地震計、地震計ユニット、地震データ収集装置並びに地震計の設置方法及び地震情報の補正方法
【課題】 加速度が検出される水平方向2成分X,Yを、設置現場にて容易に南北方向・東西方向に一致させることができ、あるいは、設置時または設置後に方位がずれたとしても、検出された水平方向2成分X,Yを南北方向・東西方向に一致させる補正情報を発信することができ、あるいは補正情報に基づいて加速度を補正できる地震計、地震計ユニット、地震データ収集装置並びに地震計の設置方法及び地震情報の補正方法を提供すること。
【解決手段】 地震計10−1は、二次元面内にて直交するX,Y軸に沿った方向の加速度をそれぞれ検出するX軸加速度センサ40及びY軸加速度センサ42と、Y軸と一致する方向またはY軸との交差角が既知である方向を第1の方向とした時、第1の方向に感度方向が設定された少なくとも一つの地磁気センサ52とを有する。
【解決手段】 地震計10−1は、二次元面内にて直交するX,Y軸に沿った方向の加速度をそれぞれ検出するX軸加速度センサ40及びY軸加速度センサ42と、Y軸と一致する方向またはY軸との交差角が既知である方向を第1の方向とした時、第1の方向に感度方向が設定された少なくとも一つの地磁気センサ52とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震計、地震計ユニット、地震データ収集装置並びに地震計の設置方法及び地震情報の補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震計は二次元面内の直交する水平方向2成分X,Yおよび垂直成分Zを検出することが知られている(特許文献1,2)。
【0003】
特に、特許文献1では、検出される水平方向2成分X,Yが、南北方向の加速度成分と及び東西方向の加速度成分であることに言及しているが、地震計をどのように設置するかについては無言である。
【0004】
地震計の設置に関しては、例えば特許文献3,4に開示されているが、地震計の設置方位については無言である。
【0005】
一方、方位検知として、地磁気を各種の磁気センサを用いて検知することも知られている(特許文献5−7)。これらは、ナビゲーションシステムや携帯電話機や腕時計のGPS機能に用途開発されている。
【0006】
また、磁気センサが搭載された携帯端末を情報源として、各地の地磁気情報を、ネットワークを介して収集し、その情報をもとに地震予知するシステムも提案されている(特許文献8)。しかし、この発明では、不特定多数の携帯端末が東西南北を向く確率は常に等しいと仮定して、各携帯端末の方位を無視している。
【特許文献1】特許第3307840号公報
【特許文献2】特開平8−285952号公報
【特許文献3】特開2001−242259号公報
【特許文献4】特開2001−318161号公報
【特許文献5】特開2005−221383号公報
【特許文献6】特許第2932079号公報
【特許文献7】特許第3318762号公報
【特許文献8】特開2003−215259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、加速度が検出される水平方向2成分X,Yを、設置現場にて容易に南北方向・東西方向に一致させることができ、あるいは、設置時または設置後に方位がずれたとしても、検出された水平方向2成分X,Yを南北方向・東西方向に一致させる補正情報を発信することができ、あるいはその補正情報に基づいて加速度を補正することができる地震計、地震計ユニット、地震データ収集装置並びに地震計の設置方法及び地震情報の補正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る地震計は、二次元面内にて直交するX,Y軸に沿った方向の加速度を検出する加速度センサと、前記Y軸と一致する方向または前記Y軸との交差角が既知である方向を第1の方向とした時、前記第1の方向に感度方向が設定された少なくとも一つの地磁気センサと、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る地震計では、X,Y軸の加速度を検出する加速度センサに加えて、少なくとも一つの地磁気センサが搭載されている。少なくとも一つの地磁気センサは、Y軸と一致する方向またはY軸との交差角が既知である方向を第1の方向とした時、第1の方向に感度方向が設定されているので、加速度センサからのX軸またはY軸の加速度が、実際にはどの方向の加速度であるかを示す方位情報として利用することができる。
【0010】
少なくとも一つの地磁気センサの出力により、地震計の設置時にY軸の向く方向を知得して地震計の設置方向を定めることができる。さらには、Y軸が当初予期した方向(例えば北方向)と設置時または設置後にずれたとしても、少なくとも一つの地磁気センサの出力により、検出されたX,Y軸加速度から、予期した方向の加速成分を算出することができる。
【0011】
本発明の一態様では、前記加速度センサは、一つのセンサによりX軸及びY軸方向の加速度を検出するものの他、X軸加速度センサ及びY軸加速度センサを含むものであっても良い。
【0012】
本発明の一態様では、前記少なくとも一つの地磁気センサの出力の絶対値は、前記第1の方向が南北方向に一致する時に最大となり、前記第1の方向が東西方向に一致する時に最小となる特性を有することができる。地磁気センサが一つでも、北軸を中心とする180゜の範囲では、地磁気センサの出力により地震計の設置方位を決定できる。
【0013】
より好ましくは、前記少なくとも一つの地磁気センサは、前記第1の方向に感度方向が設定されたY軸地磁気センサと、前記第1の方向と直交する第2の方向に感度方向が設定されたX軸地磁気センサと、を含むことができる。感度方向が90゜ずれた2つの地磁気センサからの2出力を用いれば、360゜の範囲で地震計の設置方位を一義的に決定できる。
【0014】
この際、前記第1の方向が南北方向に一致し、かつ、前記第2の方向が東西方向に一致する時に、前記Y軸地磁気センサの出力の絶対値は最大となり、前記X軸地磁気センサの出力の絶対値は最小となり、前記第1の方向が東西方向に一致し、かつ、前記第2の方向が南北方向に一致する時に、前記Y軸地磁気センサの出力の絶対値は最小となり、前記X軸地磁気センサの出力の絶対値は最大となるように出力調整すればよい。
【0015】
360゜の範囲で地震計の設置方位を一義的に決定するために、前記Y軸地磁気センサの出力は、前記第1の方向が前記東西方向を境に北向きである時に第1の符号となり、前記第1の方向が前記東西方向を境に南向きである時に前記第1の符号とは逆の第2の符号となり、前記X軸地磁気センサの出力は、前記第2の方向が前記南北方向を境に東向きである時に第3の符号となり、前記第2の方向が前記南北方向を境に西向きである時に前記第3の符号とは逆の第4の符号となるように出力定義すればよい。こうすると、2つの地磁気センサからの絶対値と符号とにより、方位が一義的に定まる。
【0016】
本発明の一態様では、前記加速度センサは、前記二次元面に直交するZ軸に沿った方向の加速度を検出し、前記X,Y,Z軸の加速度をそれぞれ増幅する第1の増幅器と、前記少なくとも一つの地磁気センサの出力を増幅する第2の増幅器と、前記第1,第2の増幅器からのアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換器と、をさらに設けることができる。
【0017】
こうすると、X,Y軸加速度による横振動に加えて、Z軸加速度による縦振動も検出でき、それらの各加速度を高精度で遠隔伝送可能なデジタル信号として送出できる。
【0018】
本発明の他の態様に係る地震計ユニットは、少なくとも一つの上述の地震計と、時刻情報をデジタル出力する計時手段と、前記少なくとも一つの地震計からの前記X,Y,Z軸方向の加速度情報と、前記少なくとも一つの地震計からの地磁気情報と、前記計時手段からの時刻情報とが入力され、前記加速度情報、地磁気情報及び時刻情報を所与の通信フォーマットに編集して送信する通信ブロックと、を有することを特徴とする。
【0019】
こうすると、通信ブロックから送信される通信フォーマットには、少なくとも一つの地震計からのX,Y,Z軸方向の加速度情報と、少なくとも一つの地震計からの地磁気情報と、計時手段からの時刻情報とが含んで送信することができる。このように、加速度情報と共に地磁気情報を送信することで、Y軸が当初予期した方向(例えば北方向)と設置時または設置後にずれたとしても、少なくとも一つの地磁気センサの出力により、検出されたX,Y軸加速度から、予期した方向の加速成分を算出することができる。
【0020】
本発明の他の態様では、前記通信ブロックは、前記前記X,Y,Z軸の加速度各々についてデジタル値0を演算する演算部を含み、前記演算部は、前記X,Y,Z軸の加速度各々について、連続して出力される複数の加速度の移動平均値をデジタル0値に設定することができる。
【0021】
X,Y,Z軸加速度は、温度ドリフトによって基準レベルが変化することがあるが、基準レベルの正負側に振幅を有する加速度をデジタル化した情報(符号付デジタル値)の移動平均値を求めれば、所定の時間間隔毎に基準レベルを求めることができる。よって、その移動平均値をデジタル0値に置き換えれば、温度ドリフト補正が可能となる。
【0022】
本発明の他の態様では、前記演算部は、N番目の前記X,Y,Z軸の加速度各々について、対応する軸の(N−1)番目以前の複数の加速度の移動平均値をデジタル値0に設定することができる。つまり、過去の所定数の加速度の移動平均値を今回の加速度のデジタル0値に設定して、温度ドリフト補正を実現することができる。
【0023】
本発明の他の態様では、前記通信ブロックは、前記通信フォーマットの一単位として、オーバーヘッドフレームと少なくとも一つのイベントフレームとを含み、前記オーバーヘッドフレームは、前記地震計を特定するアドレス情報、前記計時手段からの基準時刻及び前記地磁気情報を含み、前記少なくとも一つのイベントフレームは、前記基準時刻に対応する前記X,Y,Z軸加速度情報を含むことができる。加えて、前記少なくとも一つのイベントフレームのうちの他の一つは、前記基準時刻に対する相対時刻及び前記相対時刻に対応する前記X,Y,Z軸加速度情報を含むことができる。
【0024】
本発明のさらに他の態様は、上述した複数の地震計ユニットと回線を介して接続された地震データ収集装置であって、前記複数の地震計ユニットからの情報がそれぞれ入力される受信部と、前記受信部にて受信された情報を記憶する記憶部と、を有することを特徴とする。
【0025】
こうして、遠隔地に設定された複数の地震計ユニットからの地震情報を、地震データ収集装置にて一括管理することができる。
【0026】
本発明のさらに他の態様では、前記記憶部に記憶部に記憶された前記地磁気情報に基づいて、前記X,Y軸方向の加速度情報を補正する補正部をさらに有することができる。これにより、地震計が設置時または設置後に予期した方向からずれたとしても、正しい加速度情報に補正することができる。
【0027】
本発明のさらに他の発明に係る地震計の設置方法は、少なくとも一つの地磁気センサを含む地震計を前記二次元面内にて前記二次元面に直交するZ軸を中心に回転させる工程と、前記地震計を回転した時に得られる前記少なくとも一つの地磁気センサの出力の絶対値が最大となる位置を基準として、前記地震計を設置する工程と、を有することを特徴とする。この場合、北向きを中心とする180゜の範囲で、地震計の向きを一義的に検出して、その設置向きを設定することができる。
【0028】
本発明のさらに他の発明に係る地震計の設置方法は、X軸及びY軸地磁気センサを含む地震計を前記二次元面内にて前記二次元面に直交するZ軸を中心に回転させる工程と、前記地震計を回転した時に得られる前記少なくとも一つの地磁気センサの出力の絶対値が最大でかつ、該出力の符号が第1の符号となる位置を基準として、前記地震計を設置する工程と、を有することを特徴とする。この場合、360゜の全範囲で、地震計の向きを一義的に検出して、その設置向きを設定することができる。
【0029】
本発明のさらに他の発明に係る地震情報の補正方法は、地震計に設置された加速度センサにより、二次元面内にて直交するX,Y軸に沿った方向の加速度をそれぞれ検出する工程と、前記Y軸と一致する方向または前記Y軸との交差角が既知である方向を第1の方向とした時、前記第1の方向に感度方向が設定されて前記地震計に設置された少なくとも一つの地磁気センサから地磁気情報を検出する工程と、前記地磁気情報に基づいて、前記第1の方向と北を示す方向とのズレ方位角θを求める工程と、前記ズレ方位角θに基づいて、前記X,Y軸に沿った方向の加速度を補正する工程と、を有することを特徴とする。
【0030】
本発明に係る地震情報の補正方法によれば、X軸及びY軸加速度を、Y軸と一致する方向または前記Y軸との交差角が既知である方向に感度を有する少なくとも一つの地磁気センサからの方位情報に基づいて、予期した方向の加速度に補正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0032】
1.遠隔震動計測システム
図1は、本発明の実施形態に係る遠隔震動計測システムの概略図である。図1において、私設または公衆の回線、好適には例えばインターネット1には、少なくとも一つ、例えばN(Nは2以上の整数)個の地震計ユニット100−1〜100−Nと、地震データ収集装置200と、が接続されている。
【0033】
N個の地震計ユニット100−1〜100−Nの各々は、少なくとも一つ、例えばn(nは2以上の整数)個の地震計10−1〜10−nと、一つの計時ブロック20と、一つの通信ブロック30と、を含んでいる。
【0034】
n個の地震計10−1〜10−nの各々は、例えば図2に示す地震計10−1と同一の構成を有する。図2に示す地震計10−1は、X軸加速度センサ40、Y軸加速度センサ42、Z軸加速度センサ44及び第1の増幅器46を含んでいる。第1の増幅器46は、X,Y,Z軸の加速度信号をそれぞれ増幅する3系統の増幅経路を含んでいる。地震計10−1はさらに、X軸地磁気センサ50、Y軸地磁気センサ52及び第2の増幅器54を含んでいる。第2の増幅器54は、X,Y軸の地磁気信号をそれぞれ増幅する2系統の増幅経路を含んでいる。また、地震計10−1には、第1,第2の増幅器46,54からの出力を、例えば10mS毎に時分割でアナログ−デジタル変換して、例えば符合付きgal(重力加速度)値に変換するアナログ−デジタル(A/D)変換器60が設けられている。このA/D変換器60と計時ブロック20とが、通信ブロック30に接続されている。
【0035】
計時ブロック20としては、高精度のクロックジェネレータ(原子時計)、電波時計、あるいはGPS受信機から再生される高精度のClock再生信号等が利用される。いずれの場合でも、計時ブロック20からは、予め定められたフォーマットによる年差の小さいデジタル信号の時刻情報が出力される。
【0036】
通信ブロック30は、A/D変換器60からのデジタル信号を、通信ブロック30と接続される回線1に適合するフォーマットに変換して送出するもので、本実施形態ではインターネット1に適合するTCP/IP(Transmission Control Protocol / Internet Protocol)の通信フォーマットに変換して送出している。
【0037】
通信ブロック30は、MPU(Micro Processing Unit)と、メモリ、システムインターフェース等の周辺装置から構成されている。通信ブロック30は、データ送信機能だけでなく、地震データ収集装置200側からのリクエストによりファームウェアの更新が可能である。
【0038】
図1において、インターネット1に接続された地震データ収集装置200は、例えば、インターネット1に接続された地震データ収集サーバ210と、この地震データ収集サーバ210と回線例えばLAN(Local Area Network)220を介して接続された少なくとも一つの端末装置230を有している。
【0039】
地震データ収集サーバ210は、インターネット1を介して受信された加速度情報、方位情報、計時情報を所定のフォーマットに変換して記憶する。端末装置230は例えばパーソナルコンピュータであり、地震データ収集サーバ210に蓄えられた情報を、LAN220を介して受信し、データ処理して出力(表示出力または印刷出力)することができる。また、端末装置230の操作等によって、通信ブロック30のファームウェア等を更新可能である。
【0040】
このように、本実施形態では、地震計ユニット100−1〜100−Nとは離れた位置に設置された地震データ収集装置200にて、地震データを収集して観測することができる。また、端末装置230側から遠隔地にある通信ブロック30に対してファームウェア等の更新の遠隔操作が可能である。なお、地震データ収集装置200の詳細について後述する。
【0041】
2.センサブロック
図3は、図1に示す地震計10−1のうち、5つのセンサ40〜44、50〜52が搭載されたセンサブロック70を示している。このセンサブロック70は、水平基盤72と垂直基盤74とを有する。水平基盤72上には、X軸加速度センサ40、Y軸加速度センサ42、X軸地磁気センサ50及びY軸地磁気センサ52が設けられている。垂直基盤74には、Z軸加速度センサ44が設けられている。この各センサを搭載したセンサブロック70は、地中、水底または人工物等の地震設置部位に設置される。なお、第1,第2の増幅器46,54及びA/D変換器60は、必ずしもセンサブロック70上に設置する必要はなく、センサブロック70上のセンサと配線されていれば良い。
【0042】
また、図3では、X軸加速度センサ40、Y軸加速度センサ42、Z軸加速度センサ44を別個のセンサにて構成したが、X,Y,Z軸の加速度をそれぞれ検出する一体型加速度センサとしてもよく、こうすることでセンサブロック70をコンパクト化することができる。
【0043】
水平基盤72は、二次元面内にて直交するX,Y軸が定義されている。また、垂直基盤74は、水平基盤72の二次元面と直交するZ軸と平行に、水平基盤72と一体成形されるか、あるいは水平基盤72に固定されている。X軸加速度センサ40は、X軸に沿った方向の加速度を検出するように、水平基盤72上に設置される。Y軸加速度センサ42は、Y軸に沿った方向の加速度を検出するように、水平基盤72上に設置される。Z軸加速度センサ44は、Z軸に沿った方向の加速度を検出するように、垂直基盤74上に配置されている。
【0044】
この種の加速度センサとしては、静電容量式、ピエゾ抵抗式、あるいはシリコンの結晶異方性エッチングを応用した半導体加速度センサや、歪ゲージ式又は圧電式の加速度センサ、あるいは磁気抵抗効果型加速度センサ等を挙げることができる。特に、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を用いて製造される半導体加速度センサは、X,Y,Z軸との一致性が高い加工精度で担保できる点で好ましい。
【0045】
水平基盤72上にはさらに、X軸及びY軸地磁気センサ50,52が設けられている。このX軸及びY軸地磁気センサ50,52は、感度方向が互いに90゜だけずれている。Y軸地磁気センサ52は、例えばY軸と一致する方向(第1の方向)に感度方向が設定されている。ただし、Y軸地磁気センサ50の感度方向は、Y軸と一致するものに代えて、Y軸との交差角が既知である方向(この場合は、これが第1の方向となる)であってもよい。X軸地磁気センサ52は、第1の方向と直交する第2の方向に感度方向が設定されている。Y軸と同様に、X軸地磁気センサ50の感度方向は、X軸と一致するものに代えて、X軸との交差角が既知である方向であってもよい。この場合でも、X軸及びY軸地磁気センサ50,52は、感度方向が互いに90゜だけずれていることが条件となる。
【0046】
この種の地磁気センサとしては、巨大磁気抵抗効果素子(GMR)、磁気抵抗効果素子(MR素子)、磁気インピーダンス素子(MI素子)、フラックスゲート素子、半導体ホール効果センサ、トンネル型磁気抵抗効果素子(TMR素子)等を挙げることができる。
【0047】
3.地震計の設置方法
図3に示すセンサブロック70のうち、X軸地磁気センサ50及びY軸地磁気センサ52を用いた方位検出について、図4〜図6も参照して説明する。
【0048】
ここで、図3に示すセンサブロック70を設置場所に設置するには、図1に示す地震計10−1等に内蔵されたユーザーインターフェースを介して、センサブロック70からのX,Y軸の地磁気情報をユーザ装置にて観測できる。
【0049】
図4は、センサブロック70の方位検出を行なう概念図を示している。図4に示すように、センサブロック70のY軸が北→東→南→西の順位方向に向くように、センサブロック70を360°回転させる。このときの、X軸及びY軸地磁気センサ50,52の出力は図5の通り定義すると、X軸及びY軸地磁気センサ50,52の出力は図6に示す通りとなる。
【0050】
図5及び図6に示すように、第1の方向であるY軸が南北方向に一致し、かつ、第2の方向であるX軸が東西方向に一致する時に、Y軸地磁気センサ52の出力の絶対値は最大となり、X軸地磁気センサ50の出力の絶対値は最小となる。逆に、Y軸である第1の方向が東西方向に一致し、かつ、第2の方向であるX軸が南北方向に一致する時に、Y軸地磁気センサ52の出力の絶対値は最小となり、X軸地磁気センサ50の出力の絶対値は最大となる。上述したX軸及びY軸地磁気センサ50,52の感度方向とは、図5の定義のように、ある特定方向に一致させた時にセンサ出力の絶対値が最大となる方向である。この感度方向とは、X軸及びY軸地磁気センサ50,52の感度に幅がある場合には、最大感度方向を意味する。
【0051】
さらに、Y軸地磁気センサ52の出力は、第1の方向であるY軸が東西方向を境に北向きである時にプラス(広義には第1の符号)となり、第1の方向であるY軸が東西方向を境に南向きである時にマイナス(広義には第1の符号とは逆の第2の符号)となる。一方、X軸地磁気センサ50の出力は、第2の方向であるX軸が南北方向を境に東向きである時にプラス(後期には第3の符号)となり、第2の方向であるX軸が南北方向を境に西向きである時にマイナス(広義には第3の符号とは逆の第4の符号)となる。
【0052】
つまり、図6に示すX軸地磁気センサ50の出力はサインカーブSIN(X)となり、Y軸地磁気センサ52の出力はコサインカーブCOS(Y)となる。
【0053】
図6から明らかなように、ユーザーインターフェースを介してX軸及Y軸地磁気センサ50,52の出力値が得られれば、センサブロック70が現在どの方位を向いているかが分かる。例えば、図6において、X軸及Y軸地磁気センサ50,52の出力値A,Bが得られれば、Y軸に対するズレ方位角θが一義的に求まる。
【0054】
換言すれば、次の方法により、センサブロック70の方位を正しく設定できる。まず、センサブロック70を最大360°の範囲に回転させながら、ユーザーインターフェースを介してX軸及Y軸地磁気センサ50,52の出力値A,Bをモニタする。X軸地磁気センサ50の出力値Aが+1であり、Y軸地磁気センサ52の出力値Bが0であれば、Y軸は真北を示していることになる。従って、出力値A=+1及び出力値B=0の位置でセンサブロック70の回転を停止すれば、Y軸が真北を向いた状態でセンサブロック70を設置することができる。なお、地震計10−1の最小単位をセンサブロック70とすれば、上述の方法で地震計10−1を設置できる。つまり、図2に示す計時ブロック20、第1,第2の増幅器46,54、A/D変換器60は、必ずしもセンサブロック70と同じ位置に設置する必要はない。
【0055】
変形例として、X軸及びY軸地磁気センサ50,52のいずれか一方を省略しても良い。例えばX軸地磁気センサ50を省略した場合した場合、図6に示すCOS(Y)の出力値Bのみが求められる。この場合でも、Y軸を中心に±90°未満、トータル180°未満の範囲であれば、出力値Bに対応するズレ方位角θは一義的に求まる。Y軸地磁気センサ52を省略することで得られるSIN(X)の出力値Aの場合も同様である。従って、この場合には、センサブロック70のY軸が、東西方向を境に北側を向くようにして180°未満の範囲でセンサブロック70を回転させればよい。上記回転範囲にて、出力A=0または出力値B=+1での停止位置にて、センサブロック70のY軸は真北を向くことになる。
【0056】
4.方位検出方法
次に、X軸及Y軸地磁気センサ50,52の出力値A,Bを用いた方位検出方法について、図7を参照して説明する。
【0057】
図7は、図6に示すX軸及Y軸地磁気センサ50,52の出力値A,Bが得られた時の、Y軸に対するズレ方位角θの演算方法の一例を図示したものである。図7において、X軸及Y軸地磁気センサ50,52の出力値A,Bは、X軸及びY軸のベクトル成分と理解できる。出力値A,Bの合成ベクトルrは、r=(A2+B2)1/2…式(1)であり、その合成ベクトルrがY軸となす角(ズレ方位角)θは、θ=tan−1(A/B)…式(2)となる。
【0058】
図1に示す地震計10−1等から通信ブロック30、インターネット1を介して方位情報A,Bが地震データ収集装置200に収集できれば、地震データ収集サーバ210または端末装置230にて上述の式(1)(2)の演算を実行することで、センサブロック70のY軸が南北方向から角度θだけずれていることが分かる。
【0059】
以上のことから、センサブロック70のY軸が南北方向からずれて設置された場合でも、あるいは、センサブロック70の方位が設地後にずれた場合でも、上記式(1)(2)からそのズレ方位角θを演算できる。よって、この値θを用いて、後述する通り加速度方向の補正を行なうことができる。
【0060】
5.加速度データと方位との関連付け
X軸、Y軸加速度センサ40,42のX,Y軸が、それぞれ東向き,北向きと常に一致していれば、加速度データと方位とを関連付ける必要はない。しかし、上述した通り、センサブロック70のY軸が真北を向けて設置されるとは限らず、あるいはセンサブロック70の向きが設置後に変化することもある。
【0061】
本実施形態では、加速度情報と共に方位情報を検出できるので、センサブロック70のY軸が真北からずれたとしても、その加速度情報を方位情報と関連付けすることができる。
【0062】
図8は、図7に示すように、センサブロック70のY軸が北を示すN方向から角度θずれた場合を示している。この場合、センサブロック70のX軸は東を示すE方向から角度θずれている。X軸加速度センサ40より検出されたY方向の加速度をxとし、Y軸加速度センサ42より検出されたX方向の加速度をyとする。これらx,yは、N方向から角度θ、E方向から角度θ、それぞれずれた方向の加速度である。よって、これらx,yを北向き、東向きの加速度と仮定して計算すると、合成加速度の大きさやその加速度方向を誤ることになる。
【0063】
そこで、図8の通り、Y軸方向の加速度yからN方向の加速度YN=y×COSθを求め、同様に、X軸方向の加速度xからE方向の加速度XE=x×COSθを求めことができる。つまり、X軸加速度センサ50の出力x、Y軸加速度センサ52の出力yと、そのズレ方位角θとを関連付けて記憶しておけば、合成加速度の大きさやその加速度方向を常に正しく得ることができる。
【0064】
なお、上述した説明は、X軸またはY軸地磁気センサ50,52の感度方向が、X軸又はY軸と一致せずに、X軸またはY軸との交差角が既知である場合にも、その既知の角度に基づいて、図8に示す方法によって補正することができる。
【0065】
また、北を示すN方向に対するY軸のズレ方位角θは、必ずしも図7に示す演算によるものに限らず、図6に示す波形に基づいて、例えばX,Y軸地磁気センサ50,52の少なくとも一方の出力AまたはBから求めても良い。一例として、X,Y軸地磁気センサ50,52の少なくとも一方の出力AまたはBを入力とし、図6に示す対応するズレ方位角θを出力とするルックアップテーブルを用いることができる。
【0066】
6.通信ブロック
図2に示す通信ブロック30は、MPU及びその周辺装置の主たる機能として、通信フォーマット生成部31、送受信部32、ファームウェア記憶部33、温度ドリフト補正部34等を有している。通信フォーマット生成部31及び温度ドリフト補正部34の詳細は後述する。
【0067】
送受信部32は、インターネット1を介して地震データ収集装置200側と送受信を行なう。送受信部32には、A/D変換部60からのデータをフォーマット形式にて送信する送信部を含み、この送信部には、その開始制御と終了制御を行なう送信開始制御部32A及び送信終了制御部32Bが設けられている。送信開始制御部32Aは、X,Y,Z軸加速度が一定値以下である時はノイズ程度と判断するために「送信開始データ閾値」を設定し、X,Y,Z軸加速度が「送信開始データ閾値」以下である時は送信しない。送信終了制御部32Bには、揺れが収まったと判断するための「送信終了データ閾値」とその「送信データ継続時間」が設定されている。そして、送信終了制御部32Bは、送信開始後にX,Y,Z軸加速度が「送信終了データ閾値」を下回る検出状態が所与の「送信データ継続時間」を継続した時に、送信を終了制御する。なお、送受信部32は、送信データが存在しない状態が継続した場合でも、地震計10−1等が正常に動作していることを知らせるためのチェック用データ(地震データとしては無効)を定期的に送信することができる。
【0068】
また、通信ブロック30は、上述した通り、地震データ収集装置200側から、遠隔地にある通信ブロック30に対してファームウェア等の更新の遠隔操作が可能であり、送受信部32を介して受信されたファームウェアは、ファームウェア記憶部33に記憶される。地震データ収集サーバ210からのリクエストに従って、ファームウェア記憶部33の内容がアップデートされる。
【0069】
6.1.加速度センサ出力の温度ドリフト補正
通信ブロック30に設けられた温度ドリフト補正部34は、A/D変換部60からのX,Y,Z軸加速度に対して、温度ドリフト補正を実施する。温度ドリフトとは、図9に模式的に示すように、デジタル値の0に相当する基準アナログ値A1を境に正負に変動する加速度データは、経時的に、基準アナログ値がA1→A2→A3とシフトする現象が見られる。この要因が温度であり、この現象が温度ドリフトと呼ばれる。
【0070】
このような温度ドリフトが生ずると、基準アナログ値A1をデジタル値のゼロと設定し続けると、基準アナログ値A2,A3はデジタル値0よりも高い値になり、デジタル0値とはなり得ない。
【0071】
そこで、基準アナログ値A1,A2,A3が全てデジタル値のゼロになるための補正が必要である。この補正が、通信ブロック30内に設けられたMPUの演算機能によって行なわれる。
【0072】
図10は、温度ドリフト補正の概念図であり、例えばX軸加速度センサ40の出力を示している。上述した通り、X軸加速度センサ40の出力は、図2に示す第1の増幅器46にて増幅された後に、例えば10mS毎にサンプリングされてアナログ−デジタル変換される。図10に示すイベントN,N+1,N+2は、10mS毎に出力されるX軸加速度デジタルデータである。図示は省略するが、Y軸及びZ軸加速度も同様である。
【0073】
ここで、イベントNをデジタル値で表す基準となるデジタル値0は、イベントNの上流側の例えば500mS間、イベント数で50個のイベントN−1〜N−50のデータの移動平均により求める。イベントN−1〜N−50は、図9において基準値A1を境に正負に触れるデータのデジタル値であり、移動平均により基準値A1が求まる。この基準値A1を、イベントNのデジタル0値として用いる。
【0074】
イベントN+1についてはイベントN〜イベントN−49を用い、イベントN+2についてはイベントN+1〜N−48を用い、それぞれ例えば直前の50個のデータの移動平均により、デジタル0値を計算している。この結果、図9で示す基準値A1,A2,A3がそれぞれデジタル0値に補正され、温度ドリフトが補正される。
【0075】
6.2.通信ブロック30での通信フォーマット
上述した通り、通信ブロック30は、A/D変換器60からのデジタル信号を、インターネット1に適合するTCP/IPの通信フォーマットに変換して送出している。図11(A)(B)は、その通信フォーマットを模式的に示している。図11(A)(B)に示すように、通信ブロック30から送信される1パケットのデータは、大別して、オーバーヘッドフレーム300と、少なくとも一つのイベントフレーム310とを有する。
【0076】
オーバーヘッドフレーム300は、各地震計ユニット100−1〜100−Nの各地震計10−1〜10−n毎に固有のアドレスとして、例えばMACアドレスが付されている。オーバーヘッドフレーム300にはさらに、計時ブロック20からの出力に基づく基準時刻(年/月/日/時/分/秒)と、X軸及びY軸地磁気センサ50,52からの出力に基づく方位情報と、その他の機能情報(ファームデータの種別、暗号・圧縮のフラグなど)とが含まれている。つまり、オーバーヘッドフレーム300には、それに追従するイベントフレーム310の情報を識別しまたは補足する共通情報が含まれている。
【0077】
一つのイベントフレーム310には、最小イベント情報として、基準時刻に対応するX軸、Y軸及びZ軸加速度情報が含まれている。特に図11(B)のように複数例えばM(Mは2以上の整数)個のイベントフレーム310を有する場合には、最初のイベントの基準時刻に対する他のイベントの相対時刻情報(本実施形態では10mS×3の倍数)が含まれる。なお、図11Bに示すようにM個のイベントが含まれる場合でも、X軸及びY軸地磁気センサ50,52からの出力に基づく方位情報は、オーバーヘッドフレーム300に1計測分のみ設けられれば良い。方位が頻繁に変動することは極まれであるからである。
【0078】
図12は、図11(B)に示すように、一つのオーバーヘッドフレーム300に対して複数のイベントフレーム310を有する場合の送信を示している。通信ブロック30から地震データ収集サーバ210にオーバーヘッドフレーム300が送信されるのに続いて、イベントフレーム310として、イベント1、イベント2、…イベントMと順次送信される。以降、通信フォーマット単位でこれを繰り返すことになる。
【0079】
なお、通信ブロック30は、ファームウェアの設定により、データを圧縮して送信できるようになっている。
【0080】
7.地震データ収集装置
上述の通り、図1に示す地震データ収集装置200は、例えば、インターネット1に接続された地震データ収集サーバ210と、この地震データ収集サーバ210と回線例えばLAN220を介して接続された少なくとも一つの端末装置230を有している。
【0081】
地震データ収集サーバ210は、インターネット1を介して上述の通信フォーマット受信する受信部と、受信された通信フォーマット内の加速度情報、方位情報、計時情報等を所定のフォーマットに変換し、長期に亘ってデータを記憶する記憶部と、を少なくとも含んでいる。端末装置230は、地震データ収集サーバ210に蓄えられた情報を、例えばLAN220を介して受信し、データ処理して出力(表示出力または印刷出力)し、また、端末装置230の操作等によって、通信ブロック30のファームウェア等を更新可能である。
【0082】
図8に示した地磁気情報に基づきX,Y,Z軸加速度の大きさと方位の補正は、地震データ収集装置200の地震データ収集サーバ210または端末装置230にて実施される。
【0083】
端末装置230での出力モードの一つとして、地震計ユニット100−1〜100−N毎であって、かつ、かつ地震計10−1〜10−n毎に、X,Y,X軸加速度センサ40,42,44からの加速度の時間的変化を波形表示することができる。
【0084】
端末装置230での出力モードの他の一つとして、地震計ユニット100−1〜100−N毎であって、かつ地震計10−1〜10−n毎に、地図上にて地震の発生場所とその大きさ(例えば震度表示)を表すことができる。このときの震度は、地震データ収集装置200にて、重力加速度(gal)の大きさの他に、地震波の周期や継続時間が考慮して、公知の手法により計算される。
【0085】
端末装置230での出力モードの一つとして、地震計ユニット100−1〜100−N毎であって、かつ、かつ地震計10−1〜10−n毎に、X,Y,X軸加速度センサ40の稼働状況として、その最終通信時刻を表示することができる。
【0086】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の実施形態に係る遠隔震動計測システムの概略ブロック図である。
【図2】図1に示す地震計ユニットの一つを示すブロック図である。
【図3】地震計ユニットに含まれるセンサブロックの概略斜視図である。
【図4】センサブロックの設置方向を示す概略図である。
【図5】センサブロック中のX軸及びY軸地磁気センサの定義を示す概略説明図である。
【図6】センサブロックを設置した時のX軸及びY軸地磁気センサかせの出力を示す波形図である。
【図7】X軸及Y軸地磁気センサの出力値からY軸に対するズレ方位角θを演算する方法の一例を示す図である。
【図8】センサブロックのY軸が北を示すN方向から角度θずれた場合に、合成加速度の大きさやその加速度方向を演算する一例を示す図である。
【図9】加速度データの温度ドリフトを説明するための図である。
【図10】温度ドリフト補正の概念図である。
【図11】図11(A)(B)は、通信フォーマットを模式的に示す図である。
【図12】通信ブロックから地震データ収集サーバにデータを送信する状態を示す図である。
【符号の説明】
【0088】
1 公衆回線、10−1〜10−n 地震計、20 計時ブロック、30 通信ブロック、31 通信フォーマット生成部、32 送受信部、32A 送信開始制御部、32B 送信終了制御部、33 ファームウェア記憶部、34 温度ドリフト補正部、40 X軸加速度センサ、42 Y軸加速度センサ、44 Z軸加速度センサ、46 第1の増幅器、50 X軸加速度センサ、52 Y軸加速度センサ、54 第2の増幅器、60 A/D変換器、70 センサブロック、72 水平基盤、74 垂直基盤、100−1〜100−N センサユニット、200 地震データ収集装置、210 地震データ収集サーバ、220 LAN、230 端末装置、300 オーバーヘッドフレーム、310 イベントフレーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震計、地震計ユニット、地震データ収集装置並びに地震計の設置方法及び地震情報の補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震計は二次元面内の直交する水平方向2成分X,Yおよび垂直成分Zを検出することが知られている(特許文献1,2)。
【0003】
特に、特許文献1では、検出される水平方向2成分X,Yが、南北方向の加速度成分と及び東西方向の加速度成分であることに言及しているが、地震計をどのように設置するかについては無言である。
【0004】
地震計の設置に関しては、例えば特許文献3,4に開示されているが、地震計の設置方位については無言である。
【0005】
一方、方位検知として、地磁気を各種の磁気センサを用いて検知することも知られている(特許文献5−7)。これらは、ナビゲーションシステムや携帯電話機や腕時計のGPS機能に用途開発されている。
【0006】
また、磁気センサが搭載された携帯端末を情報源として、各地の地磁気情報を、ネットワークを介して収集し、その情報をもとに地震予知するシステムも提案されている(特許文献8)。しかし、この発明では、不特定多数の携帯端末が東西南北を向く確率は常に等しいと仮定して、各携帯端末の方位を無視している。
【特許文献1】特許第3307840号公報
【特許文献2】特開平8−285952号公報
【特許文献3】特開2001−242259号公報
【特許文献4】特開2001−318161号公報
【特許文献5】特開2005−221383号公報
【特許文献6】特許第2932079号公報
【特許文献7】特許第3318762号公報
【特許文献8】特開2003−215259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、加速度が検出される水平方向2成分X,Yを、設置現場にて容易に南北方向・東西方向に一致させることができ、あるいは、設置時または設置後に方位がずれたとしても、検出された水平方向2成分X,Yを南北方向・東西方向に一致させる補正情報を発信することができ、あるいはその補正情報に基づいて加速度を補正することができる地震計、地震計ユニット、地震データ収集装置並びに地震計の設置方法及び地震情報の補正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る地震計は、二次元面内にて直交するX,Y軸に沿った方向の加速度を検出する加速度センサと、前記Y軸と一致する方向または前記Y軸との交差角が既知である方向を第1の方向とした時、前記第1の方向に感度方向が設定された少なくとも一つの地磁気センサと、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る地震計では、X,Y軸の加速度を検出する加速度センサに加えて、少なくとも一つの地磁気センサが搭載されている。少なくとも一つの地磁気センサは、Y軸と一致する方向またはY軸との交差角が既知である方向を第1の方向とした時、第1の方向に感度方向が設定されているので、加速度センサからのX軸またはY軸の加速度が、実際にはどの方向の加速度であるかを示す方位情報として利用することができる。
【0010】
少なくとも一つの地磁気センサの出力により、地震計の設置時にY軸の向く方向を知得して地震計の設置方向を定めることができる。さらには、Y軸が当初予期した方向(例えば北方向)と設置時または設置後にずれたとしても、少なくとも一つの地磁気センサの出力により、検出されたX,Y軸加速度から、予期した方向の加速成分を算出することができる。
【0011】
本発明の一態様では、前記加速度センサは、一つのセンサによりX軸及びY軸方向の加速度を検出するものの他、X軸加速度センサ及びY軸加速度センサを含むものであっても良い。
【0012】
本発明の一態様では、前記少なくとも一つの地磁気センサの出力の絶対値は、前記第1の方向が南北方向に一致する時に最大となり、前記第1の方向が東西方向に一致する時に最小となる特性を有することができる。地磁気センサが一つでも、北軸を中心とする180゜の範囲では、地磁気センサの出力により地震計の設置方位を決定できる。
【0013】
より好ましくは、前記少なくとも一つの地磁気センサは、前記第1の方向に感度方向が設定されたY軸地磁気センサと、前記第1の方向と直交する第2の方向に感度方向が設定されたX軸地磁気センサと、を含むことができる。感度方向が90゜ずれた2つの地磁気センサからの2出力を用いれば、360゜の範囲で地震計の設置方位を一義的に決定できる。
【0014】
この際、前記第1の方向が南北方向に一致し、かつ、前記第2の方向が東西方向に一致する時に、前記Y軸地磁気センサの出力の絶対値は最大となり、前記X軸地磁気センサの出力の絶対値は最小となり、前記第1の方向が東西方向に一致し、かつ、前記第2の方向が南北方向に一致する時に、前記Y軸地磁気センサの出力の絶対値は最小となり、前記X軸地磁気センサの出力の絶対値は最大となるように出力調整すればよい。
【0015】
360゜の範囲で地震計の設置方位を一義的に決定するために、前記Y軸地磁気センサの出力は、前記第1の方向が前記東西方向を境に北向きである時に第1の符号となり、前記第1の方向が前記東西方向を境に南向きである時に前記第1の符号とは逆の第2の符号となり、前記X軸地磁気センサの出力は、前記第2の方向が前記南北方向を境に東向きである時に第3の符号となり、前記第2の方向が前記南北方向を境に西向きである時に前記第3の符号とは逆の第4の符号となるように出力定義すればよい。こうすると、2つの地磁気センサからの絶対値と符号とにより、方位が一義的に定まる。
【0016】
本発明の一態様では、前記加速度センサは、前記二次元面に直交するZ軸に沿った方向の加速度を検出し、前記X,Y,Z軸の加速度をそれぞれ増幅する第1の増幅器と、前記少なくとも一つの地磁気センサの出力を増幅する第2の増幅器と、前記第1,第2の増幅器からのアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換器と、をさらに設けることができる。
【0017】
こうすると、X,Y軸加速度による横振動に加えて、Z軸加速度による縦振動も検出でき、それらの各加速度を高精度で遠隔伝送可能なデジタル信号として送出できる。
【0018】
本発明の他の態様に係る地震計ユニットは、少なくとも一つの上述の地震計と、時刻情報をデジタル出力する計時手段と、前記少なくとも一つの地震計からの前記X,Y,Z軸方向の加速度情報と、前記少なくとも一つの地震計からの地磁気情報と、前記計時手段からの時刻情報とが入力され、前記加速度情報、地磁気情報及び時刻情報を所与の通信フォーマットに編集して送信する通信ブロックと、を有することを特徴とする。
【0019】
こうすると、通信ブロックから送信される通信フォーマットには、少なくとも一つの地震計からのX,Y,Z軸方向の加速度情報と、少なくとも一つの地震計からの地磁気情報と、計時手段からの時刻情報とが含んで送信することができる。このように、加速度情報と共に地磁気情報を送信することで、Y軸が当初予期した方向(例えば北方向)と設置時または設置後にずれたとしても、少なくとも一つの地磁気センサの出力により、検出されたX,Y軸加速度から、予期した方向の加速成分を算出することができる。
【0020】
本発明の他の態様では、前記通信ブロックは、前記前記X,Y,Z軸の加速度各々についてデジタル値0を演算する演算部を含み、前記演算部は、前記X,Y,Z軸の加速度各々について、連続して出力される複数の加速度の移動平均値をデジタル0値に設定することができる。
【0021】
X,Y,Z軸加速度は、温度ドリフトによって基準レベルが変化することがあるが、基準レベルの正負側に振幅を有する加速度をデジタル化した情報(符号付デジタル値)の移動平均値を求めれば、所定の時間間隔毎に基準レベルを求めることができる。よって、その移動平均値をデジタル0値に置き換えれば、温度ドリフト補正が可能となる。
【0022】
本発明の他の態様では、前記演算部は、N番目の前記X,Y,Z軸の加速度各々について、対応する軸の(N−1)番目以前の複数の加速度の移動平均値をデジタル値0に設定することができる。つまり、過去の所定数の加速度の移動平均値を今回の加速度のデジタル0値に設定して、温度ドリフト補正を実現することができる。
【0023】
本発明の他の態様では、前記通信ブロックは、前記通信フォーマットの一単位として、オーバーヘッドフレームと少なくとも一つのイベントフレームとを含み、前記オーバーヘッドフレームは、前記地震計を特定するアドレス情報、前記計時手段からの基準時刻及び前記地磁気情報を含み、前記少なくとも一つのイベントフレームは、前記基準時刻に対応する前記X,Y,Z軸加速度情報を含むことができる。加えて、前記少なくとも一つのイベントフレームのうちの他の一つは、前記基準時刻に対する相対時刻及び前記相対時刻に対応する前記X,Y,Z軸加速度情報を含むことができる。
【0024】
本発明のさらに他の態様は、上述した複数の地震計ユニットと回線を介して接続された地震データ収集装置であって、前記複数の地震計ユニットからの情報がそれぞれ入力される受信部と、前記受信部にて受信された情報を記憶する記憶部と、を有することを特徴とする。
【0025】
こうして、遠隔地に設定された複数の地震計ユニットからの地震情報を、地震データ収集装置にて一括管理することができる。
【0026】
本発明のさらに他の態様では、前記記憶部に記憶部に記憶された前記地磁気情報に基づいて、前記X,Y軸方向の加速度情報を補正する補正部をさらに有することができる。これにより、地震計が設置時または設置後に予期した方向からずれたとしても、正しい加速度情報に補正することができる。
【0027】
本発明のさらに他の発明に係る地震計の設置方法は、少なくとも一つの地磁気センサを含む地震計を前記二次元面内にて前記二次元面に直交するZ軸を中心に回転させる工程と、前記地震計を回転した時に得られる前記少なくとも一つの地磁気センサの出力の絶対値が最大となる位置を基準として、前記地震計を設置する工程と、を有することを特徴とする。この場合、北向きを中心とする180゜の範囲で、地震計の向きを一義的に検出して、その設置向きを設定することができる。
【0028】
本発明のさらに他の発明に係る地震計の設置方法は、X軸及びY軸地磁気センサを含む地震計を前記二次元面内にて前記二次元面に直交するZ軸を中心に回転させる工程と、前記地震計を回転した時に得られる前記少なくとも一つの地磁気センサの出力の絶対値が最大でかつ、該出力の符号が第1の符号となる位置を基準として、前記地震計を設置する工程と、を有することを特徴とする。この場合、360゜の全範囲で、地震計の向きを一義的に検出して、その設置向きを設定することができる。
【0029】
本発明のさらに他の発明に係る地震情報の補正方法は、地震計に設置された加速度センサにより、二次元面内にて直交するX,Y軸に沿った方向の加速度をそれぞれ検出する工程と、前記Y軸と一致する方向または前記Y軸との交差角が既知である方向を第1の方向とした時、前記第1の方向に感度方向が設定されて前記地震計に設置された少なくとも一つの地磁気センサから地磁気情報を検出する工程と、前記地磁気情報に基づいて、前記第1の方向と北を示す方向とのズレ方位角θを求める工程と、前記ズレ方位角θに基づいて、前記X,Y軸に沿った方向の加速度を補正する工程と、を有することを特徴とする。
【0030】
本発明に係る地震情報の補正方法によれば、X軸及びY軸加速度を、Y軸と一致する方向または前記Y軸との交差角が既知である方向に感度を有する少なくとも一つの地磁気センサからの方位情報に基づいて、予期した方向の加速度に補正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0032】
1.遠隔震動計測システム
図1は、本発明の実施形態に係る遠隔震動計測システムの概略図である。図1において、私設または公衆の回線、好適には例えばインターネット1には、少なくとも一つ、例えばN(Nは2以上の整数)個の地震計ユニット100−1〜100−Nと、地震データ収集装置200と、が接続されている。
【0033】
N個の地震計ユニット100−1〜100−Nの各々は、少なくとも一つ、例えばn(nは2以上の整数)個の地震計10−1〜10−nと、一つの計時ブロック20と、一つの通信ブロック30と、を含んでいる。
【0034】
n個の地震計10−1〜10−nの各々は、例えば図2に示す地震計10−1と同一の構成を有する。図2に示す地震計10−1は、X軸加速度センサ40、Y軸加速度センサ42、Z軸加速度センサ44及び第1の増幅器46を含んでいる。第1の増幅器46は、X,Y,Z軸の加速度信号をそれぞれ増幅する3系統の増幅経路を含んでいる。地震計10−1はさらに、X軸地磁気センサ50、Y軸地磁気センサ52及び第2の増幅器54を含んでいる。第2の増幅器54は、X,Y軸の地磁気信号をそれぞれ増幅する2系統の増幅経路を含んでいる。また、地震計10−1には、第1,第2の増幅器46,54からの出力を、例えば10mS毎に時分割でアナログ−デジタル変換して、例えば符合付きgal(重力加速度)値に変換するアナログ−デジタル(A/D)変換器60が設けられている。このA/D変換器60と計時ブロック20とが、通信ブロック30に接続されている。
【0035】
計時ブロック20としては、高精度のクロックジェネレータ(原子時計)、電波時計、あるいはGPS受信機から再生される高精度のClock再生信号等が利用される。いずれの場合でも、計時ブロック20からは、予め定められたフォーマットによる年差の小さいデジタル信号の時刻情報が出力される。
【0036】
通信ブロック30は、A/D変換器60からのデジタル信号を、通信ブロック30と接続される回線1に適合するフォーマットに変換して送出するもので、本実施形態ではインターネット1に適合するTCP/IP(Transmission Control Protocol / Internet Protocol)の通信フォーマットに変換して送出している。
【0037】
通信ブロック30は、MPU(Micro Processing Unit)と、メモリ、システムインターフェース等の周辺装置から構成されている。通信ブロック30は、データ送信機能だけでなく、地震データ収集装置200側からのリクエストによりファームウェアの更新が可能である。
【0038】
図1において、インターネット1に接続された地震データ収集装置200は、例えば、インターネット1に接続された地震データ収集サーバ210と、この地震データ収集サーバ210と回線例えばLAN(Local Area Network)220を介して接続された少なくとも一つの端末装置230を有している。
【0039】
地震データ収集サーバ210は、インターネット1を介して受信された加速度情報、方位情報、計時情報を所定のフォーマットに変換して記憶する。端末装置230は例えばパーソナルコンピュータであり、地震データ収集サーバ210に蓄えられた情報を、LAN220を介して受信し、データ処理して出力(表示出力または印刷出力)することができる。また、端末装置230の操作等によって、通信ブロック30のファームウェア等を更新可能である。
【0040】
このように、本実施形態では、地震計ユニット100−1〜100−Nとは離れた位置に設置された地震データ収集装置200にて、地震データを収集して観測することができる。また、端末装置230側から遠隔地にある通信ブロック30に対してファームウェア等の更新の遠隔操作が可能である。なお、地震データ収集装置200の詳細について後述する。
【0041】
2.センサブロック
図3は、図1に示す地震計10−1のうち、5つのセンサ40〜44、50〜52が搭載されたセンサブロック70を示している。このセンサブロック70は、水平基盤72と垂直基盤74とを有する。水平基盤72上には、X軸加速度センサ40、Y軸加速度センサ42、X軸地磁気センサ50及びY軸地磁気センサ52が設けられている。垂直基盤74には、Z軸加速度センサ44が設けられている。この各センサを搭載したセンサブロック70は、地中、水底または人工物等の地震設置部位に設置される。なお、第1,第2の増幅器46,54及びA/D変換器60は、必ずしもセンサブロック70上に設置する必要はなく、センサブロック70上のセンサと配線されていれば良い。
【0042】
また、図3では、X軸加速度センサ40、Y軸加速度センサ42、Z軸加速度センサ44を別個のセンサにて構成したが、X,Y,Z軸の加速度をそれぞれ検出する一体型加速度センサとしてもよく、こうすることでセンサブロック70をコンパクト化することができる。
【0043】
水平基盤72は、二次元面内にて直交するX,Y軸が定義されている。また、垂直基盤74は、水平基盤72の二次元面と直交するZ軸と平行に、水平基盤72と一体成形されるか、あるいは水平基盤72に固定されている。X軸加速度センサ40は、X軸に沿った方向の加速度を検出するように、水平基盤72上に設置される。Y軸加速度センサ42は、Y軸に沿った方向の加速度を検出するように、水平基盤72上に設置される。Z軸加速度センサ44は、Z軸に沿った方向の加速度を検出するように、垂直基盤74上に配置されている。
【0044】
この種の加速度センサとしては、静電容量式、ピエゾ抵抗式、あるいはシリコンの結晶異方性エッチングを応用した半導体加速度センサや、歪ゲージ式又は圧電式の加速度センサ、あるいは磁気抵抗効果型加速度センサ等を挙げることができる。特に、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を用いて製造される半導体加速度センサは、X,Y,Z軸との一致性が高い加工精度で担保できる点で好ましい。
【0045】
水平基盤72上にはさらに、X軸及びY軸地磁気センサ50,52が設けられている。このX軸及びY軸地磁気センサ50,52は、感度方向が互いに90゜だけずれている。Y軸地磁気センサ52は、例えばY軸と一致する方向(第1の方向)に感度方向が設定されている。ただし、Y軸地磁気センサ50の感度方向は、Y軸と一致するものに代えて、Y軸との交差角が既知である方向(この場合は、これが第1の方向となる)であってもよい。X軸地磁気センサ52は、第1の方向と直交する第2の方向に感度方向が設定されている。Y軸と同様に、X軸地磁気センサ50の感度方向は、X軸と一致するものに代えて、X軸との交差角が既知である方向であってもよい。この場合でも、X軸及びY軸地磁気センサ50,52は、感度方向が互いに90゜だけずれていることが条件となる。
【0046】
この種の地磁気センサとしては、巨大磁気抵抗効果素子(GMR)、磁気抵抗効果素子(MR素子)、磁気インピーダンス素子(MI素子)、フラックスゲート素子、半導体ホール効果センサ、トンネル型磁気抵抗効果素子(TMR素子)等を挙げることができる。
【0047】
3.地震計の設置方法
図3に示すセンサブロック70のうち、X軸地磁気センサ50及びY軸地磁気センサ52を用いた方位検出について、図4〜図6も参照して説明する。
【0048】
ここで、図3に示すセンサブロック70を設置場所に設置するには、図1に示す地震計10−1等に内蔵されたユーザーインターフェースを介して、センサブロック70からのX,Y軸の地磁気情報をユーザ装置にて観測できる。
【0049】
図4は、センサブロック70の方位検出を行なう概念図を示している。図4に示すように、センサブロック70のY軸が北→東→南→西の順位方向に向くように、センサブロック70を360°回転させる。このときの、X軸及びY軸地磁気センサ50,52の出力は図5の通り定義すると、X軸及びY軸地磁気センサ50,52の出力は図6に示す通りとなる。
【0050】
図5及び図6に示すように、第1の方向であるY軸が南北方向に一致し、かつ、第2の方向であるX軸が東西方向に一致する時に、Y軸地磁気センサ52の出力の絶対値は最大となり、X軸地磁気センサ50の出力の絶対値は最小となる。逆に、Y軸である第1の方向が東西方向に一致し、かつ、第2の方向であるX軸が南北方向に一致する時に、Y軸地磁気センサ52の出力の絶対値は最小となり、X軸地磁気センサ50の出力の絶対値は最大となる。上述したX軸及びY軸地磁気センサ50,52の感度方向とは、図5の定義のように、ある特定方向に一致させた時にセンサ出力の絶対値が最大となる方向である。この感度方向とは、X軸及びY軸地磁気センサ50,52の感度に幅がある場合には、最大感度方向を意味する。
【0051】
さらに、Y軸地磁気センサ52の出力は、第1の方向であるY軸が東西方向を境に北向きである時にプラス(広義には第1の符号)となり、第1の方向であるY軸が東西方向を境に南向きである時にマイナス(広義には第1の符号とは逆の第2の符号)となる。一方、X軸地磁気センサ50の出力は、第2の方向であるX軸が南北方向を境に東向きである時にプラス(後期には第3の符号)となり、第2の方向であるX軸が南北方向を境に西向きである時にマイナス(広義には第3の符号とは逆の第4の符号)となる。
【0052】
つまり、図6に示すX軸地磁気センサ50の出力はサインカーブSIN(X)となり、Y軸地磁気センサ52の出力はコサインカーブCOS(Y)となる。
【0053】
図6から明らかなように、ユーザーインターフェースを介してX軸及Y軸地磁気センサ50,52の出力値が得られれば、センサブロック70が現在どの方位を向いているかが分かる。例えば、図6において、X軸及Y軸地磁気センサ50,52の出力値A,Bが得られれば、Y軸に対するズレ方位角θが一義的に求まる。
【0054】
換言すれば、次の方法により、センサブロック70の方位を正しく設定できる。まず、センサブロック70を最大360°の範囲に回転させながら、ユーザーインターフェースを介してX軸及Y軸地磁気センサ50,52の出力値A,Bをモニタする。X軸地磁気センサ50の出力値Aが+1であり、Y軸地磁気センサ52の出力値Bが0であれば、Y軸は真北を示していることになる。従って、出力値A=+1及び出力値B=0の位置でセンサブロック70の回転を停止すれば、Y軸が真北を向いた状態でセンサブロック70を設置することができる。なお、地震計10−1の最小単位をセンサブロック70とすれば、上述の方法で地震計10−1を設置できる。つまり、図2に示す計時ブロック20、第1,第2の増幅器46,54、A/D変換器60は、必ずしもセンサブロック70と同じ位置に設置する必要はない。
【0055】
変形例として、X軸及びY軸地磁気センサ50,52のいずれか一方を省略しても良い。例えばX軸地磁気センサ50を省略した場合した場合、図6に示すCOS(Y)の出力値Bのみが求められる。この場合でも、Y軸を中心に±90°未満、トータル180°未満の範囲であれば、出力値Bに対応するズレ方位角θは一義的に求まる。Y軸地磁気センサ52を省略することで得られるSIN(X)の出力値Aの場合も同様である。従って、この場合には、センサブロック70のY軸が、東西方向を境に北側を向くようにして180°未満の範囲でセンサブロック70を回転させればよい。上記回転範囲にて、出力A=0または出力値B=+1での停止位置にて、センサブロック70のY軸は真北を向くことになる。
【0056】
4.方位検出方法
次に、X軸及Y軸地磁気センサ50,52の出力値A,Bを用いた方位検出方法について、図7を参照して説明する。
【0057】
図7は、図6に示すX軸及Y軸地磁気センサ50,52の出力値A,Bが得られた時の、Y軸に対するズレ方位角θの演算方法の一例を図示したものである。図7において、X軸及Y軸地磁気センサ50,52の出力値A,Bは、X軸及びY軸のベクトル成分と理解できる。出力値A,Bの合成ベクトルrは、r=(A2+B2)1/2…式(1)であり、その合成ベクトルrがY軸となす角(ズレ方位角)θは、θ=tan−1(A/B)…式(2)となる。
【0058】
図1に示す地震計10−1等から通信ブロック30、インターネット1を介して方位情報A,Bが地震データ収集装置200に収集できれば、地震データ収集サーバ210または端末装置230にて上述の式(1)(2)の演算を実行することで、センサブロック70のY軸が南北方向から角度θだけずれていることが分かる。
【0059】
以上のことから、センサブロック70のY軸が南北方向からずれて設置された場合でも、あるいは、センサブロック70の方位が設地後にずれた場合でも、上記式(1)(2)からそのズレ方位角θを演算できる。よって、この値θを用いて、後述する通り加速度方向の補正を行なうことができる。
【0060】
5.加速度データと方位との関連付け
X軸、Y軸加速度センサ40,42のX,Y軸が、それぞれ東向き,北向きと常に一致していれば、加速度データと方位とを関連付ける必要はない。しかし、上述した通り、センサブロック70のY軸が真北を向けて設置されるとは限らず、あるいはセンサブロック70の向きが設置後に変化することもある。
【0061】
本実施形態では、加速度情報と共に方位情報を検出できるので、センサブロック70のY軸が真北からずれたとしても、その加速度情報を方位情報と関連付けすることができる。
【0062】
図8は、図7に示すように、センサブロック70のY軸が北を示すN方向から角度θずれた場合を示している。この場合、センサブロック70のX軸は東を示すE方向から角度θずれている。X軸加速度センサ40より検出されたY方向の加速度をxとし、Y軸加速度センサ42より検出されたX方向の加速度をyとする。これらx,yは、N方向から角度θ、E方向から角度θ、それぞれずれた方向の加速度である。よって、これらx,yを北向き、東向きの加速度と仮定して計算すると、合成加速度の大きさやその加速度方向を誤ることになる。
【0063】
そこで、図8の通り、Y軸方向の加速度yからN方向の加速度YN=y×COSθを求め、同様に、X軸方向の加速度xからE方向の加速度XE=x×COSθを求めことができる。つまり、X軸加速度センサ50の出力x、Y軸加速度センサ52の出力yと、そのズレ方位角θとを関連付けて記憶しておけば、合成加速度の大きさやその加速度方向を常に正しく得ることができる。
【0064】
なお、上述した説明は、X軸またはY軸地磁気センサ50,52の感度方向が、X軸又はY軸と一致せずに、X軸またはY軸との交差角が既知である場合にも、その既知の角度に基づいて、図8に示す方法によって補正することができる。
【0065】
また、北を示すN方向に対するY軸のズレ方位角θは、必ずしも図7に示す演算によるものに限らず、図6に示す波形に基づいて、例えばX,Y軸地磁気センサ50,52の少なくとも一方の出力AまたはBから求めても良い。一例として、X,Y軸地磁気センサ50,52の少なくとも一方の出力AまたはBを入力とし、図6に示す対応するズレ方位角θを出力とするルックアップテーブルを用いることができる。
【0066】
6.通信ブロック
図2に示す通信ブロック30は、MPU及びその周辺装置の主たる機能として、通信フォーマット生成部31、送受信部32、ファームウェア記憶部33、温度ドリフト補正部34等を有している。通信フォーマット生成部31及び温度ドリフト補正部34の詳細は後述する。
【0067】
送受信部32は、インターネット1を介して地震データ収集装置200側と送受信を行なう。送受信部32には、A/D変換部60からのデータをフォーマット形式にて送信する送信部を含み、この送信部には、その開始制御と終了制御を行なう送信開始制御部32A及び送信終了制御部32Bが設けられている。送信開始制御部32Aは、X,Y,Z軸加速度が一定値以下である時はノイズ程度と判断するために「送信開始データ閾値」を設定し、X,Y,Z軸加速度が「送信開始データ閾値」以下である時は送信しない。送信終了制御部32Bには、揺れが収まったと判断するための「送信終了データ閾値」とその「送信データ継続時間」が設定されている。そして、送信終了制御部32Bは、送信開始後にX,Y,Z軸加速度が「送信終了データ閾値」を下回る検出状態が所与の「送信データ継続時間」を継続した時に、送信を終了制御する。なお、送受信部32は、送信データが存在しない状態が継続した場合でも、地震計10−1等が正常に動作していることを知らせるためのチェック用データ(地震データとしては無効)を定期的に送信することができる。
【0068】
また、通信ブロック30は、上述した通り、地震データ収集装置200側から、遠隔地にある通信ブロック30に対してファームウェア等の更新の遠隔操作が可能であり、送受信部32を介して受信されたファームウェアは、ファームウェア記憶部33に記憶される。地震データ収集サーバ210からのリクエストに従って、ファームウェア記憶部33の内容がアップデートされる。
【0069】
6.1.加速度センサ出力の温度ドリフト補正
通信ブロック30に設けられた温度ドリフト補正部34は、A/D変換部60からのX,Y,Z軸加速度に対して、温度ドリフト補正を実施する。温度ドリフトとは、図9に模式的に示すように、デジタル値の0に相当する基準アナログ値A1を境に正負に変動する加速度データは、経時的に、基準アナログ値がA1→A2→A3とシフトする現象が見られる。この要因が温度であり、この現象が温度ドリフトと呼ばれる。
【0070】
このような温度ドリフトが生ずると、基準アナログ値A1をデジタル値のゼロと設定し続けると、基準アナログ値A2,A3はデジタル値0よりも高い値になり、デジタル0値とはなり得ない。
【0071】
そこで、基準アナログ値A1,A2,A3が全てデジタル値のゼロになるための補正が必要である。この補正が、通信ブロック30内に設けられたMPUの演算機能によって行なわれる。
【0072】
図10は、温度ドリフト補正の概念図であり、例えばX軸加速度センサ40の出力を示している。上述した通り、X軸加速度センサ40の出力は、図2に示す第1の増幅器46にて増幅された後に、例えば10mS毎にサンプリングされてアナログ−デジタル変換される。図10に示すイベントN,N+1,N+2は、10mS毎に出力されるX軸加速度デジタルデータである。図示は省略するが、Y軸及びZ軸加速度も同様である。
【0073】
ここで、イベントNをデジタル値で表す基準となるデジタル値0は、イベントNの上流側の例えば500mS間、イベント数で50個のイベントN−1〜N−50のデータの移動平均により求める。イベントN−1〜N−50は、図9において基準値A1を境に正負に触れるデータのデジタル値であり、移動平均により基準値A1が求まる。この基準値A1を、イベントNのデジタル0値として用いる。
【0074】
イベントN+1についてはイベントN〜イベントN−49を用い、イベントN+2についてはイベントN+1〜N−48を用い、それぞれ例えば直前の50個のデータの移動平均により、デジタル0値を計算している。この結果、図9で示す基準値A1,A2,A3がそれぞれデジタル0値に補正され、温度ドリフトが補正される。
【0075】
6.2.通信ブロック30での通信フォーマット
上述した通り、通信ブロック30は、A/D変換器60からのデジタル信号を、インターネット1に適合するTCP/IPの通信フォーマットに変換して送出している。図11(A)(B)は、その通信フォーマットを模式的に示している。図11(A)(B)に示すように、通信ブロック30から送信される1パケットのデータは、大別して、オーバーヘッドフレーム300と、少なくとも一つのイベントフレーム310とを有する。
【0076】
オーバーヘッドフレーム300は、各地震計ユニット100−1〜100−Nの各地震計10−1〜10−n毎に固有のアドレスとして、例えばMACアドレスが付されている。オーバーヘッドフレーム300にはさらに、計時ブロック20からの出力に基づく基準時刻(年/月/日/時/分/秒)と、X軸及びY軸地磁気センサ50,52からの出力に基づく方位情報と、その他の機能情報(ファームデータの種別、暗号・圧縮のフラグなど)とが含まれている。つまり、オーバーヘッドフレーム300には、それに追従するイベントフレーム310の情報を識別しまたは補足する共通情報が含まれている。
【0077】
一つのイベントフレーム310には、最小イベント情報として、基準時刻に対応するX軸、Y軸及びZ軸加速度情報が含まれている。特に図11(B)のように複数例えばM(Mは2以上の整数)個のイベントフレーム310を有する場合には、最初のイベントの基準時刻に対する他のイベントの相対時刻情報(本実施形態では10mS×3の倍数)が含まれる。なお、図11Bに示すようにM個のイベントが含まれる場合でも、X軸及びY軸地磁気センサ50,52からの出力に基づく方位情報は、オーバーヘッドフレーム300に1計測分のみ設けられれば良い。方位が頻繁に変動することは極まれであるからである。
【0078】
図12は、図11(B)に示すように、一つのオーバーヘッドフレーム300に対して複数のイベントフレーム310を有する場合の送信を示している。通信ブロック30から地震データ収集サーバ210にオーバーヘッドフレーム300が送信されるのに続いて、イベントフレーム310として、イベント1、イベント2、…イベントMと順次送信される。以降、通信フォーマット単位でこれを繰り返すことになる。
【0079】
なお、通信ブロック30は、ファームウェアの設定により、データを圧縮して送信できるようになっている。
【0080】
7.地震データ収集装置
上述の通り、図1に示す地震データ収集装置200は、例えば、インターネット1に接続された地震データ収集サーバ210と、この地震データ収集サーバ210と回線例えばLAN220を介して接続された少なくとも一つの端末装置230を有している。
【0081】
地震データ収集サーバ210は、インターネット1を介して上述の通信フォーマット受信する受信部と、受信された通信フォーマット内の加速度情報、方位情報、計時情報等を所定のフォーマットに変換し、長期に亘ってデータを記憶する記憶部と、を少なくとも含んでいる。端末装置230は、地震データ収集サーバ210に蓄えられた情報を、例えばLAN220を介して受信し、データ処理して出力(表示出力または印刷出力)し、また、端末装置230の操作等によって、通信ブロック30のファームウェア等を更新可能である。
【0082】
図8に示した地磁気情報に基づきX,Y,Z軸加速度の大きさと方位の補正は、地震データ収集装置200の地震データ収集サーバ210または端末装置230にて実施される。
【0083】
端末装置230での出力モードの一つとして、地震計ユニット100−1〜100−N毎であって、かつ、かつ地震計10−1〜10−n毎に、X,Y,X軸加速度センサ40,42,44からの加速度の時間的変化を波形表示することができる。
【0084】
端末装置230での出力モードの他の一つとして、地震計ユニット100−1〜100−N毎であって、かつ地震計10−1〜10−n毎に、地図上にて地震の発生場所とその大きさ(例えば震度表示)を表すことができる。このときの震度は、地震データ収集装置200にて、重力加速度(gal)の大きさの他に、地震波の周期や継続時間が考慮して、公知の手法により計算される。
【0085】
端末装置230での出力モードの一つとして、地震計ユニット100−1〜100−N毎であって、かつ、かつ地震計10−1〜10−n毎に、X,Y,X軸加速度センサ40の稼働状況として、その最終通信時刻を表示することができる。
【0086】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の実施形態に係る遠隔震動計測システムの概略ブロック図である。
【図2】図1に示す地震計ユニットの一つを示すブロック図である。
【図3】地震計ユニットに含まれるセンサブロックの概略斜視図である。
【図4】センサブロックの設置方向を示す概略図である。
【図5】センサブロック中のX軸及びY軸地磁気センサの定義を示す概略説明図である。
【図6】センサブロックを設置した時のX軸及びY軸地磁気センサかせの出力を示す波形図である。
【図7】X軸及Y軸地磁気センサの出力値からY軸に対するズレ方位角θを演算する方法の一例を示す図である。
【図8】センサブロックのY軸が北を示すN方向から角度θずれた場合に、合成加速度の大きさやその加速度方向を演算する一例を示す図である。
【図9】加速度データの温度ドリフトを説明するための図である。
【図10】温度ドリフト補正の概念図である。
【図11】図11(A)(B)は、通信フォーマットを模式的に示す図である。
【図12】通信ブロックから地震データ収集サーバにデータを送信する状態を示す図である。
【符号の説明】
【0088】
1 公衆回線、10−1〜10−n 地震計、20 計時ブロック、30 通信ブロック、31 通信フォーマット生成部、32 送受信部、32A 送信開始制御部、32B 送信終了制御部、33 ファームウェア記憶部、34 温度ドリフト補正部、40 X軸加速度センサ、42 Y軸加速度センサ、44 Z軸加速度センサ、46 第1の増幅器、50 X軸加速度センサ、52 Y軸加速度センサ、54 第2の増幅器、60 A/D変換器、70 センサブロック、72 水平基盤、74 垂直基盤、100−1〜100−N センサユニット、200 地震データ収集装置、210 地震データ収集サーバ、220 LAN、230 端末装置、300 オーバーヘッドフレーム、310 イベントフレーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元面内にて直交するX,Y軸に沿った方向の加速度を検出する加速度センサと、
前記Y軸と一致する方向または前記Y軸との交差角が既知である方向を第1の方向とした時、前記第1の方向に感度方向が設定された少なくとも一つの地磁気センサと、
を有することを特徴とする地震計。
【請求項2】
請求項1において、
前記加速度センサは、前記X,Y軸に沿った方向の加速度をそれぞれ検出するX軸加速度センサ及びY軸加速度センサを含むことを特徴とする地震計。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記少なくとも一つの地磁気センサの出力の絶対値は、前記第1の方向が南北方向に一致する時に最大となり、前記第1の方向が東西方向に一致する時に最小となることを特徴とする地震計。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記少なくとも一つの地磁気センサは、
前記第1の方向に感度方向が設定されたY軸地磁気センサと、
前記第1の方向と直交する第2の方向に感度方向が設定されたX軸地磁気センサと、
を含むことを特徴とする地震計。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1の方向が南北方向に一致し、かつ、前記第2の方向が東西方向に一致する時に、前記Y軸地磁気センサの出力の絶対値は最大となり、前記X軸地磁気センサの出力の絶対値は最小となり、
前記第1の方向が東西方向に一致し、かつ、前記第2の方向が南北方向に一致する時に、前記Y軸地磁気センサの出力の絶対値は最小となり、前記X軸地磁気センサの出力の絶対値は最大となることを特徴とする地震計。
【請求項6】
請求項5において、
前記Y軸地磁気センサの出力は、前記第1の方向が前記東西方向を境に北向きである時に第1の符号となり、前記第1の方向が前記東西方向を境に南向きである時に前記第1の符号とは逆の第2の符号となり、
前記X軸地磁気センサの出力は、前記第2の方向が前記南北方向を境に東向きである時に第3の符号となり、前記第2の方向が前記南北方向を境に西向きである時に前記第3の符号とは逆の第4の符号となることを特徴とする地震計。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記加速度センサは、前記二次元面に直交するZ軸に沿った方向の加速度を検出し、
前記X,Y,Z軸の加速度をそれぞれ増幅する第1の増幅器と、
前記少なくとも一つの地磁気センサの出力を増幅する第2の増幅器と、
前記第1,第2の増幅器からのアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換器と、
をさらに設けたことを特徴とする地震計。
【請求項8】
請求項7に記載の少なくとも一つの地震計と、
時刻情報をデジタル出力する計時手段と、
前記少なくとも一つの地震計からの前記X,Y,Z軸方向の加速度情報と、前記少なくとも一つの地震計からの地磁気情報と、前記計時手段からの時刻情報とが入力され、前記加速度情報、地磁気情報及び時刻情報を所与の通信フォーマットに編集して送信する通信ブロックと、
を有することを特徴とする地震計ユニット。
【請求項9】
請求項8において、
前記通信ブロックは、前記前記X,Y,Z軸の加速度各々についてデジタル値0を演算する演算部を含み、
前記演算部は、前記X,Y,Z軸の加速度各々について、連続して出力される複数の加速度の移動平均値をデジタル0値に設定することを特徴とする地震計ユニット。
【請求項10】
請求項9において、
前記演算部は、N番目の前記X,Y,Z軸の加速度各々について、対応する軸の(N−1)番目以前の複数の加速度の移動平均値をデジタル値0に設定することを特徴とする地震計ユニット。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれかにおいて、
前記通信ブロックは、前記通信フォーマットの一単位として、オーバーヘッドフレームと少なくとも一つのイベントフレームとを含み、
前記オーバーヘッドフレームは、前記地震計を特定するアドレス情報、前記計時手段からの基準時刻及び前記地磁気情報を含み、
前記少なくとも一つのイベントフレームは、前記基準時刻に対応する前記X,Y,Z軸加速度情報を含むことを特徴とする地震計ユニット。
【請求項12】
請求項11において、
前記少なくとも一つのイベントフレームのうちの他の一つは、前記基準時刻に対する相対時刻及び前記相対時刻に対応する前記X,Y,Z軸加速度情報を含むことを特徴とする地震計ユニット。
【請求項13】
請求項8乃至12のいずれかに記載の複数の地震計ユニットと回線を介して接続された地震データ収集装置であって、
前記複数の地震計ユニットからの情報がそれぞれ入力される受信部と、
前記受信部にて受信された情報を記憶する記憶部と、
を有することを特徴とする地震データ収集装置。
【請求項14】
請求項13において、
前記記憶部に記憶された前記地磁気情報に基づいて、前記X,Y軸方向の加速度情報を補正する補正部をさらに有することを特徴とする地震データ収集装置。
【請求項15】
請求項3に記載の地震計を前記二次元面内にて前記二次元面に直交するZ軸を中心に回転させる工程と、
前記地震計を回転した時に得られる前記少なくとも一つの地磁気センサの出力の絶対値が最大となる位置を基準として、前記地震計を設置する工程と、
を有することを特徴とする地震計の設置方法。
【請求項16】
請求項6に記載の地震計を前記二次元面内にて前記二次元面に直交するZ軸を中心に回転させる工程と、
前記地震計を回転した時に得られる前記X軸及びY軸地磁気センサの出力の絶対値が最大でかつ、該出力の符号が第1の符号となる位置を基準として、前記地震計を設置する工程と、
を有することを特徴とする地震計の設置方法。
【請求項17】
地震計に設置された加速度センサにより、二次元面内にて直交するX,Y軸に沿った方向の加速度をそれぞれ検出する工程と、
前記Y軸と一致する方向または前記Y軸との交差角が既知である方向を第1の方向とした時、前記第1の方向に感度方向が設定されて前記地震計に設置された少なくとも一つの地磁気センサから地磁気情報を検出する工程と、
前記地磁気情報に基づいて、前記第1の方向と北を示す方向とのズレ方位角θを求める工程と、
前記ズレ方位角θに基づいて、前記X,Y軸に沿った方向の加速度を補正する工程と、
を有することを特徴とする地震情報の補正方法。
【請求項1】
二次元面内にて直交するX,Y軸に沿った方向の加速度を検出する加速度センサと、
前記Y軸と一致する方向または前記Y軸との交差角が既知である方向を第1の方向とした時、前記第1の方向に感度方向が設定された少なくとも一つの地磁気センサと、
を有することを特徴とする地震計。
【請求項2】
請求項1において、
前記加速度センサは、前記X,Y軸に沿った方向の加速度をそれぞれ検出するX軸加速度センサ及びY軸加速度センサを含むことを特徴とする地震計。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記少なくとも一つの地磁気センサの出力の絶対値は、前記第1の方向が南北方向に一致する時に最大となり、前記第1の方向が東西方向に一致する時に最小となることを特徴とする地震計。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記少なくとも一つの地磁気センサは、
前記第1の方向に感度方向が設定されたY軸地磁気センサと、
前記第1の方向と直交する第2の方向に感度方向が設定されたX軸地磁気センサと、
を含むことを特徴とする地震計。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1の方向が南北方向に一致し、かつ、前記第2の方向が東西方向に一致する時に、前記Y軸地磁気センサの出力の絶対値は最大となり、前記X軸地磁気センサの出力の絶対値は最小となり、
前記第1の方向が東西方向に一致し、かつ、前記第2の方向が南北方向に一致する時に、前記Y軸地磁気センサの出力の絶対値は最小となり、前記X軸地磁気センサの出力の絶対値は最大となることを特徴とする地震計。
【請求項6】
請求項5において、
前記Y軸地磁気センサの出力は、前記第1の方向が前記東西方向を境に北向きである時に第1の符号となり、前記第1の方向が前記東西方向を境に南向きである時に前記第1の符号とは逆の第2の符号となり、
前記X軸地磁気センサの出力は、前記第2の方向が前記南北方向を境に東向きである時に第3の符号となり、前記第2の方向が前記南北方向を境に西向きである時に前記第3の符号とは逆の第4の符号となることを特徴とする地震計。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記加速度センサは、前記二次元面に直交するZ軸に沿った方向の加速度を検出し、
前記X,Y,Z軸の加速度をそれぞれ増幅する第1の増幅器と、
前記少なくとも一つの地磁気センサの出力を増幅する第2の増幅器と、
前記第1,第2の増幅器からのアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換器と、
をさらに設けたことを特徴とする地震計。
【請求項8】
請求項7に記載の少なくとも一つの地震計と、
時刻情報をデジタル出力する計時手段と、
前記少なくとも一つの地震計からの前記X,Y,Z軸方向の加速度情報と、前記少なくとも一つの地震計からの地磁気情報と、前記計時手段からの時刻情報とが入力され、前記加速度情報、地磁気情報及び時刻情報を所与の通信フォーマットに編集して送信する通信ブロックと、
を有することを特徴とする地震計ユニット。
【請求項9】
請求項8において、
前記通信ブロックは、前記前記X,Y,Z軸の加速度各々についてデジタル値0を演算する演算部を含み、
前記演算部は、前記X,Y,Z軸の加速度各々について、連続して出力される複数の加速度の移動平均値をデジタル0値に設定することを特徴とする地震計ユニット。
【請求項10】
請求項9において、
前記演算部は、N番目の前記X,Y,Z軸の加速度各々について、対応する軸の(N−1)番目以前の複数の加速度の移動平均値をデジタル値0に設定することを特徴とする地震計ユニット。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれかにおいて、
前記通信ブロックは、前記通信フォーマットの一単位として、オーバーヘッドフレームと少なくとも一つのイベントフレームとを含み、
前記オーバーヘッドフレームは、前記地震計を特定するアドレス情報、前記計時手段からの基準時刻及び前記地磁気情報を含み、
前記少なくとも一つのイベントフレームは、前記基準時刻に対応する前記X,Y,Z軸加速度情報を含むことを特徴とする地震計ユニット。
【請求項12】
請求項11において、
前記少なくとも一つのイベントフレームのうちの他の一つは、前記基準時刻に対する相対時刻及び前記相対時刻に対応する前記X,Y,Z軸加速度情報を含むことを特徴とする地震計ユニット。
【請求項13】
請求項8乃至12のいずれかに記載の複数の地震計ユニットと回線を介して接続された地震データ収集装置であって、
前記複数の地震計ユニットからの情報がそれぞれ入力される受信部と、
前記受信部にて受信された情報を記憶する記憶部と、
を有することを特徴とする地震データ収集装置。
【請求項14】
請求項13において、
前記記憶部に記憶された前記地磁気情報に基づいて、前記X,Y軸方向の加速度情報を補正する補正部をさらに有することを特徴とする地震データ収集装置。
【請求項15】
請求項3に記載の地震計を前記二次元面内にて前記二次元面に直交するZ軸を中心に回転させる工程と、
前記地震計を回転した時に得られる前記少なくとも一つの地磁気センサの出力の絶対値が最大となる位置を基準として、前記地震計を設置する工程と、
を有することを特徴とする地震計の設置方法。
【請求項16】
請求項6に記載の地震計を前記二次元面内にて前記二次元面に直交するZ軸を中心に回転させる工程と、
前記地震計を回転した時に得られる前記X軸及びY軸地磁気センサの出力の絶対値が最大でかつ、該出力の符号が第1の符号となる位置を基準として、前記地震計を設置する工程と、
を有することを特徴とする地震計の設置方法。
【請求項17】
地震計に設置された加速度センサにより、二次元面内にて直交するX,Y軸に沿った方向の加速度をそれぞれ検出する工程と、
前記Y軸と一致する方向または前記Y軸との交差角が既知である方向を第1の方向とした時、前記第1の方向に感度方向が設定されて前記地震計に設置された少なくとも一つの地磁気センサから地磁気情報を検出する工程と、
前記地磁気情報に基づいて、前記第1の方向と北を示す方向とのズレ方位角θを求める工程と、
前記ズレ方位角θに基づいて、前記X,Y軸に沿った方向の加速度を補正する工程と、
を有することを特徴とする地震情報の補正方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−97969(P2009−97969A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−269312(P2007−269312)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(500393893)新科實業有限公司 (361)
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(500393893)新科實業有限公司 (361)
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]