説明

均一の成分を有する多層フィルム

【課題】本発明は、水中で溶解する可食性多層フィルム(10)に関する。
【解決手段】可食性多層フィルム(10)は、第1の水溶性のフィルム層(100)と、第1のフィルム層(100)に少なくとも部分的に直面係合する1つ以上の追加の水溶性のフィルム層(200)とを持つ。フィルム層(100,200)は、ポリエチレンオキシドを単独で含有するポリマー組成、または少なくとも1つの水溶性のポリマーと組み合わせたポリマー組成を含む。可食性多層フィルム(10)は、層(100,200)の間に規定され、有効成分を収容するポケットを含むことができる。水を付加すると、多層フィルム(10)は溶解し、それによって有効成分を水中に放つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中で溶解する可食性多層フィルムに関する。可食性多層フィルムは、口腔内に供給するための有効成分を含むことができる。あるいは、多層フィルムは、例えば粉末の特殊調製粉乳のような有効成分を収容する層の間にポケットを規定するようにできる。水を加えると、多層フィルムは溶解して、それによって有効成分を水中に放出する。
【背景技術】
【0002】
所定の量の薬物、食品プロダクト(製品)、および関連する消費品目を包装することがしばしば好まれる。このような消費プロダクト(製品)は習慣的に消費の前に除去され、かつ廃棄されるべき包装体で包装される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国同時継続特許出願第10/856,176号明細書
【特許文献2】米国同時継続特許出願第10/074,272号明細書
【特許文献3】米国同時継続特許出願第10/768,809号明細書
【特許文献4】米国特許第6,099,871号明細書
【特許文献5】米国特許第6,436,464号明細書
【特許文献6】米国特許第6,077,558号明細書
【特許文献7】米国特許第5,422,127号明細書
【特許文献8】米国特許第5,589,357号明細書
【特許文献9】米国特許第5,405,637号明細書
【特許文献10】米国特許第6,294,206号明細書
【特許文献11】米国特許第6,472,003号明細書
【特許文献12】米国特許第6,495,599号明細書
【特許文献13】米国特許第6,589,576号明細書
【特許文献14】米国特許第6,596,302号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は水に溶解すると共に、可食性のフィルムを提供する。このようなフィルムは、口腔内に直接有効成分を供給するため、またはその代わりに、後ほど水と混合される消費プロダクトを包装するために使うことができる。本発明のフィルムは水中に溶解し、そしてそのプロダクトは消費することができる。それによって本発明のフィルムは、従来の技術の欠点を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のいくつかの実施の態様によれば、
第1の水溶性のフィルム層と、前記第1のフィルム層に少なくとも部分的に直面係合する1つ以上の追加の水溶性のフィルム層と、を有し、前記第1および追加のフィルム層は、ポリエチレンオキシド(またはポリエチレンオキサイド)を単独で含有するポリマー組成、または少なくとも1つの水溶性のポリマー(高分子化合物)と組み合わせたポリマー組成を含むことを特徴とする可食性多層フィルム、が提供される。
【0006】
他の実施の態様によれば、
a)1つ以上の室を持つ外側容器と、
b)前記1つ以上の室に収容された1つ以上の可食性二層フィルムと、
を有し、前記二層フィルムは、
i)第1の水溶性のフィルム層と、
ii)前記第1のフィルム層に少なくとも部分的に直面係合する第2の水溶性のフィルム層と、
iii)前記第1のフィルム層と前記第2のフィルム層との間に規定された1つ以上のポケットと、
iv)前記1つ以上のポケットに収容された食品プロダクトと、
を含み、前記第1および第2のフィルム層は、約20重量%から約50重量%のポリエチレンオキシドと、約25重量%から約50重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロースと、約20重量%から約75重量%のヒドロキシプロピルセルロースと、最大約20重量%のポリデキストロースと、
を含有するポリマー組成を含むことを特徴とする消費プロダクトが提供される。
【0007】
他の実施の態様によれば、可食性多層フィルムを作る方法であって、
a)第1の水溶性のフィルム層を提供する段階と、
b)前記第1のフィルム層に少なくとも部分的に直面係合で第2の水溶性のフィルム層を配置する段階と、
c)直面係合で各フィルム層を共にシールする段階と、
d)任意選択的に、前記第2のフィルム層に少なくとも部分的に直面係合する追加の水溶性のフィルム層を配置して、前記第2の層に前記追加の層をシールする段階と、
e)段階d)を要求通りに繰り返す段階と、
を含み、前記第1、第2、および追加のフィルム層は、ポリエチレンオキシドを単独で含有するポリマー組成、または少なくとも1つの水溶性のポリマーと組み合わせたポリマー組成を含む
ことを特徴とする方法が提供される。
【0008】
さらに他の実施の態様によれば、
a)可食性多層フィルムを提供する段階であって、該可食性多層フィルムが、
i)第1の水溶性のフィルム層と、
ii)前記第1のフィルム層に少なくとも部分的に直面係合する1つ以上の追加の水溶性のフィルム層と、
iii)前記第1のフィルム層と前記追加のフィルム層との間に規定された1つ以上のポケットと、
iv)前記1つ以上のポケットに収容された食品プロダクトと、
を含み、その状況で前記第1および前記追加のフィルム層が、ポリエチレンオキシドを単独で含有するポリマー組成、またはナトリウムカルボキシメチルセルロースと組み合わせたポリマー組成を含むようにする段階、
b)前記多層フィルムに高温の水を加える段階、および、
c)前記多層フィルムが高温の水中で溶解するのに応じて、食品プロダクトを放出する段階と、
を含むことを特徴とする、高温の流動食プロダクトを作製する方法が提供される。
【0009】
他の実施の態様によれば、第1の水溶性のフィルム層と、前記第1のフィルム層に少なくとも部分的に直面係合する1つ以上の追加の水溶性のフィルム層と、を有し、前記第1および追加のフィルム層は、第1のガラス転移温度を持った第1の水溶性のポリマーと、前記第1のガラス転移温度より少なくとも約20℃高い第2のガラス転移温度を持った第2の水溶性のポリマーとを含有するポリマー組成を含むことを特徴とする可食性多層フィルムが提供される。
【0010】
他の実施の態様によれば、第1の水溶性のフィルム層と、前記第1のフィルム層に少なくとも部分的に直面係合する1つ以上の追加の水溶性のフィルム層と、を含み、前記第1および追加のフィルム層は、ある融解温度を持った第1の水溶性のポリマーと、前記融解温度より少なくとも約10℃高いガラス転移温度を持った第2の水溶性のポリマーとを含有したポリマー組成を含むことを特徴とする可食性多層フィルムが提供される。
【0011】
さらに他の実施の態様によれば、第1の水溶性のフィルム層と、前記第1のフィルム層に少なくとも部分的に直面係合する1つ以上の追加の水溶性のフィルム層と、を含み、前記第1および追加のフィルム層は、ポリエチレンオキシドを単独で含有するポリマー組成、または少なくとも1つの水溶性のポリマーと組み合わせたポリマー組成を含む。好ましくは、本発明の多層フィルム層は厚さと組成的含有量において均一である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による二層フィルムの平面図である。
【図2】本発明の一実施形態による二層フィルムの側面図である。
【図2a】本発明の一実施形態による多層フィルムの側面図である。
【図3】本発明の他の実施形態による二層フィルムの平面図である。
【図4】図3の4−4線に沿った断面図である。
【図5】図4に類似した断面図であるが、本発明の代替の実施形態を示す。
【図6】図4に類似した断面図であるが、本発明の代替の実施形態を示す。
【図7】本発明の他の実施形態による二層フィルムの平面図である。
【図8】本発明の一実施形態による、二層フィルムを収容する哺乳ビンの側面図である。
【図9】本発明の他の実施形態による、二層フィルムを収容する多数の室を持った外側容器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は水中で溶解する可食性多層フィルムに関する。多層フィルムは、口腔内に直接有効成分を供給するために使うことができる。例えば、いくつかの実施形態において、フィルムは口腔内に直接置くよう設計される。使用者の唾液は可食性多層フィルムを溶解させ、それによって有効成分が口腔内に放出される。2つ以上のフィルムの層を、所望の特性に依存して同一にするか、または異ならせることができる。
【0014】
他の実施形態において、ポケットが多層フィルムの2つ以上の層の間に規定される。これらのポケットは、例えば薬、食物、または粉末の特殊調製粉乳のような有効成分を収容することができる。水を加えると、多層フィルムは溶解し、それによってポケットに含まれた有効成分を水中に放出する。これらの多層フィルムは、それに対して水を付加するための外側容器の室の中に収容されうる。
【0015】
特に、本発明は、第1の水溶性のフィルム層と、1つ以上の追加の水溶性のフィルム層と、を含む可食性多層フィルムを提供する。2つ以上のフィルム層は、互いに少なくとも部分的に直面係合する。特に好ましい一実施形態は二層フィルムである。好ましくは、各層は、互いにシール可能か、または可溶性である。特に好ましい実施形態において、各層は加熱シール可能である。
【0016】
いくつかの実施形態、特に加熱シール可能な実施形態において、各フィルム層は、異なった溶解温度またはガラス転移温度(軟化点温度)を持ったポリマーを含有するポリマー組成を含む。異なった溶解温度またはガラス転移温度を持ったポリマーを含むことによって、強度、引き裂き抵抗、柔軟性、溶解性、およびシール性のような所望のフィルム特性は、変化に富むか、および/または、均衡がとれるようにすることができる。
【0017】
さらに具体的には、高いガラス転移温度を持ったポリマーは、フィルムに、強度と引き裂き抵抗のようなある特定の所望の特性を提供する。しかしながら、高いガラス転移温度ポリマーの軟化点または粘着点は、所望の温度範囲においてシールすることを可能にするほどに十分低くないかもしれない。従ってこれらのポリマーはシールするための可塑化を必要とする。従来の可塑剤はこのようなポリマーに低いガラス転移温度を付与してシールを可能にすることができるが、可塑剤は狭いシール温度範囲を提供する傾向がある。
【0018】
そのようなものとして、より高いガラス転移温度ポリマーをより低いガラス転移温度を持った他のポリマーと混合することが望まれうる。低いガラス転移温度を持ったポリマーは、フィルムに良好なシール特性を与える。特に、低いガラス転移温度ポリマーは、より低い温度において融解または軟化する。それによってフィルム層は所望の温度範囲において互いにシールまたは融合するのに十分粘くなる。より高いガラス転移温度ポリマーと混合される時、ポリマー組成の全体的な融解温度は、熱の適用下でシールが形成されて各層を融解させつつ接続できるように低下される。高いガラス転移温度ポリマーの強度と引き裂き抵抗の特性も維持される。
【0019】
そうでない場合、ポリマー組成のガラス転移温度をシールを可能にするのに十分であるほどに下げるためには、可塑剤が必要となりうる。しかしながら、上記のような可塑剤は、フィルムが好ましい程度に融解するシール範囲としては狭いものを提供する。シール限界の制御は、特にフィルム層がその間に形成されたポケット中に有効成分を含む時には、重要である。従って、低いガラス転移温度ポリマーは、より広いシール範囲を備えた良好なシール可能性を提供するので、好ましい。そのために、ガラス転移温度の高いポリマーと低いポリマーの組み合わせは、とりわけ強度、引き裂き抵抗、溶解性、およびシール性のフィルム特性を均衡させる。
【0020】
このことは、使用前に破れることなく、それにもかかわらず水と混合される時には急速かつほとんど完全に溶解するような、消費物または同種のものを含有するのに十分強い多層フィルムを提供する。さらに具体的に、いくつかの実施形態においては、水と混合される時に急速に、そして十分または完全に溶ける食品プロダクトのような有効成分を含む多層フィルムを備えることが好ましい。これにより、フィルムの有効含有物を、水との混合物を形成するように放出することができるようになる。この混合物は均質であるか、またはいくつかの攪拌を必要とするかもしれないが、それでもなお、わずかのフィルム粒子が残るか、あるいは全く残らない状態で、液体消費物を提供する。
【0021】
従ってポリマー組成は、例えば0℃より低いような低いガラス転移温度を持った少なくとも1つのポリマーを、より高いガラス転移温度を持ったポリマーと組み合わせて含むことができる。より高いガラス転移温度ポリマーは約20℃を超える温度、好ましくは約50℃を超える温度、いくつかの実施形態では第1のポリマーよりも約150℃高い温度とすることができる。
【0022】
他の実施形態において、第1のポリマーは、高いガラス転移温度ポリマーのガラス転移温度よりも少なくとも10℃低い溶解温度を持つ。
【0023】
上記の観点では、本発明のいくつかの実施形態はポリマー組成にポリエチレンオキシドを含むことができ、それは低いガラス転移温度を持つ。ポリエチレンオキシドのガラス転移温度は0℃より低い。好ましくは、ポリエチレンオキシドは約−30℃のガラス転移温度を持つ。さらに、ポリエチレンオキシドは約65〜70℃の溶解温度範囲を持っている。そのようなものとして、ポリエチレンオキシドは低い溶解温度とガラス転移温度を持ち、それは本発明のフィルムに良好なシール可能性を提供する。
【0024】
本発明のフィルムで使われるポリエチレンオキシドの分子量は約100、000から約8百万の範囲が可能である。好ましくは、ポリエチレンオキシドの分子量は約100、000から約900、000の範囲である。さらに、2004年5月28日に出願され、その内容がここに参照として組み入れられた出願人による米国同時継続特許出願第10/856,176号明細書に記載されているように、異なった分子量のポリエチレンオキシドのブレンドも使用することができる。
【0025】
ポリエチレンオキシドは、単独で、またはより高いガラス転移温度を持った水溶性のポリマー、例えば−それに限定されないが−水溶性のセルロース誘導体ポリマーなどと組み合わせて、使うことができる。このようなセルロース誘導体ポリマーを単独で使うことは、シールのための可塑化が必要であるために好ましくないけれども、ポリエチレンオキシドのようなある特定の他のポリマーと組み合わせると、それは良好な強度、引き裂き抵抗、およびシール可能性を提供する。特に、ポリエチレンオキシドは、これらのフィルムにおいてポリマー的な可塑剤の役割をする。それは、ポリマー組成に低い溶解温度またはガラス転移温度を提供し、セルロース誘導体ポリマーのより高いガラス転移温度をオフセット(offset)させる。この組み合わせにより、フィルム層がシールにとって十分な粘着性を得ることを可能にする。故に、ポリエチレンオキシドを他の水溶性のポリマーと混合することは好ましい。
【0026】
特に適切なセルロース誘導体ポリマーはヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースである。ヒドロキシプロピルメチルセルロースは約160℃+/−10℃のガラス転移温度を持っている。従って、ヒドロキシプロピルメチルセルロースはフィルムに対して強度と引き裂き抵抗を提供する。ヒドロキシプロピルセルロースは約100〜150℃に軟化点範囲を持っている。カルボキシメチルセルロースは、溶解点もガラス転移温度も持たないが、約227℃で分解が始まる。セルロース誘導体ポリマーは単独でフィルムに組み入れることができ、または互いに組み合わせることができる。他の適切な水溶性のポリマーはポリデキストロースである。
【0027】
上記のようにいくつかの実施形態において、ポリエチレンオキシドはヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースのうちの1つ、または両方と組み合わせて使うことができる。ポリエチレンオキシドはポリマー組成の重量比で約20%から約50%の量が存在できる。ヒドロキシプロピルメチルセルロースはポリマー組成の重量比で約25%から約50%の量が存在でき、および/または、ヒドロキシプロピルセルロースはポリマー組成の重量比で約20%から約75%の量が存在できる。このようなフィルムは加えるべき可塑剤がいらないようにでき、ポリエチレンオキシドの、またヒドロキシプロピルセルロースのある程度の、低いガラス転移温度は柔軟性および良好なシール性の両方を提供する。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態において、フィルムの融解温度を下げるために可塑剤を加えることは好ましくありうる。ポリマー組成の重量比で最大約20%の量の可塑剤の混和は、さらに少ない量のポリエチレンオキシドのような可塑性ポリマーを可能にするが、依然としてフィルムをシールすることは可能である。このような実施形態において、ポリエチレンオキシドは、ポリマー組成の重量比で約12.5%から約50%の量が存在できる。ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、重量比で約25%から約75%の量が存在でき、また、ヒドロキシプロピルセルロースは、ポリマー組成の重量比で約12.5%から約75%の量が存在できる。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態において、ポリマー組成はポリエチレンオキシドとナトリウムカルボキシメチルセルロースを含む。このような実施形態において、ポリエチレンオキシドはポリマー組成の重量比で約25%から約100%までの量が存在することができ、ナトリウムカルボキシメチルセルロースはポリマー組成の重量比で0%を超えて約75%までの量が存在できる。このような実施形態で一層好ましくは、ポリエチレンオキシドは約50%から約75%の量が存在でき、また、ナトリウムカルボキシメチルセルロースはポリマー組成の重量比で約25%から約50%の量が存在できる。
【0030】
室温または低温水、すなわち50℃未満で混合される場合、ここで説明した多層フィルムは溶解する。本発明のいくつかの実施形態は、高温の水、例えば約50℃を超える温度、特に約70〜80℃の水と混合される場合にも溶解する。これらのフィルムは低温水系よりも高温の水での方がより急速に溶解する。
【0031】
さらに具体的には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとヒドロキシプロピルセルロースを含んだフィルムは、通常、室温または低温水中で溶解する。高温の水と混合される時のこれらのポリマーはゲル化するので、内部に十分に溶解可能ではない。しかしながら、ポリエチレンオキシドを含む本発明のフィルムは、室温/低温、および高温の水の系の、両方で溶解する。さらに、ナトリウムカルボキシメチルセルロースは、室温/低温、および高温の水で溶解するフィルムを形成するのに使うことができる。ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースとは異なり、ポリエチレンオキシドとナトリウムカルボキシメチルセルロースのフィルムは高温の水でゲル化しない。このようなフィルムは低温水よりも高温の水でさらに一層急速に溶解する。フィルムを溶かすこのような高温の水は、高温の飲物やスープのような食品プロダクト、同様に睡眠薬、鎮咳感冒薬などにとって特に好ましい。
【0032】
例えば、ポリエチレンオキシド単独、またはナトリウムカルボキシメチルセルロースとの組み合わせたポリマー組成を持ったフィルムは、低温水中で約20〜30秒で溶解するが、高温の水中、例えば約70〜80℃では、20秒未満、また多くの場合10秒未満で溶解する。
【0033】
本発明のフィルムにポリデキストロースを加えることも好ましくありうる。ポリデキストロースは充填剤および溶解度エンハンサー(強化剤)として働く水溶性のポリマーであり、つまり、フィルムのシール性を妥協することなくフィルムの溶解時間を増加させる。ポリデキストロースは、ポリマー組成の重量比で最大約40%の量が存在でき、さらに好ましくは重量比で最大約20%の量が存在できる。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態において、多層フィルムを形成する2つ以上のフィルム層は組成的に同一である。それぞれのフィルム層は同じポリマー組成と何らかの任意選択的成分を含む。
【0035】
他の実施形態においては、2つ以上のフィルム層が異なる。各層は、何らかの方式、異なるポリマー、有効成分、風味、または他の任意選択的な要素のようなものにおいて、組成的に異なることができる。
【0036】
例えば、一のフィルム層またはフィルムポケットの中に可食性の酸を、そして他のフィルム層またはフィルムポケットに塩基を組み入れることによって、口中に置かれる時に気泡を発するフィルムが提供される。そのフィルムが消費される時、唾液によりフィルムが溶解し、そして酸と塩基が反応して泡立ちを提供する。あるいは、酸と塩基がコーティングによって分離されるようにし、単一の層に存在するようにできる。適切な可食性の酸はクエン酸、リン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、およびその組み合わせを含むが、それらに限定されない。適切な塩基はアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属重炭酸塩、およびその組み合わせを含むが、それらに限定されない。
【0037】
各層は、異なった大きさ、形状、または厚さなど、物理的に異なるようにもできる。例えば、フィルム層は円形、正方形、または長方形とすることができる。異なった厚さのフィルム層を制御された放出多層フィルムを作るために使うことができる。制御された放出フィルムについては、2002年2月14日に出願され、その内容がここに参照として組み入れられた出願人による米国同時継続特許出願第10/074,272号明細書に一層完全に記載されている。
【0038】
上記のように、多層フィルムは同一または異なりうる2つ以上のフィルム層を含む。いくつかの二層の実施形態においては、図1および図2に示すように、フィルム10は第1のフィルム層100と第2のフィルム層200を持つ。フィルム層100および200は、図2に示すように互いに全体的に直面係合する。いくつかの実施形態において、多層フィルムは、図2aに示す3層フィルムのように2つ以上の層を持つ。
【0039】
本発明の他の実施形態においては、図3、図4、および図5に示すように、第1および第2のフィルム層100および200が互いに部分的に直面係合する。部分的な直面係合は、フィルム20の周囲で可能である。フィルム層は周囲の係合によって接続またはラミネートされうる。従って、ポケット300は、図4および図5に見られるようにフィルム層100と200との間に規定される。あるいは、図6に示すように、フィルム層100と200との間に多数のポケットを形成することができる。有効成分は、多層フィルムの溶解の際の放出のために1つ以上のポケット300の中に収容することができる。
【0040】
他の実施形態においては、図7に示すように、フィルム30は、それ自体に対して折り返された単一のフィルムとして、層100と200を持った二層フィルムを形成することができる。上記の実施形態のように、2つのフィルム層100と200は、それらの間にポケットを規定することができ、そしてそれは有効成分を収容することができる。フィルム層100と200は、図7に示すように折り目120が第4の側部を形成する状態で、直面係合ポイント110において3つの側部で接続することができる。
【0041】
さらに他の実施形態においては、フィルム層にギャザーまたはひだを付け、袋またはチューブのような一様な球形または円筒形を形成することができる。フィルム層は、開口部を閉じてシールされた筐体を形成するためのギャザーポイントにおいて接続されるか、または共にシールされうる。
【0042】
本発明によれば、フィルム層は、それらの少なくとも部分的に直面係合するポイントにおいて接続することができる。フィルム層は当技術分野の当業者に知られたいかなる方法でも接続することができる。例えばフィルム層は、熱、および/または、圧力を使ってラミネートされ、各層をシールすることができる。各フィルム層を共に加熱シールするためには、低温で軟化するので低いガラス転移温度を持ったポリマーの混合が好ましい。
【0043】
あるいは、フィルム層は、ポリマー組成のガラス転移温度とは無関係に、接着剤または溶剤で共に接合することができる。
【0044】
フィルム層は、とりわけ矩形や円形のエッジなど、いかなる形状でもシールすることができる。いくつかの実施形態においては、このようなラミネーションが厚いフィルム厚さと潜在的に遅い溶解時間を作るように、係合するポイント、すなわち融着またはシールするエリアが最小となるように賢明に選ばれる。さらに、フィルムの集積および/または緻密化は、特にある特定の形状、例えば、ラミネーションするエリアで溶解するのが遅いシャープなエッジ形状において、起こりうる。そのようなものとして、ラミネーションするエリアの量を制限し、溶解時間と速度を速めるためには、いくつかの実施形態において、丸いエッジが好まれうる。勿論、溶解時間は、とりわけ、フィルムの構造的および物理的特性、溶剤、使われる有効成分、およびフィルムが溶解させられる温度とも関わる。
【0045】
フィルムポケットの中に収容される有効成分は、食品プロダクト、医薬品および化粧品有効成分、薬物、薬剤、抗原またはブタクサ等の花粉のようなアレルギー源、胞子、微生物、種子、口腔洗浄液成分、風味、芳香、酵素、防腐剤、甘味料、着色剤、香辛料、ビタミンおよび栄養補助食品、さらにそれらの組み合わせを、制限なく含む。適切な有効含有物については、いずれもその内容がここに参照として組み入れられた、2002年2月14日に出願された出願人による米国同時継続特許出願第10/074,272号明細書、2004年1月30日に出願された第10/768,809号明細書、および2004年5月28日に出願された第10/856,176号明細書に一層完全に記載されている。
【0046】
いくつかの実施形態においては、有効成分は粉末のような粒子状物質とすることができる。適切な粉末の有効成分の例としては、飲料およびスープのような食品プロダクト、とりわけ特殊調製粉乳を含む。水と混合されると多層フィルムは溶解して、粉末の有効成分は水中に放出され、そして液体の形態に再構成される。
【0047】
特殊調製粉乳は、いずれもその内容がここに参照として組み入れられた、米国特許第6,099,871号明細書、米国特許第6,436,464号明細書、米国特許第6,077,558号明細書、米国特許第5,422,127号明細書、米国特許第5,589,357号明細書、米国特許第5,405,637号明細書、米国特許第6,294,206号明細書、米国特許第6,472,003号明細書、米国特許第6,495,599号明細書、米国特許第6,589,576号明細書、米国特許第6,596,302号明細書、に記載されているように、一般に、脂肪、炭水化物、およびたん白質の成分、そしてさらにビタミンおよびミネラルのような他の任意選択的な成分を含んでいる。適切な粉末の特殊調製粉乳の例は、(Mead Johnsonによって生産された)ENFAMILおよび(Abbott Laboratoriesによって生産された)SIMILACという名称で販売された製品である。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態においては、フィルム層自体に上述のような有効成分を組み入れることが好ましくありうる。有効成分は、フィルム層を準備するのに応じてフィルム母材に組み入れることができ、そしてそのプロセスは、上記で参照した米国特許出願第10/074,272号明細書、第10/768,809号明細書、および第10/856,176号明細書に一層完全に記載されている。フィルム層内の有効成分は、多層フィルムのポケットに含有される有効成分と同じであるか、または異なっていてもよい。
【0049】
上記で参照した米国特許出願第10/074,272号明細書、第10/768,809号明細書、および第10/856,176号明細書に記載されているように、様々な任意選択的な成分もフィルム層に組み入れることができる。これらは、とりわけ、消泡剤、顔料、着色剤、甘味料、および香料、を制限なく含むことができる。
【0050】
本発明の多層フィルムは外側容器に収容することができる。さらに詳細には、外側容器は、多層フィルムが収容された、何らかの形状かサイズの1つ以上の室を持つことができる。例えば特殊調製粉乳を含んだ多層フィルムの場合、外側容器は、ここで説明したどれかのフィルムを収容する使い捨てまたは再利用可能な、図8に示すような哺乳ビン400とすることができる。この哺乳ビンは従来の何らかの哺乳ビンとすることができ、または使い捨てのビニール袋か同種のものから形成することができる。
【0051】
外側容器500は、図9に示すように多数の室510および520を含むことができ、複数の多層フィルムを収容する。図9に示すように、外側容器500は蓋530を備えることができる。蓋530は使用前に容器をシールすることができ、そして開くために引き戻すことができる。外側容器500は、室510と520を分離するよう適合させることもできる。例えば、容器は室540を分離するポイントにおいてミシン目を入れることができる。
【0052】
いくつかの実施形態においては、外側容器は本発明の他の多層フィルムとすることができる。このような実施形態においては、一の可食性フィルムが他の可食性フィルムを収容する。
【0053】
従って、本発明のいくつかの実施形態は、1つ以上の本発明の多層フィルムを収容した上記のような外側容器を含んだ消費プロダクトを対象とする。この多層フィルムは、とりわけ、特殊調製粉乳、栄養および食餌療法用補助食品、減量プロダクト、および栄養補給食品プロダクトのような食品プロダクトを含むことができるが、それらに制限されない。
【0054】
本発明は可食性多層フィルムを作る方法をも対象とする。特に、上述したような第1の水溶性のフィルム層が提供される。1つ以上の追加の水溶性のフィルム層は、第1のものと同じかまたは異なるものであるが、第1の層と少なくとも部分的に直面係合する状況で配置される。第1および追加の層は、対面係合状態で共にシールされる。好ましくは、加熱シールが、任意選択としての圧力の使用の下に形成される。
【0055】
層が全体的な対面係合にある時、それらは多層フィルムを形成するために共に全体的にラミネートさせることができる。
【0056】
各層がフィルム層の周囲において部分的に直面係合する時、各層は周囲で共にシールされ、そしてさらに多ポケットの実施形態のような場合、周囲より内部の領域がシールされうる。それによって、ポケットはフィルム層の間に規定される。いくつかの実施形態においては、第1の層上に追加のフィルム層を配置する前に、有効成分が第1のフィルム層に適用される。多ポケットの実施形態においては、異なった有効成分を異なったポケットに含めることができる。これらの有効成分は、異なった時間、または異なった温度やpHのような異なった条件で溶解することができる。
【0057】
有効成分は粉末の形態とすることができ、第1のフィルム層に振り掛けるか、またはその層にスプレーするかブラッシングすることで塗布できるコーティングに振り掛けることができる。追加のフィルム層が付けられると、各層は共にシールされ、それによって層の間のポケットに活成部分を収容する。複数の追加のフィルム層を類似の方法で適用することができる。
【0058】
さらに詳細には、第1のフィルム層は、最終のフィルムプロダクトの所望の形状をした複数のキャビティを持っているモールドに提供することができる。キャビティに配置される第1のフィルム層に真空を適用することができる。続いて、有効成分をキャビティに付加することができ、その次に追加のフィルム層をその最上部に付けることができる。所望の位置において各フィルム層を共にシールするように、熱および/または圧力を適用することができる。
【0059】
あるいは、上記のような水溶性のフィルムが提供され、次にそのフィルムがそれ自体に折り重ねられ、それによって2つのフィルム層が作られる。次にフィルム層は、少なくとも部分的な直面係合の下にそれらが共にシールされる。直面係合が層の周囲にある場合、結果的にこのフィルムは3つの側部でシールされる。
【0060】
[実施例]
[実施例A〜D]
本発明の水溶性のフィルム組成を表1に記載した各量を使って準備した。
【0061】
【表1】

【0062】
表1に記載した成分を、均一な混合が達成されるまで混合によって組み合わせた。従って、この混合物は含有物が均一となった。この混合物を組成A、B、C、およびDに分けた。組成Aは71.98gであったのに対し、組成B〜Dはそれぞれ35.99gであった。次に、以下の成分を、表2に記載した各量だけ、組成A〜Dに加えた。
【0063】
【表2】

【0064】
組成Aから組成Dのそれぞれに対する上記成分を均一な混合が達成されるまで混合することによって組み合わせ、次に、250ミクロンに設定したマイクロメーターで調節可能なウェッジバーを備えたKコントロールコータ(K−Control Coater)(RK Print Coat Instruments, Ltd.製)を使ってリリースペーパー上でフィルムにキャスティングした。Kコントロールコータのウェッジバーは、設定間隔と等しい湿った膜厚を作り出す調節可能な展開ブレードである。この設定間隔は、ある均一な厚さのフィルムが作られるようにマイクロメーターで制御される。いくらかの膜厚を選択することができる。この実施例では、ウェッジバーは250ミクロンに設定して、そのレベルで均一な厚さを有するフィルムを作ることになる。
【0065】
このフィルムを約14分の間、80℃で約4%の水分レベルまで乾燥した。このフィルムを約23mm掛ける34mmの個々のフィルム層(AからD)に切断した。
【0066】
フィルム層AからDにより3つの二層フィルムを準備した。3つの二層フィルムは、(1)フィルム層Aとフィルム層B、(2)フィルム層Aとフィルム層C、(3)フィルム層Aとフィルム層D、である。
【0067】
特に、各フィルム層は熱および極めて小さな圧力(フジ・インパルス・シーラー(Fuji Impulse Sealer)モデルV−300)を使って共にラミネートした。フジ・インパルス・シーラーは2つの対向する金属アームまたは圧盤を持っており、そのそれぞれが金属上の平坦な加熱テープを持っている。フィルムを対向するアームの間に置き、そして一方のアームを他方のアームに合うように手作業で下降させ、フィルムにシールした。そのようにして、熱および極めて小さな人手の圧力、すなわちアームと合わせてシールを可能にするのに十分な圧力によってフィルムをシールした。フジ・インパルス・シーラーの設定に対するシール時間と温度は以下の通りである。
【0068】
【表3】

【0069】
準備した3つの二層フィルムは組成的に異なる層を含んでいた。各フィルム層は同じ組成の他の層にラミネートして、組成的に類似した2つの層を持った二層フィルムを形成することができる。
【0070】
[実施例E]
本発明の水溶性のフィルム組成を以下の成分を使って準備した。ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリデキストロース、およびビタミンCである。これらの成分を、均一な混合が達成されるまで混合することによって組み合わせ、そして次に、250ミクロンに設定したマイクロメーターで調節可能なウェッジバーを備えたKコントロールコータを使ってリリースペーパー上でフィルムにキャスティングした。実施例A〜Dで上述したように、ウェッジバー設定で均一厚さのフィルムを作った。これによりフィルムは含有物および厚さが均一となった。
【0071】
このフィルムを乾燥し、約23mm掛ける34mmの個々のフィルム層(小片)に切断した。約25mgのデキストロメトルファン(dextromethorphan) HBr(60%w/w)をフィルムの1つの層の上に振り掛けた。もう一つのフィルムの層はデキストロメトルファンを含有するフィルムの最上部に配置した。2つのフィルム層を、(フジ・インパルス・シーラーを使って)実施例A〜Dで上述したように熱および極めて小さな圧力で共にラミネートし、それによって二層フィルムプロダクトの中に薬剤を封入した。
【0072】
[実施例F〜AA]
本発明の水溶性のフィルム組成を表3に記載した各量を使って準備した。
【0073】
【表4】

【0074】
それぞれの組成に対する上記成分を、均一な混合が達成されるまで混合することによって組み合わせ、そして次に、実施例A〜Dで上述したように、マイクロメーターで調節可能なウェッジバーを備えたKコントロールコータを使ってリリースペーパー上でフィルムにキャスティングした。上記バーを、組成FからAAに対する種々のミクロン設定値、すなわちそれぞれの組成に対する特定の設定により400ミクロンから620ミクロンまでの値に設定した。それぞれの組成に対するウェッジバー設定で均一な厚さのフィルムを作った。従ってフィルムは、含有物と厚さが均一であった。
【0075】
このフィルムを約17分の間、80℃で種々の水分レベルまで乾燥した。乾燥したフィルムは約10%またはそれ未満の水分レベルを持っていた。そのフィルムを個々のフィルム片または層に切断した。個々の小片または層を、(フジ・インパルス・シーラーを使って)実施例A〜Dで上述したように熱および極めて小さな圧力で1つのエッジをシールした。組成FからAAに対する加熱シールの結果を下記4に提供する。具体的に、表4は、それぞれの組成をシールした温度(または範囲)を記載しており、あるいは、そうでないシールをしなかったものを示す。
【0076】
【表5】

【0077】
組成Fは165℃でシールしたが、しかしながら、少なくとも一つの理由として、ポリエチレンオキシドとポリデキストロースの欠如のために、それは遅い溶解時間を持っていた。特に、低温水中に置かれる場合、組成Fの二層フィルムは約3分10秒で開き始めた。約10分後にフィルムが漏れ始めた。すなわち、フィルムの弱い箇所が漏れて離層し始めた。
【0078】
他の残りの組成は、全てより速い溶解時間を持っていたが、しかしながら、いくつかの組成は、上記表4に示したようにシールしなかった。一般に、これらの組成は、その溶解温度またはガラス転移温度がフジ・ヒート・シーラー(heat sealer:加熱シール装置)の温度範囲(約85〜230℃)の中に入らなかったために、シールを欠いていた。これは、商業的に利用可能なヒート・シーラーであり、他の商業的に入手可能な通常の温度範囲での加熱シール装置に類似したものである。このような商業的に利用可能な装備を、薄いフィルムをシールし、そのフィルムに適切な粘着性レベルを提供するためのこれらの温度範囲で使うことを可能にするために、ポリマー組成は均衡がとれている必要がある。
【0079】
さらに詳細には、組成Gは、少なくとも一つの理由として、主に高いガラス転移温度(約160℃)を持つHPMC(75%)と、ポリマー組成の全体的なガラス転移温度を下げるように機能するさらに少ない量のPEO(25%)とを含んでいたため、テストされる温度範囲でシールしなかった。組成Gは、ガラス転移温度を下げるのを助けるための可塑剤も含まなかった。
【0080】
組成Mは、テストをするには非常に粘着性が高いために、シールをしなかったものとして示している。組成Mは、少なくとも一つの理由として、HPMCよりも低いガラス転移温度と、さらに可塑剤を有する100%のHPCを含んでいたために、非常に粘着性が高かった。
【0081】
組成Pは、少なくとも一つの理由として、組成Gに類似して、主にHPMC(75%)と、25%だけのHPCとを含んでいたため、テストされる温度範囲でシールしなかった。組成Pは、非常に少ない量のHPCを含有し、PEOは全く含有していなかった。さらに、組成Pはガラス転移温度を下げるための可塑剤を含有しなかった。
【0082】
組成Qは、少なくとも一つの理由として、HPMCとHPCの50%/50%のブレンドのみを含有し、シールを可能にするのに十分なガラス転移温度を下げるPEOまたは可塑剤を含有しないため、テストされる温度範囲でシールしなかった。
【0083】
組成Rは、少なくとも一つの理由として、主にHPMC(75%)と、十分ではないPEOとHPC(それぞれ12.5%)を含有し、可塑剤を含有しないため、テストされる温度範囲でシールしなかった。これと対照的に、共に同じポリマー比率(75%/12.5%/12.5%)を含んだ組成UとWを、テストされる範囲でシールした。組成物UとWは、それぞれ、シールを可能にするのに十分なガラス転移温度を下げる可塑剤を含んでいた。
【0084】
同じく組成Rと対照的に、組成ZとAAはいずれも同じポリマーの組み合わせ(HPMC、PEO、およびHPC)を含有していたが、しかしながら、より多い量のPEOとHPCに対して、より低い量のHPMCを含有していた。いずれの組成も可塑剤を含まなかったが、どちらもテストされる範囲内でシールした。PEOとHPCはいずれもHPMCより低いガラス転移温度を持ち、また、シールが形成されるように、ポリマー組成の溶解温度を下げるのに十分な量が存在していた。
【0085】
組成Tは、少なくとも一つの理由として、組成PでのようにPEOを全く含まなかったため、テストされる温度範囲でシールしなかった。組成Tは低いレベルの可塑剤(10%)を含んでいたけれども、ポリマーのブレンドにおいていくらかの量のPEOがなく、シールを可能にするのには十分ではなかった。
【0086】
二層フィルムは、層の間のポケットに特殊調製粉乳を含有した組成Y、Z、およびAAから準備した。二層フィルムを、それぞれ約2オンスの低温水を収容した哺乳ビンに加え、約1分から2分の間振り混ぜた。組成Yから結果として得られた形成物は、いくらかの非溶解粒子を含んでいたが、それ対し、組成ZとAAは際立った非溶解粒子を有しなかった。
【0087】
[実施例AB〜AH]
本発明の水溶性のフィルム組成を、表5で記載したポリマー組成を使って準備した。
【0088】
【表6】

【0089】
上記成分を、均一な混合が達成されるまで混合することによって組み合わせ、そして次に、実施例A〜Dで上述したように、調節可能なウェッジバーを備えたKコントロールコータを使ってリリースペーパー上でフィルムにキャスティングした。ウェッジバーを、組成AGからAHに対する種々のミクロン設定値、すなわちそれぞれの組成に対する特定の設定により350ミクロンから450ミクロンまでの値に設定した。それぞれの組成に対するウェッジバー設定で均一な厚さのフィルムを作った。従ってフィルムは、含有物と厚さが均一であった。
【0090】
このフィルムを約12分〜13分の間、80℃で種々の水分レベルまで乾燥した。乾燥したフィルムは約8%未満の水分レベルを持っていた。
【0091】
フィルムABおよびACは乾燥の際に収縮し、脆化および層間剥離した。このように、フィルムABとACは、ポリマー組成においてカルボキシメチルセルロースと組み合わせる時に非常に低い量のポリエチレンオキシド(それぞれ25%および37.5%)を持っていた。それと対照的に、同様にポリエチレンオキシドとカルボキシメチルセルロースの両方を含有したフィルムADとAEは柔軟であり、良好な引き裂き抵抗を示しており、そして二層フィルムを形成するためにシールした。フィルムADとAEはフィルムABとACよりも多い量のポリエチレンオキシド(それぞれ50%と75%)を含んでいた。
【0092】
フィルムADは、フジ・インパルス・シーラーを使って約45〜109℃の温度でシールした。層の間のポケットに粉末のクール・エイド(KOOL−AID)を含んだ二層フィルムを準備した。各層をフジ・インパルス・シーラーを使って約45℃でシールした。クール・エイドを含有した二層フィルムを約74℃の水を収容したビーカーに加えた。このフィルムは高温水中で開き、約4秒でクール・エイドを開放し、10秒未満で実質的または完全に溶解した。
【0093】
フィルムAEはフジ・インパルス・シーラーを使って約85℃の温度でシールした。
【0094】
フィルムAF(100%PEO)は柔軟であり、良好な引き裂き抵抗と強度を示し、そして二層フィルムを形成するためにシールした。フィルムAFは約45〜85℃の温度でシールした。
【0095】
引き裂き抵抗は、フィルムの対向する端部で引っ張ることによって部品がフィルムを引き裂くようにするパネルテストによって測定した。きれいに裂けたフィルムは低い評価を受けるようにした。少し伸びてから破れ始めたフィルムは中程度の評価を受けるようにし、また伸びて裂けるのが困難だったフィルムは高い評価を受けるようにした。
【0096】
層の間のポケットに粉末のクール・エイドを含んだ二層フィルムAFを準備した。各層をフジ・インパルス・シーラーを使って約45℃でシールした。二層フィルムの1つを約80℃の水を収容したビーカーに加えた。このフィルムは高温水中で開いて溶解し、約10秒未満でクール・エイドを開放した。第2の二層フィルムを約22℃の水を収容したビーカーに加えた。このフィルムは約20秒未満で低温水中で開いて実質的または完全に溶解した。
【0097】
フィルムAGとAHは、ポリマー組成にポリエチレンオキシドとポリデキストロースを含んでいた。いずれのフィルムも柔軟であり、良好な引き裂き抵抗と強度を示し、そして二層フィルムを形成するためにシールした。
【0098】
フィルムAGはフジ・インパルス・シーラーを使って約45〜85℃の温度でシールした。層の間のポケットに粉末のクール・エイドを含んだ二層フィルムAFを準備した。各層を約45℃と85℃でシールした。二層フィルムの1つを約80℃の水を収容したビーカーに加えた。このフィルムは高温水中で開いて溶解し、約10秒未満でクール・エイドを開放した。第2の二層フィルムを約22℃の水を収容したビーカーに加えた。このフィルムは約20秒未満で低温水中で開いて実質的または完全に溶解した。
【0099】
フィルムAHはフジ・インパルス・シーラーを使って約60〜85℃の温度でシールした。3つの二層フィルムを準備した。二層フィルムは、層の間のポケットに粉末のクール・エイドを含んでいた。この二層フィルムを約19℃の水を収容したビーカーに加えた。このフィルムは低温水中で開いて溶解し、約20秒未満でクール・エイドを開放した。第2の二層フィルムは層の間のポケットにコーヒーを含んでいた。この二層フィルムを約75℃の水を収容したビーカーに加えた。このフィルムは高温水中で開いて溶解し、約11秒でコーヒーを開放した。第3の二層フィルムも層の間のポケットにコーヒーを含んでいた。この二層フィルムを約22℃の水を収容したビーカーに加えた。このフィルムは約35秒で開いて低温水中に実質的または完全に溶解した。
【0100】
[実施例AI]
層の間のポケットにコーヒーを含んだ二層フィルムを準備した。詳細には、コーヒーを含有した3つの二層フィルムを、組成AF、AG、およびAH(上記表5に記載した成分)を使って準備した。これらの組成は、それぞれ、0%、20%、および40%のポリデキストロースを含有していた。3つの二層フィルムを約80〜85℃の水を収容したビーカーに加えた。高温水中で開いて実質的または完全に溶解するのに要する時間を以下の表6に示す。
【0101】
【表7】

【0102】
上記の表から見られるように、ポリエチレンオキシド二層フィルムへのポリデキストロースの付加は、シール特性に影響を与えることなく高温水での溶解度を改善する。
【0103】
ポケットにコーヒーを含有するさらに2つの二層フィルムを、組成AFとAHから準備した。2つの二層フィルムを約22℃の水を収容したビーカーに加えた。低温水中で開いて実質的または完全に溶解するのに要する時間は上記表6に示されている。
【符号の説明】
【0104】
10 フィルム
20 フィルム
30 フィルム
100 第1のフィルム層
110 直面係合ポイント
120 折り目
200 第2のフィルム層
300 ポケット
400 哺乳ビン
500 外側容器
510、520 室
530 蓋
540 室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの水溶性ポリマーを含む第1のフィルム層と、
前記第1のフィルム層に少なくとも部分的に直面係合する1つ以上の追加のフィルム層と、を含み、
前記1つ以上の追加のフィルム層は、前記第1のフィルム層の少なくとも1つの水溶性ポリマーの融点またはガラス転移温度よりも、少なくとも10℃高いガラス転移温度を有する少なくとも1つのポリマーを含む、多層フィルム。
【請求項2】
層が、1つの層を他の層の上に被覆することによって互いに接着される、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
層が、加熱シールまたは溶剤接合によって互いに接着される、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項4】
前記第1の層または1つ以上の追加の層が、層を互いに接着させるために存在する十分な溶剤を有する、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項5】
少なくとも1つの層内に少なくとも1つの有効成分が存在する、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項6】
1つ以上の追加の層内に少なくとも1つの有効成分が存在する、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項7】
フィルムが前記有効成分の制御された放出を提供する、請求項5または6に記載の多層フィルム。
【請求項8】
溶解度エンハンサーをさらに含む、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項9】
少なくとも1つの層が酸または塩基を含む、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項10】
酸および塩基が存在する、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項11】
フィルムが各々の周囲で部分的に直面係合する、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項12】
フィルム層の少なくとも1つが粒子状物質をさらに含む、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項13】
前記第1の層が前記1つ以上の追加の層と異なる寸法を有する、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項14】
前記第1の層の溶解速度が、適切なガラス転移温度を有する1つ以上の追加のフィルム層のポリマーを選択することによって制御される、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項15】
a)水溶性ポリマーを含む第1のフィルム層を準備する段階と、
b)1つ以上の追加のフィルム層を前記第1のフィルム層と少なくとも部分的に直面係合させて配置する段階と、を含み、
1つ以上の追加の層は、第1のフィルム層内の少なくとも1つのポリマーの融点またはガラス転移温度よりも少なくとも10℃高いガラス転移温度を有するポリマーを含む、多層フィルムの製造方法。
【請求項16】
1つ以上の追加の層が乾燥時に第1のフィルム層に接着する、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
1つ以上の追加の層が、溶剤接合または加熱シールによって互いに接着される、請求項15に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図2a】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−50394(P2011−50394A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250001(P2010−250001)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【分割の表示】特願2007−534705(P2007−534705)の分割
【原出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(504322976)モノソル・アールエックス・エルエルシー (12)
【Fターム(参考)】