説明

垂下線のための導体クランプ

【課題】垂下線の導体クランプに対する衝撃を減衰させるための解決策を提供する。
【解決手段】 キャリアレールに沿って移動可能なクラブに固定された垂下線のための導体クランプであって、前記垂下線のための支持体と、前記支持体に前記垂下線を固定するための締付装置と、前記導体クランプに対する第1のクラブの衝撃を吸収するための緩衝器と、を有し、前記緩衝器(10)が少なくとも2つのばね体(20、22)を有しており、この少なくとも2つのばね体(20、22)が、異なる特性を有し、かつ前記緩衝器(10)の作用の予想される方向に一方を他方の後ろにして配置されることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂下線のための導体クランプに関する。
【背景技術】
【0002】
このような導体クランプは、キャリアレールの一端に垂下線の一端を固定するために使用され、このキャリアレールに沿って、垂下線が複数のクラブによって牽引され得る。この目的のために、導体クランプは、キャリアレール上に固着されている。
【0003】
独国特許第32 36 992 A1号から、牽引ケーブルにおける急激な機械負荷を減衰させるために、現場加硫処理をされてゴムパッケージを形成するチェーン片の形態の減衰要素を配置することが知られているが、個々のクラブは、この機械負荷のために、クラブが互いから離されていく際に、互いと結合してしまう。
【0004】
垂下線が移動する過程で、個々のクラブはまた、互いに衝撃を与えることがあり得る。クラブがキャリアレール上を移動しながら支持するため、このような衝突によって生じる衝撃を減衰させるためには、単純なタイプの減衰要素が適切である。
【0005】
上述の独国特許第32 36 992 A1号においては、ゴムバンパが、クラブの両端面に設けられている。しかし、キャリアレールの一端に垂下線の一端を固定する導体クランプは、キャリアレール上に固着されており、垂下線の戻り運動で第1のクラブが導体クランプに衝撃を与えた場合、導体クランプは、導体クランプ自体が動くことによって撓むことができない。したがって、導体クランプにおいては、第1のクラブの接触によって生じる衝撃に対し、より弾性のある減衰が行われなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、垂下線の第1のクラブの、垂下線の導体クランプに対する衝撃を減衰させるための解決策を提供する課題に基づき、この解決策は、諸要件に従い、単純な構造で効果的に達成されることを特徴とする。
【0007】
本課題は、請求項1の特徴を有する導体クランプによって、本発明に従って達成される。有利な改良点は、従属請求項において特定される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、導体クランプは、少なくとも2つのばね体を有する緩衝器を備えており、この少なくとも2つのばね体は、異なる特性を有し、かつ緩衝器の作用の予想される方向に、一方を他方の後ろにして配置されている。このようにして、緩衝器の全体的な特性が達成され得、これらの特性は、垂下線の端部において、衝撃減衰の要件に最適に合わせられる。導体クランプに対する第1のクラブの衝撃の強度は、変動し得る、すなわち広範囲に変動し得るため、その結果、高衝撃強度に対しては、低衝撃強度に対しては減衰効果を殆ど有さないであろうような、十分に硬い減衰特性が必要とされる。本発明によって、衝撃強度の全入射範囲にわたる減衰特性に対する様々な要件が満たされ得る。
【0009】
緩衝器の端部に弾性のあるばね体を配置することは特に有用である。このばね体は、衝撃力を導入するために設けられており、その結果、このばね体は、低強度の衝撃では、緩衝器の他の構成部品が大きく撓むことなく、本質的に単独で減衰を引き受けることができるようになっている。ここで、高弾性のばね体に特に適しているのは、細胞状組織を有する弾性材料である。
【0010】
異なる特性のばね体を結合するための1つの有利な解決策は、これらのばね体をリフティングロッドの異なる端部に配置することである。このリフティングロッドは、有効な衝撃力の下で緩衝器の作用の予想される方向に変位され得る。ここにおいて、硬いばね体が、リフティングロッドをハウジング上に支持している。このハウジングは、リフティングロッドのための軸受として、かつ硬いばね体のためのキャリアとして、機能する。このことは、ハウジングが、キャリアレール上に導体クランプを装着するためのホルダの一部を同時に形成する場合に、特に有利である。
【0011】
少なくとも2つの同様のばね体をハウジング内に隣り合わせに配置し、全有効力を少なくともほぼ均等に分配することにより、緩衝器の特にコンパクトな構造と、撓みが生じた場合、緩衝器の移動構成部品を安定して案内することとが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、添付の図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
図1に概略で示すように、垂下線システムにおいて、複数の移動クラブ2および3が、キャリアレール1上に案内されており、これらの移動クラブの数は、一般には、2よりはるかに大きい数である。キャリアレール1の一端にしっかりと装着されている導体クランプ4から始めて、1つまたは複数の線5、例えば電気線が、移動作業装置7、例えばデリック車の線クランプ6に、クラブ2および3を介して案内される。クラブ2および3は、キャリアレール1に沿って作業装置7に続いて移動する過程で互いに衝突し得るので、図1に示していない緩衝器を備えている。これらの緩衝器は、あまり弾性のある構造を有する必要はない。なぜなら、クラブ2および3は、衝撃があった場合にはこれら自体が動いて撓むことができるからである。
【0013】
しかし、このことは導体クランプ4には当てはまらない。導体クランプ4は、垂下線が図1の上部に示される開始位置へ戻される際に、このクランプと第1のクラブ2との衝撃により比較的大きい振動にさらされる。したがって、移動クラブ2および3が必要とするものよりも、弾性のある緩衝器が必要である。
【0014】
図2は、本発明による導体クランプ4を三方向からの図で示したものである。右上には、図1に対応する側面図が見られ、図2に示されない垂下線は、導体クランプ4から右に向かって外側へ延びている。この左隣には正面図が見られ、右下には上面図が見られる。側面図において最もよく分かるように、導体クランプ4は、この図では本質的に半円形である垂下線のための支持体8と、支持体8に垂下線を固定するための締付装置9と、緩衝器10と、を含み、この緩衝器10は、キャリアプレート11によって支持体8に接続されている。支持体8は、2つの対称形の部分から作られており、そのそれぞれはフランジ8Aを有し、このフランジ8Aにおいて、2つの対称形の部分が、互いと、キャリアプレート11との両方にねじ止めされている。
【0015】
このキャリアプレート11の上端部において、緩衝器10のハウジングの構成部品である、すなわち緩衝器10のベースプレート12を形成するプレート12が、キャリアプレート11に、このキャリアプレートに対して垂直に、例えば融着によって取り付けられる。緩衝器10のハウジングの他の本質的な構成部品は、前壁13および後壁14である。後壁は支持アングル15によって支持されており、支持アングル15は、ポジティブフィットによりベースプレート12に接続され、例えば、引っかけられている。さらに、ハウジングはまた、図2に示されず、かつ残り3つの側面を閉じている、カバーを備える。このハウジングはまた、導体クランプ4をキャリアレール1に取り付けることのできる、ホルダの一部を形成している。
【0016】
ここで、ハウジングは、ある構成部品に接続され、この構成部品がそれ自体の側でキャリアレール1に直接接続され得るように、設計されている。このような構成部品は、詳細には、部分的にハウジングを包含し、ベースプレート12の底面に接触し、互いに位置合わせされたボアホールによってこのベースプレートに接続され得るように、成形され得る。
【0017】
緩衝器10の構成部品は、ベースプレート12と図2においても示していないカバーとがない状態で、図3に拡大して示されている。これらの構成部品は、移動リフティングロッド16を含む。リフティングロッド16は、それ自体の停止位置においてはハウジングの主に外側に位置づけられているが、前壁13を貫通してこのハウジング内に突出している。ハウジングに対してリフティングロッドの外端部において、外側エンドプレート17が、リフティングロッド16に取り付けられており、同様にハウジングに対してリフティングロッドの内端部に、内側エンドプレート18が取り付けられている。
【0018】
ポリウレタンなどのプラスチック製の細胞状組織を有する弾性ばね体20が、連結プレート19によって外側エンドプレート17に取り付けられている。セルバンパとしても知られるこのようなばね体20は、小さな横向きの膨張のみに対する高い圧縮性によって特徴づけられており、また、そのようなものとして知られている。セルバンパの形のこのようなばね体20の典型的な特性曲線を、一例として図4に示す。これは、相対的な圧縮を介した力が最初ごく緩やかな勾配で上昇し、この勾配が、この場合は長さのほぼ3分の2というかなりの圧縮を受けるだけで、殆ど急激に非常に大きい値に変化することを特徴とする。
【0019】
内側エンドプレート18は、圧力板21に取り付けられており、この圧力板21は、2列の同様の比較的硬いばね体22を、これ自体とハウジングの後壁14との間に隣り合わせで配置し、締め付けている。これらの硬いばね体22は、それぞれ、本質的に線状のばね特性曲線を有する中実のゴム弾性材料から作られており、かつ図には示されていない中空円筒の形状を有する。この2列のそれぞれにおいて、複数のこのようなばね体22が、一方を他方の後ろにして、前壁13と後壁14との間に延びる案内ロッド23上に配置されており、これらのばね体は、共に、圧力板21と後壁14との間の距離全体に沿って案内ロッド23を封入している。
【0020】
このようにして、硬いばね体22は、緩衝器10のハウジングの後壁14に対して、軸方向にリフティングロッド16を支持している。このように支持することから生じるばね体22によって後壁14上に及ぼされる力をベースプレート12に向け直すために、支持アングル15が設けられている。
【0021】
案内ロッド23は、ハウジングの前壁13と後壁14とに取り付けられており、圧力板21と内側エンドプレート18とを貫通して突出している。リフティングロッド16がハウジングの前壁13を貫通して突出している開口部と相互作用して、案内ロッド23は、リフティングロッド16およびリフティングロッド16に堅固に接続されている構成部品、すなわち、プレート17、18、19および21ならびにばね体20の運動のための案内を、形成する。ばね体20は、緩衝器10の作用の方向を表すリフティングロッド16の軸方向にリフティングロッド16の十分に大きい力が印加された場合、ばね体22の支持力に対抗するように導入されている。したがって、リフティングロッド16のこのような運動は、3つの異なる位置から案内されており、これにより、傾斜に対する高い安定性と安全性とが保証される。
【0022】
ここでは、これ以上詳細に説明しないが、垂下線のクラブ2および3はそれぞれ、例えばゴムバンパの形態の単純なタイプの緩衝器を備えている。垂下線がすぐに使える、組み立てられている状態では、リフティングロッド16の長手方向中心軸は、クラブ2および3の緩衝器の長手方向中心軸に位置合わせされており、その結果、垂下線が戻ってきた際に第1のクラブ2が導体クランプ4に衝撃を与えると、導体クランプ4に対面している第1のクラブ2の緩衝器がばね体20に対してリフティングロッド16の軸方向に衝撃を与える。
【0023】
衝撃の強度がごく小さい場合には、ばね体22の比較的大きい支持力と、また、リフティングロッド16およびリフティングロッド16に堅固に接続されているプレート17、18、19、21の慣性とにより、本質的に弾性ばね体20のみが、衝撃エネルギを吸収し、したがって、第1のクラブ2および導体クランプ4の振動を減衰させる。しかし、衝撃が弾性ばね体20のエネルギ吸収能力を超える強度を有する場合には、この弾性ばね体が最大に圧縮された後、硬いばね体22の支持力に対し、リフティングロッド16の大きな撓みが導入され、この撓みは、前述のように案内される。この撓みはある地点で終わり、リフティングロッド16は、ばね体22によって図2および3に示される開始位置に戻される。
【0024】
上述のような配置のために、一例として図5に示すような、撓みを介した力の全体的な特性が、緩衝器10に与えられる。これは、最初、非常に平坦に始まり、撓みの後、非常に大きい勾配を有する線状の増加へと移行する、非線形の形状によって特徴づけられる。この撓みは、予想される最大撓みの大きなパーセンテージを既に占めている。示した例では、最大撓みのほぼ3分の1の領域で移行が生じている。
【0025】
ここでは、図5の最初の部分の見かけに反して、特性曲線の平坦な最初の区間の力は一定でなく、力はまた、線形に上昇するが、最後の区間におけるよりもわずかに小さい勾配を有している。図5の平坦な最初の区間は、図4の特性曲線のより小さい勾配の区間に、まさしく明確に対応している。図4の特性曲線と共に弾性ばね体20の弾性がなくなり、さらに力が増大し、より硬い方のばね体22の線状の特性曲線が更なる形状を支配し始め、そこから、より大きな勾配を有する線状の形状へと移行していく。
【0026】
上述の実施形態から、当業者にとっては、本発明をいくつかの点において変更することが考えられるであろう。したがって、例えば、緩衝器10の総合特性は、弾性のばね体20および硬いばね体22を適切に選択することにより、および/または一方を他方の後ろにして配置されるばね体22の数を広範囲に変えることにより、変動され得る。また、必要に応じて、2列より多いばね体22が隣り合わせで配置され得、および/または2つより多い異なるタイプのばね体が、一方を他方の後ろにして緩衝器10の作用の方向に配置され得る。上述のばね体20または22のタイプが好まれるものの、例えば金属製のコイルばねなどの、他のタイプを使用することもまた考えられる。これらの変更および他のこれらに匹敵する変更は、当業者の裁量内であり、請求項によって保護されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】垂下線システムの概略図である。
【図2】三方向から示した本発明による導体クランプである。
【図3】図2の導体クランプの緩衝器の部分拡大図である。
【図4】図3の緩衝器のばね体のうちの1つの特性曲線である。
【図5】図3の緩衝器全体の特性曲線である。
【符号の説明】
【0028】
10 緩衝器
20 ばね体
22 ばね体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアレールに沿って移動可能なクラブに固定された垂下線のための導体クランプであって、前記垂下線のための支持体と、前記支持体に前記垂下線を固定するための締付装置と、前記導体クランプに対する第1のクラブの衝撃を吸収するための緩衝器と、を有し、前記緩衝器(10)が少なくとも2つのばね体(20、22)を有しており、この少なくとも2つのばね体(20、22)が、異なる特性を有し、かつ前記緩衝器(10)の作用の予想される方向に一方を他方の後ろにして配置されることを特徴とする、導体クランプ。
【請求項2】
前記最も弾性のあるばね体(20)が、衝撃力の印加のために設けられた前記緩衝器(10)の端部に最も近いところに配置されることを特徴とする、請求項1に記載の導体クランプ。
【請求項3】
前記緩衝器(10)がリフティングロッド(16)を有し、このリフティングロッド(16)が、前記有効な衝撃力の下で前記緩衝器(10)の作用の前記予想される方向に変位され得ることと、異なる特性を有するばね体(20、22)が前記リフティングロッド(16)の両端部に配置されることと、を特徴とする、請求項1または2に記載の導体クランプ。
【請求項4】
前記緩衝器(10)が、前記リフティングロッド(16)の内側端部が前記ハウジングの内側に位置し、かつ外側端部が前記ハウジングの外側に位置した状態で、前記リフティングロッド(16)が移動可能に装着されるハウジングを有することと、前記最も弾性のあるばね体(20)が前記リフティングロッド(16)の前記外側端部に配置されていることと、前記リフティングロッド(16)の前記内側端部が、前記ハウジング内で少なくとも1つのより硬いばね体(22)上で支持されていることと、を特徴とする、請求項3に記載の導体クランプ。
【請求項5】
少なくとも2つの同様のばね体(22)が、前記ハウジング内で前記リフティングロッド(16)を支持するために隣り合わせで配置されていることと、前記全有効力が、このばね体(22)上に少なくともほぼ均等に分配されることと、を特徴とする、請求項4に記載の導体クランプ。
【請求項6】
前記リフティングロッド(16)の前記内側端部が、プレート(21)に接続されており、このプレート(21)が、前記緩衝器(10)の作用の前記予想される方向に変位され得るように前記ハウジング内に装着されており、かつ前記ハウジング内でプレート(21)自体と前記ハウジングの壁(14)との間に前記ばね体(22)を締め付けることを特徴とする、請求項5に記載の導体クランプ。
【請求項7】
前記緩衝器(10)がハウジングを有し、このハウジングが、前記導体クランプ(4)を前記キャリアレール(1)に取り付けるためのホルダの一部を形成していることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の導体クランプ。
【請求項8】
少なくとも1つの前記ばね体(20)が、細胞状組織を有する弾性材料から作られていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の導体クランプ。
【請求項9】
少なくとも1つの前記ばね体(22)が中実の弾性材料から作られていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の導体クランプ。
【請求項10】
前記緩衝器(10)の総合特性が非線形であり、かつ撓みを介したばね力の増加が少ない最初の領域と、撓みを介したばね力の増加がより大きい後続の領域と、を有することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の導体クランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−526508(P2009−526508A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553632(P2008−553632)
【出願日】平成18年12月16日(2006.12.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/012154
【国際公開番号】WO2007/090454
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(508237443)バンプフラー アクチエンゲゼルシャフト (13)
【Fターム(参考)】