説明

垂直配向型液晶表示装置及びその生産方法

【課題】意匠端部の表示異常を無くすか軽減する垂直配向型液晶表示装置及びその生産方法を提供する。
【解決手段】垂直配向型液晶表示装置は、第1基板31a、第1電極31bと、第2基板32a、第2電極32bと、液晶層と、を備え、両電極に電圧を印加することに対応して液晶層の液晶分子が倒れることによって、対向面の法線方向から見て両電極が略重なる領域によって構成される意匠を表示する。前記意匠の端部は、液晶ダイレクタ方向に対する角度の絶対値が所定の値以下である第1の端部と、液晶ダイレクタ方向側に位置し、液晶ダイレクタ方向に対する角度の絶対値が前記所定の値より大きい第2の端部と、を含み、第2の端部における第2電極32bの端縁が、第1電極31bの端縁よりも液晶ダイレクタ方向に所定の長さ以上延長されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直配向型液晶表示装置及びその生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置として、垂直配向型液晶表示装置(以下、VA−LCD(Vertical Alignment-Liquid Crystal Display)とも言う。)が知られている。VA−LCDは、上下基板間に配置される液晶層内の液晶分子が各基板の主面(対向面)に対して略垂直に配向しており、上下基板の各々に設けられた電極に電圧を印加し、液晶層に電圧をかけ、基板主面と略水平方向に液晶分子を倒すことで、所定の意匠表示を可能としている。
【0003】
VA−LCDとしては、電圧無印加時における液晶層内の液晶分子を1つの方向に揃えて配向させたモノドメイン配向のものが知られているが、例えば、セグメント表示方式のモノドメインVA−LCDでは、意匠端部において線状の表示異常(暗領域)が視認され、表示品位が損なわれてしまうという問題があった(図9(a)、(b)参照)。電圧印加時、液晶分子は電気力線に対して略垂直に倒れるが、上下電極の間に発生する斜め電界の方向によっては、液晶分子が液晶ダイレクタ方向(液晶中央分子配向方向)とは異なるほうに倒れてしまい配向欠陥が生じる(図8参照)。このような配向欠陥により表示異常が視認される。
【0004】
この種の配向欠陥を抑制する技術として、例えば、ドットマトリクス表示方式のVA−LCDにおいては、特許文献1のように上下電極を一部重畳して平行移動させる技術や、特許文献2のように電極に切り込みを形成する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−241196号公報
【特許文献2】特許第3324926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、セグメント表示方式のモノドメインVA−LCDでは、意匠形状が一定でなく、電極の形成パターンもドットマトリクス表示型のものより複雑であるため、特許文献1、2に係る技術をそのまま適用することができなかった。
【0007】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、意匠端部の表示異常を無くすか軽減する垂直配向型液晶表示装置及びその生産方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明の第1の観点に係る垂直配向型液晶表示装置は、
第1基板と、
前記第1基板の下側に位置し、前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板の下面に形成された第1電極と、
前記第1電極を下側から覆うように前記第1基板に形成された第1配向膜と、
前記第2基板の上面に形成された第2電極と、
前記第2電極を上側から覆うように前記第2基板に形成された第2配向膜と、
前記第1配向膜と前記第2配向膜との間に位置する液晶層と、を備え、
前記第1電極及び前記第2電極の両電極に電圧を印加していない状態では、前記液晶層の液晶分子が前記第1基板と前記第2基板の対向面と略垂直に配向されており、
前記両電極に電圧を印加することに対応して前記液晶層の液晶分子が倒れることによって、前記対向面の法線方向から見て前記両電極が略重なる領域によって構成される意匠を表示する垂直配向型液晶表示装置であって、
前記法線方向から見て前記液晶分子の前記第2基板に対するプレチルト角の角度が減る方向を液晶ダイレクタ方向とした場合、
前記意匠の端部は、前記液晶ダイレクタ方向に対する角度の絶対値が所定の値以下である第1の端部と、前記液晶ダイレクタ方向側に位置し、前記液晶ダイレクタ方向に対する角度の絶対値が前記所定の値より大きい第2の端部と、を含み、
前記第2の端部における前記第2電極の端縁が、前記第1電極の端縁よりも前記液晶ダイレクタ方向に所定の長さ以上延長されている、
ことを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するため本発明の第2の観点に係る垂直配向型液晶表示装置は、
第1基板と、
前記第1基板の下側に位置し、前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板の下面に形成された第1電極と、
前記第1電極を下側から覆うように前記第1基板に形成された第1配向膜と、
前記第2基板の上面に形成された第2電極と、
前記第2電極を上側から覆うように前記第2基板に形成された第2配向膜と、
前記第1配向膜と前記第2配向膜との間に位置する液晶層と、を備え、
前記第1電極及び前記第2電極の両電極に電圧を印加していない状態では、前記液晶層の液晶分子が前記第1基板と前記第2基板の対向面と略垂直に配向されており、
前記両電極に電圧を印加することに対応して前記液晶層の液晶分子が倒れることによって、前記対向面の法線方向から見て前記両電極が略重なる領域によって構成される意匠を表示する垂直配向型液晶表示装置であって、
前記法線方向から見て前記液晶分子の前記第2基板に対するプレチルト角の角度が減る方向を液晶ダイレクタ方向とした場合、
前記意匠の端部は、前記液晶ダイレクタ方向に対する角度の絶対値が所定の値以下である第1の端部と、前記液晶ダイレクタ方向とは逆方向側に位置し、前記液晶ダイレクタ方向に対する角度の絶対値が前記所定の値より大きい第2の端部と、を含み、
前記第2の端部における前記第1電極の端縁が、前記第2電極の端縁よりも前記逆方向に所定の長さ以上延長されている、
ことを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するため本発明の第3の観点に係る垂直配向型液晶表示装置の生産方法は、
第1基板と、
前記第1基板の下側に位置し、前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板の下面に形成された第1電極と、
前記第1電極を下側から覆うように前記第1基板に形成された第1配向膜と、
前記第2基板の上面に形成された第2電極と、
前記第2電極を上側から覆うように前記第2基板に形成された第2配向膜と、
前記第1配向膜と前記第2配向膜との間に位置する液晶層と、を備え、
前記第1電極及び前記第2電極の両電極に電圧を印加していない状態では、前記液晶層の液晶分子が前記第1基板と前記第2基板の対向面と略垂直に配向されており、
前記両電極に電圧を印加することに対応して前記液晶層の液晶分子が倒れることによって、前記対向面の法線方向から見て前記両電極が略重なる領域によって構成される意匠を表示する垂直配向型液晶表示装置の生産方法であって、
前記第1電極のレイアウトと前記第2電極のレイアウトとを決定する決定ステップを含み、
前記法線方向から見て前記液晶分子の前記第2基板に対するプレチルト角の角度が減る方向を液晶ダイレクタ方向とした場合、
前記意匠の端部は、前記液晶ダイレクタ方向に対する角度の絶対値が所定の値以下である第1の端部と、前記液晶ダイレクタ方向側に位置し、前記液晶ダイレクタ方向に対する角度の絶対値が前記所定の値より大きい第2の端部と、を含み、
前記決定ステップは、前記第2の端部における前記第2電極の端縁が、前記第1電極の端縁よりも前記液晶ダイレクタ方向に所定の長さ以上延長されるという条件を満たすように、前記第1電極のレイアウトと前記第2電極のレイアウトとを決定するステップである、
ことを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するため本発明の第4の観点に係る垂直配向型液晶表示装置の生産方法は、
第1基板と、
前記第1基板の下側に位置し、前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板の下面に形成された第1電極と、
前記第1電極を下側から覆うように前記第1基板に形成された第1配向膜と、
前記第2基板の上面に形成された第2電極と、
前記第2電極を上側から覆うように前記第2基板に形成された第2配向膜と、
前記第1配向膜と前記第2配向膜との間に位置する液晶層と、を備え、
前記第1電極及び前記第2電極の両電極に電圧を印加していない状態では、前記液晶層の液晶分子が前記第1基板と前記第2基板の対向面と略垂直に配向されており、
前記両電極に電圧を印加することに対応して前記液晶層の液晶分子が倒れることによって、前記対向面の法線方向から見て前記両電極が略重なる領域によって構成される意匠を表示する垂直配向型液晶表示装置の生産方法であって、
前記第1電極のレイアウトと前記第2電極のレイアウトとを決定する決定ステップを含み、
前記法線方向から見て前記液晶分子の前記第2基板に対するプレチルト角の角度が減る方向を液晶ダイレクタ方向とした場合、
前記意匠の端部は、前記液晶ダイレクタ方向に対する角度の絶対値が所定の値以下である第1の端部と、前記液晶ダイレクタ方向とは逆方向側に位置し、前記液晶ダイレクタ方向に対する角度の絶対値が前記所定の値より大きい第2の端部と、を含み、
前記決定ステップは、前記第2の端部における前記第1電極の端縁が、前記第2電極の端縁よりも前記逆方向に所定の長さ以上延長されるという条件を満たすように、前記第1電極のレイアウトと前記第2電極のレイアウトとを決定するステップである、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、意匠端部の表示異常を無くすか軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る液晶表示装置の概略断面図である。
【図2】(a)は、平面視における液晶ダイレクタ方向と上下ラビング方向と偏光フィルタの透過軸との関係を説明する図である。(b)は、液晶ダイレクタ方向を説明するための図である。(c)は、第2基板に対する液晶分子のプレチルト角を説明するための図である。
【図3】液晶ダイレクタ方向に対する意匠端部への角度と表示異常との関係の表を示す図である。
【図4】(a)は、図1の液晶表示装置を上から見た場合の概略平面図であり、第1電極と第2電極との配置関係を説明するための図である。(b)は、液晶表示装置の(a)に示すA−A線概略断面図である。
【図5】接続部の接続幅と表示異常との関係の表を示す図である。
【図6】プレチルト角の角度と表示異常との関係の表を示す図である。
【図7】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係る液晶表示装置の効果を説明するための図である。
【図8】従来の液晶表示装置の概略断面図である。
【図9】(a)及び(b)は、従来の液晶表示装置において視認された表示異常を説明するための図である。(c)は、従来の液晶表示装置において視認された表示ムラを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る一実施形態について図面を参照して説明する。
なお、以下では、所定の構成要素の、液晶表示装置の表示面方向(液晶表示装置の鑑賞者の方向)を「上」とし、表示面方向の反対側方向を「下」として、説明する。
【0015】
(液晶表示装置の構成)
図1に示す本実施形態に係る液晶表示装置100は、垂直配向型液晶表示装置であり、第1偏光フィルタ10と、第2偏光フィルタ20と、液晶素子30と、半透過反射層40と、バックライト50と、を備える。
【0016】
第1偏光フィルタ10と第2偏光フィルタ20とは対向して配置され、両者の間に液晶素子30が設けられる。
【0017】
第1偏光フィルタ10は、液晶素子30の上に位置し、例えば偏光板によって構成される。第1偏光フィルタ10は、吸収軸及び吸収軸に直交する透過軸を有し、表面側又は裏面側から入射する光を透過軸に沿った直線偏光として出射する。
【0018】
第2偏光フィルタ20は、液晶素子30の下に位置し、例えば偏光板によって構成される。第2偏光フィルタ20は、吸収軸及び吸収軸に直交する透過軸を有し、表面側又は裏面側から入射する光を透過軸に沿った直線偏光として出射する。
【0019】
第1偏光フィルタ10と第2偏光フィルタ20とは、図2(a)に示すように、各々の透過軸(又は吸収軸)が液晶ダイレクタ方向に対して+45°と−45°の角度を有するようにクロスニコルで配置される。このような配置の場合の液晶表示装置100は、ノーマリブラックモードである。液晶ダイレクタ方向については後に詳述する。
【0020】
液晶素子30は、第1基板ユニット31と、第2基板ユニット32と、液晶分子33aを含む液晶層33と、を備える。第1基板ユニット31と第2基板ユニット32とは対向して配置され、両者の間に液晶層33が設けられる。なお、図1等では説明便宜のため液晶分子33aを模式的に楕円体で表している。
【0021】
第1基板ユニット31は、液晶層33の上に配置され、第1基板31aと、第1電極31bと、第1配向膜31cと、を備える。
第2基板ユニット32は、液晶層33の下に配置され、第2基板32aと、第2電極32bと、第2配向膜32cと、を備える。
【0022】
第1基板31aと第2基板32aとは、それぞれ、例えば、ガラス基板、プラスチック基板等の透明基板であり、光を透過する。
【0023】
第1電極31bと第2電極32bとは、それぞれ、光を透過する透明電極であり、例えばITO(酸化インジウムスズ)から、公知の方法(例えば、スパッタ、蒸着、又は、エッチング)により形成される。第1電極31bは、第1基板31aの主面(液晶層33側の面)に任意の表示パターンに対応した形状(例えば、図形、数字等をセグメント表示できる形状)で形成される。同様に、第2電極32bは、第2基板32aの主面(液晶層33側の面)に任意の表示パターンに対応した形状で形成される。
第1電極31bと第2電極32bとは対向して配置され、液晶表示装置100は、両電極が平面視で(第1基板31aと第2基板32aの対向面の垂直上方から見て)略重なる領域で意匠を表示する。第1電極31b及び第2電極32bの両電極には、パッシブ駆動で電圧が印加される。本実施形態に係る第1電極31b及び第2電極32bの形状・配置については、後に詳述する。
【0024】
第1配向膜31cと第2配向膜32cとは、それぞれ、液晶層33に接する膜であり、例えば、ポリイミドから、公知の方法(例えば、フレクソ印刷)によって形成される。第1配向膜31cは、第1基板31aの主面(液晶層33側の面)に、第1電極31bを覆うようにして形成される。同様に、第2配向膜32cは、第2基板32aの主面(液晶層33側の面)に、第2電極32bを覆うようにして形成される。
【0025】
第1配向膜31cと第2配向膜32cとは、それぞれ、液晶層33の液晶分子33aの電圧無印加時における配向状態(液晶分子33aの長軸方向)を基板の主面(対向面)と略垂直に規定する垂直配向膜であり、液晶分子33aを1つの方位に略揃えて配向させる(いわゆるモノドメイン配向)。このため、電圧無印加時における液晶分子33aのプレチルト角(基板の主面に対して液晶分子33aの長軸がなす角度)は、略90°となっている。ここで、プレチルトとは、電圧印加時に液晶分子33aの倒れる方向(後述する液晶ダイレクタ方向)を規定するため、液晶分子33aを垂直方向から所定の方向にある程度倒すことをいう。プレチルト角とは、基板(基板の主面)と液晶分子33aの長軸とのなす角のうち鋭角又は90°の角をいう。基板法線方向を90°として、プレチルトを付与するにつれ、プレチルト角の角度は、90°から減少していく。
【0026】
第1配向膜31cには、第1の方向(一例として、図1等に矢印で示す「上ラビング方向」)にラビング処理が施され、細かい溝が形成される。一方、第2配向膜32cには、第1の方向とは反対方向である第2の方向(一例として、図1等に矢印で示す「下ラビング方向」)にラビング処理が施され、細かい溝が形成される。例えば、液晶表示装置100の表示面を上方から正視する(表示意匠を正面で観る)観察者から見て、上ラビング方向を12時方向とした場合、下ラビング方向は6時方向である(図2(a)参照)。本実施形態においては、このように、上下基板でアンチパラレルとなるようにラビング処理が施されている。なお、光配向処理、突起配向処理等の公知の処理によって液晶分子33aの配向方向を規定してもよい。また、第1電極31bと第1配向膜31cとの間、第2電極32bと第2配向膜32cとの間、それぞれに、必要に応じて絶縁膜を設けてもよい。
【0027】
上記のように、第1配向膜31cと第2配向膜32cとにより、液晶分子33aの配向方向は規定される。第1電極31b及び第2電極32bの両電極に電圧を印加すると、平面視で両電極が略重なる領域における液晶分子33aは、図2(b)に示すように、基板主面と垂直方向(つまり、基板の法線方向)から模式的に示した液晶分子33aの長軸(ダイレクタ)nの向く方向に倒れる。ここで、基板の法線方向から見て、液晶分子33aの第2基板32a(第2基板32aの主面)に対するプレチルト角(図2(c)参照)が減少する方向を「液晶ダイレクタ方向」と呼ぶことにする(図2(a)、(b)等参照)。液晶ダイレクタ方向は、基板の法線方向から見た場合の液晶層33の断面中央部における液晶分子33aのダイレクタnの向き(つまり、液晶分子33a(長軸)の傾く方向)を示す(図2(b)参照)。本実施形態では、図1、図2(a)に示すように、液晶ダイレクタ方向が前述の下ラビング方向と同じ方向である。
【0028】
液晶層33は、第1基板ユニット31と第2基板ユニット32とによって挟まれている。第1基板ユニット31と第2基板ユニット32とは、図示しないシール部材を挟んで、所定の距離を保って対向するように重ね合わされ、固着される。第1基板ユニット31と第2基板ユニット32とシール部材とによって形成される密閉空間に液晶材が閉じこめられ、液晶層33が形成される。液晶材としては、誘電率異方性Δεが負(Δε<0)のものが用いられる。液晶層33は、第1配向膜31cと第2配向膜32cとによって所定角度のプレチルト角が付与される。液晶層33のプレチルト角の角度は「85°以上89.7°以下」、より好ましくは「89°以上89.7°以下」に設定されている。どのようにして、プレチルト角を規定したかについては後に詳述する。
【0029】
半透過反射層40は、第2偏光フィルタ20の下に位置し、上からの光を反射し、下からの光を透過するものであり、例えば、アルミ等で形成されたハーフミラー等によって構成される。例えば、半透過反射層40は、第2偏光フィルタ20を構成する偏光板の下面に直接形成される。
【0030】
バックライト50は、半透過反射層40の下に位置し、光を面状に出射して液晶素子30等を照らす。バックライト50は、例えば、発光ダイオードと導光部材との組み合わせによって構成される。バックライト50は、液晶表示装置100が明表示を行う際に適宜使用される。
【0031】
電圧無印加時、液晶分子33aは垂直配向なので、下側から第2偏光フィルタ20を通過した光は、液晶層33によっては偏光方向(電場振動方向)がほとんど変化されず、第2偏光フィルタ20とクロスニコルの関係で配置された第1偏光フィルタ10を通過できない。このように、液晶表示装置100は、ノーマリブラックモードとなっている。
一方、一対の電極である第1電極31b及び第2電極32bに電圧を印加すると、液晶層33の電圧がかけられた領域(つまり、平面視において一対の電極が略重なる領域)においては、液晶分子33aが液晶ダイレクタ方向に傾き、特に液晶層33の断面中間に位置する液晶分子33aの長軸は基板(第1基板31a、第2基板32a)の主面と略水平となる。これにより、液晶層33を通過する光に複屈折が起きて、液晶層33を通過する光の偏光方向が変化し、第2偏光フィルタ20の下側から液晶層33を通過した光は第1偏光フィルタ10を通過する。液晶表示装置100は、このように電圧印加時に、光を通過させる領域によって所定の意匠を表示する。
【0032】
(電極の形成態様・配置関係について)
本願発明者は、上記構成の液晶表示装置100において、第1電極31bと第2電極32bとを、それぞれ、所定の条件を満たすように、形成、配置することで、意匠端部に視認される表示異常の発生を抑制することができることを見出した。
以下では、本実施形態に特有の電極の形成態様・配置関係について説明する。
【0033】
ここで、表示異常について説明するため、従来の液晶表示装置200を図8に示す。この液晶表示装置200は、本実施形態に係る液晶表示装置100とその概略構成は同様である。そのため、以下では、各構成について液晶表示装置100と同様の符号を用いて説明する。従来の液晶表示装置200は、「第1電極31bと第2電極32bの形成態様・配置関係」、「液晶層33のプレチルト角」について本実施形態に係る液晶表示装置100と異なる。なお、図8では、偏光フィルタ、半透過反射層、バックライトは省略した。
【0034】
第1電極31b及び第2電極32bの一対の電極に電圧を印加すると、液晶分子33aは、長軸が電気力線に対して略垂直になるように、倒れる。しかし、従来の液晶表示装置200では、斜め電界の発生方向によっては、液晶ダイレクタ方向とは異なる方向に倒れ、基板面に略垂直な状態になる液晶分子33aが発生してしまう(図8の「配向欠陥領域」参照)。このように略垂直な液晶分子33aが発生した領域(配向欠陥領域)においては、第2偏光フィルタ20の下側から液晶層33を通過する光に複屈折が十分に起きないため、光が第1偏光フィルタ10を十分通過できずに線状の表示異常(暗領域)が視認される(図9(a)、(b)参照)。
【0035】
本願発明者は、液晶表示装置が表示する意匠の端部のうち、液晶ダイレクタ方向と意匠の端部(例えば、平面視における端部の接線)とのなす角の角度が所定の条件を満たす一端部において、第2電極32bを端縁から液晶ダイレクタ方向側に延長して設ける、又は、第1電極31bを端縁から液晶ダイレクタ方向側とは逆方向側に延長して設けることで、両電極の間に発生する斜め電界が液晶分子33aに及ぼす悪影響を抑制し、表示異常を無くすか軽減することができることを見出した。
なお、ここで「意匠」とは、電圧印加時に第1電極31b及び第2電極32bの両電極が略重なる領域に表示される1の形状をいう。意匠は、1の形状であるため、意匠の表示領域と非表示領域との境界線(直線または曲線)によって囲まれる。また、以下では、液晶ダイレクタ方向と意匠の端部(意匠の輪郭線)とのなす角(角度の絶対値が小さい方の角)を「端部角」と呼ぶことにする。
【0036】
本願発明者は、端部角が様々な角度の場合(±30°、±40°、90°)に、第1電極31b、第2電極32bを意匠端部から延設(各々の端縁から延長)させた液晶表示装置を作成した。作成した液晶表示装置における表示異常発生の有無に関する実験結果を図3に示す。なお、この実験結果は、フレーム周波数を100Hzとした場合の結果である。
【0037】
図3に示す表において、延設方向の欄の「順方向延設」とは、ある端部角を有する一端部が意匠の液晶ダイレクタ方向側に位置する端部であれば、第2電極32bをその一端部から液晶ダイレクタ方向側に延設(第2電極32bの端縁を液晶ダイレクタ方向に延長)させ、ある端部角を有する一端部が意匠の液晶ダイレクタ方向とは逆方向側に位置する端部であれば、第1電極31bをその一端部から逆方向側に延設(第1電極31bの端縁を前記逆方向に延長)した場合を示している。以下、この場合の電極の延設を順方向延設と呼ぶ。
一方、延設方向の欄の「逆方向延設」とは、ある端部角を有する一端部が意匠の液晶ダイレクタ方向側に位置する端部であれば、第1電極31bをその一端部から液晶ダイレクタ方向側に延設させ、ある端部角を有する一端部が意匠の液晶ダイレクタ方向とは逆方向側に位置する端部であれば、第2電極32bをその一端部から逆方向側に延設した場合を示している。以下、この場合の電極の延設を逆方向延設と呼ぶ。
なお、意匠の端部のうち液晶ダイレクタ方向側に位置する端部とは、例えば、仮に液晶ダイレクタ方向と平行な線を意匠領域内に所定数用意した場合に、平行線の各々中点を結んだ線よりも液晶ダイレクタ側に位置する端部や、意匠領域の重心を通る液晶ダイレクタ方向と垂直な線よりも液晶ダイレクタ側に位置する端部である。
【0038】
図示するように、端部角が90°の意匠端部からの順方向延設では、表示異常が視認されないという非常に良好な結果が得られている。また、端部角が±40°の意匠端部からの順方向延設では、ある程度は表示異常が視認されるものの良好な結果が得られている。しかし、端部角が±30°の意匠端部からの順方向延設では、表示異常がはっきりと視認された。
一方、逆方向延設では、いずれの端部角(±30°、±40°、90°)であっても、表示異常が視認された。
【0039】
以上から、本願発明者は、意匠の端部のうち、端部角の角度が「−30°より小さい又は+30より大きい」という条件(以下、「端部角条件」という。)を満たす一端部において、両電極が上記順方向延設の関係になるように液晶表示装置を設計(特に第1電極31bの形状と第2電極32bの形状とを設計)し、生産すれば、意匠端部に視認される表示異常を無くすか軽減することができることを見出した。
【0040】
ここで、端部角条件を満たすように生産した液晶表示装置100の一具体例について、図4(a)、(b)を参照して説明する。
図4(a)は、液晶表示装置100を上から見た場合の概略平面図であり、第1電極31bを実線で表し、その下方に位置する第2電極32bを点線で表したものである。図4(b)は、液晶表示装置100の図4(a)に示すA−A線概略断面図であり、第1基板31a、第1電極31b、第2基板32a、及び第2電極32b以外の構成を省略した図である。また、図4(a)、(b)では、第1電極31bと第2電極32bの電極パターンの一部を示した。
【0041】
液晶表示装置100では、基板の主面と垂直な方向から見て、第1電極31bと第2電極32bとが略重なる領域で意匠が形成される。具体的には、図4(a)に示すように、正五角形状の第1意匠60aと、矢印形状の第2意匠60bが形成されている。なお、図4(a)では、意匠領域にドットを付した。
【0042】
第1電極31bは、第1意匠60aに重なる部分を含む第1の部分311bと、第2意匠60bに重なる部分を含む第2の部分312bと、を備える。
を備える。
【0043】
第2電極32bは、本実施形態では、図示するように意匠の形状に略等しい形状に形成された電極パターンを有し、第1意匠60aに重なる部分を含む第1の部分321bと、第2意匠60bに重なる部分を含む第2の部分322bと、第1の部分321bと第2の部分322bとを接続し、意匠間(第1意匠60aと第2意匠60bとの間)引き回し電極の役割を有する接続部323bと、を備える。接続部323bの接続幅は、100μm以下の幅で形成されている。接続幅については後に詳述する。
【0044】
ここで、第1意匠60aが示す五角形において紙面上左側の上端に位置する辺を第1意匠60aの第1端部61と呼ぶ。そして、その他4つの辺の各々を、第1端部61から左廻りで順に、第2端部62、第3端部63、第4端部64、第5端部65と呼ぶ。
また、第2意匠60bが示す紙面上上向き矢印において、矢印方向を示す三角形状の左斜辺を第6端部66と呼び、前記三角形状の紙面上下側に位置する長方形の左側の長辺を第7端部67と呼び、長方形の右側の長辺を第8端部68と呼ぶ。
【0045】
また、図示するように、二点差線矢印で示した液晶ダイレクタ方向と第1端部61〜第8端部68とのなす角(端部角)を、それぞれ、θ1、θ2、θ3、θ4、θ5、θ6、θ7、θ8とする。そして、液晶ダイレクタ方向に対して紙面上左回り方向を角度の「+」方向とした場合、θ1〜θ8の各々の角度は、一例として、θ1が+54°、θ2が−54°、θ3が+18°、θ4が+90°、θ5が−18°、θ6が+30°未満、θ7が+90°、θ8が+90°、であるとする。
【0046】
本実施形態では、端部角の角度が「−30°より小さい又は+30より大きい」という条件(端部角条件)を満たす一端部において、その一端部が意匠の液晶ダイレクタ方向側に位置する端部であれば、第2電極32bがその一端部から液晶ダイレクタ方向側に延設(第2電極32bの端縁が液晶ダイレクタ方向に延長)されており、その一端部が意匠の液晶ダイレクタ方向とは逆方向側に位置する端部であれば、第1電極31bがその一端部から逆方向側に延設(第1電極31bの端縁が前記逆方向に延長)されている。
【0047】
具体的には、第1端部61、第2端部62、第4端部64、第7端部67、第8端部68については、それぞれ、θ1の角度が+54°、θ2の角度が−54°、θ4の角度が+90°、θ7が+90°、θ8が+90°と上記端部角条件を満たしており、第1端部61と第2端部62は、第1意匠60aの液晶ダイレクタ方向側に位置し、第7端部67は、第2意匠60bの液晶ダイレクタ方向側に位置するため、第2電極32bは、第1端部61、第2端部62、第7端部67の各々からその端縁が液晶ダイレクタ方向側に延設されている。
また、第4端部64は、第1意匠60aの液晶ダイレクタ方向とは逆方向側に位置し、第8端部68は、第2意匠60bの液晶ダイレクタ方向とは逆方向側に位置するため、第1電極31bは、第4端部64、第8端部68の各々からその端縁が液晶ダイレクタ方向とは逆方向側に延設されている。
【0048】
一方、端部角が上記端部角条件を満たさない場合は、両電極が本実施形態に特有の形状・配置関係を有する必要はなく、例えば従来設計通りに電極の形状が決定される。具体的には、第3端部63、第5端部65、第6端部66については、θ3の角度が+18°、θ5の角度が−18°、θ6の角度が+30°未満と上記端部角条件を満たしていないため、これら端部における両電極は本実施形態に特有の形状・配置関係を有していない。
【0049】
上記のように電極を意匠端部から延設する場合(つまり、端部角条件を満たす意匠の端部において、電極を上記順方向延設する場合)の延設の長さ(電極を延長する長さであり、平面視した場合に、対象の第1電極31bの端縁と第2電極32bの端縁との間の距離をいう。)は任意であるが、表示異常を軽減することができ、端部角条件を満たす端部における液晶分子33aの傾く方向を同じ方向にすることができる所定の長さ以上の長さに設定される。この所定の長さは、第1電極31bと第2電極32bとの重ね合わせの精度によって生じるズレの長さ(重ね合わせの工程で必要なマージン)よりも大きい。
なお、端部角条件を満たさない意匠の端部においては、電極を延設しなくてもよいし(平面視において、両電極の端縁が重なる)、前記所定の長さよりも短い距離であれば電極を上記順方向延設の関係で延設してもよいし、上記逆方向延設の関係であれば前記所定の長さ以上の距離で電極を延設してもよい。つまり、端部角条件を満たさない端部において、電極は、上記順方向延設の関係で前記所定の長さ以上、延長されない。また、上記具体例では特に示さなかった意匠の端部における電極についても、端部角条件を満たす端部において、電極が順方向延設の関係で形成、配置される。
【0050】
(接続部の接続幅について)
また、本願発明者は、液晶表示装置100において、第2電極32bにおける意匠間(第1意匠60aと第2意匠60bとの間)引き回し電極である接続部323bの接続幅を100μm以下に形成することによっても、意匠端部に視認される表示異常の発生を抑制することができることを見出した。なお、接続幅とは、接続部が第1意匠60aと第2意匠60bとを連結する方向と垂直方向の幅をいう。
【0051】
ここで、図5に接続部323bの接続幅をいくつか変化させて(80、100、150、300μm)液晶表示装置を作成した場合における、表示異常の発生の有無に関する実験結果を示す。なお、この実験結果は、上記のように電極を延設せずに配設し(つまり、意匠端において略一致)、フレーム周波数を100Hzとした場合の結果である。
【0052】
図示するように、接続幅が80μm、100μmである場合は、接続部323bの付近における意匠端では表示異常が視認されないという良好な結果となっている。一方、接続幅が150μmである場合は、接続部323bの付近における意匠端では表示異常が完全には視認されないが目立つ結果となっている。また、接続幅が300μmである場合は、接続部323bの付近における意匠端では表示異常が視認された。
以上により、本願発明者は、液晶表示装置の表示品位をより良好にするためには、接続部323bを接続幅「100μm以下」で形成すれよいことを見出した。
【0053】
(液晶層が有するプレチルト角の角度について)
さらに、本願発明者は、液晶表示装置100において、液晶層33に付与するプレチルト角の角度を「85°以上89.7°以下」、より好ましくは「89°以上89.7°以下」とすれば、いわゆる背景抜けも防ぎつつ、液晶表示装置の表示品位を保つことができることに思い至った。
【0054】
ここで、図6にプレチルト角の角度θpをいくつか変化させて(83°、85°、89°、89.7°、90°)液晶表示装置を作成した場合における、表示異常と背景抜けの発生の有無に関する実験結果を示す。背景抜けとは、パッシブ方式で電圧無印加時に発生する光漏れのことをいう。図6では、θpの減少(液晶分子33aが垂直状態から倒れる)に伴い視角依存性が悪化する状態を示しており、図6における円状のグラフは、各々のプレチルト角での、電圧無印加時の表示領域における透過率(下限0%〜上限0.5%)の分布結果を表したものである。透過率が低ければ、光漏れが少ないことになる。なお、この表示異常と背景抜けの実験結果は、上記のように電極を延設せずに配設したもの(つまり、意匠端において略一致)であり、表示異常の実験結果のみフレーム周波数を100Hzとし、電圧を印加した場合の結果である。
【0055】
図示するように、プレチルト角の角度θpが、90°以外では、表示異常が目立って視認されない結果となっている。しかし、θpが83°の場合は、背景抜けが目立つため(円状のグラフで、表示領域における透過率が高い領域(透過率0.5%付近の領域)Hiの割合が大きい)、表示品位を保つ観点からこの角度は採用できない。一方、θpが85°以上89.7°以下であれば、背景抜けは目立って発生しなかった。以上により、液晶層33のプレチルト角の角度が「85°以上89.7°以下」であれば、良好な表示品位を保つことが出来ることがわかった。ただ、θpが85°の場合は、背景抜けが目立たずに許容できるというレベルであり、背景抜けが問題のないレベルでは、θpが89°以上が好ましい。よって、液晶層33のプレチルト角の角度は、「89°以上89.7°以下」がより好ましい。
【0056】
(液晶表示装置100の生産方法について)
液晶表示装置100の生産方法について説明する。
まず、透明基板からなる第1基板31aと第2基板32aとを用意し、両基板の一面上にITOにより第1電極31b、第2電極32bを形成する。
第1電極31bと第2電極32bとは、端部角の角度が「−30°より小さい又は+30より大きい」という条件(端部角条件)を満たす一端部において、その一端部が意匠の液晶ダイレクタ方向側に位置する端部であれば、第2電極32bをその一端部から液晶ダイレクタ方向側に延設(第2電極32bの端縁が液晶ダイレクタ方向に延長)し、その一端部が意匠の液晶ダイレクタ方向とは逆方向側に位置する端部であれば、第1電極31bをその一端部から逆方向側に延設(第1電極31bの端縁が前記逆方向に延長)するようにして、第1電極31bのレイアウトと第2電極32bのレイアウトとを決定する決定ステップを経て、形成される。
言い換えれば、この決定ステップは、液晶ダイレクタ方向に対する角度の絶対値が30°以下である第1の端部と、液晶ダイレクタ方向側に位置し、液晶ダイレクタ方向に対する角度の絶対値が30°より大きい第2の端部と、を含む意匠の端部において、前記第2の端部における第2電極32bの端縁が、第1電極31bの端縁よりも前記液晶ダイレクタ方向に所定の長さ以上延長されるという条件を満たすように、第1電極31bのレイアウトと第2電極32bのレイアウトとを決定するステップである。
また、この決定ステップは、液晶ダイレクタ方向に対する角度の絶対値が30°以下である第1の端部と、液晶ダイレクタ方向とは逆方向側に位置し、液晶ダイレクタ方向に対する角度の絶対値が30°より大きい第2の端部と、を含む意匠の端部において、前記第2の端部における第1電極32aの端縁が、第2電極32bの端縁よりも前記逆方向に所定の長さ以上延長されるという条件を満たすように、第1電極31bのレイアウトと第2電極32bのレイアウトとを決定するステップである。
また、第2電極32bにおける意匠間(第1意匠60aと第2意匠60bとの間)引き回し電極である接続部323bの接続幅は100μm以下となるように形成される。
【0057】
次に、第1基板31aに、第1電極31bを覆うように第1配向膜31cを形成する。同様に、第2基板32aに、第2電極32bを覆うように第2配向膜32cを形成する。このように形成された第1配向膜31cと第2配向膜32cとには、例えばアンチパラレルとなるようにラビング処理が施され、液晶層33に「85°以上89.7°以下」、より好ましくは「89°以上89.7°以下」のプレチルトを付与するように調整されている。このようにして、第1基板ユニット31と第2基板ユニット32が形成される。
【0058】
次に、第1基板ユニット31と第2基板ユニット32のいずれかにシール材(図示せず)、ギャップコントロール材(図示せず)を塗布し、第1基板ユニット31と第2基板ユニット32とを、電極側が対向するように重ね合わせる。そして、第1基板ユニット31と第2基板ユニット32との間に、誘電率異方性Δεが負(Δε<0)の液晶材を注入して、液晶層33を形成することで液晶素子30を作成する。液晶層33の液晶分子33aは、第1配向膜31cと第2配向膜32cとに垂直配向されとともに、上記プレチルトが付与されている。
【0059】
次に、上記のように作成された液晶素子30に、第1偏光フィルタ10と第2偏光フィルタ20とを貼り合わせる。第1偏光フィルタ10と第2偏光フィルタ20とは、各々の透過軸(又は吸収軸)が液晶ダイレクタ方向に対して+45°と−45°の角度を有するようにクロスニコルで配置される。
【0060】
そして、第2偏光フィルタ20の下側に、半透過反射層40を形成し、その下側にバックライト50を配設することで、液晶表示装置100は生産される。
【0061】
このように生産された垂直配向型の液晶表示装置100によれば、上述したように発生する配向欠陥を抑制することができるため、図7(a)、(b)によれば、従来意匠端部に視認されていた表示異常の発生(図9(a)、(b)参照)を無くすか軽減することができた。また、本実施形態のように設計し、生産された液晶表示装置100によれば、液晶層33の配向安定性が向上し、図7(c)に示すように、従来電圧印加時に発生していた影状の表示ムラ(図9(c)参照)の発生が抑えられることがわかった。このようにして、良好な表示品位を保つことができる。
【0062】
(変形例)
なお、本発明は上記の実施形態及び図面によって限定されるものではない。上記の実施形態及び図面に変更(構成要素の削除も含む)を加えることができるのはもちろんである。
例えば、上記では、液晶表示装置100を、半透過反射層40を備える半反射型の液晶表示装置として説明したが、これに限られない。半透過反射層40を省いて透過型の液晶表示装置としてもよいし、半透過反射層40を、反射層として反射型の液晶表示装置としてもよい。反射型の場合、バックライト50は不要である。また、以上の説明では、本発明の理解を容易にするために、重要でない公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【0063】
また、以上では、第2電極32bが意匠の形状に略等しい形状に形成された電極パターンを有するとして説明したが、第1電極31bと第2電極32bの役割が逆であってもよい。
【0064】
また、以上では、意匠の端部(意匠の輪郭線)が辺(直線)である場合について説明したが、意匠の端部が円弧等の曲線(つまり、電極の端縁が曲線)であっても本発明は同様に適用可能である。意匠の端部が曲線である場合は、意匠の端部の接線と液晶ダイレクタとのなす角を端部角とすればよい。
【符号の説明】
【0065】
100 液晶表示装置
10 第1偏光フィルタ
20 第2偏光フィルタ
30 液晶素子
31 第1基板ユニット
31a 第1基板
31b 第1電極
311b 第1の部分
31c 第1配向膜
32 第2基板ユニット
32a 第2基板
32b 第2電極
32c 第2配向膜
33 液晶層
33a 液晶分子
40 半透過反射層
50 バックライト
60a 第1意匠
60b 第2意匠
61 第1端部
62 第2端部
63 第3端部
64 第4端部
65 第5端部
66 第6端部
67 第7端部
68 第8端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板の下側に位置し、前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板の下面に形成された第1電極と、
前記第1電極を下側から覆うように前記第1基板に形成された第1配向膜と、
前記第2基板の上面に形成された第2電極と、
前記第2電極を上側から覆うように前記第2基板に形成された第2配向膜と、
前記第1配向膜と前記第2配向膜との間に位置する液晶層と、を備え、
前記第1電極及び前記第2電極の両電極に電圧を印加していない状態では、前記液晶層の液晶分子が前記第1基板と前記第2基板の対向面と略垂直に配向されており、
前記両電極に電圧を印加することに対応して前記液晶層の液晶分子が倒れることによって、前記対向面の法線方向から見て前記両電極が略重なる領域によって構成される意匠を表示する垂直配向型液晶表示装置であって、
前記法線方向から見て前記液晶分子の前記第2基板に対するプレチルト角の角度が減る方向を液晶ダイレクタ方向とした場合、
前記意匠の端部は、前記液晶ダイレクタ方向に対する角度の絶対値が所定の値以下である第1の端部と、前記液晶ダイレクタ方向側に位置し、前記液晶ダイレクタ方向に対する角度の絶対値が前記所定の値より大きい第2の端部と、を含み、
前記第2の端部における前記第2電極の端縁が、前記第1電極の端縁よりも前記液晶ダイレクタ方向に所定の長さ以上延長されている、
ことを特徴とする垂直配向型液晶表示装置。
【請求項2】
第1基板と、
前記第1基板の下側に位置し、前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板の下面に形成された第1電極と、
前記第1電極を下側から覆うように前記第1基板に形成された第1配向膜と、
前記第2基板の上面に形成された第2電極と、
前記第2電極を上側から覆うように前記第2基板に形成された第2配向膜と、
前記第1配向膜と前記第2配向膜との間に位置する液晶層と、を備え、
前記第1電極及び前記第2電極の両電極に電圧を印加していない状態では、前記液晶層の液晶分子が前記第1基板と前記第2基板の対向面と略垂直に配向されており、
前記両電極に電圧を印加することに対応して前記液晶層の液晶分子が倒れることによって、前記対向面の法線方向から見て前記両電極が略重なる領域によって構成される意匠を表示する垂直配向型液晶表示装置であって、
前記法線方向から見て前記液晶分子の前記第2基板に対するプレチルト角の角度が減る方向を液晶ダイレクタ方向とした場合、
前記意匠の端部は、前記液晶ダイレクタ方向に対する角度の絶対値が所定の値以下である第1の端部と、前記液晶ダイレクタ方向とは逆方向側に位置し、前記液晶ダイレクタ方向に対する角度の絶対値が前記所定の値より大きい第2の端部と、を含み、
前記第2の端部における前記第1電極の端縁が、前記第2電極の端縁よりも前記逆方向に所定の長さ以上延長されている、
ことを特徴とする垂直配向型液晶表示装置。
【請求項3】
前記所定の値は、30°である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の垂直配向型液晶表示装置。
【請求項4】
前記第1配向膜には一方向にラビング処理が施され、前記第2配向膜には前記一方向とは逆方向にラビング処理が施されることで、前記液晶分子の倒れる方向が規定されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の垂直配向型液晶表示装置。
【請求項5】
前記両電極が略重なる領域が複数あり、表示される前記意匠が複数ある場合、第1の意匠表示領域と第2の意匠表示領域とを接続するための接続部であって、前記第1電極及び/又は前記第2電極が有する接続部の幅は、100μm以下である、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の垂直配向型液晶表示装置。
【請求項6】
前記液晶層のプレチルト角の角度は85°以上89.7°以下である、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の垂直配向型液晶表示装置。
【請求項7】
前記液晶層のプレチルト角の角度は89°以上89.7°以下である、
ことを特徴とする請求項6に記載の垂直配向型液晶表示装置。
【請求項8】
第1基板と、
前記第1基板の下側に位置し、前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板の下面に形成された第1電極と、
前記第1電極を下側から覆うように前記第1基板に形成された第1配向膜と、
前記第2基板の上面に形成された第2電極と、
前記第2電極を上側から覆うように前記第2基板に形成された第2配向膜と、
前記第1配向膜と前記第2配向膜との間に位置する液晶層と、を備え、
前記第1電極及び前記第2電極の両電極に電圧を印加していない状態では、前記液晶層の液晶分子が前記第1基板と前記第2基板の対向面と略垂直に配向されており、
前記両電極に電圧を印加することに対応して前記液晶層の液晶分子が倒れることによって、前記対向面の法線方向から見て前記両電極が略重なる領域によって構成される意匠を表示する垂直配向型液晶表示装置の生産方法であって、
前記第1電極のレイアウトと前記第2電極のレイアウトとを決定する決定ステップを含み、
前記法線方向から見て前記液晶分子の前記第2基板に対するプレチルト角の角度が減る方向を液晶ダイレクタ方向とした場合、
前記意匠の端部は、前記液晶ダイレクタ方向に対する角度の絶対値が所定の値以下である第1の端部と、前記液晶ダイレクタ方向側に位置し、前記液晶ダイレクタ方向に対する角度の絶対値が前記所定の値より大きい第2の端部と、を含み、
前記決定ステップは、前記第2の端部における前記第2電極の端縁が、前記第1電極の端縁よりも前記液晶ダイレクタ方向に所定の長さ以上延長されるという条件を満たすように、前記第1電極のレイアウトと前記第2電極のレイアウトとを決定するステップである、
ことを特徴とする垂直配向型液晶表示装置の生産方法。
【請求項9】
第1基板と、
前記第1基板の下側に位置し、前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板の下面に形成された第1電極と、
前記第1電極を下側から覆うように前記第1基板に形成された第1配向膜と、
前記第2基板の上面に形成された第2電極と、
前記第2電極を上側から覆うように前記第2基板に形成された第2配向膜と、
前記第1配向膜と前記第2配向膜との間に位置する液晶層と、を備え、
前記第1電極及び前記第2電極の両電極に電圧を印加していない状態では、前記液晶層の液晶分子が前記第1基板と前記第2基板の対向面と略垂直に配向されており、
前記両電極に電圧を印加することに対応して前記液晶層の液晶分子が倒れることによって、前記対向面の法線方向から見て前記両電極が略重なる領域によって構成される意匠を表示する垂直配向型液晶表示装置の生産方法であって、
前記第1電極のレイアウトと前記第2電極のレイアウトとを決定する決定ステップを含み、
前記法線方向から見て前記液晶分子の前記第2基板に対するプレチルト角の角度が減る方向を液晶ダイレクタ方向とした場合、
前記意匠の端部は、前記液晶ダイレクタ方向に対する角度の絶対値が所定の値以下である第1の端部と、前記液晶ダイレクタ方向とは逆方向側に位置し、前記液晶ダイレクタ方向に対する角度の絶対値が前記所定の値より大きい第2の端部と、を含み、
前記決定ステップは、前記第2の端部における前記第1電極の端縁が、前記第2電極の端縁よりも前記逆方向に所定の長さ以上延長されるという条件を満たすように、前記第1電極のレイアウトと前記第2電極のレイアウトとを決定するステップである、
ことを特徴とする垂直配向型液晶表示装置の生産方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−29775(P2013−29775A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167455(P2011−167455)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】