説明

埋め込みウェブサーバを有する質量分析計

【課題】埋め込みウェブサーバを含み、リモートコンピュータのユーザがウェブブラウザ又は任意の他のHTTPクライアントを介して質量分析計と対話できるようにする。
【解決手段】ネットワーク202を介して質量分析計100とデータ通信可能な状態にあるクライアントコンピュータ126,128へ1つ又は2つ以上のウェブページを提供する埋め込みウェブサーバ218を含む、質量分析計。ユーザは、ウェブブラウザを介して該1つ又は2つ以上のウェブページにアクセスすることが可能であり、これにより、該質量分析計からデータを読み出し、及び/又は該質量分析計の様々な機能を制御することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
質量分析法は、分析されるべき物質が、最初にイオン化され、次いでマスフィルタを通して加速された後、検出器へと進む、方法である。マスフィルタは、電磁界を生成し、イオン化された物質が該電磁界中を進行するときに該物質に力が加えられる。マスフィルタは、その電磁界を時間の関数として変化させるよう制御される。したがって、所与の時点において、特定の質量対電荷比を示す粒子だけがマスフィルタを横断して、その遠端に配置された検出器に突き当たることができる。それゆえ、質量分析計は、特定の質量対電荷比を示すイオンの相対存在量の記録を生成するよう機能する。
【0002】
ユーザインタフェイスによって、所与の質量分析計の様々な動作上の変数を制御することができる。例えば、質量分析計は、数例を挙げると、電子衝撃イオン化、化学イオン化等の様々なイオン化方式を用いることができる。化学イオン化との関連では、分析されるべき物質は、例えば、アンモニア等のイオン化された大量の試薬ガスに対して曝露される。分析されるべき物質は、イオン化された試薬ガスと相互作用し、それによりイオン化され、マスフィルタに送り出される。それゆえ、例えば、特定の試薬ガスの流量を選択することが望まれる場合がある。上記のユーザインタフェイスは、この種の制御を(及び他の制御も)行うための仕組みを提供する。典型的には、ユーザインタフェイスは質量分析計とは別個のローカルコンピュータによって提供され、そのローカルコンピュータは質量分析計とネットワーク接続される。そのコンピュータは、質量分析計を制御するために特別に設計された、所有権のあるソフトウエアを実行する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の制御方式は、或る程度の向上の余地があることを示している。例えば、現状では、上記の物理的に異なるコンピュータは、所与の質量分析計と対話するために、その質量分析計上で実行される特定のバージョンのファームウエアに対応する、所有権のあるソフトウエアユニットを実行しなければならない。したがって、所与の質量分析計内のファームウエアの機能を向上するには、質量分析計と対話することを目的とする各コンピュータ上で実行される所有権のある制御ソフトウエアを更新することが必要な場合もあるが、それは時間がかかり、煩わしい要件である。それゆえ、機器の外部で所有権のある質量分析計制御ソフトウエアを実行することに頼らずに、コンピュータが質量分析計とのインタフェイスを形成するようにすることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
概括的には、本明細書は、埋め込みウェブサーバを含み、リモートコンピュータのユーザがウェブブラウザ又は任意の他のHTTPクライアントを介して質量分析計と対話できるようにする、質量分析計を対象としたものである。
【0005】
一実施形態によれば、装置は、質量分析計と、該質量分析計と通信するよう構成された第1のコントローラとを備える。該第1のコントローラは、メモリ及びネットワークインタフェイスを備える。該質量分析計は、メモリに格納された一組の命令も含む。該一組の命令は、所有権のないアプリケーションのプロトコル要求に応答するよう構成される。
【0006】
別の実施形態によれば、質量分析計を動作させる方法は、ウェブブラウザからハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)要求を受信することを含む。HTTP要求を調べ、それに応じて呼び出すのに適した機能が判定される。その機能は、質量分析計を制御するための命令を含む。
【0007】
更に別の実施形態によれば、質量分析計は、該質量分析計と通信するように構成された第1のコントローラを備える。該第1のコントローラは、メモリ及びネットワークインタフェイスを備える。一組の命令が、そのメモリに格納される。その命令は、HTTPサーバを提供するよう構成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の様々な実施形態を図面を参照しながら詳細に説明し、その図面の幾つかの図を通して、類似の符号は類似の部品及びアセンブリを表す。様々な実施形態を参照するが、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。更に、本明細書において述べられるいかなる例も、限定することを意図するものではなく、特許請求される発明のための数多くの実現可能な実施形態の幾つかを述べるにすぎない。
【0009】
図1は、読者にシステムの概要を理解してもらうための質量分析計100の1つの例示的な実施形態を示す。他のアーキテクチャが存在し、且つ実現可能であること、更にはそのようなアーキテクチャも本発明に含まれることを理解されたい。動作中に、分析されるべき物質が質量分析計100に入り、最初にイオン化される。例えば、電子衝撃イオン化を用いる一実施形態の場合、その物質は、フィラメント102によって生成される電子ビームとの相互作用によってイオン化される。代替的に、化学イオン化を用いる一実施形態の場合には、その物質は、化学イオン化コントローラ基板104の制御下で供給される、イオン化された試薬ガスとの相互作用によってイオン化される。(例示するためだけに、本明細書では、質量分析計100は化学イオン化方式を利用するものとして説明されるが、そのような事情は本発明を実施するのに不可欠ではない。)
物質がどのようにイオン化されるかにかかわらず、その物質は、一組のレンズ106によって、マスフィルタ108の中に誘導される。特定の質量対電荷比を示すイオンが、マスフィルタ108を横断するのに成功し、検出器110に突き当たる。これに応じて、検出器110は、相対存在量信号を、主電子回路基板114内で実施することが可能な対数増幅器112に返す。主電子回路基板114は、例えば、対数増幅器112と通信するフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)のような論理システムを含む。電子回路基板114は、必要に応じて、論理システムが、対数増幅器112と対話できるようにし、また質量分析計の様々な動作条件(例えば、イオン源及びマスフィルタの温度等)を検出するセンサ118と(アナログ/デジタルコンバータ116を経由して)対話できるようにするためのインタフェイス回路(フィルタ、レベルシフタ等)も含む。
【0010】
主電子回路基板114は、埋め込みコンピューティング環境120とのインタフェイスを形成する。幾つかの実施形態によれば、埋め込みコンピューティング環境120は、プロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、メモリユニット(複数可)、ローカルエリアネットワーク(LAN)と通信するためのネットワークインタフェイス、及び、入力/出力(I/O)インタフェイスのような、ローカルコントロールパネル122と対話するための、且つ/又はガスクロマトグラフのための通信インタフェイス124と対話するためのインタフェイスを含む場合もある。
【0011】
操作者は、ローカルコントロールパネル122を介して、又はLANによって質量分析計100にネットワーク接続されるコンピュータ126及び/又は128を介して、質量分析計100を制御することができる。これらの制御源のうちの任意のものからの命令が、埋め込みコンピューティング環境120によって受信され、後に実行するために主電子回路基板114に通信される。これに応じて、主電子回路基板114は、制御されるべき要素に適した1つ又は複数の制御信号に変換するために、例えば、1つ又は複数の信号を信号調整基板130に送信することができる。例えば、検出器110は、イオン衝突速度に利得係数を掛け合わせたものに概ね等しい存在量信号を生成する。利得係数は、検出器110に適当な制御信号を加えることによって設定することができる。信号調整基板130は、主電子回路基板114から信号を受信し、検出器110が所望の利得係数を利用するのに適した制御信号を生成する。
【0012】
図2は、埋め込みコンピューティング環境120(図1)上で実行されるソフトウエア/ファームウエアシステムの一例を示す。そのシステムはLANドライバ200を含む。LANドライバ200は、図2に示される様々なソフトウエアコンポーネント/ファームウエアコンポーネントとLAN202との間のインタフェイスを提供する。コンピュータ126又は128のようなコンピュータは、LAN202を介して、様々なソフトウエアコンポーネント/ファームウエアコンポーネントとデータ通信することができる。
【0013】
コンピュータ126,128は、専用のソフトウエアパッケージを実行することができ、そのソフトウエアパッケージを通して、本明細書において「質量分析計コマンド言語」と呼ばれる、固有のコマンド言語を介して質量分析計と通信する。専用ソフトウエアパッケージを実行するとき、コンピュータ126,128によって用いられる通信方式はコネクション型であり、結果として、所与の時点において、コンピュータ126,128のうちの一方のみが質量分析計と対話することができる。(質量分析計コマンド言語は後に更に説明される。コンピュータ126,128は、ウェブブラウザアプリケーションも実行することができ、それも同様に後に説明される。)そのような一実施形態によれば、コマンドが、コンピュータ126又は128から、LAN202を通して通信され、LANドライバ200によって受信される。LANドライバ200は、到来するパケットを、質量分析計コマンド言語のコマンドを含むものと認識し、そのコマンドをパーサ204に転送する。
【0014】
パーサ204は、そのコマンドを、その構成要素である関数成分と引数成分とに分解し、それら成分に基づいてコマンドプロセッサ206内の機能を呼び出す。それに応じて、コマンドプロセッサ206内の呼び出された機能は、一連の質量分析計制御機能208を呼び出す。それらの機能が一般に協働して、例えば、質量分析計構成データ210を変更することによって、且つ/又はDSP I/O制御モジュール212と通信し、次いでそのモジュールが、同じく埋め込みコンピューティング環境120内に収容されたDSPプロセッサ214と通信することによって、コマンドにより指示された動作を実行させる。DSPプロセッサ214は、パーサ204を実行するプロセッサやコマンドプロセッサ206等の標準的なプロセッサが対応できる速度よりも迅速に実行される動作を必要とする対話のために用いられる。こうして、例えば、マスフィルタ108からスペクトルデータを得るために、DSPプロセッサ214は、DSP I/O制御モジュール212を介して、マスフィルタ108と対話することができる。
【0015】
質量分析計を操作することができる別の方法は、ローカルコントロールパネル122(図1)を介してコマンドを入力することであり、そのコマンドは、ローカルユーザインタフェイスモジュール216によって処理され、上記のように取り扱うためにパーサ204に供給され、又は制御機能208が直接呼び出される。
【0016】
図2のソフトウエア/ファームウエアシステムは、ハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)サーバ218も含む。HTTPサーバ218は、LANドライバ200と対話し、そこからHTTPコマンドを受信し、それらのコマンドを処理する。したがって、コンピュータ126,128は、HTTP機能をサポートする任意のソフトウエアパッケージ(例えばウェブブラウザ等)を介して、質量分析計と通信することができる。HTTPがステートレスプロトコルであり、且つウェブアプリケーション220及び制御機能208が多数のクライアントに対応するよう設計されるので、コンピュータ126,128はいずれも、同時に質量分析計と対話することができる。更に、上記の所有権のあるソフトウエアを実行する別のコンピュータが質量分析計を制御しているときに、コンピュータ126,128がウェブアプリケーションを介して質量分析計と対話することができる。かかる構成の場合、ウェブブラウザを実行しているコンピュータ126又は128は診断ツールとしての役割を果たすことができ、一方、所有権のあるソフトウエアを実行しているコンピュータは主制御インタフェイスとしての役割を果たす。こうして、例えば、ユーザは、ネットワーク接続されたコンピュータ126又は128にアクセスすることができ、そのウェブブラウザを起動させることができる。その後、該ユーザは、質量分析器内のネットワークカード(LANドライバ200によって駆動される)に割り当てられたインターネットプロトコル(IP)アドレスを入力することができる。それに応じて、HTTPコマンドがパケット形式でLAN202を通ってLANドライバ200まで搬送され、該LANドライバ200がHTTPサーバ218にHTTPコマンドを供給する。
【0017】
HTTPサーバ218は該コマンドを処理し、ウェブコンテンツ(例えば、ウェブページ、Javaスクリプトコード、HTML、カスケーディングスタイルシート等)をクライアントコンピュータ126又は128に返す。コンピュータに返されるウェブコンテンツは、参照を容易にすべく本明細書では「ウェブページ」と呼ばれる。HTTPサーバ218によって返される様々なウェブページはウェブアプリケーション220によって構成され、該ウェブアプリケーション220は、HTTPサーバ218とパーサ204又は制御機能208との間のインタフェイスとしての役割を果たす。したがって、後に更に詳細に説明されるように、ユーザがウェブブラウザを介して質量分析計とのインタフェイスを形成することができ、HTTPサーバ218及びウェブアプリケーション220が協力して動作することにより、質量分析計の通常のコマンド機能にアクセスすることができる。
【0018】
一実施形態によれば、コンピュータ126又は128のユーザが質量分析計に割り当てられたIPアドレスをウェブブラウザのアドレスバーに入力するのに応じて、HTTPサーバ218が、図3に示されるウェブページを返す(すなわち図3のウェブページはホームページである)。図3から明らかなように、該ホームページは、質量分析計によって提供される機能のメニュー、又はその一部を提示する。例えば、該ホームページは、他のページにアクセスするためのリンクを提供することができ、かかるページにより、ウェブクライアントのリアルタイムクロックを読み出すこと(及び質量分析計内のリアルタイムクロックを設定すること)、ネットワーク状態情報を表示すること、診断情報を表示すること、質量分析計によって実行されるコマンドのバッファを表示すること、上記の質量分析計コマンド言語を用いて質量分析計にコマンド又はクエリを提示すること、機器状態を表示すること、及び化学イオン化コントローラ基板104(図1)の制御のような機器制御を設定することが可能となる。勿論、質量分析計によって提供される他の機能もオプションとして該ホームページ上で提示することができる。また、実施形態によっては、該ホームページは、質量分析計に割り当てられたIPアドレスを提示する。
【0019】
ホームページ上でのリンクの選択に応じて、HTTPサーバ218は、ウェブアプリケーション220の助けを借りて、選択されたリンクにより特定される機能へのアクセスを提供するウェブページを返すことによって応答する。例えば、一実施形態によれば、「リアルタイムクロックの設定」リンクを選択した結果として、図4に示されるウェブページが提示される。
【0020】
図4は、ウェブクライアント(すなわちコンピュータ126又は128)によって用いられるリアルタイムクロックを表示できるようにするウェブページを示す。該ウェブページは、リアルタイムクロックの時400、分402、及び秒404を提示するためのフィールドを含む。該ウェブページはまた、月406、日408、年410、及び曜日412を提示するためのフィールドも提示する。更に、該ウェブページは、埋め込みコンピューティング環境120(図1)によって保持されるリアルタイムクロックの月/日/年、及び時:分:秒のデータを返すためのフィールド414を提示する(かかる情報は、図2に示すウェブアプリケーション220によって得られる)。こうして、ユーザが使用中のコンピュータ126又は128によって保持されるリアルタイムクロックと、質量分析計によって保持されるリアルタイムクロックとの間の不一致が、図4のウェブページから明らかになる。
【0021】
不一致が存在しなければ、ユーザは、「メインメニューに戻る」リンクを選択することができ、ウェブブラウザは再び図3に示すホームページを提供する。一方、不一致が存在する場合には、ユーザは「リアルタイムクロックの設定」リンクを選択して、質量分析計のリアルタイムクロックをフィールド400〜412に提示された値に設定するためのコマンドを質量分析計に送信することが可能である。フィールド400〜412内の値は、ユーザが変更することができ、質量分析計によって保持されるリアルタイムクロックを任意の所望の値に設定できるようになり、これは、リアルタイムクロックをウェブクライアントのリアルタイムクロックに設定するための能力しか提供しないのとは対照的である。上記のように、かかるコマンドは、HTTPサーバ218によって受信され、ウェブアプリケーション220に転送され、及びパーサ204に送信され、又は制御機能208に直接送信される(この場合には、コマンドは制御機能208に直接送信され、該制御機能208が、埋め込みコンピューティング環境120によって保持されるリアルタイムクロックの時刻及びデータを記述するデータ210を変更する)。これにより、埋め込みコンピューティング環境120によって保持されるリアルタイムクロックが、ユーザにより指定されたリアルタイムクロックと一致するよう変更され、これに応じてHTTPサーバ218が図5に示すウェブページをコンピュータ126又は128に提供する。図5から明らかなように、該ウェブページは、ユーザにより指定されたクロックの日付/時間と、埋め込みコンピューティング環境120により保持されるクロックの(いま変更された)日付/時間の両方を提示する。先に説明されたように、ユーザは、「メインメニューに戻る」リンクを選択することができ、ウェブブラウザは再び図3に示すホームページを提供する。
【0022】
図3に示すホームページから、ユーザは、「コマンド/クエリを質量分析計へ送信」リンクを選択することができる。かかる動作の結果として、図6に示すウェブページが提示される。図6のウェブページは、質量分析計コマンド言語によるコマンド(図6に示す特定のウェブページでは「SCコマンド/クエリ」と呼ばれる)を入力することができるフィールド600を含む。このため、例えば、ユーザは、文字列「rtc:time?」をフィールド600に入力することができ、及び「コマンド/クエリを送信」リンクを選択することができる。上記リンクを選択することにより、質量分析計コマンド言語によるコマンドが、質量分析計に送信され、LANドライバ200(図2)により受信された際に、該LANドライバ200は、あたかも、かかるコマンドを入力するための上述の専用ソフトウエアを実行しているコンピュータにおいて入力されたかのように、該コマンドに基づいて動作する。換言すれば、該コマンドは、パーサ204へのコマンドへと変換される。先に説明したように、該コマンドは、その構成要素である関数(上記の例の場合には「rtc」)と引数(例えば「time?」)へと分解される。その後、コマンドプロセッサ206内の関数が引数「time」で呼び出され、適当な制御機能が(必要に応じて)呼び出され、埋め込みコンピューティング環境120のリアルタイムクロックにより保持されている時刻がウェブアプリケーション220に返され、該ウェブアプリケーション220が該時刻を提示するウェブページ(図示せず)を構築する。該ウェブページは、HTTPサーバ218によりクライアントコンピュータ126又は128に提供される。
【0023】
一実施形態によれば、パーサ204に転送された最後のN(例えば500)個のコマンドのバッファ又はメッセージキューが、埋め込みコンピューティング環境120により保持される。該バッファは、それらコマンドへの応答も含むことができる。例えば、該コマンドが、センサ118(図1)によりイオン源において測定された温度を返すためのクエリであった場合には、該クエリの結果を該クエリと共に該バッファ内に格納することができる。一実施形態によれば、図3に示すホームページ上の「スマートカードトレースバッファ」リンクを選択することによって、そのバッファにアクセスすることができる。かかる操作の結果として、図7に示されるウェブページが提示される。図7に示されるウェブページはエリア700を含む。エリア700は、コマンド/クエリ、それに対する応答、及び埋め込みコンピューティング環境120からの診断メッセージ(例えば、エラーコード、特定のイベント又は決定が発生したことの指示等)のリストで占められる。かかるリストの作成は、ウェブアプリケーション220が、バッファにアクセスして、上記のコマンド、クエリ、及び結果を読み出し、図7のウェブページを構成して、該読み出した情報を提示することにより行われる。
【0024】
図3に示すホームページから、ユーザは、「機器状態」リンクを選択することができる。かかる操作の結果として、図8に示すウェブページが提示される。図8から明らかなように、該ウェブページは様々なフィールド800〜822を含む。それらフィールドは、図8のウェブページを構成するウェブアプリケーション220によって作成される。図8のウェブページ上に提示される情報により、質量分析計システム(及び、もしあれば、それと協動する他のシステム)の様々な構成及び動作パラメータに関する状態情報を見ることが可能となる。例えば、該ウェブページは、イオン化チャンバ内に真空を生み出すポンプの速度を提示するためのフィールド800、イオン化チャンバの温度を提示するためのフィールド802、マスフィルタ内の温度を提示するためのフィールド804、真空チャンバ内の圧力を提示するためのフィールド806、試薬ガスの流量を提示するためのフィールド808、質量分析計によって検出される障害の数量を提示するためのフィールド810、その障害を記述する情報を提示するためのフィールド812、質量分析計内の様々な構成要素を特定する情報を提示するための一組のフィールド814、埋め込みコンピューティング環境120に関する情報を提示するための一組のフィールド816、質量分析計と対話するための専用ソフトウエアを実行しているコンピュータのIPアドレスを提示するためのフィールド818、質量分析計に接続されるガスクロマトグラフ(もしあれば)のIPアドレスを提示するためのフィールド820、及び質量分析計内のハードウエア/ファームウエア/ソフトウエアに関するバージョン情報を提示するための一組のフィールド822を含む。
【0025】
実施形態によっては、質量分析計は、化学イオン化方式を利用することができる。かかる実施形態の場合、質量分析計は、埋め込みコンピューティング環境と対話する化学イオン化コントローラ基板104を含む。実施形態によっては、化学イオン化コントローラ基板104は、質量分析計のイオン化チャンバ内への1つ又は複数(例えば2つ)の試薬の流れを制御する。「機器制御−化学イオン化」リンクを選択した結果として、化学イオン化基板に一般的なタスクを実行するよう指示することができるウェブページが提示される。図9は、かかるウェブページの一例を示している。
【0026】
図9のウェブページは、化学イオン化コントローラ基板104の活動を図式的に示す図式部900を含む。該図式部は、第1の化学試薬902及び第2の化学試薬904を表すアイコンを含む。これら試薬は、その個々の容器内に存在し、それら容器は一組のバルブにより制御される。適当なバルブが開けられると、試薬が容器から出て、導管を通って、マスフローコントローラまで流れ、該マスフローコントローラがイオン化チャンバへの試薬の流量を制御する。図式部900は、マスフローコントローラの設定ポイントを示すフィールド906を含む。対応するバルブが開いているか閉じているかを示すために、アイコン902,904は、2つの異なる外観を呈することができる。キー908は解釈を説明する。キー908により示唆されるように、該アイコンは、それに対応するバルブが開いているとき、又はそれに対応する機能が有効であるとき、アイコン910の外観を呈する。一方、該アイコンは、それに対応するバルブが閉じているとき、又はそれに対応する機能が無効であるとき、アイコン912の外観を呈する。このため、アイコン902,904は、イオン化チャンバ内に試薬ガスA又はBの両方を入れることができるバルブが閉じていることを示している。更に、図式的な表現900は、マスフローコントローラを強制的に閉じる機能の有効/無効を表すアイコン914を含む(アイコン914はその機能が無効であることを示している)。更に、図式的な表現900は、マスフローコントローラを強制的に完全に開ける機能の有効/無効を表すアイコン916を含む(アイコン916はその機能が無効であることを示している)。更に、図式的な表現900は、ガス流に吸い込まれることができるキャリブラントを表すアイコン918を含む。該アイコン918はキャリブラントがガス流に入っていないことを示している。最後に、図式的な表現は、キャリブラント源とイオン化チャンバとの間にある遮断バルブを表すアイコン920を含む。該アイコン920はそのバルブが閉じていることを示している。
【0027】
実施形態によっては、図9のウェブページは、測定されたガス流量922(所望の流量906に対するもの)の指示も含む。
【0028】
実施形態によっては、該ウェブページは、状態フィールド924も含み、該状態フィールド924は、所与のプロセスが化学イオン化基板により実行されているか否か、該プロセスの内容、該プロセスの状態、及び該プロセスが終了するまでにあとどのくらいかに関する情報を指示する。
【0029】
実施形態によっては、該ウェブページは、化学イオン化コントローラ基板104によって実行されるべき一般的なプロセスを表すメニュー928も含む。例えば、一実施形態によれば、該メニューは、上記の手順の状態情報を取得するための選択肢、第1のガスの流量を所望のレベルに設定する(例えば、ガスAを10%、99%、又は任意の他の所望の値の流量に設定する)ための選択肢、第2のガスの流量を所望のレベルに設定する(例えば、ガスBを10%、99%、又は任意の他の所望の値の流量に設定する)ための選択肢、第1のガスの流量を所望の時間にわたって所望のレベルに設定する(例えば、ガスAを、30秒間、60分間、又は任意の他の所望の値の間、10%、99%、又は任意の他の所望の値の流量に設定する)ための選択肢、第2のガスの流量を所望の時間にわたって所望のレベルに設定する(例えば、ガスBを、30秒間、60分間、又は任意の他の所望の値の間、10%、99%、又は任意の他の所望の値の流量に設定する)ための選択肢、及び選択された時間にわたって(例えば、6分間、60分間、又は任意の他の所望の時間値の間)試薬ガスの供給を制御する上記バルブを遮断すると共にイオン化チャンバを排気するための選択肢を含む。ユーザは、メニュー928から選択を行うことができ、「手順開始」ボタン930を選択することができる。それに応じて、メニュー928内の選択されたオプションが、(LANドライバ200を介して)HTTPサーバ218に返され、次いでアプリケーション層220に渡される。これに応じて、該アプリケーション層は、適当な引数で制御機能208を直接呼び出し、選択された手順が質量分析計によって実行される。
【0030】
上記の様々な実施形態は、例示のためだけに提供されており、本発明を限定するように解釈されるべきではない。本明細書において図示及び記述される例示的な実施形態及び応用形態に従うことなく、且つ添付の特許請求の範囲において記述される、本発明の真の思想及び範囲から逸脱することなく、本発明に対して様々な変更及び変形を行うことができることは当業者には容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】質量分析計の一実施形態の一例を示す図である。
【図2】質量分析計によって実行されるソフトウエア/ファームウエアシステムの一実施形態の一例を示す図である。
【図3】質量分析計に埋め込まれたウェブサーバによって提供されるホームページの一例を示す図である。
【図4】質量分析計に埋め込まれたウェブサーバによって提供されるリアルタイムクロックウェブページの一例を示す図である。
【図5】質量分析計に埋め込まれたウェブサーバによって提供されるリアルタイムクロックウェブページの別の例を示す図である。
【図6】質量分析計に埋め込まれたウェブサーバによって提供されるコマンド/クエリウェブページの一例を示す図である。
【図7】質量分析計に埋め込まれたウェブサーバによって提供されるバッファトレースウェブページの一例を示す図である。
【図8】質量分析計に埋め込まれたウェブサーバによって提供される機器状態ウェブページの一例を示す図である。
【図9】質量分析計に埋め込まれたウェブサーバによって提供される機器制御ウェブページの一例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン化システムへの試薬ガスの流れを制御するよう構成された複数のバルブを備えた化学イオン化システム(104)を含む質量分析計(100)と、
前記質量分析計(100)と通信するよう構成された第1のコントローラ(120)であって、メモリ及びネットワークインタフェイス(200)を含む、第1のコントローラ(120)と、
前記メモリに格納された一組の命令(200〜212,216〜220)であって、所有権のないアプリケーションプロトコル要求に応じて前記化学イオン化システムを制御することを可能にする、一組の命令とを含む、装置。
【請求項2】
前記メモリが更に、一組の命令(200〜212,216〜220)を格納するよう構成され、該命令が、その実行時に、前記コントローラ(120)に、所有権のないアプリケーションプロトコル要求に応じて、所与の時間にわたり前記化学イオン化システムに接続された導管をパージするよう該化学イオン化システムを制御させる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記メモリが更に、一組の命令(200〜212,216〜220)を格納するよう構成され、該命令が、その実行時に、前記コントローラ(120)に、所有権のないアプリケーションプロトコル要求に応じて、前記質量分析計のガス供給ラインを空にするために、前記複数のバルブのうちの少なくとも1つが閉じられている間に所与の時間にわたってポンプを動作させる、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記メモリが更に、一組の命令(200〜212,216〜220)を格納するよう構成され、該命令が、その実行時に、前記コントローラ(120)に、所有権のないアプリケーションプロトコル要求に応じて機器状態情報(800〜822)を返させる、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記機器状態情報(800〜822)が、前記イオン源(104)又はマスフィルタ(108)の温度に関する温度情報(802,804)を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記機器状態情報(800〜822)が、前記質量分析計(100)内に収容される真空チャンバ内の圧力(806)を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記機器状態情報(800〜822)が、前記イオン源(104)への試薬ガスの流量(808)を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項8】
前記機器状態情報(800〜822)が、前記質量分析計(100)内に収容される真空チャンバ内を真空に維持するポンプの動作速度(800)を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項9】
前記機器状態情報(800〜822)が、前記質量分析計(100)によって実行されるファームウエアのバージョン情報(822)を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項10】
前記所有権のないアプリケーションプロトコルが、ハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)を含む、請求項1に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−171167(P2007−171167A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−303724(P2006−303724)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】5301 Stevens Creek Boulevard Santa Clara California U.S.A.
【Fターム(参考)】