説明

埋込部材の固定装置

【課題】埋込部材の横孔に寸法のバラツキがあっても、これに影響されない埋込部材の固定ができて、型枠に振動をかけても埋込部材の固定が緩まず、埋込部材の固定に伴い位置決めも行なえる埋込部材の固定装置を提供すること。
【解決手段】埋込部材に設けた横孔へ抜挿軸を挿し入れて回動させ、埋込部材を抜挿軸のカム部で押圧させて型枠へ固定する埋込部材の固定装置において、上記抜挿軸7のカム部6を、抜挿軸7の周面へ軸線方向に溝条17を設けて、この溝条17へ押圧部6aが溝外へ出るように弾性部材19を収めた構成とし、埋込部材4の露出部4bに設けた横孔5を、下部が半円形をなすU字形等に形成して、上記横孔5へ半円形の部分より上側にカム部6が位置するように抜挿軸7を挿し入れて、カム部6が半円形の部分の垂直中心線Sを若干越える位置まで回転させ、カム部5で埋込部材4の押圧と横寄せを行なわせるようにしたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製品へ埋め込む部材を成形用の型枠へ位置決めして固定する固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート製品へ埋入する部材を成形型枠へ固定する装置は、型枠の底部に設けた金物支持部に、埋込金物の製品よりの露出部を支持させ、この部分に横貫される孔に、前記型枠の下側に支持される抜挿軸のカム部を嵌合し、前記抜挿軸の一端に操作レバーを付設するようにしている。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】実公平3−49845号(第1頁、第2頁、第2図)
【0003】
しかしながら、上記装置は、抜挿軸のカム部を抜挿軸の曲げ加工か、他部材の溶接などにより形成したものであって、カム部が弾性を有しない。このため、埋込部材の孔に寸法のバラツキがあると、埋込部材に作用する押圧力が弱かったり、効かなかったりして固定できないものを生じ易く、また、型枠にコンクリートを締め固めるための振動をかけると
、この振動でカム部が戻って埋込部材の固定を緩ませることがあり、更に、この装置はカム部の回転で埋込部材に横寄せの力を作用させて、埋込部材の基準面を型枠の位置決め縁へ当てて固定と共に位置決めをすることはできないものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記問題点を解消し、埋込部材の横孔に寸法のバラツキがあっても、このバラツキに影響されない埋込部材の固定が可能であり、型枠に振動をかけても固定が緩まず、固定に伴う横寄せ作用で埋込部材の位置決めもできる埋込部材の固定装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため本発明に係る埋込部材の固定装置は、下記の構成を採用することを特徴とする。
埋込部材に設けた横孔へ抜挿軸を挿し入れて回動させ、埋込部材を抜挿軸のカム部で押圧させて型枠へ固定する埋込部材の固定装置において、上記抜挿軸のカム部を、抜挿軸の周面へ軸線方向に溝条を設けて、この溝条へ押圧部が溝外へ出るようにカム部を収めた構成とし、埋込部材の露出部に設けた横孔を、下部が半円形をなすU字形等に形成して、上記横孔へ半円形の部分より上側にカム部が位置するように抜挿軸を挿し入れて、カム部が半円形の部分の垂直中心線を若干越える位置まで回転させ、カム部で埋込部材の押圧と横寄せを行なわせるようにしたこと。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の効果 埋込部材の露出部に設けた横孔へカム部を有する抜挿軸を抜き挿して回転させる構成であるため、装置が安価に製作されて、埋込部材の固定、解除の操作が力不要で容易かつ迅速に行なえ、固定装置による脱型の抵抗も生じない。
抜挿軸に設けた溝条へ押圧部が溝外へ出るように弾性部材を収めたカム部は適切な弾力を有して、埋込部材の横孔に寸法のバラツキがあっても、これに関係なく充分な押圧力を埋込部材に加えて、総ての埋込部材を確実に固定することができる。
埋込部材の横孔内でカム部を半円形の部分の垂直中心線を若干越える程度に回転させるから、コンクリートを締め固めるため、型枠を振動させても振動でカム部の戻りを生じないため埋込部材部の固定が緩むことがなく、また、半円部の垂直中心を越えたカム部の移動は、埋込部材を横に寄せて、その基準面を型枠の定規面へ押し付けて埋込部材の位置決めを行うこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明に係る埋込部材の固定装置の実施形態を図面に付いて説明する。
【実施例1】
【0008】
図1、図2において符号1は、コンクリート製品を成形する型枠へ使用する埋込部材の固定装置を示す。この埋込部材の固定装置1は、図1に示す通りコンクリート製品2を成形する型枠3へ、埋込部4aが型枠3内にあり、露出部4bが型枠3外へ出るように埋込部材4を支持させて、露出部4bに設けた横孔5へ、カム部6を有する抜挿軸7を挿し入れて回動させ、カム部6を横孔5の底部に係合させて埋込部材4を押圧で型枠3へ固定するものである。
【0009】
上記型枠3は、底部4に埋込部材4の設置孔8を図2に示す通り設けて、この設置孔8の右側上面を埋込部材4の右側に設けた係止部9の受部10とし、側面を埋込部材4に設けた基準面11を当てて位置決めする位置決め縁12としてあり、また、設置孔9の左側下部には、埋込部材4の左側に設けた係止部13の受部14を設けてある。
【0010】
上記抜挿軸7は、前端に操作ハンドル15を図1に示す通り取り付け、後部の周面には溝条16を軸線方向に設けて、この溝条16に図3、図4に示す通りのへの字形か、図面には示してない円弧形等に形成して、後端に前方へ傾く取付け部17を設けた鋼材等の弾性部材18を収容し、その取付け部17を溝条16の後端に設けた嵌合孔19へ嵌合固定することで、弾性部材18が溝条16内で弾性変形して押圧部18aで埋込部材4を押圧するカム部6を構成させる。
【0011】
図1において、符号20及び21は、型枠3の下部前後に設けた抜挿軸7の支持板を示す。これら支持板20及び21は、中央部に抜挿軸7を抜き挿しする軸孔22及び軸孔23を設け、前側の軸孔22には埋込部材4に設けたカム部6が通る半円形切欠24を、図5、図6に示す通り設ける。なお、この半円形の切欠24は、埋込部材4に設けた基準面11とは反対側に位置させることで、カム部6による埋込部材4の横寄せが型枠3の位置決め縁12に向って行われるようにする。
【0012】
また、図5、図6において符号25及び26は、抜挿軸7の回動する範囲を規制させる規制ピンを示す。これら規制ピンの一方25は、抜挿軸7の回動でカム部6が横孔5の半円形の部分5aの中心を角度θにして5〜6度越えたとき、抜挿軸7から突出させた制限杆27へ当るように型枠3の台部28へ取り付け、他方26は、カム部6が前側の支持板20に設けた切欠24へ正対したとき、制限杆27へ当るように型枠台28へ取り付けてある。
【0013】
上記構成の埋込部材の固定装置1は、型枠3へ図1に示す通り露出部4aが型枠3内に位置し、露出部4bが型枠3の外へ出るように埋込部材4を支持させて、露出部4bに設けた横孔5へ抜挿軸7を、規制ピン25へ制限杆27を当てて挿し込むと、カム部6が支持板20の半円形切欠24を通って、カム部6を横孔5の方形の部分5bの下部に位置させるので、この状態において操作ハンドル15を図5において半時計方向へ回動させると
、カム部6は横孔5の半円形の部分5aへ上部から下部へと係合して行き、係合位置が半円部4aの垂直中心Sを図1に示す通り角度θ(5〜6度が好ましい)越えたとき、制限杆27は他方の規制ピン26へ、図6に示す通り係合して操作ハンドル16の回転を止める。
【0014】
このため、カム部6は横孔5の半円形の部分5aに沿って下降移動するとき、埋込部材4に押し下げ力を作用させて、埋込部材4の係止部9と係止部13を型枠3の受部10と受部14へ圧接固定し、半円形の部分5aの垂直中心線Sを越えて横移動するときは、埋込部材4に横へ寄せる力を作用させて、埋込部材4に設けた基準面11を型枠3に設けた位置決め縁12へ押し当てて、埋込部材4の位置決めをも行なうものであり、このように位置決め固定が行なわれれば、コンクリート製品の締め固めを行なうために型枠3に振動をかけても、振動でカム部6が戻って固定の緩みを生じることがない。
【0015】
上記の通り埋込部材4の位置決め固定が行なわれたら、型枠3内にコンクリートを充填してコンクリート製品2を成形し、コンクリート製品2が脱型できる状態に固まったとき
、抜挿軸7を操作ハンドル15で図6において時計方向へ回動させて、制限杆27が規制ピン26に当ったときに止めれば、抜挿軸7に設けたカム部6が支持板20に設けた切欠24に一致するので、この状態で抜挿軸7を軸孔22及び23から抜き取れば、埋込部材4の露出部4aからコンクリート製品2を脱型するときの抵抗となるものが総て除かれるため、コンクリート製品2の脱型を容易に行うことができる。
【0016】
なお、埋込部材4は、上記の通り単独で設置するものではなく、図7に示す通り対象形に形成した左右一対を所定の間隔で設置するものであって、この場合、右側の埋込部材4の横孔5へ挿す抜挿軸7は、操作ハンドル15で時計方向へ回動させると、カム部6の押圧部6aが、埋込部材4の横孔5における半円形の部分5aを、上部から垂直中心へ向って下降回動し、このとき埋込部材4の押し下げを行ない、次に、半円形の部分5aを垂直中心Sを越えて横へ回動し、埋込部材4を横に押して基準面13を位置決め縁12へ当る。このため、右側の埋込部材4も左側の埋込部材4と同様に型枠3へ固定されるとともに位置決めされて、一対の埋込部材4、4を正しい間隔で型枠3へ固定するものである。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明を利用すれば、コンクリート型枠に対する埋込部材の位置決め固定を簡便、確実に達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る埋込部材固定装置の縦断側面図。
【図2】同上装置の要部を示す縦断正面図。
【図3】同上装置における抜挿軸にカム部を構成する前の側面図。
【図4】抜挿軸にカム部を構成した後の側面図。
【図5】抜挿軸のカム部で埋込部材の押圧を開始する前の状態を示す説明図。
【図6】抜挿軸のカム部で埋込部材を押圧させた状態を示す説明図。
【図7】対象形の埋込部材の一対を型枠へ固定した場合の要部を示す縦断正面図。
【符号の説明】
【0019】
1 埋込部材の固定装置
2 コンクリート製品
3 型枠
4 埋込部材
4a 埋込部
4b 露出部
5 横孔
6 カム部
6a 押圧部
7 抜挿軸
16 溝条
18 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋込部材に設けた横孔へ抜挿軸を挿し入れて回動させ、埋込部材を抜挿軸のカム部で押圧させて型枠へ固定する埋込部材の固定装置において、
上記抜挿軸のカム部を、抜挿軸の周面へ軸線方向に溝条を設けて、この溝条へ押圧部が溝外へ出るように弾性部材を収めた構成とし、
埋込部材の露出部に設けた横孔を、下部が半円形をなすU字形等に形成して、
上記横孔へ半円形の部分より上側にカム部が位置するように抜挿軸を挿し入れて、カム部が半円形の部分の垂直中心線を若干越える位置まで回転させ、カム部で埋込部材の押圧と横寄せを行なわせるようにした
ことを特徴とした埋込部材の固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−192604(P2006−192604A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−3869(P2005−3869)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000143765)株式会社佐藤工業所 (12)
【Fターム(参考)】