンの破砕、および/または地層内の炭化水素のコーキングを抑制しなければならない。
【0059】
易動化温度、および/または熱分解温度が到達され、地層からの生成が可能とされた後、地層内の圧力が変えられて、生成された地層流体の組成を変更、および/または制御して、地層流体内の非凝縮性流体に対して凝縮性流体の割合を制御する、および/または生成される地層流体のAPI重力を制御することが可能である。例えば、圧力を低下させることは、より大きな凝縮性流体成分の生成をもたらすことが可能である。凝縮性流体成分は、より大きな割合のオレフィンを含むことが可能である。
【0060】
インサイチュ熱処理プロセスの実施形態によっては、地層内の圧力は、20°より大きいAPI重力を備えた地層流体の生成を促進するのに十分高く維持されることが可能である。地層内の増加された圧力を維持することは、インサイチュ熱処理の間に地層の沈下を抑制することが可能である。増加された圧力を維持することは、地層流体を地表で圧縮する必要を低減または除去して、回収導管内の流体を処理施設に移動することが可能である。
【0061】
地層の加熱された部分内の増加された圧力を維持することは、驚くことに、品質が向上され、比較的低分子量の炭化水素を大量に生成することを可能にしてもよい。生成された地層流体が選択された炭素数を越える最小量の化合物を有するように、圧力は維持されてもよい。選択された炭素数は、最大で25、最大で20、最大で12、または最大で8であってもよい。いくつかの高炭素数化合物が地層内で蒸気で取り込まれていてもよく、蒸気で地層から取り除かれてもよい。地層内で増加した圧力を維持することは、高炭素数の化合物、および/または蒸気で多重環炭化水素化合物の取り込みを抑制することが可能である。高炭素数化合物、および/または多重環炭化水素化合物は、かなりの期間、地層内で液体相で残存していてもよい。かなりの期間は、化合物が熱分解するのに十分な時間をもたらして、低炭素数化合物を形成することが可能である。
【0062】
比較的低分子量の炭化水素の生成は、炭化水素含有地層の一部における水素の自己生成および反応に、一部分において起因すると考えられる。例えば、増大された圧力の維持は、熱分解の間に生成される水素を地層内の液相に押し進めることが可能である。熱分解温度範囲内の温度に部分を加熱することは、地層内の炭化水素を熱分解して、液相熱分解流体を生成することが可能である。生成された液相熱分解流体成分は、二重結合および/またはラジカルを含んでいてもよい。液相内の水素(H)は、生成された熱分解流体の二重結合を低減し、それによって、生成された熱分解流体からの長鎖化合物の重合または化成の可能性を低減することが可能である。さらに、Hは、生成された熱分解流体内のラジカルを中和することも可能である。液相内のHは、生成された熱分解流体が、互いにおよび/または地層内の他の化合物と反応することを抑制することが可能である。
【0063】
生成坑井106から生成された地層流体は、処理施設110に収集管108を介して移動されることが可能である。地層流体は、また、熱源102から生成されることが可能である。例えば、流体は、熱源102から生成されて、熱源に隣接する地層内の圧力を制御することが可能である。熱源102から生成された流体は、収集管108にチュービングもしくは配管を介して移動されることが可能であり、または、生成された流体は、処理施設110に直接、チュービングもしくは配管を介して移動されることが可能である。処理施設110は、分離ユニット、反応ユニット、品質向上ユニット、燃料電池、タービン、貯蔵容器、および/または生成された地層流体を処理するための他のシステムおよびユニットを含んでいてもよい。処理施設は、地層から生成された炭化水素の少なくとも一部から輸送燃料を生じることが可能である。
【0064】
多くの坑井が、インサイチュ熱処理プロセスを使用して、炭化水素地層を処理するために必要とされる。実施形態によっては、垂直または実質的に垂直の坑井が地層内に形成される。実施形態によっては、水平またはU字形状の坑井が地層内に形成される。実施形態によっては、水平および垂直の坑井の組み合わせが地層内に形成される。
【0065】
地表下地層内で坑井穴を形成する際の正確さおよび効率は、掘削の間に方向データの密度および質によって影響されることが可能である。方向データの質は、スライドモード掘削を使用して、ロータリー掘削の間、特に、回転掘削セグメントの間に振動および角加速度によって低減される可能性がある。
【0066】
実施形態によっては、ラックアンドピニオン掘削システムと組み合わせた自動位置制御システムが、地層内に坑井穴を形成するために使用されることが可能である。ラックアンドピニオン掘削システムと組み合わせた自動位置制御および/または測定システムの使用は、坑井穴が、手動位置決めおよび較正を使用する掘削よりも正確に掘削されることを可能にする。例えば、自動位置システムは、連続的におよび/または半連続的に掘削の間に較正されることが可能である。図2は、ラックアンドピニオン駆動システムを含むシステムの一部の概略を表す。ラックアンドピニオン駆動システム112は、ラック114、キャリッジ116、チャック駆動システム118および循環スリーブ120を含んでいるが、それらに限定されない。チャック駆動システム118は、管122を保持することが可能である。ラックアンドピニオンタイプシステムのプッシュプル能力は、管の回転が必要でないように、十分な力(例えば、約5トン)が坑井穴内に管を押し込むことを可能にする。ラックアンドピニオンシステムは、ドリル用ビットに下向きの力を加えることが可能である。ドリル用ビットに加えられる力は、ドリルストリング(管)および/またはカラーの重量に依存しなくてもよい。ある実施形態では、カラーの重量は掘削操作を可能にするためには必要ではないので、カラーサイズおよび重量は低減される。長い水平部分を有する坑井穴を掘削することは、ビットに重量をもたらすために利用できるドリルストリングの垂直長さと無関係のドリルビットに力を加える掘削システムの能力のために、ラックアンドピニオン掘削システムを使用して行なわれることが可能である。
【0067】
ラックアンドピニオン駆動システム112は、自動位置制御システム124に結合されることが可能である。自動位置制御システム124としては、回転操舵システム、デュアルモータ回転操舵システム、および/または穴測定システムが挙げられるが、それらに限定されない。実施形態によっては、測定システムは、1つまたは複数のセンサを含み、センサとしては、磁気測距センサ、非回転センサ、および/または傾斜加速度計があげられるが、それらに限定されない。実施形態によっては、1つまたは複数の加熱器が、ラックアンドピニオン駆動システムの1つまたは複数の管内に含まれる。実施形態によっては、穴測定システムは加熱器内に位置する。
【0068】
実施形態によっては、穴測定システムは、1つまたは複数の傾斜加速度計を含む。傾斜加速度計の使用は、地層の浅い部分の探査を可能にする。例えば、地層の浅い部分は、掘削操作からの鋼ケーシングストリングおよび/または他の坑井を有することが可能である。鋼ケーシングは、掘削の間に受ける偏差の方向を決定する際に磁気探査ツールの使用に影響する可能性がある。傾斜加速度計は、地表を管回転位置の基準として、掘削システム(例えば、ラックアンドピニオン掘削システム)のボトムホールアセンブリ内に位置することが可能である。ボトムホールアセンブリ内に傾斜加速度計を位置付けすることは、隣接する磁気干渉源(例えば、ケーシングストリング)の影響にかかわらず、ホールの傾斜および方向の正確な測定を可能にする。実施形態によっては、管の相対的回転位置は、シャフトの増分回転を測定し追跡することによって観察される。既存の管に加えられた管の相対的回転を観察することによって、管のより正確な位置決めが達成されることが可能である。そのような観察は、管が連続的な方法で加えられることを可能にする。
【0069】
実施形態によっては、ラックアンドピニオンシステムを使用して掘削する方法は、連続的なダウンホール測定を含む。測定システムは、所定の定電流信号を使用して作動されることが可能である。ダウンホールの距離および方向は、連続的に計算される。計算の結果は、フィルターをかけられ平均される。最良推定量の最終距離および方向は、地表に報告される。地表で受けられた場合、知られている穴に沿った深さおよび管の位置が、計算された距離および方向と組み合わされて、X、YおよびZ位置データを算出する。
【0070】
継手管で掘削する間に、循環を中断し、次の配管を加え、循環および穴作製の継続を回復するためにかかる時間は、特に、二相循環システムを使用する場合、相当量の時間を必要とする可能性がある。管(例えば、配管)を処理することは、手動処理技術が使用される歴史的に大きな安全性リスクであった。コイルチュービング掘削は、接続および手動管処理をする必要をなくすことにいくらかの成功をした。しかしながら、回転させることができないこと、および実用的コイル直径に対する限定は、使用することができる範囲を限定する可能性がある。
【0071】
実施形態によっては、管が、掘削プロセスを中断することなくストリングに加えられる掘削連続工程が使用される。管は、管が圧力下で接続されることを可能にする関節接続を含むことが可能である。そのような連続工程は、大きな直径の管で連続的な回転掘削を可能にする。管は、加熱器および/または本明細書に記載された自動位置制御システムを含むことが可能である。
【0072】
連続回転掘削システムが、掘削プラットフォームを含んでいてもよく、1つまたは複数のプラットフォーム、上端駆動システムおよび下端駆動システムが挙げられるが、それらに限定されない。プラットフォームは、要素の複数の独立した横断を可能にするためにラックを含むことが可能である。上端駆動システムは、延在ドライブサブ(例えば、American Augers(West Salem、Ohio、USA)によって製造された延在駆動システム)を含むことが可能である。上端駆動システムは、例えば、回転駆動システムまたはラックアンドピニオン駆動システムであってもよい。下端駆動システムは、チャック駆動システムおよび油圧装置を含んでいてもよい。下端駆動システムは、ラックアンドピニオン掘削システム(例えば、図2で説明されたラックアンドピニオンシステム)に類似する方法で作動することができる。下端駆動システムおよび上端駆動システムは、掘削操作の制御を交互に行うことができる。チャック駆動システムは、別のキャリッジに取り付けられることができる。油圧装置としては、1つまたは複数のモータおよび1つの循環スリーブが挙げられるが、それらに限定されない。循環スリーブは、管状と環形との間の循環を可能とすることが可能である。循環スリーブは、坑井内で様々な間隔からの生成を開始または止めるために使用されることが可能である。実施形態によっては、システムは、管処理システムを含む。管処理システムは、自動化、手動作動、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0073】
実施形態によっては、連続回転掘削システムを使用する方法は、新しい管を、下端駆動システムに結合された既存の管に加えて、延在された管を形成することを含む。下端駆動システムが掘削操作を制御しながら掘削する間に、新しい管は、下端駆動システムの循環スリーブの開口部内に位置することが可能である。新しい管は、上端駆動システムに結合されることが可能である。下端駆動システムの循環スリーブは、流体が2つの管のまわりを流れることを可能にする。循環スリーブ内の流体圧力は、約13.8MPa(2000psi)までの圧力とすることが可能である。循環スリーブは、循環の変更および/または流れを促進する1つまたは複数のバルブ(例えば、UBD循環または逆止め弁)を含むことが可能である。バルブの使用は、システム内の圧力を維持することに役立つことが可能である。循環スリーブ内の2つの管に加えられた圧力は、2つの管を結合して(例えば、圧入)、掘削プロセスの中断なしで結合された管を形成することが可能である。管をともに結合する間および/または後に、掘削操作の制御は、下端駆動システムから上端駆動システムに移動されることが可能である。上端駆動システムへの掘削操作の移動は、下端駆動システムが、掘削プロセスの中断なしで上端駆動システムの方に、結合された管の上方に移動することを可能にする。下端駆動システムは、上端駆動システムのドライブサブに取り付けることが可能であり、掘削操作の制御は、掘削プロセスの中断なしで上端駆動システムから下端駆動システムに移動されることが可能である。一旦掘削制御が、下端駆動システムに移動されれば、上端駆動システムは、管から外すことが可能である。上端駆動システムは、次いで、他の管の上端に接続してプロセスを継続することが可能である。
【0074】
図3Aから図3Dは、連続掘削連続工程の実施形態の概略を表す。図4は、図3Aから図3Dで表された下端駆動システムの循環スリーブの実施形態の断面図を表す。図5は、図3Aから図3Dで表された下端駆動システムの循環スリーブの弁機構の概略を表す。図3Aから図3Dを参照して、連続掘削連続工程は、下端駆動システム112、管処理システム128および上端駆動システム130を含む。上端駆動システム130は、上端循環スリーブ132およびドライブサブ134を含む。下端駆動システム112は、下端循環スリーブ120およびチャック118を含む。実施形態によっては、チャックは、別のキャリッジシステム上にあってもよい。図3Aから図3Dで示されるように、上端駆動システム130は、基準線Yにあり、下端駆動システム112は、基準線Zにある。基準線YおよびZが説明の目的だけのために示され、連続工程の様々な段階での駆動システムの高さは、図3Aから図3Dで表されたものと異なっていてもよいことが理解される。
【0075】
図3Aに示されるように、既存の管122は、下端駆動システム112のチャック118に結合されている。下端駆動システムは、地表下地層内の既存の管122を挿入する掘削操作を制御する。掘削操作の間に、流体は、ポート136を介して下端循環スリーブ120に入り、既存の管122のまわりを流れることが可能である。流体は、チャック118および/または既存の管122から熱を取り除くことが可能である。下端循環スリーブ120は、サイドバルブ138(図5に示される)を含むことが可能である。サイドバルブ138は、サイド入口流に組み入れられた逆止め弁および逆止め弁ポートであってもよい。サイドバルブ138および/または上端バルブ140(図5に示される)の使用は、循環入口ポイントの変更、および加圧システム(例えば、13.8MPaまでの圧力)の生成を促進することが可能である。
【0076】
下端駆動システム112のチャック118が、既存の管122を使用して掘削を制御し続けるにつれて、新しい管142は、管処理システム128を使用して、下端駆動システム112と位置合わせされることが可能である。一旦、適切な位置になれば、上端駆動システム130は、新しい管142の上端(例えば、ボックス端)に接続されることが可能である。図3Bで示されるように、上端駆動システム130は、下端駆動システム112の循環スリーブ120の開口部144(図4に表される)内の新しい管142の下端部を低下するおよび位置付けするまたは下げる。実施形態によっては、下端循環スリーブ120は、ポート136のサイドバルブ138(図5に示される)および開口部144(図5に示される)の上端入口バルブ140を含む。バルブ138および140を使用する下端循環スリーブ120を介しての流体の流れの調整は、循環スリーブ内の圧力を制御することが可能である。実施形態によっては、下端循環スリーブ120は、1つもしくは複数のバルブを含むことが可能である、および/または1つもしくは複数のバルブと関連して作動することが可能である。
【0077】
開口部144は、1つまたは複数のツールジョイント148を含んでいてもよい(図4を参照)。ツールジョイント148は、循環スリーブの内部部分における新しい管142の入口を案内することが可能である。循環スリーブ120が加圧されるので、ツールジョイント148は、スリーブ内の圧力の均一化を可能にする。圧力の均一化は、上端入口バルブ140を超えて、下端循環スリーブ120内への新しい管142の移動を促進する。
【0078】
一旦、新しい管142が下端循環スリーブ120のチャンバーにあると、循環は、上端駆動システム130に変わり、流体は、上端駆動システム130の上端循環スリーブ132にポート146を介して流れる。下端循環スリーブ120のチャンバーにおいて、新しい管142および既存の管122は結合されて、結合された管150を形成する。結合された管150は、新しい管142および既存の管122を含む。結合された管150を形成した後、下端駆動システム112のチャック118は、結合された管150から外されることが可能であり、このようにして、上端駆動システム130に対する掘削プロセスの制御を中止する。
【0079】
上端駆動システム130が、掘削プロセスを制御している間に、下端駆動システム112は作動されて、結合された管150の長さに沿って上端駆動システム130に向けて上方に(図3Cに示された矢印参照)移動することが可能である。下端駆動システム112の下端循環系スリーブ120が、上端駆動システム130のドライブサブ134と近接するにつれて、上端駆動システム130からの流体は、上端バルブ140(図5に示される)を介して上端駆動システム130の上端循環スリーブ132から流れることが可能である。下端循環スリーブ120は加圧されることが可能であり、サイドバルブ138(図5に示される)は、流れをもたらすために開くことが可能である。サイドバルブ138が上端循環スリーブ132に流れをもたらすために開くにつれて、上端バルブ140(図5に示される)は閉まる、および/または部分的に閉じることが可能である。循環は、上端駆動システム130を介して遅くされてもよい、または中断されてもよい。循環が上端駆動システム130を介して停止されるときに、上端バルブ140は完全に閉じてもよく、すべての流体は、ポート136からサイドバルブ138を介して供給されてもよい。下端駆動システム112が、結合された管150の上端に達する場合、下端駆動システム112は、ドライブサブ134と係合することが可能である。結合された管150は、下端駆動システム112が掘削操作の制御を再開している間に、ドライブサブ134から離れることが可能であり、チャック118と係合することが可能である。チャック118は、力を移動して、管150を結合して、掘削プロセスを継続する。
【0080】
一旦、結合された管150から離されたら、上端駆動システム130は、下端駆動システム112に対して上げられることが可能である(上向き矢印参照)(例えば、上端駆動システム130が図3Dに示されるように基準線Yに達するまで)。下端駆動システム112は低下されて、結合された管150を地層内に下向きに押すことが可能である(図3Dで下向き矢印参照)。下端駆動システム112は、低下され続けることが可能である(例えば、下端駆動システム112が基準線Zに戻されるまで)。上記の連続工程は、連続掘削操作を維持するように何回も繰り返されることが可能である。
【0081】
本発明の種々の態様のさらなる変形および別の実施形態は、この説明を考慮して当業者に明らかとすることが可能である。従って、この説明は、例示としてのみ解釈され、本発明を実施する一般的な方法を当業者に教示するためのものである。当然のことながら、本明細書に示され、記載された本発明の形態は、現在、好ましい実施形態になる。要素および材料は、本明細書で例証され、説明されたものに代用されてもよく、部品およびプロセスは、逆にされてもよく、本発明の特定の特徴が独立して利用されてもよく、すべては、本発明のこの説明の利点を有した後、当業者に明らかとなる。次の請求の範囲に記載されるように、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された要素において変更が行われることが可能である。さらに、当然のことながら、本明細書に独立して記載された特徴は、ある実施形態では、組み合わせられることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表下の坑井穴を形成するためのシステムであって、
ドリルストリングを作動するように構成されたチャック駆動システムを含むラックアンドピニオンシステムと、
ラックアンドピニオンシステムに結合された少なくとも1つの測定センサを含み、ラックアンドピニオンシステムを制御してドリルストリングの位置を決定するように構成された自動位置制御システムとを含む、システム。
【請求項2】
チャック駆動システムが、管を保持するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
チャック駆動システムが、管を保持するように構成されており、管が、1つまたは複数の加熱器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
チャック駆動システムが、1つまたは複数の加熱器を含む管を保持するように構成され、加熱器の少なくとも1つが、1つもしくは複数の磁気測距センサおよび/または1つもしくは複数の非回転センサを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
自動位置制御システムが、掘削の間に連続的にまたは半連続的に較正されるように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
自動位置制御システムが、1つまたは複数の回転操舵システム、1つまたは複数のデュアルモータ回転操舵システム、または1つまたは複数の穴測定システムを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
自動位置制御システムが、1つまたは複数の穴測定システムを含み、少なくとも1つの穴測定システムが、1つまたは複数の傾斜加速度計を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
地表下の坑井穴を形成する方法であって、
自動位置制御システムに結合された少なくとも1つの測定センサから管に関する位置データを受けることと、
測定センサからの位置データに基づいてラックアンドピニオンシステムを使用して、地層内の管の方向を制御することとを含む、方法。
【請求項9】
測定センサが、1つまたは複数の傾斜加速度計を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
位置データが、磁気干渉源の存在下で得られる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
位置データが、管状軸の相対的回転データを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
地表下の坑井穴を形成するためのシステムであって、
地表下の坑井穴においてドリルストリングの既存の管に少なくとも部分的に結合するように構成されるとともに、坑井穴内で掘削操作を制御するように構成され、下端駆動システムが、掘削操作の間に新しい管を受けるように構成された循環スリーブを含む、下端駆動システムと、
新しい管と結合するように構成されるとともに、新しい管が、既存の管に結合される場合、掘削操作の制御を担うように構成された上端駆動システムとを含む、システム。
【請求項13】
下端駆動システムは、上端駆動システムが掘削操作を制御している間に、新しい管の上端まで少なくとも部分的に移動するように構成されているとともに、上端駆動システムからの掘削操作の制御を担うように構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
上端駆動システムとの結合のための新しい管を位置付けするように構成された管処理システムをさらに含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
上端駆動システムが、循環スリーブを含み、下端駆動システムの循環スリーブが、上端駆動システムの循環スリーブから流体を受けるように構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
循環スリーブが13.8MPaの圧力まで圧力を維持するように構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
新しい管をドリルストリングに加える方法であって、
新しい管の上端部を上端駆動システムに結合することと、
下端駆動システムが掘削操作を制御する間に、下端駆動システムの循環スリーブの開口部内に新しい管の下端部を位置付けすることと、
掘削操作が継続する間に、新しい管を既存の管に結合して、結合された管を形成することと、
下端駆動システムから上端駆動システムに掘削操作の制御を移動することと、
掘削操作が継続する間に、上端駆動システムに向かって、結合された管の上方に下端駆動システムを移動させることと、
掘削操作が継続する間に、結合された管の上端部分に下端駆動システムを結合することと、
上端駆動システムから下端駆動システムに掘削操作の制御を移動することと、
結合された管から上端駆動システムの接続を切ることとを含む、方法。
【請求項18】
下端駆動システムの循環スリーブから下端駆動システムに流体をもたらすことと、
一旦、新しい管が、下端駆動システムの循環スリーブの開口部内に位置付けすると、上端駆動システムの循環スリーブから下端駆動システムに流体をもたらすこととをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
下端駆動システムの循環スリーブ内で13.8MPaまで圧力を維持することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
既存の管に新しい管を結合することが、十分な圧力を加えて管を共に圧入することを含む、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−509418(P2012−509418A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531194(P2011−531194)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/060099
【国際公開番号】WO2010/045102
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】