説明

垂下式塗装装置および塗装システム

【課題】貨物槽の内面または供給部が損傷するのを防止しつつ安定した塗装を行う。
【解決手段】垂下式塗装装置(10)は、槽(800)の上面に形成された開口部(920)を通って垂下された支柱(11)と、支柱に沿って昇降可能であって支柱周りに回動可能な塗装装置本体(12)と、槽の寸法データを記憶する記憶部(101)と、塗装装置本体全体にわたって配置された複数の監視点のそれぞれと、記憶部に記憶された槽との間の最短距離を所定周期毎に算出する算出部(102)と、算出部により算出された複数の最短距離のうちの少なくとも一つが所定の値よりも小さい場合には前記塗装装置本体の動作を停止させる動作停止部(103)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に油槽船内に形成された貨物槽、例えば油槽の内面を塗装するのに用いられる垂下式塗装装置およびそのような塗装装置を備えた塗装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
中型および大型船舶内には鋼板製貨物槽、例えば油槽が甲板の下方に形成されている。このような貨物槽の内部空間は高さが約15mから20mで幅および奥行が約10mから20mであり、比較的大きい。このような貨物槽の内面を塗装する塗装作業はブラスト作業と清掃作業と塗布作業とを含んでいる。
【0003】
はじめに研掃材を貨物槽の内面に高速投射することにより貨物槽内面の付着物を除去するブラスト作業を行う。次いで目視によるブラスト検査を行った後に、研掃材を回収すると共に貨物槽内面を清掃する清掃作業を行う。次いで塗装剤を貨物槽内面に塗布すると共に塗布された塗膜を目視検査することを含む塗布作業を行うことにより塗装作業を完了する。
【0004】
特許文献1には、そのような塗装作業を行うための塗装装置が開示されている。特許文献1に開示される塗装装置は垂下式であり、台板上に設置された昇降部と、台板に形成された開口部を通じて昇降部によって台板下方に位置する穴の鉛直方向下方に垂下された支柱と、を含んでいる。そして、この支柱に沿って塗装装置本体が昇降する構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3607260号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される垂下式塗装装置は油槽船の貨物槽で使用されることが多く、貨物槽内面にはアングルなどの多数の段差部が形成されている。そのような環境で垂下式塗装装置を使用すると、塗装装置本体の先端が貨物槽の内面または段差部に接触する可能性がある。
【0007】
そのような場合には、貨物槽の内面に塗布された塗料が部分的に剥離したり、塗装装置の供給部自体が破損して、塗料などを供給できなくなる事態が生じうる。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、貨物槽の内面または塗装装置本体が損傷するのを防止しつつ安定した塗装を行うことのできる垂下式塗装装置およびそのような塗装装置を備えた塗装システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために1番目の発明によれば、槽の上面に形成された開口部を通って垂下された支柱と、前記支柱に沿って昇降可能であって前記支柱周りに回動可能な塗装装置本体と、前記槽の寸法データを記憶する記憶部と、前記塗装装置本体全体にわたって配置された複数の監視点のそれぞれと、前記記憶部に記憶された前記槽との間の最短距離を所定周期毎に算出する算出部と、該算出部により算出された複数の最短距離のうちの少なくとも一つが所定の値よりも小さい場合には前記塗装装置本体の動作を停止させる動作停止部とを具備する、垂下式塗装装置が提供される。
【0010】
すなわち1番目の発明においては、塗装装置本体の監視点と槽との間の最短距離が所定の値よりも小さくなったときに塗装装置本体を停止させている。つまり、塗装装置本体が槽に接触する前に、塗装装置本体を停止させているので、塗装装置本体が槽に接触するのを回避できる。従って、槽の内面または供給部が損傷するのを防止しつつ、安定した塗装作業を行うことが可能となる。
【0011】
2番目の発明によれば、1番目の発明において、さらに、前記塗装装置本体の先端部に取付けられた少なくとも一つの歪検出部を具備し、前記動作停止部は、該歪検出部による信号値が所定の範囲を越えたときに前記塗装装置本体の動作を停止させるようにした。
すなわち2番目の発明においては、歪検出部、例えば歪ゲージによる信号値が所定の範囲を越えた場合には、供給部の先端部が槽の内面などに実際に接触したと判断できる。そのような場合に供給部を直ちに停止させることにより、槽の内面または供給部自体が損傷するのを防止できる。
【0012】
3番目の発明によれば、2番目の発明において、さらに、前記塗装装置本体の先端部に接続された第一塗料管と、該第一塗料管と塗料源とを接続していて前記第一塗料管よりも大径の第二塗料管と、前記第一塗料管と前記第二塗料管との間に配置された開閉弁と、を具備する。
すなわち3番目の発明においては、供給部の動作を停止させるときに、開閉弁を閉鎖して塗料などの供給も同時に停止する。動作停止部が開閉弁を閉鎖してもよく、また操作者が手動で閉鎖してもよい。開閉弁は塗料の流れに対して第一塗料管よりも上流に配置されているので、第一塗料管が損傷した場合であっても、塗料が第一塗料管の損傷箇所から漏洩し続けるのを防止できる。なお、第一塗料管と供給部の先端部との間に別の開閉弁が配置されるのが好ましく、塗料などの漏洩をさらに防止できる。
【0013】
4番目の発明によれば、1番目から3番目のいずれかの発明において、さらに、前記槽における前記支柱の計測された位置と前記槽の寸法データの開口部の位置に応じて定まる前記支柱の目標位置との間の偏差に基づいて、前記垂下式塗装装置の動作プログラムを変更する変更部を具備する。
すなわち4番目の発明においては、支柱の位置の計測値と目標値との間の偏差に基づいて、プログラムを変更するので、垂下式塗装装置による動作をより正確に行うことができる。
【0014】
5番目の発明によれば、1番目の発明において、さらに、前記支柱に対して平行な軸線回りに回動可能なゴンドラを具備する。
すなわち5番目の発明においては、操作者がゴンドラに搭乗して、対象物に極めて近くまで接近して、検査作業、補修作業などを行うことが可能である。
【0015】
6番目の発明によれば、槽の上面に形成された第一開口部を通って垂下された第一支柱と、該第一支柱に沿って昇降可能であって前記第一支柱周りに回動可能な第一塗装装置本体とを含む第一垂下式塗装装置と、前記上面に形成された第二開口部を通って垂下された第二支柱と、該第二支柱に沿って昇降可能であって前記第二支柱周りに回動可能な第二本体とを含む第二垂下式塗装装置と、前記第一垂下式塗装装置を制御する第一制御部と、前記第二垂下式塗装装置を制御する第二制御部と、前記第一制御部および前記第二制御部が接続されている上位制御部と、を具備し、前記第一制御部は前記第一垂下式塗装装置の少なくとも前記第一本体全体にわたって配置された複数の第一監視点の位置を所定周期毎に前記上位制御部に送信しており、前記第二制御部は前記第二垂下式塗装装置の少なくとも前記第二本体全体にわたって配置された複数の第二監視点の位置を前記所定周期毎に前記上位制御部に送信しており、前記上位制御部は、前記第一監視点のそれぞれと前記第二監視点のそれぞれとの間の距離を前記所定周期毎に算出する算出部と、該算出部により算出された複数の距離のうちの最短距離が所定の値よりも小さい場合には前記第一供給部および前記第二供給部の動作を停止させる動作停止部とを含む、塗装システムが提供される。
【0016】
すなわち6番目の発明においては、第一塗装装置本体の監視点と第二塗装装置本体の監視点との間の最短距離が所定の値よりも小さくなったときに第一塗装装置本体および第二塗装装置本体を停止させている。つまり、第一塗装装置本体および第二塗装装置本体が互いに接触する前に、これら第一塗装装置本体および第二塗装装置本体を停止させているので、第一塗装装置本体および第二塗装装置本体が互いに接触するのを回避できる。従って、第一塗装装置本体および第二塗装装置本体が損傷するのを防止しつつ、安定した塗装を行うことが可能となる。なお、第一および第二塗装装置本体が動作している場合には両方の塗装装置本体を停止させ、一方の塗装装置本体のみが動作している場合には当該一方の塗装装置本体のみを停止させればよい。また、第三塗装装置本体を備えた第三垂下式塗装装置を追加して、第一塗装装置本体の監視点と第二塗装装置本体の監視点との間の最短距離、第二塗装装置本体の監視点と第三塗装装置本体の監視点との間の最短距離ならびに第三塗装装置本体の監視点と第一塗装装置本体の監視点との間の最短距離のいずれかが所定の値よりも小さい場合に、第一塗装装置本体、第二塗装装置本体および第三塗装装置本体を停止させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に基づく垂下式塗装装置の設置状態を示すための船舶の部分断面図である。
【図2】垂下式塗装装置の本体と昇降機との拡大図である。
【図3】垂下式塗装装置の本体の斜視図である。
【図4】(a)本発明に基づく垂下式塗装装置の本体に接続されるブラストホース巻上部の拡大図である。(b)図4(a)に示すブラストホース巻上部の断面図である。
【図5】本発明に基づく垂下式塗装装置の塗料混合供給部を示すための図である。
【図6】(a)貨物槽などを上方から見たモデルを示す図である。(b)図6(a)に示されるモデルの部分拡大図である。
【図7】本発明に基づく垂下式塗装装置の監視動作を示すフローチャートである。
【図8】(a)供給部に備えられた噴射ノズルの側面図である。(b)噴射ノズルが貨物槽に部分的に接触するのを示す図である。(c)図8(a)に示される噴射ノズルの部分拡大図である。
【図9】(a)噴射ノズルから延びる第一塗料管および第二塗料管を示す図である。(b)第二開閉弁の拡大図である。
【図10】(a)垂下式塗装装置の他の本体の側面図である。(b)垂下式塗装装置の他の本体の端面図である。
【図11】本発明に基づく複数の垂下式塗装装置を備えた塗装システムのブロック図である。
【図12】(a)塗装システムを上方から見た他のモデルを示す図である。(b)塗装システムを側方から見たモデルを示す図である。
【図13】塗装システムの動作を示すフローチャートである。
【図14】垂下式塗装装置に使用される支柱の設置方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の図面において同様の部材には同様の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。
図1は本発明に基づく垂下式塗装装置の設置状態を示すための船舶の部分断面図である。図1に示されるように船舶900内に貨物槽800が形成されており、本発明の垂下式塗装装置10の昇降機70が船舶900の甲板910上に設置されている。通常、甲板910には貨物槽800内を洗浄する際に用いられる複数の開口部920すなわちバターワースマシンホールと作業者が貨物槽800内に進入するのに用いられるマンホール(図示しない)とが形成されている。
【0019】
本発明における開口部920は直径約40cmの円形であり、マンホールは例えば約100cm×約80cmの矩形ないしは長径が100cmで短径が80cmの楕円形である。さらに船舶900内の貨物槽800は高さが約15mから20mで幅および奥行が約10mから20mである。昇降機70を甲板910の開口部920上に位置決めした後に、本発明の垂下式塗装装置10の支柱11を甲板910の開口部920に通して昇降機70の一部から貨物槽800内に垂下させる。
【0020】
図2は垂下式塗装装置の本体と昇降機との拡大図である。図2に示されるように、支柱11は甲板910の開口部920に通され、支柱11の上方端13が昇降機70の一部、例えば架台部71から延びる吊り下げ材、例えばチェーン72により固定される。これにより、支柱11は架台部71から吊り下げすなわち垂下される。本発明に基づく垂下式塗装装置10の本体12および支柱11の総重量は約10トンである。
【0021】
このように本体12および支柱11を垂下させる場合には、これら本体12および支柱11を貨物槽800の二重底面810上のみにおいて鉛直方向に支持する場合よりも安定性を高めることができる。さらに支柱11を垂下させることにより、貨物槽800の底面810に対する負荷を減らすことができる。
【0022】
また、垂下式塗装装置の本体の斜視図である図3および前述した図1に示されるように支柱11の下方端14を貨物槽800の底面810上に予め位置決めされた振止部89上に支持するのが好ましい。垂下式塗装装置10の支柱11および本体12の総重量の大部分、例えば総重量の80%を架台部71により支持し、残りの部分、例えば総重量の20%を底面810上の振止部89により支持する。これにより、垂下式塗装装置10の動作時に支柱11が揺れるのを防ぐことができる。
【0023】
垂下式塗装装置10の本体12は甲板910のマンホール(図示しない)から貨物槽800内に分離状態で搬入される。すなわち垂下式塗装装置10の本体12を構成する各部材(後述する)は甲板910のマンホールを通過できるのに十分に小さい。すなわち本発明においては垂下式塗装装置10の本体12を貨物槽800内に搬入するための特別の開口部を形成する必要性がなくなる。これら部材を貨物槽800内において支柱11に組み付けることにより本発明の垂下式塗装装置10の本体12が形成される。
【0024】
図2および図3に示されるように、垂下式塗装装置10の本体12は支柱11に回動可能に取付けられたスリーブ29とこのスリーブ29の上方および下方に設けられていてスリーブ29に連結する環状駆動部21、22とを有している。図3に示されるように、垂下式塗装装置10の支柱11には支柱11の長手方向に沿ってキー溝15が形成されている。環状駆動部21、22はキー溝15に係合する凸部(図示しない)を内部に含んでいる。キー溝15と凸部とが係合することにより、環状駆動部21、22自体が支柱11周りで回動するのを容易に防ぐことができる。
【0025】
スリーブ29は小型歯車を備えたモータ23、24を含んでおり、これら小型歯車は環状駆動部21、22のギア25、26にそれぞれ係合している。図2および図3に示すようにギア25、26は同一形状でかつ同軸に位置決めされている。モータ23、24を起動させると、これらモータ23、24はギア25、26の周面に沿って周回し、これによりスリーブ29を支柱11周りに回動させることができる。
【0026】
図2に示されるように昇降機70はワイヤ73が巻き付けられた昇降駆動部79を備えている。ワイヤ73の一端は昇降機70内のプーリ78を介することにより甲板910の開口部920を通って貨物槽800内に延びている。図2および図3に示されるようにスリーブ29の上方に位置する環状駆動部21は吊具28を環状駆動部21の上面に備えており、前述したワイヤ73の一端が環状駆動部21の吊具28に接続されている。
【0027】
従って、昇降機70の昇降駆動部79によりワイヤ73を巻上げおよび巻出することによって、垂下式塗装装置10の本体12を昇降させることができる。図2においては二つのワイヤ73が採用されているが、垂下式塗装装置10の本体12を昇降させるワイヤ73は少なくとも一つあれば足りる。本発明においてはワイヤ73を使用することにより、スリーブ29を鉛直方向に正確に位置決めすることができる。
【0028】
図2に点線で示すように環状駆動部21、22は内部に軸受を含んでおり、これら軸受によって垂下式塗装装置10の本体12を容易に昇降させられる。また、昇降機70の昇降駆動部79にはエンコーダ(図示しない)が設けられている。このエンコーダによって、垂下式塗装装置10の本体12の高さ位置(Z座標)を把握できる。
【0029】
図2および図3に示されるように、ビーム30がスリーブ29に取付けられている。図示されるビーム30はスリーブ29に固定されている。図2および図3に示されるビーム30は第一の摺動部31をビーム30の上面に備えている。さらに、ビーム30はビーム30の上面に設けられたガイドレール33とビーム30内部に位置決めされたモータ32とを含んでいる。
【0030】
第一の摺動部31はガイドレール33により案内されつつモータ32によってビーム30の長手方向に沿って摺動する。さらに図2および図3においては第一の摺動部31の遠位端に位置決めされた第二の摺動部39が示されている。第一の摺動部31は第一の摺動部31の上面に設けられたガイドレール34と、第一の摺動部31の側面に取付けられたラック(図示しない)とを含んでいる。また、第二の摺動部39は、ピ二オンが回転軸に取付けられたモータ38を含んでいる。モータ38のピニオンがラックに係合することによって、第二の摺動部39は第一の摺動部31上のガイドレール34により案内されつつ、モータ38と一緒に第一の摺動部31の長手方向に沿って摺動する。
【0031】
さらにスペーサ41が第二の摺動部39内の水平方向回動軸線V周りに回動可能に接続されている。さらにスペーサ41自体もスペーサ41の長手方向に図3におけるθ方向に回動可能である。スペーサ41の遠位端には多軸アーム42がさらに設けられており、多軸アーム42の遠位端には供給部50、例えば自動ガンが設けられている。
【0032】
このような構成により、供給部50を支柱11に沿って昇降させられると共に支柱11周りに回動させられ、さらに、供給部50を水平方向に移動させられるのが分かるであろう。従って、被塗装部の形状に応じて垂下式塗装装置10の供給部50を適切に移動させることができる。
【0033】
さらに、図2および図3においてはケーブル、例えばモータ38などを駆動させるためのケーブルはケーブルベア(登録商標)35内に収納されている。
【0034】
図2および図3に示されるように、スリーブ29はビーム30の反対側にウェイト支持ビーム51を有している。カウンターウェイト52がウェイト支持ビーム51の遠位端に設けられている。カウンターウェイト52はスリーブ29の反対側に位置する垂下式塗装装置10のビーム30などに対するカウンターウェイトであり、スリーブ29が支柱11に対し昇降または回動するときの支柱11の変形およびたわみを抑える役目を果たす。
【0035】
図3に示されるように監視カメラ55が本体12の一部、例えばカウンターウェイト52に取付けられている。監視カメラ55は貨物槽800内における各作業後における被塗装部の状態および垂下式塗装装置10の本体12の稼働状態を制御室のモニタに表示する役目を果たす。さらに、ウェイト支持ビーム51には制御ボックス53が設けられている。制御ボックス53は昇降機70および/または本体12を制御する制御部、ならびに監視カメラ55を制御する制御部などを内包している。
【0036】
図4(a)は本発明に基づく垂下式塗装装置の本体に接続されるブラストホース巻上部の拡大図であり、図4(b)は図4(a)に示すブラストホース巻上部の断面図である。図2および図4(a)に示されるように本発明の垂下式塗装装置10においてはブラストホース巻上部80が船舶900の甲板910上に設置されている。
【0037】
ブラストホース巻上部80から延びるブラストホース81の一端は適切なプーリ82を介して甲板910の開口部920を通って貨物槽800内に進入している。貨物槽800内においてはブラストホース81は垂下式塗装装置10の環状駆動部21付近において接続され、次いで多軸アーム42の供給部50に接続されている(供給部50と環状駆動部21との間におけるブラストホース81は図示しない)。
【0038】
図4(b)に示されるようにブラストホース巻上部80のモータ83を駆動することによってブラストホース81は巻上げおよび/または巻出される。図4(b)においてはブラストホース81は8回巻かれている。ブラストホース81の他端はブラストホース巻上部80に設けられたスイベルジョイント84を介して連続ブラスト部85まで延びている。
【0039】
図1に示すようにブラストホース巻上部80から延びるブラストホース81の他端は連続ブラスト部85に接続されている。図1においては連続ブラスト部85は船舶900の外部、例えば岸壁に設置されているが連続ブラスト部85が船舶900の甲板910上に設置されていてもよい。連続ブラスト部85のホッパ86内には研掃材が装填されている。研掃材は直径が約0.5mmから2.0mmの例えばスチールグリッドなどである。連続ブラスト部85のホッパ86にはレベルセンサ87(図示しない)が設けられており、ホッパ86内における研掃材の量を監視する。
【0040】
図5は本発明に基づく垂下式塗装装置の塗料混合供給部を示すための図である。塗料混合供給部90は塗料コンテナ、本発明においては二つの塗料コンテナ91、92を含んでいる。本発明においては塗料コンテナ91は基剤用コンテナであり、塗料コンテナ92は硬化剤用コンテナである。これら塗料コンテナ91、92からの基剤および硬化剤は混合部93において混合される。
【0041】
混合部93においては、塗料コンテナ91からの基剤と塗料コンテナ92からの硬化剤とを混合することにより二液性塗料、例えば二液性エポキシ塗料を形成する。混合部93においては供給量および混合比を任意に設定できる。混合部93において形成された塗料は塗料ポット94に一旦貯蔵される。
【0042】
塗料ポット94内にもレベルセンサ(図示しない)が設置されており、これにより塗料ポット94内における塗料のオーバーフローを防止している。次いで塗料はエアレス塗装機95により吸引されて垂下式塗装装置10の本体12の供給部50まで圧送される。図5においては塗料混合供給部90は船舶900の甲板910上に設置されているが、塗料混合供給部90が船舶900の外部、例えば岸壁に設置されていてもよい。
【0043】
ところで、図3を再び参照すると、制御ボックス53に接続された制御部100は、貨物槽800の寸法データを記憶する記憶部101を含んでいる。貨物槽800の寸法データは、貨物槽800の内面に加えて、貨物槽800の内面から突出する段差部850等(図1を参照されたい)についてのデータも含んでいる。
【0044】
さらに、制御部100は、本体12全体にわたって配置された複数の監視点(後述する)のそれぞれと、記憶部101に記憶された貨物槽800との間の最短距離を所定周期毎に算出する算出部102を含んでいる。制御部100は制御ボックス53に含まれていてもよいし、制御室に配置されていてもよい。さらに、制御部100は、算出部102により算出された複数の最短距離のうちの少なくとも一つが所定の値よりも小さい場合に、本体12を停止させる動作停止部103を含んでいる。なお、動作停止部103は、本体12の運動を停止させるだけでなく、供給部50への塗料などの供給動作をも停止させる。さらに、制御部100は、貨物槽800における支柱11の計測された位置と貨物槽800の寸法データの開口部920の位置に応じて定まる支柱11の目標位置との間の偏差に基づいて、垂下式塗装装置10の動作プログラムを変更する変更部104を含んでいる。
【0045】
ところで、図6(a)は貨物槽などを上方から見たモデルを示す図であり、図6(b)は図6(a)に示されるモデルの部分拡大図である。これらモデルは、制御部100に接続された表示部(図示しない)、例えば液晶モニタに表示されるものとする。また、図6(b)から分かるように、垂下式塗装装置10の本体12には、複数の監視点Bが配置される。これら監視点Bは、本体12の外面全体にわたって等間隔で格子状に配置されている。隣接する監視点Bの間の距離はAで表される。例えば距離Aは200mmである。
【0046】
図7は本発明に基づく垂下式塗装装置の監視動作を示すフローチャートである。以下、図6(a)、図6(b)および図7を参照しつつ、本発明の垂下式塗装装置10の監視動作を説明する。なお、図7に示される監視動作は、垂下式塗装装置10の塗装作業時に所定の制御周期毎に実施されるものとする。
【0047】
はじめに、図7のステップ111において、垂下式塗装装置10が設置されている貨物槽800の寸法データを記憶部101から読込む。次いで、ステップ112において、本体12全体にわたって配置された複数の監視点Bのそれぞれの現在の位置を取得する。
【0048】
垂下式塗装装置10の設置時に、貨物槽800における支柱11の位置は開口部920の場所に応じて定まる。そして、モータ23、24、32、38などの出力軸の位置および垂下式塗装装置10自体の寸法データから、現在の垂下式塗装装置10の本体12の位置が把握される。従って、本体12における監視点Bの位置から、複数の監視点Bのそれぞれの現在の位置を求めることができる。
【0049】
次いで、ステップ113において、算出部102は、監視点Bのそれぞれと貨物槽800との間の最短距離Cを算出する。図6(a)に示されるように、貨物槽800の内面には複数の段差部850が形成されており、或る監視点B1と段差部850との間の距離がその監視点B1と貨物槽800の内面との間の最短距離よりも小さい場合がある。そのような場合には、監視点B1と段差部850との間の距離が最短距離Cとして採用される。
【0050】
次いで、ステップ114において、複数の監視点Bのそれぞれに関する最短距離Cのうちの少なくとも一つが、所定の値よりも小さいか否かが判定される。図6(b)から分かるように、所定の値は例えば距離Aである。しかしながら、他の値を所定の値として採用してよい。
【0051】
そして、複数の最短距離Cのうちの少なくとも一つが所定の値よりも小さい場合には、ステップ115に進む。ステップ115においては、動作停止部103が本体12の動作を停止させ、さらに、ステップ116においては、塗料などを供給部50に供給するのを停止する。なお、複数の最短距離Cのうちの少なくとも一つが所定の値よりも小さくない場合には処理を終了する。
【0052】
このように、本発明においては、本体12が貨物槽800の内面または段差部850に接触する前に、本体12を停止させている。従って、本体12、特に本体12の供給部50が貨物槽800等に接触するのを回避できる。それゆえ、本発明においては、貨物槽800の内面等または本体12が損傷するのを防止しつつ、安定した塗装作業を行うことができる。
【0053】
ところで、図8(a)は供給部に備えられた噴射ノズルの側面図である。図8(a)に示されるように、噴射ノズル121は湾曲した金属管123を備えており、その先端には、塗料などを噴射する噴射部122が設けられている。
【0054】
垂下式塗装装置10の動作時には、供給部50が急停止したり、移動方向を急変更する場合がある。このような場合には、図8(b)に示されるように、噴射ノズル121が慣性によりわずかながら移動して、貨物槽800の内面などに実際に接触する。また、設計図面には存在しない突起物などが貨物槽800に設けられている場合にも、噴射ノズル121が突起物などに接触する場合がある。このような場合には、噴射ノズル121の金属管123が折曲がって破損するか、または貨物槽800の塗装面が部分的に剥離する可能性がある。
【0055】
このため、本発明においては、図8(c)に示されるように、金属管123の周面に歪ゲージ124が取付けられている。これら歪ゲージ124は端子台125を経由して制御ボックス53に接続された制御部100に接続されているものとする。
【0056】
噴射ノズル121が貨物槽800に接触すると、歪ゲージ124がわずかながら変形し、それにより、歪ゲージ124による信号値、例えば歪ゲージ124の電気抵抗値が変化するようになる。従って、この実施形態においては、歪ゲージ124による信号値が所定の範囲を越えたときに、噴射ノズル121が貨物槽800の内面などに実際に接触したものと判断できる。
【0057】
そのような場合には、動作停止部103が本体12の動作および供給部50への供給動作を直ちに停止させる。これにより、噴射ノズル121の破損および塗装面の損傷を最小限に留めることができる。さらに、歪ゲージによる信号値が所定の範囲を越え続ける場合には、噴射ノズル121が破損していることを容易に判断できる。そのような場合には、噴射ノズル121を交換することにより塗装不良の発生を防止できる。なお、図8(c)においては二つの歪ゲージ124が金属管123の上方および下方に取付けられている。しかしながら、さらに多数の歪ゲージ124を金属管123の周面に周方向に等間隔に取付けてもよい。これにより、噴射ノズル121が接触するのを金属管123の周方向にわたって検出できるのが分かるであろう。
【0058】
ところで、図9(a)は噴射ノズルから延びる第一塗料管および第二塗料管を示す図である。図9(a)においては、第一塗料管131が噴射ノズル121から延びており、第一塗料管131が第二塗料管132に接続している。なお、第二塗料管132はエアレス塗装機95(図5を参照されたい)に接続されているものとする。
【0059】
ここで、第二塗料管132は第一塗料管131よりも大径であり、第一塗料管131は第二塗料管132よりも柔軟である。その理由は、多軸アーム42を円滑に動作させるためである。第一塗料管131は、多軸アーム42が自由に動作するのに十分に長い。或る実施形態においては、第一塗料管131の長さは約7mである。
【0060】
図9(a)に示されるように、第一開閉弁133が噴射ノズル121近傍において第一塗料管131に設けられており、第二開閉弁134が第一塗料管131と第二塗料管132との間に設けられている。これら第一開閉弁133および第二開閉弁134は制御ボックス53に接続されており、制御ボックス53に接続された制御部100によって開閉する。
【0061】
再び図7を参照すると、ステップ116においては、複数の最短距離Cのうちの少なくとも一つが所定の値よりも小さい場合に、塗料などを供給部50に供給するのを停止する。この点に関し、通常は、第一開閉弁133のみを閉鎖して塗料を停止している。
【0062】
しかしながら、第一塗料管131は柔軟であるので、多軸アーム42の動作時に損傷しやすい。このため、第一塗料管131が損傷した場合には、第一開閉弁133を閉鎖したとしても、塗料は第一塗料管131の損傷箇所から噴出し続けることになる。さらに、第一開閉弁133自体が故障する可能性もある。
【0063】
このため、本発明において塗料の供給停止時には、第一開閉弁133および第二開閉弁134の両方を閉鎖する。第二開閉弁134の拡大図である図9(b)から分かるように、第二開閉弁134はボールバルブの一種であり、第二開閉弁134を図示されるように回転させて閉弁する。これにより、塗料の供給を第一塗料管131よりも上流において停止させられる。
【0064】
従って、第一塗料管131が損傷した場合であっても、塗料が第一塗料管131の損傷箇所から漏洩し続けるのを防止することができる。なお、実際には、残圧により第一塗料管131内の塗料は損傷箇所からわずかながら漏洩しうるが、その勢いは比較的小さく、塗料の飛散範囲を最小限に抑えることができる。
【0065】
ところで、図10(a)および図10(b)は垂下式塗装装置の他の本体のそれぞれ側面図および端面図である。これら図面に示されるゴンドラ135は摺動部31によって水平方向に移動でき、またスリーブ29によって支柱11周りに回動することができる。さらに、ゴンドラ135の一端の底部には、回転軸部136が設けられている。図10(a)から分かるように、回転軸部136は支柱11に対して平行である。つまり、ゴンドラ135は回転軸部136回りに回動できる。これらのことから、ゴンドラ135に搭乗した操作者は、対象物に極めて近くまで接近して、検査作業、補修作業などを行うことが可能である。
【0066】
図11は本発明に基づく複数の垂下式塗装装置を備えた塗装システムのブロック図である。図11に示される塗装システム600においては、三つの垂下式塗装装置10a〜10cが示されている。これら垂下式塗装装置10a〜10cのそれぞれは、制御部100a〜100cに接続されている。なお、塗装システム600がさらに多数の垂下式塗装装置10および制御部100を含んでいてもよい。ただし、塗装システム600は、少なくとも二つの垂下式塗装装置10および関連する制御部100を備える必要があるものとする。
【0067】
さらに、図11から分かるように、単一の上位制御部500がこれら制御部100a〜100cに接続されている。上位制御部500はデジタルコンピュータであり、前述したのと同様な記憶部501および動作停止部503を含んでいる。なお、図示されるように、別の記憶部501’が上位制御部500の外部、例えばデータサーバ上にあってもよい。さらに、上位制御部500は、或る垂下式塗装装置10の本体12に配置された複数の第一監視点のそれぞれと他の垂下式塗装装置10の本体12に配置された複数の第二監視点のそれぞれとの間の距離を所定周期毎に算出する算出部502を含んでいる。
【0068】
図12(a)は塗装システムを上方から見た他のモデルを示す図であり、図12(b)は塗装システムを側方から見たモデルを示す図である。これらモデルは、上位制御部500に接続された表示部(図示しない)、例えば液晶モニタに表示されるものとする。なお、図12(b)における支柱11a、11b、11cのモデルの位置は、貨物槽800の開口部920の位置に対応している。
【0069】
さらに、図13は塗装システムの動作を示すフローチャートである。以下、図11、図12(a)、図12(b)および図13を参照しつつ、第一垂下式塗装装置10aと第二垂下式塗装装置10bとを含む塗装システム600の動作を説明する。なお、図13に示される動作は、塗装システム600の塗装作業時に所定の制御周期毎に実施されるものとする。また、図6(b)を参照して前述したように、第一垂下式塗装装置10aの第一本体12aおよび第二垂下式塗装装置10bの第二本体12bには、複数の監視点Bが同様に配置されているものとする。
【0070】
はじめに、図13のステップ211において第一垂下式塗装装置10aの第一本体12aの各監視点Bの位置を取得し、ステップ212において第二垂下式塗装装置10bの第二本体12bの各監視点Bの位置を取得する。これら監視点Bの位置の取得は、それぞれの制御部100a、100b、100cによって、前述したのと同様に行われ、これら監視点Bの位置は上位制御部500に送信される。次いで、ステップ213において、算出部502は、これら監視点Bの位置に基づいて、第一本体12aの各監視点Bと第二本体12bの各監視点Bとの間の距離をそれぞれ算出する。
【0071】
次いで、ステップ214において、複数の距離のうちの最短距離が、所定の値、例えば距離Aよりも小さいか否かが判定される。最短距離が所定の値よりも小さい場合にはステップ215に進み、最短距離が所定の値よりも小さくない場合には処理を終了する。
【0072】
そして、ステップ215においては、動作停止部503が第一本体12aおよび第二本体12bの両方の動作を停止させる。なお、第一および第二本体12a、12bの両方が動作している場合には、これら両方の本体12a、12bを停止させ、第一本体12aおよび第二本体12bのうちの一方のみが動作している場合には当該一方の本体のみを停止させる。さらに、ステップ216においては、動作停止部503は、停止された第一本体12aおよび/または第二本体12bの供給部50に塗料などを供給するのを停止する。動作停止部503の動作は、前述した動作停止部103の動作と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0073】
このように、塗装システム600においては、第一垂下式塗装装置10aおよび第二垂下式塗装装置10bが互いに接触する前に、第一垂下式塗装装置10aの第一本体12aおよび第二垂下式塗装装置10bの第二本体12bを停止させている。従って、本発明においては、第一垂下式塗装装置10aおよび第二垂下式塗装装置10bが互いに接触するのを回避できる。それゆえ、本発明の塗装システム600においても、第一本体12aおよび第二本体12bが損傷するのを防止しつつ、安定した塗装を行うことが可能となるのが分かるであろう。
【0074】
なお、図11等に示されるように、塗装システム600が三つの垂下式塗装装置10を含む場合には、第一本体12aの監視点と第二本体12bの監視点との間の最短距離、第二本体12bの監視点と第三本体12cの監視点との間の最短距離ならびに第三本体12cの監視点と第一本体12aの監視点との間の最短距離を算出し、これら最短距離のうちのいずれかが所定の値よりも小さい場合に第一本体12a、第二本体12bおよび第三本体12cを停止させるようにしてもよい。この場合にも、同様な効果が得られるのは明らかであろう。
【0075】
ところで、図7および図13において本体12の監視点Bの位置を正確に取得するためには、貨物槽800における垂下式塗装装置10の支柱11を正確に設置する必要がある。垂下式塗装装置に使用される支柱の設置方法を示すフローチャートである図14を参照しつつ、以下、支柱の設置方法について説明する。
【0076】
はじめに、図14のステップ221において、振止部89(図1を参照されたい)を貨物槽800の底面810に対して平行に底面810上に配置する。この目的のために、適切な形状のスペーサまたは支柱台(図示しない)を使用してもよい。次いで、ステップ222において、振止部89の中心が開口部920の中心に一致するように振止部89を位置合わせする。
【0077】
この位置合わせ作業の際には、レーザを振止部89から開口部920に向かって照射して、振止部89を開口部920に対して同軸に配置するのが好ましい。その後、ステップ203において、振止部89を貨物槽800の底面810に溶接またはボルト・ナットなどで固定する。
【0078】
次いで、供給部50などの部品をマンホールに通して貨物槽800内に搬入する。その後、ステップ224において、支柱11を開口部920から挿入し、支柱11の上方端13を架台部71から垂下する。そして、支柱11の下方端14を振止部89に支持させる。この目的のために、振止部89は、下方端14が部分的に挿入される凹部を備えていてもよい。次いで、本体12を支柱11に組付け、それにより、垂下式塗装装置10を貨物槽800内に形成する。
【0079】
このような作業により、振止部89の中心と開口部920の中心とは概ね一致しているが、設計誤差などの誤差が存在する可能性がある。このため、ステップ226に進んで、供給部50に非接触式距離計、例えばレーザ距離計を取付ける。そして、垂下式塗装装置10を駆動して供給部50を移動させ、貨物槽800の目標箇所、例えば段差部850と非接触式距離計との間の距離を計測する。このような計測は、複数の目標箇所、例えば40個の目標箇所に対して行われる。従って、算出部102は、貨物槽800に対する支柱11の位置を算出することができる。算出された支柱11の位置の計測値は記憶部101に記憶される。
【0080】
その後、ステップ227において、記憶部101に記憶された貨物槽800の寸法データにおける開口部920の位置に応じて定まる支柱11の目標位置を取得する。そして、変更部104は、支柱11の位置の計測値と目標位置との間の偏差を算出して記憶部101に記憶する。次いで、変更部104は、算出された偏差に基づいて、垂下式塗装装置10の動作プログラム内の目標座標を補正する。これにより、支柱11等の実際の位置関係と、図面上での位置関係とが一致し、より高精度で塗装作業を行うことができる。
【0081】
当然のことながら、前述した実施形態のうちのいくつかを適宜組み合わせることは本発明の範囲に含まれる。なお、図面を参照して説明した実施形態においては垂下式塗装装置10は貨物槽800内で使用されているが、垂下式塗装装置10が他の場所、例えばガスタンク内などにおいても使用されることが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0082】
10、10a〜10c 垂下式塗装装置
11、11a〜11c 支柱
12、12a〜12c 本体(塗装装置本体)
13 上方端
14 下方端
21、22 環状駆動部
23、24 モータ
25、26 ギア
28 吊具
29 スリーブ
30 ビーム
31 第一摺動部
32 モータ
33 ガイドレール
34 ガイドレール
35 ケーブルベア(登録商標)
38 モータ
39 第二摺動部
41 スペーサ
42 多軸アーム
50 供給部
51 ウェイト支持ビーム
52 カウンターウェイト
53 制御ボックス
55 監視カメラ
70 昇降機
71 架台部
72 チェーン
73 ワイヤ
78 プーリ
79 昇降駆動部
80 ブラストホース巻上部
81 ブラストホース
82 プーリ
83 モータ
84 スイベルジョイント
85 連続ブラスト部
86 ホッパ
87 レベルセンサ
89 振止部
90 塗料混合供給部
91、92 塗料コンテナ
93 混合部
94 塗料ポット
95 エアレス塗装機
100、100a、100b、100c 制御部
101 記憶部
102 算出部
103 動作停止部
104 変更部
121 噴射ノズル
122 噴射部
123 金属管
124 歪ゲージ(歪検出部)
125 端子台
131 第一塗料管
132 第二塗料管
133 第一開閉弁
134 第二開閉弁
135 ゴンドラ
136 回転軸部
500 上位制御部
501、501’ 記憶部
502 算出部
503 動作停止部
600 塗装システム
800 貨物槽(槽)
900 船舶
910 甲板
B 監視点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽の上面に形成された開口部を通って垂下された支柱と、
前記支柱に沿って昇降可能であって前記支柱周りに回動可能な塗装装置本体と、
前記槽の寸法データを記憶する記憶部と、
前記塗装装置本体全体にわたって配置された複数の監視点のそれぞれと、前記記憶部に記憶された前記槽との間の最短距離を所定周期毎に算出する算出部と、
該算出部により算出された複数の最短距離のうちの少なくとも一つが所定の値よりも小さい場合には前記塗装装置本体の動作を停止させる動作停止部とを具備する、垂下式塗装装置。
【請求項2】
さらに、前記塗装装置本体の先端部に取付けられた少なくとも一つの歪検出部を具備し、
前記動作停止部は、該歪検出部による信号値が所定の範囲を越えたときに前記塗装装置本体の動作を停止させるようにした、請求項1に記載の垂下式塗装装置。
【請求項3】
さらに、前記塗装装置本体の先端部に接続された第一塗料管と、
該第一塗料管と塗料源とを接続していて前記第一塗料管よりも大径の第二塗料管と、
前記第一塗料管と前記第二塗料管との間に配置された開閉弁と、を具備する請求項2に記載の垂下式塗装装置。
【請求項4】
さらに、前記槽における前記支柱の計測された位置と前記槽の寸法データの開口部の位置に応じて定まる前記支柱の目標位置との間の偏差に基づいて、前記垂下式塗装装置の動作プログラムを変更する変更部を具備する請求項1から3のいずれか一項に記載の垂下式塗装装置。
【請求項5】
さらに、前記支柱に対して平行な軸線回りに回動可能なゴンドラを具備する請求項1に記載の垂下式塗装装置。
【請求項6】
槽の上面に形成された第一開口部を通って垂下された第一支柱と、該第一支柱に沿って昇降可能であって前記第一支柱周りに回動可能な第一塗装装置本体とを含む第一垂下式塗装装置と、
前記上面に形成された第二開口部を通って垂下された第二支柱と、該第二支柱に沿って昇降可能であって前記第二支柱周りに回動可能な第二本体とを含む第二垂下式塗装装置と、
前記第一垂下式塗装装置を制御する第一制御部と、
前記第二垂下式塗装装置を制御する第二制御部と、
前記第一制御部および前記第二制御部が接続されている上位制御部と、を具備し、
前記第一制御部は前記第一垂下式塗装装置の少なくとも前記第一本体全体にわたって配置された複数の第一監視点の位置を所定周期毎に前記上位制御部に送信しており、
前記第二制御部は前記第二垂下式塗装装置の少なくとも前記第二本体全体にわたって配置された複数の第二監視点の位置を前記所定周期毎に前記上位制御部に送信しており、
前記上位制御部は、前記第一監視点のそれぞれと前記第二監視点のそれぞれとの間の距離を前記所定周期毎に算出する算出部と、
該算出部により算出された複数の距離のうちの最短距離が所定の値よりも小さい場合には前記第一供給部および前記第二供給部の動作を停止させる動作停止部とを含む、塗装システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−62671(P2011−62671A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217453(P2009−217453)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(593059038)株式会社ナカタ・マックコーポレーション (3)
【Fターム(参考)】