説明

坑井内で流体の元素分析を行う方法及び装置

本発明は、坑井内で地層流体の元素分析を行う方法及び装置を提供する。本発明は、分光分析法を用いて坑井内で地層流体の元素分析を行う。本発明の一面において、地層流体試料についてレーザー誘導分析を行うための方法と装置とが提供される。本発明の他の面において、スパーク誘導分光分析を行う方法と装置とが提供される。坑井内で被検流体にプラズマが誘導される。プラズマからの発光が分析されて、被検流体の元素組成が決定される。発光は、紫外、可視、及び近赤外のスペクトル領域の光を含むが、それらに限定されない。坑井内で流体の元素分析を行うために、分光器が与えられる。元素分析は流体についての情報と、その流体が生じた地層についての情報とを与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、坑井内の流体試料の組成分析に関する。より詳しくは、本発明は、その構成成分をレーザー誘導分光分析(LIBS)、スパーク誘導分光分析(SIBS)、又はプラズマ発生と発光分析の類似技術によって分析することのできる、坑井内の試料の元素分析に関する。
【背景技術】
【0002】
ある材料試料中に大量に含まれる成分及び微量に存在する成分の分析を実質的に即時的に及び/又は採取直後に行うことが必要であること、又は望ましいことが多々ある。試料となる材料としては、地質学的試料、土壌試料、冶金粉末、セラミックス、食品、薬品、及び他の数多くの材料を挙げることができる。これらの材料の成分組成を試験するのが望ましい理由は多い。炭化水素の生産は経費がかかり、特定の炭化水素を産する地層の開発が硫黄などの望ましくない元素の量によっては行うことができないのがわかれば、ある地層を生産不可能であると考えることもある。油層の区画化も炭化水素生産の間に遭遇する問題であり、このような区画の存在は、何百万ドルもの生産経費が関係する生産の決定に影響を与える価値ある情報である。
【0003】
現在のところ、坑井内で元素分析を行う公知の方法及び装置はない。地層流体について坑井内で元素分析を行って地層流体試料の性質と該流体が生成された地層の性質とを測定するのは有用なことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、坑井内で地層流体の元素分析を行う方法と装置とを提供する。本発明は、分光分析を用いた、坑井内での地層流体の元素分析法を提供する。坑井内で被検流体にプラズマが誘導される。プラズマからの発光が分析されて、被検流体の組成を決定する。発光は、紫外、可視、及び近赤外のスペクトル領域の光を含むが、それらに限定されない。坑井内の流体の元素分析及び組成分析のために、分光分析機が用意される。組成分析は、流体と、流体が生じた地層とについての情報を与える。本発明の一面において、地層流体試料についてのレーザー誘導分光分析を行うための方法及び装置が提供される。本発明の別の面において、スパーク誘導分光分析を行うための方法及び装置が提供される。研究室内で、常圧の空気中で分光分析を行う方法はよく知られている。しかしながら、この技術を坑井内に適用するのには、解決しなければならない問題が多数有る。第一に、坑井内の流体は、通常、10〜20 kpsiという非常に高い圧力下にある。したがって、坑井内にこのような技術を適用するためには、プラズマ内の圧力が流体内の圧力を超える程度まで温度を上げる(約10,000℃)ように、十分に短い時間内に十分に小さい体積に対して必要なエネルギーを与えなければならない。このようにして、プラズマの小さな泡沫を高圧の流体内で形成するのが可能になる。第二に、自身が発する光を強く吸収する(原油などの)暗色の流体内にこの泡沫が浸漬されても、プラズマのこの泡沫から来る光を検出することができなければならない。
【0005】
本発明の目的と効果とは以下の詳細な記載を読むことによって、また、添付の図面を参照することによって明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、様々に異なる形態の態様で実施することができる。本発明の具体的な態様例が図示され、詳細に記述される。この好適な態様の開示は、発明の原理を例示するためのものと理解されるべきであり、図示され、記載されている態様に本発明を限定することを意図するものではない。特に、本発明の様々な態様は操作の数多くの異なる構造と方法とを提供しており、本発明の精神と教示とから離れることなく、当業者であれば、変更を加えることができる。以下に記載の異なる態様の教示は別々に採用することもできるし、所望の結果を得るために、適切に組み合わせて用いることもできることを完全に理解されたい。
【0007】
本発明は、主要な組成及び不純物の分析のために、坑井内のその場において、スパークを用いることによって、又はレーザー光を対象試料に照射することによってプラズマを発生させ、レーザー誘導分光分析(LIBS)又はレーザー誘導プラズマ分光分析(LIPS)を行う方法及び装置を提供する。本発明は、坑井内の流体と光学的な窓との間の境界にプラズマの泡沫を発生させることによって、又は光ファイバーの先端でプラズマの泡沫を発生させることによって、プラズマの泡からの光を集める方法を提供する。分光分析の感度は元素によって変化する。Be、Mg、Cr、Fe、Ag、Hgについては1ppm未満の最小検出感度を期待することができ、Li、B、Na、Cl、Ca、Ti、Mn、Ni、Cu、Zn、Sr、Ba、Pb、Thについては1〜10 ppm未満の最小検出感度、C、F、Al、Si、S、K、Co、Ga、Rb、Zr、Nb、Tc、Pd、Cd、Sn、Cs、Eu、Pt、Tlについては10〜100 ppmの最小検出感度、P、V、Ge、As、Mo、I、Au、Biについては100〜500 ppmの最小検出感度、Y、In、Sb、Te、Hf、Wについては500 ppmを超える最小検出感度を期待することができる。分光分析は、H、N、O、Ar、Sc、Ru、Rh、Gd、Er、Re、U、Pu、及びAmについては定性的な結果しか示さない傾向がある。
【0008】
LIBSは、様々な固体、液体及び気体の元素組成を決定するのに有用な方法である。図1を参照すると、本発明の好適な態様100においては、LIBS技術を用いることによって高出力レーザーパルス20の焦点を試料30に合わせて、試験点又は焦点領域でプラズマ又はレーザースパークを発生させる。焦点領域におけるスパークは、様々な原子状の元素を生成させて励起する高密度プラズマプルーム26を発生する。プラズマからの原子発光24はコリメーターレンズ又は光ファイバーによって集めることができ、スペクトルグラフ及びゲート検出器によって分析される。原子スペクトル線は試料中の元素組成又は元素濃度を測定するのに使用することができる。この分析は、当業者には知られている誘導結合高周波プラズマ(IPC)分析機によって行われる分析に類似している。レーザー源28は、プローブ22と、プラズマから集められた発光を処理して分析する分光分析機/演算処理装置を含む電子機器32とにレーザーパルスを与える。プローブ22は窓32を介して流体管42の中にある流体30と相互作用することができ、又はプローブ22は図2に示されている流体30中に挿入することができる。レーザーパルスは、例えば光ファイバーケーブル等の光学管34を経てプローブ22に伝達される。光学管34は、プラズマ26から発せられた光を集めることも行い、集めた光を分光分析機/演算処理装置を含む電子機器32に送る。電子機器32内では予備調節とゲート処理(gating)とが行われる。
【0009】
様々なレーザーを用いてLIBSを行うことができるが、通常は、エキシマ又はパルスNd:YAGレーザーが使用される。ガス管レーザー又はダイオードレーザーも使用することができる。試料30と相互作用する高強度レーザーパルス20は、入射レーザーパルスの衝撃点22から時間と共に上昇して行くプルーム26を生成する。レーザーパルスの継続時間は、通常、20ナノ秒(ns)未満である。プラズマプルーム26からの発光が集められて、検出システムによって分析される。自己吸収効果又は表面の効果によるデータへの影響を小さくするために、通常、発光24は試料30から多少離れた位置で集められる。生成されたプラズマが試料の化学結合の全てを破壊し、成分要素の多くをイオン化するのが理想である。スペクトル発光は、構成成分の被励起種が引き続いて緩和することの結果として起こる。
【0010】
LIBS装置及び技術のより詳細な説明のために、シンら(Singh et al.)に与えられ、「レーザー誘導分光分析の分析的方法」と題された米国特許第5,751,416号明細書を参照する。この参照によって、この文献の記載の全文を本願明細書に取り入れる。
【0011】
本発明は、ドリル・ストリング若しくはコイル・チューブから展開されると、試錐されている坑井から抜き出される地層流体の分析、又は掘削操作中にモニタする流体の分析に有効に使用することができる。この明細書において、「流体」という用語は、気体、液体、又は気体、液体及びそこに懸濁している濃縮物若しくは微粒子の多層混合物を意味する。別の態様においては、本発明の装置をパイプライン中に配置して、パイプラインを通って輸送される流体の分析に使用することもできる。この各々の場合において、LIBS装置は、該装置が配置された環境に関連する流体の元素分析を行うために提供される。同様に、流体の元素分析を行うために、LIBS装置の代わりにスパーク誘導分光分析装置を使用することもできる。元素分析を行うと、本発明によって流体の組成を予測し、その流体を産する地層の性質を予測評価することができる。
【0012】
スパーク誘導分光分析(SIBS)、レーザー誘導分光分析(LIBS)としてよりよく知られているレーザー誘導プラズマ分光分析(LIPS)は、パルス状のレーザー光が励起源として使用される原子発光分析の一形態である。QスイッチNd:YAG等のパルス状レーザー光の出力は、分析される材料の表面又は材料中に焦点を合わせられる。通常10〜20ナノ秒であるレーザーパルスの継続時間中、小型のレーザー装置と簡単な焦点レンズを用いただけで、材料の表面における電力密度は1cm2あたり1ギガワットを超えることもあり得る。
【0013】
これらの非常に高い電力密度において、レーザーアブレーションとして知られるプロセスによって1マイクログラムの数分の一の材料が表面から放出され、温度が瞬間的に10,000℃にも達する、短命であるが高光度のプラズマが材料の表面に形成される。この高温のプラズマ内で、放出された材料は励起されたイオン種と原子種とに解離される。レーザーパルスの最後では、外側に向かって超音速で広がりながら、プラズマは急激に冷却する。この間に、励起されたイオン及び原子は低いエネルギー状態に戻りながら、特徴的な光学的放射を発する。感光性のあるスペクトルグラフを用いてこの光学的放射を検出し、スペクトル分析によって、材料の元素組成についての情報を得ることができる。
【0014】
電子機器32においては、レーザープラズマからの発光をレーザーパルスより若干遅れて記録することのできる時間ゲート式の検出器が使用される。特徴的な原子及びイオンの発光線はプラズマが拡大して冷却してから現れ始めるので、この検出器の採用は好ましいことである。
【0015】
プラズマプルームからの発光は、光ファイバーによって集められ、分光計を有する検出システムによって分析される。試料の化学結合は生成された高温のプラズマによって破壊され、該高温のプラズマは成分元素をイオン化する。励起成分種が消滅した後、スペクトルの発光が起こる。スペクトル発光線のタイミングは試料のタイプに応じて変化するが、プラズマの中心からの距離によっても変化する。また、入射レーザー光の波長も一因子となる。プラズマの発生とその中身の変化はマイクロ秒の時間規模で起こる。なお、LIBS装置は、レーザー誘導蛍光分光分析(LIF)にも使用することができる。
【0016】
LIBSにおいては、焦点を合わせたパルス状のレーザー光線によって少体積の対象流体が強力に加熱されて遷移プラズマ状態になり、その状態では、試料成分は実質的にバラバラの原子になる。高温のプラズマにおいては、原子はイオン化されるか、励起状態になる。このような状態の崩壊は、紫外(UV)、可視及び近赤外(NIR)領域の電磁スペクトルとして観察される、発光によって特徴付けられる。UV、可視及びNIR光の発光の分光処理によって、坑井内で被検流体の組成分析及び元素分析を行うことができる。
【0017】
LIBS装置は、例えば持続時間が20ナノ秒(ns)以下の短時間パルスを提供するレーザーを有している。この時間は非常に短いので、非常に高い電力レベル(単位時間当たりのエネルギー)を達成するのに、ほんの少しのエネルギー、例えば1パルス当たり10マイクロジュール(mj)のエネルギーを与えればよい。この例においては、光ファイバーケーブルを介して光学機器が与えられる。光ファイバーケーブル(スパーク誘導分光分析用では、その長さの大部分に亘って金属コートされていてもよい)は、被調査流体にレーザーパルスを伝達するための開いた端部を有するLIBSレーザー源として機能する。レーザー光線の入射領域において被調査流体から発光される光を捕捉するためにも、光学機器が配置される。被調査流体の元素分析における化学的同定にあたって、様々な元素及びイオンからの光を検出して分離するためにも分光器が提供される。流体試料に当たるとプラズマが形成され、そこから発せられた光が、流体に含まれている元素からの痕跡を生成する。
【0018】
この例においては、LIBSレーザー源とLIBS光収集装置とは単一の光ファイバー内に組み合わされて入れられるが、別々の光ファイバーに分けてもよい。LIBSレーザー源用光ファイバーとLIBS光収集用光ファイバーとのいずれか一方又は両方を被調査流体に挿入してもよいし、発光及び/又は集めた光を通過させる窓を介して流体に光を送ったり流体からの光を集めたりしてもよい。
【0019】
LIBS装置は、程度の差こそあれ、通常、対象の試料と元素に応じて0.1〜200 ppmのオーダーの検出限界でかなり多くの元素に対して感度を示す。本発明によると、掘削操作中、流体生産中及び流体流通中に流体の組成とその源泉の地層との測定・決定を含む(これらに限定されない)数多くの複雑な分析を行うことができる。
【0020】
図1に示されているように、LIBSレーザー光源28は、被調査流体30における特定の場所にレーザーパルス20を伝達し、また、流体にレーザー光パルスを印加して該流体中で形成されたプラズマからの光24を集める光ファイバー34を有している。プラズマ26は、高強度のレーザーパルスによって誘導又は生成される。スパーク誘導分光分析(SIBS)に使用する場合は、先端23を除いて、その長さの大部分を電気伝導性があるようにするために、金属被覆21によって光ファイバーの大部分に亘る被覆を施してもよい。さらに、光ファイバーの先端23も光透過性はあるが電気伝導性のないコーティング(酸化錫、又は酸化インジウム錫)によって被覆することもできる。電界が流体の降伏電場強度を超えると、必ずスパークが発生する。任意の電圧についてスパークの生成を容易にするために、電極の曲率半径を小さくすることによって、局所的な電界強度を大きくすることができる。導体の周囲の電界は、該導体の曲率半径に反比例して増加する。したがって、その先端が点になるように尖っており、光透過性はあるが電気伝導性のないコーティング25で被覆されている光ファイバーケーブルと、金属板又は金属針のいずれかとの間にスパークを生成することによって、任意の電圧についてスパークの生成性を高めることができる。光ファイバー23の端部は光透過性であって、そこからレーザー光パルスが流体30に入るようになっている。高強度レーザーパルス20によってプラズマ26が流体中に誘導される。すると、光プローブの端部23がプラズマから発された光を集めて、光学管34を通して分光器/演算処理装置を含む電子機器32で構成される分析システムに送る。
【0021】
図3に示されている別の態様においては、電極36が流体30の中へとスパークを誘導する。このスパークは流体中にプラズマ26を発生又は誘導する。光プローブの端部23は、流体中に形成されたプラズマから発された光24を集めて、光学管34を通して分光器/演算処理装置を含む電子機器32で構成される分析システムに送る。プラズマは高強度レーザーパルスによって生成される。光ファイバーは、該光ファイバーの大部分に亘って金属で被覆されており、その先端は、電気伝導性はあるが光透過性のないコーティング(酸化錫、又は酸化インジウム錫)によって被覆することもできる。光学管又は光ファイバー23の端部は、スパークによって誘導されたプラズマからの光を集め、集めた光を分析のために分光器に送るために光透過性がある。プラズマは、流体中で高強度のレーザーパルスによって生成される。電極36のより詳細な説明図は図7に示されている。図7に示されているように、プローブ22は、光透過性のある材料25で被覆された、尖った先端23を有している。プローブ22の該先端以外の部分は、実質的に金属被覆21が施されていてもよい。図7に示されているように、スパークの発生を目的として電極によって地層流体中に生成される電界を大きくするために、該電極は削られた、又は尖った端部37を有している。
【0022】
元素分析は、調査、生産、掘削及び運搬操作中の流体を産する地層を定めるのに有用である。調査においては、どのゾーンの炭化水素を最も経済的に生産できるかを知る必要がある。高レベルの硫黄を含む炭化水素は、硫黄を除去するために追加的な処理を必要とするので、価値が低い。同様に、水銀を除去するためにも追加的な処理が必要である。生成した石油製品中の許容ppb濃度に関してより厳しい環境規則が施行されるので、この水銀の除去は益々重要になっている。また、ニッケル及びバナジウムは、原油を加工するために精油所が使用する高価な(触媒単位当たり百万ドル以上もする)触媒をだめにする可能性があるので、高レベルのこれらの元素を含む炭化水素は価値が低い。さらに、異なった油井からの流体、又は同一の油井でも深さの異なる位置から採掘した流体は、油層の区画化の有無を判断するために比較することができる。生産において、時間が経つにつれて特定の領域の元素組成が変化することは、油田の排油が油層の新しい領域にまで延び始めていることを示している場合がある。分析は、ブライン又は炭化水素流体(液体若しくは気体)について行うことができる。掘削操作においては、流体試料について組成分析を行って、望ましい物質と硫黄などの望ましくない物質との量を測定することができる。望ましくない物質を含有する地層内にある油井が入り込んでいる地層、又は区画が存在する層については生産を行わない方がよい場合がある。また、ある特定の注入井に特有の形で存在している微量の元素又はトレーサーが流体又は地層に存在しているかどうかを判断するために、流体の組成を分析することによって、注入井の地層への寄与も評価することができる。掘削孔内には、通常、存在せず、それに対する技法が高い感度を有している元素トレーサーを、油層の接続状態を判断するために使用することができる。
【0023】
図4に示されているように、本発明100の装置は、地層内に掘削された坑井404中で、抗内に配置される。本発明の装置は、ワイヤライン、ドリル・ストリング、若しくはコイル・チューブ(これらに限定されない)を有する搬送装置412を介して、又は生産管若しくは配給管内に展開することができる。地層402から流体が抜き出され、流通ライン410を通って抗内機器406に送られる。次いで、抗内機器406に含まれる本発明の装置は、先に議論した、流体内で誘導されたプラズマからの発光の分光分析を用いて流体を分析する。このように、本発明の装置は、掘削中、掘削後、生産中、及び流体の配送中に流体を分析するために使用することができる。
【0024】
ここで図5を参照すると、ここには本発明の別の態様が示されている。図5に示されているように、本発明の装置100は、配給管44を通して、流体30の元素分析用に配置することができる。このように、配給される流体(石油及び天然ガス)の源泉と品質とをその配給地点で又は配給管44内での配給中に評価することができる。
【0025】
図6には、本発明の好ましい態様において行われる機能及び作用のフローチャート600が示されている。本発明は被検流体602にプラズマを誘導し、プラズマ604からの発光を集める。プラズマからの発光は、演算処理装置/分光器/電子装置に送られ、組成の評価と元素分析606に付される。このような分析によって、本発明では、流体の性質(組成など)、又は地層の性質(区画化の有無;調査中の流体において、注入井を形成する流体の素性をトレースすることによる地層への注入井の寄与等)を評価する。
【0026】
本発明は、好ましい態様では坑井内環境下で行う方法及び装置として記載されてきた。しかしながら、本発明は、ROM、RAM、CD ROM、フラッシュメモリ、又は現在知られている、若しくは知られていないコンピュータで読むことのできる他の媒体であって、実行されるとコンピュータに本発明の方法を実施させるものを有する、コンピュータで読むことのできる媒体に記憶させる1セットの指示として具体化することもできる。本発明の好ましい態様は上記記載によって示されたが、これは例示のためのみの記載であって本発明の範囲を制限することを意図するものではない。本発明の範囲は添付の請求項に定められている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の好適な一態様の説明図であって、窓を介して流体と相互作用するレーザー誘導分光分析装置を示している。
【図2】本発明の好適な一態様の説明図であって、流体中に挿入され、流体と相互作用するレーザー誘導分光分析装置を示している。
【図3】本発明の好適な一態様の説明図であって、流体中に挿入され、流体と相互作用するスパーク誘導分光分析装置を示している。
【図4】本発明の好適な一態様の説明図であって、搬送機構を介して坑井中で展開されている様子を示している。
【図5】本発明の好適な一態様の説明図であって、配給管を用いて展開されている様子を示している。
【図6】本発明の好適な一態様によって行われる機能と動作との説明図である。
【図7】スパーク誘導分光分析装置のより詳細な概念図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
坑井内で流体にプラズマを誘導し、
該プラズマからの発光を集め、及び
該発光を分析して坑井内で流体の組成を評価する
ことを特徴とする、坑井内で流体の組成を評価する方法。
【請求項2】
前記プラズマを誘導することが、前記流体中でレーザーパルスを発生することをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プラズマを誘導することが、前記流体中でスパークを発生することをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プラズマからの発光を集めることが、光ファイバーケーブル内で光を受けることをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記発光を分析することが、該発光の元素分析を行うことをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記流体に関係する地層の性質を評価することをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記性質が区画化であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記流体内にトレーサーを注入することをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記流体内に前記プラズマを誘導することが、窓を介して流体にエネルギーを送ることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記発光が、可視光、近赤外光及び紫外光の1つをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記流体内でスパークを発生することが、光学的に透明であって電気伝導性のあるコーティングで被覆された先端を有する、その大部分が金属で被覆されたファイバーを介して電界を発生させることをさらに含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
坑井内の流体と連絡しているプラズマ発生機、
坑井内で流体中に発生されたプラズマと光学的に連絡している光学センサ、及び
坑井内の前記流体の組成を評価するために、該光学センサからの出力を演算処理するように設定されている演算処理機
を有することを特徴とする、坑井内の流体の組成を評価する装置。
【請求項13】
前記プラズマ発生機が、レーザーパルスを坑井内の前記流体に送るための光学管をさらに有していることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記プラズマ発生機が、坑井内で前記流体中にスパークを発生させるための電極をさらに有していることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
坑井内で流体中に発生されたプラズマと前記光学センサとの間に窓をさらに有することを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項16】
前記演算処理装置が、前記発光の元素分析を行うようにさらに設定されていることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項17】
前記演算処理装置が、坑井内の前記流体に関連する地層の性質を評価するようにさらに設定されていることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項18】
前記演算処理装置が、地層の区画化の有無を判断するようにさらに設定されていることを特徴とする、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記演算処理装置が、分析によって前記流体の生じた地層を判断するようにさらに設定されていることを特徴とする、請求項16に記載の装置。
【請求項20】
前記プラズマ発生機が、スパークを発生するために、光学的に透明で電気伝導性を有するコーティングで被覆されたファイバー先端をさらに有していることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
坑井内の流体と連絡しているプラズマ発生機、
坑井内で流体中に発生されたプラズマと光学的に連絡している光学センサ、及び
坑井内の前記流体の組成を評価するために、該光学センサからの出力を分析するように設定されている分光器
を有することを特徴とする、坑井内の流体の組成を評価する坑井内機器。
【請求項22】
前記プラズマ発生機が、レーザーパルスを坑井内で前記流体に送るための光学管と、坑井内で前記流体中にスパークを発生するための電極との少なくとも一方を有していることを特徴とする、請求項19に記載の坑井内機器。
【請求項23】
前記組成を評価することが、Be、Mg、Cr、Fe、Ag、Hg、Li、B、Na、Cl、Ca、Ti、Mn、Ni、Cu、Zn、Sr、Ba、Pb、Th、C、F、Al、Si、S、K、Co、Ga、Rb、Zr、Nb、Tc、Pd、Cd、Sn、Cs、Eu、Pt、Tl、P、V、Ge、As、Mo、I、Au、Bi、Y、In、Sb、Te、Hf、W、H、N、O、Ar、Sc、Ru、Rh、Gd、Er、Re、U、Pu及びAmの内の少なくとも1つの存在を評価することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記発光を分析することが、坑井内の分光器によって行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−510439(P2009−510439A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533476(P2008−533476)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/037226
【国際公開番号】WO2007/038413
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(301008534)ベイカー ヒューズ インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】