説明

埋め込み可能な電気生理学リード体

本発明は、それぞれが外面を有し、本質的にフルオロポリマーからなる電気絶縁材料を含む、2つ以上の細長要素と、細長要素のうちの少なくとも1つの中に配置された少なくとも1つの導電体と、本質的にフルオロポリマーからなり、細長要素を取り囲んでいるカバーとを備える電気生理学リード体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋め込み可能なさまざまな検出/刺激電子デバイス(例えば心臓ペースメーカー、埋め込み可能な電気除細動器、神経刺激器)とともに用いる医用電気リード体の分野と、埋め込み可能なそのようなリード体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
埋め込み可能な医用の電気刺激用及び/又は検出用リード線は心臓学と神経学の分野でよく知られている。刺激用リード線は、電気パルス発生器から治療用エネルギーをそれぞれの組織又は神経に送る。検出用リード線は、組織からの電気信号を離れた位置にあるセンサーに送る。心臓学における一般的な用途として、さまざまな不整脈(例えば徐脈や頻脈)の治療が挙げられる。神経学における用途として、パーキンソン病、てんかん、慢性の背中痛の治療が挙げられる。このような医用電気リード線はすべて、この明細書では「埋め込み可能なリード線」と呼ぶ。
【0003】
埋め込み可能なリード線は、機械としての完全さ、回路間の電気的絶縁、生体適合性が優れていなくてはならず、生理学的形態に十分に適応するだけの柔軟性も必要である。埋め込み可能なリード線は、解剖学的に特徴のある部分(例えば拍動する心臓、脊椎、首、末梢神経など)に取り付けられて動的な作用を受けるため、屈曲の繰り返しに十分に適応できる耐久性も必要とされる。
【0004】
埋め込み可能な電気刺激装置(例えば心臓ペースメーカー、埋め込まれた電気除細動器、神経刺激器)とともに用いる公知のリード線は、一般に、電極組立体を遠位端に備えておりパルス発生装置に接続されるコネクタ組立体を近位端に備えるリード体で構成されている。
【0005】
リード体は、少なくとも1つの絶縁された導電体と、その導電体を同軸に取り囲んでいるチューブ形の外側絶縁層とからなる。心臓及び神経の用途の電流リード体の構成は、一般に、2つのカテゴリー、すなわち同軸設計と多管腔設計に分類される。同軸リード体は、一般に、互いに同心の1又は複数の螺旋巻コイルからなる。それぞれのコイルは、チューブ形の絶縁体によって隔てられている。
【0006】
多管腔構成は、一般に、螺旋巻コイルと導電体の組み合わせを収容する所望の断面積を有するシリコーン押し出し体からなる。同軸構成であっても多管腔構成であっても、フルオロポリマー材料(例えばエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE))が導電体材料に適用される。この材料は化学的障壁として機能し、金属イオン酸化(マクロファージから過酸化水素が放出されることで起こる金属導電体の反応)の防止に役立つ。
【0007】
上に説明した埋め込み可能なリード線には欠点がいくつかある。シリコーンは柔らかいため、この材料で製造したリード体は、埋め込みの途中で損傷しやすく、引き裂き、摩耗、陥没によって(生体内で)機械的に故障することがしばしばある。陥没とはリード線に加わる圧縮力であり、その力によって材料の破損が起こる。患者によっては、シリコーン製リード線によって急性のアレルギー反応が起こる場合もある。
【0008】
機械的強度を大きくするとともに摩擦係数を小さくするため、ポリウレタン材料がシリコーンの代わりに用いられることがしばしばある。ポリウレタンは、シリコーンに直接代わるものとして、及び/又はリード線の外側カバー又は鞘として、用いられてきた。ポリウレタン材料及びそれぞれのリード線は、金属イオン酸化によって生じる環境応力で割れ目ができ、最終的に材料の剥離に至るために破損することが知られている。このような破損によって血流中に絶縁体の破片が放出され、悪影響(例えば虚血性脳卒中)が生じる可能性が高まることが知られている。
【0009】
従来から使われているシリコーンとポリウレタン以外の絶縁材料を用いた埋め込み可能なリード線も提案されている。アメリカ合衆国特許第4,573,480号には、ワイヤを取り囲むチューブ状絶縁層を有する、螺旋状に巻かれた導電体形態の埋め込み可能な電極リード体が記載されている。このチューブ状絶縁層は多孔質ポリテトラフルオロエチレン(今後はPTFEと表記する)であり、孔のサイズが、「組織の内殖を阻止するため体液に対して本質的に不浸透性であるような」と説明された最大のサイズに制限されている。この特許には、チューブ状多孔質PTFE絶縁層に、代わりに滑らかな不浸透性材料からなる外側カバーを設けてもよいことも教示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
埋め込み可能なリード線の設計が進歩するにつれ、一般的にリード体の直径は小さくなる傾向があるため、直径をさらに小さくすることが望ましい。本体の直径が小さいリード線であれば、体内での傷や感染のリスクを減らし、曲がりくねっている可能性のある形状の中をよりうまく通り抜け、解剖学的に小さな特徴部への配置を簡易なものにすることができる。しかし患者の安全性と装置の有効性にとって極めて重要な、機械としての完全さ、生体適合性、電気的性能が十分である状態を維持しようとすると、直径を小さくすることはますます難しくなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、それぞれが外面を有し、本質的にフルオロポリマーからなる電気絶縁材料を含む、2つ以上の細長要素と;その細長要素のうちの少なくとも1つの中に配置された少なくとも1つの導電体と;本質的にフルオロポリマーからなり、前記細長要素を取り囲んでいるカバーとを備える電気生理学リード体である。
【0012】
本発明の別の態様には、厚さが約0.003インチ未満で電圧強度が少なくとも約8000Vdc/ミルである電気絶縁材料を含む2つ以上の細長要素と;その細長要素の1つの中に配置された少なくとも1つの導電体と;前記細長要素を取り囲んでいるカバーとを備えていて、曲げ剛性が約10g未満である、電気生理学リード体が含まれる。
【0013】
本発明のさらに別の態様によれば、厚さが約0.003インチ未満で電圧強度が少なくとも約8000Vdc/ミルである電気絶縁材料を含む2つ以上の細長要素と;その細長要素の1つの中に配置された少なくとも1つの導電体と;その細長要素を取り囲んでいるカバーとを備えていて、曲げ半径が0.5インチ未満である、電気生理学リード体が提供される。
【0014】
本発明のさらに別の態様には、厚さが約0.003インチ未満で電圧強度が少なくとも約8000Vdc/ミルである電気絶縁材料を含む2つ以上の細長要素と;その細長要素の1つの中に配置された少なくとも1つの導電体と;前記細長要素を取り囲んでいるカバーとを備えていて、曲げ剛性が約10g未満である、電気生理学リード体が含まれる。
【0015】
本発明の別の態様によれば、それぞれが外面を有し、少なくとも1つの直交方向におけるマトリクス引張強さが少なくとも10000psiである電気絶縁材料を含む、2つ以上の細長要素と;その細長要素のうちの少なくとも1つの中に配置された導電体と;前記細長要素を取り囲んでいて、少なくとも1つの直交方向におけるマトリクス引張強さが少なくとも10000psiである絶縁材料を含むカバーとを備える、電気生理学リード体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明による埋め込み可能な電気生理学リード体の一実施態様を図1に示してある。この実施態様は、少なくとも2つの細長要素を備えている。少なくとも1つの細長要素(12、12a)は絶縁された導電体であり、導電性材料(13、13a)と、その導電性材料を同軸に覆う電気絶縁性フルオロポリマー材料(15、15a)とを含んでいる。場合によっては、リード体は、他の細長要素、又は実質的に平行な他の要素を備えることができる。それは、例えば1つ以上の中空チューブ又は管腔、ワイヤ、ガイドワイヤ、ファイバーなどである(そのそれぞれが「細長要素」である)。細長要素は、フルオロポリマー絶縁材料を含んでおり、任意の断面形状にすることができる。断面形状として、例えば円形、楕円形、三角形、正方形、多角形又は不規則な形状が挙げられるが、これだけに限られない。
【0017】
2つ以上の細長要素に適用される「実質的に平行」という表現には、図1に示したような「横並びの」関係や、図2に示したような螺旋形又は「捩じれた」関係で長手方向に延在する要素を備える構成(これについてはあとで説明する)が含まれる。
【0018】
本発明において有用なフルオロポリマー絶縁材料は、大きな引張強さと、大きな誘電強度又は電圧強度の両方を有する。この材料の引張強さと誘電強度が大きいため、非常に薄い層を使用でき、その結果として本発明によるリード体を驚くほど小さくすることが可能である。この非常に可撓性のあるリード体は曲げ半径が小さく、実質的にキンクに対する抵抗力がある。
【0019】
フルオロポリマー絶縁材料は、フルオロポリマーフィルムから作られた薄いテープで構成することが好ましい。適切なフルオロポリマーフィルムとして、例えばフッ素化エチレンプロピレン(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、これらの化学的修飾物(例えばEFEP(ダイキン・アメリカ社からネオフロンの商品名で入手可能)、ペルフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、フルオロエラストマー)などが挙げられる。必要に応じて薄い非多孔質コーティングを備えた、多孔質フルオロポリマーは、可撓性が優れているため有利に使用できる。フルオロポリマーフィルムはePTFEであることが好ましい。適切なePTFEフィルムは、Goreに付与されたアメリカ合衆国特許第3,953,566号及び第4,187,390号と、Bacinoに付与されたアメリカ合衆国特許第5,476,589号に教示されているようにして製造できる。このようなフルオロポリマーフィルムは、一般に、多孔質で、可撓性があり、強い。
【0020】
しかしフルオロポリマーフィルムは、非多孔質ePTFEからなる少なくとも1つの層を含む複合体であることが最も好ましい。非多孔質ePTFEは、W.L.ゴア&アソシエイツ社(ニューアーク、デラウェア州)からテープの形態で市販されている。このような非多孔質ePTFEは生体適合性があり、8000Vdc/ミルまでの誘電強度と非常に優れた機械的性能を合わせ持つ。これらのテープは、大きな引張強さと、磨耗及び圧縮に対する優れた抵抗力も特徴とする。本発明において有用なテープは、マトリクス引張強さが1つの直交方向で少なくとも約10,000psiである。
【0021】
フルオロポリマーフィルムは、熱可塑性材料(例えば熱可塑性フルオロポリマー、好ましくはフッ素化エチレンプロピレン(FEP))からなる多孔質コーティング又は非多孔質コーティングを備えていることが有利な場合がある。したがってこのフィルムには、フルオロポリマー積層体が含まれてもよい。積層化は、他のフィルムを接着すること、又は合体させることによって、例えばePTFEを熱的に、化学的に、又は機械的に他の材料に接着することによって実現できる。特に、積層体は、フルオロポリマー(例えばFEP、EFEP、PFA、PTFE、THV、及び他の適切なフルオロポリマー)製の1枚以上のシート又はフィルムを含んでいる。ePTFEフィルム及びFEPフィルムを含む積層体は、Campbellらに付与されて本出願人に譲渡されたアメリカ合衆国特許第6,159,565号に教示されている。
【0022】
さまざまな充填剤(添加剤とも呼ぶ)をフィルムに付与して本発明で用いるフルオロポリマーフィルムを変化させることも望ましい場合がある。多孔質ポリマー(例えばePTFEフィルム)の場合、充填剤は公知の方法(例えばKorleskiに付与されたアメリカ合衆国特許第5,879,794号に教示されている方法)でフィルムの孔に吸収させることができる。適切な充填剤としては、例えば、粒子状及び/又はファイバー形態の充填剤が挙げられ、エラストマー、セラミック、金属、半金属、カーボン、及びこれらの組み合わせが可能である。特に有用な充填剤としては、例えば、ある種の金属(例えばバリウム合金)のような放射線不透過性材料及びカーボンが挙げられる。充填剤は、ポリマーフィルムの孔に吸収させる場合に、所望の接着材料と組み合わせて使用することができる。フィルム又はその少なくとも一部分を金属化することも望ましい場合がある。
【0023】
充填剤は、ポリマーそのもののマトリクスの中、又はポリマー構造によって画定される空隙の中、又はその両方に含まれる可能性がある。望ましい充填剤は、着色剤、薬剤、抗微生物剤、抗生剤、抗菌剤、抗炎症剤、止血剤、鎮痛剤、エラストマー、及びこれらの混合物を含んでもよい。
【0024】
フルオロポリマー絶縁材料は、テープにして導電体の周囲に巻き付け、絶縁された導電体を形成することが有利である。テープは、長手方向に又は螺旋状に巻き付けることができる。例えば本発明において有用な絶縁された導電体は、非多孔質延伸PTFEフィルムからなる1つ以上の層を導電体に長手方向に巻き付けること(すなわち「タバコ巻き」)によって製造できる。フィルムは、所望の長さの導電体と少なくとも等しい長さであると同時に、フィルムが導電体の表面を完全に覆うのに十分な幅であって、長手方向に配向されたフィルムからなるチューブ状絶縁性カバーとなるものでなければならない。あるいはフィルムは、所望により導電体の表面を少なくとも2回覆うのに十分な幅にして、フィルムが少なくとも2つの層になるようにしてもよい。好ましくは、次の巻きが同一方向又は反対方向となった螺旋状にテープを巻き付けてもよい。螺旋巻きと長手方向巻きを組み合わせて使用することも有利な場合がある。
【0025】
本発明のリード体は、管腔などの他の細長要素を含んでいてもよい。管腔は、テープ形状の薄くて可撓性のあるさまざまなフルオロポリマー材料から作ることができる。可撓性が優れているという理由で、必要に応じて薄い非多孔質コーティングを備えた、多孔質フルオロポリマーを用いることが望ましい。フルオロポリマー製管腔は、前に説明した熱可塑性フルオロポリマーからなる多孔質又は非多孔質コーティングを備えた多孔質延伸PTFE(ePTFE)製テープを心棒のまわりに巻き付けて作ることが好ましい。より好ましいのは、管腔は、多孔質延伸PTFE製テープと非多孔質ePTFE製テープを巻き付けることによって構成された複合体である。
【0026】
壁が薄いチューブ状管腔の最も好ましい作り方は、FEPがコーティングされた非多孔質ePTFEフィルムを切断してテープにし、そのテープを心棒の表面に螺旋状に巻き付け、その巻きの外側にフルオロポリマー接着剤を配置するというものである。次に、この非多孔質ePTFE層を多孔質ePTFEで覆う。
【0027】
次に、螺旋状に被覆された心棒を炉の中に適切な時間にわたって入れて螺旋状の巻きの重なった端部を熱によって接合させることにより、チューブを形成する。炉から取り出して冷却した後、得られたチューブを心棒から外す。
【0028】
絶縁された導電体は、断面が円形又は平坦である中実の金属導電体、又はストランドワイヤのコイル、又は引き抜き充填チューブ(drawn filled tubular)の形態の導電体をフルオロポリマー絶縁材料で覆ったものを含むことができる。
【0029】
有用な導電性金属は従来技術で周知であり、生体適合性かつ生体安定性があり、疲労と腐食に対する抵抗力のある任意の導電性材料を含むことができ、例えば、金、銀、ステンレス鋼、白金、白金合金、チタン、チタン合金、タンタル、コバルト合金、銅合金、銀合金及びマグネシウム−ニッケル合金、並びにこれらの組み合わせを含むことができる。高密度材料(例えば白金又は白金合金)を用いて蛍光透視法におけるリード体の可視性を大きくすることができる。ニッケル−コバルト系の超高強度かつ強靭な合金であるMP35Nが好ましい。導電体は、表面がベースとなる金属になっていてもよいし、研磨、エッチング、又はテクスチャ処理されていてもよい。
【0030】
導電体は、直径が小さく可撓性の高い導電性フィラメントからなるストランドワイヤを含んでいることが好ましい。好ましい一実施態様では、導電体は、中心部のストランドのまわりに配置した周辺部の複数のストランドから構成される。ストランドはケーブルのようにきつく束ねられて導電体を形成する。しかし任意の数のストランドを用いて、又はストランドを1つしか用いなくても、本発明の導電体を形成できることは当然である。
【0031】
導電体の外径は、約0.001インチ〜約0.013インチの範囲が好ましく、約0.002〜約0.006インチの直径が最も好ましい。しかし当業者には、外径が0.013インチを超えてもよいことは明らかであろう。
【0032】
導電体は、フルオロポリマー電気絶縁材料で覆われる。この絶縁体の厚さを最小に維持しつつ十分な電圧強度を提供することが好ましい。フルオロポリマー電気絶縁体は巻き付けられたテープの形態であることが好ましい。標準的なMP35N導電体と厚さが約0.0005インチと薄い非多孔質ePTFE絶縁材料とを含む、適切な絶縁された導電体は、さまざまな形態で、W.L.ゴア&アソシエイツ社(ニューアーク、デラウェア州)から入手することができる。
【0033】
細長要素は電気絶縁性フルオロポリマー製カバーで取り囲まれる。このカバーは、電気的に絶縁するだけでなく、リード体に強度とキンクに対する抵抗力も与える。好ましい1つの特徴では、電気絶縁性フルオロポリマー製カバーは、非多孔質ePTFEを含んでいる。より好ましいのは、カバーが、多孔質ePTFEからなる少なくとも1つの層と、非多孔質ePTFEからなる少なくとも1つの層とを含んでいることである。
【0034】
接着剤の使用が望ましい場合には、あらゆる適切なフルオロポリマーフィルム(例えば上記のフルオロポリマーを含むフィルム)を適切な任意の接着剤(例えば上記のもの)と組み合わせて使用できるが、FEPコーティングを備えた非多孔質ePTFEが特に好ましい。非多孔質ePTFE(又は他のフルオロポリマーフィルム)を切断してテープにし、細長要素のまわりに巻き付けることができる。フルオロポリマー接着剤は、細長要素側、又は細長要素と反対側のいずれかに面してもよく、あるいはePTFEフィルムの両側に付されてもよい。
【0035】
フルオロポリマー製カバーは、非多孔質ePTFE及び多孔質ePTFEを含むePTFE複合体であることが有利な場合がある。非多孔質ePTFE層は、リード体の誘電強度、機械的強度、電圧強度の増大に寄与するのに対し、多孔質ePTFE層は、キンクに対する抵抗力に寄与する。多孔質ePTFE層が非多孔質層を取り囲んでいることが好ましい。より好ましいのは、カバーが、マトリクス引張強さが少なくとも10,000psiの、第1の螺旋状に巻き付けられた非多孔質ePTFEテープ層と、この第1の層の上に配置された、第2の螺旋状に巻き付けられた多孔質ePTFEテープ層の形態になっていることである。
【0036】
例えばカバーの第1の層は、非多孔質ePTFEと、非多孔質熱可塑性フルオロポリマー(FEPなど)であることが好ましい熱可塑性材料とからなる、積層式テープを含むことができる。積層式テープは、縁部を重ね、非多孔質ePTFEを外側に向け、熱可塑性材料を導電体群に向けて螺旋状に適用できる。カバーの第2の層は、多孔質又は非多孔質の熱可塑性コーティングを備えた延伸PTFEフィルムを含むことができる。熱可塑性材料が内側に向いた状態で第2の層が第1の層のまわりに巻き付けられていることが好ましい。
【0037】
薄いテープを多層にして巻くと、厚いテープからなるより少数の層と比べて可撓性がより大きくなる。高強度の非多孔質ePTFEテープは厚さが約0.001インチ未満であることが好ましく、このテープは、厚さが約0.0005インチ未満であることがより好ましく、厚さが約0.0002インチ未満であることが最も好ましい。高強度積層テープは重ね合わさるように巻き付け、約0.0002インチ〜約0.003インチの厚さを実現することが有利である。より厚いカバーだと、より大きな誘電強度とより強いリード体にできるが、リード体の直径と剛性が大きくなる。
【0038】
1つの特徴によると、ICDリード体は、少なくとも一部が鞘の中に配置されていてもよい。この明細書では、「鞘」は、リード体の物理的特性を改善するための、又はリード体に機能性を付与するための可撓性チューブ状部材である。鞘を用いると、剛性、触感、摩擦、又は他の物理的特性を改善すること、あるいは組織応答の向上を促進することができる。例えば、鞘を、ドラッグデリバリー装置又は化学物質デリバリー装置として使用するために適応させることができる。鞘は、従来からある材料(例えばシリコーンやポリウレタン)で構成することができ、従来技術で知られている成形法又は押し出し法で構成することが可能である。しかし鞘は、本質的にフルオロポリマーからなることと、上に説明したテープ巻き付け法で構成することが好ましい。鞘は、多孔質ePTFEと非多孔質ePTFEを含むフルオロポリマー複合体からなっていてもよい。鞘は、エラストマーを吸収させたフルオロポリマーからなっていてもよい。
【0039】
当業者であれば、本発明のリード線の別のバリエーションを考えることができよう。2つ以上の細長要素の外面のまわりにテープを巻き付けることにより、相異する要素が固定された構造を得ることが可能である。さらに、そのような細長要素は、材料の融合、接合、接着なしに組み立てることができ、そのことによりリード体の剛性が小さくなる。
【0040】
ここで図面に戻ると、図1には、長さ方向に延在する絶縁された2つの導電体(12、12a)と、フルオロポリマー複合体からなる管腔14とが、ポリマー製テープを巻き付けた外側カバー16によって実質的に互いに平行になるように組み合わされた電気生理学リード体10が示してある。テープが巻かれたこの構成により、2つ以上の細長要素を組み合わせてより複雑な組立体を形成することもできる。有利なことに、細長要素とカバーは、それら要素を互いに接合することなく、又はカバーに接合することなく組み合わせることができる。フルオロポリマーフィルム製カバー16は、重ね合わせのある螺旋パターンで巻き付けられている。このフィルム製カバー16は、絶縁された導電体12、12a及び管腔14の外側又は外面と接触している状態で図示してある。
【実施例】
【0041】
例1:心臓に埋め込むのに適した、すべてがフルオロポリマーからなる図1のリード体を、以下のようにして構成した。
【0042】
フルオロポリマー複合体からなる壁の薄い管腔14を最初に構成した。この例の管腔は、非多孔質ePTFEからなる内側層(18)と、多孔質ePTFEからなる外側層(20)を有するフルオロポリマー積層体を備えていた。厚さが約0.0005インチに等しい非多孔質ePTFEフィルムの一方の側にFEPの非多孔質コーティングを設けた後、切断して幅が0.185インチのテープにした。この非多孔質ePTFEフィルムのバルク密度は約2.1g/ccである。コーティングされたこのフィルムを切断してテープにした後、銀メッキした直径0.040インチの銅製心棒の表面に、このテープを重ね合わせながら巻き付けた。そのとき、テープのFEPで覆われている側が心棒とは反対側を向くようにした。テープは、約20°のピッチで巻き、約25%重なり合うようにした。巻き付けている間、テープに600グラムの張力を与えた。
【0043】
多孔質ePTFEテープを非多孔質ePTFEテープ層のまわりに巻き付けた。バルク密度が約0.9g/ccである厚さ0.001インチの多孔質ePTFEフィルムを切断し、幅が0.260インチの狭いテープにした。このテープを約650グラムの張力を加えながら約20°のピッチで巻いた。1回巻くごとに約50%が重なり合うようにして、多孔質ePTFEの巻きの最終的な厚さとして0.002インチを実現した。管腔の壁部の全厚さは約0.003インチであった。次に、被覆された心棒を約390℃に設定した対流炉の中で5分間にわたって加熱し、螺旋状に巻かれた2つのフルオロポリマー層を溶融接合した。
【0044】
細長要素は、2つの絶縁された導電体(12、12a)も備えている。導電体(12、12a)は、W.L.ゴア&アソシエイツ社から入手した厚さ0.001インチのフルオロポリマー絶縁体(13、13a)(例えば要素番号MCN1162)を有する直径0.006インチのMP35Nストランド導電体(15、15a)を備えている。フルオロポリマー絶縁体は、電圧強度が少なくとも約8000Vdc/ミルであった。絶縁された導電体(12、12a)は、軸線が互いに大体平行になるようにして管腔(14)の隣に配置した。
【0045】
絶縁された導電体とフルオロポリマー製管腔を非多孔質フルオロポリマー製テープで覆ってカバー(16)を形成した。このカバーは、非多孔質ePTFEテープ積層体を細長要素のまわりに螺旋状に巻き付けることによって作った。一方の側がFEPでコーティングされた厚さ0.0005インチのePTFEフィルムを最初に切断して幅0.225インチのテープにした。このテープを導電体と管腔のまわりに巻き付け、そのときフルオロポリマー接着剤を巻きの外側にした。巻き付ける角度は約20°であり、テープの張力は300gであった。1回巻くごとに前に巻いた部分と約25%重なり合うようにすることで、最終的な厚さが約0.00075インチの1回巻きが得られた。このカバーを巻き付けた後、リード体組立体を390℃の炉の中に約4分間入れた。次に、組み立てられたリード体から心棒を外した。
【0046】
図1では絶縁された導電体が管腔と実質的に平行であるように図示してあるが、テープの巻き付け方によっては他の構成や他の配向が可能になる。例えば図2に示したように導電体を管腔のまわりに螺旋状に巻き付けることができる。螺旋状に巻き付けると、完成したリード体の曲げ特性の一様性をさらに改善することができる。
【0047】
さらに、どの図面でも、絶縁された導電体は、実質的に似たような内径と外径を持ち、実質的に円形の断面を持つ似通ったものを図示してあるが、これらの要素はさまざまなサイズと形状にできることは当然である。例えば1つの導電体が、第2の導電体と比べてはるかに小さな外径、はるかに小さな内径、又はその両方を備えてもよい。別の構成では、追加の細長要素(例えば、ガイドワイヤを滑らせて受容できるサイズの追加の管腔又は追加の絶縁された導電体)をカバーの内部に設けることができる。さらに、フルオロポリマー製テープのFEP側の向きを適切に選択することにより、要素を互いに接合すること、及び/又はカバーに接合することができる。
【0048】
例2:例1と同様の方法で第2のリード体を構成した。しかしこのリード体はより小さく、神経用途で用いるのに適しているであろう。例1と同様、リード体は絶縁された2つの導電体(12、12a)を備えているが、この例では、図2に示してあるように、導電体がフルオロポリマー製管腔(14)のまわりに螺旋状に巻き付けられている。次に、これら細長要素をフルオロポリマー製テープの巻き(16)で覆う。
【0049】
銀メッキした銅製心棒に多孔質フルオロポリマー製テープと非多孔質フルオロポリマー製テープを巻き付けて複合フルオロポリマーチューブを構成することにより、内径0.020インチの管腔(14)を構成した。この管腔は、非多孔質ePTFEテープからなる内側層と、多孔質ePTFEテープからなる外側層とを備えていた。この二層構造は、壁部の全厚さが0.001インチに等しかった。最初に、厚さ0.0005インチ、幅0.050インチの非多孔質ePTFEテープを、張力を175グラムにして約20°の角度で、25%が重なり合うようにして心棒のまわりに巻き付けた。このテープは、巻きの外側を向いたフルオロポリマー接着剤を備えていた。次に、厚さ0.0002インチで幅が約0.095インチの多孔質ePTFEテープを20°の角度で約25%重複するようにしながら400グラムの張力にて巻き付けることにより、0.0003インチの外側層を形成した。テープで覆われた心棒を約390℃に設定した炉の中で5分間にわたって加熱した。
【0050】
この例で用いる絶縁された導電体(12、12a)は、直径が0.003インチのストランドワイヤであった。W.L.ゴア&アソシエイツ社から入手した0.0005インチのフルオロポリマー絶縁層で導電体を覆った。絶縁された導電体を管腔のまわりに40°のピッチで螺旋状に巻き付けた。
【0051】
絶縁された導電体とフルオロポリマー製管腔に非多孔質フルオロポリマー製テープを巻き付けてカバー(16)を形成した。一方の側がFEPでコーティングされた厚さ0.0005インチのePTFEフィルムを最初に切断して幅0.228インチのテープにした。このテープを細長要素のまわりに巻き付け、そのときフルオロポリマー接着剤を巻きの外側にした。巻き付ける角度は約20°であり、テープの張力は500gであった。1回巻くごとに前に巻いた部分と約50%重なり合うようにすることで、最終的なカバーの厚さが約0.0015インチになった。このカバーを巻き付けた後、リード体組立体(10)を390℃の炉の中に約2分間入れた。次に、組み立てられたリード体から心棒を外した。
【0052】
例3:孔の少なくとも一部がエラストマー(シリコーン又はウレタン)で充填された多孔質ePTFEテープを用いて弾性リード体を構成することができる。この明細書では、弾性リード体とは、負荷をかけた方向に少なくとも3%変形し、その負荷を取り除くと変形していない状態に戻るリード体を意味する。エラストマーを充填した又は吸収させたePTFEフィルムの製造方法は、Zumbrumらに付与されたアメリカ合衆国特許第6,673,455号と第6,451,396号(参照によりこの明細書の一部とする)に教示されている。
【0053】
壁が薄い管腔を最初に構成した。この管腔は、シリコーンを吸収させた多孔質ePTFEからなる複数の層を有するフルオロポリマー積層体を備えていた。厚さが約0.001インチに等しい多孔質ePTFEフィルムを切断して幅が0.2インチのテープにした。次にこのテープを、重ね合わせながら、銀メッキした直径が0.016インチの銅製心棒の表面に巻き付けた。テープは、約25°のピッチで約75%重ね合わせて巻き付けた。巻いている間、テープには200グラムの張力を加えた。次に、幅が0.25インチのスリットを用いて厚さ0.001インチの吸収ePTFEフィルムを切断し、狭いテープにした。最初に巻かれたテープの上に、約25°のピッチで約225グラムの張力にてテープを巻いた。75%重ね合わせたところ、巻かれた最終的な厚さは0.003インチになった。管腔の壁部の全厚さは約0.003インチであった。次に心棒を約150℃に設定した対流炉の中で2分間にわたって加熱し、螺旋状に巻かれた2つの吸収フルオロポリマー層を一緒に硬化させた。
【0054】
例2と同様、絶縁された導電体群用として、厚さ0.0005インチのフルオロポリマー絶縁体を備える直径が0.003インチの8本のMP35Nストランド導電体を入手した。この導電体群をやはりフルオロポリマー製管腔のまわりに螺旋状に巻き付けた。
【0055】
絶縁された導電体とフルオロポリマー製管腔に多孔質のシリコーン充填フルオロポリマー製テープを巻き付けてカバーを形成した。このカバーは、シリコーンを吸収させた多孔質ePTFEテープを絶縁された導電体と管腔のまわりに螺旋状に巻き付けることによって作った。厚さ0.001インチのePTFEフィルムを最初に切断して幅が0.2インチのテープにした。このテープを導電体と管腔のまわりに巻き付けた。巻きの角度は約25°であり、テープの張力は200gであった。75%重ね合わせることで、厚さが約0.001インチの層になった。次に、厚さ0.001インチの吸収ePTFEフィルムを幅が0.25インチのスリットを用いて切断して狭いテープにした。このテープは、1回目に巻かれたテープの上に交差させ、張力を225グラムにして約25°のピッチで75%重ね合わせて巻き付け、厚さが0.003インチの層を実現した。このカバーを巻き付けた後、リード体組立体を150℃の炉の中に約5分間入れて層を硬化させた。次に、組み立てられたリード体から心棒を外した。
【0056】
例4:例1に記載されている手続きに従ってICDリード体を構成した。次に、リード体を、全体がフルオロポリマー複合体からなる図5に示した鞘の中に挿入した。この鞘は、以下のようにして構成した。
【0057】
厚さ0.001インチのePTFEフィルムを0.375インチの幅に切断した。例1に記載したように、このテープを、銀メッキした直径0.055インチの銅製心棒又はリード体に約25°のピッチで50%重ね合わせて巻き付けた。このテープを、750グラムの張力下で接着剤が外を向くようにして巻き付け、厚さが0.002インチの層を得た。2回目に巻く外側の鞘は、厚さ0.001インチのePTFEフィルムを幅が0.530インチのスリット幅に切断したものからなっていた。2回目に巻くテープは、1回目に巻いたテープの上に交差させ、張力を約1100グラムにして25°の角度で75%重ね合わせて巻き付けた。その結果、厚さが0.003インチの層が得られた。3回目に巻く厚さ0.0005インチの非多孔質ePTFE(一方の側にFEPコーティングを有する)は、幅を約0.560インチに切断し、約800グラムの張力にして20°の角度で75%重ね合わせて巻き付けた。その結果、厚さが0.0015インチの層が得られた。FEPコーティングは内側を向いていた。テープに対する張力は約700グラムであった。非多孔質ePTFEフィルムのバルク密度は約2.1g/ccであった。最終構造体を約390℃に設定した対流炉の中に約3分間入れた。次にこの構造体を心棒から外し(心棒を使用する場合)、例1に記載されているようにしてリード体の上に配置した。
【0058】
例5:さらに別の例では、フルオロポリマー製管腔(14)のまわりに螺旋状に巻き付けた8つの導電体を有するICDリード体を構成した。このリード体の断面を図6に示してある。最初に、フルオロポリマー製管腔を例2と同様にして構成した。次に、絶縁された8つの導電体を管腔のまわりに螺旋状に巻き付けた。絶縁された導電体は直径が0.003インチのストランドワイヤであり、フルオロポリマー絶縁体からなる0.0005インチの層で覆われており、W.L.ゴア&アソシエイツ社から得た。絶縁されたこれら導電体を40°のピッチで管腔のまわりに螺旋状に巻き付けた。絶縁された導電体とフルオロポリマー製管腔に非多孔質フルオロポリマー製テープを巻き付け、例2に記載されているようなカバーを形成した。
【0059】
本発明のリード体は前記のようにして製造され、ほぼ全体がePTFEから構成されるため、生体適合性が優れている。さらに、小さな曲げ半径が容易に実現でき、可撓性が優れている。さらに、本発明のリード体の好ましい一実施態様では、絶縁材料とカバーは非多孔質ePTFE構造体から構成されるため、フィルムに欠陥(例えばピンホール)が発生することはより少なくなり、誘電強度は非常に優れている。本発明のリード体を小さな半径に曲げる(例えば半径10mmで曲げる)場合、優れた可撓性と弾性が実現され、しかも繰り返して曲げてもキンクが起こらない。
【0060】
リード体に他の要素が含まれていても本発明の精神から外れることはない。複合体構成法により、リード体を非常に柔軟に設計することができる。一般に、例えばリード線は、図3に示されているように、フルオロポリマー製管腔の中に配置された導電体製コイル(30)を含む。別のリード体は、細長要素として絶縁された導電体だけを含むことができる。例えば図4には、フルオロポリマーの巻き(16)によって覆われた絶縁された2つの導電体(12、12a)のみを有する本発明のリード線が示してある。ストランド導電体(13)にフルオロポリマー絶縁体(11)が巻き付けられており、フルオロポリマー製カバー16の中に収容されている。
【0061】
試験方法
【0062】
曲げ半径
最小曲げ半径を測定するためサンプルを評価した。試験は以下のように実施した。
【0063】
最小長さが標的とする曲げ半径の6倍となるようにサンプルを切断した。図7に示してあるように、サンプルとなるリード体(10)の両端部を拘束装置(40、40a)の中に配置する。この装置は、サンプルの両端が完全に固定された(すなわち回転又は並進の自由がない)条件を提供する。これら拘束装置に挟まれたサンプルの長さは、標的とする半径の少なくとも5倍に等しい。リード体の両端が標的とする半径と等しい距離だけ離れているように、サンプルを180度曲げた。サンプルに目に見えるキンクがあるか調べる。キンクの徴候が現われなければ、サンプルは標的とする曲げ半径に適合していたと言える。
【0064】
曲げ剛性
剛性は、サンプルとなるリード体を屈曲させるのに必要な力によって特徴づけられる。本発明のICDリード体の曲げ剛性は、図8と図8aに示した特別な試験用固定装置を用いて測定した。この試験用固定装置は、リード体を所定の初期条件まで曲げる手段となる。次にリード体が最終位置まで曲げられる。リード体を初期位置から最終位置まで曲げるのに必要な力がこのリード体の曲げ剛性であり、グラムを単位として測定される。
【0065】
試験用固定装置は、2つのガイド用ブロック(66、66a)と2つの端部ブロック(71、71a)とを備える基部(70)を有する。ガイド用ブロック(66、66a)はガイド用チャネルを含み、その中をリード体が移動する。端部ブロック(71、71a)は、試験中リード体の両端部を固定する。この試験用固定装置は、直径が1/4インチのピン(60)を2つのガイド用ブロック(66、66a)の間に配置することによって準備が整う。
【0066】
端部ブロックの穴(74、74a)とガイドチャネル(64)にリード体(10)を通す。第1の端部ブロック(71)の中に設置した止めネジ(72、72a)を締め付けることにより、リード体(10)の第1の端部を固定する。リード体の他端に、そのリード体がちょうどピン(60)と接触するまで張力を与え、その後第2の取付ネジ(76a)を締める。
【0067】
次にピン(60)を取り除く。このようにして、曲げがリード体の中央に形成される。次に固定装置を較正された電子式天秤(図示せず)の上に置き、0点に合わせる。次にリード体を、ネジ駆動プランジャ(62)を用いてアーチの頂部から下方に押す。プランジャ(62)は、位置決めピン(図示せず)を備えるか、移動中にリード体が横方向に動かないようになっている。リード体は、固定装置の基部(70)とちょうど接触するまで押し下げられる。曲げ剛性(単位はグラム)は、電子式天秤から直接読み取られる。
【0068】
マトリクス引張強さ
空気圧式コードとヤーン把持用顎部を備えるインストロン引張試験機械を用い、ePTFEフィルムを含むePTFE材料のマトリクス引張強さを測定する。この機械を用い、顎部を隔てる距離を1インチ、クロスヘッドの速度を10インチ/秒にして幅が0.25インチのサンプルを試験した。多孔質PTFEサンプルのマトリクス引張強さは以下の式から求められる。
(2.2g/cc×引張強さ)/試験する材料の密度
(ここでは非多孔質ePTFEの密度を2.2g/ccとする。)
【0069】
電圧強度(誘電強度)
以下の手順を利用して絶縁された個々の導電体の誘電強度の特徴を調べた。
【0070】
約15cmの絶縁された導電体サンプルを用意し、その絶縁材料が、生理食塩水の予備処理試験浴と直接接触するように配置した。例えば2つ以上の絶縁された導電体サンプルから構成される組立体から、電気的絶縁を目的としないあらゆる外側カバー、ジャケット、要素を外し、適切な絶縁材料が予備処理試験浴と直接接触するようにした。37℃±5℃にした約9g/リットルの生理食塩水を含む生理食塩水予備処理浴を用い、サンプルを少なくとも10日間にわたって予備処理した。試験の直前、各サンプルを蒸留水又は脱イオン水でリンスした後、表面を拭いて水分がない状態にした。予備処理後は、サンプルを乾燥させなかった。
【0071】
37℃±5℃にした約9g/リットルの生理食塩水からなる試験浴にサンプルを浸した。サンプルは、金属製基準電極板から50mm以上かつ200mm以下の位置に配置した。基準電極板の最小表面積は500mm2であった。電極と、ワイヤの端部と、端子が、試験浴から電気的に絶縁されているよう注意した。露出した金属面はすべて、試験浴の表面から少なくとも20mm離れた状態を維持した。
【0072】
最初に、各導電路の電気的連続性を、抵抗測定器(例えばフルーク189ディジタルマルチメータ(フルーク社、エヴェレット、ワシントン州))を用いたDC抵抗の測定によって確認した。絶縁のDC電圧強度を絶縁された各導電体について調べた。試験電圧を絶縁された1つの導電体に印加し、絶縁された導電体と基準電極の間の漏れ率を測定した。試験電圧を印加した状態の絶縁された導電体と他のすべての絶縁された導電体の間の漏れ率も測定した。
【0073】
電気的安全性分析装置(例えばクワッドテック・ガーディアン6000(クワッドテック社、メイナード、マサチューセッツ州)シリーズのテスター)を用いて試験電圧を印加し、漏れ電流を測定した。試験を開始してから0.1〜5秒後に最大試験電圧に到達し、その値を少なくとも15秒間維持した。
【0074】
絶縁された導電体の絶縁性は、以下の基準に合致した場合だけ、電圧強度試験をパスした。その基準とは、1)絶縁された各導電体と基準電極の間で測定した漏れ電流が2mA以下であること;2)絶縁された任意の2つの導電体の間で測定した漏れ電流が2mAを超えないことである。管腔の電気的絶縁性試験では、管腔の内面と外面の間の漏れ電流が2mA以下であることが必要とされた。
【0075】
【表1】

【0076】
本発明の特別な実施態様をこの明細書の中で図示して説明してきたが、本発明はそのような図と説明に限定されるべきではない。添付の請求項の範囲であれば、変更や修正が本発明の一部に含まれることや、本発明の一部として具体化できることは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明による埋め込み可能なリード線の斜視図であり、このリード線は、3つの細長要素、すなわち1つの管腔と、2つの絶縁された導電体とを有する。
【図2】本発明によるリード体の斜視図であり、細長要素は、管腔のまわりに螺旋状に巻き付けられた電気絶縁された導電体を備えている。
【図3】本発明の一態様によるリード体の管腔の中に螺旋状に巻かれた導電体コイルが配置されている状態を示す。
【図4】2つの細長要素が絶縁された導電体である代替実施態様の断面図である。
【図5】本発明の別の態様であり、鞘の中に配置された電気生理学リード体を示している。
【図6】本発明の別の態様を断面図として示した図であり、すべてのフルオロポリマー製リード体が、1つの管腔のまわりに配置された8つの導電体を備えている。
【図7】曲げ半径を測定する試験装置である。
【図8】曲げ剛性を測定する試験装置である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)それぞれが外面を有し、本質的にフルオロポリマーからなる電気絶縁材料を含む、2つ以上の細長要素と;
b)前記細長要素のうちの少なくとも1つの中に配置された少なくとも1つの導電体と;
c)本質的にフルオロポリマーからなり、前記細長要素を取り囲んでいるカバーと
を備える電気生理学リード体。
【請求項2】
前記導電体が螺旋コイルを含む、請求項1に記載の電気生理学リード体。
【請求項3】
前記絶縁材料がePTFEを含む、請求項1に記載の電気生理学リード体。
【請求項4】
前記絶縁材料が非多孔質ePTFEを含む、請求項3に記載の電気生理学リード体。
【請求項5】
前記絶縁材料がePTFE及びFEPを含む、請求項3に記載の電気生理学リード体。
【請求項6】
前記カバーがePTFEを含む、請求項1に記載の電気生理学リード体。
【請求項7】
前記カバーが非多孔質ePTFEを含む、請求項6に記載の電気生理学リード体。
【請求項8】
前記カバーが、ePTFE及び充填剤を含む複合体である、請求項6に記載の電気生理学リード体。
【請求項9】
前記充填剤がエラストマーを含む、請求項8に記載の電気生理学リード体。
【請求項10】
前記エラストマーがシリコーンを含む、請求項8に記載の電気生理学リード体。
【請求項11】
前記エラストマーがポリウレタンを含む、請求項8に記載の電気生理学リード体。
【請求項12】
前記カバーがePTFE及びFEPを含む、請求項6に記載の電気生理学リード体。
【請求項13】
前記カバーがフルオロポリマーの積層体を含み、前記積層体が、多孔質ePTFEからなる層と、非多孔質ePTFEからなる層とを含む、請求項6に記載の電気生理学リード体。
【請求項14】
前記フルオロポリマーが、前記導電性材料の外面のまわりに巻き付けられたフィルムである、請求項1に記載の電気生理学リード体。
【請求項15】
前記フルオロポリマーが、前記導電性材料のまわりに螺旋状に巻き付けられたフィルムである、請求項14に記載の電気生理学リード体。
【請求項16】
前記カバーが、前記細長要素の外面のまわりに巻き付けられたフルオロポリマーフィルムを含む、請求項1に記載の電気生理学リード体。
【請求項17】
前記フィルムが、前記細長要素の外面のまわりに螺旋状に巻き付けられている、請求項16に記載の電気生理学リード体。
【請求項18】
前記絶縁材料の厚さが約0.003インチ(76.3μm)未満である、請求項1に記載の電気生理学リード体。
【請求項19】
前記絶縁材料の厚さが約0.0015インチ(38.1μm)未満である、請求項1に記載の電気生理学リード体。
【請求項20】
前記絶縁材料の厚さが約0.0005インチ(12.7μm)未満である、請求項1に記載の電気生理学リード体。
【請求項21】
前記絶縁材料の厚さが約0.0002インチ(5.08μm)未満である、請求項1に記載の電気生理学リード体。
【請求項22】
前記カバーの内部に配置された少なくとも1つの管腔をさらに備えていて、前記管腔が本質的にフルオロポリマーからなる、請求項1に記載の電気生理学リード体。
【請求項23】
前記管腔がePTFEを含む、請求項22に記載の電気生理学リード体。
【請求項24】
前記管腔が非多孔質ePTFEを含む、請求項23に記載の電気生理学リード体。
【請求項25】
前記管腔が、非多孔質ePTFEからなる第1の層と、多孔質ePTFEからなる第2の層とを含む積層体を含む、請求項24に記載の電気生理学リード体。
【請求項26】
多孔質ePTFEからなる少なくとも1つの追加層をさらに含む、請求項25に記載の電気生理学リード体。
【請求項27】
前記積層体が、非多孔質ePTFEからなる第2の層によって取り囲まれた多孔質ePTFEからなる第1の層を含む、請求項25に記載の電気生理学リード体。
【請求項28】
a)厚さが約0.003インチ(76.2μm)未満で電圧強度が少なくとも約3000Vdc/ミル(3000Vdc/25.4μm)である電気絶縁材料を含む2つ以上の細長要素と;
b)前記細長要素の1つの中に配置された少なくとも1つの導電体と;
c)前記細長要素を取り囲んでいるカバーと
を備えていて、曲げ剛性が約10g未満である、電気生理学リード体。
【請求項29】
少なくとも1つの細長要素が少なくとも1つの管腔を備える、請求項28に記載の電気生理学リード体。
【請求項30】
a)厚さが約0.003インチ(76.2μm)未満で電圧強度が少なくとも約3000Vdc/ミル(3000Vdc/25.4μm)である電気絶縁材料を含む2つ以上の細長要素と;
b)前記細長要素の1つの中に配置された少なくとも1つの導電体と;
c)前記細長要素を取り囲んでいるカバーと
を備えていて、曲げ半径が12.7mm未満である、電気生理学リード体。
【請求項31】
前記カバーが積層体を含んでおり、前記積層体が、第1の密度を持つ第1のフルオロポリマー層と、第2の密度を持つ第2のフルオロポリマー層とを含んでいて、前記第2のフルオロポリマー層が第1のフルオロポリマー層を取り囲んでおり、前記第2の密度が前記第1の密度よりも小さい、請求項30に記載の電気生理学リード体。
【請求項32】
a)それぞれが外面を有し、少なくとも1つの直交方向におけるマトリクス引張強さが少なくとも10000psi(68.9MPa)である電気絶縁材料を含む、2つ以上の細長要素と;
b)前記細長要素のうちの少なくとも1つの中に配置された導電体と;
c)前記細長要素を取り囲んでいて、少なくとも1つの直交方向におけるマトリクス引張強さが少なくとも10000psi(68.9MPa)である電気絶縁材料を含むカバーと
を備える、電気生理学リード体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−514603(P2009−514603A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539080(P2008−539080)
【出願日】平成18年11月3日(2006.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/043054
【国際公開番号】WO2007/133253
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(598123677)ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド (279)
【Fターム(参考)】