基地局装置およびスリープ制御方法
【課題】無線アクセスシステムを構成する基地局装置の省電力効果を高めることができる基地局装置を提供する。
【解決手段】端末装置と無線通信を行う基地局装置であって、チャネルの空き状態が、スリープ待機時間を超えて継続していることを検出した場合に、端末装置の送信を禁止して、所定期間に渡ってスリープ状態に移行するスリープ制御手段と、所定周期毎に省電力動作に関する条件値を定める条件値設定手段と、所定周期の開始から現時刻までの省電力動作に関する実績値を取得する実績値取得手段と、実績値と条件値との比較結果によって、スリープ待機時間を制御するスリープ待機時間制御手段とを備える。
【解決手段】端末装置と無線通信を行う基地局装置であって、チャネルの空き状態が、スリープ待機時間を超えて継続していることを検出した場合に、端末装置の送信を禁止して、所定期間に渡ってスリープ状態に移行するスリープ制御手段と、所定周期毎に省電力動作に関する条件値を定める条件値設定手段と、所定周期の開始から現時刻までの省電力動作に関する実績値を取得する実績値取得手段と、実績値と条件値との比較結果によって、スリープ待機時間を制御するスリープ待機時間制御手段とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線アクセスシステムを構成する基地局装置において、消費電力を低減する基地局装置およびスリープ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のインターネットの普及と共に、光回線やADSL等の有線回線に加え、スマートフォンを中心とするモバイル環境でのインターネット利用が増大している。モバイル環境では、第3世代携帯電話(以下、3Gという)や次世代携帯電話と位置づけられるLTE(Long Term Evolution)などの回線を利用する。これらのシステムは、無線アクセスに利用される様々な周波数帯の中でも、比較的使い勝手の良いマイクロ波帯を利用するものであり、この周波数帯の性質を利用して、ひとつの基地局装置で広範囲のエリアを一括してサービスエリアにすることが可能である。
【0003】
しかし、この様な使い勝手の良いマイクロ波帯はその他のシステムにおいても利用が期待されており、既に周波数資源の枯渇の問題に直面している。特に、動画などを含むブロードバンドのアプリケーションの増加やスマートフォンの普及によって、通信トラフィックが急速に増加する中で、LTEなどではより広い周波数帯域の割当てが必要になる。一方で、全体の帯域を複数の事業者が分け合うことになり、1事業者に割り当てられる帯域は非常に限定されたものとなっているのが現状である。
【0004】
この問題を解決するために、これらの3GおよびLTE等の回線を迂回させる無線システムが必要となる。最も現実的なシステムは2.4GHz帯および5GHz帯を利用するWiFi(wireless fidelity)である。IEEE802.11系の規格(802.11a、b、g、n等の全ての規格を含む)に準拠するWiFiでは、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)と呼ばれるアクセス技術を用いることにより、同一の周波数チャネルを用いて非計画的に乱立する無線局が混在する中でも、効率的かつ安定的に無線アクセスを利用可能である。さらに、各家庭内のホームネットワーク、携帯型ゲーム機、ノートPCや携帯電話等への実装など、これらのシステムは爆発的に普及しており、既に基地局装置(AP:アクセスポイントとも呼ばれる)および端末装置(端末局とも呼ばれる)の双方の価格が非常に安価になっている。
【0005】
このWiFiにおけるCSMA/CA技術では、基地局装置の置局設計を特に意識しなくても破綻することなく運用可能であり、送信電力を抑えることにより、サービスエリア半径を小さく抑えたマイクロセル化を行うと、個々のマイクロセル毎に所定のスループットを実現可能になり、結果的に単位面積当たりの伝送容量は増大する。この様にして、3GおよびLTE等の回線から溢れたトラヒックを効率的にWiFiネットワークを介して収容することが可能になる。
【0006】
しかし、通信エリアが広範な3G回線などからの迂回を想定するならば、少なくとも人口の密集する市街地、住宅地などの大部分を広範囲にカバーするためには、膨大な数の基地局装置を設置する必要がある。もともと屋内での利用を前提に設計された無線規格であることから、ひとつの基地局装置で広範囲をカバーすることは困難な上、システム全体の伝送容量増大のためにはマイクロセル化も必要になり、その結果、設置が必要な基地局装置の台数は膨大となる。これにより、基地局装置の消費電力はそれほど大きくなくても、システム全体の消費電力量は膨大となり、環境問題の観点からは環境に対する負荷の低減が必要である。
【0007】
これらの課題を解決するために再生可能エネルギーの利用が期待されている。太陽光発電では発電可能な電力量も他の発電技術よりも比較的大きいため、最も有力な方法として期待される。さらに、再生可能エネルギーによる給電のみによって基地局装置が安定的に動作することができれば、基地局装置と商用電源との接続が不要となり、置局自由度を向上することができる。置局自由度が向上すれば、地震などの災害対策としての活用が可能となる。例えば、災害を受けたエリア内で通信網や電力網が被害を受けることがあり、通信網や電力網の復旧には数日から1カ月程度に及ぶことがある。その時に太陽電池により給電される基地局装置の導入によって、従来の通信システムの代替として通信サービスを提供することが可能である。
【0008】
以上のように、環境に考慮した社会的な取り組みとして様々な電子機器の消費電力削減が広く進められているところであるが、上述の様な太陽電池給電の基地局装置を想定すると更に、基地局装置の省電力化が重要な課題となる。
【0009】
ここで、従来技術における基地局装置の省電力化技術を説明する。例えば、非特許文献1「無線LANアクセスポイントにおける省電力モードの性能評価」に記載された、基地局装置のスリープ制御技術はそのひとつである。AC100Vの電源に接続された基地局装置側は本来であればスリープの必要はないが、消費電力の削減のため、ないしはバッテリーを搭載した特殊な基地局装置などにおいて、基地局装置側も所定の周期で自らの回路を停止させ、スリープ状態に入ることで消費電力を削減する。ただし、自らがスリープ状態にある場合には、配下の端末装置(場合によっては、基地局装置のスリープ開始時には電源がOFFになっていた端末が、基地局装置のスリープ動作中に電源ON状態になることもあり、この様な可能性を秘めた端末装置も含んでいる)が無線回線でアクセスすることを禁止するメカニズムを必要とする。
【0010】
図13に、従来技術における基地局装置のスリープ制御の概要を示す。図13において、201および202はビーコン信号、203および204はスリープ制御パケット、205は基地局装置の状態、206は端末装置の状態を表す。また、説明の都合上、タイミング「A」「B」・・・「G」を図中で示した。
【0011】
通常、WiFiではブロードキャストの制御情報であるビーコン信号201および202を所定の周期で送信する。端末装置のスリープ制御においては、このビーコン信号の周期に基づいて端末装置は通常動作に戻る(スリープ解除)が、端末装置は、全てのビーコン信号を受信するわけではない。ビーコン信号201および202内には、DTIM(Delivery Traffic Indication MAP)カウント、およびDTIM周期等を含む情報が収容されており、このDTIMカウント値がゼロとなるビーコンだけを受信する。
【0012】
そこで、基地局装置はこのDTIM周期を1に設定し、全てのビーコン信号201および202のDTIMカウント値を0に設定し、その中で当該基地局装置がスリープ動作を行うためのスリープ制御パケット203および204を送信する。すなわち、すべての端末装置が基地局装置の送信するパケットを受信できるタイミングを構成するために、ビーコン信号のDTIMカウンタ値及びDTIM周期を上記の値に設定し、当該タイミングにおいてスリープ制御パケットを送信する。一般に、WiFiで用いられる無線パケットには、ある無線リンク(相互に無線通信を行う、一つの基地局装置と一つ端末装置の組合せ)で所定の時間だけ帯域を確保するために、NAV(Network Allocation Vector)と呼ばれる時間を設定し、当該リンク以外の無線端末の送信を禁止する。
【0013】
スリープ制御用パケット203および204ではこのNAVを設定し、端末が信号を送信することをブロックし、その間、自らの電源を落として消費電力削減を図る。例えば、スリープ制御パケット203の設定するNAVは時刻「C」から時刻「D」までであり、この間のうち信号を送信していない区間、時刻「C」から時刻「D」が基地局装置のスリープ時間となる。なお、一度のスリープ制御パケット203および204で設定可能なNAVの最大時間には限りがあるため、更なるスリープを行うためにはスリープ制御パケット203に続けてスリープ制御パケット204を送信することになり、これにより時刻「E」から時刻「F」までもスリープすることができ、この状況が基地局装置の状態205に示されている。
【0014】
また、端末装置の状態206で示したとおり、端末装置としては、時刻「C」から時刻「E」および時刻「E」から時刻「F」までをそれぞれNAVと認識し、この時間に無線パケットを送信することはない。このスリープ制御パケット203および204としては、NAVを設定できるものであれば何でも良く、典型的なものとしてはCTS(Clear to Send)パケットを用いるが、ブロードキャスト、マルチキャストなどのパケットを用いても良い。この際の設定次第では、端末装置もスリープに移行することもできる。
【0015】
なお、スリープ制御パケットの送信回数は、予め基地局装置に設定されている総スリープ期間によって定まる。総スリープ期間が大きければ、スリープ制御パケットの送信回数も大きくなる。
【0016】
同様のスリープ制御は、その他の制御メッセージを用いても実現可能である。例えば、WiFiにおける制御信号のひとつであるビーコン信号内には、Quietと呼ばれるフィールドが設定してあり、このフィールドを用いてビーコン周期内に無線アクセス禁止期間を設定可能である。図14に、Quietフィールドを用いたスリープ制御の一例について概要を示す。図14において、201および202はビーコン信号、207は基地局装置の状態、208は端末装置の状態を表す。また、説明の都合上、タイミング「A」「B」「C」を図中で示した。WiFiでは、利用可能な周波数帯域の中に、様々なレーダーの使用する周波数帯と共通の帯域が含まれている。その様な帯域では、例えば基地局装置が周辺にレーダー波を送信する局が存在しないかを定期的に検出する必要がある。これはDFS(Dynamic Frequency Selection)と呼ばれる制御であるが、このレーダー波の検出作業中は配下の端末装置からの無線アクセスを禁止しなければならない。
【0017】
そこで、所定の時間を端末からの送信禁止期間(図中では時刻「A」から時刻「B」まで)を用いてレーダー波の検出を行なう。これを利用して、基地局装置の状態207は、時刻「A」から時刻「B」まではスリープ状態で、時刻「B」から時刻「C」がアウェイク状態となる。一般の端末装置に関しては、送信禁止期間中の動作が規定されていないために、時刻「A」から時刻「B」についてはスリープできるか否かは端末次第であるが、この間は少なくとも有意なデータを送受信する可能性がないため、スリープ同様の動作とすることも可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】「無線LANアクセスポイントにおける省電力モードの性能評価」(小川他),電子情報通信学会 信学技報 MoMuC2009−13
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
前述したように、非特許文献1に記載のスリープ制御技術では、ビーコン送信時に基地局装置のバッファにデータが存在する場合や、一定時間内に端末装置とトラフィックの送受信が行われた履歴があった場合は、ビーコン間で基地局装置がスリープモードに移行しないように制御される。そのビーコンインターバル内では、トラフィック送受信が発生する可能性が高いので、そのデータの遅延等の通信品質を劣化させないために、基地局装置がスリープモードに移行することを防止しているからである。すなわち、基地局装置がスリープモードに移行するか否かはビーコン送信時点でのみ判断される。
【0020】
従って、ビーコンインターバル内で、基地局装置がバッファに蓄積したデータの送受信を完了した後、送受信するトラフィックがない場合でも、基地局装置は不必要なアウェイク状態を維持する。すなわち、この従来技術は基地局装置に接続している端末装置がいない状態、又は端末装置がいたとしてもトラフィックが発生していないときのみにスリープモードに移行するものであり、一定以上のトラフィックが送受信される場合では、基地局装置はスリープモードに移行できないため、大きな省電力化効果を期待できないという問題がある。
【0021】
また、従来技術におけるスリープ制御は、バッテリー蓄電残量などを反映した制御とはなっていないのが現状である。無線通信インフラとして太陽電池で給電される基地局装置では、バッテリー蓄電残量の枯渇によって不稼働になることは最も回避すべき事態である。
【0022】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、如何なるトラフィック環境においても所定の省電力効果を得ることが可能となり、バッテリ蓄電残量の枯渇を回避することができる基地局装置およびスリープ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、端末装置と無線通信を行う基地局装置であって、チャネルの空き状態が、スリープ待機時間を超えて継続していることを検出した場合に、前記端末装置の送信を禁止して、所定期間に渡ってスリープ状態に移行させるスリープ制御手段と、所定周期毎に省電力動作に関する条件値を定める条件値設定手段と、前記所定周期の開始から現時刻までの省電力動作に関する実績値を取得する実績値取得手段と、前記実績値と前記条件値との比較結果によって、前記スリープ待機時間を制御するスリープ待機時間制御手段とを備えることを特徴とする。
【0024】
本発明は、前記スリープ待機時間制御手段は、前記実績値が前記条件値を満たさない場合は前記スリープ待機時間を前記端末装置がパケットを送信するために待機する最小時間である第1の値以下に設定し、前記実績値が前記条件値を満たす場合は前記スリープ待機時間を前記端末装置がパケットを送信するために待機する最大時間である第2の値以上に設定することを特徴とする。
【0025】
本発明は、前記スリープ待機時間制御手段は、前記実績値と前記条件値との比、又は前記実績値と前記条件値との差を計算し、前記比または前記差と所定の閾値を比較することによって、前記スリープ待機時間を第1の値以下又は第2の値以上に設定することを特徴とする。
【0026】
本発明は、前記スリープ待機時間制御手段は、前記実績値と前記条件値との比から前記スリープ待機時間を設定することを特徴とする。
【0027】
本発明は、前記省電力動作に関する条件が、前記所定周期における所要スリープ時間、または前記所定周期における消費電力の許容値であることを特徴とする。
【0028】
本発明は、前記スリープ待機時間制御手段が、前記実績値が前記条件値を満たさない場合に、前記スリープ待機時間を第1の値以下に設定した際に、前記スリープ状態に移行させる前記所定期間を、現時刻から前記所定周期が終了するまでの時間に設定することを特徴とする。
【0029】
本発明は、端末装置と無線通信を行う基地局装置におけるスリープ制御方法であって、チャネルの空き状態が、スリープ待機時間を超えて継続していることを検出した場合に、前記端末装置の送信を禁止して、所定期間に渡ってスリープ状態に移行させるスリープ制御ステップと、所定周期毎に省電力動作に関する条件値を定める条件値設定ステップと、前記所定周期の開始から現時刻までの省電力動作に関する実績値を取得する実績値取得ステップと、前記実績値と前記条件値との比較結果によって、前記スリープ待機時間を制御するスリープ待機時間制御ステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、省電力動作に関する条件を定め、定めた条件と省電力動作に関する実績を比較することで、スリープモードへの強制移行の必要性を判断するようにして、基地局装置がスリープモードに移行する優先度を制御するようにしたため、基地局装置は如何なるトラフィック環境においても所望の省電力効果を得ることが期待できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の基地局装置におけるスリープ制御技術を示す説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示すスリーププロファイル記憶部73に保存さるスリーププロファイルの一例を示す説明図である。
【図4】図2に示す基地局装置1のスリープ制御の処理動作を示すフローチャートである。
【図5】図4に示すスリープ移行待機時間を設定する動作の詳細を示すフローチャートである。
【図6】図4に示すスリープモードへの移行を試みる動作の詳細を示すフローチャートである。
【図7】バックオフ時間をスケーラブルに制御する動作を示す説明図である。
【図8】第2の実施形態における基地局装置のスリープ移行待機時間設定の詳細な処理動作を示すフローチャートである。
【図9】第3の実施形態における基地局装置のスリープ移行待機時間設定の詳細な処理動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第4の実施形態における基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図11】図10に示す基地局装置1の処理動作を示すフローチャートである。
【図12】図11に示すスリープ移行待機時間を設定する動作の詳細を示すフローチャートである。
【図13】従来技術における基地局装置のスリープ制御の概要を示す説明図である。
【図14】Quietフィールドを用いたスリープ制御の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態による基地局装置を説明する。本発明では、再生可能エネルギーとバッテリーからの電力供給で運用される基地局装置、又はバッテリーからの電力供給のみによって運用される基地局装置において、基地局装置の安定運用又はバッテリーの長寿命化を目的とした省電力化技術である。基地局装置は、発電量やバッテリー蓄電残量等から、基地局装置が不稼働とならず安定的に運用されるための所要スリープ時間を設定し、所要スリープ時間と実際に基地局装置がスリープした時間(実績スリープ時間)を比較することで、基地局装置がスリープモードに移行する優先度を判断する。所要スリープ時間は一定周期(以下ではスリープ制御周期と称する)毎に設定される。スリープ制御周期は任意に設定できるものであり、例えば1ビーコンインターバル又は複数ビーコンインターバルの周期に設定してもよい。
【0033】
ここで、図1を参照して、本実施形態における基地局装置のスリープ制御技術について説明する。従来技術と異なり、基地局装置はビーコン送信タイミングだけでなく、ビーコン間でもスリープモードへの移行判断を実施する。スリープ制御周期の前半では、基地局装置はスリープモードに移行する優先度を低く設定する。この場合、基地局装置又は端末装置に蓄積している送信データ等のトラフィックが無い場合のみスリープモードに移行するように制御する。基地局装置はCTS-to-self等のスリープ制御パケットを送信することによってNAVを設定してからスリープモードに移行するが、CTS−to−self送信までのキャリアセンス時間を長く設定することにより、他のパケットの送受信を優先させる。例えば、端末装置のキャリアセンス時間は、DIFSとコンテンションウィンドウからランダムに選んだ値にスロットタイムを乗算した時間との和で設定されるが、CTS−to−selfを送信するときのキャリアセンスではコンテンションウィンドウをランダムに選ぶのでなく、コンテンションウィンドウの最大値を設定することが可能である。
【0034】
端末装置等に送信トラフィックが存在する場合、基地局装置がCTS−to−selfを送信する前に送信トラフィックの送受信が開始され、基地局装置はスリープモードに移行しない。そのため、基地局装置又は端末装置に通信トラフィックが多く発生している場合は、基地局装置がスリープモードに移行する機会が少なくなり、実績スリープ時間が小さくなる。この場合、スリープ制御周期終了時に実績スリープ時間が所要スリープ時間を満たさなくなるおそれがあり、基地局装置の不稼働につながる可能性がある。この場合にはスリープモードに移行する優先度を高く設定する。基地局装置は実績スリープ時間から所要スリープ時間を随時更新すると共に、スリープ制御周期の残り時間を把握し、その残り時間が所要スリープ時間と同じ値になったときは、基地局装置はCTS−to−self送信までのキャリアセンス時間を短く設定することにより、他のトラフィックに優先してスリープモードに移行することが可能である。例えば、コンテンションウィンドウをゼロに設定することが可能である。
【0035】
次に、同実施形態による基地局装置の構成を説明する。図1は同実施形態における基地局装置の構成を示すブロック図である。このブロック図では、再生可能エネルギーを利用した基地局装置を想定している。基地局装置1は、アンテナ2、送受信部3、通信制御部4、バッファ部5、インタフェース部6、スリープ制御部7、安定運用条件把握部8、バッテリー9、発電部10から構成する。バッテリー9と発電部10は、基地局装置1と一体に設けられている必要はなく、外部の設けられたバッテリー9と発電部10との間を電力線で接続されていてもよい。
【0036】
基地局装置1は、無線回線を介した信号をアンテナ2で受信し、送受信部3にて帯域外信号のフィルタリング、ローノイズアンプによる信号増幅、RF周波数からベースバンド帯への周波数変換、アナログ信号からデジタル信号へのA/D変換等の処理を行ない、さらにデジタル化されたベースバンド信号は、タイミング検出、物理レイヤに関するヘッダ情報の終端、復調処理、誤り訂正などの一連の信号処理が施される。送受信部2から出力される復調処理等が施された信号は通信制御部4に入力する。受信した信号がデータパケットである場合は、バッファ部5を介してインタフェース部6にそのデータパケットを出力する。
【0037】
インタフェース部6は基地局装置1と外部とのデータパケットの入出力を行うインタフェースである。一方、インタフェース部6からパケットが出力されたときは、このデータパケットはバッファ部5に蓄積する。このデータパケットが、通信制御部4の制御によって送信されるときは、通信制御部4は無線パケットを送受信部3に出力し、送受信部3で各種変調処理を施されてベースバンド信号が生成され、デジタル信号からアナログ信号に変換するD/A変換、周波数変換、帯域外信号のフィルタリング、信号増幅などを行い、アンテナ2より送信する。
【0038】
バッファ部5には基地局装置1が送信すべきトラフィックが蓄積されており、通信制御部4はバッファ部5に問い合わせることにより、トラフィックの有無を判断する。発電部10は、太陽光や風力等の再生可能エネルギーを利用した発電手段である。ここで発電したエネルギーはバッテリー9に出力され、バッテリー9は入力されたエネルギーを蓄電する。
【0039】
安定運用条件把握部8は、スリープ計画時間取得部81、スリープ実績時間取得部82、通信履歴保持部83、発電量予測値取得部84、蓄電残量取得部85から構成する。通信履歴保持部83は過去の通信履歴が保存されており、過去一定時間(例えば1日)毎の送信時間率、受信時間率、スリープ時間率が記録される。ここでの受信時間率とは、基地局装置とトラフィックを受信していないが、端末装置からのトラフィックの送信を待ち受けている状態も含める。発電量予測値取得部84は過去の発電量から今後一定時間(例えば1日)の発電量予測値を取得する。太陽光等による発電量は昼夜及び天候に左右されるが、長時間平均的には季節の変化に伴い緩やかに変化するものである。従って、複数日の発電量の傾向から今後の予測値をある程度は把握することは可能である。さらに天気予報の情報を他の通信手段を用いて利用することによってより精度の高い発電量の予測値を取得するようにしてもよい。
【0040】
蓄電残量取得部85はバッテリー9に蓄積されているエネルギー残量を参照してその値を保持する。スリープ計画時間取得部81は、通信履歴保持部82、発電量予測値取得部83、蓄電残量取得部84の情報を参照して、今後一定時間で基地局装置1を安定的に運用するために必要となるスリープ計画時間を取得する。ここでの一定時間はスリープ制御周期以上の時間に設定し、例えば1日に設定してもよい。
【0041】
ここで、スリープ計画時間の計算方法について説明する。基地局装置1における安定運用の条件として(1)式を満たす必要がある。
【数1】
Pgenは一定時間(例えば1日)に発電部10によって発電される電力合計であり、Pconは一定時間の基地局装置1の消費電力である。この条件は一定時間で発電量が消費電力を下回らないということを示している。この条件が満たされれば、一定時間経過後にバッテリ蓄電残量は低減せずに、基地局装置1が不稼働になることはない。ここで消費電力Pconは(2)式によって計算できる。
【数2】
【0042】
Etx,Erx,Esleepは、送信時、受信時、待機時、スリープ時の消費電力を示す。Tsleepは一定時間Tのうち、スリープで占める時間を示す。Rtx,Rrxは基地局装置がアウェイク状態の時間T−Tsleepのうち、基地局装置が送信状態、受信状態にある時間比率を示す。ここでRrxでは基地局装置がトラフィックを受信している状態だけでなく、端末装置からのトラフィックの送信を待ち受けている状態も含めている。なお、RtxとRrxの和は1である。ここで、安定運用の条件を考慮すると、今後一定時間で安定的に基地局装置を運用するために必要となるスリープ時間Tsleep(スリープ計画値)は(3)式によって計算できる。
【数3】
【0043】
Pgenは発電量予測値取得部84が推定する今後一定時間の発電量予測値を参照する。RtxおよびRrxは通信履歴保持部83を参照して把握する。なお、スリープ計画値の計算方法は(3)式に限らず、他の方法を用いることも可能である。例えば、再生可能エネルギー等の発電手段を有さずにバッテリー9によってのみ駆動するような基地局装置1では、所要バッテリ持続時間Treqで基地局装置1を連続運用させるためには、一定時間(例えば1日)での消費電力は(4)の条件を満たす必要がある。
【数4】
【0044】
ここでPbatteryは蓄電残量取得部85を参照して得られるバッテリー9のエネルギー残量である。従って、今後一定時間で基地局装置を連続運用するために必要となるスリープ計画値は(5)式によって計算できる。
【数5】
【0045】
また、スリープ実績時間取得部82は一定時間の中で実際にスリープモードに移行した合計時間を記録する。ここで記録される時間は、一定時間経過後にスリープ計画時間が再計算されるタイミングでゼロにリセットされる。
【0046】
スリープ制御部7は所定の回路の電源供給を停止するなどして、基地局装置1の省電力化を実現する機能を有し、スリープ優先制御部71、スリープ時間制御部72、スリーププロファイル記憶部73、所要スリープ時間把握部74、残り時間把握部75から構成する。所要スリープ時間把握部74はスリープ制御周期で必要となるスリープ時間を把握する。ここでの所要スリープ時間は、スリープ計画時間取得部81で計算するスリープ計画値をさらに細かい周期(スリープ制御周期)でみたときの値である。なお、スリープ制御周期内で基地局装置1がスリープモードに移行する度に、スリープ所要時間から実際にスリープに移行した時間を差し引く。残り時間把握部75は、スリープ制御周期が終了するまでの残り時間を把握する。スリープ優先制御71は所要スリープ時間とスリープ制御周期の残り時間を比較して、基地局装置1がスリープモードに移行する優先度を決定する。
【0047】
スリープ時間制御部72はスリープ優先制御部71の動作に従って基地局装置1がスリープモードに移行する時間を決定する。また、このときスリーププロファイル記憶部73を参照して、スリープ時に電源供給を停止する回路を選択することも可能である。スリーププロファイル記憶部73に保存されているスリーププロファイル例を図3に示す。基地局装置1の回路は電源供給を停止させたあとに回路機能が安定的に動作するまでに一定の時間を要し、その時間は回路によって異なる。例えば、周波数シンセサイザーはRFアンプ等に比べて機能が安定的に動作するまでの所要時間が大きい。従って、スリープ時間が小さければ電源供給を停止できる回路規模が小さいが、スリープ時間が大きいほど電源供給を停止する回路規模を大きくすることが可能である。例えば、図3に示すようにスリープ時間と閾値tthとの大小関係によって電源供給を停止する回路規模を制御してもよい。
【0048】
なお、スリープ制御部7及び安定運用条件把握部8については、通信制御部4から切り離して説明を行ったが、これら全てをひとつの制御部全体として構成してもよい。
【0049】
次に、図4を参照して、図2に示す基地局装置1のスリープ制御の処理動作を説明する。図4は、図2に示す基地局装置1のスリープ制御の処理動作を示すフローチャートである。この制御方法は、スリープ制御周期ごとに所要スリープ時間を計算及び更新し、所要スリープ時間を参照してスリープ移行に関する優先度を制御する。まず、スリープ制御周期の開始時に、スリープ時間制御部72は、そのスリープ制御周期での所要スリープ時間を計算する(ステップS1)。ここではスリープ計画時間取得部81とスリープ実績時間取得部82を参照して計算する。例えば、(6)式によって計算することが可能である。
【数6】
【0050】
tsleepはスリープ制御周期での所要スリープ時間である。Tsleepは一定時間(例えば1日)でのスリープ計画時間であり、スリープ計画時間取得部81で把握されている値である。Tsleep_recは一定時間内で現時刻までに実際にスリープに移行した実績時間であり、スリープ実績時間取得部82で把握されている値である。Tremainは一定時間が経過するまでの残り時間であり、tintervalはスリープ制御周期を示す。この所要スリープ時間は、基地局装置1がスリープモードに移行する度に、その時間を所要スリープ時間から差し引いて更新する。
【0051】
次に、スリープ時間制御部72は、所要スリープ時間把握部74において把握した所要スリープ時間と、残り時間把握部75において把握したスリープ制御周期の残り時間とを比較する(ステップS2)。スリープ優先制御部71は、この比較結果から、スリープモードに移行する優先度、すなわち、スリープ移行待機時間を設定する(ステップS3)。
【0052】
次に、スリープ優先制御部71は、スリープ移行待機時間を用いて、スリープモードへの移行を試みる(ステップS4)。続いて、スリープ時間制御部72は、スリープ制御周期の残り時間における所要スリープ時間を更新する(ステップS5)。ここでは実際にスリープに移行した時間を所要スリープ時間から差し引く。そして、ステップS2からS5の処理をスリープ制御周期が終了するまで(ステップS6)繰り返し、次のスリープ制御周期でのスリープ制御に移行する。
【0053】
次に、図5を参照して、図4に示すスリープ移行待機時間を設定(ステップS3)する動作の詳細を説明する。図5は、図4に示すスリープ移行待機時間を設定する動作の詳細を示すフローチャートである。スリープ優先制御部71は、スリープ移行待機時間の設定を開始すると、スリープ制御周期の残り時間と所要スリープ時間の大小関係を比較する(ステップS11)。残り時間が大きければ(ステップS11でYes)、スリープ優先制御部71は、バックオフ時間をコンテンションウィンドウの最大値(IEEE802.11aの初回送信では15スロット)で設定する(ステップS12)。この場合のスリープ移行待機時間は、設定したコンテンションウィンドウ最大値にスロット時間を乗算した時間とDIFS時間の和に設定される。端末装置がパケットを送信するための待機時間はコンテンションウィンドウからランダムに設定した値から定まるため、スリープ移行待機時間においてコンテンションウィンドウの最大値に設定することによって、端末装置がパケットを送信してこない場合のみスリープモードに移行することを意図している。
【0054】
一方、残り時間が短ければ(ステップS11でNo)、スリープ優先制御部71は、バックオフ時間をゼロとして設定する(ステップS13)。このとき、スリープ移行待機時間は端末装置がパケットを送信するための待機時間よりも短くなるため、端末装置がパケットを送信しようとしている場合でも強制的に基地局装置はスリープモードに移行する。なお、ステップS11の比較では、スリープ制御周期の残り時間と所要スリープ時間のうち、いずれか一方にマージンを与えるようにしてもよい。例えば、所要スリープ時間にマージンを加えてステップS11の比較を実施する場合、マージンを加えない場合に比べて、早い段階でコンテンションウィンドウをゼロに設定する、すなわち強制的にスリープモードに移行することになる。
【0055】
次に、図6を参照して、図4に示すスリープモードへの移行を試みる(ステップS4)する動作の詳細を説明する。図6は、図4に示すスリープモードへの移行を試みる動作の詳細を示すフローチャートである。スリープ優先制御部71は、スリープの移行を開始すると、設定されたスリープ移行待機時間でキャリアセンスを実施する(ステップS21)。スリープ優先制御部71は、この時間で無線チャネルが未使用であるか否かを判定し(ステップS22)、未使用であれば(ステップS22でYes)、DurationフィールドでNAVを設定したCTSを送信する(ステップS23)。同時に、基地局装置1はスリープモードへ移行し(ステップS24)、NAV経過後にアウェイクモードへ復旧する(ステップS25)。
【0056】
ここでのNAV時間、すなわち基地局装置1のスリープ時間は通信品質の遅延特性に著しく影響を与えない時間(例えば、数msec)に設定してもよいが、強制的にスリープモードへ移行する場合(バックオフ時間がゼロに設定されている場合)は、基地局装置1のスリープ時間はスリープ制御周期の残り時間に設定する。スリープ制御周期の残り時間がCTSで設定できるNAV最大値(32.768msec)を超える場合、図13に示す従来技術のように、DIFSとバックオフ時間の待機時間を設定することなく複数のCTSを連続的に送信してもよい。
【0057】
一方、スリープ移行待機時間で無線チャネルが使用された場合(ステップS22でNo)、すなわち、端末装置または基地局装置1がパケットを送信開始した場合に基地局装置1はスリープモードに移行せず、端末装置が送信するパケットを受信したり、基地局装置1がパケットを送信する(ステップS26)。
【0058】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態による基地局装置を説明する。第1の実施形態はパケットの送受信を優先させるモード(バックオフ時間=最大値)と、スリープモードへの移行を優先させるモード(バックオフ時間=〇)との2段階制御であるが、本実施形態は図7に示すようにバックオフ時間をスケーラブルに制御する。バックオフ時間の変化によって、基地局装置1がスリープモードへの移行を確率的に制御することが可能となる。例えば、バックオフ時間が小さくなるほど、基地局装置1がスリープモードに移行する確率が高くなる。また、特定のパケットの送受信を優先しつつ、基地局装置1がスリープモードに移行することが可能である。
【0059】
バックオフ時間が最小値から最大値のいずれかの値に設定された場合、その値以下のバックオフ時間で送信しようとするパケットのみ通信を許容する。例えば、他の端末装置等に送信機会を奪われた結果バックオフを持ち越した端末装置や、VoIP等のリアルタイム性を要するアプリケーションで通信するIEEE 802.11e対応の端末装置は、バックオフ時間が短く設定される。従って、これらの優先度の高い(バックオフ時間の短い)通信の品質を損なうことなく、基地局装置がスリープモードに移行することが可能である。また、確率的にスリープモードへ移行させることによって、強制的なスリープモードへの移行時間を削減することも可能となる。
【0060】
第2の実施形態による基地局装置が、第1の実施形態による基地局装置と異なる点は、スリープ移行待機時間の設定動作である。図8は、第2の実施形態における基地局装置のスリープ移行待機時間設定(図4に示すステップS3)の詳細な処理動作を示すフローチャートである。スリープ優先制御部71は、スリープ移行待機時間の設定を開始すると、時間比xを(所要スリープ時間/スリープ制御周期の残り時間)として計算する(ステップS31)。この時間比に基づいてバックオフ時間を、以下のように設定する(ステップS32)。
【0061】
例えば、
バックオフ時間=コンテンションウィンドウ最大値×(1−x)×スロット時間
とする。例えば、時間比xが1/2の場合、バックオフ時間はコンテンションウィンドウ最大値の1/2に設定される。端末装置数が1台である場合、基地局装置1がスリープモードに移行する確率は1/2となる。また、時間比が1の場合、バックオフ時間はゼロになり、基地局装置1は強制的にスリープモードに移行することになる。なお、バックオフ時間の設定方法は上記の方法に限るものではなく、基地局装置1に接続している端末装置数等を考慮して設定してもよい。
【0062】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態による基地局装置を説明する。第2の実施形態はスリープ移行待機時間の設定を定式によって制御するが、本実施形態は閾値判断によりスリープ移行待機時間を設定する。第3の実施形態による基地局装置が、第1、第2の実施形態による基地局装置と異なる点は、スリープ移行待機時間の設定動作である。図9は、第3の実施形態における基地局装置のスリープ移行待機時間設定(図4に示すステップS3)の詳細な処理動作を示すフローチャートである。スリープ優先制御部71は、スリープ移行待機時間の設定を開始すると、所要スリープ時間とスリープ制御周期の残り時間との大小関係を判定する(ステップS41)。スリープ制御周期の残り時間が所要スリープ時間より大きい場合(ステップS41でYes)、スリープ優先制御部71は、スリープ制御周期の残り時間における所要スリープ時間に対する比率を計算し、その比率が閾値以上であるかを判定する(ステップS42)。
【0063】
そして、閾値以上であれば(ステップS42でYes)、スリープ優先制御部71は、バックオフ時間をコンテンションウィンドウの最大値で設定する(ステップS43)。一方、閾値未満であれば(ステップS42でNo)、スリープ優先制御部71は、バックオフ時間をコンテンションウィンドウの最小値から最大値までの値で設定する(ステップS44)。ここではコンテンションウィンドウ内でランダムに選択した値で設定してもよいし、固定的な値に設定してもよい。なお、ステップS42では時間比率を用いているが、スリープ制御周期の残り時間と所要スリープ時間との差で代用してもよい。この場合、その差が閾値以上であるか否かが判定される。スリープ制御周期の残り時間が所要スリープ時間より小さい場合(ステップS41でNo)、スリープ優先制御部71は、バックオフ時間はゼロに設定し(ステップS45)、スリープ移行待機時間の設定を終了する。
【0064】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態による基地局装置を説明する。第1〜第3の実施形態では、省電力動作の条件としてスリープ制御周期の所要スリープ時間を考慮してスリープ移行に関する優先度を制御するものであったが、第4の実施形態は、スリープ制御周期の所要スリープ時間の代わりに、スリープ制御周期の消費電力許容値を定め、この値を参照してスリープ移行に関する優先度を制御するものである。
【0065】
図10は同実施形態における基地局装置の構成を示すブロック図である。図10に示す基地局装置1が、図2に示す基地局装置1と異なる点は、所要スリープ時間把握部74、スリープ計画時間取得部81、スリープ実績時間取得部82に代えて、消費電力許容値把握部76、消費電力計画値取得部86、消費電力実績値取得部87が設けられている点である。
【0066】
消費電力計画値取得部86は、一定時間(例えば1日)で基地局装置が消費する電力の計画値を計算する。例えば、(7)式の条件を満たすように消費電力計画値が計算される。
【数7】
ここで、Pgenは一定時間(例えば1日)に発電部10によって発電される電力合計であり、Pconは一定時間の基地局装置の消費電力である。この条件が満たされれば、一定時間経過後にバッテリ蓄電残量は低減せずに、基地局装置1が不稼働になることはない。
【0067】
消費電力実績値取得部87は一定時間(例えば1日)内で現在までに実際に消費した電力を把握する。消費電力許容値把握部76は、消費電力計画値取得部86及び消費電力実績値取得部87を参照して、スリープ制御周期(例えば、1ビーコンインターバル)での消費電力許容値を計算する。
【0068】
次に、図11を参照して、図10に示す基地局装置1の処理動作を説明する。図11は図10に示す基地局装置1の処理動作を示すフローチャートである。この処理動作は、スリープ制御周期ごとに消費電力許容値を計算及び更新し、消費電力許容値を参照してスリープ移行に関する優先度を制御するものである。
【0069】
まず、消費電力許容値把握部76は、スリープ制御周期の開始時に、そのスリープ制御周期での消費電力許容時間を計算する(ステップS51)。例えば、(8)式によって計算することが可能である。
【数8】
【0070】
ここで、Preqはスリープ制御周期での消費電力許容値である。Pcon_recは一定時間内で現時刻までに実際に消費された電力であり、消費電力実績値取得部87で把握されている値である。Tremainは一定時間が経過するまでの残り時間であり、tintervalはスリープ制御周期を示す。この消費電力許容値は、時間経過と共に実際に消費した電力が差し引かれて更新される。
【0071】
次に、スリープ時間制御部72は、消費電力許容値と、スリープ制御周期の残り時間にスリープ時の消費電力を乗算した値との大小関係を比較する(ステップS52)。スリープ優先制御部71は、この比較結果によってスリープ移行待機時間を決定し(ステップS53)、スリープモードへの移行を試みる(ステップS54)。続いて、スリープ時間制御部72は、スリープ制御周期の残り時間における消費電力許容値を更新し(ステップS55)、ステップS52〜S55をスリープ制御周期が終了するまで(ステップS56)繰り返し、次のスリープ制御周期へ移行する。
【0072】
次に、図12を参照して、図11に示すスリープ移行待機時間を設定(ステップS53)する動作の詳細を説明する。図12は、図11に示すスリープ移行待機時間を設定する動作の詳細を示すフローチャートである。スリープ優先制御部71は、スリープ移行待機時間の設定を開始すると、消費電力許容値と、スリープ制御周期の残り時間×スリープ時の消費電力との大小関係を判定する(ステップS61)。消費電力許容値が大きければ(ステップS61でYes)、スリープ優先制御部71は、バックオフ時間をコンテンションウィンドウの最大値で設定し(ステップS62)、消費電力許容値が小さければ(ステップS61でNo)、バックオフ時間をゼロに設定し(ステップS63)、スリープ移行待機時間の設定を終了する。
【0073】
また、図8に示すスリープ移行待機時間の設定方法を適用してもよい。この場合、電力比yを(スリープ制御周期の残り時間×スリープ時の消費電力)/消費電力許容量として計算し、バックオフ時間を以下のように計算する。すなわち、
バックオフ時間=コンテンションウィンドウ最大値×(1−y)×スロット時間
によって計算する。
【0074】
さらに、図9に示すスリープ移行待機時間の設定方法を適用してもよい。この場合、
(1)消費電力許容値/(スリープ制御周期の残り時間×スリープ時の消費電力)と閾値との比較
(2)消費電力許容値−(スリープ制御周期の残り時間×スリープ時の消費電力)
と閾値との比較
によってコンテンションウィンドウ最大値からバックオフ時間を設定するか否か(ステップS43かS44か)を設定する。
【0075】
無線LANのアクセスポイント(基地局装置)の省電力化を行うための技術として、チャネルをNAVにより予約してその期間をスリープするものがある。NAVは、例えば、CTS信号等により送信することができるが、NAVによるチャネルの予約は、予約できる最大の期間が短いため、頻繁にCTS信号を送信する必要があり、電力を消費してしまう。一方、NAVを設定しないと、基地局装置のスリープ中に無線端末装置の送信が失敗してパケットが廃棄されるという問題がある。
【0076】
本発明は、比較的長期スパンで計画した所要スリープ時間、実績スリープ時間および残り時間を比較しながら、NAVを送信する際の待機時間を制御するようにした。具体的には、長期スパンの周期の当初は、当該待機時間を長く設定することにより、端末からのトラヒックの受信を優先して運用する。実績スリープ時間は、端末からのトラヒックを受信せずにNAVを送信して基地局装置がスリープに入ることによって、カウントアップする。定期的に計画した所要スリープ時間と実績スリープ時間の差と残り時間とを比較し、残り時間が下回ったら、NAVを送信する際の待機時間を短くすることにより、端末装置にトラヒックがあっても、スリープ動作の方が優先され、省電力化を達成することができる。これにより、基地局装置に電力を供給するバッテリーの持続時間を長延化することが可能になる。
【0077】
なお、図2、図10における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりスリープ制御処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0078】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0079】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明してきたが、上記実施の形態は本発明の例示に過ぎず、本発明が上記実施の形態に限定されるものではないことは明らかである。従って、本発明の精神及び範囲を逸脱しない範囲で構成要素の追加、省略、置換、その他の変更を行っても良い。
【産業上の利用可能性】
【0080】
無線アクセスシステムを構成する基地局装置において、消費電力を低減することが不可欠な用途に適用でき、特に、バッテリーによって基地局装置の動作に必要な電力を供給する場合に好適である。
【符号の説明】
【0081】
1・・・基地局装置、2・・・アンテナ、3・・・送受信部、4・・・通信制御部、5・・・バッファ部、6・・・インタフェース部、7・・・スリープ制御部、71・・・スリープ優先制御部、72・・・スリープ時間制御部、73・・・スリーププロファイル記憶部、74・・・所要スリープ時間把握部、75・・・残り時間把握部、76・・・消費電力許容値把握部、8・・・安定運用条件把握部、81・・・スリープ計画時間取得部、82・・・スリープ実績時間取得部、83・・・通信履歴保持部、84・・・発電量予測値取得部、85・・・蓄電残量取得部、86・・・消費電力計画値取得部、87・・・省電力実績値取得部、9・・・バッテリー、10・・・発電部
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線アクセスシステムを構成する基地局装置において、消費電力を低減する基地局装置およびスリープ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のインターネットの普及と共に、光回線やADSL等の有線回線に加え、スマートフォンを中心とするモバイル環境でのインターネット利用が増大している。モバイル環境では、第3世代携帯電話(以下、3Gという)や次世代携帯電話と位置づけられるLTE(Long Term Evolution)などの回線を利用する。これらのシステムは、無線アクセスに利用される様々な周波数帯の中でも、比較的使い勝手の良いマイクロ波帯を利用するものであり、この周波数帯の性質を利用して、ひとつの基地局装置で広範囲のエリアを一括してサービスエリアにすることが可能である。
【0003】
しかし、この様な使い勝手の良いマイクロ波帯はその他のシステムにおいても利用が期待されており、既に周波数資源の枯渇の問題に直面している。特に、動画などを含むブロードバンドのアプリケーションの増加やスマートフォンの普及によって、通信トラフィックが急速に増加する中で、LTEなどではより広い周波数帯域の割当てが必要になる。一方で、全体の帯域を複数の事業者が分け合うことになり、1事業者に割り当てられる帯域は非常に限定されたものとなっているのが現状である。
【0004】
この問題を解決するために、これらの3GおよびLTE等の回線を迂回させる無線システムが必要となる。最も現実的なシステムは2.4GHz帯および5GHz帯を利用するWiFi(wireless fidelity)である。IEEE802.11系の規格(802.11a、b、g、n等の全ての規格を含む)に準拠するWiFiでは、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)と呼ばれるアクセス技術を用いることにより、同一の周波数チャネルを用いて非計画的に乱立する無線局が混在する中でも、効率的かつ安定的に無線アクセスを利用可能である。さらに、各家庭内のホームネットワーク、携帯型ゲーム機、ノートPCや携帯電話等への実装など、これらのシステムは爆発的に普及しており、既に基地局装置(AP:アクセスポイントとも呼ばれる)および端末装置(端末局とも呼ばれる)の双方の価格が非常に安価になっている。
【0005】
このWiFiにおけるCSMA/CA技術では、基地局装置の置局設計を特に意識しなくても破綻することなく運用可能であり、送信電力を抑えることにより、サービスエリア半径を小さく抑えたマイクロセル化を行うと、個々のマイクロセル毎に所定のスループットを実現可能になり、結果的に単位面積当たりの伝送容量は増大する。この様にして、3GおよびLTE等の回線から溢れたトラヒックを効率的にWiFiネットワークを介して収容することが可能になる。
【0006】
しかし、通信エリアが広範な3G回線などからの迂回を想定するならば、少なくとも人口の密集する市街地、住宅地などの大部分を広範囲にカバーするためには、膨大な数の基地局装置を設置する必要がある。もともと屋内での利用を前提に設計された無線規格であることから、ひとつの基地局装置で広範囲をカバーすることは困難な上、システム全体の伝送容量増大のためにはマイクロセル化も必要になり、その結果、設置が必要な基地局装置の台数は膨大となる。これにより、基地局装置の消費電力はそれほど大きくなくても、システム全体の消費電力量は膨大となり、環境問題の観点からは環境に対する負荷の低減が必要である。
【0007】
これらの課題を解決するために再生可能エネルギーの利用が期待されている。太陽光発電では発電可能な電力量も他の発電技術よりも比較的大きいため、最も有力な方法として期待される。さらに、再生可能エネルギーによる給電のみによって基地局装置が安定的に動作することができれば、基地局装置と商用電源との接続が不要となり、置局自由度を向上することができる。置局自由度が向上すれば、地震などの災害対策としての活用が可能となる。例えば、災害を受けたエリア内で通信網や電力網が被害を受けることがあり、通信網や電力網の復旧には数日から1カ月程度に及ぶことがある。その時に太陽電池により給電される基地局装置の導入によって、従来の通信システムの代替として通信サービスを提供することが可能である。
【0008】
以上のように、環境に考慮した社会的な取り組みとして様々な電子機器の消費電力削減が広く進められているところであるが、上述の様な太陽電池給電の基地局装置を想定すると更に、基地局装置の省電力化が重要な課題となる。
【0009】
ここで、従来技術における基地局装置の省電力化技術を説明する。例えば、非特許文献1「無線LANアクセスポイントにおける省電力モードの性能評価」に記載された、基地局装置のスリープ制御技術はそのひとつである。AC100Vの電源に接続された基地局装置側は本来であればスリープの必要はないが、消費電力の削減のため、ないしはバッテリーを搭載した特殊な基地局装置などにおいて、基地局装置側も所定の周期で自らの回路を停止させ、スリープ状態に入ることで消費電力を削減する。ただし、自らがスリープ状態にある場合には、配下の端末装置(場合によっては、基地局装置のスリープ開始時には電源がOFFになっていた端末が、基地局装置のスリープ動作中に電源ON状態になることもあり、この様な可能性を秘めた端末装置も含んでいる)が無線回線でアクセスすることを禁止するメカニズムを必要とする。
【0010】
図13に、従来技術における基地局装置のスリープ制御の概要を示す。図13において、201および202はビーコン信号、203および204はスリープ制御パケット、205は基地局装置の状態、206は端末装置の状態を表す。また、説明の都合上、タイミング「A」「B」・・・「G」を図中で示した。
【0011】
通常、WiFiではブロードキャストの制御情報であるビーコン信号201および202を所定の周期で送信する。端末装置のスリープ制御においては、このビーコン信号の周期に基づいて端末装置は通常動作に戻る(スリープ解除)が、端末装置は、全てのビーコン信号を受信するわけではない。ビーコン信号201および202内には、DTIM(Delivery Traffic Indication MAP)カウント、およびDTIM周期等を含む情報が収容されており、このDTIMカウント値がゼロとなるビーコンだけを受信する。
【0012】
そこで、基地局装置はこのDTIM周期を1に設定し、全てのビーコン信号201および202のDTIMカウント値を0に設定し、その中で当該基地局装置がスリープ動作を行うためのスリープ制御パケット203および204を送信する。すなわち、すべての端末装置が基地局装置の送信するパケットを受信できるタイミングを構成するために、ビーコン信号のDTIMカウンタ値及びDTIM周期を上記の値に設定し、当該タイミングにおいてスリープ制御パケットを送信する。一般に、WiFiで用いられる無線パケットには、ある無線リンク(相互に無線通信を行う、一つの基地局装置と一つ端末装置の組合せ)で所定の時間だけ帯域を確保するために、NAV(Network Allocation Vector)と呼ばれる時間を設定し、当該リンク以外の無線端末の送信を禁止する。
【0013】
スリープ制御用パケット203および204ではこのNAVを設定し、端末が信号を送信することをブロックし、その間、自らの電源を落として消費電力削減を図る。例えば、スリープ制御パケット203の設定するNAVは時刻「C」から時刻「D」までであり、この間のうち信号を送信していない区間、時刻「C」から時刻「D」が基地局装置のスリープ時間となる。なお、一度のスリープ制御パケット203および204で設定可能なNAVの最大時間には限りがあるため、更なるスリープを行うためにはスリープ制御パケット203に続けてスリープ制御パケット204を送信することになり、これにより時刻「E」から時刻「F」までもスリープすることができ、この状況が基地局装置の状態205に示されている。
【0014】
また、端末装置の状態206で示したとおり、端末装置としては、時刻「C」から時刻「E」および時刻「E」から時刻「F」までをそれぞれNAVと認識し、この時間に無線パケットを送信することはない。このスリープ制御パケット203および204としては、NAVを設定できるものであれば何でも良く、典型的なものとしてはCTS(Clear to Send)パケットを用いるが、ブロードキャスト、マルチキャストなどのパケットを用いても良い。この際の設定次第では、端末装置もスリープに移行することもできる。
【0015】
なお、スリープ制御パケットの送信回数は、予め基地局装置に設定されている総スリープ期間によって定まる。総スリープ期間が大きければ、スリープ制御パケットの送信回数も大きくなる。
【0016】
同様のスリープ制御は、その他の制御メッセージを用いても実現可能である。例えば、WiFiにおける制御信号のひとつであるビーコン信号内には、Quietと呼ばれるフィールドが設定してあり、このフィールドを用いてビーコン周期内に無線アクセス禁止期間を設定可能である。図14に、Quietフィールドを用いたスリープ制御の一例について概要を示す。図14において、201および202はビーコン信号、207は基地局装置の状態、208は端末装置の状態を表す。また、説明の都合上、タイミング「A」「B」「C」を図中で示した。WiFiでは、利用可能な周波数帯域の中に、様々なレーダーの使用する周波数帯と共通の帯域が含まれている。その様な帯域では、例えば基地局装置が周辺にレーダー波を送信する局が存在しないかを定期的に検出する必要がある。これはDFS(Dynamic Frequency Selection)と呼ばれる制御であるが、このレーダー波の検出作業中は配下の端末装置からの無線アクセスを禁止しなければならない。
【0017】
そこで、所定の時間を端末からの送信禁止期間(図中では時刻「A」から時刻「B」まで)を用いてレーダー波の検出を行なう。これを利用して、基地局装置の状態207は、時刻「A」から時刻「B」まではスリープ状態で、時刻「B」から時刻「C」がアウェイク状態となる。一般の端末装置に関しては、送信禁止期間中の動作が規定されていないために、時刻「A」から時刻「B」についてはスリープできるか否かは端末次第であるが、この間は少なくとも有意なデータを送受信する可能性がないため、スリープ同様の動作とすることも可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】「無線LANアクセスポイントにおける省電力モードの性能評価」(小川他),電子情報通信学会 信学技報 MoMuC2009−13
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
前述したように、非特許文献1に記載のスリープ制御技術では、ビーコン送信時に基地局装置のバッファにデータが存在する場合や、一定時間内に端末装置とトラフィックの送受信が行われた履歴があった場合は、ビーコン間で基地局装置がスリープモードに移行しないように制御される。そのビーコンインターバル内では、トラフィック送受信が発生する可能性が高いので、そのデータの遅延等の通信品質を劣化させないために、基地局装置がスリープモードに移行することを防止しているからである。すなわち、基地局装置がスリープモードに移行するか否かはビーコン送信時点でのみ判断される。
【0020】
従って、ビーコンインターバル内で、基地局装置がバッファに蓄積したデータの送受信を完了した後、送受信するトラフィックがない場合でも、基地局装置は不必要なアウェイク状態を維持する。すなわち、この従来技術は基地局装置に接続している端末装置がいない状態、又は端末装置がいたとしてもトラフィックが発生していないときのみにスリープモードに移行するものであり、一定以上のトラフィックが送受信される場合では、基地局装置はスリープモードに移行できないため、大きな省電力化効果を期待できないという問題がある。
【0021】
また、従来技術におけるスリープ制御は、バッテリー蓄電残量などを反映した制御とはなっていないのが現状である。無線通信インフラとして太陽電池で給電される基地局装置では、バッテリー蓄電残量の枯渇によって不稼働になることは最も回避すべき事態である。
【0022】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、如何なるトラフィック環境においても所定の省電力効果を得ることが可能となり、バッテリ蓄電残量の枯渇を回避することができる基地局装置およびスリープ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、端末装置と無線通信を行う基地局装置であって、チャネルの空き状態が、スリープ待機時間を超えて継続していることを検出した場合に、前記端末装置の送信を禁止して、所定期間に渡ってスリープ状態に移行させるスリープ制御手段と、所定周期毎に省電力動作に関する条件値を定める条件値設定手段と、前記所定周期の開始から現時刻までの省電力動作に関する実績値を取得する実績値取得手段と、前記実績値と前記条件値との比較結果によって、前記スリープ待機時間を制御するスリープ待機時間制御手段とを備えることを特徴とする。
【0024】
本発明は、前記スリープ待機時間制御手段は、前記実績値が前記条件値を満たさない場合は前記スリープ待機時間を前記端末装置がパケットを送信するために待機する最小時間である第1の値以下に設定し、前記実績値が前記条件値を満たす場合は前記スリープ待機時間を前記端末装置がパケットを送信するために待機する最大時間である第2の値以上に設定することを特徴とする。
【0025】
本発明は、前記スリープ待機時間制御手段は、前記実績値と前記条件値との比、又は前記実績値と前記条件値との差を計算し、前記比または前記差と所定の閾値を比較することによって、前記スリープ待機時間を第1の値以下又は第2の値以上に設定することを特徴とする。
【0026】
本発明は、前記スリープ待機時間制御手段は、前記実績値と前記条件値との比から前記スリープ待機時間を設定することを特徴とする。
【0027】
本発明は、前記省電力動作に関する条件が、前記所定周期における所要スリープ時間、または前記所定周期における消費電力の許容値であることを特徴とする。
【0028】
本発明は、前記スリープ待機時間制御手段が、前記実績値が前記条件値を満たさない場合に、前記スリープ待機時間を第1の値以下に設定した際に、前記スリープ状態に移行させる前記所定期間を、現時刻から前記所定周期が終了するまでの時間に設定することを特徴とする。
【0029】
本発明は、端末装置と無線通信を行う基地局装置におけるスリープ制御方法であって、チャネルの空き状態が、スリープ待機時間を超えて継続していることを検出した場合に、前記端末装置の送信を禁止して、所定期間に渡ってスリープ状態に移行させるスリープ制御ステップと、所定周期毎に省電力動作に関する条件値を定める条件値設定ステップと、前記所定周期の開始から現時刻までの省電力動作に関する実績値を取得する実績値取得ステップと、前記実績値と前記条件値との比較結果によって、前記スリープ待機時間を制御するスリープ待機時間制御ステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、省電力動作に関する条件を定め、定めた条件と省電力動作に関する実績を比較することで、スリープモードへの強制移行の必要性を判断するようにして、基地局装置がスリープモードに移行する優先度を制御するようにしたため、基地局装置は如何なるトラフィック環境においても所望の省電力効果を得ることが期待できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の基地局装置におけるスリープ制御技術を示す説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示すスリーププロファイル記憶部73に保存さるスリーププロファイルの一例を示す説明図である。
【図4】図2に示す基地局装置1のスリープ制御の処理動作を示すフローチャートである。
【図5】図4に示すスリープ移行待機時間を設定する動作の詳細を示すフローチャートである。
【図6】図4に示すスリープモードへの移行を試みる動作の詳細を示すフローチャートである。
【図7】バックオフ時間をスケーラブルに制御する動作を示す説明図である。
【図8】第2の実施形態における基地局装置のスリープ移行待機時間設定の詳細な処理動作を示すフローチャートである。
【図9】第3の実施形態における基地局装置のスリープ移行待機時間設定の詳細な処理動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第4の実施形態における基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図11】図10に示す基地局装置1の処理動作を示すフローチャートである。
【図12】図11に示すスリープ移行待機時間を設定する動作の詳細を示すフローチャートである。
【図13】従来技術における基地局装置のスリープ制御の概要を示す説明図である。
【図14】Quietフィールドを用いたスリープ制御の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態による基地局装置を説明する。本発明では、再生可能エネルギーとバッテリーからの電力供給で運用される基地局装置、又はバッテリーからの電力供給のみによって運用される基地局装置において、基地局装置の安定運用又はバッテリーの長寿命化を目的とした省電力化技術である。基地局装置は、発電量やバッテリー蓄電残量等から、基地局装置が不稼働とならず安定的に運用されるための所要スリープ時間を設定し、所要スリープ時間と実際に基地局装置がスリープした時間(実績スリープ時間)を比較することで、基地局装置がスリープモードに移行する優先度を判断する。所要スリープ時間は一定周期(以下ではスリープ制御周期と称する)毎に設定される。スリープ制御周期は任意に設定できるものであり、例えば1ビーコンインターバル又は複数ビーコンインターバルの周期に設定してもよい。
【0033】
ここで、図1を参照して、本実施形態における基地局装置のスリープ制御技術について説明する。従来技術と異なり、基地局装置はビーコン送信タイミングだけでなく、ビーコン間でもスリープモードへの移行判断を実施する。スリープ制御周期の前半では、基地局装置はスリープモードに移行する優先度を低く設定する。この場合、基地局装置又は端末装置に蓄積している送信データ等のトラフィックが無い場合のみスリープモードに移行するように制御する。基地局装置はCTS-to-self等のスリープ制御パケットを送信することによってNAVを設定してからスリープモードに移行するが、CTS−to−self送信までのキャリアセンス時間を長く設定することにより、他のパケットの送受信を優先させる。例えば、端末装置のキャリアセンス時間は、DIFSとコンテンションウィンドウからランダムに選んだ値にスロットタイムを乗算した時間との和で設定されるが、CTS−to−selfを送信するときのキャリアセンスではコンテンションウィンドウをランダムに選ぶのでなく、コンテンションウィンドウの最大値を設定することが可能である。
【0034】
端末装置等に送信トラフィックが存在する場合、基地局装置がCTS−to−selfを送信する前に送信トラフィックの送受信が開始され、基地局装置はスリープモードに移行しない。そのため、基地局装置又は端末装置に通信トラフィックが多く発生している場合は、基地局装置がスリープモードに移行する機会が少なくなり、実績スリープ時間が小さくなる。この場合、スリープ制御周期終了時に実績スリープ時間が所要スリープ時間を満たさなくなるおそれがあり、基地局装置の不稼働につながる可能性がある。この場合にはスリープモードに移行する優先度を高く設定する。基地局装置は実績スリープ時間から所要スリープ時間を随時更新すると共に、スリープ制御周期の残り時間を把握し、その残り時間が所要スリープ時間と同じ値になったときは、基地局装置はCTS−to−self送信までのキャリアセンス時間を短く設定することにより、他のトラフィックに優先してスリープモードに移行することが可能である。例えば、コンテンションウィンドウをゼロに設定することが可能である。
【0035】
次に、同実施形態による基地局装置の構成を説明する。図1は同実施形態における基地局装置の構成を示すブロック図である。このブロック図では、再生可能エネルギーを利用した基地局装置を想定している。基地局装置1は、アンテナ2、送受信部3、通信制御部4、バッファ部5、インタフェース部6、スリープ制御部7、安定運用条件把握部8、バッテリー9、発電部10から構成する。バッテリー9と発電部10は、基地局装置1と一体に設けられている必要はなく、外部の設けられたバッテリー9と発電部10との間を電力線で接続されていてもよい。
【0036】
基地局装置1は、無線回線を介した信号をアンテナ2で受信し、送受信部3にて帯域外信号のフィルタリング、ローノイズアンプによる信号増幅、RF周波数からベースバンド帯への周波数変換、アナログ信号からデジタル信号へのA/D変換等の処理を行ない、さらにデジタル化されたベースバンド信号は、タイミング検出、物理レイヤに関するヘッダ情報の終端、復調処理、誤り訂正などの一連の信号処理が施される。送受信部2から出力される復調処理等が施された信号は通信制御部4に入力する。受信した信号がデータパケットである場合は、バッファ部5を介してインタフェース部6にそのデータパケットを出力する。
【0037】
インタフェース部6は基地局装置1と外部とのデータパケットの入出力を行うインタフェースである。一方、インタフェース部6からパケットが出力されたときは、このデータパケットはバッファ部5に蓄積する。このデータパケットが、通信制御部4の制御によって送信されるときは、通信制御部4は無線パケットを送受信部3に出力し、送受信部3で各種変調処理を施されてベースバンド信号が生成され、デジタル信号からアナログ信号に変換するD/A変換、周波数変換、帯域外信号のフィルタリング、信号増幅などを行い、アンテナ2より送信する。
【0038】
バッファ部5には基地局装置1が送信すべきトラフィックが蓄積されており、通信制御部4はバッファ部5に問い合わせることにより、トラフィックの有無を判断する。発電部10は、太陽光や風力等の再生可能エネルギーを利用した発電手段である。ここで発電したエネルギーはバッテリー9に出力され、バッテリー9は入力されたエネルギーを蓄電する。
【0039】
安定運用条件把握部8は、スリープ計画時間取得部81、スリープ実績時間取得部82、通信履歴保持部83、発電量予測値取得部84、蓄電残量取得部85から構成する。通信履歴保持部83は過去の通信履歴が保存されており、過去一定時間(例えば1日)毎の送信時間率、受信時間率、スリープ時間率が記録される。ここでの受信時間率とは、基地局装置とトラフィックを受信していないが、端末装置からのトラフィックの送信を待ち受けている状態も含める。発電量予測値取得部84は過去の発電量から今後一定時間(例えば1日)の発電量予測値を取得する。太陽光等による発電量は昼夜及び天候に左右されるが、長時間平均的には季節の変化に伴い緩やかに変化するものである。従って、複数日の発電量の傾向から今後の予測値をある程度は把握することは可能である。さらに天気予報の情報を他の通信手段を用いて利用することによってより精度の高い発電量の予測値を取得するようにしてもよい。
【0040】
蓄電残量取得部85はバッテリー9に蓄積されているエネルギー残量を参照してその値を保持する。スリープ計画時間取得部81は、通信履歴保持部82、発電量予測値取得部83、蓄電残量取得部84の情報を参照して、今後一定時間で基地局装置1を安定的に運用するために必要となるスリープ計画時間を取得する。ここでの一定時間はスリープ制御周期以上の時間に設定し、例えば1日に設定してもよい。
【0041】
ここで、スリープ計画時間の計算方法について説明する。基地局装置1における安定運用の条件として(1)式を満たす必要がある。
【数1】
Pgenは一定時間(例えば1日)に発電部10によって発電される電力合計であり、Pconは一定時間の基地局装置1の消費電力である。この条件は一定時間で発電量が消費電力を下回らないということを示している。この条件が満たされれば、一定時間経過後にバッテリ蓄電残量は低減せずに、基地局装置1が不稼働になることはない。ここで消費電力Pconは(2)式によって計算できる。
【数2】
【0042】
Etx,Erx,Esleepは、送信時、受信時、待機時、スリープ時の消費電力を示す。Tsleepは一定時間Tのうち、スリープで占める時間を示す。Rtx,Rrxは基地局装置がアウェイク状態の時間T−Tsleepのうち、基地局装置が送信状態、受信状態にある時間比率を示す。ここでRrxでは基地局装置がトラフィックを受信している状態だけでなく、端末装置からのトラフィックの送信を待ち受けている状態も含めている。なお、RtxとRrxの和は1である。ここで、安定運用の条件を考慮すると、今後一定時間で安定的に基地局装置を運用するために必要となるスリープ時間Tsleep(スリープ計画値)は(3)式によって計算できる。
【数3】
【0043】
Pgenは発電量予測値取得部84が推定する今後一定時間の発電量予測値を参照する。RtxおよびRrxは通信履歴保持部83を参照して把握する。なお、スリープ計画値の計算方法は(3)式に限らず、他の方法を用いることも可能である。例えば、再生可能エネルギー等の発電手段を有さずにバッテリー9によってのみ駆動するような基地局装置1では、所要バッテリ持続時間Treqで基地局装置1を連続運用させるためには、一定時間(例えば1日)での消費電力は(4)の条件を満たす必要がある。
【数4】
【0044】
ここでPbatteryは蓄電残量取得部85を参照して得られるバッテリー9のエネルギー残量である。従って、今後一定時間で基地局装置を連続運用するために必要となるスリープ計画値は(5)式によって計算できる。
【数5】
【0045】
また、スリープ実績時間取得部82は一定時間の中で実際にスリープモードに移行した合計時間を記録する。ここで記録される時間は、一定時間経過後にスリープ計画時間が再計算されるタイミングでゼロにリセットされる。
【0046】
スリープ制御部7は所定の回路の電源供給を停止するなどして、基地局装置1の省電力化を実現する機能を有し、スリープ優先制御部71、スリープ時間制御部72、スリーププロファイル記憶部73、所要スリープ時間把握部74、残り時間把握部75から構成する。所要スリープ時間把握部74はスリープ制御周期で必要となるスリープ時間を把握する。ここでの所要スリープ時間は、スリープ計画時間取得部81で計算するスリープ計画値をさらに細かい周期(スリープ制御周期)でみたときの値である。なお、スリープ制御周期内で基地局装置1がスリープモードに移行する度に、スリープ所要時間から実際にスリープに移行した時間を差し引く。残り時間把握部75は、スリープ制御周期が終了するまでの残り時間を把握する。スリープ優先制御71は所要スリープ時間とスリープ制御周期の残り時間を比較して、基地局装置1がスリープモードに移行する優先度を決定する。
【0047】
スリープ時間制御部72はスリープ優先制御部71の動作に従って基地局装置1がスリープモードに移行する時間を決定する。また、このときスリーププロファイル記憶部73を参照して、スリープ時に電源供給を停止する回路を選択することも可能である。スリーププロファイル記憶部73に保存されているスリーププロファイル例を図3に示す。基地局装置1の回路は電源供給を停止させたあとに回路機能が安定的に動作するまでに一定の時間を要し、その時間は回路によって異なる。例えば、周波数シンセサイザーはRFアンプ等に比べて機能が安定的に動作するまでの所要時間が大きい。従って、スリープ時間が小さければ電源供給を停止できる回路規模が小さいが、スリープ時間が大きいほど電源供給を停止する回路規模を大きくすることが可能である。例えば、図3に示すようにスリープ時間と閾値tthとの大小関係によって電源供給を停止する回路規模を制御してもよい。
【0048】
なお、スリープ制御部7及び安定運用条件把握部8については、通信制御部4から切り離して説明を行ったが、これら全てをひとつの制御部全体として構成してもよい。
【0049】
次に、図4を参照して、図2に示す基地局装置1のスリープ制御の処理動作を説明する。図4は、図2に示す基地局装置1のスリープ制御の処理動作を示すフローチャートである。この制御方法は、スリープ制御周期ごとに所要スリープ時間を計算及び更新し、所要スリープ時間を参照してスリープ移行に関する優先度を制御する。まず、スリープ制御周期の開始時に、スリープ時間制御部72は、そのスリープ制御周期での所要スリープ時間を計算する(ステップS1)。ここではスリープ計画時間取得部81とスリープ実績時間取得部82を参照して計算する。例えば、(6)式によって計算することが可能である。
【数6】
【0050】
tsleepはスリープ制御周期での所要スリープ時間である。Tsleepは一定時間(例えば1日)でのスリープ計画時間であり、スリープ計画時間取得部81で把握されている値である。Tsleep_recは一定時間内で現時刻までに実際にスリープに移行した実績時間であり、スリープ実績時間取得部82で把握されている値である。Tremainは一定時間が経過するまでの残り時間であり、tintervalはスリープ制御周期を示す。この所要スリープ時間は、基地局装置1がスリープモードに移行する度に、その時間を所要スリープ時間から差し引いて更新する。
【0051】
次に、スリープ時間制御部72は、所要スリープ時間把握部74において把握した所要スリープ時間と、残り時間把握部75において把握したスリープ制御周期の残り時間とを比較する(ステップS2)。スリープ優先制御部71は、この比較結果から、スリープモードに移行する優先度、すなわち、スリープ移行待機時間を設定する(ステップS3)。
【0052】
次に、スリープ優先制御部71は、スリープ移行待機時間を用いて、スリープモードへの移行を試みる(ステップS4)。続いて、スリープ時間制御部72は、スリープ制御周期の残り時間における所要スリープ時間を更新する(ステップS5)。ここでは実際にスリープに移行した時間を所要スリープ時間から差し引く。そして、ステップS2からS5の処理をスリープ制御周期が終了するまで(ステップS6)繰り返し、次のスリープ制御周期でのスリープ制御に移行する。
【0053】
次に、図5を参照して、図4に示すスリープ移行待機時間を設定(ステップS3)する動作の詳細を説明する。図5は、図4に示すスリープ移行待機時間を設定する動作の詳細を示すフローチャートである。スリープ優先制御部71は、スリープ移行待機時間の設定を開始すると、スリープ制御周期の残り時間と所要スリープ時間の大小関係を比較する(ステップS11)。残り時間が大きければ(ステップS11でYes)、スリープ優先制御部71は、バックオフ時間をコンテンションウィンドウの最大値(IEEE802.11aの初回送信では15スロット)で設定する(ステップS12)。この場合のスリープ移行待機時間は、設定したコンテンションウィンドウ最大値にスロット時間を乗算した時間とDIFS時間の和に設定される。端末装置がパケットを送信するための待機時間はコンテンションウィンドウからランダムに設定した値から定まるため、スリープ移行待機時間においてコンテンションウィンドウの最大値に設定することによって、端末装置がパケットを送信してこない場合のみスリープモードに移行することを意図している。
【0054】
一方、残り時間が短ければ(ステップS11でNo)、スリープ優先制御部71は、バックオフ時間をゼロとして設定する(ステップS13)。このとき、スリープ移行待機時間は端末装置がパケットを送信するための待機時間よりも短くなるため、端末装置がパケットを送信しようとしている場合でも強制的に基地局装置はスリープモードに移行する。なお、ステップS11の比較では、スリープ制御周期の残り時間と所要スリープ時間のうち、いずれか一方にマージンを与えるようにしてもよい。例えば、所要スリープ時間にマージンを加えてステップS11の比較を実施する場合、マージンを加えない場合に比べて、早い段階でコンテンションウィンドウをゼロに設定する、すなわち強制的にスリープモードに移行することになる。
【0055】
次に、図6を参照して、図4に示すスリープモードへの移行を試みる(ステップS4)する動作の詳細を説明する。図6は、図4に示すスリープモードへの移行を試みる動作の詳細を示すフローチャートである。スリープ優先制御部71は、スリープの移行を開始すると、設定されたスリープ移行待機時間でキャリアセンスを実施する(ステップS21)。スリープ優先制御部71は、この時間で無線チャネルが未使用であるか否かを判定し(ステップS22)、未使用であれば(ステップS22でYes)、DurationフィールドでNAVを設定したCTSを送信する(ステップS23)。同時に、基地局装置1はスリープモードへ移行し(ステップS24)、NAV経過後にアウェイクモードへ復旧する(ステップS25)。
【0056】
ここでのNAV時間、すなわち基地局装置1のスリープ時間は通信品質の遅延特性に著しく影響を与えない時間(例えば、数msec)に設定してもよいが、強制的にスリープモードへ移行する場合(バックオフ時間がゼロに設定されている場合)は、基地局装置1のスリープ時間はスリープ制御周期の残り時間に設定する。スリープ制御周期の残り時間がCTSで設定できるNAV最大値(32.768msec)を超える場合、図13に示す従来技術のように、DIFSとバックオフ時間の待機時間を設定することなく複数のCTSを連続的に送信してもよい。
【0057】
一方、スリープ移行待機時間で無線チャネルが使用された場合(ステップS22でNo)、すなわち、端末装置または基地局装置1がパケットを送信開始した場合に基地局装置1はスリープモードに移行せず、端末装置が送信するパケットを受信したり、基地局装置1がパケットを送信する(ステップS26)。
【0058】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態による基地局装置を説明する。第1の実施形態はパケットの送受信を優先させるモード(バックオフ時間=最大値)と、スリープモードへの移行を優先させるモード(バックオフ時間=〇)との2段階制御であるが、本実施形態は図7に示すようにバックオフ時間をスケーラブルに制御する。バックオフ時間の変化によって、基地局装置1がスリープモードへの移行を確率的に制御することが可能となる。例えば、バックオフ時間が小さくなるほど、基地局装置1がスリープモードに移行する確率が高くなる。また、特定のパケットの送受信を優先しつつ、基地局装置1がスリープモードに移行することが可能である。
【0059】
バックオフ時間が最小値から最大値のいずれかの値に設定された場合、その値以下のバックオフ時間で送信しようとするパケットのみ通信を許容する。例えば、他の端末装置等に送信機会を奪われた結果バックオフを持ち越した端末装置や、VoIP等のリアルタイム性を要するアプリケーションで通信するIEEE 802.11e対応の端末装置は、バックオフ時間が短く設定される。従って、これらの優先度の高い(バックオフ時間の短い)通信の品質を損なうことなく、基地局装置がスリープモードに移行することが可能である。また、確率的にスリープモードへ移行させることによって、強制的なスリープモードへの移行時間を削減することも可能となる。
【0060】
第2の実施形態による基地局装置が、第1の実施形態による基地局装置と異なる点は、スリープ移行待機時間の設定動作である。図8は、第2の実施形態における基地局装置のスリープ移行待機時間設定(図4に示すステップS3)の詳細な処理動作を示すフローチャートである。スリープ優先制御部71は、スリープ移行待機時間の設定を開始すると、時間比xを(所要スリープ時間/スリープ制御周期の残り時間)として計算する(ステップS31)。この時間比に基づいてバックオフ時間を、以下のように設定する(ステップS32)。
【0061】
例えば、
バックオフ時間=コンテンションウィンドウ最大値×(1−x)×スロット時間
とする。例えば、時間比xが1/2の場合、バックオフ時間はコンテンションウィンドウ最大値の1/2に設定される。端末装置数が1台である場合、基地局装置1がスリープモードに移行する確率は1/2となる。また、時間比が1の場合、バックオフ時間はゼロになり、基地局装置1は強制的にスリープモードに移行することになる。なお、バックオフ時間の設定方法は上記の方法に限るものではなく、基地局装置1に接続している端末装置数等を考慮して設定してもよい。
【0062】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態による基地局装置を説明する。第2の実施形態はスリープ移行待機時間の設定を定式によって制御するが、本実施形態は閾値判断によりスリープ移行待機時間を設定する。第3の実施形態による基地局装置が、第1、第2の実施形態による基地局装置と異なる点は、スリープ移行待機時間の設定動作である。図9は、第3の実施形態における基地局装置のスリープ移行待機時間設定(図4に示すステップS3)の詳細な処理動作を示すフローチャートである。スリープ優先制御部71は、スリープ移行待機時間の設定を開始すると、所要スリープ時間とスリープ制御周期の残り時間との大小関係を判定する(ステップS41)。スリープ制御周期の残り時間が所要スリープ時間より大きい場合(ステップS41でYes)、スリープ優先制御部71は、スリープ制御周期の残り時間における所要スリープ時間に対する比率を計算し、その比率が閾値以上であるかを判定する(ステップS42)。
【0063】
そして、閾値以上であれば(ステップS42でYes)、スリープ優先制御部71は、バックオフ時間をコンテンションウィンドウの最大値で設定する(ステップS43)。一方、閾値未満であれば(ステップS42でNo)、スリープ優先制御部71は、バックオフ時間をコンテンションウィンドウの最小値から最大値までの値で設定する(ステップS44)。ここではコンテンションウィンドウ内でランダムに選択した値で設定してもよいし、固定的な値に設定してもよい。なお、ステップS42では時間比率を用いているが、スリープ制御周期の残り時間と所要スリープ時間との差で代用してもよい。この場合、その差が閾値以上であるか否かが判定される。スリープ制御周期の残り時間が所要スリープ時間より小さい場合(ステップS41でNo)、スリープ優先制御部71は、バックオフ時間はゼロに設定し(ステップS45)、スリープ移行待機時間の設定を終了する。
【0064】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態による基地局装置を説明する。第1〜第3の実施形態では、省電力動作の条件としてスリープ制御周期の所要スリープ時間を考慮してスリープ移行に関する優先度を制御するものであったが、第4の実施形態は、スリープ制御周期の所要スリープ時間の代わりに、スリープ制御周期の消費電力許容値を定め、この値を参照してスリープ移行に関する優先度を制御するものである。
【0065】
図10は同実施形態における基地局装置の構成を示すブロック図である。図10に示す基地局装置1が、図2に示す基地局装置1と異なる点は、所要スリープ時間把握部74、スリープ計画時間取得部81、スリープ実績時間取得部82に代えて、消費電力許容値把握部76、消費電力計画値取得部86、消費電力実績値取得部87が設けられている点である。
【0066】
消費電力計画値取得部86は、一定時間(例えば1日)で基地局装置が消費する電力の計画値を計算する。例えば、(7)式の条件を満たすように消費電力計画値が計算される。
【数7】
ここで、Pgenは一定時間(例えば1日)に発電部10によって発電される電力合計であり、Pconは一定時間の基地局装置の消費電力である。この条件が満たされれば、一定時間経過後にバッテリ蓄電残量は低減せずに、基地局装置1が不稼働になることはない。
【0067】
消費電力実績値取得部87は一定時間(例えば1日)内で現在までに実際に消費した電力を把握する。消費電力許容値把握部76は、消費電力計画値取得部86及び消費電力実績値取得部87を参照して、スリープ制御周期(例えば、1ビーコンインターバル)での消費電力許容値を計算する。
【0068】
次に、図11を参照して、図10に示す基地局装置1の処理動作を説明する。図11は図10に示す基地局装置1の処理動作を示すフローチャートである。この処理動作は、スリープ制御周期ごとに消費電力許容値を計算及び更新し、消費電力許容値を参照してスリープ移行に関する優先度を制御するものである。
【0069】
まず、消費電力許容値把握部76は、スリープ制御周期の開始時に、そのスリープ制御周期での消費電力許容時間を計算する(ステップS51)。例えば、(8)式によって計算することが可能である。
【数8】
【0070】
ここで、Preqはスリープ制御周期での消費電力許容値である。Pcon_recは一定時間内で現時刻までに実際に消費された電力であり、消費電力実績値取得部87で把握されている値である。Tremainは一定時間が経過するまでの残り時間であり、tintervalはスリープ制御周期を示す。この消費電力許容値は、時間経過と共に実際に消費した電力が差し引かれて更新される。
【0071】
次に、スリープ時間制御部72は、消費電力許容値と、スリープ制御周期の残り時間にスリープ時の消費電力を乗算した値との大小関係を比較する(ステップS52)。スリープ優先制御部71は、この比較結果によってスリープ移行待機時間を決定し(ステップS53)、スリープモードへの移行を試みる(ステップS54)。続いて、スリープ時間制御部72は、スリープ制御周期の残り時間における消費電力許容値を更新し(ステップS55)、ステップS52〜S55をスリープ制御周期が終了するまで(ステップS56)繰り返し、次のスリープ制御周期へ移行する。
【0072】
次に、図12を参照して、図11に示すスリープ移行待機時間を設定(ステップS53)する動作の詳細を説明する。図12は、図11に示すスリープ移行待機時間を設定する動作の詳細を示すフローチャートである。スリープ優先制御部71は、スリープ移行待機時間の設定を開始すると、消費電力許容値と、スリープ制御周期の残り時間×スリープ時の消費電力との大小関係を判定する(ステップS61)。消費電力許容値が大きければ(ステップS61でYes)、スリープ優先制御部71は、バックオフ時間をコンテンションウィンドウの最大値で設定し(ステップS62)、消費電力許容値が小さければ(ステップS61でNo)、バックオフ時間をゼロに設定し(ステップS63)、スリープ移行待機時間の設定を終了する。
【0073】
また、図8に示すスリープ移行待機時間の設定方法を適用してもよい。この場合、電力比yを(スリープ制御周期の残り時間×スリープ時の消費電力)/消費電力許容量として計算し、バックオフ時間を以下のように計算する。すなわち、
バックオフ時間=コンテンションウィンドウ最大値×(1−y)×スロット時間
によって計算する。
【0074】
さらに、図9に示すスリープ移行待機時間の設定方法を適用してもよい。この場合、
(1)消費電力許容値/(スリープ制御周期の残り時間×スリープ時の消費電力)と閾値との比較
(2)消費電力許容値−(スリープ制御周期の残り時間×スリープ時の消費電力)
と閾値との比較
によってコンテンションウィンドウ最大値からバックオフ時間を設定するか否か(ステップS43かS44か)を設定する。
【0075】
無線LANのアクセスポイント(基地局装置)の省電力化を行うための技術として、チャネルをNAVにより予約してその期間をスリープするものがある。NAVは、例えば、CTS信号等により送信することができるが、NAVによるチャネルの予約は、予約できる最大の期間が短いため、頻繁にCTS信号を送信する必要があり、電力を消費してしまう。一方、NAVを設定しないと、基地局装置のスリープ中に無線端末装置の送信が失敗してパケットが廃棄されるという問題がある。
【0076】
本発明は、比較的長期スパンで計画した所要スリープ時間、実績スリープ時間および残り時間を比較しながら、NAVを送信する際の待機時間を制御するようにした。具体的には、長期スパンの周期の当初は、当該待機時間を長く設定することにより、端末からのトラヒックの受信を優先して運用する。実績スリープ時間は、端末からのトラヒックを受信せずにNAVを送信して基地局装置がスリープに入ることによって、カウントアップする。定期的に計画した所要スリープ時間と実績スリープ時間の差と残り時間とを比較し、残り時間が下回ったら、NAVを送信する際の待機時間を短くすることにより、端末装置にトラヒックがあっても、スリープ動作の方が優先され、省電力化を達成することができる。これにより、基地局装置に電力を供給するバッテリーの持続時間を長延化することが可能になる。
【0077】
なお、図2、図10における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりスリープ制御処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0078】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0079】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明してきたが、上記実施の形態は本発明の例示に過ぎず、本発明が上記実施の形態に限定されるものではないことは明らかである。従って、本発明の精神及び範囲を逸脱しない範囲で構成要素の追加、省略、置換、その他の変更を行っても良い。
【産業上の利用可能性】
【0080】
無線アクセスシステムを構成する基地局装置において、消費電力を低減することが不可欠な用途に適用でき、特に、バッテリーによって基地局装置の動作に必要な電力を供給する場合に好適である。
【符号の説明】
【0081】
1・・・基地局装置、2・・・アンテナ、3・・・送受信部、4・・・通信制御部、5・・・バッファ部、6・・・インタフェース部、7・・・スリープ制御部、71・・・スリープ優先制御部、72・・・スリープ時間制御部、73・・・スリーププロファイル記憶部、74・・・所要スリープ時間把握部、75・・・残り時間把握部、76・・・消費電力許容値把握部、8・・・安定運用条件把握部、81・・・スリープ計画時間取得部、82・・・スリープ実績時間取得部、83・・・通信履歴保持部、84・・・発電量予測値取得部、85・・・蓄電残量取得部、86・・・消費電力計画値取得部、87・・・省電力実績値取得部、9・・・バッテリー、10・・・発電部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置と無線通信を行う基地局装置であって、
チャネルの空き状態が、スリープ待機時間を超えて継続していることを検出した場合に、前記端末装置の送信を禁止して、所定期間に渡ってスリープ状態に移行するスリープ制御手段と、
所定周期毎に省電力動作に関する条件値を定める条件値設定手段と、
前記所定周期の開始から現時刻までの省電力動作に関する実績値を取得する実績値取得手段と、
前記実績値と前記条件値との比較結果によって、前記スリープ待機時間を制御するスリープ待機時間制御手段と
を備えることを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
前記スリープ待機時間制御手段は、前記実績値が前記条件値を満たさない場合は前記スリープ待機時間を前記端末装置がパケットを送信するために待機する最小時間である第1の値以下に設定し、前記実績値が前記条件値を満たす場合は前記スリープ待機時間を前記端末装置がパケットを送信するために待機する最大時間である第2の値以上に設定することを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記スリープ待機時間制御手段は、前記実績値と前記条件値との比、又は前記実績値と前記条件値との差を計算し、前記比または前記差と所定の閾値を比較することによって、前記スリープ待機時間を第1の値以下又は第2の値以上に設定することを特徴とする請求項2に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記スリープ待機時間制御手段は、前記実績値と前記条件値との比から前記スリープ待機時間を設定することを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記省電力動作に関する条件値が、前記所定周期における所要スリープ時間、または前記所定周期における消費電力の許容値であることを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項6】
前記スリープ待機時間制御手段が、前記実績値が前記条件値を満たさない場合に、前記スリープ待機時間を第1の値以下に設定した際に、
前記スリープ状態に移行させる前記所定期間を、現時刻から前記所定周期が終了するまでの時間に設定することを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項7】
端末装置と無線通信を行う基地局装置におけるスリープ制御方法であって、
チャネルの空き状態が、スリープ待機時間を超えて継続していることを検出した場合に、前記端末装置の送信を禁止して、所定期間に渡ってスリープ状態に移行するスリープ制御ステップと、
所定周期毎に省電力動作に関する条件値を定める条件値設定ステップと、
前記所定周期の開始から現時刻までの省電力動作に関する実績値を取得する実績値取得ステップと、
前記実績値と前記条件値との比較結果によって、前記スリープ待機時間を制御するスリープ待機時間制御ステップと
を有することを特徴とするスリープ制御方法。
【請求項1】
端末装置と無線通信を行う基地局装置であって、
チャネルの空き状態が、スリープ待機時間を超えて継続していることを検出した場合に、前記端末装置の送信を禁止して、所定期間に渡ってスリープ状態に移行するスリープ制御手段と、
所定周期毎に省電力動作に関する条件値を定める条件値設定手段と、
前記所定周期の開始から現時刻までの省電力動作に関する実績値を取得する実績値取得手段と、
前記実績値と前記条件値との比較結果によって、前記スリープ待機時間を制御するスリープ待機時間制御手段と
を備えることを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
前記スリープ待機時間制御手段は、前記実績値が前記条件値を満たさない場合は前記スリープ待機時間を前記端末装置がパケットを送信するために待機する最小時間である第1の値以下に設定し、前記実績値が前記条件値を満たす場合は前記スリープ待機時間を前記端末装置がパケットを送信するために待機する最大時間である第2の値以上に設定することを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記スリープ待機時間制御手段は、前記実績値と前記条件値との比、又は前記実績値と前記条件値との差を計算し、前記比または前記差と所定の閾値を比較することによって、前記スリープ待機時間を第1の値以下又は第2の値以上に設定することを特徴とする請求項2に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記スリープ待機時間制御手段は、前記実績値と前記条件値との比から前記スリープ待機時間を設定することを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記省電力動作に関する条件値が、前記所定周期における所要スリープ時間、または前記所定周期における消費電力の許容値であることを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項6】
前記スリープ待機時間制御手段が、前記実績値が前記条件値を満たさない場合に、前記スリープ待機時間を第1の値以下に設定した際に、
前記スリープ状態に移行させる前記所定期間を、現時刻から前記所定周期が終了するまでの時間に設定することを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項7】
端末装置と無線通信を行う基地局装置におけるスリープ制御方法であって、
チャネルの空き状態が、スリープ待機時間を超えて継続していることを検出した場合に、前記端末装置の送信を禁止して、所定期間に渡ってスリープ状態に移行するスリープ制御ステップと、
所定周期毎に省電力動作に関する条件値を定める条件値設定ステップと、
前記所定周期の開始から現時刻までの省電力動作に関する実績値を取得する実績値取得ステップと、
前記実績値と前記条件値との比較結果によって、前記スリープ待機時間を制御するスリープ待機時間制御ステップと
を有することを特徴とするスリープ制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−93801(P2013−93801A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236005(P2011−236005)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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