説明

地質試料採取装置および、これを用いた廃棄物の採取方法

【課題】 最終処分場や不法投棄現場の廃棄物層に対し、採取試料の変質防止、乱れの少ない試料の採取、および掘削効率の向上を可能にする地質試料採取装置を提供する。
【解決手段】 この地質試料採取装置は、ボーリングロッド6の下端に連結される外管と、この外管内に装着され、地質試料を採取する複数の内管7とを有する。上記の外管は、各内管7の外径より大きな内径D1を有して各内管7を回転可能に収納する内管収納部が下端から上端に向かう途中まで形成されたコアチューブ2と、コアチューブ2の上端をボーリングロッド6の下端に接続するためのカップリング3と、コアチューブ2の下端に取り付けられ、上記の内管収納部に複数の内管7を回転可能な状態で閉じ込めるメタルクラウン1と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中を掘削して地質調査のための試料を採取する地質試料採取装置に関する。特に、最終処分場や不法投棄現場の廃棄物層に適用する地質試料採取装置および、これを用いた廃棄物の採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地質調査を行う際は、ボーリングマシンを用い、ボーリングロッドの先端に地質試料採取装置を取り付け、地質試料採取装置により地盤を掘り進めて、地中から地質試料を採取している。
【0003】
従来の地質試料採取装置の多くは、ボーリングロッド先端に連結される円筒形の外管と、外管の内部にスイベル構造により支持された内管とから基本的になり、ボーリングロッドによって外管を回転させて、外管の先端に取り付けられたメタルクラウンの掘削刃により地盤を掘り進めることで、内管内に地質調査用のコア試料を採取する。このとき、スイベル構造により内管は外管に対して共回りしないため、内管内に乱れの少ないコア試料を採取することができる。さらに、掘削用流体を、外管と内管の間の隙間を通して先端から流出させつつ、掘削された孔と外管との間から地上に排出することにより、円滑な掘削作業を行えるようにしている。この外管と内管の間の隙間から流出させる掘削用流体による試料の乱れを防止するために、内管の先端を外管の先端よりも突出させている(特許文献1,2参照)。
【0004】
また、上記のような二重管式の地質試料採取装置の他には、内管に採取された地質試料の取り出しを容易にするために、内管内に試料採取管を着脱自在に収納した三重管式の装置も知られている。
【0005】
しかし、このような従来の多重管式の地質試料採取装置は、最終処分場や不法投棄現場の廃棄物層には適していなかった。
【0006】
二重管式・三重管式の地質試料採取装置は、内管と外管の間を掘削用流体が流れることを前提としているため、内管と外管の間にある程度の隙間があり、そこに廃棄物が詰まり、乱れの少ない試料の採取が困難になるからである。
【0007】
さらに、最終処分場や不法投棄現場で、掘削用流体を用いて掘削する場合、
1)廃棄物は空隙が多く、掘削用流体の循環が困難である
2)掘削用流体が廃棄物層に浸入することにより廃棄物層中の成分が洗い出される
3)掘削用流体が廃棄物層に浸入することにより保有水の水質が変わる
などの問題点があるからである。
【0008】
また、内管の先端を外管の先端よりも突出させた構造は掘削刃の付いたメタルクラウンよりも内管が飛び出しているため、掘削効率が悪かった。
【0009】
以上の理由から、最終処分場や不法投棄現場では、掘削用流体を用いない無水掘削によって地質試料の採取を行い、また、この時の地質試料採取装置は一重管式のものを使用している。
【0010】
図3は従来の一重管式の地質試料採取装置の断面図を示したものである。この図によれば、ボーリングロッド101の先端にコアチューブ102がコアチューブカップリング103により連結されている。コアチューブ102の先端には、コアチューブ102と同じ内径および外径のメタルクラウン104が取り付けられ、メタルクラウン104の先端周縁には複数の超硬合金掘削用チップ105が埋め込まれている。このような装置を用いて地質試料を採取するには、ボーリングロッド101によってコアチューブ102を回転させて、コアチューブ102の先端に取り付けられたメタルクラウン104の掘削用チップ105により地盤を掘り進めることで、コアチューブ102内に地質調査用のコア試料が採取される。
【特許文献1】特開平3−76990号公報
【特許文献2】特開平5−18178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上述のような従来の一重管式の地質試料採取装置は、コアチューブ内に採取されるコア試料が掘削時にコアチューブと共に供回りを起こし、コア試料が乱れるという問題がある。また、コア試料はコアチューブ内に直に採取されるため、試料を掻き出してコアチューブから取り出さねばならず、試料が乱れる。
【0012】
また、廃棄物は、生ゴミ、金属片、建設廃棄物、不燃ゴミ、ビニール、プラスチック、繊維状廃棄物などと多種に渡っているが、従来の地質試料採取装置では、掘削用チップが先端にのみ取り付けられていた。このため、1)絨毯など繊維状廃棄物がコアチューブに巻き付く、2)廃棄物層にプラスチックが多いと、コアチューブが空回転し掘削が進まない、3)金属片、コンクリートガラ等により掘削用チップが欠損し、掘削効率が極端に下がる、4)プラスチックやスポンジなど圧縮されている廃棄物が掘削孔にはみ出し、コアチューブが上下するたびに廃棄物が引きずり出されて掘削孔内を塞いでしまう、などの問題が生じ、掘削効率が悪かった。
【0013】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、最終処分場や不法投棄現場の廃棄物層に対し、採取試料の変質防止、乱れの少ない試料の採取、および掘削効率の向上を可能にする地質試料採取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明は、ボーリングロッドの下端に連結される外管と、該外管内に装着され、地質試料を採取する内管とを有する地質試料採取装置である。そして、上記の外管は、内管の外径より大きな内径を有して内管を回転可能に収納する内管収納部が下端から上端に向かう途中まで形成されたコアチューブと、このコアチューブの上端をボーリングロッドの下端に接続するためのカップリングと、コアチューブの下端に取り付けられ、上記の内管収納部に内管を回転可能な状態で閉じ込めるメタルクラウンと、を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記のような地質試料採取装置をボーリングマシンのボーリングロッドの下端に取り付け、最終処分場または不法投棄現場の廃棄物層に対し、掘削用流体を使用せず、地質試料採取装置で掘削し、上記の地質試料採取装置の内管に廃棄物を採取する廃棄物の採取方法を提供する。
【0016】
上記の地質試料採取装置によれば、各内管がメタルクラウンおよびコアチューブ内にこれらとは独立して回転するように収納されるため、試料の採取時に、各内管はコアチューブおよびメタルクラウンと供回りを起こさない。このため、各内管内に、乱れの少ない試料が採取できる。
【0017】
このような地質試料採取装置において、上記の内管収納部には内管が複数収納されていることが好ましい。このように内管が複数個に分割されていると、各内管の長さが短くなり、掘削時に内管に試料が収納されるときの抵抗が小さくなって試料の乱れを少なくすることができる。
【0018】
さらに、上記のメタルクラウンがコアチューブと同じ円筒形状であり、メタルクラウンの、コアチューブの下端と接続される部分以外の内径が、内管の内径と同じであることが好ましい。このような構成にすると、掘削時にメタルクラウンを通った試料が内管内に抵抗無く収納される。
【0019】
さらに、上記のメタルクラウンの先端面と先端外周部、並びに上記のコアチューブの先端側外周部と後端側外周部とこの中間の外周部とに、複数の超硬合金製掘削用チップが設けられていることが好ましい。このような構成にすると、メタルクラウン先端のみにしか掘削用チップが無い従来装置に比べて、掘削効率が向上する。特に、本装置を最終処分場や不法投棄現場に適用した場合、廃棄物が切断されやすくなる。そして、掘削用チップの量が多いため、多少の掘削用チップの欠損時にも掘削能力が維持できる。
【0020】
また、本発明の廃棄物採取方法によれば、掘削時に掘削用流体を使用しないので、廃棄物の成分および保有水水質を変化させることなく廃棄物を採取することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、最終処分場や不法投棄現場の廃棄物層に対し、採取試料の変質防止、乱れの少ない試料の採取、および掘削効率の向上が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0023】
図1は本発明の実施形態による地質試料採取装置を回転軸に沿って切断した断面図である。
【0024】
本実施形態の地質試料採取装置は二重管式であり、その外管は、図1に示すようにメタルクラウン1、コアチューブ2、およびコアチューブカップリング3の3つにより構成される。
【0025】
メタルクラウン1は地質試料採取装置の先頭に位置して廃棄物層を掘削するためのもので、コアチューブ2にねじ合わせることで接続されている。円筒状のメタルクラウン1の先端の周縁に複数の超硬合金掘削用チップ4が一定間隔で埋め込まれている。さらに、切削効率を上げるために、メタルクラウン1の先端面と先端外周部に、複数の超硬合金製掘削用チップ5が周方向に一定間隔で溶接されている。
【0026】
コアチューブ2はメタルクラウン1と最外径を同じにした金属製の円筒管であり、コアチューブカップリング3にねじ合わせることで接続されている。また、切削効率を上げるために、コアチューブ2の先端側外周部と後端側外周部とこの中間の外周部とに、複数の超硬合金製掘削用チップ5が周方向に一定間隔で溶接されている。メタルクラウン1やコアチューブ2に溶接する超硬合金製掘削用チップ5の大きさ、或いは溶接間隔は、埋立物の内容により変更する。
【0027】
コアチューブカップリング3はコアチューブ2と最外径を同じにしたもので、ボーリングマシン(図2参照)によって回転駆動されるボーリングロッド6の先端に連結されている。また、コアチューブカップリング3によって、コアチューブ2とボーリングロッド6は互いの中心軸が一致するよう取り付けられている。
【0028】
コアチューブ2の内部の、メタルクラウン1側の端部からコアチューブカップリング3側に向かう途中までに、掘削した廃棄物を収納する円筒状の内管7がコアチューブ2の中心軸に沿って複数個収納されている。各内管7は透明な材質で出来ていてもよい。また、本例では図1のように3個の内管7を収納しているが、内管7の個数および長さは自由に変えることができる。
【0029】
コアチューブ2の、複数個の内管7を収納する部分(以下、内管収納部と呼ぶ)の内径D1は、各内管7の外径より若干大きくなっている。このため、各内管7が、コアチューブ2とは独立して中心軸回りに回転可能である。また、コアチューブ2の、内管収納部以外の内径(コアチューブカップリング3側の内径)D2は、内管7の外径より小さく、かつ内管7の内径より若干大きくなっている。この内径D2の部分により、廃棄物試料を採取する際に内管7がコアチューブカップリング3側にずれないようになっている。
【0030】
メタルクラウン1の内径は、先端からコアチューブ2に向かって2段階に変化している。メタルクラウン1の先端側の内径D3は内管7の内径D4と同じ寸法である。これは、メタルクラウン1で掘削された廃棄物試料を抵抗無く内管7の中に収納するためである。一方、メタルクラウン1の、コアチューブ2と接続される部分の内径は、内管7の外径より若干大きくなっている。このため、内管7が、メタルクラウン1とは独立して中心軸回りに回転可能である。また、メタルクラウン1の内径D3の部分により、コアチューブ2内に複数の内管7が閉じ込められた状態になっている。
【0031】
次に、本例の地質試料採取装置の使用方法とその効果について説明する。図2はこの地質試料採取装置が取り付けられたボーリングマシンによる掘削の様子を示した図である。
【0032】
最終処分場や不法投棄現場などの廃棄物層において、図2に示すように、ボーリングロッド6がロープなどで吊り下げられて、ボーリングマシン8に地面に垂直に立った状態で装着される。このボーリングロッド6の先端には、コアチューブ2がコアチューブカップリング3によって連結されている。
【0033】
ボーリングマシン8によりボーリングロッド6が回転駆動されつつ、廃棄物層の下方へ降下させられる。この時、掘削用流体は使用しない。ボーリングロッド6の回転運動は、それに接続されたコアチューブカップリング3を介して、コアチューブ2およびメタルクラウン1に伝達される。メタルクラウン1およびコアチューブ2が回転するため、廃棄物が、メタルクラウン1およびコアチューブ2に付けられた超硬合金掘削用チップ4,5により切断される。超硬合金掘削用チップ4,5により切断された廃棄物は、ボーリングロッド6の降下に伴い、メタルクラウン1の中を通って、コアチューブ2内の各内管7に採取される。このとき、メタルクラウン1の先端部と内管7との内径が同じであるので、メタルクラウン1を通った廃棄物が抵抗無く内管7に収納される。
【0034】
また、各内管7はメタルクラウン1およびコアチューブ2内にこれらとは独立して回転するように収納されているため、上記のような廃棄物の採取時に、コアチューブ2とメタルクラウン1の回転は各内管7に伝わらない。つまり、各内管7はコアチューブ2およびメタルクラウン1と供回りを起こさない。このため、各内管7内に、乱れの少ない試料が採取できる。さらに、内管7が複数個に分割されているので、各内管の長さが短くなり、掘削時に内管7に試料が収納されるときの抵抗が小さくなって試料の乱れを少なくすることができる。
【0035】
複数の内管7内に廃棄物が一定量採取された後、調査員は、採取した廃棄物の回収を行う。回収は、メタルクラウン1をコアチューブ2から取り外し、各内管7をコアチューブ2から取り出して行う。廃棄物試料は内管7ごと取り出せるので、試料取り出し時の試料の乱れが少なくなり、また、試料を取り出す時間が短くて済む。さらに、掘削時に掘削用流体を使用しないので、廃棄物の成分および保有水水質を変化させることなく廃棄物を採取することができる。
【0036】
回収後、調査員は、廃棄物が収納された内管7の替わりに、新しい内管7をコアチューブ2に収納し、メタルクラウン1をコアチューブ2に取り付ける。
【0037】
コアチューブ2から取り出された内管7は、収納箱に収められる。あるいは、内管7は上下の開口が蓋で密封された状態で、分析室へ運搬される。このように必要に応じて、採取後の内管6の上下に蓋をすることにより、現場から分析室まで採取時の環境を保つことができる。また、内管7を透明管にした場合は、廃棄物試料に触れないで観察が可能となる。
【0038】
また、本例の地質試料採取装置では、メタルクラウン1の先端周縁に埋設された掘削用チップ4の他に、メタルクラウン1の先端面と先端外周部、並びにコアチューブ2の先端側外周部と後端側外周部とこの中間の外周部とに複数の掘削用チップ5を設けているので、廃棄物が切断されやすくなる。この結果、メタルクラウン先端のみにしか掘削用チップが無い従来装置に比べて、掘削効率が向上する。また、内管7がメタルクラウン1の先端より飛び出ない構造であるので、効率の良い掘削が可能である。そして、掘削用チップの量が増えたため、多少の掘削用チップの欠損時にも掘削能力が維持できる。
【0039】
以上本発明の実施の形態を詳細に説明したが、本発明の具体的な構成はこの実施の形態に限定されるものではない。例えば、本発明の地質試料採取装置は最終処分場や不法投棄現場の廃棄物層に対して最適であるが、このような廃棄物層に限られず、土中に適用しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態による地質試料採取装置の回転軸に沿った断面図である。
【図2】図1の地質試料採取装置が取り付けられたボーリングマシンによる掘削の様子を示した図である。
【図3】従来の地質試料採取装置(一重管式)の構成例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 メタルクラウン
2 コアチューブ
3 コアチューブカップリング
4,5 掘削用チップ
6 ボーリングロッド
7 内管
8 ボーリングマシン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボーリングロッドの下端に連結される外管と、該外管内に装着され、地質試料を採取する内管とを有する地質試料採取装置において、
前記外管は、
前記内管の外径より大きな内径を有して前記内管を回転可能に収納する内管収納部が下端から上端に向かう途中まで形成されたコアチューブと、
前記コアチューブの上端を前記ボーリングロッドの下端に接続するためのカップリングと、
前記コアチューブの下端に取り付けられ、前記内管収納部に前記内管を回転可能な状態で閉じ込めるメタルクラウンと、を有することを特徴とする地質試料採取装置。
【請求項2】
前記内管収納部には前記内管が前記コアチューブの中心軸に沿って複数収納されている、請求項1に記載の地質試料採取装置。
【請求項3】
前記メタルクラウンが前記コアチューブと同じ円筒形状であり、前記メタルクラウンの、前記コアチューブの下端と接続される部分以外の内径が、前記内管の内径と同じである、請求項1又は2に記載の地質試料採取装置。
【請求項4】
前記メタルクラウンの先端面と先端外周部、並びに前記コアチューブの先端側外周部と後端側外周部とこの中間の外周部とに、複数の超硬合金製掘削用チップが設けられている、請求項1から3のいずれか1項に記載の地質試料採取装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の地質試料採取装置をボーリングマシンのボーリングロッドの下端に取り付け、最終処分場または不法投棄現場の廃棄物層に対し、掘削用流体を使用せず、前記地質試料採取装置で掘削し、前記地質試料採取装置の前記内管に廃棄物を採取する、廃棄物の採取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−63909(P2007−63909A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253532(P2005−253532)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(598176237)株式会社テクノアース (1)
【Fターム(参考)】