説明

基地局、不審者侵入検知システム及び不審者侵入検知方法

【課題】正規の進入か不審者による侵入かを正確に検知することができる基地局、不審者侵入検知システム及び不審者侵入検知方法を提供すること。
【解決手段】フェムトセル基地局100は、正規端末が自フェムトセルエリアに在圏しない場合、近隣マクロセル基地局に携帯端末300の在圏確認を要求する正規ユーザ在圏確認要求部130と、正規端末が近隣マクロセル基地局のエリア内に在圏である場合、マクロセル基地局200に、自フェムトセル基地局100へのハンドオーバを要求するハンドオーバ要求部140とを備える。不審者検知部150は、自フェムトセルエリアに正規端末が在圏する場合、あるいは、前記ハンドオーバが成功した場合、正規ユーザの進入であると判定する。また、不審者検知部150は、前記ハンドオーバが失敗した場合、あるいは、正規端末がマクロセルエリア内に在圏しない場合、不審者の侵入であると検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局、不審者侵入検知システム及び不審者侵入検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭又はオフィスなどの建物内において、セル半径が数十メートル以下の狭小セル(フェムトセル:Femto Cell)をカバー範囲とする無線通信基地局装置(フェムトセル基地局、又はHome Node−B等と称される。以下、「フェムトセル基地局」又は「HNB」と記す。)の設置が検討されている。
【0003】
3GPP(3rd Generation Partnership Project)LTE(Long term evolution)で検討されているフェムトセル基地局は、例えば、家庭に設置された場合、その家の家族だけにアクセスを制限するなどのように、限られたグループメンバーにだけアクセスを許可することが検討されている。このようなセルはアクセス限定セル(CSG cell: Closed Service Group cell)と呼ばれることもある。
【0004】
また、アクセスが許可された携帯端末であるUE(User Equipment)は、フェムトセル基地局に優先的に接続する。すなわち、UEがフェムトセル基地局のエリアに入った場合、フェムトセル基地局よりもセル半径が大きい既存の基地局(以下、「マクロセル」又は「マクロ基地局」と記す。)の電波を受信できたとしても、優先的に小セル無線通信基地局装置に接続する。
【0005】
現在、移動体通信システムではセル半径が狭い(半径数メートル〜数十メートルの)小型基地局(フェムトセル)が開発されており、各住居に設置されることを想定されている。そして、そのメリットを活用して移動体通信サービス(音声通話やデータ通信等)の他にホームセキュリティに用いることも検討されている。
【0006】
特許文献1には、建造物のセキュリティのために携帯電話端末と小型の基地局(フェムトセル)を用いる基地局及び移動機が記載されている。特許文献1記載の基地局及び移動機は、ドアや窓に設置しているスイッチやフェムトセル基地局の登録者情報などから不審者の侵入を検知した場合、フェムトセル基地局に登録している所定の相手先に警告メッセージを送信する。
【0007】
図1は、特許文献1記載の基地局及び移動機を用いたセキュリティシステムの構成を示す図である。
【0008】
図1に示すように、セキュリティシステムは、建造物10内に、ドア11に設置された開錠センサ12と、開錠センサ12に接続されたフェムトセル基地局13とを備える。開錠センサ12は、近距離無線通信を用いて人体等の通過を検知する監視機器である。
【0009】
フェムトセル基地局13は、ネットワーク14を介してサーバ15に接続される。フェムトセル基地局13は、フェムトセル基地局エリア内で登録した移動機16と無線通信を行う。移動機16は、例えば携帯電話機である。
【0010】
このセキュリティシステムでは、ドア11が開かれた際、開錠センサ12は人体通信等の近距離無線通信を用いて移動機16にフェムトセル基地局13のIDを伝える。移動機16は、開錠センサ12から受信したIDに対応するフェムトセル基地局13に対して位置登録を試みる。
【0011】
位置登録が成功し、かつ移動機16のIDがフェムトセル基地局13に予め登録されているIDと一致した場合、正常な進入であると判定する。位置登録が失敗の場合、又は移動機16のIDがフェムトセル基地局13に予め登録されているIDと一致しない場合、不審者による侵入であると判定する。
【0012】
このように、建造物10に開錠センサ12とフェムトセル基地局13を設置し、開錠時等にフェムトセル基地局13によって移動機16情報を読み取る。移動機16情報を読み取れない場合、又は、読み取った移動機16情報と登録された情報が一致しない場合、ネットワーク14を介して所定の相手先であるサーバ15へ通報する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−206716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、このような従来のセキュリティシステムでは、以下の課題がある。
【0015】
図1において、移動機16がフェムトセル基地局13と通信可能な範囲にあり、かつ周辺に存在するマクロ基地局(図示略)に在圏し、フェムトセル基地局13に在圏していないケースを考える。例えば、移動機16の所有者が帰宅直後であり、フェムトセル基地局13と通信可能な範囲に入ってきた直後がこのケースとして考えられる。
【0016】
このようなケースにおいては、移動機16はフェムトセル基地局13の信号を受信していない。このため、開錠センサ12が進入を検知したとしても移動機16が検知されず、不審者の進入として判定されてしまう。
【0017】
また、移動機16及びセンサ部が人体通信インタフェースを備えることにより、センサ部と移動機16との通信を契機としたフェムトセル基地局への位置登録が行われる。ところが、これを実現するためには移動機16に、携帯電話機としての本来の通信機能とは別の、例えば人体通信やFelica等のインタフェースを備える必要がある。このため、移動機16に上記インタフェースを追加しない場合と比べて製造コストが高くなるといった課題がある。
【0018】
本発明の目的は、正規の進入か不審者による侵入かを正確に検知することができる基地局、不審者侵入検知システム及び不審者侵入検知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の基地局は、第1セルの基地局と、前記第1セル内に存在し、前記第1セルよりセル半径が小さい第2セルの基地局と、を備える移動通信システムで使用される前記第2セルの基地局であって、セキュリティエリアへの進入を検知するセキュリティセンサからの検知信号を受信する検知手段と、前記セキュリティセンサからの検知信号を受信した場合、自セルに登録された無線通信端末が在圏するか否かを確認する確認手段と、自セルに登録された無線通信端末が在圏しない場合、前記第1セルの基地局に前記無線通信端末の在圏を要求する要求手段と、を備える構成を採る。
【0020】
本発明の不審者侵入検知システムは、第1セルの基地局と、前記第1セル内に存在し、前記第1セルよりセル半径が小さい第2セルの基地局と、を備える不審者侵入検知システムであって、前記第2セルの基地局は、セキュリティエリアへの進入を検知するセキュリティセンサからの検知信号を受信する検知手段と、前記セキュリティセンサからの検知信号を受信した場合、自セルに登録された無線通信端末が在圏することを確認する確認手段と、自セルに登録された無線通信端末が在圏しない場合、前記第1セルの基地局に前記無線通信端末の在圏を要求する要求手段と、前記第1セルの基地局から前記無線通信端末が在圏する応答を受信した場合、前記第1セルの基地局に、自基地局へのハンドオーバを要求するハンドオーバ要求手段と、前記ハンドオーバが成功した場合、正規ユーザの進入であると判定する判定手段と、を備え、前記第1セルの基地局は、前記第2セルの基地局からの在圏確認要求に対する在圏確認応答を送信する自セル内在圏確認手段と、前記第2セルの基地局からの前記ハンドオーバを要求に対するハンドオーバを指示するハンドオーバ指示手段と、を備える構成を採る。
【0021】
本発明の不審者侵入検知方法は、第1セルの基地局と、前記第1セル内に存在し、前記第1セルよりセル半径が小さい第2セルの基地局と、を備える不審者侵入検知システムに用いられる不審者侵入検知方法であって、前記第2セルの基地局において、セキュリティエリアへの進入を検知するセキュリティセンサからの検知信号を受信するステップと、前記セキュリティセンサからの検知信号を受信した場合、自セルに登録された無線通信端末が在圏することを確認するステップと、自セルに登録された無線通信端末が在圏しない場合、前記第1セルの基地局に前記無線通信端末の在圏を要求するステップと、前記第1セルの基地局から前記無線通信端末が在圏する応答を受信した場合、前記第1セルの基地局に、自基地局へのハンドオーバを要求するステップと、前記ハンドオーバが成功した場合、正規ユーザの進入であると判定するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、正規端末がフェムトセル基地局と通信可能な範囲にありながら周辺に存在するマクロセル基地局に在圏している場合においても、正規の進入か不審者による侵入かを正確に検知することができる。
【0023】
また、無線通信端末に追加のインタフェース装置を必要とすることなく、かつ、フェムトセル基地局に特別な機器を設置することなくセキュリティシステムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の基地局及び移動機を用いたセキュリティシステムの構成を示す図
【図2】本発明の実施の形態に係るフェムトセル基地局の構成を示すブロック図
【図3】上記実施の形態に係る不審者侵入検知システムの構成を示す図
【図4】上記実施の形態に係るフェムトセル基地局の動作を示すフロー図
【図5】上記実施の形態に係る不審者侵入検知システムのセキュリティセンサ、フェムトセル基地局、携帯端末、マクロセル基地局、及びサーバの制御シーケンス図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
(実施の形態)
図2は、本発明の一実施の形態に係るフェムトセル基地局の構成を示すブロック図である。図2においては、セキュリティシステムである不審者侵入検知システムに直接関係しない機能ブロックの記載は省略されている。
【0027】
本実施の形態は、フェムトセル基地局をセキュリティに利用したセキュリティシステムに適用した例である。
【0028】
図1に示すように、セキュリティシステムは、セキュリティセンサ101と、フェムトセル基地局100と、マクロセル基地局200と、携帯端末300とを備える。
【0029】
セキュリティセンサ101は、セキュリティエリアへの進入を検知する開錠センサ、点灯センサ、ピッキング検知器などの各種屋内セキュリティセンサである。
【0030】
フェムトセル基地局100は、進入検知部110、正規ユーザ自エリア内在圏確認部120、正規ユーザ在圏確認要求部130、ハンドオーバ(HO:handover)要求部140、及び不審者検知部150を備える。
【0031】
進入検知部110は、セキュリティセンサ101からの進入検知信号を受信する。
【0032】
正規ユーザ自エリア内在圏確認部120は、セキュリティセンサ101からの検知信号を受信した場合、自エリアに登録された無線通信端末(正規端末)が在圏することを確認する。正規端末とは、該当フェムトセル基地局を使用可能な携帯端末である。
【0033】
正規ユーザ在圏確認要求部130は、正規端末が自フェムトセルエリアに在圏しない場合、近隣マクロセル基地局に携帯端末300の在圏確認を要求する。
【0034】
ハンドオーバ要求部140は、正規端末が近隣マクロセル基地局のエリア内に在圏である場合、マクロセル基地局200に、自フェムトセル基地局100へのハンドオーバを要求する。
【0035】
不審者検知部150は、自フェムトセルエリアに正規端末が在圏する場合、あるいは、前記ハンドオーバが成功した場合、正規ユーザの進入であると判定する。また、不審者検知部150は、前記ハンドオーバが失敗した場合、あるいは、正規端末がマクロセルエリア内に在圏しない場合、不審者の侵入であると検知する。
【0036】
マクロセル基地局200は、正規ユーザ自エリア内在圏確認部210、及びハンドオーバ指示部220を備える。
【0037】
正規ユーザ自エリア内在圏確認部210は、自マクロセルエリア内に、フェムトセル基地局100からの在圏確認要求を確認し、在圏確認応答を送信する。
【0038】
ハンドオーバ指示部220は、フェムトセル基地局100から要求された携帯端末300をフェムトセル基地局100へハンドオーバさせる。
【0039】
携帯端末300は、マクロセル基地局200からの指示に従い他基地局へハンドオーバする機能を備える。
【0040】
図3は、本発明の実施の形態に係る不審者侵入検知システムの構成を示す図である。
【0041】
図3に示すように、不審者侵入検知システムは、セキュリティエリア102への不審者侵入を判定する。図3では、セキュリティエリア102は、建造物であり、セキュリティセンサ101は、この建造物のドア103に設置された開錠センサである。開錠センサは、近距離無線通信を用いて人体等の通過を検知する。
【0042】
セキュリティエリア102内には、セキュリティセンサ101に接続されたフェムトセル基地局100(図2参照)が設置される。フェムトセル基地局100は、ネットワーク400を介してマクロセル基地局200及びサーバ410に接続される。フェムトセル基地局100は、フェムトセル基地局エリア内で登録した携帯端末300と無線通信を行う。携帯端末300は、例えば携帯電話機などの移動機である。
【0043】
セキュリティエリア102には、フェムトセル基地局100、及びセキュリティエリア102への進入を検知するためのセキュリティセンサ101が設置されている。
【0044】
セキュリティセンサ101は、フェムトセル基地局100に接続されており、進入検知情報をフェムトセル基地局100へ送信する。
【0045】
サーバ410は、キャリア網及びインターネット網によるネットワーク400を介してフェムトセル基地局100及びマクロセル基地局200に接続されている。フェムトセル基地局100、マクロセル基地局200、及びサーバ410は、ネットワーク400を介して互いにデータを送受信できる。
【0046】
携帯端末300は、フェムトセル基地局100及びマクロセル基地局200とセルラ方式による無線のネットワーク400を形成している。携帯端末300は、フェムトセル基地局100及びマクロセル基地局200の間をハンドオーバすることができる。また、携帯端末300は、例えば電話番号のような携帯端末情報を用いてセキュリティエリア102に進入可能な端末としてフェムトセル基地局100乃至サーバ410に登録されている。
【0047】
なお、セキュリティエリア102に進入可能な携帯端末とフェムトセル基地局100に位置登録可能な携帯端末の定義は同じとしてもよいし、前者の携帯端末を後者の携帯端末の上位のセキュリティレベルにある端末として定義してもよい。
【0048】
以下、上述のように構成された不審者侵入検知システムの動作について説明する。
【0049】
まず、セキュリティセンサ101が進入を検知した際のフェムトセル基地局100の動作を説明する。
【0050】
図4は、フェムトセル基地局100の動作を示すフローチャートである。
【0051】
フェムトセル基地局100が進入検知情報を受信すると、本フローがスタートする。具体的には、進入検知部110が、セキュリティセンサ101からの進入検知信号を受信すると、ステップS1では、正規ユーザ自エリア内在圏確認部120は、登録された携帯端末300が在圏であるか否かを判別する。登録された携帯端末300が在圏である場合は、登録された携帯端末300がフェムトセルエリアに在圏しているので、正規の進入であると判定して本フローを終了する。
【0052】
登録された携帯端末300が在圏でない場合は、ステップS2で、正規ユーザ在圏確認要求部130は、在圏確認要求を送信する。
【0053】
ステップS3では、正規ユーザ在圏確認要求部130は、一定時間内に応答があるか否かを判別する。
【0054】
一定時間内に応答がある場合、ステップS4で、正規ユーザ自エリア内在圏確認部120は、登録された携帯端末300がマクロセル基地局200に在圏であるか否かを判別する。
【0055】
登録された携帯端末300がマクロセル基地局200に在圏である場合は、ステップS5で、ハンドオーバ要求部140は、フェムトセル基地局100へのハンドオーバ要求を送信する。
【0056】
ステップS6では、正規ユーザ自エリア内在圏確認部120は、携帯端末300との同期処理を行い、ステップS7で携帯端末300の位置登録を行う。
【0057】
ステップS8では、ハンドオーバ要求部140は、ハンドオーバ成功か否かを判別する。
【0058】
ハンドオーバ成功の場合は、ステップS8で、ハンドオーバ要求部140は、ハンドオーバした携帯端末300は登録された携帯端末300であるか否かを判別する。
【0059】
ハンドオーバした携帯端末300が登録されている場合、正規の進入であると判定する。
【0060】
上述したように、フェムトセル基地局100が進入検知情報を受信した場合に、正規の進入であると判定するケースは、以下の2ケース(1)(2)がある。
【0061】
すなわち、(1)登録された携帯端末300がフェムトセルエリアに在圏している場合(ステップS1の「在圏である」)である。また、(2)登録された携帯端末300がフェムトセルエリアに在圏していない場合(ステップS1の「在圏でない」)であっても、マクロセル基地局200には在圏しており、かつ、ハンドオーバ要求部140が、フェムトセル基地局100へハンドオーバを要求し、登録された携帯端末300がハンドオーバに成功した場合(ステップS2乃至ステップS9の「登録されている」)である。
【0062】
一方、上記ステップS3で一定時間内に応答がない場合、上記ステップS4で登録された携帯端末300がマクロセル基地局に在圏でない場合、上記ステップS8でハンドオーバが失敗した場合、あるいは上記ステップS9でハンドオーバした携帯端末300が登録されていない場合、不審者による侵入であると判定して本フローを終了する。
【0063】
上述したように、フェムトセル基地局100が進入検知情報を受信した場合に、不審者による侵入であると判定するケースは、以下の2ケース(3)(4)がある。
【0064】
すなわち、(3)登録された携帯端末300がフェムトセルエリアに在圏していない場合(ステップS1の「在圏でない」)で、マクロセル基地局200には在圏しているものの、ハンドオーバ失敗の場合(ステップS8の「失敗」)か、ハンドオーバに成功しても携帯端末300が登録されていない場合(ステップS9の「登録されていない」)である。また、(4)登録された携帯端末300がマクロセルエリアに非在圏の場合(ステップS3の「応答なし」又はステップS4の「在圏でない」)である。
【0065】
このように、本セキュリティシステムは、フェムトセル基地局100⇔携帯端末300⇔マクロセル基地局200の在圏の関係として考えられる、上記4ケース(1)(2)(3)(4)全てに対し、不審者検知を正しく行うことができる。
【0066】
基本的な判定についてまとめると、下記の通りである。
【0067】
まず、登録された携帯端末300(正規端末)が既に圏内にあり、位置登録されているかどうかをチェックする。登録された携帯端末300が既に圏内にある場合は、その携帯端末300の所有者による進入と考えられるため、正規の進入であると判定する。
【0068】
登録された携帯端末300が圏内に居ない場合、登録された携帯端末300がフェムトセル基地局100との通信可能範囲内に進入した直後である可能性が考えられる。そこで、フェムトセル基地局100は、ネットワーク400(図3)を通じて登録された携帯端末300の在圏確認要求を送信し、登録された携帯端末300がマクロセル基地局200の圏内であるかどうかネットワーク400を通じてサーバ410に問い合わせる。
【0069】
なお、フェムトセル基地局100がマクロセル基地局200と直接通信できる通信システムである場合は、前記問い合わせはマクロセル基地局200へ直接行ってもよい。また、フェムトセル基地局100は、前記問い合わせの対象をフェムトセル基地局100周辺のマクロセル基地局200に限定してもよいし、全てのマクロセル基地局200としてもよい。
【0070】
在圏確認要求に対し一定時間内に応答を受信しなかった場合、又は在圏確認要求に対する応答にて登録された携帯端末300がマクロセル基地局200にも在圏でなかった場合、登録された携帯端末300の所有者ではない者の進入である可能性が高いため、フェムトセル基地局100は不審者による侵入であると判定する。
【0071】
ここで、フェムトセル基地局100が不審者による侵入と判定した後の動作に関しては、登録された携帯端末300へ通報する、警備会社へ通報する、ライトをつける、アラームを鳴らす、等が考えられる。
【0072】
在圏確認要求に対する応答により、登録された携帯端末300がマクロセル基地局200に在圏であると判明した場合、フェムトセル基地局100は、登録された携帯端末300のマクロセル基地局200からフェムトセル基地局100へのハンドオーバを試みる。
【0073】
ハンドオーバが成功し、登録された携帯端末300がフェムトセル基地局100の圏内となった場合、正規の進入であると判定する。ハンドオーバが失敗した場合、登録された携帯端末300の所有者ではない者の進入である可能性が高いため、フェムトセル基地局100は不審者による侵入であると判定する。
【0074】
以下にハンドオーバ処理の一例を挙げる。
【0075】
まず、フェムトセル基地局100は、サーバ410を通じマクロセル基地局200へハンドオーバ要求を送信する。ハンドオーバ要求を受信したマクロセル基地局200は、指定された携帯端末300、つまり登録された携帯端末300に対しフェムトセル基地局100へのハンドオーバ指示を送信する。
【0076】
ハンドオーバ指示を受信した携帯端末300は、フェムトセル基地局100の同期信号及び報知情報の受信と同期を試みる。その後、登録された携帯端末300がフェムトセル基地局100へ同期し位置登録要求を送信するのを待つ。位置登録が一定時間内に成功した場合、フェムトセル基地局100は、ハンドオーバ成功と判定してハンドオーバ元のマクロセル基地局200へハンドオーバ成功を通知する。
【0077】
なお、ハンドオーバは、セルラ方式による移動通信システムの基本的な機能の一つである。また、ハンドオーバの具体的な手順は、必ずしも前記の方法に限定されない。
【0078】
次に、進入検知情報受信時に関し、フェムトセル基地局100だけでなく、セキュリティセンサ101、携帯端末300、マクロセル基地局200、サーバ410を含めた動作を図5に示す制御シーケンス図を用いて説明する。
【0079】
図5は、セキュリティセンサ101、フェムトセル基地局100、携帯端末300、マクロセル基地局200、及びサーバ410の制御シーケンスを示す図である。
【0080】
まず、携帯端末300がフェムトセル基地局100に在圏である場合における各装置の動作について説明する。
【0081】
携帯端末300は、セキュリティセンサ101が進入検知情報をフェムトセル基地局100に送信する前に、フェムトセル基地局100が送信する報知情報を受信する(図5a.参照)。携帯端末300は、フェムトセル基地局100への位置登録要求を行う(図5b.参照)。フェムトセル基地局100は、登録された携帯端末300による要求である場合、在圏登録を実施する(図5c.参照)。フェムトセル基地局100に位置登録されることになる。
【0082】
フェムトセル基地局100がセキュリティセンサ101からの進入検知情報を受信すると(図5d.参照)、フェムトセル基地局100は、登録された携帯端末300が自局の圏内に存在するため、登録された携帯端末300の所有者による正規の進入であると判定する(図5e.参照)。
【0083】
次に、携帯端末300がフェムトセル基地局100に在圏ではなく、マクロセル基地局200に在圏である場合の各装置の動作について説明する。
【0084】
携帯端末300は、セキュリティセンサ101が進入検知情報をフェムトセル基地局100に送信する前に、マクロセル基地局200が送信する報知情報を受信する(図5f.参照)。携帯端末300は、マクロセル基地局200への位置登録要求を行う(図5g.参照)。携帯端末300は、マクロセル基地局200に位置登録されることになる。
【0085】
この場合において、フェムトセル基地局100がセキュリティセンサ101からの進入検知情報を受信すると(図5h.参照)、フェムトセル基地局100は、自局内に登録された携帯端末300が存在しないため、サーバ410に在圏確認要求を送信し、登録された携帯端末300がマクロセル基地局200に在圏しているかどうか問い合わせる(図5i.参照)。
【0086】
サーバ410は、マクロセル基地局200に在圏確認要求を送信し、登録された携帯端末300がマクロセル基地局200に在圏しているかどうか問い合わせる(図5j.参照)。
【0087】
マクロセル基地局200は、フェムトセル基地局100に登録された携帯端末300が在圏であるため、マクロセル基地局200は在圏であるとの応答をサーバ410に返し(図5k.参照)、同様にサーバ410はフェムトセル基地局100に在圏であるとの応答を返す(図5l.参照)。
【0088】
フェムトセル基地局100は、前記応答を受信後にハンドオーバ先をフェムトセル基地局100としてハンドオーバ要求をサーバ410に送信する(図5m.参照)。サーバ410は、マクロセル基地局200にハンドオーバ要求を送信し(図5n.参照)、マクロセル基地局200は、携帯端末300にフェムトセル基地局100へのハンドオーバ指示を送信する(図5o.参照)。
【0089】
携帯端末300は、ハンドオーバ指示を受信すると、フェムトセル基地局100への同期と報知情報の受信を試み(図5p.参照)、報知情報の受信が成功すればフェムトセル基地局100へ位置登録要求を送信する(図5q.参照)。
【0090】
フェムトセル基地局100は、携帯端末300からの位置登録要求を受信すると、登録された携帯端末300による要求である場合、在圏登録を実施する(図5r.参照)。具体的には、フェムトセル基地局100は、携帯端末300からの位置登録要求を受信すると、位置登録要求に含まれる携帯端末300情報がハンドオーバ要求を送信した際に指定した携帯端末300情報、つまりフェムトセル基地局100に登録された携帯端末300情報と合致するかを判定する。フェムトセル基地局100は、合致した場合は位置登録処理を行い、サーバ410へのハンドオーバ応答としてハンドオーバ成功を送信する(図5s.参照)。
【0091】
ハンドオーバが成功した場合、登録された携帯端末300がフェムトセル基地局100に在圏することとなるため、フェムトセル基地局100は登録された携帯端末300の所有者による正規の進入であると判定する(図5t.参照)。
【0092】
ハンドオーバが失敗の場合(図5u.v.参照)、フェムトセル基地局100は不審者による侵入であると判定する(図5w.参照)。ハンドオーバ失敗の原因としては、例えば携帯端末300が一定時間内のフェムトセル基地局100の報知情報を取得できない、携帯端末300が送信する位置登録要求に含まれる携帯端末300情報がフェムトセル基地局100に含まれたものと一致しない、等が考えられる。
【0093】
最後に、携帯端末300がフェムトセル基地局100にもマクロセル基地局200にも在圏でない場合の動作について説明する。
【0094】
この場合、フェムトセル基地局100及びマクロセル基地局200に対して携帯端末300の位置登録要求は行われていない。この状態において、フェムトセル基地局100がセキュリティセンサ101からの進入検知信号を受信すると、フェムトセル基地局100はサーバ410に在圏確認要求を送信し、登録された携帯端末300がマクロセル基地局200に在圏しているかどうか問い合わせ、サーバ410はマクロセル基地局200に在圏確認要求を送信する。
【0095】
その後、マクロセル基地局200は非在圏の応答をサーバ410に返し、サーバ410は同様に非在圏の応答をフェムトセル基地局100に送信する。フェムトセル基地局100は不審者による侵入であると判定する(図5x.参照)。
【0096】
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、フェムトセル基地局100は、セキュリティセンサ101からの検知信号を受信した場合、自エリアに登録された無線通信端末(正規端末)が在圏することを確認する正規ユーザ自エリア内在圏確認部120を備える。また、フェムトセル基地局100は、正規端末が自フェムトセルエリアに在圏しない場合、近隣マクロセル基地局に携帯端末300の在圏確認を要求する正規ユーザ在圏確認要求部130と、正規端末が近隣マクロセル基地局のエリア内に在圏である場合、マクロセル基地局200に、自フェムトセル基地局100へのハンドオーバを要求するハンドオーバ要求部140とを備える。不審者検知部150は、自フェムトセルエリアに正規端末が在圏する場合、あるいは、前記ハンドオーバが成功した場合、正規ユーザの進入であると判定する。また、不審者検知部150は、前記ハンドオーバが失敗した場合、あるいは、正規端末がマクロセルエリア内に在圏しない場合、不審者の侵入であると検知する。
【0097】
フェムトセル基地局100は、ドア開閉等を検知した際に自エリア内に正規端末が在圏でない場合、正規端末へ自エリア内にハンドオーバするよう指示し、ハンドオーバ失敗の場合に不審者侵入と判定する。ハンドオーバを用いることで、マクロセル在圏の時もフェムトセル在圏を促すことができ、不審者侵入を誤判定してしまうことがない。また、ハンドオーバを用いることで、不審者侵入検知の精度を高めることができるだけでなく、帰宅時に迅速にフェムトセル基地局100へハンドオーバができる。
【0098】
このように、セルラ方式による移動通信システムの基本的な機能であるハンドオーバを用いることで、携帯端末300がフェムトセル基地局100ではなくマクロセル基地局200に在圏の場合においても携帯端末300がフェムトセル基地局100の付近にいるかどうかを判別することができる。すなわち、正規端末がフェムトセル基地局100と通信可能な範囲にありながら周辺に存在するマクロセル基地局200に在圏している場合においても、正規の進入か不審者による侵入かを正確に検知することができる。
【0099】
また、セキュリティエリア102にフェムトセル基地局100とセキュリティセンサ101以外の特別な機器を設置することなくセキュリティシステムを構築できる。特に、携帯端末300に追加のインタフェース装置を必要としない。
【0100】
さらに、セキュリティセンサ101の進入検知を契機としてフェムトセル基地局100へのハンドオーバを行うことができるため、フェムトセル基地局100と携帯端末300が通信することにより実現できるサービス、例えば家電コントロールサービス等の開始を、携帯端末300の所有者の特別な操作無しで行うことができる。
【0101】
以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されることはない。
【0102】
例えば、上記実施の形態では、基地局がフェムトセル基地局で説明したが、基地局はピコセルやマイクロセル、IMCS(Inbuilding Mobile Communication System)等であっても構わない。
【0103】
上記実施の形態では、フェムトセル基地局、無線通信端末、不審者侵入検知システム及び不審者侵入検知方法という名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、装置はフェムトセル基地局,セキュリティシステム、方法はセキュリティ方法等であってもよい。
【0104】
さらに、上記フェムトセル基地局及びマクロセル基地局を構成する各構成部、例えば送受信部の種類などは前述した実施の形態に限られない。
【0105】
上記実施の形態では、本発明をハードウェアで構成する場合を例にとって説明したが、本発明はソフトウェアで実現することも可能である。
【0106】
また、上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0107】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0108】
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。例えば、バイオ技術の適用等が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の基地局、不審者侵入検知システム及び不審者侵入検知方法は、フェムトセル基地局をセキュリティに利用したセキュリティシステム、フェムトセルシステム等の用途に有用である。
【符号の説明】
【0110】
100 フェムトセル基地局
101 セキュリティセンサ
102 セキュリティエリア
110 進入検知部
120 正規ユーザ自エリア内在圏確認部
130 正規ユーザ在圏確認要求部
140 ハンドオーバ要求部
150 不審者検知部
200 マクロセル基地局
210 正規ユーザ自エリア内在圏確認部
220 ハンドオーバ指示部
300 携帯端末
400 ネットワーク
410 サーバ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1セルの基地局と、前記第1セル内に存在し、前記第1セルよりセル半径が小さい第2セルの基地局と、を備える移動通信システムで使用される前記第2セルの基地局であって、
セキュリティエリアへの進入を検知するセキュリティセンサからの検知信号を受信する検知手段と、
前記セキュリティセンサからの検知信号を受信した場合、自セルに登録された無線通信端末が在圏するか否かを確認する確認手段と、
自セルに登録された無線通信端末が在圏しない場合、前記第1セルの基地局に前記無線通信端末の在圏を要求する要求手段と、
を備える基地局。
【請求項2】
前記第2セルの基地局は、
前記第1セルの基地局から前記無線通信端末が在圏する応答を受信した場合、
前記第1セルの基地局に、自基地局へのハンドオーバを要求するハンドオーバ要求手段と、
前記ハンドオーバが成功した場合、正規ユーザの進入であると判定する判定手段と、
を備える請求項1記載の基地局。
【請求項3】
前記判定手段は、
前記ハンドオーバが失敗した場合、不審者の侵入であると判定する、請求項2記載の基地局。
【請求項4】
前記判定手段は、
前記第1セルの基地局から前記無線通信端末が在圏する応答を受信しない場合、不審者の侵入であると判定する、請求項2記載の基地局。
【請求項5】
前記判定手段は、
自セルに登録された無線通信端末が在圏する場合、正規ユーザの進入であると判定する、請求項2記載の基地局。
【請求項6】
前記第1セルの基地局は、
前記第2セルの基地局からの在圏確認要求に対する在圏確認応答を送信する自セル内在圏確認手段を備える、請求項1記載の基地局。
【請求項7】
前記第1セルの基地局は、
前記第2セルの基地局からの前記ハンドオーバを要求に対するハンドオーバを指示するハンドオーバ指示手段を備える、請求項2記載の基地局。
【請求項8】
第1セルの基地局と、前記第1セル内に存在し、前記第1セルよりセル半径が小さい第2セルの基地局と、を備える不審者侵入検知システムであって、
前記第2セルの基地局は、
セキュリティエリアへの進入を検知するセキュリティセンサからの検知信号を受信する検知手段と、
前記セキュリティセンサからの検知信号を受信した場合、自セルに登録された無線通信端末が在圏することを確認する確認手段と、
自セルに登録された無線通信端末が在圏しない場合、前記第1セルの基地局に前記無線通信端末の在圏を要求する要求手段と、
前記第1セルの基地局から前記無線通信端末が在圏する応答を受信した場合、前記第1セルの基地局に、自基地局へのハンドオーバを要求するハンドオーバ要求手段と、
前記ハンドオーバが成功した場合、正規ユーザの進入であると判定する判定手段と、を備え、
前記第1セルの基地局は、
前記第2セルの基地局からの在圏確認要求に対する在圏確認応答を送信する自セル内在圏確認手段と、
前記第2セルの基地局からの前記ハンドオーバを要求に対するハンドオーバを指示するハンドオーバ指示手段と、
を備える不審者侵入検知システム。
【請求項9】
第1セルの基地局と、前記第1セル内に存在し、前記第1セルよりセル半径が小さい第2セルの基地局と、を備える不審者侵入検知システムに用いられる不審者侵入検知方法であって、
前記第2セルの基地局において、
セキュリティエリアへの進入を検知するセキュリティセンサからの検知信号を受信するステップと、
前記セキュリティセンサからの検知信号を受信した場合、自セルに登録された無線通信端末が在圏することを確認するステップと、
自セルに登録された無線通信端末が在圏しない場合、前記第1セルの基地局に前記無線通信端末の在圏を要求するステップと、
前記第1セルの基地局から前記無線通信端末が在圏する応答を受信した場合、前記第1セルの基地局に、自基地局へのハンドオーバを要求するステップと、
前記ハンドオーバが成功した場合、正規ユーザの進入であると判定するステップと、
を有する不審者侵入検知方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−39364(P2012−39364A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177472(P2010−177472)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】