説明

均一、かつ安定なラタノプロスト点眼液剤組成物

【課題】 ラタノプロスト点眼液剤の有効成分であるラタノプロストの化学的分解を抑制し、また、樹脂容器に吸着しやすいラタノプロストを、室温保存可能な程度まで安定化させ、さらには、冷蔵及び遮光の必要がない、長期間安定化した、優れたラタノプロスト含有点眼液の提供。
【解決手段】 ラタノプロスト、ポリソルベート80及びエデト酸ナトリウムを配合した均一、かつ安定なラタノプロスト点眼液剤組成物であり、ポリソルベート80の含有量が0.01〜0.5%(w/v)、及びエデト酸ナトリウムの含有量が0.001〜0.5%(w/v)であり、かかる点眼液組成物からなる室温保存が可能であり、遮光保存の必要がない点眼液剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラタノプロストを有効成分として含有する点眼液に関わり、詳細には、ポリソルベート80及びエデト酸ナトリウムを配合することにより、室温に保存した場合であっても、含有する有効成分であるラタノプロストが均一、かつ安定な状態で存在するラタノプロスト点眼液剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ラタノプロストは、化学名が(+)−イソプロピル(Z)−7−[(1R,2R,3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−2−[(3R)−3−ヒドロキシ−5−フェニルペンチル]シクロペンチル]−5−ヘプテノエートで表わされるプロスタグランジン系化合物であり、緑内障、高眼圧症の治療剤として開発されている薬剤である。
【0003】
医療用製剤としては、0.005%ラタノプロスト含有点眼液剤[商品名:キサラタン(登録商標)点眼液:ファイザー株式会社]であり、添加物として、ベンザルコニウム塩化物、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム及び等張化剤が配合されている。しかしながら、前記製剤は化学的安定性、光に対する安定性が低いものであり、遮光、且つ、2〜8℃の冷蔵保管することが要求されている(添付文書)。
そのため、保存中の安定性を向上させたラタノプロスト含有点眼液製剤の開発が、種々報告されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、高眼圧症及び緑内障の処置を必要とする対象患者に、有効成分としてラタノプロストを含み、実質的にベンザルコニウム塩化物を含まない点眼用組成物を投与することを含む、高眼圧症および緑内障の処置方法が開示されている。
該特許文献1には、ベンザルコニウム塩化物、ポリソルベート80、エデト酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、塩化ナトリウムからなるラタノプロスト含有点眼液剤の調製法が開示されている。
【0005】
具体的には、ベンザルコニウム塩化物を含まない場合の点眼液におけるラタノプロストの均一性は、ポリソルベート80を配合することによりに向上(88.3%から100.0%)し、0.01%のベンザルコニウム塩化物を含む場合の点眼液におけるラタノプロストの均一性は、ポリソルベート80を配合すること、またはポリソルベート80とエデト酸ナトリウムを配合することより向上(97.3%から99.9%)したことが開示されている。
【0006】
しかしながら、該特許文献には、ポリソルベート80、またはポリソルベート80とエデト酸ナトリウムを配合することにより、7時間撹拌後、30分間静置後の点眼液の均一性が向上したことが開示されているのみであり、その後の点眼液剤及びラタノプロスト自体の化学的安定性、或いは光に対する安定性については全く記載がない。
【0007】
また、特許文献2には、プロスタグランジンの化学的安定性を高めるために、ポリエトキシ化されたソルビトールのアルカン酸エステルを含有する薬学的組成物が開示されている。
しかしながら、ラタノプロスト、ポリソルベート80、抗酸化剤としてのエデト酸ナトリウム等の記載はあるが、ラタノプロスト点眼液についての検討はなされておらず、具体的な開示はない。また、抗酸化剤は酸化速度を低下させ、製品の保存期間を延ばす助けをすることが記載されているが、ラタノプロスト含有点眼液剤についての具体的な開示はなされていない。
【0008】
非特許文献1には、前記キサラタン点眼液中に含有されるラタノプロストの安定性についての検討が報告されている。
使用期限の目安である1ヶ月以内であれば室温でも安定であり、遮光袋に入れて保管することができることが開示されている。また、25℃、50%RH、白色光2,500lux(20日間)、ポリエチレン容器で保管してもラタノプロスト含量に変化がないことが開示されている。さらに、遮光保存すれば、室温であっても3ケ月間変化は認められなかったことと、30℃、75%RH、開封後毎日1滴ずつ滴下、暗所で保存した場合、6週間後に、含量がわずかに低下したものの、4週間まで未開封のものと比較して差はなく、6週間後、13瓶中1瓶に微粒子を認めたことが開示されている。
しかしながら、本発明で添加するエデト酸ナトリウムの使用については記載されているものではない。
【0009】
また、特許文献3には、ラタノプロスト、ベンザルコニウム塩化物等の保存剤、及び、エデト酸又はその塩を含有する水性医薬組成物が開示されている。
この水性医薬組成物は、エデト酸ナトリウムの添加により、40℃、1週間後の保存により、不溶性異物の出現が60%以上抑制されることと、この効果はエデト酸ナトリウムの添加濃度にかかわらず得られることが開示されている。しかしながら、本発明で使用するエデト酸ナトリウムとポリソルベート80等の界面活性剤との組合せについては、記載されているものではない。
【0010】
さらに特許文献4には、ラタノプロストを有効成分とする点眼液剤において、ポリソルベート80を含むことを特徴とする、経時的な安定性が向上した点眼液剤が開示されている。すなわち、ポリソルベート80を添加することにより、点眼液中のラタノプロストの残存率の低下が抑制され、経時的な安定性が向上することが開示されている。
具体的には、点眼液中のラタノプロストの残存率は、ポリエチレン容器中、40℃、2週間の保存条件下で、ポリソルベート80の無添加では97.3%であったものが、ポリソルベート80を0.05%(w/v)添加することにより99.6%に向上し、また、40℃、4週間の保存条件下では、ポリソルベート80の無添加で86.1%であったものが、ポリソルベート80の添加により99.3%に向上し、60℃、2週間の保存条件下では、ポリソルベート80の無添加での残存率が76.2%であったものが、ポリソルベート80を添加することにより92.5%に向上したことが開示されている。
しかしながら、本発明で使用するエデト酸ナトリウムとの併用についての検討はなされておらず、残存率が向上するか否かについては記載がない。
【0011】
また、特許文献5には、ラタノプロストを有効成分とした点眼液に、モノステアリン酸ポリエチレングリコールを配合することにより、室温保存を可能とした均一、かつ安定な点眼液が開示されている。
具体的には、モノステアリン酸ポリエチレングリコールを配合することにより、有効成分の樹脂製容器への吸着を抑制することができ、室温保存可能な安定性に優れた点眼液が得られることと、キサラタン点眼液と対比では、ポリエチレン容器中、1種類又は2種類のモノステアリン酸ポリエチレングリコールの存在下、60℃、4週間で、ラタノプロストの残存率が96〜101.0%であることが開示されている。
しかしながら、本発明で含有させるエデト酸ナトリウムの使用については、一切開示されているものではない。
【0012】
【特許文献1】特表2006−503913号公報
【特許文献2】特開2008−528490号公報
【特許文献3】特開2008−247828号公報
【特許文献4】特開2008−040727号公報
【特許文献5】特開2009−040749号公報
【非特許文献1】医薬ジャーナル、Vol.42(6), p.1725(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の現状を鑑み、ラタノプロスト含有点眼液剤の有効成分であるラタノプロストについて、化学的な分解を抑制し、また、樹脂容器に吸着しやすいラタノプロストを、室温保存可能な程度まで安定化させ、さらには、冷蔵及び遮光下で保存することが必要ない、長期間安定化した、優れたラタノプロスト含有点眼液を提供することを課題とする。
【0014】
本発明者は、上記した先行技術ではラタノプロスト含有点眼製剤における、ラタノプロストの長期間の安定性はある程度改良されているものの、さらなる改善が必要と考え、鋭意研究を行った。
その結果、ラタノプロストを含有する点眼液製剤において、添加剤としてポリソルベート80及びエデト酸ナトリウムを併用して配合することにより、長時間に渡り、ラタノプロストが安定であるとの新規事実を見出し、その結果、本発明のラタノプロスト点眼液剤組成物を完成させるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち、本発明は、基本的には以下の構成からなる。
(1)ラタノプロスト、ポリソルベート80及びエデト酸ナトリウムを配合した均一、かつ安定なラタノプロスト点眼液剤組成物。
(2)ポリソルベート80の含有量が0.01〜0.5%(w/v)、及びエデト酸ナトリウムの含有量が0.001〜0.5%(w/v)である上記(1)に記載の点眼液剤組成物。
(3)上記(1)又は(2)に記載のラタノプロスト点眼液剤組成物からなる室温保存が可能であることを特徴とする点眼液剤。
(4)上記(1)又は(2)に記載のラタノプロスト点眼液剤組成物からなる遮光保存が必要でないことを特徴とする点眼液剤。
【発明の効果】
【0016】
本発明が提供するラタノプロスト点眼液剤組成物は、含有する有効成分であるラタノプロストが均一、かつ安定な状態で長期間存在する利点を有している。
したがって、かかる点眼液組成物からなるラタノプロスト点眼液製剤は、従来の製剤にみられる遮光条件下で、且つ、2〜8℃の冷蔵保管必要がなく、治療対象者に多大の負担をかけることがない。
【0017】
また、本発明が提供するラタノプロスト点眼液剤組成物は、例えばプラスチック容器への吸着がなく、分解物の抑制の生成も抑制されることから、その結果残存率も良好なものとなり、かかる点眼液組成物からなるラタノプロスト点眼液製剤は、より安全な点眼製剤として提供できる利点を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、上記したように、その基本はラタノプロスト、ポリソルベート80及びエデト酸ナトリウムを配合した均一、かつ安定なラタノプロスト点眼液剤組成物であり、かかる点眼液組成物からなる点眼液剤であり、室温保存が可能であり、また遮光保存の必要がない点眼液剤である。
【0019】
本発明が提供するラタノプロスト点眼液剤組成物におけるラタノプロストの配合量は、医療の現場における治療上の観点からみて、0.005%(w/v)が好ましい。
しかしながら、この配合量に限定されるものではなく、治療上その配合量を適宜増減させることも可能であり、その配合量に合わせて含有させるポリソルベート80及びエデト酸ナトリウム配合量を選定すればよい。
【0020】
本発明においては、配合するポリソルベート80は、ラタノプロストに対する溶解剤として、または緩衝作用を付与する非イオン性界面活性剤として用いられる。
かかるポリソルベート80の配合量は、薬理学的に許容される量であれば特に限定されないが、点眼液剤全量に対し、0.01〜0.5%(w/v)、好ましくは、0.1〜0.3%(w/v)、特に好ましくは、0.15%(w/v)である。
【0021】
一方、ポリソルベート80と共に配合されるエデト酸ナトリウムは、薬理学的に許容される量であれば特に限定されないが、点眼液剤全量に対し、0.001〜0.5%(w/v)、好ましくは、0.01〜0.2%(w/v)、特に好ましくは、0.05%(w/v)である。
【0022】
本発明が提供する点眼液剤組成物においては、ポリソルベート80とエデト酸ナトリウムが併用して添加される。
この場合の併用添加におけるポリソルベート80の配合量は、点眼液剤全量に対し、好ましくは、0.01〜0.5%(w/v)、エデト酸ナトリウムは、好ましくは、0.001〜0.5%(w/v)の配合量である。特に好ましくは、ポリソルベート80は点眼液剤全量に対し、0.1〜0.3%(w/v)、エデト酸ナトリウムは、好ましくは、0.01〜0.2%(w/v)の配合量である。
【0023】
特に両者の配合比率は、ポリソルベート80とエデト酸ナトリウムがその配合%(w/v)比率において、1:1〜20:1の範囲内にあるのが好ましい。
本発明は、特にポリソルベート80とエデト酸ナトリウムを併用して配合することにより、含有されるラタノプロストの化学的安定性、並びに光に対する安定性が向上するものである点に特徴があり、そのなかでも両者の配合比率が上記の範囲内にある場合に、特に安定性が優れたものとなる。
【0024】
本発明の点眼液剤には、上記以外に添加剤として、通常点眼液剤に使用可能な添加剤を配合することができる。例えば、緩衝剤、防腐剤、等張化剤、pH調整剤などを挙げることができる。
【0025】
緩衝剤としては、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂などが挙げられる。好ましくは、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムである。
【0026】
等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、グリセリン、プロピレングリコール、マンニトールなどを挙げることができる。なかでも、好ましくは塩化ナトリウムである。
【0027】
防腐剤としては、ベンザルコニウム塩化物、塩化ベンゼトニウム、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、クロルヘキシジングルコン酸塩などを挙げることができる。なかでも、好ましくはベンザルコニウム塩化物であり、その配合量は0.02%以下程度が好ましい。
【0028】
また、pH調整剤としては、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸などを挙げることができる。なかでも、好ましくは、塩酸及び/又は水酸化ナトリウムが挙げられるがこれらに限定されない。
【実施例】
【0029】
以下に、本発明について、参考例及び実施例を挙げて詳細に説明するが、下記実施例は本発明の権利範囲を限定するものではない。
なお、以下の参考例、実施例において、ポリソルベート80は花王株式会社製のものを、エデト酸ナトリウムはナカライテスク株式会社製のものを使用した。
また、配合量における「%」は、「%(w/v)」である。
【0030】
参考例1:ポリソルベート80の配合による安定性試験
ポリエチレン容器に、添加剤として、ベンザルコニウム塩化物0.01%、リン酸水素ナトリウム水和物1.2%、リン酸二水素ナトリウム水和物0.75%及び塩化ナトリウム0.3%を基本部分とし、さらに、ポリソルベート80(0.04%、0.07%及び0.15%)を配合した種々のラタノプロスト0.005%含有点眼液剤を調製した。
上記点眼液剤と市販のキサラタン点眼液を60℃で1週間及び2週間保存した時の安定性を対比させた。
【0031】
残存量を測定し、その結果を下記表1に示した。
60℃で2週間保存した時のキサラタン点眼液の残存率81.5%に対し、ポリソルベート80を添加した場合、濃度依存的に安定性が悪くなることが判明した。
すなわち、安定性は、ポリソルベート80を0.04%配合した場合には、残存率84.4%であり、0.07%配合した場合には残存率80.0%であり、0.15%配合した場合には、残存率は64.9%と、ポリソルベート80の単独配合では、濃度依存的に安定性が低下することが判明した。
【0032】
【表1】

【0033】
参考例2:エデト酸ナトリウムとの配合による安定性試験
ポリエチレン容器に、添加剤として、ポリソルベート80 0.15%、ベンザルコニウム塩化物0.01%、リン酸水素ナトリウム水和物1.2%、リン酸二水素ナトリウム水和物0.75%及び塩化ナトリウム適量(浸透圧比0.9〜1.0に調整する量)を基本部分とし、さらに、エデト酸ナトリウム(0.01%及び0.05%)、並びに他の安定化剤としてアミノエチルスルホン酸0.7%、及びイプシロンアミノカプロン酸1%のいずれかを添加して種々のラタノプロスト0.005%含有点眼液剤を調製した。
上記点眼液剤及び市販のキサラタン点眼液を60℃で1週間及び2週間保存した時の安定性を対比させた。
【0034】
残存量を測定し、その結果を下記表2に示した。
60℃で1週間及び2週間保存した時のキサラタン点眼液の残存率81.5%に対し、特にエデト酸ナトリウム0.01%を添加したものが残存率94.8%とより安定であることが判明した。より好ましくは、残存率96.9%であるエデト酸ナトリウム0.05%を配合したものであった。
また、他の安定化剤よりエデト酸ナトリウムを配合した方が安定であった。
【0035】
【表2】

【0036】
実施例1:
精製水にリン酸二水素ナトリウム水和物1.4%、リン酸水素ナトリウム水和物0.63%、塩化ナトリウム0.3%、ベンザルコニウム塩化物0.01%、ポリソルベート80 0.04%、エデト酸ナトリウム0.1%、及びラタノプロスト0.005%を添加し、添加物が完全に溶解するまで攪拌後、さらに精製水を加えて全量を100mLとした。この溶液をポリエチレン容器に充填し、点眼液剤とした。
【0037】
実施例2〜5:
実施例1と同様にして、ラタノプロストとともに表3に示す種々の添加剤(配合量:%)を精製水に溶解させて0.005%ラタノプロスト点眼液剤組成物を調製した。
なお、表中には実施例1の配合も一緒に示した。
【0038】
【表3】

【0039】
安定性試験1:
実施例1〜5の点眼液製剤、及び比較例として、医療現場で使用されているキサラタン点眼液を、40℃で1カ月、並びに60℃で2週間保存したときのラタノプロストの残存率(%)を、前記点眼液剤の中のラタノプロスト濃度をHPLCにより測定し、検量線を用いて算出した。
その結果を、下記表4に示した。
なお、表中においては、実施例1〜5についてポリソルベート80及びエデト酸ナトリウムの配合量を一緒に示した。
【0040】
【表4】

【0041】
表4に示した結果からも判明するように、本発明のラタノプロスト点眼液製剤は、比較対象としてのキサラタン点眼液と比較し、40℃で1ケ月保存では、ポリソルベート80の濃度が低い実施例1の残存率は低いものであった。
実施例1〜3の結果からも判明するように、ポリソルベート80及びエデト酸ナトリウムの併用において、エデト酸ナトリウムを同量添加した3例においては、ポリソルベート80の濃度に依存して残存率の向上が認められた。
一方、実施例3〜5の結果からも判明するように、ポリソルベート80を同量添加した3例においては、エデト酸ナトリウムの濃度に依存した残存率の向上が認められていた。
これらの結果から、ポリソルベート80及びエデト酸ナトリウムの併用において、特に両者の配合比率は、ポリソルベート80とエデト酸ナトリウムがその配合%(w/v)比率において、1:1〜20:1の範囲内にあるのが好ましいことが理解される。
【0042】
安定性試験2:
実施例4のラタノプロスト点眼液製剤、及び比較対象としてのキサラタン点眼液について、40℃で6ケ月の長期保存条件下での残存率を安定性試験1と同様に検討した。
その結果、残存率は以下のとおりであった。
実施例4の点眼液製剤:102.2%
キサラタン点眼液 :87.8%
【0043】
安定性試験3:
実施例4のラタノプロスト点眼液製剤、及び比較対象としてのキサラタン点眼液について、120万Lux・hr照射条件下での残存率を安定性試験1と同様に検討した。
その結果、残存率は以下のとおりであった。
実施例4の点眼液製剤:100.7%
キサラタン点眼液 :82.6%
【0044】
上記の安定性試験1〜3の結果から判明するように、ラタノプロストを有効成分とする点眼液剤の調製において、ポリソルベート80及びエデト酸ナトリウムを同時に配合することにより、製剤の均一性、経時的な長期安定性及び光安定性が向上することが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上記載したように、本発明が提供するラタノプロスト点眼液剤組成物からなるラタノプロスト点眼液剤は、保存時又は容器の開封後も均一性、経時的な長期安定性及び光安定性が優れているものであり、その医療産業上有用は多大なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラタノプロスト、ポリソルベート80及びエデト酸ナトリウムを配合した均一、かつ安定なラタノプロスト点眼液剤組成物。
【請求項2】
ポリソルベート80の含有量が0.01〜0.5%(w/v)、及びエデト酸ナトリウムの含有量が0.001〜0.5%(w/v)である請求項1に記載の点眼液組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のラタノプロスト点眼液剤組成物からなる室温保存が可能なことを特徴とする点眼液剤。
【請求項4】
請求項1または2に記載のラタノプロスト点眼液剤組成物からなる遮光保存の必要がないことを特徴とする点眼液剤。

【公開番号】特開2010−275259(P2010−275259A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131319(P2009−131319)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(594105224)東亜薬品株式会社 (15)
【Fターム(参考)】