基地局装置およびスリープ制御方法
【課題】省電力効果および遅延の改善を図り、スリープ時間を最適化することができる基地局装置を提供する。
【解決手段】端末装置と無線通信を行う基地局装置であって、送信すべきパケットを有していないときに、端末装置からパケットを受信しない状態が、当該端末装置がパケットを送信するために待機する期間を超えて継続していることを検出した場合に、端末装置の送信を禁止して、所定期間に渡ってスリープ状態に移行するスリープ制御手段と、スリープ状態に移行した時間と、端末装置とのパケットの送受信が発生せずに連続的にスリープ状態に移行した回数とを記憶する記憶手段と、スリープ状態に移行した時間及びスリープ状態に移行した回数からスリープ状態に移行する時間を更新するスリープ時間制御手段とを備える。
【解決手段】端末装置と無線通信を行う基地局装置であって、送信すべきパケットを有していないときに、端末装置からパケットを受信しない状態が、当該端末装置がパケットを送信するために待機する期間を超えて継続していることを検出した場合に、端末装置の送信を禁止して、所定期間に渡ってスリープ状態に移行するスリープ制御手段と、スリープ状態に移行した時間と、端末装置とのパケットの送受信が発生せずに連続的にスリープ状態に移行した回数とを記憶する記憶手段と、スリープ状態に移行した時間及びスリープ状態に移行した回数からスリープ状態に移行する時間を更新するスリープ時間制御手段とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線アクセスシステムを構成する基地局装置において、消費電力を低減する基地局装置およびスリープ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のインターネットの普及と共に、光回線やADSL等の有線回線に加え、スマートフォンを中心とするモバイル環境でのインターネット利用が増大している。モバイル環境では、第3世代携帯電話(以下、3Gという)や次世代携帯電話と位置づけられるLTE(Long Term Evolution)などの回線を利用する。これらのシステムは、無線アクセスに利用される様々な周波数帯の中でも、比較的使い勝手の良いマイクロ波帯を利用するものであり、この周波数帯の性質を利用して、ひとつの基地局装置で広範囲のエリアを一括してサービスエリアにすることが可能である。
【0003】
しかし、この様な使い勝手の良いマイクロ波帯はその他のシステムにおいても利用が期待されており、既に周波数資源の枯渇の問題に直面している。特に、動画などを含むブロードバンドのアプリケーションの増加やスマートフォンの普及によって、通信トラフィックが急速に増加する中で、LTEなどではより広い周波数帯域の割当てが必要になる。一方で、全体の帯域を複数の事業者が分け合うことになり、1事業者に割り当てられる帯域は非常に限定されたものとなっているのが現状である。
【0004】
この問題を解決するために、これらの3GおよびLTE等の回線を迂回させる無線システムが必要となる。最も現実的なシステムは2.4GHz帯および5GHz帯を利用するWiFi(wireless fidelity)である。IEEE802.11系の規格(802.11a、b、g、n等の全ての規格を含む)に準拠するWiFiでは、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)と呼ばれるアクセス技術を用いることにより、同一の周波数チャネルを用いて非計画的に乱立する無線局が混在する中でも、効率的かつ安定的に無線アクセスを利用可能である。さらに、各家庭内のホームネットワーク、携帯型ゲーム機、ノートPCや携帯電話等への実装など、これらのシステムは爆発的に普及しており、既に基地局装置(AP:アクセスポイントとも呼ばれる)および端末装置(端末局とも呼ばれる)の双方の価格が非常に安価になっている。
【0005】
このWiFiにおけるCSMA/CA技術では、基地局装置の置局設計を特に意識しなくても破綻することなく運用可能であり、送信電力を抑えることにより、サービスエリア半径を小さく抑えたマイクロセル化を行うと、個々のマイクロセル毎に所定のスループットを実現可能になり、結果的に単位面積当たりの伝送容量は増大する。この様にして、3GおよびLTE等の回線から溢れたトラヒックを効率的にWiFiネットワークを介して収容することが可能になる。
【0006】
しかし、通信エリアが広範な3G回線などからの迂回を想定するならば、少なくとも人口の密集する市街地、住宅地などの大部分を広範囲にカバーするためには、膨大な数の基地局装置を設置する必要がある。もともと屋内での利用を前提に設計された無線規格であることから、一つの基地局装置で広範囲をカバーすることは困難な上、システム全体の伝送容量増大のためにはマイクロセル化も必要になり、その結果、設置が必要な基地局装置の台数は膨大となる。これにより、基地局装置の消費電力はそれほど大きくなくても、システム全体の消費電力量は膨大となり、環境問題の観点からは環境に対する負荷の低減が必要である。
【0007】
これらの課題を解決するために再生可能エネルギーの利用が期待されている。太陽光発電では発電可能な電力量も他の発電技術よりも比較的大きいため、最も有力な方法として期待される。さらに、再生可能エネルギーによる給電のみによって基地局装置が安定的に動作することができれば、基地局装置と商用電源との接続が不要となり、置局自由度を向上することができる。置局自由度が向上すれば、地震などの災害対策としての活用が可能となる。例えば、災害を受けたエリア内で通信網や電力網が被害を受けることがあり、通信網や電力網の復旧には数日から1カ月程度に及ぶことがある。その時に太陽電池により給電される基地局装置の導入によって、従来の通信システムの代替として通信サービスを提供することが可能である。
【0008】
このような理由から、太陽電池で給電可能な無線インフラの基地局装置は急激に注目を集めているのが現状である。ただし、基地局装置の安定動作のためには課題が存在する。まず、太陽光発電は太陽光が降り注ぐ昼間、さらには晴天時に多くの発電量が期待できる一方で、夜間や雨天時には発電が期待できない。このため、通常はバッテリーを太陽電池に接続し、夜間や雨天時にも運用可能な状態としている。しかし、電柱などの上方や専用の支柱に基地局装置を設置する場合を考えると、平面状の太陽電池パネルは風が吹いた時にその大きさに比例した風圧を受けることになり、強度上の観点からあまり大きなサイズの太陽電池パネルを設置することはできない。
【0009】
仮に30cm四方のサイズの太陽電池パネルを想定して、運用時の課題を整理してみる。現在、一般的な太陽電池パネルの発電能力は、1m2あたり180W/hといわれている。30cm四方の場合には、この9%の発電量に相当する。さらに、昼間と夜間を含めた晴天率(太陽が出ている率)は年間日照時間が約1000時間であることから1000/(365×24)の11.4%程度の低い割合である。したがって、180W/h×0.09×0.114=1.85Wとなる。さらに、一旦バッテリーに蓄電した電力を利用する場合の蓄電効率も考慮すると、利用可能な電力はさらに低い値となることが予想される。また、晴天や雨天の間隔や周期はランダムであり、発電量が低い日々が長く続けば、数日平均で見たときの発電量にも変動があり、通信用のインフラとしての利用においては、当然ながらさらなるマージンが必要となる。
【0010】
以上のように、環境に考慮した社会的な取り組みとして様々な電子機器の消費電力削減が広く進められているが、上述のような太陽電池給電の基地局装置を想定すると、更に基地局装置の省電力化が重要な課題となる。
【0011】
ここで、従来技術における基地局装置の省電力化技術を説明する。例えば、非特許文献1に記載された基地局装置のスリープ制御技術はそのひとつである。通常、基地局装置は商用電源に接続されるので本来であればスリープの必要はないが、消費電力の削減のため、ないしはバッテリーを搭載した特殊な基地局装置などにおいて、基地局装置側も所定の周期で自らの回路を停止させ、スリープ状態に入ることで消費電力を削減する。ただし、自らがスリープ状態にある場合には、配下の端末装置(場合によっては、基地局装置のスリープ開始時には電源がOFFになっていた端末装置が、基地局装置のスリープ動作中に電源ON状態になることもあり、このような可能性を秘めた端末装置も含む)が無線回線でアクセスすることを禁止するメカニズムを必要とする。
【0012】
図11に、従来技術における基地局装置のNAV(Network Allocation Vector)利用によるスリープ制御例を示す。図11において、201および202はビーコン信号、203および204はスリープ制御パケットである。また、説明の都合上、時刻A,B,…,Gを図中に示した。
【0013】
WiFiでは、基地局装置がブロードキャストの制御情報であるビーコン信号201、202を所定の周期で送信する。端末装置のスリープ制御においては、このビーコン信号の周期に基づいて端末装置は通常動作に戻る(スリープ解除)が、端末装置は全てのビーコン信号を受信するわけではない。ビーコン信号201、202内には、DTIM(Delivery Traffic Indication MAP)カウント、およびDTIM周期等を含む情報が収容されており、このDTIMカウント値がゼロとなるビーコンだけを受信する。
【0014】
そこで、基地局装置はこのDTIM周期を1に設定し、全てのビーコン信号201、202のDTIMカウント値を0に設定し、その中で当該基地局装置がスリープ動作を行うためのスリープ制御パケット203、204を送信する。すなわち、すべての端末装置が基地局装置の送信するパケットを受信できるタイミングを構成するために、ビーコン信号のDTIMカウンタ値およびDTIM周期を上記の値に設定し、このタイミングにおいてスリープ制御パケットを送信する。
【0015】
一般に、WiFiで用いられる無線パケットには、ある無線リンク(相互に無線通信を行う、1つの基地局装置と1つ端末装置の組合せ)で所定の時間だけ帯域を確保するために、NAVと呼ばれる時間を設定し、このリンク以外の端末装置の送信を禁止する。スリープ制御用パケット203、204ではこのNAVを設定し、端末装置が信号を送信することをブロックし、その間、基地局装置は自らの電源を落として消費電力削減を図る。
【0016】
例えば、スリープ制御パケット203の設定するNAVは時刻C〜Dであり、この間のうち信号を送信していない区間、時刻C〜Dが基地局装置のスリープ時間となる。なお、一度のスリープ制御パケット203、204で設定可能なNAVの最大時間には限りがあるため、更なるスリープを行うためにはスリープ制御パケット203に続けてスリープ制御パケット204を送信することになり、これにより時刻E〜Fもスリープすることができ、この状況が基地局装置の状態として示されている。ちなみに、端末装置の状態は、端末装置としては、時刻C〜Dおよび時刻E〜FをそれぞれNAVを認識し、この時間に無線パケットを送信することはない。
【0017】
このスリープ制御パケット203、204としては、NAVを設定できるものであれば何でもよく、典型的なものとしてはCTS(Clear to Send)パケットを用いるが、ブロードキャスト、マルチキャストなどのパケットを用いてもよい。この際の設定次第では、端末装置もスリープに移行することもできる。
【0018】
なお、スリープ制御パケットの送信回数は、予め基地局装置に設定されている総スリープ期間によって定まる。総スリープ期間が大きければ、スリープ制御パケットの送信回数も大きくなる。
【0019】
同様のスリープ制御は、その他の制御メッセージを用いても実現可能である。例えば、WiFiにおける制御信号のひとつであるビーコン信号内には、Quietと呼ばれるフィールドが設定してあり、このフィールドを用いてビーコン周期内に無線アクセス禁止期間を設定可能である。
【0020】
図12に、従来技術における基地局装置のQuiet IE利用したスリープ制御例を示す。図12において、201および202はビーコン信号であり、基地局装置および端末装置の状態をそれぞれ示す。また、説明の都合上、時刻A,B,Cを図中に示す。
【0021】
WiFiでは、利用可能な周波数帯域の中に、様々なレーダーの使用する周波数帯と共通の帯域が含まれている。そのような帯域では、例えば基地局装置が周辺にレーダー波を送信する局が存在しないかを定期的に検出する必要がある。これはDFS(Dynamic Frequency Selection)と呼ばれる制御であるが、このレーダー波の検出作業中は配下の端末装置からの無線アクセスを禁止しなければならない。そこで、所定の時間を端末からの送信禁止期間(図中では時刻A〜B)を用いてレーダー波の検出を行う。これを利用して、基地局装置は、時刻A〜Bにスリープ状態になり、時刻B〜Cにアウェイク状態となる。一般の端末装置は、送信禁止期間中の動作が規定されていないために、時刻A〜Bについてはスリープできるか否かは端末次第であるが、この間は少なくとも有意なデータを送受信する可能性がないため、スリープ同様の動作とすることも可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】小川 他、「無線LANアクセスポイントにおける省電力モードの性能評価」,電子情報通信学会 信学技報 MoMuC2009−13
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
前述したように、非特許文献1に記載のスリープ制御技術では、ビーコン送信時に基地局装置のバッファにデータが存在する場合や、一定時間内に端末装置とトラフィックの送受信が行われた履歴があった場合は、ビーコン間で基地局装置がスリープモードに移行しないように制御される。そのビーコンインターバル内では、トラフィック送受信が発生する可能性が高いので、そのデータの遅延等の通信品質を劣化させないために、基地局装置がスリープモードに移行することを防止しているからである。
【0024】
基地局装置がスリープモードに移行するか否かはビーコン送信時点でのみ判断されるため、ビーコンインターバル内で、基地局装置がバッファに蓄積したデータの送受信を完了した後、送受信するトラフィックがない場合でも、基地局装置は不必要なアウェイク状態を維持する。すなわち、この従来技術は基地局装置に接続している端末装置がいない状態、または端末装置がいたとしてもトラフィックが発生していないときのみにスリープモードに移行するものであり、一定以上のトラフィックが送受信される場合では、基地局装置はスリープモードに移行しないため、大きな省電力化効果を期待できない。
【0025】
この問題を改善するために、基地局装置が不必要なアウェイク状態を削減し、一定以上のトラフィックがある場合でも基地局装置をスリープモードへ移行させるものとして、図13に示すように基地局装置がビーコン周期より短い周期でスリープモードへの移行を判断するものが考えられる。例えば、基地局装置に送信パケットが蓄積しておらず、かつ一定期間に渡って端末装置がパケットを送信してこない場合は、基地局装置はCTSによって短時間のNAVを設定するとともに、その時間でスリープモードに移行する方法である。
【0026】
しかし、この方法ではスリープ時間によって、省電力効果が大きく異なってしまうという問題がある。スリープ時間が短い場合、CTS等のスリープ制御パケットの送信頻度が高くなり、省電力効果が低下する。さらに、所定の基地局装置回路では電源供給開始から機能が安定するまでに一定の時間を要する回路が存在するため、短いスリープ時間では電源供給を停止できる回路が制限されてしまうという問題がある。一方、スリープ時間が長い場合は、上記2点の課題は改善されるものの、端末装置との遅延が大きくなる。スリープ時間中に端末装置に送信パケットが発生した場合、端末装置はスリープ時間の終了までパケットを送信することができないため、スリープ時間が長いほど、遅延時間が増大するという問題がある。
【0027】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、省電力効果および遅延の改善を図り、スリープ時間を最適化することができる基地局装置およびスリープ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、端末装置と無線通信を行う基地局装置であって、送信すべきパケットを有していないときに、前記端末装置からパケットを受信しない状態が、当該端末装置がパケットを送信するために待機する期間を超えて継続していることを検出した場合に、前記端末装置の送信を禁止して、所定期間に渡ってスリープ状態に移行するスリープ制御手段と、スリープ状態に移行した時間と、前記端末装置とのパケットの送受信が発生せずに連続的にスリープ状態に移行した回数とを記憶する記憶手段と、前記スリープ状態に移行した時間及び前記スリープ状態に移行した回数からスリープ状態に移行する時間を更新するスリープ時間制御手段とを備えることを特徴とする。
【0029】
本発明は、前記スリープ時間制御手段は、所定の一周期を複数の時間領域に分割し、前記時間領域毎に前記スリープ状態に移行する時間を更新することを特徴とする。
【0030】
本発明は、前記スリープ状態に移行させる時間の上限値および下限値を設定する設定手段をさらに備え、前記スリープ時間制御手段は、前記スリープ状態に移行させる時間を前記下限値から前記上限値までの範囲で更新することを特徴とする。
【0031】
本発明は、前記スリープ時間制御手段は、接続する端末装置が存在しない場合、又は前記端末装置が存在しても一定期間通信履歴が存在しない場合、前記スリープ状態に移行させる時間の上限値を高く設定することを特徴とする。
【0032】
本発明は、端末装置と無線通信を行う基地局装置におけるスリープ制御方法であって、送信すべきパケットを有していないときに、前記端末装置からパケットを受信しない状態が、当該端末装置がパケットを送信するために待機する期間を超えて継続していることを検出した場合に、前記端末装置の送信を禁止して、所定期間に渡ってスリープ状態に移行するスリープ制御ステップと、スリープ状態に移行した時間と、前記端末装置とのパケットの送受信が発生せずに連続的にスリープ状態に移行した回数とを記憶手段に記憶する記憶ステップと、前記スリープ状態に移行した時間及び前記スリープ状態に移行した回数からスリープ状態に移行する時間を更新するスリープ時間制御ステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、基地局装置がスリープ履歴を参照して、スリープ時間を動的に制御するようにしたため、省電力効果および遅延を改善することが可能となり、スリープ時間を最適化することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態におけるスリープ制御の第1の動作例を示す説明図である。
【図2】本発明の実施形態におけるスリープ制御の第2の動作例を示す説明図である。
【図3】第1の実施形態における基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図4】スリーププロファイル記憶部9に記憶されるスリーププロファイルの一例を示す説明図である。
【図5】スリープ履歴記憶部10に記憶されるスリープ履歴情報の一例を示す説明図である。
【図6】図3に示す基地局装置1におけるスリープ制御の処理動作を示すフローチャートである。
【図7】図3に示すスリープ時間制御部8においてスリープ時間の設定を行う動作を示すフローチャートである。
【図8】第2の実施形態におけるスリープ制御の動作例を示す説明図である。
【図9】第2の実施形態におけるスリープ履歴記憶部10に記憶されるスリープ履歴情報の一例を示す説明図である。
【図10】第2の実施形態におけるスリープ時間の設定動作を示すフローチャートである。
【図11】従来技術における基地局装置のスリープ制御例を示す説明図である。
【図12】従来技術における基地局装置のスリープ制御例を示す説明図である。
【図13】基地局装置がビーコン周期より短い周期でスリープモードへの移行を判断する動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態による基地局装置を説明する。本発明は基地局装置が過去のスリープ履歴を参照してスリープ時間を動的に制御する技術である。具体的なスリープ履歴に関する情報としては、制御前のスリープ時間の情報と、そのスリープ時間におけるスリープ連続移行回数の情報を用いる。
【0036】
ここで、図1を参照して、本実施形態におけるスリープ制御の第1の動作例を説明する。基地局装置は送信パケットがなければ、キャリアセンスを所定時間行い、無線チャネルが占有されてないことを確認してスリープモードに移行する。ここでの所定時間は、端末装置が送信パケットを有している場合は、そのパケットの送信を優先させるように設定する。端末装置のキャリアセンス時間は、DIFSとコンテンションウィンドウからランダムに選んだ値にスロットタイムを乗算した時間との和で設定されるところ、CTS−to−selfを送信するときのキャリアセンスではコンテンションウィンドウをランダムに選ぶのでなく、コンテンションウィンドウの最大値を設定する。
【0037】
端末装置に送信トラフィックが存在する場合、基地局装置がCTS−to−selfを送信する前に送信トラフィックの送受信が開始され、基地局装置はスリープモードに移行しない。基地局装置はこの制御を繰り返すことになるが、本発明ではここでのスリープ時間を動的に制御する。図1(1)はスリープ時間更新前の動作であり、短いスリープ時間に設定されている。そのため、基地局装置はスリープとキャリアセンスを短い周期で繰り返し、端末装置に送信パケットが発生していないときでも基地局装置は不必要にキャリアセンスを実施している。また、スリープ時間が短いことから電源供給を停止できる回路の構成要素の数も少なく、省電力効果が小さい。
【0038】
図1(2)は本発明のスリープ時間制御による更新後の動作である。スリープ時間更新前でのスリープ連続移行回数の平均値が4回であった場合、パケットの生起タイミングは平均的に4回目のスリープモード中であると考えられる。そのため、スリープ時間はスリープ開始からその生起タイミングまでの連続的な時間に設定することによって、不要なアウェイク期間を削減して、スリープ時間を長く設定することが可能である。
【0039】
次に、図2を参照して、本実施形態におけるスリープ制御の第2の動作例を説明する。図2に示す動作は、図1に示す動作と異なり、スリープ時間を短く更新する動作例を示している。図2(1)はスリープ時間更新前の動作であり、スリープ連続移行回数の平均値が1回となっている。これは、スリープ時間が過剰に長く設定されているため、基地局装置がスリープモードに移行する度に、そのスリープ時間中に端末装置で送信パケットが発生している。すなわち、基地局装置がスリープモードに移行する度に、端末装置との通信に遅延が発生していることを意味する。図2(2)は本発明によるスリープ時間更新後の動作である。スリープ時間を短縮することによって、遅延を著しく改善することが可能である。
【0040】
次に、同実施形態による基地局装置の構成を説明する。図3は同実施形態における基地局装置の構成を示すブロック図である。基地局装置1は、アンテナ2、送受信部3、通信制御部4、バッファ部5、インタフェース部6、スリープ制御部7、スリープ時間制御部8、スリーププロファイル記憶部9、スリープ履歴記憶部10、端末装置情報記憶部11から構成される。
【0041】
基地局装置1は、無線回線を介した信号をアンテナ2で受信し、送受信部3にて帯域外信号のフィルタリング、ローノイズアンプによる信号増幅、RF周波数からベースバンド帯への周波数変換、アナログ信号からデジタル信号へのA/D変換等の処理を行う。さらに、デジタル化されたベースバンド信号は、タイミング検出、物理レイヤに関するヘッダ情報の終端、復調処理、誤り訂正などの一連の信号処理が施される。送受信部2から出力される復調処理等が施された信号は通信制御部4に入力する。
【0042】
受信した信号がデータパケットである場合は、バッファ部5を介してインタフェース部6にそのデータパケットを出力する。インタフェース部6は基地局装置1と外部とのデータパケットの入出力を行うインタフェースである。一方、インタフェース部6からパケットが出力されたときは、このデータパケットをバッファ部5に蓄積する。このデータパケットが、通信制御部4の制御によって送信されるときは、通信制御部4は無線パケットを送受信部3に出力し、送受信部3で各種変調処理を施されてベースバンド信号が生成され、デジタル信号からアナログ信号に変換するD/A変換、周波数変換、帯域外信号のフィルタリング、信号増幅などを行い、アンテナ2より送信する。
【0043】
スリープ制御部7は、基地局装置1のスリープモードへの移行判断を実施するとともに、スリープ時間制御部8を参照してスリープ時間を決定し、スリーププロファイル記憶部9に記憶されたスリーププロファイルを参照して所定の回路の電源供給を停止する。スリープ時間制御部8は、スリーププロファイル記憶部9、スリープ履歴記憶部10及び端末装置情報記憶部11に記憶された情報を参照して、スリープ時間を制御する。
【0044】
スリーププロファイル記憶部9には、基地局装置1がスリープモードに移行するときの各種パラメータや、電源をオフにする回路の情報が記憶されている。図4に、スリーププロファイル記憶部9に記憶されるスリーププロファイルの一例を示す。スリーププロファイルでは、スリープ最小時間、スリープ最大時間が記憶されている。スリープ最小時間は省電力効果を得るための最低限必要なスリープ時間である。基地局装置1はスリープモードに移行することによって消費電力の削減を図ることができるが、スリープモードに移行する場合には事前にCTSの送信が必要である。そのため、スリープ時間が短い場合、スリープによって削減できる消費電力が、CTS送信によって増加する消費電力を下回ることがあり、却って消費電力を増大しかねない。この問題を回避するために、スリープ時間はスリーププロファイルのスリープ最小時間を下回らないように制御する。
【0045】
例えば、スリープ最小時間は(1)式を満たすように設定する。
【数1】
ここで、EsleepはCTS送信からスリープ時間の終了までの時間での消費電力であり、Ewaitは前記時間において基地局装置1がスリープしなかった場合、すなわち待機状態(リスニング状態)であった場合の消費電力である。
【0046】
各消費電力は(2)式、(3)式により計算する。
【数2】
【数3】
ここで、Ptx、Psleep、Pwaitは送信時、スリープ時、待機時の消費電力である。TtxはCTS等のスリープ制御パケットの送信時間であり、Tsleepはスリープ時の消費電力である。(2)式、(3)式から、スリープ最小時間Tsleepは(4)式により計算できる。
【数4】
【0047】
スリープ最大時間は端末装置との通信品質を考慮して設定する。基地局装置1と端末装置との通信において、スリープ時間がそのまま遅延時間に成り得るからである。VoIP等のアプリケーションによっては、リアルタイム性が求められるため、遅延時間が通信品質に与える影響が大きい。従って、アプリケーションにおいて許容される遅延時間を超えないようにスリープ最大時間を設定する。例えば、VoIP等では基地局装置1と端末装置の遅延として数10msec程度は許容できるため、この値をスリープ最大時間として設定してもよい。
【0048】
また、この値はスリープ時間制御部8が動的に変更してもよい。基地局装置1と接続(アソシエーション)している端末装置が存在しない場合、又は端末装置が存在していたとしても、一定期間パケットの送受信が発生していない場合は、スリープ最大時間を大きい値に更新してもよい。例えば、ビーコン周期が100msecだった場合、スリープ時間を95msec程度まで大きくしてもよい。上記のような場合では、基地局装置1と端末装置が次に送受信するパケットは初期接続用のパケットである。初期接続用のパケットでは一定以上の遅延が発生しても、通信品質およびユーザ体感品質が劣化することは少ないからである。
【0049】
また、図4に示すスリーププロファイルが記憶されたスリーププロファイル記憶部9では、スリープ時間に応じて電源供給を停止する回路の情報を有している。基地局装置1における一部の回路では、電源供給から機能が安定するまで一定の時間を要する回路がある。そのため、スリープ時間によって電源をオフにする回路を制御し、長時間のスリープモードに移行する場合は多くの回路を停止するように制御する。この制御は図4に示すようにスリープ時間と閾値(tth)との比較によって制御してもよい。
【0050】
スリープ履歴記憶部10は過去一定時間におけるスリープ連続移行回数等の情報を記憶する。スリープ履歴記憶部10に記憶されているスリープ履歴情報の一例を図5に示す。スリープ連続移行回数の情報の他に、スリープ開始時間(1回目のスリープモードに移行した時間)、及び1回のスリープ時間が関係付けられて記憶される。端末装置情報記憶部11は基地局装置1と既にアソシエーションしている端末装置の情報(端末装置の台数や端末装置の有無)が記憶される。
【0051】
なお、スリープ制御部7、スリープ時間制御部8、スリーププロファイル記憶部9、スリープ履歴記憶部10、端末装置情報記憶部11について、通信制御部4から切り離して説明を行ったが、これら全てをひとつの制御部全体として構成してもよい。
【0052】
次に、図6を参照して、図3に示す基地局装置1におけるスリープ制御の処理動作を説明する。図6は、図3に示す基地局装置1におけるスリープ制御の処理動作を示すフローチャートである。スリープ制御部7は、スリープ制御を開始すると、ビーコンを送信した後(ステップS1)、スリープ制御部7は、基地局装置1のバッファ部5に送信パケットがあるか否かを判定する(ステップS2)。バッファ部5に送信パケットがある場合(ステップS2でYes)、キャリアセンスを実施した後(ステップS3)、所定時間、無線チャネルが未使用であるか否かを判定し(ステップS4)、未使用であれば(ステップS4でYes)、パケットを送信する(ステップS5)。
【0053】
一方、無線チャネルが使用中であれば(ステップS4でNo)、その無線チャネルを使用して送信されている無線パケットを受信し(ステップS6)、再び基地局装置1のバッファ部5における送信パケットの有無を判定し(ステップS2)、キャリアセンスを実施する。ここでのS3〜S6の動作は一般的な無線LANの動作と同じであり、キャリアセンスによってチャネル使用状況を判断する時間(ステップS4の所定時間)は、DIFS時間とバックオフ時間の合計である(図1参照)。バックオフ時間は、コンテンションウィンドウ範囲内からランダムに選択した値によって定まり、その値とスロット時間を乗算した時間に設定される。
【0054】
一方、基地局装置1のバッファ部5に送信パケットがない場合(ステップS2でNo)、スリープ制御部7は、スリープ時間制御部8を参照することで、スリープ時間を把握する(ステップS7)。続いて、キャリアセンスを実施する(ステップS8)。そして、スリープ制御部7は、所定時間、無線チャネルが未使用であるか否かを判定し(ステップS9)、未使用であれば(ステップS9でYes)、基地局装置1はS7で把握したスリープ時間に相当するNAVをdurationで設定したCTSを送信する(ステップS10)と共に、基地局装置1はスリープモードに移行し(ステップS11)、スリープ時間経過後にアウェイクモードへ移行する(ステップS12)。
【0055】
ここで、端末装置が送信パケットを有しているときは、その送信よりも早くCTSが送信されることを回避するために、ステップS9の所定時間におけるバックオフ時間は端末装置のそれよりも長く設定する。例えば、再送回数毎のコンテンションウィンドウ最大値(IEEE802.11bの初回送信では31スロット)に設定することも可能である。端末装置はコンテンションウィンドウ値をゼロから最大値までのランダムな値に選択するため、基地局装置1のバックオフ時間としてコンテンションウィンドウ最大値を設定すると基地局装置1のコンテンションウィンドウ値の方が必ず大きくなるからである。これにより、端末装置によるパケット送信を優先させることによって、基地局装置1は端末装置がパケットを送信しないときのみにスリープモードに移行させることが可能となる。
【0056】
次に、スリープ制御部7は、無線チャネルが使用中であれば(ステップS9でNo)、その無線チャネルを使用して送信されている無線パケットを受信し(ステップS13)、再び基地局装置1のバッファ部5における送信パケットの有無を判定し(ステップS2)、キャリアセンスを実施する。このS2〜S13の動作をビーコンインターバルの終了まで繰り返し(ステップS14)、ビーコンインターバルを終了する(ステップS14でYes)と、再びビーコンを送信する(ステップS1)。
【0057】
次に、図7を参照して、スリープ時間の設定動作を説明する。図7は、図3に示すスリープ時間制御部8においてスリープ時間の設定を行う動作を示すフローチャートである。この設定動作はスリープ時間制御部8によって周期的に実施される。なお、スリープ時間の制御周期は任意に設定できるものであり、例えば1ビーコンインターバル周期で設定してもよい。
【0058】
まず、スリープ時間制御部8は、スリープ時間の設定を開始すると、スリープ履歴の参照時間を決定する(ステップS21)。ここでの参照時間は任意の時間に設定できるものであり、例えば、直前の1ビーコンインターバル、又は複数ビーコンインターバルにわたって参照時間を設定してもよい。続いて、スリープ時間制御部8は、スリープ最大時間を決定する(ステップS22)。スリープ最大時間は、アプリケーションで許容される遅延から設定する。また、端末情報記憶部11を参照して、基地局装置1に接続している端末装置が存在しない場合、又は端末装置が存在するが過去一定時間内に通信が発生していない場合は、スリープ最大時間をビーコンインターバル程度まで大きく設定してもよい。基地局装置1に接続している端末装置の有無は端末装置情報記憶部11を参照して把握する。過去一定時間内の通信の有無は、スリープ履歴記憶部10を参照して、スリープの連続移行回数等から把握する。
【0059】
次に、スリープ時間制御部8は、参照時間内でスリープ履歴があるか否かを判定する(ステップS23)。この判定の結果、スリープ履歴がない場合(ステップS23でNo)、スリープ時間制御部8は、スリープ時間を初期設定する(ステップS24)。このケースでは、基地局装置1と端末装置との通信トラフィックが多く、参照時間内で基地局装置1がスリープモードに移行していないことを意味するため、それらのトラフィックに対して遅延の増大を防止するようにスリープ時間を設定する。例えば、スリープ最小時間に設定してもよい。
【0060】
一方、スリープ履歴がある場合(ステップS23でYes)、スリープ時間制御部8は、スリープ履歴記憶部10を参照して、参照時間内でのスリープ連続移行回数の平均値を計算し(ステップS25)、この平均値と現スリープ時間からスリープ時間を更新する(ステップS26)。例えば、(5)式によって計算する。
【数5】
【0061】
ここで、xはスリープ連続移行回数の平均値である。Tsleep、T’sleepは更新後、更新前のスリープ時間である。TwaitはCTSを送信するための待機時間であり、DIFS時間とバックオフ時間の合計である。TctsはCTSの送信時間である。スリープ連続移行回数の平均値がxであるということは、x回目のスリープ時間中に端末装置に送信パケットが発生していることを意味する。そのため、(5)式ではx回目のスリープ時間の中間で送信パケットが発生していると推定し、スリープ開始から送信パケット発生タイミングまで連続的にスリープモードに移行することを目的としている。
【0062】
なお、1回目のスリープからx回目のスリープまでは端末装置による送信パケットの有無を判定するための待機時間とCTSの送信時間がx−1回存在するため、その時間を考慮してスリープ時間を更新している。(5)式によれば、連続的なスリープ時間を設定することによって省電力効果を高めるだけでなく、スリープ時間の短縮化によって遅延の改善を図ることも可能である。例えば、スリープ連続移行回数が1の場合、(5)式によって更新後のスリープ時間は更新前の1/2に設定されることがわかる。
【0063】
次に、スリープ時間制御部8は、スリープ時間とスリープ最大時間の大小を比較し(ステップS27)、更新したスリープ時間がスリープ最大時間を超える場合(ステップS27でNo)はスリープ時間をスリープ最大時間に設定する(ステップS29)。一方、更新したスリープ時間がスリープ最大時間を超えない場合、スリープ時間制御部8は、スリープ時間とスリープ最小時間の大小を比較し(ステップS28)、スリープ最小時間を下回る場合(ステップS28でNo)はスリープ時間をスリープ最小時間に設定する(ステップS30)、スリープ時間の設定を終了する。
【0064】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態による基地局装置を説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態と異なり、スリープ時間の制御周期(例えばビーコンインターバル)を複数の時間(以下ではセグメントと称する)に分割し、セグメント毎にスリープ時間を設定するものである。端末装置によっては、ビーコンを受信してから基地局装置1に無線パケットを送信するように制御される場合があるため、ビーコンインターバルの前半にはトラフィックが多い一方で、ビーコンインターバルの後半ではトラフィックが少ない傾向になり得る。このような場合、ビーコンインターバルを分割した複数のセグメント毎にスリープ時間を設定することによって、省電力効果および遅延時間の観点からより最適なスリープ時間を設定することが可能となる。
【0065】
図8は、第2の実施形態におけるスリープ制御の動作例を示す図である。ビーコンインターバルをn個のセグメントに分割している。更新前において、セグメント1のスリープ連続移行回数の平均値は2となっているが、セグメントnではスリープ連続移行回数の平均値が4となっている。セグメント毎にスリープ時間を更新することによって、セグメント1よりもセグメントnの方が長いスリープ時間が設定される。
【0066】
第2の実施形態における基地局装置1の構成は図3に示す構成と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。図9は、第2の実施形態におけるスリープ履歴記憶部10に記憶されるスリープ履歴情報の一例を示す図である。第1の実施形態と同様にスリープ連続移行回数の情報の他に、スリープ開始時間(1回目のスリープモードへの移行開始時間)、及び1回のスリープ時間が関係付けられて記憶される。前半部分t1〜t3では、スリープ連続移行回数が2〜3と小さくなっているが、後半部分t4〜t8ではスリープ連続移行回数が4以上と大きくなっている。
【0067】
次に、図10を参照して、第2の実施形態におけるスリープ時間の設定動作を説明する。図10は、第2の実施形態におけるスリープ時間の設定動作を示すフローチャートである。この設定動作はスリープ時間制御部8によって周期的に実施される。なお、スリープ時間の制御周期は任意に設定できるものであり、例えば1ビーコンインターバル周期で設定してもよい。
【0068】
まず、スリープ時間制御部8は、スリープ時間の設定を開始すると、スリープ履歴の参照時間を決定する(ステップS41)。ここでの参照時間は任意の時間に設定できるものであり、例えば、直前の1ビーコンインターバル、又は複数のビーコンインターバルにわたって参照時間を設定してもよい。続いて、スリープ時間制御部8は、スリープ最大時間を決定する(ステップS42)。スリープ最大時間は、前述の通り、アプリケーションで許容される遅延から設定する。また、端末情報記憶部11を参照して、基地局装置1に接続している端末装置が存在しない場合、又は端末装置が存在するが過去一定時間内に通信が発生していない場合は、スリープ最大時間をビーコンインターバル程度まで大きく設定してもよい。
【0069】
次に、スリープ時間制御部8は、参照時間内でスリープ履歴があるか否かを判定する(ステップS43)。この判定の結果、スリープ履歴がない場合(ステップS43でNo)、スリープ時間制御部8は、スリープ時間を初期設定する(ステップS44)。このケースでは、基地局装置1と端末装置との通信トラフィックが多く、参照時間内で基地局装置1がスリープモードに移行していないことを意味するため、それらのトラフィックに対して遅延の増大を防止するようにスリープ時間を設定する。例えば、スリープ最小時間に設定してもよい。
【0070】
一方、スリープ履歴がある場合(ステップS43でYes)、スリープ時間制御部8は、セグメントを決定する(ステップS45)。ここではセグメントの数やセグメント切換時間を決定するが、これらの情報は基地局装置1に予め定められたシステムパラメータで運用されてもよい。または、スリープ履歴記憶部10のスリープ履歴を参照してセグメント情報を決定してもよい。例えば、図9に示すスリープ履歴であった場合、t1〜t3ではスリープ連続移行回数が2〜3回であるが、t4以降ではスリープ連続移行回数が4回以上となるため、スリープ連続移行回数の推移を考慮してセグメントを決定してもよい。
【0071】
次に、スリープ時間制御部8は、参照時間内でのスリープ連続移行回数の平均値をセグメント毎に計算し(ステップS46)、セグメント毎の平均値と現スリープ時間からスリープ時間をセグメント毎に更新する(ステップS47)。
【0072】
次に、スリープ時間制御部8は、スリープ時間とスリープ最大時間の大小を比較し(ステップS48)、更新したスリープ時間がスリープ最大時間を超える場合(ステップS48でNo)はスリープ時間をスリープ最大時間に設定する(ステップS49)。一方、更新したスリープ時間がスリープ最大時間を超えない場合、スリープ時間制御部8は、スリープ時間とスリープ最小時間の大小を比較し(ステップS50)、スリープ最小時間を下回る場合(ステップS50でNo)はスリープ時間をスリープ最小時間に設定し(ステップS51)、スリープ時間の設定を終了する。
【0073】
無線LANのアクセスポイント(基地局装置)の省電力化を行うための技術として、チャネルをNAVにより予約してその期間をスリープするものがある。NAVは、例えば、CTS信号等により送信することができるが、NAVによるチャネルの予約は、予約できる最大の期間が短いため、頻繁にCTS信号を送信する必要があり、電力を消費してしまう。一方、NAVを設定しないと、基地局装置のスリープ中に無線端末装置の送信が失敗してパケットが廃棄されるという問題がある。
【0074】
本発明は、連続的にスリープ動作に入った回数に基づいてスリープ期間を制御するようにした。具体的には、基地局装置1は、一つのスリープ期間を設定したときに、連続してスリープ動作に入った回数をカウントアップし、この回数が安定して閾値を越えた場合には、スリープ期間を長く再設定する。一方、連続してスリープ動作に入る回数が常に1であることが安定して続いたときは、スリープ期間を短く再設定する。この構成により、連続してスリープ動作に入った回数が2以上あるときは、現在のスリープ期間が端末装置にトラヒックが生起する周期と比較して短いものと判定してスリープ期間を長くすることができる。また、連続してスリープ動作に入る回数が常に1であるときは、スリープ期間中に必ずトラヒックが生起していることから、現在のスリープ期間が端末装置にトラヒックが生起する周期と比較して長いものと判定してスリープ期間を短くすることができる。これにより、スリープ期間と端末装置のトラヒックの生起周期の整合をとることが可能となる。
【0075】
なお、図3における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりスリープ制御処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0076】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0077】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明してきたが、上記実施の形態は本発明の例示に過ぎず、本発明が上記実施の形態に限定されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の精神及び範囲を逸脱しない範囲で構成要素の追加、省略、置換、その他の変更を行っても良い。
【産業上の利用可能性】
【0078】
無線アクセスシステムを構成する基地局装置において、消費電力を低減することが不可欠な用途に適用でき、特に、バッテリーによって基地局装置の動作に必要な電力を供給する場合に好適である。
【符号の説明】
【0079】
1・・・基地局装置、2・・・アンテナ、3・・・送受信部、4・・・通信制御部、5・・・バッファ部、6・・・インタフェース部、7・・・スリープ制御部、8・・・スリープ時間制御部、9・・・スリーププロファイル記憶部、10・・・スリープ履歴記憶部、11・・・端末装置情報記憶部
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線アクセスシステムを構成する基地局装置において、消費電力を低減する基地局装置およびスリープ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のインターネットの普及と共に、光回線やADSL等の有線回線に加え、スマートフォンを中心とするモバイル環境でのインターネット利用が増大している。モバイル環境では、第3世代携帯電話(以下、3Gという)や次世代携帯電話と位置づけられるLTE(Long Term Evolution)などの回線を利用する。これらのシステムは、無線アクセスに利用される様々な周波数帯の中でも、比較的使い勝手の良いマイクロ波帯を利用するものであり、この周波数帯の性質を利用して、ひとつの基地局装置で広範囲のエリアを一括してサービスエリアにすることが可能である。
【0003】
しかし、この様な使い勝手の良いマイクロ波帯はその他のシステムにおいても利用が期待されており、既に周波数資源の枯渇の問題に直面している。特に、動画などを含むブロードバンドのアプリケーションの増加やスマートフォンの普及によって、通信トラフィックが急速に増加する中で、LTEなどではより広い周波数帯域の割当てが必要になる。一方で、全体の帯域を複数の事業者が分け合うことになり、1事業者に割り当てられる帯域は非常に限定されたものとなっているのが現状である。
【0004】
この問題を解決するために、これらの3GおよびLTE等の回線を迂回させる無線システムが必要となる。最も現実的なシステムは2.4GHz帯および5GHz帯を利用するWiFi(wireless fidelity)である。IEEE802.11系の規格(802.11a、b、g、n等の全ての規格を含む)に準拠するWiFiでは、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)と呼ばれるアクセス技術を用いることにより、同一の周波数チャネルを用いて非計画的に乱立する無線局が混在する中でも、効率的かつ安定的に無線アクセスを利用可能である。さらに、各家庭内のホームネットワーク、携帯型ゲーム機、ノートPCや携帯電話等への実装など、これらのシステムは爆発的に普及しており、既に基地局装置(AP:アクセスポイントとも呼ばれる)および端末装置(端末局とも呼ばれる)の双方の価格が非常に安価になっている。
【0005】
このWiFiにおけるCSMA/CA技術では、基地局装置の置局設計を特に意識しなくても破綻することなく運用可能であり、送信電力を抑えることにより、サービスエリア半径を小さく抑えたマイクロセル化を行うと、個々のマイクロセル毎に所定のスループットを実現可能になり、結果的に単位面積当たりの伝送容量は増大する。この様にして、3GおよびLTE等の回線から溢れたトラヒックを効率的にWiFiネットワークを介して収容することが可能になる。
【0006】
しかし、通信エリアが広範な3G回線などからの迂回を想定するならば、少なくとも人口の密集する市街地、住宅地などの大部分を広範囲にカバーするためには、膨大な数の基地局装置を設置する必要がある。もともと屋内での利用を前提に設計された無線規格であることから、一つの基地局装置で広範囲をカバーすることは困難な上、システム全体の伝送容量増大のためにはマイクロセル化も必要になり、その結果、設置が必要な基地局装置の台数は膨大となる。これにより、基地局装置の消費電力はそれほど大きくなくても、システム全体の消費電力量は膨大となり、環境問題の観点からは環境に対する負荷の低減が必要である。
【0007】
これらの課題を解決するために再生可能エネルギーの利用が期待されている。太陽光発電では発電可能な電力量も他の発電技術よりも比較的大きいため、最も有力な方法として期待される。さらに、再生可能エネルギーによる給電のみによって基地局装置が安定的に動作することができれば、基地局装置と商用電源との接続が不要となり、置局自由度を向上することができる。置局自由度が向上すれば、地震などの災害対策としての活用が可能となる。例えば、災害を受けたエリア内で通信網や電力網が被害を受けることがあり、通信網や電力網の復旧には数日から1カ月程度に及ぶことがある。その時に太陽電池により給電される基地局装置の導入によって、従来の通信システムの代替として通信サービスを提供することが可能である。
【0008】
このような理由から、太陽電池で給電可能な無線インフラの基地局装置は急激に注目を集めているのが現状である。ただし、基地局装置の安定動作のためには課題が存在する。まず、太陽光発電は太陽光が降り注ぐ昼間、さらには晴天時に多くの発電量が期待できる一方で、夜間や雨天時には発電が期待できない。このため、通常はバッテリーを太陽電池に接続し、夜間や雨天時にも運用可能な状態としている。しかし、電柱などの上方や専用の支柱に基地局装置を設置する場合を考えると、平面状の太陽電池パネルは風が吹いた時にその大きさに比例した風圧を受けることになり、強度上の観点からあまり大きなサイズの太陽電池パネルを設置することはできない。
【0009】
仮に30cm四方のサイズの太陽電池パネルを想定して、運用時の課題を整理してみる。現在、一般的な太陽電池パネルの発電能力は、1m2あたり180W/hといわれている。30cm四方の場合には、この9%の発電量に相当する。さらに、昼間と夜間を含めた晴天率(太陽が出ている率)は年間日照時間が約1000時間であることから1000/(365×24)の11.4%程度の低い割合である。したがって、180W/h×0.09×0.114=1.85Wとなる。さらに、一旦バッテリーに蓄電した電力を利用する場合の蓄電効率も考慮すると、利用可能な電力はさらに低い値となることが予想される。また、晴天や雨天の間隔や周期はランダムであり、発電量が低い日々が長く続けば、数日平均で見たときの発電量にも変動があり、通信用のインフラとしての利用においては、当然ながらさらなるマージンが必要となる。
【0010】
以上のように、環境に考慮した社会的な取り組みとして様々な電子機器の消費電力削減が広く進められているが、上述のような太陽電池給電の基地局装置を想定すると、更に基地局装置の省電力化が重要な課題となる。
【0011】
ここで、従来技術における基地局装置の省電力化技術を説明する。例えば、非特許文献1に記載された基地局装置のスリープ制御技術はそのひとつである。通常、基地局装置は商用電源に接続されるので本来であればスリープの必要はないが、消費電力の削減のため、ないしはバッテリーを搭載した特殊な基地局装置などにおいて、基地局装置側も所定の周期で自らの回路を停止させ、スリープ状態に入ることで消費電力を削減する。ただし、自らがスリープ状態にある場合には、配下の端末装置(場合によっては、基地局装置のスリープ開始時には電源がOFFになっていた端末装置が、基地局装置のスリープ動作中に電源ON状態になることもあり、このような可能性を秘めた端末装置も含む)が無線回線でアクセスすることを禁止するメカニズムを必要とする。
【0012】
図11に、従来技術における基地局装置のNAV(Network Allocation Vector)利用によるスリープ制御例を示す。図11において、201および202はビーコン信号、203および204はスリープ制御パケットである。また、説明の都合上、時刻A,B,…,Gを図中に示した。
【0013】
WiFiでは、基地局装置がブロードキャストの制御情報であるビーコン信号201、202を所定の周期で送信する。端末装置のスリープ制御においては、このビーコン信号の周期に基づいて端末装置は通常動作に戻る(スリープ解除)が、端末装置は全てのビーコン信号を受信するわけではない。ビーコン信号201、202内には、DTIM(Delivery Traffic Indication MAP)カウント、およびDTIM周期等を含む情報が収容されており、このDTIMカウント値がゼロとなるビーコンだけを受信する。
【0014】
そこで、基地局装置はこのDTIM周期を1に設定し、全てのビーコン信号201、202のDTIMカウント値を0に設定し、その中で当該基地局装置がスリープ動作を行うためのスリープ制御パケット203、204を送信する。すなわち、すべての端末装置が基地局装置の送信するパケットを受信できるタイミングを構成するために、ビーコン信号のDTIMカウンタ値およびDTIM周期を上記の値に設定し、このタイミングにおいてスリープ制御パケットを送信する。
【0015】
一般に、WiFiで用いられる無線パケットには、ある無線リンク(相互に無線通信を行う、1つの基地局装置と1つ端末装置の組合せ)で所定の時間だけ帯域を確保するために、NAVと呼ばれる時間を設定し、このリンク以外の端末装置の送信を禁止する。スリープ制御用パケット203、204ではこのNAVを設定し、端末装置が信号を送信することをブロックし、その間、基地局装置は自らの電源を落として消費電力削減を図る。
【0016】
例えば、スリープ制御パケット203の設定するNAVは時刻C〜Dであり、この間のうち信号を送信していない区間、時刻C〜Dが基地局装置のスリープ時間となる。なお、一度のスリープ制御パケット203、204で設定可能なNAVの最大時間には限りがあるため、更なるスリープを行うためにはスリープ制御パケット203に続けてスリープ制御パケット204を送信することになり、これにより時刻E〜Fもスリープすることができ、この状況が基地局装置の状態として示されている。ちなみに、端末装置の状態は、端末装置としては、時刻C〜Dおよび時刻E〜FをそれぞれNAVを認識し、この時間に無線パケットを送信することはない。
【0017】
このスリープ制御パケット203、204としては、NAVを設定できるものであれば何でもよく、典型的なものとしてはCTS(Clear to Send)パケットを用いるが、ブロードキャスト、マルチキャストなどのパケットを用いてもよい。この際の設定次第では、端末装置もスリープに移行することもできる。
【0018】
なお、スリープ制御パケットの送信回数は、予め基地局装置に設定されている総スリープ期間によって定まる。総スリープ期間が大きければ、スリープ制御パケットの送信回数も大きくなる。
【0019】
同様のスリープ制御は、その他の制御メッセージを用いても実現可能である。例えば、WiFiにおける制御信号のひとつであるビーコン信号内には、Quietと呼ばれるフィールドが設定してあり、このフィールドを用いてビーコン周期内に無線アクセス禁止期間を設定可能である。
【0020】
図12に、従来技術における基地局装置のQuiet IE利用したスリープ制御例を示す。図12において、201および202はビーコン信号であり、基地局装置および端末装置の状態をそれぞれ示す。また、説明の都合上、時刻A,B,Cを図中に示す。
【0021】
WiFiでは、利用可能な周波数帯域の中に、様々なレーダーの使用する周波数帯と共通の帯域が含まれている。そのような帯域では、例えば基地局装置が周辺にレーダー波を送信する局が存在しないかを定期的に検出する必要がある。これはDFS(Dynamic Frequency Selection)と呼ばれる制御であるが、このレーダー波の検出作業中は配下の端末装置からの無線アクセスを禁止しなければならない。そこで、所定の時間を端末からの送信禁止期間(図中では時刻A〜B)を用いてレーダー波の検出を行う。これを利用して、基地局装置は、時刻A〜Bにスリープ状態になり、時刻B〜Cにアウェイク状態となる。一般の端末装置は、送信禁止期間中の動作が規定されていないために、時刻A〜Bについてはスリープできるか否かは端末次第であるが、この間は少なくとも有意なデータを送受信する可能性がないため、スリープ同様の動作とすることも可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】小川 他、「無線LANアクセスポイントにおける省電力モードの性能評価」,電子情報通信学会 信学技報 MoMuC2009−13
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
前述したように、非特許文献1に記載のスリープ制御技術では、ビーコン送信時に基地局装置のバッファにデータが存在する場合や、一定時間内に端末装置とトラフィックの送受信が行われた履歴があった場合は、ビーコン間で基地局装置がスリープモードに移行しないように制御される。そのビーコンインターバル内では、トラフィック送受信が発生する可能性が高いので、そのデータの遅延等の通信品質を劣化させないために、基地局装置がスリープモードに移行することを防止しているからである。
【0024】
基地局装置がスリープモードに移行するか否かはビーコン送信時点でのみ判断されるため、ビーコンインターバル内で、基地局装置がバッファに蓄積したデータの送受信を完了した後、送受信するトラフィックがない場合でも、基地局装置は不必要なアウェイク状態を維持する。すなわち、この従来技術は基地局装置に接続している端末装置がいない状態、または端末装置がいたとしてもトラフィックが発生していないときのみにスリープモードに移行するものであり、一定以上のトラフィックが送受信される場合では、基地局装置はスリープモードに移行しないため、大きな省電力化効果を期待できない。
【0025】
この問題を改善するために、基地局装置が不必要なアウェイク状態を削減し、一定以上のトラフィックがある場合でも基地局装置をスリープモードへ移行させるものとして、図13に示すように基地局装置がビーコン周期より短い周期でスリープモードへの移行を判断するものが考えられる。例えば、基地局装置に送信パケットが蓄積しておらず、かつ一定期間に渡って端末装置がパケットを送信してこない場合は、基地局装置はCTSによって短時間のNAVを設定するとともに、その時間でスリープモードに移行する方法である。
【0026】
しかし、この方法ではスリープ時間によって、省電力効果が大きく異なってしまうという問題がある。スリープ時間が短い場合、CTS等のスリープ制御パケットの送信頻度が高くなり、省電力効果が低下する。さらに、所定の基地局装置回路では電源供給開始から機能が安定するまでに一定の時間を要する回路が存在するため、短いスリープ時間では電源供給を停止できる回路が制限されてしまうという問題がある。一方、スリープ時間が長い場合は、上記2点の課題は改善されるものの、端末装置との遅延が大きくなる。スリープ時間中に端末装置に送信パケットが発生した場合、端末装置はスリープ時間の終了までパケットを送信することができないため、スリープ時間が長いほど、遅延時間が増大するという問題がある。
【0027】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、省電力効果および遅延の改善を図り、スリープ時間を最適化することができる基地局装置およびスリープ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、端末装置と無線通信を行う基地局装置であって、送信すべきパケットを有していないときに、前記端末装置からパケットを受信しない状態が、当該端末装置がパケットを送信するために待機する期間を超えて継続していることを検出した場合に、前記端末装置の送信を禁止して、所定期間に渡ってスリープ状態に移行するスリープ制御手段と、スリープ状態に移行した時間と、前記端末装置とのパケットの送受信が発生せずに連続的にスリープ状態に移行した回数とを記憶する記憶手段と、前記スリープ状態に移行した時間及び前記スリープ状態に移行した回数からスリープ状態に移行する時間を更新するスリープ時間制御手段とを備えることを特徴とする。
【0029】
本発明は、前記スリープ時間制御手段は、所定の一周期を複数の時間領域に分割し、前記時間領域毎に前記スリープ状態に移行する時間を更新することを特徴とする。
【0030】
本発明は、前記スリープ状態に移行させる時間の上限値および下限値を設定する設定手段をさらに備え、前記スリープ時間制御手段は、前記スリープ状態に移行させる時間を前記下限値から前記上限値までの範囲で更新することを特徴とする。
【0031】
本発明は、前記スリープ時間制御手段は、接続する端末装置が存在しない場合、又は前記端末装置が存在しても一定期間通信履歴が存在しない場合、前記スリープ状態に移行させる時間の上限値を高く設定することを特徴とする。
【0032】
本発明は、端末装置と無線通信を行う基地局装置におけるスリープ制御方法であって、送信すべきパケットを有していないときに、前記端末装置からパケットを受信しない状態が、当該端末装置がパケットを送信するために待機する期間を超えて継続していることを検出した場合に、前記端末装置の送信を禁止して、所定期間に渡ってスリープ状態に移行するスリープ制御ステップと、スリープ状態に移行した時間と、前記端末装置とのパケットの送受信が発生せずに連続的にスリープ状態に移行した回数とを記憶手段に記憶する記憶ステップと、前記スリープ状態に移行した時間及び前記スリープ状態に移行した回数からスリープ状態に移行する時間を更新するスリープ時間制御ステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、基地局装置がスリープ履歴を参照して、スリープ時間を動的に制御するようにしたため、省電力効果および遅延を改善することが可能となり、スリープ時間を最適化することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態におけるスリープ制御の第1の動作例を示す説明図である。
【図2】本発明の実施形態におけるスリープ制御の第2の動作例を示す説明図である。
【図3】第1の実施形態における基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図4】スリーププロファイル記憶部9に記憶されるスリーププロファイルの一例を示す説明図である。
【図5】スリープ履歴記憶部10に記憶されるスリープ履歴情報の一例を示す説明図である。
【図6】図3に示す基地局装置1におけるスリープ制御の処理動作を示すフローチャートである。
【図7】図3に示すスリープ時間制御部8においてスリープ時間の設定を行う動作を示すフローチャートである。
【図8】第2の実施形態におけるスリープ制御の動作例を示す説明図である。
【図9】第2の実施形態におけるスリープ履歴記憶部10に記憶されるスリープ履歴情報の一例を示す説明図である。
【図10】第2の実施形態におけるスリープ時間の設定動作を示すフローチャートである。
【図11】従来技術における基地局装置のスリープ制御例を示す説明図である。
【図12】従来技術における基地局装置のスリープ制御例を示す説明図である。
【図13】基地局装置がビーコン周期より短い周期でスリープモードへの移行を判断する動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態による基地局装置を説明する。本発明は基地局装置が過去のスリープ履歴を参照してスリープ時間を動的に制御する技術である。具体的なスリープ履歴に関する情報としては、制御前のスリープ時間の情報と、そのスリープ時間におけるスリープ連続移行回数の情報を用いる。
【0036】
ここで、図1を参照して、本実施形態におけるスリープ制御の第1の動作例を説明する。基地局装置は送信パケットがなければ、キャリアセンスを所定時間行い、無線チャネルが占有されてないことを確認してスリープモードに移行する。ここでの所定時間は、端末装置が送信パケットを有している場合は、そのパケットの送信を優先させるように設定する。端末装置のキャリアセンス時間は、DIFSとコンテンションウィンドウからランダムに選んだ値にスロットタイムを乗算した時間との和で設定されるところ、CTS−to−selfを送信するときのキャリアセンスではコンテンションウィンドウをランダムに選ぶのでなく、コンテンションウィンドウの最大値を設定する。
【0037】
端末装置に送信トラフィックが存在する場合、基地局装置がCTS−to−selfを送信する前に送信トラフィックの送受信が開始され、基地局装置はスリープモードに移行しない。基地局装置はこの制御を繰り返すことになるが、本発明ではここでのスリープ時間を動的に制御する。図1(1)はスリープ時間更新前の動作であり、短いスリープ時間に設定されている。そのため、基地局装置はスリープとキャリアセンスを短い周期で繰り返し、端末装置に送信パケットが発生していないときでも基地局装置は不必要にキャリアセンスを実施している。また、スリープ時間が短いことから電源供給を停止できる回路の構成要素の数も少なく、省電力効果が小さい。
【0038】
図1(2)は本発明のスリープ時間制御による更新後の動作である。スリープ時間更新前でのスリープ連続移行回数の平均値が4回であった場合、パケットの生起タイミングは平均的に4回目のスリープモード中であると考えられる。そのため、スリープ時間はスリープ開始からその生起タイミングまでの連続的な時間に設定することによって、不要なアウェイク期間を削減して、スリープ時間を長く設定することが可能である。
【0039】
次に、図2を参照して、本実施形態におけるスリープ制御の第2の動作例を説明する。図2に示す動作は、図1に示す動作と異なり、スリープ時間を短く更新する動作例を示している。図2(1)はスリープ時間更新前の動作であり、スリープ連続移行回数の平均値が1回となっている。これは、スリープ時間が過剰に長く設定されているため、基地局装置がスリープモードに移行する度に、そのスリープ時間中に端末装置で送信パケットが発生している。すなわち、基地局装置がスリープモードに移行する度に、端末装置との通信に遅延が発生していることを意味する。図2(2)は本発明によるスリープ時間更新後の動作である。スリープ時間を短縮することによって、遅延を著しく改善することが可能である。
【0040】
次に、同実施形態による基地局装置の構成を説明する。図3は同実施形態における基地局装置の構成を示すブロック図である。基地局装置1は、アンテナ2、送受信部3、通信制御部4、バッファ部5、インタフェース部6、スリープ制御部7、スリープ時間制御部8、スリーププロファイル記憶部9、スリープ履歴記憶部10、端末装置情報記憶部11から構成される。
【0041】
基地局装置1は、無線回線を介した信号をアンテナ2で受信し、送受信部3にて帯域外信号のフィルタリング、ローノイズアンプによる信号増幅、RF周波数からベースバンド帯への周波数変換、アナログ信号からデジタル信号へのA/D変換等の処理を行う。さらに、デジタル化されたベースバンド信号は、タイミング検出、物理レイヤに関するヘッダ情報の終端、復調処理、誤り訂正などの一連の信号処理が施される。送受信部2から出力される復調処理等が施された信号は通信制御部4に入力する。
【0042】
受信した信号がデータパケットである場合は、バッファ部5を介してインタフェース部6にそのデータパケットを出力する。インタフェース部6は基地局装置1と外部とのデータパケットの入出力を行うインタフェースである。一方、インタフェース部6からパケットが出力されたときは、このデータパケットをバッファ部5に蓄積する。このデータパケットが、通信制御部4の制御によって送信されるときは、通信制御部4は無線パケットを送受信部3に出力し、送受信部3で各種変調処理を施されてベースバンド信号が生成され、デジタル信号からアナログ信号に変換するD/A変換、周波数変換、帯域外信号のフィルタリング、信号増幅などを行い、アンテナ2より送信する。
【0043】
スリープ制御部7は、基地局装置1のスリープモードへの移行判断を実施するとともに、スリープ時間制御部8を参照してスリープ時間を決定し、スリーププロファイル記憶部9に記憶されたスリーププロファイルを参照して所定の回路の電源供給を停止する。スリープ時間制御部8は、スリーププロファイル記憶部9、スリープ履歴記憶部10及び端末装置情報記憶部11に記憶された情報を参照して、スリープ時間を制御する。
【0044】
スリーププロファイル記憶部9には、基地局装置1がスリープモードに移行するときの各種パラメータや、電源をオフにする回路の情報が記憶されている。図4に、スリーププロファイル記憶部9に記憶されるスリーププロファイルの一例を示す。スリーププロファイルでは、スリープ最小時間、スリープ最大時間が記憶されている。スリープ最小時間は省電力効果を得るための最低限必要なスリープ時間である。基地局装置1はスリープモードに移行することによって消費電力の削減を図ることができるが、スリープモードに移行する場合には事前にCTSの送信が必要である。そのため、スリープ時間が短い場合、スリープによって削減できる消費電力が、CTS送信によって増加する消費電力を下回ることがあり、却って消費電力を増大しかねない。この問題を回避するために、スリープ時間はスリーププロファイルのスリープ最小時間を下回らないように制御する。
【0045】
例えば、スリープ最小時間は(1)式を満たすように設定する。
【数1】
ここで、EsleepはCTS送信からスリープ時間の終了までの時間での消費電力であり、Ewaitは前記時間において基地局装置1がスリープしなかった場合、すなわち待機状態(リスニング状態)であった場合の消費電力である。
【0046】
各消費電力は(2)式、(3)式により計算する。
【数2】
【数3】
ここで、Ptx、Psleep、Pwaitは送信時、スリープ時、待機時の消費電力である。TtxはCTS等のスリープ制御パケットの送信時間であり、Tsleepはスリープ時の消費電力である。(2)式、(3)式から、スリープ最小時間Tsleepは(4)式により計算できる。
【数4】
【0047】
スリープ最大時間は端末装置との通信品質を考慮して設定する。基地局装置1と端末装置との通信において、スリープ時間がそのまま遅延時間に成り得るからである。VoIP等のアプリケーションによっては、リアルタイム性が求められるため、遅延時間が通信品質に与える影響が大きい。従って、アプリケーションにおいて許容される遅延時間を超えないようにスリープ最大時間を設定する。例えば、VoIP等では基地局装置1と端末装置の遅延として数10msec程度は許容できるため、この値をスリープ最大時間として設定してもよい。
【0048】
また、この値はスリープ時間制御部8が動的に変更してもよい。基地局装置1と接続(アソシエーション)している端末装置が存在しない場合、又は端末装置が存在していたとしても、一定期間パケットの送受信が発生していない場合は、スリープ最大時間を大きい値に更新してもよい。例えば、ビーコン周期が100msecだった場合、スリープ時間を95msec程度まで大きくしてもよい。上記のような場合では、基地局装置1と端末装置が次に送受信するパケットは初期接続用のパケットである。初期接続用のパケットでは一定以上の遅延が発生しても、通信品質およびユーザ体感品質が劣化することは少ないからである。
【0049】
また、図4に示すスリーププロファイルが記憶されたスリーププロファイル記憶部9では、スリープ時間に応じて電源供給を停止する回路の情報を有している。基地局装置1における一部の回路では、電源供給から機能が安定するまで一定の時間を要する回路がある。そのため、スリープ時間によって電源をオフにする回路を制御し、長時間のスリープモードに移行する場合は多くの回路を停止するように制御する。この制御は図4に示すようにスリープ時間と閾値(tth)との比較によって制御してもよい。
【0050】
スリープ履歴記憶部10は過去一定時間におけるスリープ連続移行回数等の情報を記憶する。スリープ履歴記憶部10に記憶されているスリープ履歴情報の一例を図5に示す。スリープ連続移行回数の情報の他に、スリープ開始時間(1回目のスリープモードに移行した時間)、及び1回のスリープ時間が関係付けられて記憶される。端末装置情報記憶部11は基地局装置1と既にアソシエーションしている端末装置の情報(端末装置の台数や端末装置の有無)が記憶される。
【0051】
なお、スリープ制御部7、スリープ時間制御部8、スリーププロファイル記憶部9、スリープ履歴記憶部10、端末装置情報記憶部11について、通信制御部4から切り離して説明を行ったが、これら全てをひとつの制御部全体として構成してもよい。
【0052】
次に、図6を参照して、図3に示す基地局装置1におけるスリープ制御の処理動作を説明する。図6は、図3に示す基地局装置1におけるスリープ制御の処理動作を示すフローチャートである。スリープ制御部7は、スリープ制御を開始すると、ビーコンを送信した後(ステップS1)、スリープ制御部7は、基地局装置1のバッファ部5に送信パケットがあるか否かを判定する(ステップS2)。バッファ部5に送信パケットがある場合(ステップS2でYes)、キャリアセンスを実施した後(ステップS3)、所定時間、無線チャネルが未使用であるか否かを判定し(ステップS4)、未使用であれば(ステップS4でYes)、パケットを送信する(ステップS5)。
【0053】
一方、無線チャネルが使用中であれば(ステップS4でNo)、その無線チャネルを使用して送信されている無線パケットを受信し(ステップS6)、再び基地局装置1のバッファ部5における送信パケットの有無を判定し(ステップS2)、キャリアセンスを実施する。ここでのS3〜S6の動作は一般的な無線LANの動作と同じであり、キャリアセンスによってチャネル使用状況を判断する時間(ステップS4の所定時間)は、DIFS時間とバックオフ時間の合計である(図1参照)。バックオフ時間は、コンテンションウィンドウ範囲内からランダムに選択した値によって定まり、その値とスロット時間を乗算した時間に設定される。
【0054】
一方、基地局装置1のバッファ部5に送信パケットがない場合(ステップS2でNo)、スリープ制御部7は、スリープ時間制御部8を参照することで、スリープ時間を把握する(ステップS7)。続いて、キャリアセンスを実施する(ステップS8)。そして、スリープ制御部7は、所定時間、無線チャネルが未使用であるか否かを判定し(ステップS9)、未使用であれば(ステップS9でYes)、基地局装置1はS7で把握したスリープ時間に相当するNAVをdurationで設定したCTSを送信する(ステップS10)と共に、基地局装置1はスリープモードに移行し(ステップS11)、スリープ時間経過後にアウェイクモードへ移行する(ステップS12)。
【0055】
ここで、端末装置が送信パケットを有しているときは、その送信よりも早くCTSが送信されることを回避するために、ステップS9の所定時間におけるバックオフ時間は端末装置のそれよりも長く設定する。例えば、再送回数毎のコンテンションウィンドウ最大値(IEEE802.11bの初回送信では31スロット)に設定することも可能である。端末装置はコンテンションウィンドウ値をゼロから最大値までのランダムな値に選択するため、基地局装置1のバックオフ時間としてコンテンションウィンドウ最大値を設定すると基地局装置1のコンテンションウィンドウ値の方が必ず大きくなるからである。これにより、端末装置によるパケット送信を優先させることによって、基地局装置1は端末装置がパケットを送信しないときのみにスリープモードに移行させることが可能となる。
【0056】
次に、スリープ制御部7は、無線チャネルが使用中であれば(ステップS9でNo)、その無線チャネルを使用して送信されている無線パケットを受信し(ステップS13)、再び基地局装置1のバッファ部5における送信パケットの有無を判定し(ステップS2)、キャリアセンスを実施する。このS2〜S13の動作をビーコンインターバルの終了まで繰り返し(ステップS14)、ビーコンインターバルを終了する(ステップS14でYes)と、再びビーコンを送信する(ステップS1)。
【0057】
次に、図7を参照して、スリープ時間の設定動作を説明する。図7は、図3に示すスリープ時間制御部8においてスリープ時間の設定を行う動作を示すフローチャートである。この設定動作はスリープ時間制御部8によって周期的に実施される。なお、スリープ時間の制御周期は任意に設定できるものであり、例えば1ビーコンインターバル周期で設定してもよい。
【0058】
まず、スリープ時間制御部8は、スリープ時間の設定を開始すると、スリープ履歴の参照時間を決定する(ステップS21)。ここでの参照時間は任意の時間に設定できるものであり、例えば、直前の1ビーコンインターバル、又は複数ビーコンインターバルにわたって参照時間を設定してもよい。続いて、スリープ時間制御部8は、スリープ最大時間を決定する(ステップS22)。スリープ最大時間は、アプリケーションで許容される遅延から設定する。また、端末情報記憶部11を参照して、基地局装置1に接続している端末装置が存在しない場合、又は端末装置が存在するが過去一定時間内に通信が発生していない場合は、スリープ最大時間をビーコンインターバル程度まで大きく設定してもよい。基地局装置1に接続している端末装置の有無は端末装置情報記憶部11を参照して把握する。過去一定時間内の通信の有無は、スリープ履歴記憶部10を参照して、スリープの連続移行回数等から把握する。
【0059】
次に、スリープ時間制御部8は、参照時間内でスリープ履歴があるか否かを判定する(ステップS23)。この判定の結果、スリープ履歴がない場合(ステップS23でNo)、スリープ時間制御部8は、スリープ時間を初期設定する(ステップS24)。このケースでは、基地局装置1と端末装置との通信トラフィックが多く、参照時間内で基地局装置1がスリープモードに移行していないことを意味するため、それらのトラフィックに対して遅延の増大を防止するようにスリープ時間を設定する。例えば、スリープ最小時間に設定してもよい。
【0060】
一方、スリープ履歴がある場合(ステップS23でYes)、スリープ時間制御部8は、スリープ履歴記憶部10を参照して、参照時間内でのスリープ連続移行回数の平均値を計算し(ステップS25)、この平均値と現スリープ時間からスリープ時間を更新する(ステップS26)。例えば、(5)式によって計算する。
【数5】
【0061】
ここで、xはスリープ連続移行回数の平均値である。Tsleep、T’sleepは更新後、更新前のスリープ時間である。TwaitはCTSを送信するための待機時間であり、DIFS時間とバックオフ時間の合計である。TctsはCTSの送信時間である。スリープ連続移行回数の平均値がxであるということは、x回目のスリープ時間中に端末装置に送信パケットが発生していることを意味する。そのため、(5)式ではx回目のスリープ時間の中間で送信パケットが発生していると推定し、スリープ開始から送信パケット発生タイミングまで連続的にスリープモードに移行することを目的としている。
【0062】
なお、1回目のスリープからx回目のスリープまでは端末装置による送信パケットの有無を判定するための待機時間とCTSの送信時間がx−1回存在するため、その時間を考慮してスリープ時間を更新している。(5)式によれば、連続的なスリープ時間を設定することによって省電力効果を高めるだけでなく、スリープ時間の短縮化によって遅延の改善を図ることも可能である。例えば、スリープ連続移行回数が1の場合、(5)式によって更新後のスリープ時間は更新前の1/2に設定されることがわかる。
【0063】
次に、スリープ時間制御部8は、スリープ時間とスリープ最大時間の大小を比較し(ステップS27)、更新したスリープ時間がスリープ最大時間を超える場合(ステップS27でNo)はスリープ時間をスリープ最大時間に設定する(ステップS29)。一方、更新したスリープ時間がスリープ最大時間を超えない場合、スリープ時間制御部8は、スリープ時間とスリープ最小時間の大小を比較し(ステップS28)、スリープ最小時間を下回る場合(ステップS28でNo)はスリープ時間をスリープ最小時間に設定する(ステップS30)、スリープ時間の設定を終了する。
【0064】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態による基地局装置を説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態と異なり、スリープ時間の制御周期(例えばビーコンインターバル)を複数の時間(以下ではセグメントと称する)に分割し、セグメント毎にスリープ時間を設定するものである。端末装置によっては、ビーコンを受信してから基地局装置1に無線パケットを送信するように制御される場合があるため、ビーコンインターバルの前半にはトラフィックが多い一方で、ビーコンインターバルの後半ではトラフィックが少ない傾向になり得る。このような場合、ビーコンインターバルを分割した複数のセグメント毎にスリープ時間を設定することによって、省電力効果および遅延時間の観点からより最適なスリープ時間を設定することが可能となる。
【0065】
図8は、第2の実施形態におけるスリープ制御の動作例を示す図である。ビーコンインターバルをn個のセグメントに分割している。更新前において、セグメント1のスリープ連続移行回数の平均値は2となっているが、セグメントnではスリープ連続移行回数の平均値が4となっている。セグメント毎にスリープ時間を更新することによって、セグメント1よりもセグメントnの方が長いスリープ時間が設定される。
【0066】
第2の実施形態における基地局装置1の構成は図3に示す構成と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。図9は、第2の実施形態におけるスリープ履歴記憶部10に記憶されるスリープ履歴情報の一例を示す図である。第1の実施形態と同様にスリープ連続移行回数の情報の他に、スリープ開始時間(1回目のスリープモードへの移行開始時間)、及び1回のスリープ時間が関係付けられて記憶される。前半部分t1〜t3では、スリープ連続移行回数が2〜3と小さくなっているが、後半部分t4〜t8ではスリープ連続移行回数が4以上と大きくなっている。
【0067】
次に、図10を参照して、第2の実施形態におけるスリープ時間の設定動作を説明する。図10は、第2の実施形態におけるスリープ時間の設定動作を示すフローチャートである。この設定動作はスリープ時間制御部8によって周期的に実施される。なお、スリープ時間の制御周期は任意に設定できるものであり、例えば1ビーコンインターバル周期で設定してもよい。
【0068】
まず、スリープ時間制御部8は、スリープ時間の設定を開始すると、スリープ履歴の参照時間を決定する(ステップS41)。ここでの参照時間は任意の時間に設定できるものであり、例えば、直前の1ビーコンインターバル、又は複数のビーコンインターバルにわたって参照時間を設定してもよい。続いて、スリープ時間制御部8は、スリープ最大時間を決定する(ステップS42)。スリープ最大時間は、前述の通り、アプリケーションで許容される遅延から設定する。また、端末情報記憶部11を参照して、基地局装置1に接続している端末装置が存在しない場合、又は端末装置が存在するが過去一定時間内に通信が発生していない場合は、スリープ最大時間をビーコンインターバル程度まで大きく設定してもよい。
【0069】
次に、スリープ時間制御部8は、参照時間内でスリープ履歴があるか否かを判定する(ステップS43)。この判定の結果、スリープ履歴がない場合(ステップS43でNo)、スリープ時間制御部8は、スリープ時間を初期設定する(ステップS44)。このケースでは、基地局装置1と端末装置との通信トラフィックが多く、参照時間内で基地局装置1がスリープモードに移行していないことを意味するため、それらのトラフィックに対して遅延の増大を防止するようにスリープ時間を設定する。例えば、スリープ最小時間に設定してもよい。
【0070】
一方、スリープ履歴がある場合(ステップS43でYes)、スリープ時間制御部8は、セグメントを決定する(ステップS45)。ここではセグメントの数やセグメント切換時間を決定するが、これらの情報は基地局装置1に予め定められたシステムパラメータで運用されてもよい。または、スリープ履歴記憶部10のスリープ履歴を参照してセグメント情報を決定してもよい。例えば、図9に示すスリープ履歴であった場合、t1〜t3ではスリープ連続移行回数が2〜3回であるが、t4以降ではスリープ連続移行回数が4回以上となるため、スリープ連続移行回数の推移を考慮してセグメントを決定してもよい。
【0071】
次に、スリープ時間制御部8は、参照時間内でのスリープ連続移行回数の平均値をセグメント毎に計算し(ステップS46)、セグメント毎の平均値と現スリープ時間からスリープ時間をセグメント毎に更新する(ステップS47)。
【0072】
次に、スリープ時間制御部8は、スリープ時間とスリープ最大時間の大小を比較し(ステップS48)、更新したスリープ時間がスリープ最大時間を超える場合(ステップS48でNo)はスリープ時間をスリープ最大時間に設定する(ステップS49)。一方、更新したスリープ時間がスリープ最大時間を超えない場合、スリープ時間制御部8は、スリープ時間とスリープ最小時間の大小を比較し(ステップS50)、スリープ最小時間を下回る場合(ステップS50でNo)はスリープ時間をスリープ最小時間に設定し(ステップS51)、スリープ時間の設定を終了する。
【0073】
無線LANのアクセスポイント(基地局装置)の省電力化を行うための技術として、チャネルをNAVにより予約してその期間をスリープするものがある。NAVは、例えば、CTS信号等により送信することができるが、NAVによるチャネルの予約は、予約できる最大の期間が短いため、頻繁にCTS信号を送信する必要があり、電力を消費してしまう。一方、NAVを設定しないと、基地局装置のスリープ中に無線端末装置の送信が失敗してパケットが廃棄されるという問題がある。
【0074】
本発明は、連続的にスリープ動作に入った回数に基づいてスリープ期間を制御するようにした。具体的には、基地局装置1は、一つのスリープ期間を設定したときに、連続してスリープ動作に入った回数をカウントアップし、この回数が安定して閾値を越えた場合には、スリープ期間を長く再設定する。一方、連続してスリープ動作に入る回数が常に1であることが安定して続いたときは、スリープ期間を短く再設定する。この構成により、連続してスリープ動作に入った回数が2以上あるときは、現在のスリープ期間が端末装置にトラヒックが生起する周期と比較して短いものと判定してスリープ期間を長くすることができる。また、連続してスリープ動作に入る回数が常に1であるときは、スリープ期間中に必ずトラヒックが生起していることから、現在のスリープ期間が端末装置にトラヒックが生起する周期と比較して長いものと判定してスリープ期間を短くすることができる。これにより、スリープ期間と端末装置のトラヒックの生起周期の整合をとることが可能となる。
【0075】
なお、図3における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりスリープ制御処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0076】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0077】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明してきたが、上記実施の形態は本発明の例示に過ぎず、本発明が上記実施の形態に限定されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の精神及び範囲を逸脱しない範囲で構成要素の追加、省略、置換、その他の変更を行っても良い。
【産業上の利用可能性】
【0078】
無線アクセスシステムを構成する基地局装置において、消費電力を低減することが不可欠な用途に適用でき、特に、バッテリーによって基地局装置の動作に必要な電力を供給する場合に好適である。
【符号の説明】
【0079】
1・・・基地局装置、2・・・アンテナ、3・・・送受信部、4・・・通信制御部、5・・・バッファ部、6・・・インタフェース部、7・・・スリープ制御部、8・・・スリープ時間制御部、9・・・スリーププロファイル記憶部、10・・・スリープ履歴記憶部、11・・・端末装置情報記憶部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置と無線通信を行う基地局装置であって、
送信すべきパケットを有していないときに、前記端末装置からパケットを受信しない状態が、当該端末装置がパケットを送信するために待機する期間を超えて継続していることを検出した場合に、前記端末装置の送信を禁止して、所定期間に渡ってスリープ状態に移行するスリープ制御手段と、
スリープ状態に移行した時間と、前記端末装置とのパケットの送受信が発生せずに連続的にスリープ状態に移行した回数とを記憶する記憶手段と、
前記スリープ状態に移行した時間及び前記スリープ状態に移行した回数からスリープ状態に移行する時間を更新するスリープ時間制御手段と
を備えることを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
前記スリープ時間制御手段は、所定の一周期を複数の時間領域に分割し、前記時間領域毎に前記スリープ状態に移行する時間を更新することを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記スリープ状態に移行させる時間の上限値および下限値を設定する設定手段をさらに備え、
前記スリープ時間制御手段は、前記スリープ状態に移行させる時間を前記下限値から前記上限値までの範囲で更新することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記スリープ時間制御手段は、接続する端末装置が存在しない場合、又は前記端末装置が存在しても一定期間通信履歴が存在しない場合、前記スリープ状態に移行させる時間の上限値を高く設定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の基地局装置。
【請求項5】
端末装置と無線通信を行う基地局装置におけるスリープ制御方法であって、
送信すべきパケットを有していないときに、前記端末装置からパケットを受信しない状態が、当該端末装置がパケットを送信するために待機する期間を超えて継続していることを検出した場合に、前記端末装置の送信を禁止して、所定期間に渡ってスリープ状態に移行するスリープ制御ステップと、
スリープ状態に移行した時間と、前記端末装置とのパケットの送受信が発生せずに連続的にスリープ状態に移行した回数とを記憶手段に記憶する記憶ステップと、
前記スリープ状態に移行した時間及び前記スリープ状態に移行した回数からスリープ状態に移行する時間を更新するスリープ時間制御ステップと
を有することを特徴とするスリープ制御方法。
【請求項1】
端末装置と無線通信を行う基地局装置であって、
送信すべきパケットを有していないときに、前記端末装置からパケットを受信しない状態が、当該端末装置がパケットを送信するために待機する期間を超えて継続していることを検出した場合に、前記端末装置の送信を禁止して、所定期間に渡ってスリープ状態に移行するスリープ制御手段と、
スリープ状態に移行した時間と、前記端末装置とのパケットの送受信が発生せずに連続的にスリープ状態に移行した回数とを記憶する記憶手段と、
前記スリープ状態に移行した時間及び前記スリープ状態に移行した回数からスリープ状態に移行する時間を更新するスリープ時間制御手段と
を備えることを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
前記スリープ時間制御手段は、所定の一周期を複数の時間領域に分割し、前記時間領域毎に前記スリープ状態に移行する時間を更新することを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記スリープ状態に移行させる時間の上限値および下限値を設定する設定手段をさらに備え、
前記スリープ時間制御手段は、前記スリープ状態に移行させる時間を前記下限値から前記上限値までの範囲で更新することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記スリープ時間制御手段は、接続する端末装置が存在しない場合、又は前記端末装置が存在しても一定期間通信履歴が存在しない場合、前記スリープ状態に移行させる時間の上限値を高く設定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の基地局装置。
【請求項5】
端末装置と無線通信を行う基地局装置におけるスリープ制御方法であって、
送信すべきパケットを有していないときに、前記端末装置からパケットを受信しない状態が、当該端末装置がパケットを送信するために待機する期間を超えて継続していることを検出した場合に、前記端末装置の送信を禁止して、所定期間に渡ってスリープ状態に移行するスリープ制御ステップと、
スリープ状態に移行した時間と、前記端末装置とのパケットの送受信が発生せずに連続的にスリープ状態に移行した回数とを記憶手段に記憶する記憶ステップと、
前記スリープ状態に移行した時間及び前記スリープ状態に移行した回数からスリープ状態に移行する時間を更新するスリープ時間制御ステップと
を有することを特徴とするスリープ制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−93802(P2013−93802A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236006(P2011−236006)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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