説明

基板、特にガラス基板の固定デバイス

本発明は、基板(1,2)、特に多重グレージングのガラス基板、の固定デバイスであって、互いに向かい合っている少なくとも二つの基板(1,2)と担持構造の間に該基板の荷重をそれに伝達するために配置された保持エレメント(3)を含み、前記保持エレメント(3)が寸法変動を補償する手段を備える固定デバイスに関し、本発明のデバイスは、前記補償手段がまた前記基板(1,2)の間の相対運動を可能にする摺動手段を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレート、特にガラス基板のプレートの固定デバイスであって、各基板と支持構造の間に配置され、基板の荷重を支持構造に伝達する保持エレメントを含み、保持エレメントが寸法の変動又は差異、変形、及び基板と支持構造の間の動き、を制限する手段を含んでいる固定デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
第三次産業用建造物又は住宅用建造物のガラス正面玄関の生産のさいに、例えば正面防壁の表面の小さな部分だけでガラス工事・ユニットを支持する孤立した保持又は固定エレメントを用いる多くの方法が知られており、それによって大部分が透明な構造を生産することが可能になっている。
【0003】
例えば、基板をペアにして、それらを隔てる周縁接合ビーズで、又は基板に作られたドリル孔を通した保持エレメントによって支持するシステムがある。
【0004】
ガラス正面玄関の安全性に関して、いろいろな荷重が重要になる。一方では外部荷重(ガラス自身の重量、風、降水、衝撃、など)が有り、他方では、例えば温度の変動、支持構造の許容誤差及び組立誤差、から生ずるものがある。
【0005】
さらに、靱性がある物質(例えば、金属、プラスチック、など)と異なり、ガラス基板は脆く、弾性変形を支えることしかできず、塑性変形ができない。
【0006】
したがって、原則として、ガラス基板は支持構造上後者によって及ぼされる荷重の伝達において機械的歪みが極小でなければならない。
【0007】
すなわち、機械的に強度がある正面玄関を設計する場合、そのような正面玄関が複数のガラス基板を並置して得られるとして、設計者には次のようないくつかの方法がある:
【0008】
−第一の方法は、ガラス基板の寸法を大きめに設計することであり、大きめの寸法設計は、普通は基板の厚さで実行される。この方法の欠点は、それが重量の増加につながることであり、それは確実に保持エレメントの寸法を大きめにして支持構造を強化することが必要になる。
【0009】
−第二の方法は、ガラス基板の寸法を大きめにすることではなく、ガラス基板と支持構造の間に自由度(平行移動、回転、両者の組み合わせ、の自由度)を組み込んだ保持エレメントを入れて、基板と支持構造の間に動きが生じても基板に応力が加わらないようにすることである。
【0010】
この第二の方法は、基板の間の寸法誤差を補償するか又は外部荷重(例えば、風)から生ずる力を支持構造に伝達するのに適当である限りにおいて完全に満足できるものであるが、二枚の基板の間にトラップされた気体状の流体の温度変動による荷重に耐えることが必要な場合は役に立たない。具体的に言うと、温度の上昇又は低下の方向におけるどんな温度変動もトラップされた流体の体積又は圧力の変化を引き起こし、基板の間の膨張という現象、又は逆に収縮という現象を生じ、それが許容される機械的限界を超えて破損を引き起こす危険がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、基板と支持構造の間の保持エレメントに対して基板の間にトラップされた流体の熱力学的状態の変動の影響を制限するような補強を提案して上記の欠点を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明の対象である基板の固定デバイスは、特に多重ガラス工事・ユニット(glazing unit)として組み立てられるガラス基板の固定デバイスであって、互いに向かい合う二つの基板の少なくとも一方と支持構造の間に配置され基板の荷重を支持構造に伝達するための保持エレメントを含み、該保持エレメントは寸法の変動を補償する手段を含み、上記補償手段はまた上記基板の間の相対運動を可能にする摺動手段を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の好ましい実施形態では、次のような配置や方法のどれかを利用することが可能である:
【0014】
−該摺動手段が、一方では、第一の基板と相互作用する第一のエレメント、他方では、第二の基板に固定的に取り付けられた寸法変動を補償する手段と相互作用する第二のエレメントを含む。
【0015】
−寸法の変動を補償する手段が偏心エレメントを有する2パーツ・デバイスを含む。
【0016】
−第二のエレメントが第一のエレメントに対して相対運動するスリーブを含む。
【0017】
−第二のエレメントが寸法の変動を補償する手段に固定的に取り付けられている。
【0018】
−第二のエレメントが偏心エレメントを有するデバイスのパーツの一方に固定的に取り付けられている。
【0019】
−第一のエレメントが、自由端の一つに、インサートと結合する手段を含む。
【0020】
−インサートが基板の一つと相互作用するように設計され、上記インサートがカーブした輪郭と保持力がある壁を有する孔に受け入れられるように又はその場で形成されるように配置され、上記孔が上記基板の一つの面に作られ、上記インサートが変形可能な物質から作られる少なくとも一つの除去可能な部品で作られる。
【0021】
−第一のエレメントが、その自由端の一つに、第二のエレメントに対する上記第一のエレメントの動きをコントロールされた仕方で制限することを可能にするストップを含む。
【0022】
−空気の侵入及び/又は脱出のための開口が設置用管状ケーシング及び/又は偏心リングに設けられる。
【0023】
本発明の別の様態では、本発明は、上述のデバイスを用いて組み立てられたいくつかの基板を並置して成る建設組立物を目的としている。
【0024】
以下、本発明について、非限定的な実施例と図面を用いてさらに詳しく説明する:
【0025】
まず図1を参照すると、参照数字1と2で実質的に透明な二枚の基板が示されているのが見られる。詳しく言うと、焼きなまされたガラスで作られ、この明細書では詳しく説明しない公知の手段によって組み立てられて多重ガラス工事・ユニット(例えば二重ガラス工事・ユニット)を構成するように設計された二枚の基板が示されている。
【0026】
このような多重ガラス工事・ユニットは、並置されると透明な正面玄関を構成し、図1で3と表されている複数の保持エレメントによって支持構造に保持される。
【0027】
やはり図1で、保持エレメント3は実際には複数のエレメントを組み立てた形で構成されることが見られる。
【0028】
すなわち、保持エレメント3は金属又はプラスチックの押出加工によって得られるいろいろな輪郭の、特に円形の断面を有する第1のエレメント4を含み、その一方の自由端にはインサート5との結合手段が設けられており、この結合手段はねじ溝、差込アセンブリ、又は他の同等なものである。
【0029】
このインサート5については以下で詳しく述べるが、これは図1では一つしか見られない盲孔6に押し込まれるように設計されている。当然、意図する用途に応じて、ホールは、端が開いているもの、円形、長円形、などを取り得る。
【0030】
これらの孔6は各々平らな底面と、カーブした輪郭の保持力のある領域、特に凹の輪郭で孔6の内側に向かって凹であって軸対称の形を有する領域を経由して底面と結合している側壁で画定される。
【0031】
底面3における孔6の深さは、例えばプレート1の厚さの高々半分に相当する。
【0032】
孔6の各々に、例えばPVDF(フッ化ポリビニリデン)などのプラスチック、又は金属(例えばアルミニウム)、の成形によって作られるインサート5が挿入される。ある変形例では、このインサートは現場で成形することもできる。このインサートは、単一ピースであるか、又はいくつかのエレメントから構成される。それは、孔に挿入できるように弾性的に変形可能であり、塑性的に変形することさえ可能である。
【0033】
インサート5は、複数の規則的な間隔の比較的深い半径方向の切り込みを含み、それが底部10の近くまで伸び、必要な場合は底部10が貫通されることもある。
【0034】
これらの切り込みにより、インサート5の側壁は“花弁(petal)”に分割され、それがインサートに可撓性を与え、“花弁”が内向きに撓んで弾性変形し、ときには塑性変形して、インサート5を孔6に挿入できるようになる:インサート5がいったん挿入されると、花弁は最初の位置に戻り、孔の外面にぴったりとくっつく。前述のフランジの下でのインサート5の結合がこうして達成される。
【0035】
第一のエレメント4の他方の自由端は保持エレメント3を構成する第二のエレメントの内側で自由に摺動又はスリップするように設計される。
【0036】
図1では、この第二のエレメント7は、プラスチック又は金属を成形又は機械加工して作られるピースによって効果的に形成され、一般に円錐台の形をしている。
【0037】
この第二のエレメント7の一つの特徴によれば、その特徴的な寸法の一つ(具体的にはその厚さ)は二重ガラス工事・ユニットの内部スペースの距離よりも小さい。
【0038】
この第二のエレメント7は、第一のエレメント4が摺動できる(すなわち、平行移動での相対運動を可能にする)第一のオリフィス8を画定し、この第一のオリフィス8の延長上に設けられ、寸法の変動を補償する手段が相互作用できる空洞を規定する第二のオリフィス9を画定するために、その主軸と同軸に実質的に二つの孔を含む。その機能と構造については以下でさらに詳しく説明する。
【0039】
第一の変形された実施形態では、この第二のエレメントに作られる二つのオリフィスの間に、第一のエレメント4の他方の自由端におけるショルダーの形に作られた突出する部分11を受け入れることができる空洞10を、二つの端部オリフィスの間に画定するような第三の孔を配置するという方法がとられ、この突出する部分は、第一のエレメント4を第二のエレメント7に連結する動的配置に対して平行移動に対するストップを差しはさむことを可能にする。
【0040】
第二の変形された実施形態では、第一のエレメント4と第二のエレメント7の間の平行移動のストップは、第一のエレメント4と第二のエレメント7の両方を半径方向に横切るピンによって達成され、形成されたオリフィスのそれぞれの寸法によって軸方向のギャップ又はクリアランスが得られる(実際には、一方のオリフィス、例えば第一のエレメント4に形成されるものは円形であり、第二のエレメントに半径方向に作られるものは長円形であり、二つのピースを結合しているピンの動きを可能にする)。
【0041】
寸法の変動を補償する手段について詳しく説明する。
【0042】
これは、プラスチック又は金属から作られ、刈り込み(cropping)によって達成される一連の機械加工で得られる、内側リング12と外側リング13の組立で形成される偏心エレメントを含むデバイスである。
【0043】
偏心リングは、円形の外径と中心から外れた孔を有し、ペアの小さい方の偏心リング12(内側リング)の外径が、大きな方の偏心リング13(外側リング)の中心から外れた孔の直径に対応している。小さい偏心リングの中心から外れた孔は、ペアの偏心リングの単純な回転によって互いに正確に整列させることができる。
【0044】
二つのリングは、インサート5を受け入れる基板に作られた盲孔と実質的に対向している一方の基板に形成された端部が開口している孔に押し込んで嵌合される。
【0045】
基板の孔における全体的な配置は、例えば支持構造と結合しなければならないねじ止めされるボルトのような棒(stem)の形の固定エレメント15を挿入するためのベアリング・クッションを構成する。
【0046】
棒の形の固定エレメント15は、基板2の外側表面の間に直接収容されても、又はその間に伸びる設置用管状ケーシング14を用いて間接的に収容されてもよい。
【0047】
図1に示された例では、一方のリング(内側リング12)に結合された管状ケーシング14に結合手段(例えば、ねじ溝)が設けられ、それを組み立てて第二のエレメント7に固定的に取り付け、第一のエレメント4上の摺動手段を構成することができる。
【0048】
好ましくは円筒状の設置用管状ケーシング14の長さは、基板2の厚さに適応して、ベアリング及び封止クッション16に設置された後にガラス(pane)の面から出ないようになっている。いろいろな可能性によるが、設置用管状ケーシングの端面は基板の面とそろって平らでなければならない。
【0049】
本発明のある有利な特徴によれば、基板の間のスペースと環境との間に、熱力学的状態の変数の一つが変化した流体が脱出できるようにするオリフィスを挿入する必要がある。空気の侵入及び/又は脱出のための開口が、設置用管状ケーシング及び/又は偏心リングに設けられる。
【0050】
本発明の利点の一つは、正面玄関を構成する基板の一つが破損した場合、特に支持構造のすぐ近くで破損した場合、上記構造に対して他のコンポーネントの危険な不安定性が生じないということである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】−図1は、本発明の主題であるデバイスを示す断面図及び側面図である。
【図2】−図2は、本発明に係わるデバイスを示す分解図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(1,2)、特に多重ガラス工事・ユニットの形に組み立てられる主にガラス基板、の固定デバイスであって、互いに向かい合っている該二つの基板(1,2)の少なくとも一つと支持構造の間に配置され、該基板の荷重を該支持構造に伝達するための保持エレメント(3)を含み、該保持エレメント(3)が寸法変動を補償する手段を備える該固定デバイスにおいて、前記補償手段はまた、前記基板(1,2)の間の相対運動を可能にする摺動手段を備え、該摺動手段が、一方で、第一の基板(1)と相互作用する第一のエレメント(4)を含み、他方で、第二の基板(2)に固定的に取り付けられた該寸法変動を補償する手段と相互作用する第二のエレメント(7)を含むことを特徴とする固定デバイス。
【請求項2】
該寸法変動を補償する手段が偏心エレメントを有する2パーツ・デバイス(12,13)を含むことを特徴とする請求項1に記載の固定デバイス。
【請求項3】
該第二のエレメント(7)が該第一のエレメント(4)に対して相対運動するスリーブを含むことを特徴とする請求項2に記載の固定デバイス。
【請求項4】
該第二のエレメント(7)が該寸法変動を補償する手段に固定的に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の固定デバイス。
【請求項5】
該第二のエレメント(7)が偏心エレメントを有するデバイスの一方のパーツに固定的に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の固定デバイス。
【請求項6】
該第一のエレメント(4)が、その自由端の一つに、インサート(5)と結合する手段を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の固定デバイス。
【請求項7】
該インサート(5)が該基板(1,2)の一つと相互作用するように設計され、前記インサートはカーブした輪郭と保持力がある壁を有する孔に受け入れられるように又はその場で形成されるように配置され、前記孔は前記基板の一つの面に作られ、前記インサートは変形可能な物質で作られる少なくとも一つの除去可能な部品(piece)から作られることを特徴とする請求項6に記載の固定デバイス。
【請求項8】
該第一のエレメント(4)が、その自由端の一つに、前記第一のエレメント(4)の該第二のエレメント(7)に対する動きをコントロールされた仕方で制限することを可能にするストップ(11)を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の固定デバイス。
【請求項9】
空気の侵入及び/又は脱出のための開口が、設置用管状ケーシング(14)に及び/又は偏心エレメントを有するデバイスのリング(12,13)に設けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の固定デバイス。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の固定デバイスを用いて組み立てられたいくつかの基板の並置から成る建設組立物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−545901(P2008−545901A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512885(P2008−512885)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050466
【国際公開番号】WO2007/000543
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】