基地局装置、移動局装置及びアンテナのチルト角の制御方法
【課題】隣接セル間における下りリンク及び上りリンクのセル境界の差を低減する。
【解決手段】基地局装置10−1は、下りリンクにおける無線信号を送信するための第1アンテナ11と、上りリンクにおける無線信号を受信するための第2アンテナ12と、第1アンテナ11あるいは第2アンテナ12のチルト角を制御するチルト角制御部15を備える。チルト角制御部15は、基地局装置10−1に関する下りリンクでの通信品質及び上りリンクでの通信品質と、隣接基地局装置10−2に関する下りリンクでの通信品質及び上りリンクでの通信品質とに基づいて、基地局装置10−1及び隣接基地局装置10−2の間における下りリンクのセル境界と上りリンクのセル境界との差を低減するように、チルト角を制御する。
【解決手段】基地局装置10−1は、下りリンクにおける無線信号を送信するための第1アンテナ11と、上りリンクにおける無線信号を受信するための第2アンテナ12と、第1アンテナ11あるいは第2アンテナ12のチルト角を制御するチルト角制御部15を備える。チルト角制御部15は、基地局装置10−1に関する下りリンクでの通信品質及び上りリンクでの通信品質と、隣接基地局装置10−2に関する下りリンクでの通信品質及び上りリンクでの通信品質とに基づいて、基地局装置10−1及び隣接基地局装置10−2の間における下りリンクのセル境界と上りリンクのセル境界との差を低減するように、チルト角を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で論じられる実施態様は、無線通信システムにおける基地局装置及び移動局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイルセルラーネットワークでは、地理的な通信可能エリアは多くのセルに分割され、これらのセルの各々は一つの基地局との接続を行なう。移動局の電源が投入されると、移動局は交信先の基地局をサーチする。セルサーチ機能は多くの場合、周期的に送信されるセル固有基準信号か、または、プリアンブルに基づいて行なわれる。簡易な方法では、各基準信号を検出し、次に最良の基地局を求めようとすることにより、サーチを網羅的に行なう。
【0003】
なお、より小さなマイクロセルを含むマクロセルを包含する移動体通信システムにおいて利用される方法が提案されている。この方法は、アップリンク通信セル境界を、マクロセルとマイクロセルとの間で確立する工程と、ダウンリンク通信セル境界を、マクロセルとマイクロセルとの間で、アップリンク通信セル境界とは異なるように確立する工程と、を備える。アップリンク通信セル境界は、ダウンリンク通信セル境界よりも広くなるように確立される。ダウンリンク通信セル境界は、ブロードキャスト信号を送信するマイクロセルに関連づけられた基地局のダウンリンク・アンテナ・ビームを傾斜させて、ブロードキャスト信号のカバーエリアを縮小させることにより確立される。
【0004】
また、同一の通信領域をカバーするための複数本のチルトビームアンテナと、チルトビームアンテナのうち少なくとも1本のチルトビームアンテナのチルト角を他のチルトビームアンテナのチルト角と異なるように変化させるビームチルト角制御手段と、から構成される基地局が提案されている。この基地局は、上り回線では、少なくとも2本のチルトビームアンテナを用いて受信したレベルをレイク合成し、下り回線では、受信レベルが高い方の少なくとも1本のチルトビームアンテナを用いて送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−141741号公報
【特許文献2】特表2007−514367号公報
【特許文献3】特開2007−28091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上りリンクと下りリンクとの間で、移動局装置にとって接続先として好ましいセルが異なることがある。このような状態を「上下非対称状態」と呼ぶことがある。
【0007】
上下非対称状態は、例えば、隣接するセルにそれぞれ配置される基地局装置の送信電力が異なる場合に発生することがある。いま、隣接する2つのセルにそれぞれ送信電力が異なる基地局装置が配置されており、送信電力が比較的大きな基地局装置よりも送信電力が比較的小さな基地局装置の方にやや近い位置に、移動局装置が位置する場合を想定する。このような場合、下りリンクに関しては、送信電力が比較的小さな基地局装置よりも送信電力が比較的大きな基地局装置から受信する受信電力の方が大きいため、移動局装置にとっては送信電力が比較的大きな基地局装置に接続される方が好ましい。
【0008】
一方で上りリンクに関しては、移動局装置により近い、送信電力が比較的小さな基地局装置の方が、送信電力が比較的大きな基地局装置よりも受信電力が大きくなる。このため、移動局装置にとっては送信電力が比較的小さな基地局装置に接続される方が好ましい。
【0009】
上下非対称状態が発生すると、接続セルで受信される上りリンクの受信電力よりも他セルで受信される干渉電力の方が大きくなるため、上りリンクにおける通信品質の劣化を招く恐れがある。実施態様に係る装置及び方法は、隣接セル間における下りリンク及び上りリンクのセル境界の差を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施態様による基地局装置は、下りリンクにおける無線信号を送信するための第1アンテナと、上りリンクにおける無線信号を受信するための第2アンテナと、第1アンテナあるいは第2アンテナのチルト角を制御するチルト角制御部を備える。チルト角制御部は、基地局装置に関する下りリンクでの通信品質及び上りリンクでの通信品質と、隣接基地局装置に関する下りリンクでの通信品質及び上りリンクでの通信品質とに基づいて、基地局装置及び隣接基地局装置の間における下りリンクのセル境界と及び上りリンクのセル境界との差を低減するように、第1アンテナあるいは第2アンテナのチルト角を制御する。
【発明の効果】
【0011】
本件開示の装置又は方法によれば、下りリンクのセル境界と及び上りリンクのセル境界との差が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】基地局装置における実施例の構成図である。
【図2】チルト角の制御方法における実施例の説明図である。
【図3】無線通信システムにおける第1実施例の構成図である。
【図4】図3に示す基地局装置の構成の第1例を示す図である。
【図5】図3に示す通信装置の構成例を示す図である。
【図6】図4に示すチルト角制御部の構成例を示す図である。
【図7】図3に示す無線通信システムにおける送信アンテナのチルト角の制御例の説明図である。
【図8】図3に示す基地局装置の構成の第2例を示す図である。
【図9】無線通信システムにおける第2実施例の構成図である。
【図10】図9に示す通信装置の構成例を示す図である。
【図11】図9に示す基地局装置の構成例を示す図である。
【図12】図9に示す無線通信システムにおける受信アンテナのチルト角の制御例の説明図である。
【図13】無線通信システムにおける第3実施例の構成図である。
【図14】図13に示す基地局装置の構成例を示す図である。
【図15】図13に示す通信装置の構成例を示す図である。
【図16】図13に示す無線通信システムにおける受信アンテナのチルト角の制御例の説明図である。
【図17】無線通信システムにおける第4実施例の構成図である。
【図18】図17に示す移動局装置の構成例を示す図である。
【図19】図17に示す基地局装置の構成例を示す図である。
【図20】図19に示すチルト角制御部の構成例を示す図である。
【図21】対応関係情報の実現例の説明図である。
【図22】図17に示す無線通信システムにおけるアンテナのチルト角の制御例の説明図である。
【図23】無線通信システムにおける第5実施例の構成図である。
【図24】図23に示す移動局装置の構成例を示す図である。
【図25】図23に示す基地局装置の構成例を示す図である。
【図26】図23に示す無線通信システムにおけるアンテナのチルト角の制御例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付する図面を参照して本発明の実施例について説明する。図1は、基地局装置における実施例の構成図である。参照符号10は基地局装置を示し、参照符号11は送信アンテナを示し、参照符号12は受信アンテナを示し、参照符号13及び14はチルト角変更部を示し、参照符号15はチルト角制御部を示す。
【0014】
基地局装置10は、送信アンテナ11と、受信アンテナ12と、チルト角変更部13及び14と、チルト角制御部15とを備える。送信アンテナ11は、基地局装置10から、移動局装置へ送信される下りリンク上の無線信号を送信する。受信アンテナ12は、移動局装置から基地局装置10へ送信される上りリンク上の無線信号を受信する。送信アンテナ11及び受信アンテナ12は、それぞれ特許請求の範囲の第1アンテナ及び第2アンテナの一例として挙げられる。
【0015】
チルト角変更部13及び14は、それぞれ送信アンテナ11及び受信アンテナ12のアンテナ利得パターンの主ビームのチルト角を変更する。ここで「チルト角」とは、送信アンテナ11及び受信アンテナ12のアンテナ利得パターンの主ビームの垂直面内方向と、水平方向との間の角度、すなわち俯角であってよい。説明の簡単のため、送信アンテナ11及び受信アンテナ12のアンテナ利得パターンの主ビームのチルト角を、それぞれ送信アンテナ11及び受信アンテナ12のチルト角と記載することがある。
【0016】
チルト角制御部15は、以下に説明するように、チルト角変更部13及び14の少なくともいずれか一方を制御することによって、送信アンテナ11及び受信アンテナ12の少なくともいずれか一方のチルト角を制御する。
【0017】
図2は、チルト角の制御方法における実施例の説明図である。別な実施の態様においては、下記のオペレーションAA〜ACの各オペレーションはステップであってもよい。オペレーションAAにおいて、基地局装置10と、基地局装置10が配置されるセルに隣接する隣接セルに配置された他の基地局装置のそれぞれに関して、下りリンクでの通信品質が測定される。説明の便宜のため、隣接セルに配置された他の基地局装置を、「隣接基地局装置」と記載することがある。
【0018】
例えば、基地局装置10と隣接基地局装置からそれぞれ送信された無線信号を、移動局装置やその他の通信装置にて受信することにより、これら移動局装置や通信装置が、基地局装置10及び隣接基地局装置に関する下りリンクでの通信品質を測定してよい。
【0019】
オペレーションABにおいて、基地局装置10と隣接基地局装置のそれぞれに関して、上りリンクでの通信品質が測定される。例えば、移動局装置やその他の通信装置から送信された無線信号を、これら基地局装置でそれぞれ受信することにより、これら基地局装置が、それぞれの基地局装置に関する上りリンクでの通信品質を測定してよい。
【0020】
または、例えば、基地局装置10と隣接基地局装置からそれぞれ送信された無線信号を、移動局装置やその他の通信装置にて受信することにより、これら移動局装置や通信装置が、基地局装置10及び隣接基地局装置に関する上りリンクでの通信品質を測定してよい。このとき上りリンクでの通信品質は、例えば、移動局装置や通信装置にて測定された受信電力を、基地局装置10及び隣接基地局装置の既知の送信電力から引いた、伝搬ロスに基づいて定められてもよい。なお、オペレーションAA及びオペレーションABはどちらが先に実行されてもよい。
【0021】
オペレーションACにおいて、チルト角制御部15は、基地局装置10に関する上下リンクでの各通信品質と、隣接基地局装置に関する上下リンクでの各通信品質とに基づき、送信アンテナ11及び受信アンテナ12の少なくともいずれか一方の各チルト角を制御する。このときチルト角制御部15は、基地局装置10が配置されたセルと隣接基地局装置が配置された隣接セルの間における下りリンクのセル境界と、上りリンクのセル境界との差を低減するように、送信アンテナ11及び受信アンテナ12の少なくともいずれか一方の各チルト角を制御する。
【0022】
例えば、下りリンクのセル境界の方が上りリンクのセル境界より基地局装置10から遠いとき、チルト角制御部15は、送信アンテナ11のチルト角を大きくして下りリンクのセルを縮小する。これに加えて又はこれに代えて、チルト角制御部15は、受信アンテナ12のチルト角を小さくして上りリンクのセルを拡大する。また、上りリンクのセル境界の方が下りリンクのセル境界より基地局装置10から遠いとき、チルト角制御部15は、受信アンテナ12のチルト角を大きくして上りリンクのセルを縮小する。これに加えて又はこれに代えて、チルト角制御部15は、送信アンテナ12のチルト角を大きくして下りリンクのセルを拡大する。
【0023】
下りリンクのセル境界及び上りリンクのセル境界のどちらが基地局装置10に近いかは、基地局装置10に関する上下リンクでの各通信品質と、隣接基地局装置に関する上下リンクでの各通信品質とにより判定することができる。
【0024】
例えば、セル境界付近にいる通信装置と、基地局装置10及び隣接基地局装置のそれぞれとの間で下りリンク及び上りリンクの通信品質を測定すれば、上下どちらのセル境界が基地局装置10に近いかが分かる。すなわち、基地局装置10及び隣接基地局装置の間の下りリンクの通信品質の差と、上りリンクの通信品質の差とに基づいて、上下どちらのセル境界が基地局装置10に近いか判定することができる。
【0025】
このため、例えばチルト角制御部15は、所定地点に置かれた通信装置と基地局装置10との間の下りリンクでの通信品質と、この通信装置と隣接基地局装置との間の下りリンクの通信品質との差を低減するように送信アンテナ11のチルト角を制御してよい。また、例えばチルト角制御部15は、所定地点に置かれた通信装置と基地局装置10との間の上りリンクでの通信品質と、この通信装置と隣接基地局装置との間の上りリンクの通信品質との差を低減するように受信アンテナ12のチルト角を制御してよい。
【0026】
また例えば、複数の移動局装置に関して、上下リンクそれぞれにおいて、最も高い通信品質が測定される基地局装置を決定することによって、下りリンクのセル境界及び上りリンクのセル境界のどちらが基地局装置10に近いかを判定することができる。このとき、下りリンクにおいて最も高い通信品質が測定される基地局装置が基地局装置10である移動局装置のグループAと、上りリンクにおいて最も高い通信品質が測定される基地局装置が基地局装置10である移動局装置のグループBとを決定する。
【0027】
グループAに属する移動局装置の方がグループBに属する移動局装置よりも多ければ、上りリンクのセル境界の方が下りリンクのセル境界よりも基地局装置10に近い。グループBに属する移動局装置の方がグループAに属する移動局装置よりも多ければ、下りリンクのセル境界の方が上りリンクのセル境界よりも基地局装置10に近い。このため、例えばチルト角制御部15は、グループAとグループBとの間の不一致を低減するように、送信アンテナ11及び受信アンテナ12の少なくともいずれか一方のチルト角を制御してよい。
【0028】
またハンドオーバが発生した移動局装置が下りリンクのセル境界付近にいるという事実を利用してもよい。すなわち、ハンドオーバが発生した移動局装置と、基地局装置10及び隣接基地局装置との間でそれぞれ上りリンクの通信品質を測定することにより、上下どちらのセル境界が基地局装置10に近いか判定することができる。
【0029】
このため、例えばチルト角制御部15は、ハンドオーバ処理を行う移動局装置と基地局装置10との間の上りリンクでの通信品質と、この移動局装置と隣接基地局装置との間の上りリンクの通信品質との差を低減するようにチルト角を制御する。
【0030】
本実施例によれば、隣接セル間における下りリンク及び上りリンクのセル境界の差を低減するように、送信アンテナ11及び受信アンテナ12の少なくともいずれか一方のチルト角を制御することができる。
【0031】
隣接する2つのセルにそれぞれ送信電力が異なる基地局装置が配置されている場合を想定する。上述の制御によって、送信電力が比較的大きな基地局装置における送信アンテナ11のチルト角は、例えば、受信アンテナ12のチルト角よりも大きくなるように制御されてよい。このように制御されることにより、送信電力が比較的大きな基地局装置が配置されたセルの下りリンクのセル半径が縮小され、上りリンクのセル半径が拡大される。
【0032】
一方で、送信電力が比較的小さな基地局装置における送信アンテナ11のチルト角は、例えば、受信アンテナ12のチルト角よりも小さくなるように制御されてよい。このように制御されることにより、送信電力が比較的小さな基地局装置が配置されたセルの下りリンクのセル半径が拡大され、上りリンクのセル半径が縮小される。
【0033】
続いて、基地局装置を含む無線通信システムにおける実施例を説明する。図3は、無線通信システムにおける第1実施例の構成図である。参照符号10−1は基地局装置を示し、参照符号10−2は隣接基地局装置を示し、参照符号50は通信装置を示す。参照符号51は通信装置50の送信アンテナを示し、参照符号52は通信装置50の受信アンテナを示す。
【0034】
無線通信システム1は、基地局装置10−1と、隣接基地局装置10−2とを含む。本実施例では、基地局装置10−1の送信アンテナ11のチルト角を調整するために、下りリンクのセル境界の目標位置として予め定められた所望のセル境界位置に通信装置50を配置する。例えば、送信アンテナ11及び/又は受信アンテナ12のチルト角の調整前における、下りリンクのセル境界と上りリンクのセル境界の中間位置を、このような目標位置として使用してよい。
【0035】
基地局装置10−1及び隣接基地局装置10−2は、それぞれ下りリンクにおける通信品質測定用の下りリンク用参照信号を通信装置50へ送信する。通信装置50は、上記の所望の目標位置における、基地局装置10−1と通信装置50との間の下りリンクの通信品質と、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の下りリンクの通信品質を測定する。
【0036】
図4は、図3に示す基地局装置10−1の構成の第1例を示す図である。隣接基地局装置10−2も基地局装置10−1と同様の構成を有していてよい。以下の他の実施例においても同様である。参照符号16は、下りリンク用参照信号送信部を示し、参照符号17は下りリンク通信品質取得部を示す。図1に示す構成要素と同様の構成要素には図1で使用した参照符号と同じ参照符号を付する。
【0037】
基地局装置10−1は、送信アンテナ11と、受信アンテナ12と、チルト角変更部13と、チルト角制御部15と、下りリンク用参照信号送信部16と、下りリンク通信品質取得部17を備える。下りリンク用参照信号送信部16は、下りリンク用参照信号を、送信アンテナ11を介して送信する。下りリンク用参照信号は、通信装置50が基地局装置10−1と通信装置50との間の下りリンクの通信品質を測定する際に使用される。
【0038】
下りリンク通信品質取得部17は、通信装置50から送信される、基地局装置10−1と通信装置50との間の下りリンクの通信品質を示す下りリンク通信品質情報を受信する。また、下りリンク通信品質取得部17は、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の下りリンクに関する下りリンク通信品質情報を受信してもよい。
【0039】
図5は、図3に示す通信装置50の構成例を示す図である。参照符号53は下りリンク通信品質測定部を示し、参照符号54は下りリンク通信品質情報送信部を示す。通信装置50は、送信アンテナ51と、受信アンテナ52と、下りリンク通信品質測定部53と、下りリンク通信品質情報送信部54とを備える。
【0040】
下りリンク通信品質測定部53は、基地局装置10−1と通信装置50との間の下りリンクの通信品質、及び隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の下りリンクの通信品質を測定する。例えば、下りリンク通信品質測定部53は、これらの基地局装置10−1及び10−2からそれぞれ送信された下りリンク用参照信号の受信電力を、それぞれの下りリンクの通信品質として測定してよい。
【0041】
下りリンク通信品質情報送信部54は、基地局装置10−1と通信装置50との間で測定された下りリンクの通信品質を示す下りリンク通信品質情報を基地局装置10−1へ送信する。下りリンク通信品質情報送信部54は、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間で測定された下りリンクの通信品質を示す下りリンク通信品質情報も、基地局装置10−1へ送信してよい。
【0042】
図6は、図4に示すチルト角制御部15の構成例を示す図である。参照符号30は減算器を示し、参照符号31は比較部を示し、参照符号32は調整量決定部を示す。チルト角制御部15は、減算器30と、比較部31と、調整量決定部32を備える。
【0043】
減算器30は、基地局装置10−1と通信装置50との間、及び隣接基地局装置10−2と通信装置50との間でそれぞれ測定された下りリンクの通信品質を示す下りリンク通信品質情報を入力する。減算器30は、基地局装置10−1と通信装置50との間、及び隣接基地局装置10−2と通信装置50との間でそれぞれ測定された下りリンクの通信品質の差分を算出する。
【0044】
比較部31は、通信品質の差分の大きさと所定の閾値T1とを比較する。通信品質の差分の大きさが所定の閾値T1よりも大きいとき、調整量決定部32は、送信アンテナ11のチルト角を調整する調整量を決定する。例えば、基地局装置10−1と通信装置50との間の品質が、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の品質よりも高いとき、調整量決定部32は、送信アンテナ11のチルト角を大きくするように調整量を決定する。反対に、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の品質が、基地局装置10−1と通信装置50との間の品質よりも高いとき、調整量決定部32は、送信アンテナ11のチルト角を小さくするように調整量を決定する。
【0045】
調整量決定部32は、例えば、通信品質の差分とチルト角の調整量との関係を予め定めるテーブルや計算式に基づいて、調整量の大きさを決定してよい。また例えば、一度の調整で調整量決定部32から指示される調整量を、固定されたステップ角度幅Δθの調整量としてよい。
【0046】
図4のチルト角変更部13は、調整量決定部32により決定された調整量に基づいて、送信アンテナ11のチルト角を機械的又は電気的に変更する。
【0047】
図7は、図3に示す無線通信システムにおける送信アンテナのチルト角の制御例の説明図である。別な実施の態様においては、下記のオペレーションBA〜BHの各オペレーションはステップであってもよい。オペレーションBAにおいて、送信アンテナ11のチルト角の調整を行うオペレータは、通信装置50を、所望のセル境界位置へ配置する。
【0048】
オペレーションBBにおいて基地局装置10−1及び隣接基地局装置10−2の下りリンク用参照信号送信部16は、それぞれ下りリンク用参照信号を送信する。オペレーションBCにおいて通信装置50の下りリンク通信品質測定部53は、基地局装置10−1と通信装置50との間の下りリンクの通信品質、及び隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の下りリンクの通信品質を測定する。
【0049】
オペレーションBDにおいて下りリンク通信品質情報送信部54は、基地局装置10−1と通信装置50との間、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の各下りリンクに関する下りリンク通信品質情報を基地局装置10−1へ送信する。
【0050】
オペレーションBEにおいて基地局装置10−1のチルト角制御部15は、基地局装置10−1と通信装置50との間、及び隣接基地局装置10−2と通信装置50との間のそれぞれの下りリンクの通信品質の差分が、閾値T1以下か否かを判定する。通信品質の差分が閾値T1以下であるとき(オペレーションBE:Y)、処理は終了する。通信品質の差分が閾値T1以下でないとき(オペレーションBE:N)、処理はオペレーションBFへ移行する。
【0051】
オペレーションBFにおいてチルト角制御部15は、基地局装置10−1と通信装置50との間の通信品質が、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の通信品質よりも高いか否かを判定する。基地局装置10−1と通信装置50との間の通信品質が、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の通信品質よりも高いとき(オペレーションBF:Y)、処理はオペレーションBGへ移行する。基地局装置10−1と通信装置50との間の通信品質が、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の通信品質よりも高くないとき(オペレーションBF:N)、処理はオペレーションBHへ移行する。
【0052】
オペレーションBGにおいて調整量決定部32は、送信アンテナ11のチルト角を大きくするように調整量を決定する。オペレーションBHにおいて調整量決定部32は、送信アンテナ11のチルト角を小さくするように調整量を決定する。チルト角変更部13は、決定された調整量に基づいて送信アンテナ11のチルト角を変更する。オペレーションBG又はBHの後、処理はオペレーションBBへ戻る。オペレーションBEの判定において通信品質の差分が閾値T1以下となるまで、オペレーションBB〜オペレーションBHが反復される。
【0053】
本実施例によれば、下りリンクのセル境界を所望の目標位置へ位置づけるように、送信アンテナ11のチルト角を調整することが可能となる。このため本実施例によれば、隣接セル間における下りリンク及び上りリンクのセル境界の差をなくす、もしくは低減する際に、下りリンクのセル境界の位置を制御することができる。
【0054】
図8は、図3に示す基地局装置10−1の構成の第2例を示す図である。参照符号18は基地局間通信部を示し、参照符号19は隣接セル通信品質取得部を示す。図4に示す構成要素と同様の構成要素には図4で使用した参照符号と同じ参照符号を付する。基地局装置10−1は、送信アンテナ11と、受信アンテナ12と、チルト角変更部13と、チルト角制御部15と、下りリンク用参照信号送信部16と、下りリンク通信品質取得部17と、基地局間通信部18を備える。基地局間通信部18は、隣接セル通信品質取得部19を備える。
【0055】
図3〜図7を参照して説明した実施例では、通信装置50は、基地局装置10−1と通信装置50との間、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の、両方の下りリンクに関する下りリンク通信品質情報を基地局装置10−1へ送信する。
【0056】
これに代えて、本実施例による通信装置50は、基地局装置10−1と通信装置50との間の下りリンク通信品質情報を基地局装置10−1へ、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の下りリンク通信品質情報を隣接基地局装置10−2へ送信する。そして、隣接基地局装置10−2は、送信された下りリンク通信品質情報を、基地局間通信部18によって基地局装置10−1へ送信する。基地局装置10−1の隣接セル通信品質取得部19は、隣接基地局装置10−2から送信された隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の下りリンク通信品質情報を取得する。
【0057】
本実施例によっても、基地局装置10−1は、基地局装置10−1と通信装置50との間、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の、両方の下りリンクに関する下りリンク通信品質情報を取得することが可能である。
【0058】
続いて、無線通信システムにおける他の実施例を説明する。図9は、無線通信システムにおける第2実施例の構成図である。本実施例では、基地局装置10−1の受信アンテナ11のチルト角を調整するために、上りリンクのセル境界の目標位置として予め定められた所望のセル境界位置に通信装置50を配置する。
【0059】
通信装置50は、上りリンクにおける通信品質測定用の上りリンク用参照信号を、上述の所望の目標位置から送信する。基地局装置10−1は、通信装置50から送信された上りリンク用参照信号を受信することにより、基地局装置10−1と通信装置50との間の上りリンクの通信品質を測定する。また隣接基地局装置10−2も同様に、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の上りリンクの通信品質を測定する。
【0060】
なお、本実施例の基地局装置10−1も、送信アンテナ11のチルト角の調整のために図4に示す構成を含んでいてよい。同様に本実施例の通信装置50も、基地局装置10−1の送信アンテナ11のチルト角の調整のために図5に示す構成を含んでいてよい。
【0061】
図10は、図9に示す通信装置50の構成例を示す図である。参照符号55は、上りリンク用参照信号送信部を備える。図5に示す構成要素と同様の構成要素には図5で使用した参照符号と同じ参照符号を付する。通信装置50は、送信アンテナ51と、受信アンテナ52と、上りリンク用参照信号送信部55を備える。上りリンク用参照信号送信部55は、送信アンテナ51を介して上りリンク用参照信号を送信する。上りリンク用参照信号は、基地局装置10−1が、基地局装置10−1と通信装置50との間の上りリンクの通信品質を測定する際に使用される。
【0062】
図11は、図9に示す基地局装置10−1の構成例を示す図である。参照符号20は上りリンク通信品質測定部を示す。図1又は図8に示す構成要素と同様の構成要素には図1又は図8で使用した参照符号と同じ参照符号を付する。基地局装置10−1は、送信アンテナ11と、受信アンテナ12と、チルト角変更部14と、チルト角制御部15と、基地局間通信部18と、上りリンク通信品質測定部20を備える。基地局間通信部18は、隣接セル通信品質取得部19を備える。
【0063】
上りリンク通信品質測定部20は、基地局装置10−1と通信装置50との間の上りリンクの通信品質を測定する。例えば、上りリンク通信品質測定部20は、通信装置50から送信された上りリンク用参照信号の受信電力を、上りリンクの通信品質として測定してよい。
【0064】
基地局間通信部18は、上りリンク通信品質測定部20により測定された上りリンクに関する上りリンク通信品質情報を、隣接基地局装置10−2へ送信する。隣接セル通信品質取得部19は、隣接基地局装置10−2において同様に測定された隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の上りリンクに関する上りリンク通信品質情報を受信する。
【0065】
チルト角制御部15は、通信装置50と基地局装置10−1との間の上りリンクでの通信品質と、通信装置50と隣接基地局装置10−2との間の上りリンクの通信品質との差を低減するような受信アンテナ12のチルト角の調整量を決定する。チルト角変更部14は、チルト角制御部15により決定された調整量に基づいて、受信アンテナ12のチルト角を機械的又は電気的に変更する。チルト角制御部15の構成は、図6を参照して上述した構成と同様であってよい。
【0066】
図12は、図9に示す無線通信システムにおける受信アンテナのチルト角の制御例の説明図である。別な実施の態様においては、下記のオペレーションCA〜CHの各オペレーションはステップであってもよい。オペレーションCAにおいて、受信アンテナ12のチルト角の調整を行うオペレータは、通信装置50を所望のセル境界位置へ配置する。
【0067】
オペレーションCBにおいて通信装置50の上りリンク用参照信号送信部55は、上りリンク用参照信号を送信する。オペレーションCCにおいて基地局装置10−1及び隣接基地局装置10−2の上りリンク通信品質測定部20は、各基地局装置10−1及び10−2と通信装置50との間の上りリンクの通信品質をそれぞれ測定する。
【0068】
オペレーションCDにおいて基地局間通信部18は、上りリンク通信品質情報を隣接基地局装置10−2へ送信する。また、隣接セル通信品質取得部19は、隣接基地局装置10−2において同様に測定された基地局装置10−2と通信装置50との間の上りリンクに関する上りリンク通信品質情報を受信する。
【0069】
オペレーションCEにおいて基地局装置10−1のチルト角制御部15は、基地局装置10−1と通信装置50との間、及び隣接基地局装置10−2と通信装置50との間のそれぞれの上りリンクの通信品質の差分が、閾値T2以下か否かを判定する。通信品質の差分が閾値T2以下であるとき(オペレーションCE:Y)、処理は終了する。通信品質の差分が閾値T2以下でないとき(オペレーションCE:N)、処理はオペレーションCFへ移行する。
【0070】
オペレーションCFにおいてチルト角制御部15は、基地局装置10−1と通信装置50との間の通信品質が、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の通信品質よりも高いか否かを判定する。基地局装置10−1と通信装置50との間の通信品質が、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の通信品質よりも高いとき(オペレーションCF:Y)、オペレーションCGへ移行する。基地局装置10−1と通信装置50との間の通信品質が、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の通信品質よりも高くないとき(オペレーションCF:N)、オペレーションCHへ移行する。
【0071】
オペレーションCGにおいて調整量決定部32は、受信アンテナ12のチルト角を大きくするように調整量を決定する。オペレーションCHにおいて調整量決定部32は、受信アンテナ12のチルト角を小さくするように調整量を決定する。チルト角変更部14は、決定された調整量に基づいて受信アンテナ12のチルト角を変更する。オペレーションCG又はCHの後、処理はオペレーションCBへ戻る。オペレーションCEの判定において通信品質の差分が閾値T1以下となるまで、オペレーションCB〜オペレーションCHが反復される。
【0072】
本実施例によれば、上りリンクのセル境界を所望の目標位置へ位置づけるように、受信アンテナ12のチルト角を調整することが可能となる。このため本実施例によれば、隣接セル間における下りリンク及び上りリンクのセル境界の差をなくす、もしくは低減する際に、上りリンクのセル境界の位置を制御することができる。
【0073】
続いて、上述の所望の目標位置に置かれた通信装置50を利用して、基地局装置10−1の受信アンテナ11のチルト角を調整する他の実施例を説明する。無線通信システムにおける他の実施例を説明する。図13は、無線通信システムにおける第3実施例の構成図である。なお、本実施例の基地局装置10−1も、送信アンテナ11のチルト角の調整のために図4に示す構成を含んでいてよい。同様に本実施例の通信装置50も、基地局装置10−1の送信アンテナ11のチルト角の調整のために図5に示す構成を含んでいてよい。
【0074】
本実施例では、基地局装置10−1及び隣接基地局装置10−2は、それぞれの受信アンテナ12から、上りリンクにおける通信品質測定用の上りリンク用参照信号を送信する。通信装置50は、上記の所望の目標位置において基地局装置10−1及び隣接基地局装置10−2から上りリンク用参照信号をそれぞれ受信することにより、各基地局装置10−1及び10−2と通信装置50とのそれぞれの間の上りリンクの通信品質を測定する。
【0075】
図14は、図13に示す基地局装置10−1の構成例を示す図である。参照符号21は上りリンク用参照信号送信部を示し、参照符号22は上りリンク通信品質取得部を示す。図11に示す構成要素と同様の構成要素には図11で使用した参照符号と同じ参照符号を付する。基地局装置10−1は、送信アンテナ11と、受信アンテナ12と、チルト角変更部14と、チルト角制御部15と、上りリンク用参照信号送信部21と、上りリンク通信品質取得部22を備える。
【0076】
上りリンク用参照信号送信部21は、上りリンク用参照信号を、受信アンテナ12を介して送信する。上りリンク用参照信号は、後述するように通信装置50が基地局装置10−1と通信装置50との間の上りリンクの通信品質を測定する際に使用する。基地局装置10−1の送信アンテナ11から、別途、下りリンク用参照信号が送信されるときは、上りリンク用参照信号は、下りリンク用参照信号と、異なるタイムスロットやタイムフレームで送信されるか、周波数的又は符号的に直交した信号であってよい。
【0077】
上りリンク通信品質取得部22は、通信装置50から送信される、基地局装置10−1と通信装置50との間の上りリンクの通信品質を示す上りリンク通信品質情報を受信する。また、上りリンク通信品質取得部22は、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の上りリンクに関する上りリンク通信品質情報を受信してもよい。
【0078】
図15は、図13に示す通信装置50の構成例を示す図である。参照符号56は上りリンク通信品質測定部を示し、参照符号57は上りリンク通信品質情報送信部を示す。図5に示す構成要素と同様の構成要素には図5で使用した参照符号と同じ参照符号を付する。通信装置50は、送信アンテナ51と、受信アンテナ52と、上りリンク通信品質測定部56と、上りリンク通信品質情報送信部57とを備える。
【0079】
上りリンク通信品質測定部56は、基地局装置10−1と通信装置50との間の上りリンクの通信品質、及び隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の上りリンクの通信品質を測定する。例えば、上りリンク通信品質測定部56は、予め通知された各基地局装置10−1及び10−2の送信電力から、各基地局装置10−1及び10−2からそれぞれ受信した上りリンク用参照信号の受信電力を引いた伝搬ロスをそれぞれ算出する。上りリンク通信品質測定部56は、各伝搬ロスに基づいて、それぞれの下りリンクの通信品質を測定してよい。
【0080】
上りリンク通信品質情報送信部57は、基地局装置10−1と通信装置50との間の上りリンク通信品質情報を基地局装置10−1へ送信する。上りリンク通信品質情報送信部57は、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の上りリンク通信品質情報も、基地局装置10−1へ送信してよい。
【0081】
図16は、図13に示す無線通信システムにおける受信アンテナのチルト角の制御例の説明図である。下記のオペレーションDA〜DHの各オペレーションはステップであってもよい。オペレーションDAにおいて、受信アンテナ12のチルト角の調整を行うオペレータは、通信装置50を所望のセル境界位置へ配置する。
【0082】
オペレーションBDにおいて基地局装置10−1及び隣接基地局装置10−2の上りリンク用参照信号送信部21は、それぞれ上りリンク用参照信号を送信する。オペレーションDCにおいて通信装置50の上りリンク通信品質測定部56は、基地局装置10−1と通信装置50との間の上りリンクの通信品質、及び隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の上りリンクの通信品質を測定する。
【0083】
オペレーションDDにおいて下りリンク通信品質情報送信部54は、基地局装置10−1と通信装置50との間、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の各上りリンクに関する上りリンク通信品質情報を基地局装置10−1へ送信する。
【0084】
オペレーションDEにおいて基地局装置10−1のチルト角制御部15は、基地局装置10−1と通信装置50との間、及び隣接基地局装置10−2と通信装置50との間のそれぞれの上りリンクの通信品質の差分が、閾値T2以下か否かを判定する。通信品質の差分が閾値T2以下であるとき(オペレーションDE:Y)、処理は終了する。通信品質の差分が閾値T2以下でないとき(オペレーションDE:N)、処理はオペレーションDFへ移行する。
【0085】
オペレーションDFにおいてチルト角制御部15は、基地局装置10−1と通信装置50との間の通信品質が、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の通信品質よりも高いか否かを判定する。基地局装置10−1と通信装置50との間の通信品質が、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の通信品質よりも高いとき(オペレーションDF:Y)、処理はオペレーションDGへ移行する。基地局装置10−1と通信装置50との間の通信品質が、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の通信品質よりも高くないとき(オペレーションDF:N)、処理はオペレーションDHへ移行する。
【0086】
オペレーションDGにおいて調整量決定部32は、受信アンテナ12のチルト角を大きくするように調整量を決定する。オペレーションDHにおいて調整量決定部32は、受信アンテナ12のチルト角を小さくするように調整量を決定する。チルト角変更部14は、決定された調整量に基づいて受信アンテナ12のチルト角を変更する。オペレーションDG又はDHの後、処理はオペレーションDBへ戻る。オペレーションDEの判定において通信品質の差分が閾値T1以下となるまで、オペレーションDB〜オペレーションDHが反復される。
【0087】
本実施例によっても、基地局装置10−1は、各基地局装置10−1及び10−2と間の上りリンク通信品質情報を取得し、受信アンテナ12のチルト角の調整を行うことが可能である。
【0088】
なお、図13〜図16を参照して説明した実施例では、通信装置50は、基地局装置10−1と通信装置50との間、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の、両方の上りリンクに関する上りリンク通信品質情報を基地局装置10−1へ送信する。これに代えて通信装置50は、基地局装置10−1と通信装置50との間の上りリンク通信品質情報を基地局装置10−1へ、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の上りリンク通信品質情報を隣接基地局装置10−2へ送信してもよい。そして、基地局装置10−1は、図8を参照して説明した実施例と同様に、隣接基地局装置10−2との間の基地局間通信によって、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の下りリンク通信品質情報を取得してもよい。
【0089】
続いて、無線通信システムにおける他の実施例を説明する。図17は、無線通信システムにおける第4実施例の構成図である。参照符号60−1、60−2〜60−nのそれぞれは、基地局装置10−1又は10−2と通信を行う移動局装置である。これら移動局装置60−1、60−2〜60−nを総称して、移動局装置60と記載することがある。参照符号61は移動局装置60の送信アンテナを示し、参照符号62は移動局装置60の受信アンテナを示す。無線通信システム1は、基地局装置10−1と、隣接基地局装置10−2と、複数の移動局装置60−1、60−2〜60−nを含む。
【0090】
基地局装置10−1及び隣接基地局装置10−2は、下りリンク用参照信号を移動局装置60へ送信する。移動局装置60は、受信した下りリンク用参照信号の受信品質に基づいて、最も下りリンクの受信品質の良い基地局装置が配置されたセルを下りリンク接続セルとして決定する。移動局装置60は、決定した下りリンク接続セルを示す下りリンク接続セル情報を、決定した下りリンク接続セルに配置された基地局装置10−1へ送信する。
【0091】
移動局装置60は、上りリンク用参照信号を送信する。基地局装置10−1は、移動局装置60から送信された上りリンク用参照信号を受信することにより、基地局装置10−1と移動局装置60との間の上りリンクの通信品質を測定する。また隣接基地局装置10−2も同様に、隣接基地局装置10−2と移動局装置60との間の上りリンクの通信品質を測定する。
【0092】
図18は、図17に示す移動局装置60の構成例を示す図である。参照符号63は下りリンク通信品質測定部を示し、参照符号64は下りリンク接続セル決定部を示し、参照符号65は上り用リンク参照信号送信部を示す。移動局装置60は、送信アンテナ61と受信アンテナ62と、下りリンク通信品質測定部63と、下りリンク接続セル決定部64と、上り用リンク参照信号送信部65を備える。
【0093】
下りリンク通信品質測定部63は、基地局装置10−1や、隣接基地局装置10−2を含むその他の基地局装置からそれぞれ受信した下りリンク用参照信号に基づいて、これらの基地局装置と移動局装置60との間のそれぞれの下りリンクの受信品質を測定する。例えば、下りリンク通信品質測定部63は、各基地局装置からそれぞれ送信された参照信号の受信電力をそれぞれの下りリンクの受信品質として測定してよい。
【0094】
下りリンク接続セル決定部64は、下りリンクの受信品質に基づいて、最も下りリンクの受信品質の良い基地局装置が配置されたセルを下りリンク接続セルとして決定する。下りリンク接続セル決定部64は、決定した下りリンク接続セルを示す下りリンク接続セル情報を、決定した下りリンク接続セルに配置された基地局装置へ送信する。下りリンク接続セル情報は、例えば、移動局装置60の識別子と下りリンク接続セルの識別子を含んでいてよい。
【0095】
上り用リンク参照信号送信部65は、上りリンク用参照信号を送信アンテナ61を介して送信する。上りリンク用参照信号は、基地局装置10−1や、隣接基地局装置10−2を含むその他の基地局装置が、移動局装置60との間の上りリンクの通信品質を測定する際に使用される。上りリンク用参照信号は、移動局装置60から送信される移動局装置60の識別子情報と何らかの形で関連付けられた形式で送信される。例えば上りリンク用参照信号は、移動局装置60の識別子を含むか、移動局装置60の識別子を表す信号であってよい。また例えば、上りリンク用参照信号は、移動局装置60の識別子と、同じタイムスロットやデータフレームにて移動局装置60から送信されることにより、移動局装置60の識別子と関連付けられてもよい。
【0096】
図19は、図17に示す基地局装置10−1の構成例を示す図である。参照符号23は接続セル指示情報取得部を示し、参照符号24は隣接セル接続情報取得部を示す。図4又は図11に示す構成要素と同様の構成要素には図4又は図11で使用した参照符号と同じ参照符号を付する。基地局装置10−1は、送信アンテナ11と、受信アンテナ12と、チルト角変更部13及び14と、チルト角制御部15と、下りリンク用参照信号送信部16と、基地局間通信部18と、上りリンク通信品質測定部20と、接続セル指示情報取得部23を備える。基地局間通信部18は、隣接セル通信品質取得部19と隣接セル接続情報取得部24を備える。
【0097】
下りリンク用参照信号送信部16は、下りリンク用参照信号を、送信アンテナ11を介して送信する。下りリンク用参照信号は、移動局装置60が、基地局装置10−1と移動局装置60との間の下りリンクの受信品質を測定する際に使用される。接続セル指示情報取得部23は、移動局装置60から送信される下りリンク接続セル指示情報を、受信アンテナ12を介して受信する。
【0098】
基地局間通信部18は、接続セル指示情報取得部23により取得された下りリンク接続セル指示情報を隣接基地局装置10−2へ送信する。隣接セル接続情報取得部24は、隣接基地局装置10−2から送信される、隣接基地局装置10−2の接続セル指示情報取得部23にて取得された下りリンク接続セル指示情報を受信する。接続セル指示情報取得部23により取得された下りリンク接続セル指示情報及び隣接セル接続情報取得部24により取得された下りリンク接続セル指示情報は、チルト角制御部15へ出力される。
【0099】
上りリンク通信品質測定部20は、基地局装置10−1と移動局装置60との間の上りリンクの通信品質を測定する。例えば、上りリンク通信品質測定部20は、移動局装置60から送信された上りリンク用参照信号の受信電力を、上りリンクの通信品質として測定してよい。上りリンク通信品質測定部20は、測定された上りリンクの通信品質を示す上りリンク通信品質情報を生成する。上りリンク通信品質情報は、上りリンクの通信品質と、基地局装置10−1が配置されるセルの識別子と、移動局装置60の識別子を含んでいてよい。
【0100】
基地局間通信部18は、上りリンク通信品質測定部20により生成された上りリンク通信品質情報を隣接基地局装置10−2へ送信する。隣接セル通信品質取得部19は、隣接基地局装置10−2から送信される、隣接基地局装置10−2の上りリンク通信品質測定部20により生成された上りリンク通信品質情報を受信する。上りリンク通信品質測定部20により生成された上りリンク通信品質情報及び隣接セル通信品質取得部19により取得された上りリンク通信品質情報は、チルト角制御部15へ出力される。
【0101】
図20は、図19に示すチルト角制御部15の構成例を示す図である。参照符号32は調整量決定部を示し、参照符号33は対応関係情報作成部を示し、参照符号34は対応関係情報記憶部を示し、参照符号35は非対称度決定部を示す。対応関係情報作成部33は、チルト角制御部15へ入力された下りリンク接続セル情報と、上りリンク通信品質情報とに基づいて、対応関係情報36を作成する。対応関係情報36は、対応関係情報記憶部34に記憶される。
【0102】
対応関係情報36は、各移動局装置60と、各移動局装置60において下りリンク接続セルとして選択されたセルとの対応関係を示す。ここに、下りリンク接続セルは、下りリンク用参照信号の受信品質が最も良い基地局装置が配置されるセルである。したがって、対応関係情報36は、各移動局装置60と、各移動局装置60において最も良い下りリンクの通信品質が測定された基地局装置との対応関係を示す。さらに対応関係情報36は、各移動局装置60と、各移動局装置60との上りリンクにおいて最も高い通信品質が測定される基地局装置が配置されるセルとの対応関係を示す。
【0103】
図21は、対応関係情報36の実現例の説明図である。対応関係情報36は、例えば図21に示すようなテーブル構造によって実現されてよい。図21のテーブルは、各移動局装置60の識別子を格納する欄と、各移動局装置60の下りリンク接続セルの識別子を格納する欄と、各移動局装置60との上りリンクにおいて最高の通信品質が測定される基地局装置のセルの識別子を格納する欄を有する。説明の便宜のため移動局装置60との上りリンクにおいて最高の通信品質が測定される基地局装置のセルを、「上りリンク最高品質セル」と記載することがある。
【0104】
上下非対称状態でない場合には、各移動局装置60の下りリンク接続セルと、上りリンク最高品質セルとはほぼ一致する。このため上下非対称状態でない場合には、基地局装置10−1の配置セルを下りリンク接続セルとする移動局装置60の数と、基地局装置10−1の配置セルを上りリンク最高品質セルとする移動局装置60の数とは、ほぼ同数である。
【0105】
図20の非対称度決定部35は、基地局装置10−1の配置セルを下りリンク接続セルとする移動局装置60の数と、基地局装置10−1の配置セルを上りリンク最高品質セルとする移動局装置60の数との相違を、「非対称度」として算出する。例えば非対称度決定部35は、基地局装置10−1の配置セルを下りリンク接続セルとする移動局装置60の数と、基地局装置10−1の配置セルを上りリンク最高品質セルとする移動局装置60の数の差を、非対称度として算出してよい。また例えば例えば非対称度決定部35は、基地局装置10−1の配置セルを下りリンク接続セルとする移動局装置60の数と、基地局装置10−1の配置セルを上りリンク最高品質セルとする移動局装置60の数の割合を、非対称度として算出してよい。
【0106】
非対称度の大きさが所定の閾値T3よりも大きいとき、調整量決定部32は、送信アンテナ11及び受信アンテナ12の少なくともいずれか一方のチルト角を調整する調整量を決定する。基地局装置10−1の配置セルを下りリンク接続セルとする移動局装置が、基地局装置10−1の配置セルを上りリンク最高品質セルとする移動局装置よりも多いときは、調整量決定部32は、送信アンテナ11のチルト角を大きくするように調整量を決定する。これに加えて又はこれに代えて、調整量決定部32は、かつ受信アンテナ12のチルト角を小さくするように調整量を決定する。
【0107】
基地局装置10−1の配置セルを下りリンク接続セルとする移動局装置が、基地局装置10−1の配置セルを上りリンク最高品質セルとする移動局装置よりも少ないときは、調整量決定部32は、送信アンテナ11のチルト角を小さくするように調整量を決定する。これに加えて又はこれに代えて、調整量決定部32は、受信アンテナ12のチルト角を大きくするように調整量を決定する。調整量決定部32は、例えば、非対称度とチルト角の調整量との関係を予め定めるテーブルや計算式に基づいて、調整量の大きさを決定してよい。また例えば、一度の調整で調整量決定部32から指示される調整量を、固定されたステップ角度幅Δθの調整量としてよい。
【0108】
図22は、図17に示す無線通信システムにおけるアンテナのチルト角の制御例の説明図である。別な実施の態様においては、下記のオペレーションEA〜EJの各オペレーションはステップであってもよい。
【0109】
オペレーションEAにおいて、基地局装置10−1や、隣接基地局装置10−2を含むその他の基地局装置の下りリンク用参照信号送信部16は、下りリンク用参照信号を送信する。オペレーションEBにおいて移動局装置60の下りリンク通信品質測定部63は、これらの基地局装置と移動局装置60との間のそれぞれの下りリンクの受信品質を測定する。下りリンク接続セル決定部64は下りリンク接続セルを決定し、下りリンク接続セルに配置された基地局装置へ下りリンク接続セル情報を送信する。
【0110】
オペレーションECにおいて移動局装置60の上り用リンク参照信号送信部65は、上りリンク用参照信号を送信する。オペレーションEDにおいて、基地局装置10−1や、隣接基地局装置10−2を含むその他の基地局装置の上りリンク通信品質測定部20は、各基地局装置と移動局装置60との間のそれぞれの上りリンクの通信品質を測定する。
【0111】
オペレーションEEにおいて基地局装置10−1の基地局間通信部18は、上りリンク通信品質測定部20により生成された上りリンク通信品質情報を隣接基地局装置10−2へ送信する。また、基地局装置10−1の基地局間通信部18は、接続セル指示情報取得部23により取得された下りリンク接続セル指示情報を隣接基地局装置10−2へ送信する。
【0112】
一方で基地局装置10−1の隣接セル通信品質取得部19は、隣接基地局装置10−2から送信される上りリンク通信品質情報を受信する。また基地局装置10−1の隣接セル接続情報取得部24は、隣接基地局装置10−2から送信される下りリンク接続セル指示情報を受信する。オペレーションEFにおいて基地局装置10−1の対応関係情報作成部33は、対応関係情報36を作成する。
【0113】
オペレーションEGにおいて基地局装置10−1の非対称度決定部35は、上述の非対称度を算出する。すなわち非対称度決定部35は、基地局装置10−1の配置セルを下りリンク接続セルとする移動局装置60の数と、基地局装置10−1の配置セルを上りリンク最高品質セルとする移動局装置60の数との相違を算出する。調整量決定部32は、非対称度が所定の閾値T3以下であるか否かを判定する。非対称度が閾値T3以下であるとき(オペレーションEG:Y)、処理は終了する。非対称度が閾値T3以下でないとき(オペレーションEG:N)、処理はオペレーションEHへ移行する。
【0114】
オペレーションEHにおいて調整量決定部32は、基地局装置10−1の配置セルを上りリンク最高品質セルとする移動局装置60が、基地局装置10−1の配置セルを下りリンク接続セルとする移動局装置60よりも多いか否かを判定する。基地局装置10−1の配置セルを上りリンク最高品質セルとする移動局装置60が、基地局装置10−1の配置セルを下りリンク接続セルとする移動局装置60よりも多いとき(オペレーションEH:Y)、処理はオペレーションEIへ移る。基地局装置10−1の配置セルを上りリンク最高品質セルとする移動局装置60が、基地局装置10−1の配置セルを下りリンク接続セルとする移動局装置60よりも多くないとき(オペレーションEH:N)、処理はオペレーションEJへ移る。
【0115】
オペレーションEIにおいて調整量決定部32は、送信アンテナ11のチルト角を小さくするように調整量を決定する。これに加えて又はこれに代えて、調整量決定部32は、受信アンテナ12のチルト角を大きくするように調整量を決定する。オペレーションEJにおいて調整量決定部32は、送信アンテナ11のチルト角を大きくするように調整量を決定する。これに加えて又はこれに代えて、調整量決定部32は、受信アンテナ12のチルト角を小さくするように調整量を決定する。チルト角変更部13は、決定された調整量に基づいて送信アンテナ11のチルト角を変更する。これに加えて又はこれに代えてチルト角変更部14は、決定された調整量に基づいて受信アンテナ12のチルト角を変更する。オペレーションEI又はEJの後、処理はオペレーションEBへ戻る。オペレーションEGの判定において非対称度が閾値T3以下となるまで、オペレーションEB〜オペレーションEJが反復される。
【0116】
本実施例によれば、基地局装置10−1は、移動局装置60から送信される下りリンク接続セル指示情報と、移動局装置60との間で測定される上りリンク通信品質に基づいて、送信アンテナ11及び受信アンテナ12のチルト角を制御することができる。
【0117】
なお、図17〜図22を参照して説明した実施例においては、各移動局装置60は、下りリンク接続セル指示情報を、下りリンク接続セルに配置された基地局装置へ送信する。そして各基地局装置は、送信された下りリンク接続セル指示情報を、基地局間通信部18によって隣接基地局装置へ送信する。これに代えて各移動局装置60は、下りリンク接続セル指示情報を、下りリンク接続セルとその周辺のセルにそれぞれ配置される各基地局装置へ送信してもよい。この場合、基地局装置10−1は、隣接基地局装置10−2のセルを下りリンク接続セルと指示するリンク接続セル指示情報を、移動局装置60から直接受信することができるため、隣接セル接続情報取得部24は省略されてもよい。
【0118】
また、図17〜図22を参照して説明した実施例においても、図13〜図16を参照して説明した実施例と同様に、各基地局装置は、それぞれの受信アンテナ12から、上りリンクにおける通信品質測定用の上りリンク用参照信号を送信してよい。移動局装置60は、各基地局装置から上りリンク用参照信号をそれぞれ受信することにより、各基地局装置と移動局装置60とのそれぞれの間の上りリンクの通信品質を測定してよい。このため各基地局装置は、図14に示す構成要素を備えていてよく、移動局装置60は図15に示す構成要素を備えていてよい。
【0119】
続いて、無線通信システムにおける他の実施例を説明する。図23は、無線通信システムにおける第5実施例の構成図である。無線通信システム1は、基地局装置10−1と、隣接基地局装置10−2と、複数の移動局装置60を含む。基地局装置10−1及び隣接基地局装置10−2は、下りリンク用参照信号を移動局装置60へ送信する。移動局装置60は、受信した下りリンク用参照信号の受信品質に基づいて、基地局装置10−1の配置セルと隣接基地局装置10−2の配置セルとの間のセル境界でハンドオーバが発生したか否かを判定する。
【0120】
ハンドオーバが発生したとき、移動局装置60はハンドオーバが生じたことを指示するハンドオーバ情報を、ハンドオーバ基地局装置10−1と隣接基地局装置10−2へ通知する。また、移動局装置60は上りリンク用参照信号を送信する。基地局装置10−1は、上りリンク用参照信号を受信することにより、基地局装置10−1と移動局装置60との間の上りリンクの通信品質を測定する。また隣接基地局装置10−2も同様に、隣接基地局装置10−2と移動局装置60との間の上りリンクの通信品質を測定する。
【0121】
図24は、図23に示す移動局装置60の構成例を示す図である。参照符号66はハンドオーバ情報送信部を示す。図18に示す構成要素と同様の構成要素には図18で使用した参照符号と同じ参照符号を付する。移動局装置60は、送信アンテナ61と受信アンテナ62と、下りリンク通信品質測定部63と、下りリンク接続セル決定部64と、上り用リンク参照信号送信部65と、ハンドオーバ情報送信部66を備える。
【0122】
下りリンク接続セル決定部64は、下りリンクの受信品質に基づいて、移動局装置60がハンドオーバ処理を行うか否かを判定する。ハンドオーバが発生したとき、ハンドオーバ情報送信部66は、ハンドオーバが生じたことを通知するハンドオーバ情報を、ハンドオーバ基地局装置10−1と隣接基地局装置10−2へ送信する。ハンドオーバ基地局装置10−1及び隣接基地局装置10−2へ送信する代わりに、ハンドオーバ情報送信部66は、ハンドオーバ元の基地局装置及びハンドオーバ先の基地局装置のいずれか一方へハンドオーバ情報を送信してもよい。このとき、ハンドオーバ情報を受信した上記一方の基地局装置は、移動局装置60にハンドオーバが生じたことを、基地局間通信によって他方の基地局装置へ通知してもよい。ハンドオーバ情報は、例えば移動局装置60の識別子や、ハンドオーバが生じたセル境界を有するセルの識別子を含む情報であってよい。
【0123】
図25は、図23に示す基地局装置10−1の構成例を示す図である。参照符号25はハンドオーバ情報取得部を示す。図19に示す構成要素と同様の構成要素には図19で使用した参照符号と同じ参照符号を付する。基地局装置10−1は、送信アンテナ11と、受信アンテナ12と、チルト角変更部13及び14と、チルト角制御部15と、下りリンク用参照信号送信部16と、基地局間通信部18と、上りリンク通信品質測定部20と、ハンドオーバ情報取得部25を備える。基地局間通信部18は、隣接セル通信品質取得部19を備える。
【0124】
ハンドオーバ情報取得部25は、移動局装置60から送信されたハンドオーバ情報を受信する。ハンドオーバが発生したとき、上りリンク通信品質測定部20は、基地局装置10−1と移動局装置60との間の上りリンクの通信品質を測定する。基地局間通信部18は、上りリンク通信品質測定部20により生成された上りリンク通信品質情報を、隣接基地局装置10−2へ送信する。隣接セル通信品質取得部19は、隣接基地局装置10−2から送信される、隣接基地局装置10−2の上りリンク通信品質測定部20により生成された上りリンク通信品質情報を受信する。上りリンク通信品質測定部20により生成された上りリンク通信品質情報及び隣接セル通信品質取得部19により取得された上りリンク通信品質情報は、チルト角制御部15へ出力される。
【0125】
チルト角制御部15は、通信装置50と基地局装置10−1との間の上りリンクでの通信品質と、通信装置50と隣接基地局装置10−2との間の上りリンクの通信品質との差を低減するような受信アンテナ12のチルト角の調整量を決定する。チルト角変更部14は、チルト角制御部15により決定された調整量に基づいて、受信アンテナ12のチルト角を機械的又は電気的に変更する。例えば、通信装置50と基地局装置10−1との間の上りリンクでの通信品質が、通信装置50と隣接基地局装置10−2との間の上りリンクの通信品質よりも高いとき、受信アンテナ12のチルト角を大きくするように調整量を定める。通信装置50と隣接基地局装置10−2との間の上りリンクでの通信品質が、通信装置50と基地局装置10−1との間の上りリンクの通信品質よりも高いとき、受信アンテナ12のチルト角を小さくするように調整量を定める。チルト角制御部15の構成は、図6を参照して上述した構成と同様であってよい。
【0126】
またチルト角制御部15は、送信アンテナ11のチルト角についても制御してよい。例えば通信装置50と基地局装置10−1との間の上りリンクでの通信品質が、通信装置50と隣接基地局装置10−2との間の上りリンクの通信品質よりも高いとき、送信アンテナ11のチルト角を小さくするように送信アンテナ11のチルト角の調整量を定める。通信装置50と隣接基地局装置10−2との間の上りリンクでの通信品質が、通信装置50と基地局装置10−1との間の上りリンクの通信品質よりも高いとき、送信アンテナ11のチルト角を大きくするように調整量を定める。送信アンテナ11のチルト角についても調整することで、上りリンクの境界線が調整前の位置から大きく動くことを防止することが可能となる。
【0127】
図26は、図23に示す無線通信システムにおけるアンテナのチルト角の制御例の説明図である。別な実施の態様においては、下記のオペレーションFA〜FKの各オペレーションはステップであってもよい。
【0128】
オペレーションFAにおいて基地局装置10−1や、隣接基地局装置10−2を含むその他の基地局装置の下りリンク用参照信号送信部16は、下りリンク用参照信号を送信する。オペレーションFBにおいて移動局装置60の下りリンク通信品質測定部63は、これらの基地局装置と移動局装置60との間のそれぞれの下りリンクの受信品質を測定する。
【0129】
オペレーションFCにおいて下りリンク通信品質測定部63は、基地局装置10−1の配置セルと隣接基地局装置10−2の配置セルとの間のセル境界でハンドオーバが発生したか否かを判定する。ハンドオーバが発生していない場合(オペレーションFC:N)、処理は終了する。ハンドオーバが発生している場合(オペレーションFC:Y)、処理はオペレーションFDへ移行する。オペレーションFDにおいて移動局装置60は、ハンドオーバ処理を行う。このとき移動局装置60のハンドオーバ情報送信部66は、ハンドオーバが生じたことを指示するハンドオーバ情報を、基地局装置10−1と隣接基地局装置10−2へ通知する。
【0130】
オペレーションFEにおいて移動局装置60の上り用リンク参照信号送信部65は、上りリンク用参照信号を送信する。オペレーションFFにおいて、基地局装置10−1及び隣接基地局装置10−2の上りリンク通信品質測定部20は、基地局装置10−1及び隣接基地局装置10−2と移動局装置60との間のそれぞれの上りリンクの通信品質を測定する。
【0131】
オペレーションFGにおいて基地局装置10−1の基地局間通信部18は、上りリンク通信品質測定部20により生成された上りリンク通信品質情報を隣接基地局装置10−2へ送信する。また、基地局装置10−1の隣接セル通信品質取得部19は、隣接基地局装置10−2から送信される上りリンク通信品質情報を受信する。
【0132】
オペレーションFHにおいて基地局装置10−1のチルト角制御部15は、基地局装置10−1と移動局装置60との間、及び隣接基地局装置10−2と移動局装置60との間のそれぞれの上りリンクの通信品質の差分が、閾値T4以下か否かを判定する。通信品質の差分が閾値T4以下であるとき(オペレーションFH:Y)、処理は終了する。通信品質の差分が閾値Tt以下でないとき(オペレーションFH:N)、処理はオペレーションFIへ移行する。
【0133】
オペレーションFIにおいてチルト角制御部15は、基地局装置10−1と移動局装置60との間の通信品質が、隣接基地局装置10−2と移動局装置60との間の通信品質よりも高いか否かを判定する。基地局装置10−1と移動局装置60との間の通信品質が、隣接基地局装置10−2と移動局装置60との間の通信品質よりも高いとき(オペレーションFI:Y)、処理はオペレーションFJへ移行する。基地局装置10−1と移動局装置60との間の通信品質が、隣接基地局装置10−2と移動局装置60との間の通信品質よりも高くないとき(オペレーションFI:N)、処理はオペレーションFKへ移行する。
【0134】
オペレーションFJにおいて調整量決定部32は、送信アンテナ11のチルト角を小さくするように調整量を決定する。これに加えて又はこれに代えて、調整量決定部32は、受信アンテナ12のチルト角を大きくするように調整量を決定する。オペレーションFKにおいて調整量決定部32は、送信アンテナ11のチルト角を大きくするように調整量を決定する。これに加えて又はこれに代えて、調整量決定部32は、受信アンテナ12のチルト角を小さくするように調整量を決定する。チルト角変更部13は、決定された調整量に基づいて送信アンテナ11のチルト角を変更する。これに加えて又はこれに代えてチルト角変更部14は、決定された調整量に基づいて受信アンテナ12のチルト角を変更する。オペレーションFJ又はFKの後、処理は終了する。
【0135】
本実施例によれば、ハンドオーバが発生した移動局装置60が下りリンクのセル境界にいることを利用して、隣接する各基地局装置と移動局装置60との間のそれぞれの上りリンク通信品質に基づいて、各アンテナ11及び12のチルト角を制御することができる。
【0136】
また、図23〜図26を参照して説明した実施例においても、図13〜図16を参照して説明した実施例と同様に、各基地局装置は、それぞれの受信アンテナ12から、上りリンクにおける通信品質測定用の上りリンク用参照信号を送信してよい。移動局装置60は、各基地局装置から上りリンク用参照信号をそれぞれ受信することにより、各基地局装置と移動局装置60とのそれぞれの間の上りリンクの通信品質を測定してよい。このため各基地局装置10−1及び10−2は、図14に示す構成要素を備えていてよく、移動局装置60は図15に示す構成要素を備えていてよい。
【0137】
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0138】
(付記1)
基地局装置であって、
下りリンクにおける無線信号を送信するための第1アンテナと、
上りリンクにおける無線信号を受信するための第2アンテナと、
前記基地局装置としての第1基地局装置に関する下りリンクでの通信品質及び上りリンクでの通信品質と、隣接基地局装置である第2基地局装置に関する下りリンクでの通信品質及び上りリンクでの通信品質とに基づいて、前記第1基地局装置及び前記第2基地局装置の間における下りリンクのセル境界と上りリンクのセル境界との差を低減するように、前記第1アンテナあるいは前記第2アンテナのそれぞれのチルト角を制御するチルト角制御部と、
を備える基地局装置。
【0139】
(付記2)
前記チルト角制御部は、所定地点に置かれた通信装置と前記第1基地局装置との間の下りリンクでの通信品質と、前記通信装置と前記第2基地局装置との間の下りリンクの通信品質との差を低減するように前記第1アンテナのチルト角を制御する、付記1に記載の基地局装置。
【0140】
(付記3)
前記チルト角制御部は、所定地点に置かれた通信装置と前記第1基地局装置との間の上りリンクでの通信品質と、前記通信装置と前記第2基地局装置との間の上りリンクの通信品質との差を低減するように前記第2アンテナのチルト角を制御する、付記1に記載の基地局装置。
【0141】
(付記4)
前記チルト角制御部は、複数の移動局装置のうち、下りリンクにおいて最も高い通信品質が測定される基地局装置が前記第1基地局装置である移動局装置のグループと、上りリンクにおいて最も高い通信品質が測定される基地局装置が前記第1基地局装置である移動局装置のグループと、の間の不一致を低減するように前記第1アンテナあるいは前記第2アンテナのそれぞれのチルト角を制御する付記1に記載の基地局装置。
【0142】
(付記5)
前記チルト角制御部は、ハンドオーバ処理を行う移動局装置と前記第1基地局装置との間の上りリンクでの通信品質と、前記移動局装置と前記第2基地局装置との間の上りリンクの通信品質との差を低減するように前記第1アンテナあるいは前記第2アンテナのチルト角を制御する付記1に記載の基地局装置。
【0143】
(付記6)
前記チルト角制御部は、前記第1基地局装置及び前記第2基地局装置の間における下りリンクのセル境界と上りリンクのセル境界との差を低減するように、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナのそれぞれのチルト角を制御する付記1〜5のいずれか一項に記載の基地局装置。
【0144】
(付記7)
付記1〜5のいずれか一項に記載の基地局装置と通信する移動局装置であって、上りリンクでの通信品質を測定するための参照信号を送信する参照信号送信部を備える移動局装置。
【0145】
(付記8)
参照信号送信部は、前記移動局装置がハンドオーバ時に前記参照信号を送信する付記7に記載の移動局装置。
【0146】
(付記9)
下りリンクにおける無線信号の送信および上りリンクにおける無線信号の受信のために基地局装置にそれぞれ設けられた第1アンテナ及び第2アンテナのチルト角の制御方法であって、
前記基地局装置としての第1基地局装置に関する下りリンクでの通信品質及び上りリンクでの通信品質と、隣接基地局装置である第2基地局装置に関する下りリンクでの通信品質及び上りリンクでの通信品質をそれぞれ測定し、
測定された各前記通信品質に基づいて、前記第1基地局装置及び前記第2基地局装置の間における下りリンクのセル境界と及び上りリンクのセル境界との差を低減するように、前記第1基地局装置における前記第1アンテナあるいは前記第2アンテナのそれぞれのチルト角を制御する方法。
【符号の説明】
【0147】
10 基地局装置
11 送信アンテナ
12 受信アンテナ
15 チルト角制御部
【技術分野】
【0001】
本明細書で論じられる実施態様は、無線通信システムにおける基地局装置及び移動局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイルセルラーネットワークでは、地理的な通信可能エリアは多くのセルに分割され、これらのセルの各々は一つの基地局との接続を行なう。移動局の電源が投入されると、移動局は交信先の基地局をサーチする。セルサーチ機能は多くの場合、周期的に送信されるセル固有基準信号か、または、プリアンブルに基づいて行なわれる。簡易な方法では、各基準信号を検出し、次に最良の基地局を求めようとすることにより、サーチを網羅的に行なう。
【0003】
なお、より小さなマイクロセルを含むマクロセルを包含する移動体通信システムにおいて利用される方法が提案されている。この方法は、アップリンク通信セル境界を、マクロセルとマイクロセルとの間で確立する工程と、ダウンリンク通信セル境界を、マクロセルとマイクロセルとの間で、アップリンク通信セル境界とは異なるように確立する工程と、を備える。アップリンク通信セル境界は、ダウンリンク通信セル境界よりも広くなるように確立される。ダウンリンク通信セル境界は、ブロードキャスト信号を送信するマイクロセルに関連づけられた基地局のダウンリンク・アンテナ・ビームを傾斜させて、ブロードキャスト信号のカバーエリアを縮小させることにより確立される。
【0004】
また、同一の通信領域をカバーするための複数本のチルトビームアンテナと、チルトビームアンテナのうち少なくとも1本のチルトビームアンテナのチルト角を他のチルトビームアンテナのチルト角と異なるように変化させるビームチルト角制御手段と、から構成される基地局が提案されている。この基地局は、上り回線では、少なくとも2本のチルトビームアンテナを用いて受信したレベルをレイク合成し、下り回線では、受信レベルが高い方の少なくとも1本のチルトビームアンテナを用いて送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−141741号公報
【特許文献2】特表2007−514367号公報
【特許文献3】特開2007−28091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上りリンクと下りリンクとの間で、移動局装置にとって接続先として好ましいセルが異なることがある。このような状態を「上下非対称状態」と呼ぶことがある。
【0007】
上下非対称状態は、例えば、隣接するセルにそれぞれ配置される基地局装置の送信電力が異なる場合に発生することがある。いま、隣接する2つのセルにそれぞれ送信電力が異なる基地局装置が配置されており、送信電力が比較的大きな基地局装置よりも送信電力が比較的小さな基地局装置の方にやや近い位置に、移動局装置が位置する場合を想定する。このような場合、下りリンクに関しては、送信電力が比較的小さな基地局装置よりも送信電力が比較的大きな基地局装置から受信する受信電力の方が大きいため、移動局装置にとっては送信電力が比較的大きな基地局装置に接続される方が好ましい。
【0008】
一方で上りリンクに関しては、移動局装置により近い、送信電力が比較的小さな基地局装置の方が、送信電力が比較的大きな基地局装置よりも受信電力が大きくなる。このため、移動局装置にとっては送信電力が比較的小さな基地局装置に接続される方が好ましい。
【0009】
上下非対称状態が発生すると、接続セルで受信される上りリンクの受信電力よりも他セルで受信される干渉電力の方が大きくなるため、上りリンクにおける通信品質の劣化を招く恐れがある。実施態様に係る装置及び方法は、隣接セル間における下りリンク及び上りリンクのセル境界の差を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施態様による基地局装置は、下りリンクにおける無線信号を送信するための第1アンテナと、上りリンクにおける無線信号を受信するための第2アンテナと、第1アンテナあるいは第2アンテナのチルト角を制御するチルト角制御部を備える。チルト角制御部は、基地局装置に関する下りリンクでの通信品質及び上りリンクでの通信品質と、隣接基地局装置に関する下りリンクでの通信品質及び上りリンクでの通信品質とに基づいて、基地局装置及び隣接基地局装置の間における下りリンクのセル境界と及び上りリンクのセル境界との差を低減するように、第1アンテナあるいは第2アンテナのチルト角を制御する。
【発明の効果】
【0011】
本件開示の装置又は方法によれば、下りリンクのセル境界と及び上りリンクのセル境界との差が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】基地局装置における実施例の構成図である。
【図2】チルト角の制御方法における実施例の説明図である。
【図3】無線通信システムにおける第1実施例の構成図である。
【図4】図3に示す基地局装置の構成の第1例を示す図である。
【図5】図3に示す通信装置の構成例を示す図である。
【図6】図4に示すチルト角制御部の構成例を示す図である。
【図7】図3に示す無線通信システムにおける送信アンテナのチルト角の制御例の説明図である。
【図8】図3に示す基地局装置の構成の第2例を示す図である。
【図9】無線通信システムにおける第2実施例の構成図である。
【図10】図9に示す通信装置の構成例を示す図である。
【図11】図9に示す基地局装置の構成例を示す図である。
【図12】図9に示す無線通信システムにおける受信アンテナのチルト角の制御例の説明図である。
【図13】無線通信システムにおける第3実施例の構成図である。
【図14】図13に示す基地局装置の構成例を示す図である。
【図15】図13に示す通信装置の構成例を示す図である。
【図16】図13に示す無線通信システムにおける受信アンテナのチルト角の制御例の説明図である。
【図17】無線通信システムにおける第4実施例の構成図である。
【図18】図17に示す移動局装置の構成例を示す図である。
【図19】図17に示す基地局装置の構成例を示す図である。
【図20】図19に示すチルト角制御部の構成例を示す図である。
【図21】対応関係情報の実現例の説明図である。
【図22】図17に示す無線通信システムにおけるアンテナのチルト角の制御例の説明図である。
【図23】無線通信システムにおける第5実施例の構成図である。
【図24】図23に示す移動局装置の構成例を示す図である。
【図25】図23に示す基地局装置の構成例を示す図である。
【図26】図23に示す無線通信システムにおけるアンテナのチルト角の制御例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付する図面を参照して本発明の実施例について説明する。図1は、基地局装置における実施例の構成図である。参照符号10は基地局装置を示し、参照符号11は送信アンテナを示し、参照符号12は受信アンテナを示し、参照符号13及び14はチルト角変更部を示し、参照符号15はチルト角制御部を示す。
【0014】
基地局装置10は、送信アンテナ11と、受信アンテナ12と、チルト角変更部13及び14と、チルト角制御部15とを備える。送信アンテナ11は、基地局装置10から、移動局装置へ送信される下りリンク上の無線信号を送信する。受信アンテナ12は、移動局装置から基地局装置10へ送信される上りリンク上の無線信号を受信する。送信アンテナ11及び受信アンテナ12は、それぞれ特許請求の範囲の第1アンテナ及び第2アンテナの一例として挙げられる。
【0015】
チルト角変更部13及び14は、それぞれ送信アンテナ11及び受信アンテナ12のアンテナ利得パターンの主ビームのチルト角を変更する。ここで「チルト角」とは、送信アンテナ11及び受信アンテナ12のアンテナ利得パターンの主ビームの垂直面内方向と、水平方向との間の角度、すなわち俯角であってよい。説明の簡単のため、送信アンテナ11及び受信アンテナ12のアンテナ利得パターンの主ビームのチルト角を、それぞれ送信アンテナ11及び受信アンテナ12のチルト角と記載することがある。
【0016】
チルト角制御部15は、以下に説明するように、チルト角変更部13及び14の少なくともいずれか一方を制御することによって、送信アンテナ11及び受信アンテナ12の少なくともいずれか一方のチルト角を制御する。
【0017】
図2は、チルト角の制御方法における実施例の説明図である。別な実施の態様においては、下記のオペレーションAA〜ACの各オペレーションはステップであってもよい。オペレーションAAにおいて、基地局装置10と、基地局装置10が配置されるセルに隣接する隣接セルに配置された他の基地局装置のそれぞれに関して、下りリンクでの通信品質が測定される。説明の便宜のため、隣接セルに配置された他の基地局装置を、「隣接基地局装置」と記載することがある。
【0018】
例えば、基地局装置10と隣接基地局装置からそれぞれ送信された無線信号を、移動局装置やその他の通信装置にて受信することにより、これら移動局装置や通信装置が、基地局装置10及び隣接基地局装置に関する下りリンクでの通信品質を測定してよい。
【0019】
オペレーションABにおいて、基地局装置10と隣接基地局装置のそれぞれに関して、上りリンクでの通信品質が測定される。例えば、移動局装置やその他の通信装置から送信された無線信号を、これら基地局装置でそれぞれ受信することにより、これら基地局装置が、それぞれの基地局装置に関する上りリンクでの通信品質を測定してよい。
【0020】
または、例えば、基地局装置10と隣接基地局装置からそれぞれ送信された無線信号を、移動局装置やその他の通信装置にて受信することにより、これら移動局装置や通信装置が、基地局装置10及び隣接基地局装置に関する上りリンクでの通信品質を測定してよい。このとき上りリンクでの通信品質は、例えば、移動局装置や通信装置にて測定された受信電力を、基地局装置10及び隣接基地局装置の既知の送信電力から引いた、伝搬ロスに基づいて定められてもよい。なお、オペレーションAA及びオペレーションABはどちらが先に実行されてもよい。
【0021】
オペレーションACにおいて、チルト角制御部15は、基地局装置10に関する上下リンクでの各通信品質と、隣接基地局装置に関する上下リンクでの各通信品質とに基づき、送信アンテナ11及び受信アンテナ12の少なくともいずれか一方の各チルト角を制御する。このときチルト角制御部15は、基地局装置10が配置されたセルと隣接基地局装置が配置された隣接セルの間における下りリンクのセル境界と、上りリンクのセル境界との差を低減するように、送信アンテナ11及び受信アンテナ12の少なくともいずれか一方の各チルト角を制御する。
【0022】
例えば、下りリンクのセル境界の方が上りリンクのセル境界より基地局装置10から遠いとき、チルト角制御部15は、送信アンテナ11のチルト角を大きくして下りリンクのセルを縮小する。これに加えて又はこれに代えて、チルト角制御部15は、受信アンテナ12のチルト角を小さくして上りリンクのセルを拡大する。また、上りリンクのセル境界の方が下りリンクのセル境界より基地局装置10から遠いとき、チルト角制御部15は、受信アンテナ12のチルト角を大きくして上りリンクのセルを縮小する。これに加えて又はこれに代えて、チルト角制御部15は、送信アンテナ12のチルト角を大きくして下りリンクのセルを拡大する。
【0023】
下りリンクのセル境界及び上りリンクのセル境界のどちらが基地局装置10に近いかは、基地局装置10に関する上下リンクでの各通信品質と、隣接基地局装置に関する上下リンクでの各通信品質とにより判定することができる。
【0024】
例えば、セル境界付近にいる通信装置と、基地局装置10及び隣接基地局装置のそれぞれとの間で下りリンク及び上りリンクの通信品質を測定すれば、上下どちらのセル境界が基地局装置10に近いかが分かる。すなわち、基地局装置10及び隣接基地局装置の間の下りリンクの通信品質の差と、上りリンクの通信品質の差とに基づいて、上下どちらのセル境界が基地局装置10に近いか判定することができる。
【0025】
このため、例えばチルト角制御部15は、所定地点に置かれた通信装置と基地局装置10との間の下りリンクでの通信品質と、この通信装置と隣接基地局装置との間の下りリンクの通信品質との差を低減するように送信アンテナ11のチルト角を制御してよい。また、例えばチルト角制御部15は、所定地点に置かれた通信装置と基地局装置10との間の上りリンクでの通信品質と、この通信装置と隣接基地局装置との間の上りリンクの通信品質との差を低減するように受信アンテナ12のチルト角を制御してよい。
【0026】
また例えば、複数の移動局装置に関して、上下リンクそれぞれにおいて、最も高い通信品質が測定される基地局装置を決定することによって、下りリンクのセル境界及び上りリンクのセル境界のどちらが基地局装置10に近いかを判定することができる。このとき、下りリンクにおいて最も高い通信品質が測定される基地局装置が基地局装置10である移動局装置のグループAと、上りリンクにおいて最も高い通信品質が測定される基地局装置が基地局装置10である移動局装置のグループBとを決定する。
【0027】
グループAに属する移動局装置の方がグループBに属する移動局装置よりも多ければ、上りリンクのセル境界の方が下りリンクのセル境界よりも基地局装置10に近い。グループBに属する移動局装置の方がグループAに属する移動局装置よりも多ければ、下りリンクのセル境界の方が上りリンクのセル境界よりも基地局装置10に近い。このため、例えばチルト角制御部15は、グループAとグループBとの間の不一致を低減するように、送信アンテナ11及び受信アンテナ12の少なくともいずれか一方のチルト角を制御してよい。
【0028】
またハンドオーバが発生した移動局装置が下りリンクのセル境界付近にいるという事実を利用してもよい。すなわち、ハンドオーバが発生した移動局装置と、基地局装置10及び隣接基地局装置との間でそれぞれ上りリンクの通信品質を測定することにより、上下どちらのセル境界が基地局装置10に近いか判定することができる。
【0029】
このため、例えばチルト角制御部15は、ハンドオーバ処理を行う移動局装置と基地局装置10との間の上りリンクでの通信品質と、この移動局装置と隣接基地局装置との間の上りリンクの通信品質との差を低減するようにチルト角を制御する。
【0030】
本実施例によれば、隣接セル間における下りリンク及び上りリンクのセル境界の差を低減するように、送信アンテナ11及び受信アンテナ12の少なくともいずれか一方のチルト角を制御することができる。
【0031】
隣接する2つのセルにそれぞれ送信電力が異なる基地局装置が配置されている場合を想定する。上述の制御によって、送信電力が比較的大きな基地局装置における送信アンテナ11のチルト角は、例えば、受信アンテナ12のチルト角よりも大きくなるように制御されてよい。このように制御されることにより、送信電力が比較的大きな基地局装置が配置されたセルの下りリンクのセル半径が縮小され、上りリンクのセル半径が拡大される。
【0032】
一方で、送信電力が比較的小さな基地局装置における送信アンテナ11のチルト角は、例えば、受信アンテナ12のチルト角よりも小さくなるように制御されてよい。このように制御されることにより、送信電力が比較的小さな基地局装置が配置されたセルの下りリンクのセル半径が拡大され、上りリンクのセル半径が縮小される。
【0033】
続いて、基地局装置を含む無線通信システムにおける実施例を説明する。図3は、無線通信システムにおける第1実施例の構成図である。参照符号10−1は基地局装置を示し、参照符号10−2は隣接基地局装置を示し、参照符号50は通信装置を示す。参照符号51は通信装置50の送信アンテナを示し、参照符号52は通信装置50の受信アンテナを示す。
【0034】
無線通信システム1は、基地局装置10−1と、隣接基地局装置10−2とを含む。本実施例では、基地局装置10−1の送信アンテナ11のチルト角を調整するために、下りリンクのセル境界の目標位置として予め定められた所望のセル境界位置に通信装置50を配置する。例えば、送信アンテナ11及び/又は受信アンテナ12のチルト角の調整前における、下りリンクのセル境界と上りリンクのセル境界の中間位置を、このような目標位置として使用してよい。
【0035】
基地局装置10−1及び隣接基地局装置10−2は、それぞれ下りリンクにおける通信品質測定用の下りリンク用参照信号を通信装置50へ送信する。通信装置50は、上記の所望の目標位置における、基地局装置10−1と通信装置50との間の下りリンクの通信品質と、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の下りリンクの通信品質を測定する。
【0036】
図4は、図3に示す基地局装置10−1の構成の第1例を示す図である。隣接基地局装置10−2も基地局装置10−1と同様の構成を有していてよい。以下の他の実施例においても同様である。参照符号16は、下りリンク用参照信号送信部を示し、参照符号17は下りリンク通信品質取得部を示す。図1に示す構成要素と同様の構成要素には図1で使用した参照符号と同じ参照符号を付する。
【0037】
基地局装置10−1は、送信アンテナ11と、受信アンテナ12と、チルト角変更部13と、チルト角制御部15と、下りリンク用参照信号送信部16と、下りリンク通信品質取得部17を備える。下りリンク用参照信号送信部16は、下りリンク用参照信号を、送信アンテナ11を介して送信する。下りリンク用参照信号は、通信装置50が基地局装置10−1と通信装置50との間の下りリンクの通信品質を測定する際に使用される。
【0038】
下りリンク通信品質取得部17は、通信装置50から送信される、基地局装置10−1と通信装置50との間の下りリンクの通信品質を示す下りリンク通信品質情報を受信する。また、下りリンク通信品質取得部17は、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の下りリンクに関する下りリンク通信品質情報を受信してもよい。
【0039】
図5は、図3に示す通信装置50の構成例を示す図である。参照符号53は下りリンク通信品質測定部を示し、参照符号54は下りリンク通信品質情報送信部を示す。通信装置50は、送信アンテナ51と、受信アンテナ52と、下りリンク通信品質測定部53と、下りリンク通信品質情報送信部54とを備える。
【0040】
下りリンク通信品質測定部53は、基地局装置10−1と通信装置50との間の下りリンクの通信品質、及び隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の下りリンクの通信品質を測定する。例えば、下りリンク通信品質測定部53は、これらの基地局装置10−1及び10−2からそれぞれ送信された下りリンク用参照信号の受信電力を、それぞれの下りリンクの通信品質として測定してよい。
【0041】
下りリンク通信品質情報送信部54は、基地局装置10−1と通信装置50との間で測定された下りリンクの通信品質を示す下りリンク通信品質情報を基地局装置10−1へ送信する。下りリンク通信品質情報送信部54は、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間で測定された下りリンクの通信品質を示す下りリンク通信品質情報も、基地局装置10−1へ送信してよい。
【0042】
図6は、図4に示すチルト角制御部15の構成例を示す図である。参照符号30は減算器を示し、参照符号31は比較部を示し、参照符号32は調整量決定部を示す。チルト角制御部15は、減算器30と、比較部31と、調整量決定部32を備える。
【0043】
減算器30は、基地局装置10−1と通信装置50との間、及び隣接基地局装置10−2と通信装置50との間でそれぞれ測定された下りリンクの通信品質を示す下りリンク通信品質情報を入力する。減算器30は、基地局装置10−1と通信装置50との間、及び隣接基地局装置10−2と通信装置50との間でそれぞれ測定された下りリンクの通信品質の差分を算出する。
【0044】
比較部31は、通信品質の差分の大きさと所定の閾値T1とを比較する。通信品質の差分の大きさが所定の閾値T1よりも大きいとき、調整量決定部32は、送信アンテナ11のチルト角を調整する調整量を決定する。例えば、基地局装置10−1と通信装置50との間の品質が、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の品質よりも高いとき、調整量決定部32は、送信アンテナ11のチルト角を大きくするように調整量を決定する。反対に、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の品質が、基地局装置10−1と通信装置50との間の品質よりも高いとき、調整量決定部32は、送信アンテナ11のチルト角を小さくするように調整量を決定する。
【0045】
調整量決定部32は、例えば、通信品質の差分とチルト角の調整量との関係を予め定めるテーブルや計算式に基づいて、調整量の大きさを決定してよい。また例えば、一度の調整で調整量決定部32から指示される調整量を、固定されたステップ角度幅Δθの調整量としてよい。
【0046】
図4のチルト角変更部13は、調整量決定部32により決定された調整量に基づいて、送信アンテナ11のチルト角を機械的又は電気的に変更する。
【0047】
図7は、図3に示す無線通信システムにおける送信アンテナのチルト角の制御例の説明図である。別な実施の態様においては、下記のオペレーションBA〜BHの各オペレーションはステップであってもよい。オペレーションBAにおいて、送信アンテナ11のチルト角の調整を行うオペレータは、通信装置50を、所望のセル境界位置へ配置する。
【0048】
オペレーションBBにおいて基地局装置10−1及び隣接基地局装置10−2の下りリンク用参照信号送信部16は、それぞれ下りリンク用参照信号を送信する。オペレーションBCにおいて通信装置50の下りリンク通信品質測定部53は、基地局装置10−1と通信装置50との間の下りリンクの通信品質、及び隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の下りリンクの通信品質を測定する。
【0049】
オペレーションBDにおいて下りリンク通信品質情報送信部54は、基地局装置10−1と通信装置50との間、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の各下りリンクに関する下りリンク通信品質情報を基地局装置10−1へ送信する。
【0050】
オペレーションBEにおいて基地局装置10−1のチルト角制御部15は、基地局装置10−1と通信装置50との間、及び隣接基地局装置10−2と通信装置50との間のそれぞれの下りリンクの通信品質の差分が、閾値T1以下か否かを判定する。通信品質の差分が閾値T1以下であるとき(オペレーションBE:Y)、処理は終了する。通信品質の差分が閾値T1以下でないとき(オペレーションBE:N)、処理はオペレーションBFへ移行する。
【0051】
オペレーションBFにおいてチルト角制御部15は、基地局装置10−1と通信装置50との間の通信品質が、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の通信品質よりも高いか否かを判定する。基地局装置10−1と通信装置50との間の通信品質が、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の通信品質よりも高いとき(オペレーションBF:Y)、処理はオペレーションBGへ移行する。基地局装置10−1と通信装置50との間の通信品質が、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の通信品質よりも高くないとき(オペレーションBF:N)、処理はオペレーションBHへ移行する。
【0052】
オペレーションBGにおいて調整量決定部32は、送信アンテナ11のチルト角を大きくするように調整量を決定する。オペレーションBHにおいて調整量決定部32は、送信アンテナ11のチルト角を小さくするように調整量を決定する。チルト角変更部13は、決定された調整量に基づいて送信アンテナ11のチルト角を変更する。オペレーションBG又はBHの後、処理はオペレーションBBへ戻る。オペレーションBEの判定において通信品質の差分が閾値T1以下となるまで、オペレーションBB〜オペレーションBHが反復される。
【0053】
本実施例によれば、下りリンクのセル境界を所望の目標位置へ位置づけるように、送信アンテナ11のチルト角を調整することが可能となる。このため本実施例によれば、隣接セル間における下りリンク及び上りリンクのセル境界の差をなくす、もしくは低減する際に、下りリンクのセル境界の位置を制御することができる。
【0054】
図8は、図3に示す基地局装置10−1の構成の第2例を示す図である。参照符号18は基地局間通信部を示し、参照符号19は隣接セル通信品質取得部を示す。図4に示す構成要素と同様の構成要素には図4で使用した参照符号と同じ参照符号を付する。基地局装置10−1は、送信アンテナ11と、受信アンテナ12と、チルト角変更部13と、チルト角制御部15と、下りリンク用参照信号送信部16と、下りリンク通信品質取得部17と、基地局間通信部18を備える。基地局間通信部18は、隣接セル通信品質取得部19を備える。
【0055】
図3〜図7を参照して説明した実施例では、通信装置50は、基地局装置10−1と通信装置50との間、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の、両方の下りリンクに関する下りリンク通信品質情報を基地局装置10−1へ送信する。
【0056】
これに代えて、本実施例による通信装置50は、基地局装置10−1と通信装置50との間の下りリンク通信品質情報を基地局装置10−1へ、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の下りリンク通信品質情報を隣接基地局装置10−2へ送信する。そして、隣接基地局装置10−2は、送信された下りリンク通信品質情報を、基地局間通信部18によって基地局装置10−1へ送信する。基地局装置10−1の隣接セル通信品質取得部19は、隣接基地局装置10−2から送信された隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の下りリンク通信品質情報を取得する。
【0057】
本実施例によっても、基地局装置10−1は、基地局装置10−1と通信装置50との間、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の、両方の下りリンクに関する下りリンク通信品質情報を取得することが可能である。
【0058】
続いて、無線通信システムにおける他の実施例を説明する。図9は、無線通信システムにおける第2実施例の構成図である。本実施例では、基地局装置10−1の受信アンテナ11のチルト角を調整するために、上りリンクのセル境界の目標位置として予め定められた所望のセル境界位置に通信装置50を配置する。
【0059】
通信装置50は、上りリンクにおける通信品質測定用の上りリンク用参照信号を、上述の所望の目標位置から送信する。基地局装置10−1は、通信装置50から送信された上りリンク用参照信号を受信することにより、基地局装置10−1と通信装置50との間の上りリンクの通信品質を測定する。また隣接基地局装置10−2も同様に、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の上りリンクの通信品質を測定する。
【0060】
なお、本実施例の基地局装置10−1も、送信アンテナ11のチルト角の調整のために図4に示す構成を含んでいてよい。同様に本実施例の通信装置50も、基地局装置10−1の送信アンテナ11のチルト角の調整のために図5に示す構成を含んでいてよい。
【0061】
図10は、図9に示す通信装置50の構成例を示す図である。参照符号55は、上りリンク用参照信号送信部を備える。図5に示す構成要素と同様の構成要素には図5で使用した参照符号と同じ参照符号を付する。通信装置50は、送信アンテナ51と、受信アンテナ52と、上りリンク用参照信号送信部55を備える。上りリンク用参照信号送信部55は、送信アンテナ51を介して上りリンク用参照信号を送信する。上りリンク用参照信号は、基地局装置10−1が、基地局装置10−1と通信装置50との間の上りリンクの通信品質を測定する際に使用される。
【0062】
図11は、図9に示す基地局装置10−1の構成例を示す図である。参照符号20は上りリンク通信品質測定部を示す。図1又は図8に示す構成要素と同様の構成要素には図1又は図8で使用した参照符号と同じ参照符号を付する。基地局装置10−1は、送信アンテナ11と、受信アンテナ12と、チルト角変更部14と、チルト角制御部15と、基地局間通信部18と、上りリンク通信品質測定部20を備える。基地局間通信部18は、隣接セル通信品質取得部19を備える。
【0063】
上りリンク通信品質測定部20は、基地局装置10−1と通信装置50との間の上りリンクの通信品質を測定する。例えば、上りリンク通信品質測定部20は、通信装置50から送信された上りリンク用参照信号の受信電力を、上りリンクの通信品質として測定してよい。
【0064】
基地局間通信部18は、上りリンク通信品質測定部20により測定された上りリンクに関する上りリンク通信品質情報を、隣接基地局装置10−2へ送信する。隣接セル通信品質取得部19は、隣接基地局装置10−2において同様に測定された隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の上りリンクに関する上りリンク通信品質情報を受信する。
【0065】
チルト角制御部15は、通信装置50と基地局装置10−1との間の上りリンクでの通信品質と、通信装置50と隣接基地局装置10−2との間の上りリンクの通信品質との差を低減するような受信アンテナ12のチルト角の調整量を決定する。チルト角変更部14は、チルト角制御部15により決定された調整量に基づいて、受信アンテナ12のチルト角を機械的又は電気的に変更する。チルト角制御部15の構成は、図6を参照して上述した構成と同様であってよい。
【0066】
図12は、図9に示す無線通信システムにおける受信アンテナのチルト角の制御例の説明図である。別な実施の態様においては、下記のオペレーションCA〜CHの各オペレーションはステップであってもよい。オペレーションCAにおいて、受信アンテナ12のチルト角の調整を行うオペレータは、通信装置50を所望のセル境界位置へ配置する。
【0067】
オペレーションCBにおいて通信装置50の上りリンク用参照信号送信部55は、上りリンク用参照信号を送信する。オペレーションCCにおいて基地局装置10−1及び隣接基地局装置10−2の上りリンク通信品質測定部20は、各基地局装置10−1及び10−2と通信装置50との間の上りリンクの通信品質をそれぞれ測定する。
【0068】
オペレーションCDにおいて基地局間通信部18は、上りリンク通信品質情報を隣接基地局装置10−2へ送信する。また、隣接セル通信品質取得部19は、隣接基地局装置10−2において同様に測定された基地局装置10−2と通信装置50との間の上りリンクに関する上りリンク通信品質情報を受信する。
【0069】
オペレーションCEにおいて基地局装置10−1のチルト角制御部15は、基地局装置10−1と通信装置50との間、及び隣接基地局装置10−2と通信装置50との間のそれぞれの上りリンクの通信品質の差分が、閾値T2以下か否かを判定する。通信品質の差分が閾値T2以下であるとき(オペレーションCE:Y)、処理は終了する。通信品質の差分が閾値T2以下でないとき(オペレーションCE:N)、処理はオペレーションCFへ移行する。
【0070】
オペレーションCFにおいてチルト角制御部15は、基地局装置10−1と通信装置50との間の通信品質が、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の通信品質よりも高いか否かを判定する。基地局装置10−1と通信装置50との間の通信品質が、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の通信品質よりも高いとき(オペレーションCF:Y)、オペレーションCGへ移行する。基地局装置10−1と通信装置50との間の通信品質が、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の通信品質よりも高くないとき(オペレーションCF:N)、オペレーションCHへ移行する。
【0071】
オペレーションCGにおいて調整量決定部32は、受信アンテナ12のチルト角を大きくするように調整量を決定する。オペレーションCHにおいて調整量決定部32は、受信アンテナ12のチルト角を小さくするように調整量を決定する。チルト角変更部14は、決定された調整量に基づいて受信アンテナ12のチルト角を変更する。オペレーションCG又はCHの後、処理はオペレーションCBへ戻る。オペレーションCEの判定において通信品質の差分が閾値T1以下となるまで、オペレーションCB〜オペレーションCHが反復される。
【0072】
本実施例によれば、上りリンクのセル境界を所望の目標位置へ位置づけるように、受信アンテナ12のチルト角を調整することが可能となる。このため本実施例によれば、隣接セル間における下りリンク及び上りリンクのセル境界の差をなくす、もしくは低減する際に、上りリンクのセル境界の位置を制御することができる。
【0073】
続いて、上述の所望の目標位置に置かれた通信装置50を利用して、基地局装置10−1の受信アンテナ11のチルト角を調整する他の実施例を説明する。無線通信システムにおける他の実施例を説明する。図13は、無線通信システムにおける第3実施例の構成図である。なお、本実施例の基地局装置10−1も、送信アンテナ11のチルト角の調整のために図4に示す構成を含んでいてよい。同様に本実施例の通信装置50も、基地局装置10−1の送信アンテナ11のチルト角の調整のために図5に示す構成を含んでいてよい。
【0074】
本実施例では、基地局装置10−1及び隣接基地局装置10−2は、それぞれの受信アンテナ12から、上りリンクにおける通信品質測定用の上りリンク用参照信号を送信する。通信装置50は、上記の所望の目標位置において基地局装置10−1及び隣接基地局装置10−2から上りリンク用参照信号をそれぞれ受信することにより、各基地局装置10−1及び10−2と通信装置50とのそれぞれの間の上りリンクの通信品質を測定する。
【0075】
図14は、図13に示す基地局装置10−1の構成例を示す図である。参照符号21は上りリンク用参照信号送信部を示し、参照符号22は上りリンク通信品質取得部を示す。図11に示す構成要素と同様の構成要素には図11で使用した参照符号と同じ参照符号を付する。基地局装置10−1は、送信アンテナ11と、受信アンテナ12と、チルト角変更部14と、チルト角制御部15と、上りリンク用参照信号送信部21と、上りリンク通信品質取得部22を備える。
【0076】
上りリンク用参照信号送信部21は、上りリンク用参照信号を、受信アンテナ12を介して送信する。上りリンク用参照信号は、後述するように通信装置50が基地局装置10−1と通信装置50との間の上りリンクの通信品質を測定する際に使用する。基地局装置10−1の送信アンテナ11から、別途、下りリンク用参照信号が送信されるときは、上りリンク用参照信号は、下りリンク用参照信号と、異なるタイムスロットやタイムフレームで送信されるか、周波数的又は符号的に直交した信号であってよい。
【0077】
上りリンク通信品質取得部22は、通信装置50から送信される、基地局装置10−1と通信装置50との間の上りリンクの通信品質を示す上りリンク通信品質情報を受信する。また、上りリンク通信品質取得部22は、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の上りリンクに関する上りリンク通信品質情報を受信してもよい。
【0078】
図15は、図13に示す通信装置50の構成例を示す図である。参照符号56は上りリンク通信品質測定部を示し、参照符号57は上りリンク通信品質情報送信部を示す。図5に示す構成要素と同様の構成要素には図5で使用した参照符号と同じ参照符号を付する。通信装置50は、送信アンテナ51と、受信アンテナ52と、上りリンク通信品質測定部56と、上りリンク通信品質情報送信部57とを備える。
【0079】
上りリンク通信品質測定部56は、基地局装置10−1と通信装置50との間の上りリンクの通信品質、及び隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の上りリンクの通信品質を測定する。例えば、上りリンク通信品質測定部56は、予め通知された各基地局装置10−1及び10−2の送信電力から、各基地局装置10−1及び10−2からそれぞれ受信した上りリンク用参照信号の受信電力を引いた伝搬ロスをそれぞれ算出する。上りリンク通信品質測定部56は、各伝搬ロスに基づいて、それぞれの下りリンクの通信品質を測定してよい。
【0080】
上りリンク通信品質情報送信部57は、基地局装置10−1と通信装置50との間の上りリンク通信品質情報を基地局装置10−1へ送信する。上りリンク通信品質情報送信部57は、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の上りリンク通信品質情報も、基地局装置10−1へ送信してよい。
【0081】
図16は、図13に示す無線通信システムにおける受信アンテナのチルト角の制御例の説明図である。下記のオペレーションDA〜DHの各オペレーションはステップであってもよい。オペレーションDAにおいて、受信アンテナ12のチルト角の調整を行うオペレータは、通信装置50を所望のセル境界位置へ配置する。
【0082】
オペレーションBDにおいて基地局装置10−1及び隣接基地局装置10−2の上りリンク用参照信号送信部21は、それぞれ上りリンク用参照信号を送信する。オペレーションDCにおいて通信装置50の上りリンク通信品質測定部56は、基地局装置10−1と通信装置50との間の上りリンクの通信品質、及び隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の上りリンクの通信品質を測定する。
【0083】
オペレーションDDにおいて下りリンク通信品質情報送信部54は、基地局装置10−1と通信装置50との間、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の各上りリンクに関する上りリンク通信品質情報を基地局装置10−1へ送信する。
【0084】
オペレーションDEにおいて基地局装置10−1のチルト角制御部15は、基地局装置10−1と通信装置50との間、及び隣接基地局装置10−2と通信装置50との間のそれぞれの上りリンクの通信品質の差分が、閾値T2以下か否かを判定する。通信品質の差分が閾値T2以下であるとき(オペレーションDE:Y)、処理は終了する。通信品質の差分が閾値T2以下でないとき(オペレーションDE:N)、処理はオペレーションDFへ移行する。
【0085】
オペレーションDFにおいてチルト角制御部15は、基地局装置10−1と通信装置50との間の通信品質が、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の通信品質よりも高いか否かを判定する。基地局装置10−1と通信装置50との間の通信品質が、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の通信品質よりも高いとき(オペレーションDF:Y)、処理はオペレーションDGへ移行する。基地局装置10−1と通信装置50との間の通信品質が、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の通信品質よりも高くないとき(オペレーションDF:N)、処理はオペレーションDHへ移行する。
【0086】
オペレーションDGにおいて調整量決定部32は、受信アンテナ12のチルト角を大きくするように調整量を決定する。オペレーションDHにおいて調整量決定部32は、受信アンテナ12のチルト角を小さくするように調整量を決定する。チルト角変更部14は、決定された調整量に基づいて受信アンテナ12のチルト角を変更する。オペレーションDG又はDHの後、処理はオペレーションDBへ戻る。オペレーションDEの判定において通信品質の差分が閾値T1以下となるまで、オペレーションDB〜オペレーションDHが反復される。
【0087】
本実施例によっても、基地局装置10−1は、各基地局装置10−1及び10−2と間の上りリンク通信品質情報を取得し、受信アンテナ12のチルト角の調整を行うことが可能である。
【0088】
なお、図13〜図16を参照して説明した実施例では、通信装置50は、基地局装置10−1と通信装置50との間、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の、両方の上りリンクに関する上りリンク通信品質情報を基地局装置10−1へ送信する。これに代えて通信装置50は、基地局装置10−1と通信装置50との間の上りリンク通信品質情報を基地局装置10−1へ、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の上りリンク通信品質情報を隣接基地局装置10−2へ送信してもよい。そして、基地局装置10−1は、図8を参照して説明した実施例と同様に、隣接基地局装置10−2との間の基地局間通信によって、隣接基地局装置10−2と通信装置50との間の下りリンク通信品質情報を取得してもよい。
【0089】
続いて、無線通信システムにおける他の実施例を説明する。図17は、無線通信システムにおける第4実施例の構成図である。参照符号60−1、60−2〜60−nのそれぞれは、基地局装置10−1又は10−2と通信を行う移動局装置である。これら移動局装置60−1、60−2〜60−nを総称して、移動局装置60と記載することがある。参照符号61は移動局装置60の送信アンテナを示し、参照符号62は移動局装置60の受信アンテナを示す。無線通信システム1は、基地局装置10−1と、隣接基地局装置10−2と、複数の移動局装置60−1、60−2〜60−nを含む。
【0090】
基地局装置10−1及び隣接基地局装置10−2は、下りリンク用参照信号を移動局装置60へ送信する。移動局装置60は、受信した下りリンク用参照信号の受信品質に基づいて、最も下りリンクの受信品質の良い基地局装置が配置されたセルを下りリンク接続セルとして決定する。移動局装置60は、決定した下りリンク接続セルを示す下りリンク接続セル情報を、決定した下りリンク接続セルに配置された基地局装置10−1へ送信する。
【0091】
移動局装置60は、上りリンク用参照信号を送信する。基地局装置10−1は、移動局装置60から送信された上りリンク用参照信号を受信することにより、基地局装置10−1と移動局装置60との間の上りリンクの通信品質を測定する。また隣接基地局装置10−2も同様に、隣接基地局装置10−2と移動局装置60との間の上りリンクの通信品質を測定する。
【0092】
図18は、図17に示す移動局装置60の構成例を示す図である。参照符号63は下りリンク通信品質測定部を示し、参照符号64は下りリンク接続セル決定部を示し、参照符号65は上り用リンク参照信号送信部を示す。移動局装置60は、送信アンテナ61と受信アンテナ62と、下りリンク通信品質測定部63と、下りリンク接続セル決定部64と、上り用リンク参照信号送信部65を備える。
【0093】
下りリンク通信品質測定部63は、基地局装置10−1や、隣接基地局装置10−2を含むその他の基地局装置からそれぞれ受信した下りリンク用参照信号に基づいて、これらの基地局装置と移動局装置60との間のそれぞれの下りリンクの受信品質を測定する。例えば、下りリンク通信品質測定部63は、各基地局装置からそれぞれ送信された参照信号の受信電力をそれぞれの下りリンクの受信品質として測定してよい。
【0094】
下りリンク接続セル決定部64は、下りリンクの受信品質に基づいて、最も下りリンクの受信品質の良い基地局装置が配置されたセルを下りリンク接続セルとして決定する。下りリンク接続セル決定部64は、決定した下りリンク接続セルを示す下りリンク接続セル情報を、決定した下りリンク接続セルに配置された基地局装置へ送信する。下りリンク接続セル情報は、例えば、移動局装置60の識別子と下りリンク接続セルの識別子を含んでいてよい。
【0095】
上り用リンク参照信号送信部65は、上りリンク用参照信号を送信アンテナ61を介して送信する。上りリンク用参照信号は、基地局装置10−1や、隣接基地局装置10−2を含むその他の基地局装置が、移動局装置60との間の上りリンクの通信品質を測定する際に使用される。上りリンク用参照信号は、移動局装置60から送信される移動局装置60の識別子情報と何らかの形で関連付けられた形式で送信される。例えば上りリンク用参照信号は、移動局装置60の識別子を含むか、移動局装置60の識別子を表す信号であってよい。また例えば、上りリンク用参照信号は、移動局装置60の識別子と、同じタイムスロットやデータフレームにて移動局装置60から送信されることにより、移動局装置60の識別子と関連付けられてもよい。
【0096】
図19は、図17に示す基地局装置10−1の構成例を示す図である。参照符号23は接続セル指示情報取得部を示し、参照符号24は隣接セル接続情報取得部を示す。図4又は図11に示す構成要素と同様の構成要素には図4又は図11で使用した参照符号と同じ参照符号を付する。基地局装置10−1は、送信アンテナ11と、受信アンテナ12と、チルト角変更部13及び14と、チルト角制御部15と、下りリンク用参照信号送信部16と、基地局間通信部18と、上りリンク通信品質測定部20と、接続セル指示情報取得部23を備える。基地局間通信部18は、隣接セル通信品質取得部19と隣接セル接続情報取得部24を備える。
【0097】
下りリンク用参照信号送信部16は、下りリンク用参照信号を、送信アンテナ11を介して送信する。下りリンク用参照信号は、移動局装置60が、基地局装置10−1と移動局装置60との間の下りリンクの受信品質を測定する際に使用される。接続セル指示情報取得部23は、移動局装置60から送信される下りリンク接続セル指示情報を、受信アンテナ12を介して受信する。
【0098】
基地局間通信部18は、接続セル指示情報取得部23により取得された下りリンク接続セル指示情報を隣接基地局装置10−2へ送信する。隣接セル接続情報取得部24は、隣接基地局装置10−2から送信される、隣接基地局装置10−2の接続セル指示情報取得部23にて取得された下りリンク接続セル指示情報を受信する。接続セル指示情報取得部23により取得された下りリンク接続セル指示情報及び隣接セル接続情報取得部24により取得された下りリンク接続セル指示情報は、チルト角制御部15へ出力される。
【0099】
上りリンク通信品質測定部20は、基地局装置10−1と移動局装置60との間の上りリンクの通信品質を測定する。例えば、上りリンク通信品質測定部20は、移動局装置60から送信された上りリンク用参照信号の受信電力を、上りリンクの通信品質として測定してよい。上りリンク通信品質測定部20は、測定された上りリンクの通信品質を示す上りリンク通信品質情報を生成する。上りリンク通信品質情報は、上りリンクの通信品質と、基地局装置10−1が配置されるセルの識別子と、移動局装置60の識別子を含んでいてよい。
【0100】
基地局間通信部18は、上りリンク通信品質測定部20により生成された上りリンク通信品質情報を隣接基地局装置10−2へ送信する。隣接セル通信品質取得部19は、隣接基地局装置10−2から送信される、隣接基地局装置10−2の上りリンク通信品質測定部20により生成された上りリンク通信品質情報を受信する。上りリンク通信品質測定部20により生成された上りリンク通信品質情報及び隣接セル通信品質取得部19により取得された上りリンク通信品質情報は、チルト角制御部15へ出力される。
【0101】
図20は、図19に示すチルト角制御部15の構成例を示す図である。参照符号32は調整量決定部を示し、参照符号33は対応関係情報作成部を示し、参照符号34は対応関係情報記憶部を示し、参照符号35は非対称度決定部を示す。対応関係情報作成部33は、チルト角制御部15へ入力された下りリンク接続セル情報と、上りリンク通信品質情報とに基づいて、対応関係情報36を作成する。対応関係情報36は、対応関係情報記憶部34に記憶される。
【0102】
対応関係情報36は、各移動局装置60と、各移動局装置60において下りリンク接続セルとして選択されたセルとの対応関係を示す。ここに、下りリンク接続セルは、下りリンク用参照信号の受信品質が最も良い基地局装置が配置されるセルである。したがって、対応関係情報36は、各移動局装置60と、各移動局装置60において最も良い下りリンクの通信品質が測定された基地局装置との対応関係を示す。さらに対応関係情報36は、各移動局装置60と、各移動局装置60との上りリンクにおいて最も高い通信品質が測定される基地局装置が配置されるセルとの対応関係を示す。
【0103】
図21は、対応関係情報36の実現例の説明図である。対応関係情報36は、例えば図21に示すようなテーブル構造によって実現されてよい。図21のテーブルは、各移動局装置60の識別子を格納する欄と、各移動局装置60の下りリンク接続セルの識別子を格納する欄と、各移動局装置60との上りリンクにおいて最高の通信品質が測定される基地局装置のセルの識別子を格納する欄を有する。説明の便宜のため移動局装置60との上りリンクにおいて最高の通信品質が測定される基地局装置のセルを、「上りリンク最高品質セル」と記載することがある。
【0104】
上下非対称状態でない場合には、各移動局装置60の下りリンク接続セルと、上りリンク最高品質セルとはほぼ一致する。このため上下非対称状態でない場合には、基地局装置10−1の配置セルを下りリンク接続セルとする移動局装置60の数と、基地局装置10−1の配置セルを上りリンク最高品質セルとする移動局装置60の数とは、ほぼ同数である。
【0105】
図20の非対称度決定部35は、基地局装置10−1の配置セルを下りリンク接続セルとする移動局装置60の数と、基地局装置10−1の配置セルを上りリンク最高品質セルとする移動局装置60の数との相違を、「非対称度」として算出する。例えば非対称度決定部35は、基地局装置10−1の配置セルを下りリンク接続セルとする移動局装置60の数と、基地局装置10−1の配置セルを上りリンク最高品質セルとする移動局装置60の数の差を、非対称度として算出してよい。また例えば例えば非対称度決定部35は、基地局装置10−1の配置セルを下りリンク接続セルとする移動局装置60の数と、基地局装置10−1の配置セルを上りリンク最高品質セルとする移動局装置60の数の割合を、非対称度として算出してよい。
【0106】
非対称度の大きさが所定の閾値T3よりも大きいとき、調整量決定部32は、送信アンテナ11及び受信アンテナ12の少なくともいずれか一方のチルト角を調整する調整量を決定する。基地局装置10−1の配置セルを下りリンク接続セルとする移動局装置が、基地局装置10−1の配置セルを上りリンク最高品質セルとする移動局装置よりも多いときは、調整量決定部32は、送信アンテナ11のチルト角を大きくするように調整量を決定する。これに加えて又はこれに代えて、調整量決定部32は、かつ受信アンテナ12のチルト角を小さくするように調整量を決定する。
【0107】
基地局装置10−1の配置セルを下りリンク接続セルとする移動局装置が、基地局装置10−1の配置セルを上りリンク最高品質セルとする移動局装置よりも少ないときは、調整量決定部32は、送信アンテナ11のチルト角を小さくするように調整量を決定する。これに加えて又はこれに代えて、調整量決定部32は、受信アンテナ12のチルト角を大きくするように調整量を決定する。調整量決定部32は、例えば、非対称度とチルト角の調整量との関係を予め定めるテーブルや計算式に基づいて、調整量の大きさを決定してよい。また例えば、一度の調整で調整量決定部32から指示される調整量を、固定されたステップ角度幅Δθの調整量としてよい。
【0108】
図22は、図17に示す無線通信システムにおけるアンテナのチルト角の制御例の説明図である。別な実施の態様においては、下記のオペレーションEA〜EJの各オペレーションはステップであってもよい。
【0109】
オペレーションEAにおいて、基地局装置10−1や、隣接基地局装置10−2を含むその他の基地局装置の下りリンク用参照信号送信部16は、下りリンク用参照信号を送信する。オペレーションEBにおいて移動局装置60の下りリンク通信品質測定部63は、これらの基地局装置と移動局装置60との間のそれぞれの下りリンクの受信品質を測定する。下りリンク接続セル決定部64は下りリンク接続セルを決定し、下りリンク接続セルに配置された基地局装置へ下りリンク接続セル情報を送信する。
【0110】
オペレーションECにおいて移動局装置60の上り用リンク参照信号送信部65は、上りリンク用参照信号を送信する。オペレーションEDにおいて、基地局装置10−1や、隣接基地局装置10−2を含むその他の基地局装置の上りリンク通信品質測定部20は、各基地局装置と移動局装置60との間のそれぞれの上りリンクの通信品質を測定する。
【0111】
オペレーションEEにおいて基地局装置10−1の基地局間通信部18は、上りリンク通信品質測定部20により生成された上りリンク通信品質情報を隣接基地局装置10−2へ送信する。また、基地局装置10−1の基地局間通信部18は、接続セル指示情報取得部23により取得された下りリンク接続セル指示情報を隣接基地局装置10−2へ送信する。
【0112】
一方で基地局装置10−1の隣接セル通信品質取得部19は、隣接基地局装置10−2から送信される上りリンク通信品質情報を受信する。また基地局装置10−1の隣接セル接続情報取得部24は、隣接基地局装置10−2から送信される下りリンク接続セル指示情報を受信する。オペレーションEFにおいて基地局装置10−1の対応関係情報作成部33は、対応関係情報36を作成する。
【0113】
オペレーションEGにおいて基地局装置10−1の非対称度決定部35は、上述の非対称度を算出する。すなわち非対称度決定部35は、基地局装置10−1の配置セルを下りリンク接続セルとする移動局装置60の数と、基地局装置10−1の配置セルを上りリンク最高品質セルとする移動局装置60の数との相違を算出する。調整量決定部32は、非対称度が所定の閾値T3以下であるか否かを判定する。非対称度が閾値T3以下であるとき(オペレーションEG:Y)、処理は終了する。非対称度が閾値T3以下でないとき(オペレーションEG:N)、処理はオペレーションEHへ移行する。
【0114】
オペレーションEHにおいて調整量決定部32は、基地局装置10−1の配置セルを上りリンク最高品質セルとする移動局装置60が、基地局装置10−1の配置セルを下りリンク接続セルとする移動局装置60よりも多いか否かを判定する。基地局装置10−1の配置セルを上りリンク最高品質セルとする移動局装置60が、基地局装置10−1の配置セルを下りリンク接続セルとする移動局装置60よりも多いとき(オペレーションEH:Y)、処理はオペレーションEIへ移る。基地局装置10−1の配置セルを上りリンク最高品質セルとする移動局装置60が、基地局装置10−1の配置セルを下りリンク接続セルとする移動局装置60よりも多くないとき(オペレーションEH:N)、処理はオペレーションEJへ移る。
【0115】
オペレーションEIにおいて調整量決定部32は、送信アンテナ11のチルト角を小さくするように調整量を決定する。これに加えて又はこれに代えて、調整量決定部32は、受信アンテナ12のチルト角を大きくするように調整量を決定する。オペレーションEJにおいて調整量決定部32は、送信アンテナ11のチルト角を大きくするように調整量を決定する。これに加えて又はこれに代えて、調整量決定部32は、受信アンテナ12のチルト角を小さくするように調整量を決定する。チルト角変更部13は、決定された調整量に基づいて送信アンテナ11のチルト角を変更する。これに加えて又はこれに代えてチルト角変更部14は、決定された調整量に基づいて受信アンテナ12のチルト角を変更する。オペレーションEI又はEJの後、処理はオペレーションEBへ戻る。オペレーションEGの判定において非対称度が閾値T3以下となるまで、オペレーションEB〜オペレーションEJが反復される。
【0116】
本実施例によれば、基地局装置10−1は、移動局装置60から送信される下りリンク接続セル指示情報と、移動局装置60との間で測定される上りリンク通信品質に基づいて、送信アンテナ11及び受信アンテナ12のチルト角を制御することができる。
【0117】
なお、図17〜図22を参照して説明した実施例においては、各移動局装置60は、下りリンク接続セル指示情報を、下りリンク接続セルに配置された基地局装置へ送信する。そして各基地局装置は、送信された下りリンク接続セル指示情報を、基地局間通信部18によって隣接基地局装置へ送信する。これに代えて各移動局装置60は、下りリンク接続セル指示情報を、下りリンク接続セルとその周辺のセルにそれぞれ配置される各基地局装置へ送信してもよい。この場合、基地局装置10−1は、隣接基地局装置10−2のセルを下りリンク接続セルと指示するリンク接続セル指示情報を、移動局装置60から直接受信することができるため、隣接セル接続情報取得部24は省略されてもよい。
【0118】
また、図17〜図22を参照して説明した実施例においても、図13〜図16を参照して説明した実施例と同様に、各基地局装置は、それぞれの受信アンテナ12から、上りリンクにおける通信品質測定用の上りリンク用参照信号を送信してよい。移動局装置60は、各基地局装置から上りリンク用参照信号をそれぞれ受信することにより、各基地局装置と移動局装置60とのそれぞれの間の上りリンクの通信品質を測定してよい。このため各基地局装置は、図14に示す構成要素を備えていてよく、移動局装置60は図15に示す構成要素を備えていてよい。
【0119】
続いて、無線通信システムにおける他の実施例を説明する。図23は、無線通信システムにおける第5実施例の構成図である。無線通信システム1は、基地局装置10−1と、隣接基地局装置10−2と、複数の移動局装置60を含む。基地局装置10−1及び隣接基地局装置10−2は、下りリンク用参照信号を移動局装置60へ送信する。移動局装置60は、受信した下りリンク用参照信号の受信品質に基づいて、基地局装置10−1の配置セルと隣接基地局装置10−2の配置セルとの間のセル境界でハンドオーバが発生したか否かを判定する。
【0120】
ハンドオーバが発生したとき、移動局装置60はハンドオーバが生じたことを指示するハンドオーバ情報を、ハンドオーバ基地局装置10−1と隣接基地局装置10−2へ通知する。また、移動局装置60は上りリンク用参照信号を送信する。基地局装置10−1は、上りリンク用参照信号を受信することにより、基地局装置10−1と移動局装置60との間の上りリンクの通信品質を測定する。また隣接基地局装置10−2も同様に、隣接基地局装置10−2と移動局装置60との間の上りリンクの通信品質を測定する。
【0121】
図24は、図23に示す移動局装置60の構成例を示す図である。参照符号66はハンドオーバ情報送信部を示す。図18に示す構成要素と同様の構成要素には図18で使用した参照符号と同じ参照符号を付する。移動局装置60は、送信アンテナ61と受信アンテナ62と、下りリンク通信品質測定部63と、下りリンク接続セル決定部64と、上り用リンク参照信号送信部65と、ハンドオーバ情報送信部66を備える。
【0122】
下りリンク接続セル決定部64は、下りリンクの受信品質に基づいて、移動局装置60がハンドオーバ処理を行うか否かを判定する。ハンドオーバが発生したとき、ハンドオーバ情報送信部66は、ハンドオーバが生じたことを通知するハンドオーバ情報を、ハンドオーバ基地局装置10−1と隣接基地局装置10−2へ送信する。ハンドオーバ基地局装置10−1及び隣接基地局装置10−2へ送信する代わりに、ハンドオーバ情報送信部66は、ハンドオーバ元の基地局装置及びハンドオーバ先の基地局装置のいずれか一方へハンドオーバ情報を送信してもよい。このとき、ハンドオーバ情報を受信した上記一方の基地局装置は、移動局装置60にハンドオーバが生じたことを、基地局間通信によって他方の基地局装置へ通知してもよい。ハンドオーバ情報は、例えば移動局装置60の識別子や、ハンドオーバが生じたセル境界を有するセルの識別子を含む情報であってよい。
【0123】
図25は、図23に示す基地局装置10−1の構成例を示す図である。参照符号25はハンドオーバ情報取得部を示す。図19に示す構成要素と同様の構成要素には図19で使用した参照符号と同じ参照符号を付する。基地局装置10−1は、送信アンテナ11と、受信アンテナ12と、チルト角変更部13及び14と、チルト角制御部15と、下りリンク用参照信号送信部16と、基地局間通信部18と、上りリンク通信品質測定部20と、ハンドオーバ情報取得部25を備える。基地局間通信部18は、隣接セル通信品質取得部19を備える。
【0124】
ハンドオーバ情報取得部25は、移動局装置60から送信されたハンドオーバ情報を受信する。ハンドオーバが発生したとき、上りリンク通信品質測定部20は、基地局装置10−1と移動局装置60との間の上りリンクの通信品質を測定する。基地局間通信部18は、上りリンク通信品質測定部20により生成された上りリンク通信品質情報を、隣接基地局装置10−2へ送信する。隣接セル通信品質取得部19は、隣接基地局装置10−2から送信される、隣接基地局装置10−2の上りリンク通信品質測定部20により生成された上りリンク通信品質情報を受信する。上りリンク通信品質測定部20により生成された上りリンク通信品質情報及び隣接セル通信品質取得部19により取得された上りリンク通信品質情報は、チルト角制御部15へ出力される。
【0125】
チルト角制御部15は、通信装置50と基地局装置10−1との間の上りリンクでの通信品質と、通信装置50と隣接基地局装置10−2との間の上りリンクの通信品質との差を低減するような受信アンテナ12のチルト角の調整量を決定する。チルト角変更部14は、チルト角制御部15により決定された調整量に基づいて、受信アンテナ12のチルト角を機械的又は電気的に変更する。例えば、通信装置50と基地局装置10−1との間の上りリンクでの通信品質が、通信装置50と隣接基地局装置10−2との間の上りリンクの通信品質よりも高いとき、受信アンテナ12のチルト角を大きくするように調整量を定める。通信装置50と隣接基地局装置10−2との間の上りリンクでの通信品質が、通信装置50と基地局装置10−1との間の上りリンクの通信品質よりも高いとき、受信アンテナ12のチルト角を小さくするように調整量を定める。チルト角制御部15の構成は、図6を参照して上述した構成と同様であってよい。
【0126】
またチルト角制御部15は、送信アンテナ11のチルト角についても制御してよい。例えば通信装置50と基地局装置10−1との間の上りリンクでの通信品質が、通信装置50と隣接基地局装置10−2との間の上りリンクの通信品質よりも高いとき、送信アンテナ11のチルト角を小さくするように送信アンテナ11のチルト角の調整量を定める。通信装置50と隣接基地局装置10−2との間の上りリンクでの通信品質が、通信装置50と基地局装置10−1との間の上りリンクの通信品質よりも高いとき、送信アンテナ11のチルト角を大きくするように調整量を定める。送信アンテナ11のチルト角についても調整することで、上りリンクの境界線が調整前の位置から大きく動くことを防止することが可能となる。
【0127】
図26は、図23に示す無線通信システムにおけるアンテナのチルト角の制御例の説明図である。別な実施の態様においては、下記のオペレーションFA〜FKの各オペレーションはステップであってもよい。
【0128】
オペレーションFAにおいて基地局装置10−1や、隣接基地局装置10−2を含むその他の基地局装置の下りリンク用参照信号送信部16は、下りリンク用参照信号を送信する。オペレーションFBにおいて移動局装置60の下りリンク通信品質測定部63は、これらの基地局装置と移動局装置60との間のそれぞれの下りリンクの受信品質を測定する。
【0129】
オペレーションFCにおいて下りリンク通信品質測定部63は、基地局装置10−1の配置セルと隣接基地局装置10−2の配置セルとの間のセル境界でハンドオーバが発生したか否かを判定する。ハンドオーバが発生していない場合(オペレーションFC:N)、処理は終了する。ハンドオーバが発生している場合(オペレーションFC:Y)、処理はオペレーションFDへ移行する。オペレーションFDにおいて移動局装置60は、ハンドオーバ処理を行う。このとき移動局装置60のハンドオーバ情報送信部66は、ハンドオーバが生じたことを指示するハンドオーバ情報を、基地局装置10−1と隣接基地局装置10−2へ通知する。
【0130】
オペレーションFEにおいて移動局装置60の上り用リンク参照信号送信部65は、上りリンク用参照信号を送信する。オペレーションFFにおいて、基地局装置10−1及び隣接基地局装置10−2の上りリンク通信品質測定部20は、基地局装置10−1及び隣接基地局装置10−2と移動局装置60との間のそれぞれの上りリンクの通信品質を測定する。
【0131】
オペレーションFGにおいて基地局装置10−1の基地局間通信部18は、上りリンク通信品質測定部20により生成された上りリンク通信品質情報を隣接基地局装置10−2へ送信する。また、基地局装置10−1の隣接セル通信品質取得部19は、隣接基地局装置10−2から送信される上りリンク通信品質情報を受信する。
【0132】
オペレーションFHにおいて基地局装置10−1のチルト角制御部15は、基地局装置10−1と移動局装置60との間、及び隣接基地局装置10−2と移動局装置60との間のそれぞれの上りリンクの通信品質の差分が、閾値T4以下か否かを判定する。通信品質の差分が閾値T4以下であるとき(オペレーションFH:Y)、処理は終了する。通信品質の差分が閾値Tt以下でないとき(オペレーションFH:N)、処理はオペレーションFIへ移行する。
【0133】
オペレーションFIにおいてチルト角制御部15は、基地局装置10−1と移動局装置60との間の通信品質が、隣接基地局装置10−2と移動局装置60との間の通信品質よりも高いか否かを判定する。基地局装置10−1と移動局装置60との間の通信品質が、隣接基地局装置10−2と移動局装置60との間の通信品質よりも高いとき(オペレーションFI:Y)、処理はオペレーションFJへ移行する。基地局装置10−1と移動局装置60との間の通信品質が、隣接基地局装置10−2と移動局装置60との間の通信品質よりも高くないとき(オペレーションFI:N)、処理はオペレーションFKへ移行する。
【0134】
オペレーションFJにおいて調整量決定部32は、送信アンテナ11のチルト角を小さくするように調整量を決定する。これに加えて又はこれに代えて、調整量決定部32は、受信アンテナ12のチルト角を大きくするように調整量を決定する。オペレーションFKにおいて調整量決定部32は、送信アンテナ11のチルト角を大きくするように調整量を決定する。これに加えて又はこれに代えて、調整量決定部32は、受信アンテナ12のチルト角を小さくするように調整量を決定する。チルト角変更部13は、決定された調整量に基づいて送信アンテナ11のチルト角を変更する。これに加えて又はこれに代えてチルト角変更部14は、決定された調整量に基づいて受信アンテナ12のチルト角を変更する。オペレーションFJ又はFKの後、処理は終了する。
【0135】
本実施例によれば、ハンドオーバが発生した移動局装置60が下りリンクのセル境界にいることを利用して、隣接する各基地局装置と移動局装置60との間のそれぞれの上りリンク通信品質に基づいて、各アンテナ11及び12のチルト角を制御することができる。
【0136】
また、図23〜図26を参照して説明した実施例においても、図13〜図16を参照して説明した実施例と同様に、各基地局装置は、それぞれの受信アンテナ12から、上りリンクにおける通信品質測定用の上りリンク用参照信号を送信してよい。移動局装置60は、各基地局装置から上りリンク用参照信号をそれぞれ受信することにより、各基地局装置と移動局装置60とのそれぞれの間の上りリンクの通信品質を測定してよい。このため各基地局装置10−1及び10−2は、図14に示す構成要素を備えていてよく、移動局装置60は図15に示す構成要素を備えていてよい。
【0137】
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0138】
(付記1)
基地局装置であって、
下りリンクにおける無線信号を送信するための第1アンテナと、
上りリンクにおける無線信号を受信するための第2アンテナと、
前記基地局装置としての第1基地局装置に関する下りリンクでの通信品質及び上りリンクでの通信品質と、隣接基地局装置である第2基地局装置に関する下りリンクでの通信品質及び上りリンクでの通信品質とに基づいて、前記第1基地局装置及び前記第2基地局装置の間における下りリンクのセル境界と上りリンクのセル境界との差を低減するように、前記第1アンテナあるいは前記第2アンテナのそれぞれのチルト角を制御するチルト角制御部と、
を備える基地局装置。
【0139】
(付記2)
前記チルト角制御部は、所定地点に置かれた通信装置と前記第1基地局装置との間の下りリンクでの通信品質と、前記通信装置と前記第2基地局装置との間の下りリンクの通信品質との差を低減するように前記第1アンテナのチルト角を制御する、付記1に記載の基地局装置。
【0140】
(付記3)
前記チルト角制御部は、所定地点に置かれた通信装置と前記第1基地局装置との間の上りリンクでの通信品質と、前記通信装置と前記第2基地局装置との間の上りリンクの通信品質との差を低減するように前記第2アンテナのチルト角を制御する、付記1に記載の基地局装置。
【0141】
(付記4)
前記チルト角制御部は、複数の移動局装置のうち、下りリンクにおいて最も高い通信品質が測定される基地局装置が前記第1基地局装置である移動局装置のグループと、上りリンクにおいて最も高い通信品質が測定される基地局装置が前記第1基地局装置である移動局装置のグループと、の間の不一致を低減するように前記第1アンテナあるいは前記第2アンテナのそれぞれのチルト角を制御する付記1に記載の基地局装置。
【0142】
(付記5)
前記チルト角制御部は、ハンドオーバ処理を行う移動局装置と前記第1基地局装置との間の上りリンクでの通信品質と、前記移動局装置と前記第2基地局装置との間の上りリンクの通信品質との差を低減するように前記第1アンテナあるいは前記第2アンテナのチルト角を制御する付記1に記載の基地局装置。
【0143】
(付記6)
前記チルト角制御部は、前記第1基地局装置及び前記第2基地局装置の間における下りリンクのセル境界と上りリンクのセル境界との差を低減するように、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナのそれぞれのチルト角を制御する付記1〜5のいずれか一項に記載の基地局装置。
【0144】
(付記7)
付記1〜5のいずれか一項に記載の基地局装置と通信する移動局装置であって、上りリンクでの通信品質を測定するための参照信号を送信する参照信号送信部を備える移動局装置。
【0145】
(付記8)
参照信号送信部は、前記移動局装置がハンドオーバ時に前記参照信号を送信する付記7に記載の移動局装置。
【0146】
(付記9)
下りリンクにおける無線信号の送信および上りリンクにおける無線信号の受信のために基地局装置にそれぞれ設けられた第1アンテナ及び第2アンテナのチルト角の制御方法であって、
前記基地局装置としての第1基地局装置に関する下りリンクでの通信品質及び上りリンクでの通信品質と、隣接基地局装置である第2基地局装置に関する下りリンクでの通信品質及び上りリンクでの通信品質をそれぞれ測定し、
測定された各前記通信品質に基づいて、前記第1基地局装置及び前記第2基地局装置の間における下りリンクのセル境界と及び上りリンクのセル境界との差を低減するように、前記第1基地局装置における前記第1アンテナあるいは前記第2アンテナのそれぞれのチルト角を制御する方法。
【符号の説明】
【0147】
10 基地局装置
11 送信アンテナ
12 受信アンテナ
15 チルト角制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置であって、
下りリンクにおける無線信号を送信するための第1アンテナと、
上りリンクにおける無線信号を受信するための第2アンテナと、
前記基地局装置としての第1基地局装置に関する下りリンクでの通信品質及び上りリンクでの通信品質と、隣接基地局装置である第2基地局装置に関する下りリンクでの通信品質及び上りリンクでの通信品質とに基づいて、前記第1基地局装置及び前記第2基地局装置の間における下りリンクのセル境界と上りリンクのセル境界との差を低減するように、前記第1アンテナあるいは前記第2アンテナのチルト角を制御するチルト角制御部と、
を備える基地局装置。
【請求項2】
前記チルト角制御部は、所定地点に置かれた通信装置と前記第1基地局装置との間の下りリンクでの通信品質と、前記通信装置と前記第2基地局装置との間の下りリンクの通信品質との差を低減するように前記第1アンテナのチルト角を制御する、請求項1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記チルト角制御部は、所定地点に置かれた通信装置と前記第1基地局装置との間の上りリンクでの通信品質と、前記通信装置と前記第2基地局装置との間の上りリンクの通信品質との差を低減するように前記第2アンテナのチルト角を制御する、請求項1に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記チルト角制御部は、複数の移動局装置のうち、下りリンクにおいて最も高い通信品質が測定される基地局装置が前記第1基地局装置である移動局装置のグループと、上りリンクにおいて最も高い通信品質が測定される基地局装置が前記第1基地局装置である移動局装置のグループと、の間の不一致を低減するように前記第1アンテナあるいは前記第2アンテナのそれぞれのチルト角を制御する請求項1に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記チルト角制御部は、前記第1基地局装置及び前記第2基地局装置の間における下りリンクのセル境界と上りリンクのセル境界との差を低減するように、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナのそれぞれのチルト角を制御する請求項1〜4のいずれか一項に記載の基地局装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の基地局装置と通信する移動局装置であって、上りリンクでの通信品質を測定するための参照信号を送信する参照信号送信部を備える移動局装置。
【請求項7】
下りリンクにおける無線信号の送信および上りリンクにおける無線信号の受信のために基地局装置にそれぞれ設けられた第1アンテナ及び第2アンテナのチルト角の制御方法であって、
前記基地局装置としての第1基地局装置に関する下りリンクでの通信品質及び上りリンクでの通信品質と、隣接基地局装置である第2基地局装置に関する下りリンクでの通信品質及び上りリンクでの通信品質をそれぞれ測定し、
測定された各前記通信品質に基づいて、前記第1基地局装置及び前記第2基地局装置の間における下りリンクのセル境界と上りリンクのセル境界との差を低減するように、前記第1基地局装置における前記第1アンテナあるいは前記第2アンテナのチルト角を制御する方法。
【請求項1】
基地局装置であって、
下りリンクにおける無線信号を送信するための第1アンテナと、
上りリンクにおける無線信号を受信するための第2アンテナと、
前記基地局装置としての第1基地局装置に関する下りリンクでの通信品質及び上りリンクでの通信品質と、隣接基地局装置である第2基地局装置に関する下りリンクでの通信品質及び上りリンクでの通信品質とに基づいて、前記第1基地局装置及び前記第2基地局装置の間における下りリンクのセル境界と上りリンクのセル境界との差を低減するように、前記第1アンテナあるいは前記第2アンテナのチルト角を制御するチルト角制御部と、
を備える基地局装置。
【請求項2】
前記チルト角制御部は、所定地点に置かれた通信装置と前記第1基地局装置との間の下りリンクでの通信品質と、前記通信装置と前記第2基地局装置との間の下りリンクの通信品質との差を低減するように前記第1アンテナのチルト角を制御する、請求項1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記チルト角制御部は、所定地点に置かれた通信装置と前記第1基地局装置との間の上りリンクでの通信品質と、前記通信装置と前記第2基地局装置との間の上りリンクの通信品質との差を低減するように前記第2アンテナのチルト角を制御する、請求項1に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記チルト角制御部は、複数の移動局装置のうち、下りリンクにおいて最も高い通信品質が測定される基地局装置が前記第1基地局装置である移動局装置のグループと、上りリンクにおいて最も高い通信品質が測定される基地局装置が前記第1基地局装置である移動局装置のグループと、の間の不一致を低減するように前記第1アンテナあるいは前記第2アンテナのそれぞれのチルト角を制御する請求項1に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記チルト角制御部は、前記第1基地局装置及び前記第2基地局装置の間における下りリンクのセル境界と上りリンクのセル境界との差を低減するように、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナのそれぞれのチルト角を制御する請求項1〜4のいずれか一項に記載の基地局装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の基地局装置と通信する移動局装置であって、上りリンクでの通信品質を測定するための参照信号を送信する参照信号送信部を備える移動局装置。
【請求項7】
下りリンクにおける無線信号の送信および上りリンクにおける無線信号の受信のために基地局装置にそれぞれ設けられた第1アンテナ及び第2アンテナのチルト角の制御方法であって、
前記基地局装置としての第1基地局装置に関する下りリンクでの通信品質及び上りリンクでの通信品質と、隣接基地局装置である第2基地局装置に関する下りリンクでの通信品質及び上りリンクでの通信品質をそれぞれ測定し、
測定された各前記通信品質に基づいて、前記第1基地局装置及び前記第2基地局装置の間における下りリンクのセル境界と上りリンクのセル境界との差を低減するように、前記第1基地局装置における前記第1アンテナあるいは前記第2アンテナのチルト角を制御する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
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【図4】
【図5】
【図6】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2011−55273(P2011−55273A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202712(P2009−202712)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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