説明

垂直磁気記録媒体及びその製造方法

【課題】磁性粒子のサイズの低減と磁性粒子間の距離を狭めることとを両立して、高記録密度化及び高SN比を達成すること。
【解決手段】本発明の垂直磁気記録媒体は、基板上に少なくとも磁性層を含む積層膜を有する垂直磁気記録媒体であって、前記磁性層は、グラニュラー構造を有する磁性材料と、Mgを含むセラミックス間化合物を含む非磁性粒界と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録方式のHDD(ハードディスクドライブ)などに搭載される垂直磁気記録媒体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報処理の大容量化に伴い、各種の情報記録技術が開発されている。特に磁気記録技術を用いたHDDの面記録密度は近年、年率50〜60%程度の割合で増加し続けている。最近では、HDD等に用いられる2.5インチ径の磁気記録媒体にして、320GByte/プラッタを超える情報記録容量が求められるようになってきており、このような要請にこたえるためには500GBit/Inchを超える情報記録密度を実現することが求められる。
【0003】
HDD等に用いられる磁気記録媒体において高記録密度を達成するために、近年、垂直磁気記録方式が提案されている。垂直磁気記録方式に用いられる垂直磁気記録媒体は、グラニュラー磁性層(グラニュラー構造を有する磁性層)の磁化容易軸が基板面に対して垂直方向に配向するよう調整されている。垂直磁気記録方式は従来の面内磁気記録方式に比べて、超常磁性現象により記録信号の熱的安定性が損なわれ、記録信号が消失してしまう、いわゆる熱揺らぎ現象を抑制することができるので、高記録密度化に対して好適である。
【0004】
高記録密度化を図り、さらに高い信号ノイズ比(SN比)を達成させるためには、最小記録単位である1ビット当たりに存在する磁性粒子の数を多くし、粒子サイズを小さくさせなければならない。そのため、垂直磁気記録媒体における磁性層(記録層)では、磁性粒子の磁気的な相互作用を小さくさせるために、非磁性相で磁性粒子を分離している(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−024346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非磁性相による磁性粒子の分離において、磁性粒子のサイズや磁性粒子間の距離は、磁性層に用いる非磁性材料や、その体積分率に影響する。一般的に、体積分率を増加させると、磁性粒子のサイズは小さくなるが、非磁性相の領域が広がるため、結果として磁性粒子密度の増加にはつながらない。磁性粒子の密度を向上させるためには、磁性粒子のサイズの低減と磁性粒子間の距離を狭めることとの両立が必要となる。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、磁性粒子のサイズの低減と磁性粒子間の距離を狭めることとを両立して、高記録密度化及び高SN比を達成できる垂直磁気記録媒体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の垂直磁気記録媒体は、基板上に少なくとも磁性層を含む積層膜を有する垂直磁気記録媒体であって、前記磁性層は、グラニュラー構造を有する磁性材料と、Mgを含むセラミックス間化合物を含む非磁性粒界と、を有することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、磁性層がグラニュラー構造を有する磁性材料と、Mgを含むセラミックス間化合物を含む非磁性粒界と、を有しており、磁性粒子のサイズの低減と磁性粒子間の距離を狭めることとを両立することができる。その結果、このような磁性層を有する垂直磁気記録媒体は、高記録密度化及び高SN比を実現することができる。
【0010】
本発明の垂直磁気記録媒体においては、前記磁性材料がCoCrPt合金であり、前記セラミックス間化合物がMgSiO、MgSiO及びMgTiOからなる群より選ばれたものであることが好ましい。
【0011】
本発明の垂直磁気記録媒体においては、前記磁性層は、CoCrPt合金、並びにMgSiO、MgSiO及びMgTiOからなる群より選ばれたものからなるターゲットを用いてスパッタリングされて形成されたことが好ましい。
【0012】
本発明の垂直磁気記録媒体においては、前記磁性層は、平面視において、1ビットに相当する領域に12以上のグラニュラー磁性粒子が存在することが好ましい。
【0013】
本発明の垂直磁気記録媒体の製造方法は、基板上に少なくとも磁性層を含む積層膜を有する垂直磁気記録媒体の製造方法であって、グラニュラー構造を有する磁性材料と、Mgを含むセラミックス間化合物とからなるターゲットを用いてスパッタリングすることにより前記磁性層を形成することを特徴とする。
【0014】
この方法によれば、グラニュラー構造を有する磁性材料と、Mgを含むセラミックス間化合物を含む非磁性粒界と、を有する磁性層を形成することができる。これにより、高記録密度化及び高SN比を実現できる垂直磁気記録媒体を得ることができる。
【0015】
本発明の垂直磁気記録媒体の製造方法においては、前記磁性材料がCoCrPt合金であり、前記セラミックス間化合物がMgSiO、MgSiO及びMgTiOからなる群より選ばれたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、磁性層においてMgを含むセラミックス間化合物を含む非磁性粒界を有するので、磁性粒子のサイズの低減と磁性粒子間の距離を狭めることとを両立することができ、その結果、高記録密度化及び高SN比を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態に係る垂直磁気記録媒体の構成を説明する図である。
【図2】二種以上の酸化物による平衡状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかる垂直磁気記録媒体の製造方法の実施の形態について説明する。
(垂直磁気記録媒体)
図1は、本発明の実施の形態に係る垂直磁気記録媒体100の構成を説明する図である。図1に示す垂直磁気記録媒体100は、基板110上に少なくとも磁性層を含む積層膜を有する。積層膜は、付着層120、軟磁性層130、前下地層140、下地層150、主記録層160、分断層170、補助記録層180、保護層190、及び潤滑層200で主に構成されている。
【0019】
基板110は、例えばアモルファスのアルミノシリケートガラスをダイレクトプレスで円板状に成型したガラスディスクを用いることができる。なお、ガラスディスクの種類、サイズ、厚さ等は特に制限されない。ガラスディスクの材質としては、例えば、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ソーダアルミノケイ酸ガラス、アルミノボロシリケートガラス、ボロシリケートガラス、石英ガラス、チェーンシリケートガラス、又は、結晶化ガラス等のガラスセラミックなどが挙げられる。このガラスディスクに研削、研磨、化学強化を順次施し、化学強化ガラスディスクからなる平滑な非磁性の基板110を得ることができる。
【0020】
基板110上に、DCマグネトロンスパッタリング法にて付着層120から補助記録層180まで順次成膜を行い、保護層190はCVD法により成膜することができる。この後、潤滑層200をディップコート法により形成することができる。以下、各層の構成について説明する。
【0021】
付着層120は基板110に接して形成され、この上に成膜される軟磁性層130と基板110との密着強度を高める機能を備えている。付着層120は、例えばCrTi系非晶質合金、CoW系非晶質合金、CrW系非晶質合金、CrTa系非晶質合金、CrNb系非晶質合金などのアモルファス(非晶質)の合金膜とすることが好ましい。付着層120の膜厚は、例えば2nm〜20nm程度とすることができる。付着層120は単層でも良く、積層構造でも良い。
【0022】
軟磁性層130は、垂直磁気記録方式において信号を記録する際、ヘッドからの書き込み磁界を集束することによって、磁気記録層への信号の書き易さと高密度化を助ける働きをする。軟磁性材料としては、CoTaZrなどのコバルト系合金の他、FeCoCrB、FeCoTaZr、FeCoNiTaZrなどのFeCo系合金、や、NiFe系合金などの軟磁気特性を示す材料を用いることができる。また、軟磁性層130のほぼ中間にRuからなるスペーサ層を介在させることによって、AFC(Antiferro-magnetic exchange coupling:反強磁性交換結合)を備えるように構成することができる。この構成により、磁化の垂直成分を極めて少なくすることができるため、軟磁性層130から生じるノイズを低減することができる。スペーサ層を介在させた構成の場合、軟磁性層130の膜厚は、スペーサ層が0.3nm〜0.9nm程度、その上下の軟磁性材料の層をそれぞれ10nm〜50nm程度とすることができる。
【0023】
前下地層140は、この上方に形成される下地層150の結晶配向性を促進する機能と、粒径などの微細構造を制御する機能とを備える。前下地層140は、hcp構造であっても良いが、(111)面が基板110の主表面と平行となるよう配向した面心立方構造(fcc構造)であることが好ましい。前下地層140の材料としては、例えば、Ni、Cu、Pt、Pd、Ru、Co、Hfや、さらにこれらの金属を主成分として、V、Cr、Mo、W、Taなどを1つ以上添加させた合金とすることができる。具体的には、NiV、NiCr、NiTa、NiW、NiVCr、CuW、CuCrなどを好適に選択することができる。前下地層140の膜厚は1nm〜20nm程度とすることができる。また前下地層140を積層構造としても良い。
【0024】
下地層150はhcp構造であって、この上方に形成される主記録層160のhcp構造の磁性結晶粒の結晶配向性を促進する機能と、粒径などの微細構造を制御する機能とを備え、主記録層のグラニュラー構造のいわば土台となる層である。RuはCoと同じhcp構造をとり、また結晶の格子間隔がCoと近いため、Coを主成分とする磁性粒を良好に配向させることができる。したがって、下地層150の結晶配向性が高いほど、主記録層160の結晶配向性を向上させることができ、また、下地層150の粒径を微細化することによって、主記録層の粒径を微細化することができる。下地層150の材料としてはRuが代表的であるが、さらにCr、Coなどの金属や、酸化物を添加することもできる。下地層150の膜厚は、例えば5nm〜40nm程度とすることができる。
【0025】
また、スパッタリング時のガス圧を変更することにより下地層150を2層構造としてもよい。具体的には、下地層150の上層側を形成する際に下層側を形成するときよりもArのガス圧を高圧にすると、上方の主記録層160の結晶配向性を良好に維持したまま、磁性粒子の粒径の微細化が可能となる。
【0026】
主記録層(磁性層)160は、グラニュラー構造を有する磁性材料と、Mgを含むセラミックス間化合物を含む非磁性粒界と、を有する。すなわち、主記録層(磁性層)160は、CoCrPt系合金を主成分とする強磁性体の磁性粒子の周囲に、セラミックス間化合物を主成分とする非磁性物質を偏析させて粒界を形成した柱状のグラニュラー構造を有している。
【0027】
ここで、セラミックス間化合物とは、例えば、二種以上の酸化物による平衡状態図上で図2に示すように第三の酸化物が形成されるとき、その第三の酸化物のことをいう。いう。セラミックス間化合物としては、MgSiO、MgSiO及びMgTiOからなる群より選ばれたものを用いることができる。このような主記録層160は、グラニュラー構造を有する磁性材料と、Mgを含むセラミックス間化合物とからなるターゲットを用いてスパッタリングすることにより形成される。すなわち、CoCrPt合金、並びにMgSiO、MgSiO及びMgTiOからなる群より選ばれたものからなるターゲットを用いてスパッタリングされて形成される。これにより、CoCrPt系合金からなる磁性粒子(グレイン)の周囲に非磁性物質であるMgSiO、MgSiO又はMgTiOが偏析して粒界を形成し、磁性粒子が柱状に成長したグラニュラー構造を形成することができる。
【0028】
このようにして形成された主記録層160は、平面視において、1ビットに相当する領域に12以上のグラニュラー磁性粒子が存在する。したがって、磁性粒子のサイズの低減と磁性粒子間の距離を狭めることとを両立することができる。その結果、このような主記録層(磁性層)160を有する垂直磁気記録媒体は、高記録密度化及び高SN比を実現することができる。
【0029】
なお、上記に示した主記録層160に用いた物質は一例であり、これに限定されるものではない。CoCrPt系合金としては、CoCrPtに、B、Ta、Cu、などを少なくとも1種類添加したものを用いても良いよい。
【0030】
分断層170は、主記録層160と補助記録層180の間に設けられ、これらの層の間の交換結合の強さを調整する作用を持つ。これにより160と補助記録層180の間、および160内の隣接する磁性粒子の間に働く磁気的な結合の強さを調節することができるため、HcやHnといった熱揺らぎ耐性に関係する静磁気的な値は維持しつつ、オーバーライト特性、SNR特性などの記録再生特性を向上させることができる。
【0031】
分断層170は、結晶配向性の継承を低下させないために、hcp結晶構造を持つRuやCoを主成分とする層であることが好ましい。Ru系材料としては、Ruの他に、Ruに他の金属元素や酸素又は酸化物を添加したものが使用できる。また、Co系材料としては、CoCr合金などが使用できる。具体例としては、Ru、RuCr、RuCo、Ru−SiO、Ru−WO、Ru−TiO、CoCr、CoCr−SiO、CoCr−TiOなどが使用できる。なお、分断層170には通常非磁性材料が用いられるが、弱い磁性を有していても良い。また、良好な交換結合強度を得るために、分断層170の膜厚は、0.2nm〜1.0nmの範囲内であることが好ましい。
【0032】
補助記録層180は、基板主表面の面内方向に磁気的にほぼ連続した磁性層である。補助記録層180は、主記録層160に対して磁気的相互作用(交換結合)を有するため、保磁力Hcや逆磁区核形成磁界Hn等の静磁気特性を調整することが可能であり、これにより熱揺らぎ耐性、OW(Over Write)特性、及びSNRの改善を図ることを目的としている。補助記録層180の材料としては、CoCrPt系合金を用いることができ、さらに、B、Ta、Cuなどの添加物を加えても良い。具体的には、CoCrPt、CoCrPtB、CoCrPtTa、CoCrPtCu、CoCrPtCuBなどとすることができる。また、補助記録層180の膜厚は、例えば3nm〜10nmとすることができる。
【0033】
なお、「磁気的に連続している」とは、磁性が途切れずにつながっていることを意味する。「ほぼ連続している」とは、補助記録層180全体で観察すれば必ずしも単一の磁石ではなく、部分的に磁性が不連続となっていても良いことを意味する。すなわち、補助記録層180は、複数の磁性粒子の集合体にまたがって(かぶさるように)磁性が連続していれば良い。この条件を満たす限り、補助記録層180において例えばCrが偏析した構造であっても良い。
【0034】
保護層190は、磁気ヘッドの衝撃や腐食から垂直磁気記録媒体100を防護するための層である。保護層190は、カーボンを含む膜をCVD法により成膜して形成することができる。一般にCVD法によって成膜されたカーボンはスパッタリング法によって成膜したものと比べて膜硬度が向上するので、磁気ヘッドからの衝撃に対してより有効に垂直磁気記録媒体100を防護することができるため好適である。保護層190の膜厚は、例えば2nm〜6nmとすることができる。
【0035】
潤滑層200は、垂直磁気記録媒体100の表面に磁気ヘッドが接触した際に、保護層190の損傷を防止するために形成される。例えば、PFPE(パーフロロポリエーテル)をディップコート法により塗布して成膜することができる。潤滑層200の膜厚は、例えば0.5nm〜2.0nmとすることができる。
【0036】
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
(実施例)
アモルファスのアルミノシリケートガラスをダイレクトプレスで円盤状に成型し、ガラスディスクを作成した。そして、このガラスディスクに研削、研磨、化学強化を順次施し、化学強化ガラスディスクからなる平滑な非磁性ディスク基体である基板を得た。基板の直径は、65mm、内径は20mm、ディスク厚0.8mmの2.5インチ型磁気ディスク用基板である。得られた基板の表面粗さをAFM(原子間力顕微鏡)で観察したところ、Rmaxが2.18nm、Raが0.18nmの平滑な表面であることを確認した。尚、Rmax及びRaは、日本工業規格(JIS)に従う。
【0037】
次に、基板110上に、真空引きを行った成膜装置を用いて、DCマグネトロンスパッタリングで、Ar雰囲気中で順次、付着層120、軟磁性層130、前下地層140、下地層150、主記録層160、分断層170、及び補助記録層180の成膜を行った。なお、特に記載しない限り成膜時のArガス圧は0.6Paとした。
【0038】
具体的には、付着層120として、Cr−50Tiを厚さ10nmで成膜した。軟磁性層130として、厚さ0.7nmのRu層を挟んで、92(40Fe−60Co)−3Ta−5Zrをそれぞれ厚さ20nmで成膜した。前下地層140として、Ni−5Wを厚さ8nmで成膜した。下地層150として、Ruを厚さ10nmで成膜した上にArガス圧5PaでRuを厚さ10nmで成膜した。主記録層160として、Arガス圧3Paで90(70Co−10Cr−20Pt)−10(Cr)を厚さ2nmで成膜した上に、さらにArガス圧3Paで94(72Co−10Cr−18Pt)−6(MgSiO)を厚さ10nmで成膜した。分断層170として、Ruを厚さ0.3nmで成膜した。補助記録層180として、62Co−18Cr−15Pt−5Bを厚さ6nmで成膜した。
【0039】
補助記録層180上に、CVD法によりCを用いて厚さ4nmで成膜して保護層190を形成し、その表層を窒化処理した。次いで、ディップコート法によりPFPE(パーフロロポリエーテル)を用いて厚さ1nmで形成して潤滑層200を形成した。このようにして、実施例に係る垂直磁気記録媒体を作製した。
【0040】
(比較例)
主記録層160として、Arガス圧3Paで90(70Co−10Cr−20Pt)−10(Cr)を厚さ2nmで成膜した上に、さらにArガス圧3Paで90(72Co−10Cr−18Pt)−10(SiO)を厚さ10nmで成膜すること以外実施例と同様にして比較例の垂直磁気記録媒体を作製した。
【0041】
作製した実施例の垂直磁気記録媒体及び比較例の垂直磁気記録媒体のSNRを調べた。その結果を下記表1に示す。なお、記録再生特性は、R/Wアナライザーと、記録側がSPT素子を備え、再生側がGMR素子を備える垂直磁気記録方式用磁気ヘッドとを用いて、記録密度を1500kfciとして測定した。このとき、磁気ヘッドの浮上量は10nmであった。
【表1】

【0042】
表1から分かるように、主記録層における非磁性粒界がセラミックス間化合物である場合(実施例)には、主記録層における非磁性粒界が酸化物である場合(比較例)に比べて、SNRが非常に良好であった。これは、磁性粒子のサイズの低減と磁性粒子間の距離を狭めることができたためであると考えられる。このため、本発明の垂直磁気記録媒体が、高記録密度化及び高SN比を達成できていることが分かる。
【0043】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施の形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、垂直磁気記録方式のHDDなどに搭載される垂直磁気記録媒体及びその製造方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
100 垂直磁気記録媒体
110 基板
120 付着層
130 軟磁性層
140 前下地層
150 下地層
160 主記録層
170 分断層
180 補助記録層
190 保護層
200 潤滑層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に少なくとも磁性層を含む積層膜を有する垂直磁気記録媒体であって、前記磁性層は、グラニュラー構造を有する磁性材料と、Mgを含むセラミックス間化合物を含む非磁性粒界と、を有することを特徴とする垂直磁気記録媒体。
【請求項2】
前記磁性材料がCoCrPt合金であり、前記セラミックス間化合物がMgSiO、MgSiO及びMgTiOからなる群より選ばれたものであることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項3】
前記磁性層は、CoCrPt合金、並びにMgSiO、MgSiO及びMgTiOからなる群より選ばれたものからなるターゲットを用いてスパッタリングされて形成されたことを特徴とする請求項2記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項4】
前記磁性層は、平面視において、1ビットに相当する領域に12以上のグラニュラー磁性粒子が存在することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項5】
基板上に少なくとも磁性層を含む積層膜を有する垂直磁気記録媒体の製造方法であって、グラニュラー構造を有する磁性材料と、Mgを含むセラミックス間化合物とからなるターゲットを用いてスパッタリングすることにより前記磁性層を形成することを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項6】
前記磁性材料がCoCrPt合金であり、前記セラミックス間化合物がMgSiO、MgSiO及びMgTiOからなる群より選ばれたものであることを特徴とする請求項5記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−253597(P2011−253597A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127697(P2010−127697)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(510210911)ダブリュディ・メディア・シンガポール・プライベートリミテッド (53)
【Fターム(参考)】