説明

基板、微粒子構造体およびその製造方法

【課題】 優れた光学特性を有するフォトニック結晶素子および結晶制御が可能なフォトニック結晶素子の製造方法を提供する
【解決手段】 まず、2次元周期的に配列された孔101が形成された基板100を準備する。次いで、液中で基板100の孔101に微粒子111を自己組織化によって周期的に配置させる。次に、液中で基板100上に配置された微粒子111の上にさらに微粒子111を積層し、3次元の周期構造を形成する。微粒子111が堆積して形成される微粒子構造体121は基板100の2次元周期構造を反映する。この方法により、基板100全面に単結晶・単一ドメインで構成され、無欠陥の良質なフォトニック結晶を作製することができる。また、基板に欠陥を形成すれば、微粒子のフォトニック結晶にも所望の欠陥を導入することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子を配列させるための基板、基板上に配列させた微粒子からなり、フォトニック結晶として機能する微粒子構造体、および微粒子構造体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フォトニック結晶は、光の波長オーダーで屈折率の変化が周期的に分布している構造体である。原子の周期構造によって電子に対するバンド構造が形成される(波数とエネルギーが分散特性を有する)のと同様に、フォトニック結晶では光子に対する光バンド構造が形成される(波数と周波数が分散特性を有する)。フォトニック結晶においては、屈折率分布により光バンド構造が制御され、その光バンド構造が屈折率や群速度などの、フォトニック結晶中の光の伝搬の特性を決定する。従って、フォトニック結晶によって得られる光学特性は、フォトニック結晶を形成する材料の本来の光学特性とは異なる。フォトニック結晶は、いわば人工光学結晶と呼んでもよい。すなわち、新規な光学特性を望む場合、新規材料を開発しなくても、屈折率の周期構造を設計し形成することにより光学特性そのものを制御することができる。これがフォトニック結晶の基本的な利点である。そのため、フォトニック結晶の光バンド構造を制御することにより、従来にない微小で高効率な光学素子および光集積回路が実現できると期待されている。
【0003】
このようなフォトニック結晶の優れた特性は、非特許文献1に詳しく記載されている。例えば、電子のバンド構造において見られるバンドギャップが、フォトニック結晶の構造を適切に選ぶと光バンド構造においても発生することが記載されている。この光バンドギャップ(Photonic Band Gap:PBG)内の周波数を有する光は、フォトニック結晶中を伝搬することができない。このようなフォトニック結晶に外部から入射された光は、全反射される。PBGをその周波数においてあらゆる波数(あらゆる伝搬方向)に対して発生させた場合、フォトニック結晶を、入射角に依存しない高反射率のミラーとして機能させることができる。このようなミラーを屈折率変化の周期構造により形成できるため、半導体の微細加工プロセスを利用して半波長オーダーの微小共振器や微小導波路を形成することが可能となる。微小共振器は、PBGを有するフォトニック結晶で微小な領域を囲むことで実現する。また、微小導波路は、PBGを有するフォトニック結晶で微小幅の導波路の両側を囲むことによって形成する。
【0004】
フォトニック結晶を用いた微小共振器の利点は、高反射率ミラーによる共振器であるためQ値が非常に高いことである。また、半波長オーダーの高Q値の微小共振器においては、量子電磁気学の効果により自然放出光を制御することが期待できる。この自然放出光の制御によって、材料そのものの自然放出光特性を利用する従来のレーザでは実現しなかった、無閾値・超高効率レーザが実現できると期待されている。
【0005】
次に、フォトニック結晶を用いた微小導波路の利点としては、導波路のサイズが小さいこと、急激な導波路曲げを無損失化できることなどがある。屈折率差による光閉じ込めを原理とする従来の導波路では、導波路を大きく曲げると、曲げた部分から光が漏れ出し、伝搬損失が大きくなる。これに対し、フォトニック結晶を用いた微小導波路では、PBGを有するフォトニック結晶が高反射率ミラーとして曲げ部分からの光の漏れを防ぐため、曲げによる伝搬損失を避けることができる。
【0006】
このようなフォトニック結晶は光だけでなく、あらゆる波長の電磁波に対して形成することができる。
【0007】
光領域(200〜2μm)においてフォトニック結晶を作製する上での課題は、波長が短いため高度な半導体プロセス技術を必要とすることにある。1次元および2次元のフォトニック結晶は、従来の多層膜積層技術やフォトリソグラフィ技術などのプレーナ・プロセス技術で作製することができる。しかし、最もフォトニック結晶の特性を発揮すると期待されている3次元のフォトニック結晶を作製するには、現状の半導体プロセス技術では非常に高度な操作が必要である。半導体プロセス技術を用いる場合、3次元フォトニック結晶はプレーナ・プロセスにより作製した2次元周期構造を、材料中の半波長以下のオーダーの精密な位置合せで積層せざるを得ない。このようなプロセスでは量産が困難である。
【0008】
これを打開する技術として、波長オーダーの直径の微粒子を自己組織化により規則的な構造に凝集させる技術がある(非特許文献2を参照)。微粒子としては、ポリスチレンやポリメチルメタクリレートなどの有機物ポリマーなどや、酸化シリコンや酸化チタンなどの酸化物などを用いることができる。近年、微粒子の合成手法が目覚しく発展し、直径のばらつきが極めて小さく均一な大きさのサブμmオーダーの微粒子の合成が可能になったことが、この微粒子自己組織化技術の登場の背景にある。例えば、ポリスチレンでは直径分布の標準偏差が3%以内のものも市販されている。この微粒子の自己組織化技術を用いれば、容易に3次元フォトニック結晶を作製することができる。
【0009】
図18(a)〜(e)は、従来の微粒子の自己組織化技術による3次元フォトニック結晶の作製工程図である。
【0010】
3次元フォトニック結晶を作製するためには、まず図18(a)に示すように、適当な基板2100を用意する。次いで、図18(b)に示すように、微粒子2111を一個ずつばらばらになるように適当な溶液に分散させ、その分散溶液中に基板2100を漬ける。その後、図18(c)〜(e)に示すように、基板2100を溶液中に静置しつつ溶液を蒸発させれば、微粒子2111がお互いの分子間力によって凝集し、3次元の微粒子構造体2121を得ることができる。
【0011】
上述の工程で、基板2100上に微粒子2111が最密充填の六方最密構造(hexagonal close packing:hcp)もしくは面心立方構造(face-centered cubic:fcc)の結晶構造をとって凝集する場合が、自由エネルギーが最低となる。そのため、微粒子2111の分散溶液中では自己組織化的に、微粒子2111からなる3次元フォトニック結晶が基板2100上に形成される。このように、3次元フォトニック結晶が半導体微細プロセスを用いずに容易に形成できる。
【0012】
この自己組織化技術は、微粒子を原子とみた場合、フォトニック結晶の結晶成長を行うものであると見なすことができる。
【非特許文献1】ジョン・D.ジョアノポウロス(John.D.Joannopoulos)/ロバート・D.ミード(Robert.D.Meade)著,「フォトニック結晶 光の流れを型にはめ込む」,コロナ社,2000年 10月
【非特許文献2】G.スブラマニア、K.コンスタント、R.ビスワス、M.シガラス、K.M.ホ(G. Subramania, K. Constant, R. Biswas, M. Sigalas, and K. M. Ho), “Optical Photonic Crystals Synthesized from Colloidal Systems of Polystyrene Spheres and Nanocrystalline Titania “, Journal of Lightwave Technology, Vol. 17 (1999),p.1970
【非特許文献3】R.ビスワス、M.シガラス、G.スブラマニア、K.M.ホ(R.Biswas, M. Sigalas, G. Subramania, and K.M.Ho), “Photonic band gaps in colloidal systems ”, Physical Review B, Vol. 57 (1998), p.3701
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、自己組織化により球状の微粒子を基板上に配列した場合、作製されるフォトニック結晶は基板全面に渡る単一結晶系・単一結晶方位の結晶ではなく、異なる結晶系が異なる結晶方位で集合した多結晶となる。例えば、非特許文献2においては、互いに異なる数十μmオーダーのドメイン(単一結晶系・単一結晶方位の領域)が集合した構造が形成されることが報告されている。
【0014】
図19は、非特許文献2に記載の従来の方法によって作製されたフォトニック結晶を示す模式図である。同図に示すように、従来の方法では、得られる結晶系内に凝集による自由エネルギーの差がない最密充填構造のhcpやfccの結晶が混在することは避けられない。また、凝集エネルギーが低く、本来は形成されにくい体心立方構造(body-centered cubic:bcc)も、従来の方法で得られるフォトニック結晶に混在する。このように、従来の微粒子の自己組織化技術によっては、多結晶のフォトニック結晶しか得られないのが現状である。
【0015】
このようにフォトニック結晶が多結晶になると、フォトニック結晶の機能にも悪影響を及ぼす。光バンド構造は結晶構造によって左右されるため、多結晶のフォトニック結晶では、所望の光学特性が得られない、あるいは特性にバラツキが生じる、などの不具合が生じる。また、多結晶のフォトニック結晶では結晶格子を構成する微粒子の一部が欠損する点欠陥も発生しやすい。これに加えて、異なるドメインの境界には、当然ながら面欠陥が存在する。すなわち、微粒子のフォトニック結晶では多数の欠陥が発生してしまう。
【0016】
このような制御できない欠陥の発生は、フォトニック結晶を用いた素子の特性を劣化させる。フォトニック結晶のPBGにより高反射率ミラーを形成しようとする場合、欠陥によって反射率が低下したり、特定の波長で反射率が0になるような異常が発生する。この異常の原因は、欠陥がPBG内の周波数の光をホッピングによって伝搬させるからである。また、前述のように微小共振器や微小導波路のような素子は所望の位置に欠陥を導入して形成する必要があるので、設計外の異常な欠陥はこれらのフォトニック結晶素子の特性劣化・バラツキを引き起こす。
【0017】
このように、自己組織化による微粒子のフォトニック結晶は半導体微細プロセスに比較して作製が容易ではあるが、結晶性の点で課題が多い。微粒子の自己組織化によるフォトニック結晶作製は、微粒子を原子とみた場合、アモルファス基板上にフォトニック結晶を結晶成長していると見なすことができる。この場合、得られる結晶は当然ながら多結晶で欠陥が多数存在することになる。
【0018】
また、半導体微細プロセスと比較した場合の自己組織化のもう一つの大きな課題は、任意の欠陥が導入できないことにある。このため、欠陥を制御して導入することで作製される微小共振器や微小導波路のような素子を実現することは、現状の微粒子の自己組織化技術では難しかった。すなわち、微粒子の自己組織化による従来のフォトニック結晶作製方法には、結晶制御が困難、欠陥が発生しやすい、任意の欠陥が導入できない、などの課題がある。そのため、自己組織化技術を用いて高機能フォトニック結晶素子を実現することは困難であった。
【0019】
上述の課題に鑑み、本発明は、優れた光学特性を有するフォトニック結晶素子および結晶制御が可能なフォトニック結晶素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の基板は、周期的に第1の孔または第1の凹部が形成されている。
【0021】
この基板を用いれば、第1の孔または第1の凹部に例えば有機物、半導体、あるいは誘電体などからなる微粒子を孔または凹部に従って配置・配向させることができるので、1次元、2次元、あるいは3次元の周期構造を従来よりも確実に形成することが可能になる。そのため、本発明の基板を用いれば、従来よりも優れた光学特性を有するフォトニック結晶を作製することが可能となる。また、基板が光を透過する場合には、基板のうち第1の孔または第1の凹部が形成された部分自身をフォトニック結晶として機能させることができる。
【0022】
本発明の第1の微粒子構造体は、周期的に第1の孔または第1の凹部が形成された基板と、前記第1の孔または第1の凹部に少なくとも1層配置された第1の微粒子とを備えている。
【0023】
この構成により、第1の微粒子が1層のみ配置されている場合には微粒子構造体を1次元または2次元のフォトニック結晶として機能させることができ、第1の微粒子が複数層配置されている場合には、3次元のフォトニック結晶として機能させることができる。
【0024】
本発明の第2の微粒子構造体は、周期的に孔または凹部が形成された基板と、内部に周期的に配置された空洞が形成されると共に、前記基板上に設けられた構造体とを備えている。
【0025】
この構成により、空洞と構造体との間での屈折率の変化が周期的に繰り返されることになるので、特定の波長の光を通過させないフォトニック結晶として機能させることが可能となる。また、この構成によれば、全方向に対するPBGを実現しやすい。
【0026】
本発明の第3の微粒子構造体は、周期的に配列された微粒子を備えている。
【0027】
この構成により、微粒子と外部(空気など)との間の屈折率変化が周期的に繰り返されるので、フォトニック結晶として機能させることができる。
【0028】
本発明の微粒子構造体の製造方法は、周期的に第1の孔または第1の凹部が形成された基板を第1の微粒子を含む液内に置き、前記第1の孔または第1の凹部に前記第1の微粒子を自己組織化によって1層配置する工程(a)を備えている。
【0029】
この方法では基板に設けられた孔によって第1の微粒子の配向および配置が制御できるので、従来よりも結晶欠陥が少ない微粒子構造体を形成することが可能となる。これに加え、自己組織化を利用しているので、本発明の方法を用いれば、複雑な工程を用いる必要がなく、容易にフォトニック結晶として機能する微粒子構造体を低コストで作製することができる。
【0030】
また、孔が形成されない領域を基板に設けることによって、所望の部分以外に欠陥を持たない高性能の光導波路や光共振器を実現することもできる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の微粒子構造体は、微粒子からなる周期構造を有しているので、フォトニック結晶として用いることができる。また、本発明の微粒子構造体の製造方法を用いれば、基板に形成した孔または凹部の配置によって微粒子からなる結晶の構造を制御することができるので、不要な欠陥のない結晶性のよいフォトニック結晶や、任意の欠陥を導入したフォトニック結晶を自己組織化により容易に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面を用いて本発明の各実施形態を具体的に説明する。
【0033】
(第1の実施形態)
図1(a)〜(g)は、本発明の第1の実施形態に係る微粒子構造体(フォトニック結晶素子)の作製工程を示す斜視図である。 まず、図1(a)に示すように、フォトリソグラフィや電子ビームリソグラフィ、多光束干渉リソグラフィなどにより、例えばSiO2ガラス製の基板100に孔101を2次元三角格子状に形成する。この孔101はそれ自体が2次元フォトニック結晶を構成しており、孔101の直径は110nm、近接する孔同士の間隔(周期)は220nmである。孔の深さは例えば100nmである。ただし、孔の深さは100nmより深くても浅くてもよく、凹状になっていればよい。なお、孔101が形成された基板自体がフォトニック結晶であることは必ずしも必要ではない。
【0034】
次に、図1(b)に示すように、基板100を容器に入れてから、図1(c)に示すようにポリメチルメタクリレートの微粒子111を含む水溶液(5wt%)を容器に注ぐ。微粒子111の直径は220nmである。本方法では、基板100に設けた孔101の間隔は、ほぼ微粒子111の直径に等しくなっている。
【0035】
ひき続き基板100を水溶液中に漬浸すると、図1(d)に示すように、基板100の孔101の配列に従って微粒子111からなる単一ドメインの結晶層が自己組織化により形成される。なお、本明細書では1個の微粒子を1個の原子に相当するものとして微粒子構造体の構造の説明を行っている。
【0036】
その後、時間が経つに伴い、水分が蒸発し、図1(e)、図1(f)に示すように、微粒子111による積層が次々と生じる。なお、本明細書中で「自己組織化」とは、微粒子などが自発的に集合して層を形成することを意味するものとする。
【0037】
次に、図1(g)に示すように、容器中の水分を十分に蒸発させることにより3次元構造を有する微粒子構造体121を得ることができる。なお、本工程の後に微粒子構造体121を基板100から取りはずす工程を行ってもよい。この場合、例えば微粒子構造体121の上下をひっくり返して微粒子構造体121を別の支持基板の上に置き、その後に基板100を取り除く。
【0038】
この自己組織化により形成された微粒子構造体121は、3次元フォトニック結晶として機能する。なお、上述の図1(c)〜(f)に示す工程において水溶液の温度やpHなどは特に限定されない。
【0039】
以上の方法で作製された微粒子構造体(すなわち、フォトニック結晶素子)は、図1(g)に示すように、周期的に孔(または凹部)101が形成された基板100と、孔(または凹部)101に少なくとも1層配置されたポリメチルメタクリレートなどからなる微粒子111とを備えている。微粒子111は六方細密構造などの3次元構造を有する微粒子構造体121を構成している。微粒子111の直径は220nmで、基板100に形成された孔101の周期も約220nmである。
【0040】
次に、本実施形態の微粒子構造体の光学特性について説明する。
【0041】
図2(a)〜(c)は、本実施形態に係る微粒子構造体の透過光特性を説明するための図であり、(d)は、本実施形態の微粒子構造体を上から見た場合の平面図である。ここでは、図2(a)に示すように、基板面に対して垂直な方向から入射する光の透過率を測定した。図2(b)は、本実施形態の微粒子構造体での透過スペクトルを示し、図2(c)は、比較のために従来の微粒子構造体での透過スペクトルを示している。ここで、従来の微粒子構造体は、平坦な基板上に微粒子111と同一の微粒子を自己組織化により堆積して作製したものである。
【0042】
図2(b)に示す結果から、本実施形態の微粒子構造体の透過スペクトルでは、波長570nmを中心に低透過率帯(ストップバンド)が明瞭に観測できることが分かる。このストップバンドは、波長570nmを中心とした波長の光がPBGによりフォトニック結晶中の伝搬を禁止され、フォトニック結晶により反射されることにより生じる。このようなストップバンドはフォトニック結晶の結晶性が良好な場合にのみ観察される。このことから、微粒子構造体121のフォトニック結晶は結晶性が良好であることが分かった。図2(d)に示すように、この微粒子構造体をSEMで観察すると、微粒子構造体121は、全面に渡る単一ドメインの単結晶フォトニック結晶であり、欠陥がほとんど存在しないことが分かった。
【0043】
これに対し、図2(c)に示すように、従来の微粒子構造体の透過スペクトルでは、明瞭なストップバンドが観察されなかった。この微粒子構造体をSEMで観察すると、図19に示すように、多結晶のフォトニック結晶で欠陥が多数存在した。ここで、微粒子構造体がストップする波長と基板に形成された孔101の周期との関係は構造によって変化するので一概に言えないが、おおよそλ=a/2N (λ:ストップバンドの中心波長、a:孔101の周期、N:微粒子の屈折率)のようになる。
【0044】
このように、本発明の製造方法を用いれば、基板上に周期的に孔を形成することにより、1層目の微粒子の結晶方位を確実に揃えることができるので、従来よりも欠陥の少ない高品質の3次元フォトニック結晶を容易に得ることができる。
【0045】
上述したように、孔の周期はほぼ微粒子の直径と等しくすることが好ましいが、孔の周期は100nm以上1000nm以下とすることが実用上特に好ましい。なぜなら、この範囲内で孔の周期を適宜設定することによって可視光から光通信に用いる光までを選択的にストップするフォトニック結晶を構成することができるからである。
【0046】
また、本実施形態の例では基板100に三角格子状に孔101を形成したが、これ以外の形で周期的に孔を形成することにより、微粒子構造体121の結晶構造を制御することができる。例えば、後に詳述するように、孔101を正方格子状に形成することによって、微粒子構造体121を体心立方格子とすることもできる。
【0047】
なお、上述の例ではポリメチルメタクリレートからなる微粒子を用いたが、有機物、誘電体、あるいは半導体などを微粒子の材料とすることができる。有機物材料としてはポリメチルメタクリレートの他、ポリスチレンなどのポリマーを、誘電体材料としては酸化シリコンや酸化チタンなどを、半導体材料としてはSi、SiGe、GaAs、GaN、CdS、ZnS、ZnOなどをそれぞれ用いることができる。特に半導体の微粒子を用いると、キャリア注入による発光などの能動機能を微粒子の自己組織化技術により実現することができる。
【0048】
また、基板の材料としては、SiO2ガラスの他にもSi、SiGe、GaAs、GaN、CdS、ZnS、ZnOなどの半導体や、ポリメチルメタクリレートやポリスチレンなどの有機物ポリマーや、誘電体などを用いることができる。
【0049】
なお、本実施形態の方法を含め、これ以後の実施形態に係る方法で形成された微粒子構造体は、基板から分離された場合であっても基板がある場合と同様の機能を発揮できる。
【0050】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、孔101を有する基板100を作製する方法として、フォトリソグラフィや電子ビームリソグラフィ、多光束干渉リソグラフィなど、従来から知られている半導体微細加工プロセス技術を採用した。その他に、ナノプリント技術により第1の実施形態と同様の微細な加工を施した基板を作製することもできる。ナノプリント技術を用いた基板の作製方法を以下に説明する。
【0051】
図3(a)〜(c)は、本発明の第2の実施形態に係る微粒子構造体の作製工程を示す斜視図である。
【0052】
まず、図3(a)に示すように、凸型部を2次元三角格子状に形成したSiC基板であるスタンパー230と平坦な面を有するポリカーボネート基板200とを準備する。ここで、各凸状部は直径100nm、高さが120nmの円柱状であり、隣接する凸状部間の距離(周期)は220nmである。
【0053】
次に、図3(b)に示すように、スタンパー230の凸状部を形成した面をポリカーボネート基板200に押し当てる。この際に、ポリカーボネート基板200をガラス転移点以上の温度(例えば150℃)まで加熱してポリカーボネート基板200を柔らかい状態にしておく。
【0054】
次いで、図3(c)に示すように、スタンパー230をポリカーボネート基板200から離すと、ポリカーボネート基板200に2次元周期的に配置された孔201が転写される。
この孔201は、直径が110nm、周期が220nmであり、深さが100nmである。
【0055】
この方法によれば、スタンパー230を基板200に押し付けるだけで基板に周期構造を形成できるので、数10nmレベルの微細な加工を量産性よく行うことができる。
【0056】
以上のような加工をしたポリカーボネート基板200を微粒子が分散された水溶液中に置いて、第1の実施形態と同様にポリカーボネート基板200上に微粒子を自己組織化させると、結晶性の良好な3次元フォトニック結晶が得られる。
【0057】
このようなナノプリント技術を用いると、孔を有する基板を作製することが非常に容易となる。微粒子の自己組織化も含めた本実施形態の製造方法により、容易に量産性よく高品質の3次元フォトニック結晶を得ることができる。
【0058】
(第3の実施形態)
図4(a)〜(e)は、本発明の第3の実施形態に係る微粒子構造体の作製工程を示す斜視図である。
【0059】
まず、図4(a)に示すように、フォトリソグラフィや電子ビームリソグラフィ、多光束干渉リソグラフィ、ナノプリントなどにより、SiO2ガラスからなる基板300に互いに異なる周期で2次元周期配列された孔301、302を形成する。孔301と孔302とは、基板300の互いに異なる領域内にそれぞれ形成されている。この例では、孔301の直径は120nm、近接する孔301の間隔(周期)は240nmである。一方、孔301の直径は70nmで、近接する孔302の周期は140nmである。そして、孔301、302の深さは共に100nmである。
【0060】
次に、図4(b)、(c)に示すように、基板300を容器に入れ、その容器に2種類の微粒子311、312を分散させた水溶液を入れる。微粒子311、312の材料はいずれもTiO2である。微粒子311は直径が240nmの略球形であり、微粒子312は短径が110nmで長径が220nmの略楕円球形である。水溶液中には例えば微粒子311が2wt%、微粒子312が1wt%含まれている。
【0061】
次に、図4(d)に示すように、図4(c)に示す状態で、基板300を揺動しながら水分の蒸発速度を調整すれば、微粒子311と微粒子312の直径が異なるために、孔301に微粒子311が、孔302に微粒子312が、それぞれ選択的に配列・配置される。また、孔302の直径が微粒子312の短径とほぼ一致するので、微粒子312の孔302への配置は、長径が直立するような配置とすることができる。
【0062】
次いで、図4(e)に示すように、基板300を水溶液中から取り出すと、孔301、孔302に配列されていない微粒子311、微粒子312は基板300から脱離するため、微粒子311、312の単層の微粒子構造体321、322が得られる。この微粒子構造体321、322は互いに異なる光学特性を有する2次元フォトニック結晶として機能する。
【0063】
以上の方法により作製される本実施形態の微粒子構造体(フォトニック結晶素子)は、図4(e)に示すように、互いに異なる周期で周期的に孔301、302がそれぞれ形成された基板300と、孔301に少なくとも1層配置された微粒子311と、孔302に少なくとも1層配置され、微粒子311とサイズ、形状、材質のうち少なくとも1つが異なる微粒子312とを備えている。この例では、微粒子311と微粒子312は共にTiO2で構成されているが、微粒子311は略球形であり、微粒子312は略楕円球形となっている。
【0064】
次に、本実施形態の微粒子構造体の光学特性を説明する。
【0065】
図5(a)〜(c)は、本実施形態の微粒子構造体の透過光特性を説明するための図である。ここでは、図5(a)に示すように、基板面に対して平行な方向でのTm偏光(電界の方向が基板400の主面に垂直な光)およびTE偏光(電解の方向が基板400の主面に平行な光)のそれぞれに対する透過光を測定した。
【0066】
その結果、図5(b)に示す微粒子構造体321の透過スペクトルでは、TM偏光、TE偏光いずれについても波長590nmを中心とするストップバンドが観察された。TM偏光、TE偏光についての透過スペクトルにはほとんど違いが見られなかった。
【0067】
一方、図5(c)に示す微粒子構造体322の透過スペクトルは、偏光によって大きく異なっていた。すなわち、TM偏光についての透過スペクトルでは波長520nmを中心とするストップバンドが見られ、TE偏光についての透過スペクトルでは波長320nmを中心とするストップバンドと波長640nmを中心とするストップバンドとが見られた。波長320nm付近のストップバンドは1次の回折によるPBGの効果であり、波長640nm付近のストップバンドが2次の回折によるPBGの効果である。このように、微粒子311で構成される微粒子構造体322の透過スペクトルがTM偏光とTE偏光とで大きく異なるのは、微粒子構造体322を構成する微粒子311が楕円球体の形状をしており、長径と短径が大きく異なるためである。なお、微粒子構造体322の各透過スペクトルにはいずれも明瞭なストップバンドが見られることから、本実施形態の作製方法によれば、球形以外の形状の微粒子を用いた場合でも均一な結晶からなる微粒子構造体を作製できることが分かる。
【0068】
以上のように、本実施形態の方法を用いれば、光学特性の異なる単結晶のフォトニック結晶を同一基板に同時に且つ容易に形成することができる。図4に示す例では微粒子構造体321、322は共に単層の微粒子から構成されているが、多層の微粒子から構成される微粒子構造体も容易に作製できる。
【0069】
また、以上の説明では微粒子311と微粒子312とを同じ材料で構成したが、異なる材料で構成してもよい。これにより、フォトニック結晶の設計の自由度がさらに大きくなり、高機能のフォトニック結晶を作製することができる。例えば、基板面に対して平行な方向に低屈折率の微粒子層、高屈折率の微粒子層、低屈折率の微粒子層を順に形成すると、屈折率差によって高屈折率の微粒子層に光を閉じ込めることができ、容易に3次元フォトニック結晶の導波路を作製することができる。
【0070】
また、微粒子311と微粒子312とを同じ球状としてサイズのみを変えることもできる。
【0071】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態として、微粒子構造体を強固にする技術について以下説明する。
【0072】
図6(a)〜(d)は、本発明の第4の実施形態に係る微粒子構造体の作製工程を示す図である。
【0073】
まず、図6(a)に示すように、本発明の第1の実施形態に係る方法によりポリスチレンの微粒子401からなる微粒子構造体402を作製する。ここで、微粒子構造体402は、単層の微粒子401で構成されていてもよいし、多層の微粒子401で構成されていてもよい。図6(b)は、本工程で作製された微粒子構造体402の拡大図であるが、同図に示すように、微粒子401同士は分子間力で凝集しているため、隣接する微粒子401同士は接触部403で接している。
【0074】
次に、図6(c)に示すように、微粒子構造体402と基板とを70℃にしたホットプレート404により5分間加熱する。図6(d)は、加熱後の微粒子構造体402の拡大図であるが、同図に示すように、ポリスチレンの軟化点は80〜100℃であるため、微粒子401の全体的な形状は保たれつつ、隣接する微粒子401との接触部403が融解し融着部413が生じる。この結果、加熱前は微粒子間の分子間力によって凝集することで形成された微粒子構造体402の物理的な強度が向上する。例えば、微粒子401間に融着部413を形成した微粒子構造体402に50Wの超音波を印加しても、微粒子構造体402は結晶構造を維持できるようになる。一方、加熱していない微粒子構造体402に50Wの超音波を印加すると、微粒子構造体402が崩壊し一部の微粒子が欠損する欠陥が生じた。
【0075】
このように、本実施形態に係る技術を用いると、自己組織化により形成した結晶性の良好な微粒子構造の強度を向上することができる。そのため、本実施形態の方法によれば、欠陥の少ない微粒子構造体を形成することができる。
【0076】
なお、微粒子の材料はポリスチレン以外の有機物ポリマーであってもよい。この場合も微粒子の構成材料の軟化点より少し低い温度で微粒子同士を融着させることができるが、有機物ポリマーの軟化点は比較的低いので、簡便に微粒子構造体の強度を向上させることができる。微粒子の材料がSiなどの半導体やSiO2などの誘電体であってもよいが、その場合には構成材料の融点より少し低い温度を微粒子構造体に加えればよい。ただし、誘電体や半導体の融点は高温であるので、微粒子の材料は有機物であることがより好ましい。
【0077】
なお、以上の説明では微粒子構造体が1層の微粒子で構成されている例を示したが、微粒子構造体が多層の微粒子で構成される場合にも本実施形態は適用できる。
【0078】
(第5の実施形態)
図7(a)〜(e)は、本発明の第5の実施形態に係る微粒子構造体の作製工程を示す斜視図であり、図8は、本実施形態の微粒子構造体の基板面に対して垂直な断面を示す断面図である。以下、本実施形態の微粒子構造体の作製工程を説明する。
【0079】
まず、図7(a)に示すように、本発明の第1の実施形態に係る方法によりポリメチルメタクリレートの微粒子501からなる微粒子構造体502を準備する。
【0080】
次に、図7(b)に示すように、基板上に形成した微粒子構造体502を、金属アルコキシド503の溶液に漬ける。本実施形態では金属アルコキシド503の溶液として、TiアルコキシドであるTi(O−i−C374の溶液を用いる。本工程で、溶液の温度は特に限定されないので、例えば室温程度とする。
【0081】
その後、図7(c)に示すように、微粒子構造体502を金属アルコキシド503の溶液より取り出し乾燥させると、微粒子構造体502の隙間に金属アルコキシド503が充填された充填構造体504が得られる。
【0082】
次いで、図7(d)に示すように、この充填構造体504をオーブン505中に置き、500℃で焼成する。すると、図7(e)に示すように、金属アルコキシド503が金属酸化物である酸化チタン513に変化し、金属酸化物構造体514が形成される。金属酸化物構造体514においては、焼成により微粒子が消失するため、焼結前に微粒子501が占めていた空間は空洞511となる。
【0083】
また、図8に示すように、金属酸化物構造体514は、空洞511が3次元周期的に形成された酸化チタン513で構成されるフォトニック結晶が形成されていることが分かる。すなわち、本実施形態の金属酸化物構造体(フォトニック結晶素子)は、周期的に孔または凹部が形成された基板と、内部に周期的に配置された空洞が形成され、且つ、前記基板上に設けられた金属酸化物構造体514とを備えている。
【0084】
このフォトニック結晶は3次元のいわゆる「逆オパール構造」を有しており、酸化チタン(屈折率=2)と空洞(屈折率=1)との屈折率差が大きいため、全方位の入射角に対してPBGが形成される(非特許文献3を参照)。
【0085】
図9(a)、(b)は、本実施形態の金属酸化物構造体(微粒子構造体)514の透過スペクトルを示す図である。図9(b)に示す透過スペクトルでは、図9(a)に示すように、基板面に垂直な方向に対して入射光が成す角を入射角θとしている。
【0086】
図9(b)に示す結果から、本実施形態の金属酸化物構造体514の、いずれの方位からの入射光に対する透過スペクトルにおいても、PBGによるストップバンドが波長560nm付近に観測されることが分かる。
【0087】
微粒子の隙間を金属酸化物で充填した構造は従来から作製されてきたが、微粒子構造体に多数の欠陥が発生するため、全方位からの光に対するPBGは観測されていなかった。
本実施形態の作製方法を用いれば、自己組織化を基本として、いずれの方位からの光に対しても明確なPBGを有する高品質の3次元フォトニック結晶を容易に形成することができる。
【0088】
(第6の実施形態)
微粒子構造体の結晶構造を制御する方法として、本発明の第6の実施形態に係る微粒子構造体の作製方法を以下に記す。
【0089】
図10(a)、(b)は、本発明の第6の実施形態に係る微粒子構造体の作製工程を示す斜視図であり、図11は、本実施形態の微粒子構造体の結晶構造を示す図である。
【0090】
まず、図10(a)に示すように、フォトリソグラフィや電子ビームリソグラフィ、ナノプリントリソグラフィなどにより、SiO2ガラスからなる基板600に孔601を2次元正方格子状に形成する。基板600のうち孔601が形成された部分は、それ自体で2次元フォトニック結晶を構成している。孔601の直径は110nm、孔601の周期は220nmである。孔601の深さは例えば50nmである。その後、SiO2からなる微粒子611を分散させた液中に基板600を置く。ここで、微粒子の直径は、例えば220nmとする。
【0091】
その状態で基板600を液中に置くことにより、図10(b)に示すように、基板600上に微粒子611を自己組織化により凝集させる。これにより、微粒子611が3次元周期的に凝集し、微粒子構造体612が形成される。
【0092】
以上の方法で得られた微粒子構造体612を電子顕微鏡や微粒子構造体による光の回折を解析した結果、図11に示すように微粒子構造体612は、hcpやfccなどがほとんど混入しないbccのフォトニック結晶であることが分かった。また、微粒子構造体612は、基板600のほぼ全面に渡り単一結晶方位で形成された単一ドメインであることが分かった。
【0093】
従来の微粒子の自己組織化技術を用いた場合、作製された微粒子構造体は自由エネルギーの最も小さい最密充填構造(hcpやfcc)を取りやすいが、bccなども混じる多結晶であり、結晶方位がランダムなマルチ・ドメインのフォトニック結晶となる。それに対して、本実施形態の技術を用いることにより、通常は得ることが困難なbccのフォトニック結晶を単結晶且つ単一ドメインで得ることができる。従って、本実施形態の方法を用いれば、従来に比べ良好な光学特性を有するフォトニック結晶を実現することができる。
【0094】
(第7の実施形態)
微粒子の積層を制御性良く行う方法として、本発明の第7の実施に係る微粒子構造体の作製方法を以下に説明する。
【0095】
図12(a)〜(g)は、本発明の第7の実施形態に係る微粒子構造体の作製工程を示す斜視図である。
【0096】
まず、図12(a)に示すように、Siからなる基板700に孔701を2次元正方格子状に形成する。基板700のうち孔701が形成された部分は、それ自体が2次元フォトニック結晶を構成している。孔701の直径は110nm、孔701の周期は220nmである。孔701の深さは100nmである。この基板700をポリスチレンからなる第1の微粒子711を濃度1wt%で分散させた水溶液に漬ける。この際、基板700は正に帯電させ、第1の微粒子711は負に帯電させる。水溶液の温度は室温とし、水溶液のpHは第1の微粒子711が帯電できる範囲内とする。
【0097】
このような手順により、図12(b)に示すように、第1の微粒子711を第1の実施形態の方法よりもより高速に孔701に配置させることができる。すなわち、結晶欠陥を生じることなく第1の微粒子711の単層を、第1の実施形態に比べて高速に形成することができる。本実施形態の方法によって第1の微粒子711を高速に配置できる理由は、分子間力によって微粒子を基板上に付着させる方法に比べて、より強い力である静電力を用いるためである。
【0098】
さらに、本工程では、第1の微粒子711同士は共に負に帯電しているため静電力によって反発し合うので、第1の微粒子711が孔701の正方格子配列ではない最密充填の三角格子配列で凝集することが防がれている。このため、第1の微粒子711の単層には欠陥が生じにくくなっている。また、静電力による反発は、第1の微粒子711の単層上に第1の微粒子711がさらに積層することも防ぐ。
【0099】
次に、図12(c)に示すように、基板側を負に帯電させ、ポリスチレンからなる第2の微粒子721を正に帯電させる。なお、第1の微粒子711と第2の微粒子721とは帯電が異なるだけで同一の材料からなる微粒子である。本工程では、微粒子の帯電状態が前工程と異なるので、第1の微粒子711を含む液から第2の微粒子721を含む液へと基板を移して行う。これにより、図12(d)に示すように、第2の微粒子721の単層が、欠陥を生じることなく高速に形成される。その後、図12(e)、図12(f)に示すように基板700および微粒子の帯電の方向を変化させることにより、第1の微粒子711と第2の微粒子721とを単層ずつ交互に積層できる。
【0100】
その後、図12(g)に示すように、水分を蒸発させると、ポリスチレンの微粒子が体心立方格子状に配置された微粒子構造体731が得られる。
【0101】
以上で説明した本実施形態の方法によれば、微粒子構造体731を所望の積層数の微粒子で構成することが可能になる。また、静電力の引力と反発力を利用して第1の微粒子711と第2の微粒子721を堆積させているため、基板700を揺動しながら図12(a)〜(f)に示す自己組織化工程を行うと、基板700に孔701を形成していない領域には、微粒子の堆積を防ぐことができる。
【0102】
従来の方法で微粒子構造体の結晶性を向上させるためには、微粒子の濃度を薄くして水分の蒸発を遅くし、低速で微粒子を凝集させる必要があった。すなわち、結晶成長の速度をできる限り遅くしなければならなかった。
【0103】
これに対し、本実施形態の方法では、単層ごとの結晶成長を高速で行うことができ、しかも欠陥の無い単結晶を得ることができる。また、従来の方法では積層数の制御を微粒子の濃度や水溶液の量などで行っていたため制御が難しかった。これに対し、本実施形態の方法では、単層ごとに結晶成長できるため、微粒子構造体の積層数を自由に制御することができる。
【0104】
なお、以上の説明では体心立方格子状の微粒子構造体を作製する方法を説明したが、基板700に形成する孔701の周期や配置を調節することによって体心立方格子ではなく面心立方格子を形成することも可能である。
【0105】
(第8の実施形態)
微粒子の積層を制御性良く行う別の方法として、本発明の第8の実施形態に係る微粒子構造体の作製方法を以下に説明する。
【0106】
図13(a)〜(e)は、本発明の第8の実施形態に係る微粒子構造体の作製工程を示す斜視図である。
【0107】
まず、図13(a)に示すように、SiO2ガラスからなる基板800に孔801を2次元正方格子状に形成する。基板800のうち孔801が形成された部分は、それ自体が2次元フォトニック結晶を構成している。孔801の直径は110nm、孔801の周期は220nmとする。また、孔801の深さは50nmとする。次に、この基板800をSiO2の第1の微粒子811を濃度5wt%で分散させた水溶液に漬ける。ここで、基板800に形成された孔801の内部はアミノ基(-NH2)で、第1の微粒子811の表面はカルボキシル基(-COOH)で、それぞれ予め化学反応により修飾されている。水溶液は40℃に保ちつつ、基板800には微弱な出力(5W程度)の超音波を印加している。水溶液のpHは、アミノ基とカルボキシル基とが反応できる範囲であればよく、例えばpH7とするのが好ましい。
【0108】
このような方法によれば、アミノ基とカルボキシル基が化学結合しアミド結合を生じるため、第1の微粒子811の孔801への付着(結合)が促進される。また、この付着は化学結合によるため付着力が強く、基板800を揺動させた状態でも付着が生じる。一方、基板800の主面のうちアミノ基で修飾していない部分への第1の微粒子811の付着は分子間力によるため付着力が弱い。そのため、基板800に超音波を印加している状態では、第1の微粒子811は基板800のうち孔801以外の部分には付着しない。また、第1の微粒子811どうしは同じ官能基であるため化学結合を生じることがない。これに加え、超音波を印加している状態では、第1の微粒子811の凝集が防がれている。
【0109】
以上のような手順により、図13(b)に示すように、孔801と同一パターンである立方結晶格子以外の最密充填構造は発生せず、基板800上に第1の微粒子811の単層を形成することができる。
【0110】
次に、図13(c)に示すように、第1の微粒子811の単層が形成された基板800を水で軽く濯いだ後に、第1の微粒子811の単層が形成された基板800を、SiO2の第2の微粒子821を濃度5wt%で分散させた水溶液(図13(a)に示す工程で用いた水溶液とは別の水溶液)に漬ける。本工程においても、水溶液は40℃に保ちつつ、基板800には出力5Wの超音波を印加する。ここで、第2の微粒子821の表面は、予めアミノ基で修飾しておく。これにより、第1の微粒子811と第2の微粒子821の間に強い結合力が働いてアミド結合が生じる。これに対し、第2の微粒子821間、あるいは第2の微粒子821と基板800との間に働くのは分子間力だけである。そのため、図13(d)に示すように、第1の微粒子811の単層の上にのみ、第2の微粒子821の単層が欠陥を生じることなく形成されることになる。
【0111】
その後、図13(a)に示す工程と同様の条件で第1の微粒子811を第2の微粒子821からなる層の上に1層分配置する工程と、図13(c)に示す工程と同じ条件で第2の微粒子821を第1の微粒子811からなる層の上に1層分配置する工程とを交互に繰り返す。この方法により、欠陥を生じさせることなく微粒子を単層ずつ積層することができる。その結果、図13(e)に示すように、結晶欠陥がなく、積層数が制御された微粒子構造体831を得ることができる。
【0112】
以上の方法により作製される本実施形態の微粒子構造体(フォトニック結晶素子)は、周期的に孔801が形成された基板800と、基板800の主面上に設けられ、第1の微粒子811の層と第2の微粒子821の層とが交互に積層された微粒子構造体831とを備えている。第1の微粒子811、第2の微粒子821および孔801は共に官能基によって修飾される。そして、孔801の修飾基と第1の微粒子811の修飾基とは化学結合している。これと同様に、微粒子構造体831中の第1の微粒子811の修飾基と第2の微粒子821の修飾基とは化学結合している。第1の微粒子811と第2の微粒子821とは同一の材料で構成され、微粒子構造体831中での両微粒子の配向も同一となっている。
【0113】
以上のように、本実施形態の方法を用いることで、第7の実施形態に係る方法と同様に、単結晶の3次元フォトニック結晶が制御性よく形成できる。また、本実施形態の方法は、微粒子の自己組織化を利用した方法であるので、3次元フォトニック結晶を容易に得ることができる。
【0114】
なお、本実施例ではアミノ基とカルボキシル基の化学結合(アミド結合)を用いたが、カルボキシル基とヒドロキシル基(-OH)との間のエステル結合などの、その他の官能基間の化学結合、さらには水素結合を用いてもよい。
【0115】
また、第1の微粒子811を修飾する官能基と第2の微粒子821を修飾する官能基とが結合可能であれば、第1の微粒子811と第2の微粒子821とを互いに屈折率の異なる材料で構成してもよい。この場合、微粒子のサイズを揃えれば、単一材料の微粒子で微粒子構造体を構成する場合とは異なる光学特性を持たせることができる。
【0116】
(第9の実施形態)
次に、本発明の第9の実施形態として、微粒子の自己組織化によって形成した微粒子構造体に、任意の欠陥を導入する技術について述べる。
【0117】
図14(a)、(b)は、本発明の第9の実施形態に係る微粒子構造体の作製工程を示す斜視図であり、図15は、本実施形態の微粒子構造体を上からみた場合の平面図である。
【0118】
まず、図14(a)に示すように、(0001)面を主面とするGaN化合物半導体の単結晶ウェハである基板900に、孔901を2次元三角格子状に形成する。基板900のうち、孔901が形成された部分は、2次元フォトニック結晶を構成している。孔901の直径は60nm、孔901の周期は120nmであり、孔901の深さは20nmである。ただし、この基板900の主面には、孔901が形成された領域に囲まれた、孔901が形成されていない欠陥領域903が予め設けられている。図14(a)に示す例では、基板900主面に形成された2次元フォトニック結晶の中心に欠陥領域903が設けられている。
【0119】
次に、この基板900をZnOなどの酸化物半導体からなる微粒子911を濃度1wt%で分散させた水溶液に漬ける。上述の第7の実施形態の方法と同様に、静電力と基板の揺動とを利用して、微粒子911を基板900のうち孔901を形成した部分のみに積層させていく。微粒子911を例えば12層堆積させた後に、水溶液から基板900を取り出すと、図14(b)に示すような筒状の微粒子構造体921を得ることができる。
【0120】
図14(b)および図15に示すように、本実施形態の微粒子構造体は、周期的に孔901が形成されると共に、孔901に囲まれた欠陥領域903が形成された基板900と、孔901に少なくとも1層配置された微粒子911とで構成される微粒子構造体921とを備えている。微粒子構造体921の中心部には、欠陥領域903が形成されている。
【0121】
本実施形態の方法により、欠陥領域903を有する3次元のフォトニック結晶がZnOなどの酸化物半導体からなる微粒子911を用いて実現できる。本実施形態の方法によって作製されたフォトニック結晶では、予め設けた欠陥領域903以外の部分には不要な欠陥が発生せず、また欠陥領域903に微粒子911が付着することもない。従って、本実施形態の方法を用いれば、高品質の3次元フォトニック結晶を形成できる。このようにして作製された3次元フォトニック結晶は、光を欠陥領域903内に捉えたり、光を発振させることが可能な高性能の微小共振器として機能させることができる。
【0122】
例えば、微粒子構造体921をN2レーザ(波長337nm)でパルス励起すると、室温において波長400nmで発振した。この発振波長は理論計算により得られる微小共振器の共振波長とほぼ一致した。
【0123】
また、光励起状態で発振前の微粒子構造体921のニア・フィールド・パターンにより光分布を観察すると、光が欠陥領域903に閉じ込められていた。このように、作製した微粒子構造体921が微小共振器として機能していることが確認できた。
【0124】
このように、微粒子の自己組織化を用いた本実施形態の方法を用いれば、3次元フォトニック結晶の微小共振器を容易に作成することができる。
【0125】
また、本実施形態の方法によれば、基板900上の欠陥領域903の大きさや形状を任意に変えることで容易に欠陥領域903の大きさや形状が異なる微粒子構造体921を作製することができ、光学特性の異なる微小共振器を容易に作製することが可能となる。
【0126】
なお、本実施形態の方法において、微粒子911が親水性である場合には基板900の欠陥領域903に疎水性処理を施し、微粒子911が疎水性である場合には基板900の欠陥領域903に親水性処理を施してもよい。この方法を用いれば、基板900の欠陥領域903上に微粒子911が配置されることをより確実に防ぐことができ、微粒子構造体921の形成中に基板900の揺動を行う必要がなくなり、より容易に微粒子構造体921を作製することが可能となる。なお、この方法を微小導波路の作製に利用することもできる。
【0127】
(第10の実施形態)
次に、本発明の第10の実施形態として、微粒子の自己組織化を利用して微小導波路が設けられた微粒子構造体を作製する技術について説明する。
【0128】
図16(a)〜(f)は、本発明の第10の実施形態に係る微粒子構造体の作製工程を示す斜視図であり、図17は、本実施形態の微粒子構造体を上からみた場合の平面図である。
【0129】
まず、図16(a)に示すように、SiO2ガラスからなる基板1000に孔1001を2次元三角格子状に形成する。基板1000のうち孔1001が形成された部分は2次元フォトニック結晶を構成している。孔1001の直径は110nm、孔1001の周期は220nmであり、孔1001の深さは50nmである。ただし、この2次元フォトニック結晶には孔1001を一列だけ形成していない線欠陥1003を予め設ける。すなわち、基板1000の主面上には、孔1001が形成された領域に挟まれた、幅約110nmの線欠陥1003が形成されている。
【0130】
次に、図16(b)に示すように、この基板1000上に前述の第8の実施形態と同様に化学結合と超音波を利用して、SiO2の第1の微粒子1011の層を3層形成する。その後、図16(c)〜(d)に示す工程では、図16(b)に示す工程と同様に化学結合を利用してポリスチレンの第2の微粒子1012を3層形成する。続いて、図16(e)〜(f)に示すように、再度SiO2の第1の微粒子1011の層を3層形成する。
【0131】
以上の方法により作製される微粒子構造体1021は、線欠陥1003を有する3次元のフォトニック結晶である。
【0132】
すなわち、図16(f)および図17に示す本実施形態の微粒子構造体(フォトニック結晶素子)は、周期的に孔(または凹部)1001が形成された基板1000と、孔1001に少なくとも1層配置された第1の微粒子1011とを備え、基板1000には孔1001が形成された領域に挟まれた、孔が形成されない線欠陥領域が形成されており、基板1000上に配置された第1の微粒子1011は、線欠陥領域の上方に形成された線欠陥1003を有するフォトニック結晶を構成する。特に、本実施形態の例において、基板1000上に形成された微粒子構造体1021は、下(基板側)から順に第1の微粒子1011を3層、第2の微粒子1012を3層、第1の微粒子1011を3層積層したものである。ここで、第1の微粒子1011の屈折率は第2の微粒子1012の屈折率より大きくなっている。
【0133】
本実施形態の方法によって作製されたフォトニック結晶(微粒子構造体1021)は、予め設けた線欠陥1003以外には不要な欠陥は発生せず、また、線欠陥1003には第1の微粒子1011、第2の微粒子1012が付着することもない。従って、本実施形態の微粒子構造体は、設計通りの光学特性を発揮する高品質の3次元のフォトニック結晶となっている。
【0134】
本実施形態の微粒子構造体においては、線欠陥1003を挟む3次元フォトニック結晶が基板面に平行で、且つ線欠陥1003を通る方向(以下、「面内方向」と称する)に対してPBGを有する高反射率のミラーとして機能する。従って、光は線欠陥1003に面内方向に関して閉じ込められる。また、ポリスチレンの第2の微粒子1012の屈折率1.6はSiO2の第1の微粒子1011の屈折率1.5よりも高いため、積層方向(基板面に対して垂直な方向)において、光はポリスチレンの第2の微粒子1012の層に閉じ込められる。これはポリスチレンの第2の微粒子1012の層がコア層として、コア層を挟むSiO2の第1の微粒子1011の層がクラッド層として機能することを意味する。すなわち、本実施形態の方法により、光損失の少ない3次元フォトニック結晶による微小導波路が得られる。
【0135】
この微小導波路での光の伝搬を調べたところ、波長550nmの光が導波することが確認できた。導波光のニア・フィールド・パターンを観察すると、光が線欠陥1003内のSiO2層のコア層に閉じ込められていることが分かった。
【0136】
このように本実施形態の方法を用いると、3次元フォトニック結晶による微小導波路が微粒子の自己組織化により容易に得られる。また、基板上に形成する線欠陥のパターンを変えることで、導波路の形状を変えることも可能である。
【0137】
また、第1の微粒子1011および第2の微粒子1012の材料の組み合わせを変えることで導波できる光の波長を変えることができる。さらに、線欠陥領域の幅を変えることによっても導波できる光の波長を変えることができる。このように、本実施形態の方法を用いれば、所望の波長の光を導波する導波路を作製することができる。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の微粒子構造体は、2次元または3次元のフォトニック結晶として機能できるので、光デバイスや高反射率のミラーを有するレーザなどの光学素子、あるいは光集積半導体装置、およびこれらを応用した機器に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】(a)〜(g)は、本発明の第1の実施形態に係る微粒子構造体(フォトニック結晶素子)の作製工程を示す斜視図である。
【図2】(a)〜(c)は、第1の実施形態に係る微粒子構造体の透過光特性を説明するための図である。
【図3】(a)〜(c)は、本発明の第2の実施形態に係る微粒子構造体の作製工程を示す斜視図である。
【図4】(a)〜(e)は、本発明の第3の実施形態に係る微粒子構造体の作製工程を示す斜視図である。
【図5】(a)〜(c)は、第3の実施形態の微粒子構造体の透過光特性を説明するための図である。
【図6】(a)〜(d)は、本発明の第4の実施形態に係る微粒子構造体の作製工程を示す図である。
【図7】(a)〜(e)は、本発明の第5の実施形態に係る微粒子構造体の作製工程を示す斜視図である。
【図8】第5の実施形態に係る微粒子構造体の基板面に対して垂直な断面を示す断面図である。
【図9】(a)、(b)は、第5の実施形態に係る金属酸化物構造体の透過スペクトルを示す図である。
【図10】(a)、(b)は、本発明の第6の実施形態に係る微粒子構造体の作製工程を示す斜視図である。
【図11】第6の実施形態に微粒子構造体の単位格子構造を示す図である。
【図12】(a)〜(g)は、本発明の第7の実施形態に係る微粒子構造体の作製工程を示す斜視図である。
【図13】(a)〜(e)は、本発明の第8の実施形態に係る微粒子構造体の作製工程を示す斜視図である。
【図14】(a)、(b)は、本発明の第9の実施形態に係る微粒子構造体の作製工程を示す斜視図である。
【図15】第9の実施形態に係る微粒子構造体を上からみた場合の平面図である。
【図16】(a)〜(f)は、本発明の第10の実施形態に係る微粒子構造体の作製工程を示す斜視図である。
【図17】第10の実施形態に係る微粒子構造体を上からみた場合の平面図である。
【図18】(a)〜(e)は、従来の微粒子の自己組織化技術による3次元フォトニック結晶の作製工程図である。
【図19】従来の方法によって作製されたフォトニック結晶を示す模式図である。
【符号の説明】
【0140】
100,200,300,400,600,700,800 基板
101,201,301,302,601,701,801 孔
111,311,312,401,501,611 微粒子
121,321,322,402,502,612,731 微粒子構造体
200 ポリカーボネート基板
230 スタンパー
403 接触部
404 ホットプレート
413 融着部
503 金属アルコキシド
504 充填構造体
505 オーブン
511 空洞
513 酸化チタン
514 金属酸化物構造体
711,811,1011 第1の微粒子
721,821,1012 第2の微粒子
831,921,1021 微粒子構造体
900,1000 基板
901,1001 孔
903 欠陥領域
911 微粒子
1003 線欠陥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的に第1の孔または第1の凹部が形成された基板。
【請求項2】
前記基板には、前記第1の孔または第1の凹部が2次元周期的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の基板。
【請求項3】
前記第1の孔または第1の凹部の周期は100nm以上1000nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の基板。
【請求項4】
前記基板には、前記第1の孔または第1の凹部とは異なる周期で周期的に配置された第2の孔または第2の凹部がさらに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の基板。
【請求項5】
前記基板のうち前記第1の孔または第1の凹部の内壁は官能基で修飾されていることを特徴とする請求項1に記載の基板。
【請求項6】
周期的に第1の孔または第1の凹部が形成された基板と、
前記第1の孔または第1の凹部に少なくとも1層配置された第1の微粒子とを備えている微粒子構造体。
【請求項7】
前記第1の微粒子は前記基板上に多数層配置され、且つ、フォトニック結晶を構成していることを特徴とする請求項6に記載の微粒子構造体。
【請求項8】
前記基板には、前記第1の孔または第1の凹部が2次元正方格子状に形成されており、
前記第1の微粒子は前記基板上に体心立方格子を構成するよう配置されていることを特徴とする請求項7に記載の微粒子構造体。
【請求項9】
前記基板には、前記第1の孔または第1の凹部が三角格子状に形成されており、
前記第1の微粒子は前記基板上に六方最密構造を構成するよう配置されていることを特徴とする請求項7に記載の微粒子構造体。
【請求項10】
前記第1の微粒子は前記基板上に面心立方格子を構成するよう配置されていることを特徴とする請求項7に記載の微粒子構造体。
【請求項11】
前記基板には、前記第1の孔または第1の凹部が2次元正方格子状または三角格子状に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の微粒子構造体。
【請求項12】
前記第1の孔または第1の凹部の周期は100nm以上1000nm以下であることを特徴とする請求項6に記載の微粒子構造体。
【請求項13】
前記第1の微粒子は、有機物、誘電体、または半導体のいずれかで構成されていることを特徴とする請求項6に記載の微粒子構造体。
【請求項14】
隣接する前記第1の微粒子同士は互いに接触しており、
前記第1の微粒子同士の接触部は融着されていることを特徴とする請求項6に記載の微粒子構造体。
【請求項15】
前記第1の微粒子間の隙間は前記第1の微粒子とは屈折率の異なる物質で充填されていることを特徴とする請求項6に記載の微粒子構造体。
【請求項16】
前記基板には前記第1の孔または第1の凹部で囲まれた、前記第1の孔または第1の凹部が形成されない点欠陥領域が形成されており、
前記基板上に配置された前記第1の微粒子は、前記点欠陥領域上に形成された点欠陥を有するフォトニック結晶を構成することを特徴とする請求項6に記載の微粒子構造体。
【請求項17】
前記基板には前記第1の孔または第1の凹部が形成された領域に挟まれた、前記第1の孔または第1の凹部が形成されない線欠陥領域が形成されており、
前記基板上に配置された前記第1の微粒子は、前記線欠陥領域の上方に形成された線欠陥を有するフォトニック結晶を構成することを特徴とする請求項6に記載の微粒子構造体。
【請求項18】
前記基板の上配置された前記第1の微粒子の上に層状に配置され、前記第1の微粒子よりも屈折率が低い第2の微粒子をさらに備え、
層状に配置された前記第2の微粒子の上には前記第1の微粒子が層状に配置されていることを特徴とする請求項17に記載の微粒子構造体。
【請求項19】
前記第1の微粒子の上に層状に配置された第3の微粒子をさらに備え、
前記基板のうち前記第1の孔または第1の凹部が形成された部分、前記第1の微粒子、および前記第3の微粒子は、第1の官能基、第2の官能基、第3の官能基でそれぞれ修飾されており、
前記基板のうち前記第1の孔または第1の凹部が形成された部分を修飾する官能基と前記第1の孔または第1の凹部に配置された前記第1の微粒子を修飾する官能基とは化学結合しており、
前記第1の微粒子を修飾する官能基と前記第1の微粒子の上に配置された前記第2の微粒子を修飾する官能基とは化学結合していることを特徴とする請求項6に記載の微粒子構造体。
【請求項20】
前記基板には、前記第1の孔または第1の凹部とは異なる周期で周期的に配置された第2の孔または第2の凹部がさらに形成されており、
前記微粒子構造体は、前記第2の孔または第2の凹部に少なくとも1層配置され、前記第1の微粒子とサイズ、形状、材質のうち少なくとも1つが異なる第4の微粒子をさらに備えていることを特徴とする請求項6に記載の微粒子構造体。
【請求項21】
周期的に孔または凹部が形成された基板と、
内部に周期的に配置された空洞が形成されると共に、前記基板上に設けられた構造体とを備えている微粒子構造体。
【請求項22】
前記構造体は、有機物、金属酸化物、誘電体および半導体のうちいずれか1つから構成されていることを特徴とする請求項21に記載の微粒子構造体。
【請求項23】
周期的に配列された微粒子を備えている微粒子構造体。
【請求項24】
前記微粒子は体心立方格子または六方最密構造を構成していることを特徴とする請求項23に記載の微粒子構造体。
【請求項25】
隣接する前記微粒子同士は、融着部を介して互いに接着していることを特徴とする請求項23に記載の微粒子構造体。
【請求項26】
周期的に第1の孔または第1の凹部が形成された基板を第1の微粒子を含む液内に置き、前記第1の孔または第1の凹部に前記第1の微粒子を自己組織化によって1層配置する工程(a)を備えている微粒子構造体の製造方法。
【請求項27】
前記工程(a)に続いて、前記液中で前記基板上に配置された前記第1の微粒子の上にさらに前記第1の微粒子を積層し、3次元の周期構造を形成するステップ(b)をさらに備えていることを特徴とする請求項26に記載の微粒子構造体の製造方法。
【請求項28】
前記ステップ(a)の前に、ナノプリントを用いたリソグラフィにより前記基板に前記第1の孔または第1の凹部を形成する工程をさらに備えていることを特徴とする請求項26に記載の微粒子構造体の製造方法。
【請求項29】
前記工程(a)において、前記基板には前記第1の孔または第1の凹部とは異なる周期で周期的に配置された第2の孔または第2の凹部がさらに形成されており、前記液には第1の微粒子とサイズ、形状、材質のうち少なくとも1つが異なる第2の微粒子がさらに含まれており、
前記工程(a)は、前記第2の孔または第2の凹部に前記第2の微粒子を自己組織化によって1層配置する工程(a1)を含んでいることを特徴とする請求項26に記載の微粒子構造体の製造方法。
【請求項30】
前記工程(a)の後、前記基板を前記液から取り出して加熱し、隣接する前記第1の微粒子同士を融着させる工程(c)をさらに備えていることを特徴とする請求項26に記載の微粒子構造体の製造方法。
【請求項31】
前記工程(a)の後、前記基板上に配置した前記第1の微粒子の隙間を、有機物、有機金属化合物、誘電体および半導体のいずれか1つであって、前記第1の微粒子の構成材料とは異なる材料で充填する工程(d)をさらに備えていることを特徴とする請求項26に記載の微粒子構造体の製造方法。
【請求項32】
前記工程(d)の後に、前記基板を加熱して前記第1の微粒子を気化または燃焼させて周期的に空洞が形成された構造体を前記基板上に形成する工程(e)をさらに備えていることを特徴とする請求項31に記載の微粒子構造体の製造方法。
【請求項33】
前記工程(a)では、前記基板を第1の極性に帯電させ、前記第1の微粒子を第2の極性に帯電させることを特徴とする請求項26に記載の微粒子構造体の製造方法。
【請求項34】
前記工程(b)では、前記基板に第2の極性を与え、前記第1の微粒子に第1の極性を与えることで、前記基板上に配置した第1の微粒子の上に層状に前記第1の微粒子を配置する工程(b1)を含んでいることを特徴とする請求項27に記載の微粒子構造体の製造方法。
【請求項35】
前記工程(a)では、前記基板を揺動しながら前記第1の微粒子を前記第1の孔または第1の凹部に配置することを特徴とする請求項26に記載の微粒子構造体の製造方法。
【請求項36】
前記工程(a)では、前記基板に超音波を印加しながら前記第1の微粒子を前記第1の孔または第1の凹部に配置することを特徴とする請求項26に記載の微粒子構造体の製造方法。
【請求項37】
前記工程(a)において、前記基板のうち前記第1の孔または凹部が形成された部分は第1の官能基で修飾され、且つ、前記第1の微粒子は前記第1の官能基と結合可能な第2の官能基で修飾されており、
前記工程(a)の後、前記基板を前記第2の官能基と結合可能な第3の官能基で修飾された第3の微粒子を含む液中に置き、前記第1の孔または第1の凹部に配置された前記第1の微粒子の上に前記第3の微粒子を層状に配置する工程(d)をさらに備えていることを特徴とする請求項26に記載の微粒子構造体の製造方法。
【請求項38】
前記工程(a)の後に、前記基板を前記第1の微粒子とは形状、サイズ、材料のうち少なくとも1つが異なる第4の微粒子を含む液中に置き、前記第1の微粒子の上に前記第4の微粒子を層状に配置する工程(e)とをさらに備えていることを特徴とする請求項26に記載の微粒子構造体の製造方法。
【請求項39】
前記工程(e)の後に、前記基板を前記第4の微粒子とは形状、サイズ、材料のうち少なくとも1つが異なる第5の微粒子を含む液中に置き、前記第4の微粒子の上に前記第5の微粒子を層状に配置する工程(f)をさらに含み、
前記第1の微粒子および前記第5の微粒子は、いずれも前記第4の微粒子よりも屈折率が高いことを特徴とする請求項38に記載の微粒子構造体の製造方法。
【請求項40】
前記第1の微粒子が親水性であって、前記工程(a)で用いる前記基板には、疎水性処理された点欠陥領域または線欠陥領域が設けられていることを特徴とする請求項26に記載の微粒子構造体の製造方法。
【請求項41】
前記第1の微粒子が疎水性であって、前記工程(a)で用いる前記基板には、親水性処理された点欠陥領域または線欠陥領域が設けられていることを特徴とする請求項26に記載の微粒子構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−30279(P2006−30279A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204755(P2004−204755)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】