説明

基材表面ゴミ取り装置

【課題】拭取ロールを回転駆動する拭取ロール回転装置からの微塵発生を解消する。
【解決手段】搬送される基材11に接触回転して基材表面の塵埃を拭き取る粘着周面12を有する拭取ロール13と、その拭取ロール13を回転駆動する駆動ロール14を具備する基材表面ゴミ取り装置において、拭取ロールの回転軸15に被動ロール16を軸支し、駆動ロールに非接触状態に向かい合わせにし、それら被動ロールと駆動ロールの間の距離を一定に保つ。被動ロールと駆動ロールそれぞれの周面に回転方向に沿って複数個の磁性体17・18をそれぞれ付設する。被動ロールと駆動ロールの間に作用する磁性体17・18の磁力によって被動ロールを駆動ロールの回転に合わせて伴回りさせて拭取ロール13を回転駆動する。被動ロールと駆動ロールが非接触状態にあるので、それらの間で摩耗による微粉が生じることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送される平板な基材の平面に接して回転駆動されて基材の平面に付着している塵埃を粘着させて拭き取る粘着周面を有する拭取ロールと、その拭取ロールを駆動する駆動ロールを具備する基材表面ゴミ取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基材表面ゴミ取り装置に清掃パッドを付設し、基材平面から拭き取られて拭取ロールの粘着周面に粘着している塵埃を清掃パッドによって拭き取って粘着周面を無塵状態に保つことは公知である(例えば、特許文献1、2、3参照)。清掃パッドを具備する基材表面ゴミ取り装置には拭取ロール移動装置と粘着周面に粘着している塵埃を感知する塵埃感知センサーを付設し、粘着周面に粘着している塵埃が所定量に達したことを塵埃感知センサーが感知して拭取ロール移動装置を起動させ、基材平面から清掃パッドへと拭取ロールを移動させることも公知である(例えば、特許文献4参照)。
【0003】
基材表面ゴミ取り装置には清掃パッド駆動装置を付設し、拭取ロールの回転軸に平行に清掃パッドを往復移動させて、拭取ロールの粘着周面に粘着している塵埃を清掃パッドによって拭き取って粘着周面を無塵状態に保つことも公知である(例えば、特許文献1、2、3、4参照)。
【0004】
清掃パッドは、その粘着周面との接触面を変えて絶えず無塵状態に保つために、ロール状に巻き取って保持されている。清掃パッドには、粘着周面からの塵埃の離脱を促す洗浄液が付与される。
【0005】
基材表面ゴミ取り装置には、複数本の拭取ロールを設け、それらを交互に清掃パッドへと移動して清掃し、その清掃時には他の拭取ロールが基材平面に接して塵埃除去作用を営むようにすることも公知である(例えば、特許文献1、2、5参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平08−187457号公報(特許第2687118号)
【特許文献2】特開平08−281178号公報(特許第3160795号)
【特許文献3】特開平02−227177号公報(特公平05−79395号)
【特許文献4】特開平08−047674号公報(特許第300705号)
【特許文献5】特開平01−25891号公報(特公平06−47284号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
基材表面ゴミ取り装置は、搬送される平板な基材の平面に接して回転駆動されて基材の平面に付着している塵埃を粘着させて拭き取るために使用されるものであるから、基材表面ゴミ取り装置それ自体が塵埃を発生するものであってはならない。
【0008】
拭取ロールは、粘着周面を有するので、搬送される基材の平面に接して回転駆動されることになり、その基材に付着している塵埃を拭き取る過程では、拭取ロールを回転駆動する駆動ロールは必要とされない。しかし、清掃パッド駆動装置を具備する基材表面ゴミ取り装置では、その清掃パッド駆動装置が拭取ロール移動装置に駆動されて基材平面から引き離された拭取ロールを清掃するものであるから、清掃時に拭取ロールを回転駆動する拭取ロール回転装置を必要とする。
【0009】
その清掃時に拭取ロールを回転駆動する拭取ロール回転装置における伝動機構は、摩擦車を使用した摩擦伝動、プリーベルトや鎖車を使用した巻掛け伝動、歯車伝動等で構成されており、その原動体と被動体の間で摩擦を伴う構造になっている。
そのため、その触れ合う原動体や被動体が摩耗して少なからず発生する微塵が、基材表面ゴミ取り装置の機能を損なうとの知見を得た。
【0010】
そこで本発明は、清掃時に基材平面から引き離された拭取ロールを回転駆動する拭取ロール回転装置からの微塵の発生を回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る基材表面ゴミ取り装置は、(a) 搬送される平板な基材11の平面に接して回転駆動されて基材11の平面に付着している塵埃を粘着させて拭き取る粘着周面12を有する拭取ロール13と、(b) 拭取ロール13の粘着周面12に接触して粘着周面12に粘着している塵埃を拭き取る清掃パッド21と、(c) 基材平面11と清掃パッド21の間で拭取ロールを往復移動させる拭取ロール移動装置22と、(d) 拭取ロール移動装置22に駆動されて基材平面11から離れて清掃パッド21に接触する部位において拭取ロール13を回転駆動する駆動ロール14とを具備し、(e) 拭取ロールの回転軸15に円柱形の被動ロール16が軸支されており、(f) 被動ロール16と駆動ロール14のそれぞれが、ロールの回転方向に沿って配置された複数個の磁性体17・18を有し、(g) 拭取ロール移動装置22に駆動されて基材平面11から離れて清掃パッド21に接触する部位において、被動ロールの被動周面19と駆動ロールの駆動周面20が向い合せになっており、(h) 被動ロールの磁性体17と駆動ロールの磁性体18の間に、被動ロールの被動周面19と駆動ロールの駆動周面20を引き寄せる磁場が形成されており、(i) その引き寄せ磁場の作用する被動周面19と駆動周面20の間に隙間があって周面間19・20が非接触状態にあることを第1の特徴とする。
【0012】
本発明に係る基材表面ゴミ取り装置の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、被動ロール16と駆動ロール14の一方または双方の磁性体(17・18)が永久磁石である点にある。
【0013】
本発明に係る基材表面ゴミ取り装置の第3の特徴は、上記第1および第2の何れかの特徴に加えて、拭取ロール13の回転軸15に平行に清掃パッド21を往復移動させる清掃パッド移動装置を具備する点にある。
【発明の効果】
【0014】
駆動ロール14が回転し、駆動周面20の磁性体18が回転移動するとき、その磁性体18に向き合う被動ロールの磁性体17は、駆動ロール14の磁性体18に引き寄せられて回転移動する。駆動ロール14と共に磁性体18が更に回転移動して、その向き合っていた被動ロールの磁性体17から遠ざかると、駆動ロール14の回転方向に沿って配置されており、その遠ざかる磁性体18に隣り合う別の磁性体18が、その遠ざかった被動ロールの磁性体17に向き合い、その別の磁性体18に引き寄せられて被動ロールの磁性体17が回転移動する。
【0015】
こうして、駆動ロール14の回転方向に沿って隣り合って配置されている駆動周面20の複数個の磁性体18・18・18………が、順次入れ替わって被動周面19に隣り合って配置されている複数個の磁性体17・17・17………を順次引き寄せて回転を促す結果、被動ロール16と一体を成す拭取ロール13が駆動ロール14によって回転駆動されることになる。
【0016】
その被動周面19と駆動周面20の間に隙間があって周面間19・20が非接触状態に保たれていても、被動ロールの被動周面19と駆動ロールの駆動周面20の間には、被動ロールの磁性体17と駆動ロールの磁性体18によって互いに引き寄せる磁場が作用しているので、その非接触状態は、駆動ロール14による拭取ロール13の回転駆動の妨げにならない。
【0017】
その回転駆動時に、被動周面19と駆動周面20の間が非接触状態に保たれるので、被動周面19と駆動周面20が摩耗することはなく、拭取ロール13を回転駆動する拭取ロール回転装置から微塵が発生することはない。
【0018】
従って、本発明によると、微塵の発生がなく、搬送される基材11に付着している塵埃の拭き取りに有効な基材表面ゴミ取り装置が得られる。
【0019】
そして、被動ロール16と駆動ロール14の間の伝動機構が、摩擦車による摩擦伝動、プリーベルト等による巻掛け伝動、歯車伝動等と異なり、非接触状態における磁力伝動であり、被動ロール16と駆動ロール14の間が非接触状態にあるが故に、拭取ロール13が清掃パッド21から受ける抵抗の度合いの変化に応じてそれらのロールの回転には位相差が生じ、又、回転速度にバラツキが生じるとしても、拭取ロールから清掃パッドによって塵埃を拭き取るうえでは何ら支障をきたさず、基材表面ゴミ取り装置の機能が損なわれることはない。
【0020】
被動ロール16と駆動ロール14の磁性体17・18は、その一方が他方を引き寄せる関係にあればよく、その双方が互いに他方を引き寄せる関係にすること、即ち、駆動ロール14の磁性体18をS極とする場合には被動ロール16の磁性体17をN極とし、駆動ロール14の磁性体18をN極とする場合には被動ロール16の磁性体17をS極とすることは必ずしも必要とされない。従って、駆動ロール14の磁性体18だけを電磁石か永久磁石とすることが出来る。しかし、被動ロール16と駆動ロール14の一方または双方の磁性体(17・18)を永久磁石とするときは、基材表面ゴミ取り装置の構造が簡素化されて取り扱い易くなる。
【0021】
その双方の磁性体17・18を永久磁石とし、その駆動ロール14の磁性体18をS極とする場合には被動ロール16の磁性体17をN極とし、駆動ロール14の磁性体18をN極とする場合は、被動ロールの磁性体17と駆動ロールの磁性体18の間に互いに引き寄せ合う強い磁場が形成されるので、駆動ロール14による強い回転トルクが得られ、拭取ロール13を高速回転することが出来る。
【0022】
そして本発明では、清掃パッド21の幅を狭くし、拭取ロール13の回転軸15に平行に清掃パッド21を往復移動させることとしたので、拭取ロール13が清掃パッド21から受ける抵抗が少なく、拭取ロールを高速回転して効率的に清掃することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
被動ロールの被動周面19と駆動ロールの駆動周面20のそれぞれの回転方向に沿って配置される複数個の各磁性体17(18)と磁性体17(18)の間には所要の非磁性体によるスペース24を設け、それらの回転方向に沿って配置される磁性体17・17(18・18)が触れ合わないようにする。
駆動ロール14の磁性体18と被動ロール16の磁性体17の一方を永久磁石とする場合には、その永久磁石の磁力線を向き合う他方の磁性体(17・18)に向けるためのヨークが適宜装着される。
【0024】
拭取ロール移動装置22に駆動されて移動する拭取ロール13の粘着周面12が基材11に触れ合う部位や清掃パッド21に触れ合う部位には、それらの部位で拭取ロール13の移動を止めるストッパーを設ける。
駆動ロール14は、その基材11、或いは、清掃パッド21に触れ合って停止した拭取ロール13の被動ロール16に向かい合わせに設ける。
被動ロールの被動周面19と駆動ロールの駆動周面20の間は、それらが触れ合わない限りにおいて極く接近させ、両者間に磁力の強い磁場を発生させる。
【0025】
被動ロールの被動周面19を拭取ロール13の粘着周面12に隣り合わせにし、或いは、被動ロール16と拭取ロール13を同じ母体ロールによって構成する等、被動ロール16を拭取ロール13と一体に構成することも出来、拭取ロール13とは別に被動ロール16を拭取ロール13の回転軸15に直接軸支させる必要はない。
【0026】
清掃パッド21は巻取式にし、順次繰り出してクリーンな新しい部分が拭取ロールに触れるようにし、蒸発性の洗浄液を付与して濡らせて拭取ロールの粘着周面12の塵埃を拭き取り易くし、拭取ロールの拭取・清掃を効率的に行う。
基材平面11と清掃パッド21の間で拭取ロールを往復移動させる拭取ロール移動装置22、および、拭取ロール13の回転軸15に平行に清掃パッド21を往復移動させる清掃パッド移動装置については、前記の特許文献1、2、3、4、5等に開示されている従来技術を適用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る基材表面ゴミ取り装置の要部斜視図である。
【図2】本発明に係る基材表面ゴミ取り装置の要部斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
11:基材(平面)
12:粘着周面
13:拭取ロール
14:駆動ロール
15:回転軸
16:被動ロール
17:磁性体
18:磁性体
19:被動周面
20:駆動周面
21:清掃パッド
22:拭取ロール移動装置
24:スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 搬送される平板な基材(11)の平面に接して回転駆動されて基材(11)の平面に付着している塵埃を粘着させて拭き取る粘着周面(12)を有する拭取ロール(13)と、
(b) 拭取ロール(13)の粘着周面(12)に接触して粘着周面(12)に粘着している塵埃を拭き取る清掃パッド(21)と、
(c) 基材平面(11)と清掃パッド(21)の間で拭取ロールを往復移動させる拭取ロール移動装置(22)と、
(d) 拭取ロール移動装置(22)に駆動されて基材平面(11)から離れて清掃パッド(21)に接触する部位において拭取ロール(13)を回転駆動する駆動ロール(14)とを具備し、
(e) 拭取ロールの回転軸(15)に円柱形の被動ロール(16)が軸支されており、
(f) 被動ロール(16)と駆動ロール(14)のそれぞれが、ロールの回転方向に沿って配置された複数個の磁性体(17・18)を有し、
(g) 拭取ロール移動装置(22)に駆動されて基材平面(11)から離れて清掃パッド(21)に接触する部位において、被動ロールの被動周面(19)と駆動ロールの駆動周面(20)が向い合せになっており、
(h) 被動ロールの磁性体(17)と駆動ロールの磁性体(18)の間に、被動ロールの被動周面(19)と駆動ロールの駆動周面(20)を引き寄せる磁場が形成されており、
(i) その引き寄せ磁場の作用する被動周面(19)と駆動周面(20)の間に隙間があって周面間(19・20)が非接触状態にある基材表面ゴミ取り装置。
【請求項2】
被動ロール(16)と駆動ロール(14)の一方または双方の磁性体(17・18)が永久磁石である前掲請求項1に記載の基材表面ゴミ取り装置。
【請求項3】
拭取ロール(13)の回転軸(15)に平行に清掃パッド(21)を往復移動させる清掃パッド移動装置を具備する前掲請求項1と2の何れかに記載の基材表面ゴミ取り装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate