説明

基板コネクタ

【課題】コネクタハウジングを配線基板から大きく突出させることなく、配線基板との接続も高い信頼性で行う。
【解決手段】基板コネクタ4において、端子8を、上端部9の前端から後方へ折り返す第1折り返し部10と、その第1折り返し部10の終端から後方へ延びる中間部11と、その中間部11の終端から前方へ折り返す第2折り返し部12と、その第2折り返し部12の終端から前方へ突出する下端部13とからなる略S字状として、下端部13をコネクタハウジング5の下側後方に位置させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に実装される基板コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車の電気接続箱に用いられる基板コネクタは、配線基板上にネジ等で固定され、配線基板の端縁側となる後方にワイヤハーネスのコネクタの差込部を形成したコネクタハウジングと、そのコネクタハウジングの前方に装着され、上端部が差込部内に突出し、下端部がコネクタハウジングの外部へ突出して配線基板上の回路に電気的接続される端子とを備えてなる。
端子の具体的な形状としては、特許文献1及び2に示すように、上端部の前端をコネクタハウジングの前方で下方へ折曲させてさらに後方へ折曲させるコ字型の折り返し形状とするものがよく知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−116230号公報
【特許文献2】特許第2872023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記端子形状の場合、下端部がコネクタハウジングの前方側に位置するため、配線基板への実装状態でコネクタハウジングが配線基板の外側へ大きく突出し、全体のコンパクト化を阻害する。このため、下端部をコネクタハウジングの後方へ長く伸ばすことでコネクタハウジングを配線基板の中央側へ位置させることが考えられる。しかし、下端部が長くなると配線基板との接続部のアライメントがばらつき易くなり、例えば配線基板上の所定位置に塗布されたクリーム半田との位置ずれが生じたり、そのようなクリーム半田が形成された配線基板上への押圧力不足が生じたりすることで、半田固定の不良が起こる可能性がある。よって、端子の接続安定性が悪くなって接続の信頼性も低下してしまう。
【0005】
そこで、本発明は、コネクタハウジングを配線基板から大きく突出させることなく、配線基板との接続も高い信頼性で行うことができる基板コネクタを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、端子を、上端部の前端から後方へ折り返す第1折り返し部と、その第1折り返し部の終端から後方へ延びる中間部と、その中間部の終端から前方へ折り返す第2折り返し部と、その第2折り返し部の終端から前方へ突出する下端部とからなる略S字状として、下端部をコネクタハウジングの下側後方に位置させたことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の目的に加えて、より確実で安定した接続を可能とするために、端子の下端部を前方下向きに突出させて、下端部に、コネクタハウジングの配線基板への組み付け状態で配線基板を押圧する弾性を付与したものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、端子の下端部をコネクタハウジングの下側後方に位置させたことで、コネクタハウジングの配線基板から外側への突出量を抑えることができ、全体のコンパクト化が達成可能となる。また、下端部を長く形成する必要がないため、反り等による接続不良のおそれがなくなり、半田付けが適切になされる。よって、端子の安定性が良好となって接続の信頼性も維持可能となる。特に、第2折り返し部と下端部とがコネクタハウジングの下側に位置することで、コネクタハウジングの位置が高くなって下方に比較的広いスペースを確保可能となる。このため、リフローの際に熱風が流れやすく、半田付けの確実性がより高まる上、スペースによってはコネクタハウジングの下側に電子部品の配置が可能となる等配線基板の設計の自由度も高くなる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、組み付け時の配線基板との密着性が高まり、より確実に安定した接続が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の基板コネクタが使用される自動車用の電気接続箱の一例を示す斜視図である。電気接続箱1は、車載バッテリの電源と、電気負荷となるエンジン用電子制御ユニットやエアバッグ用電子制御ユニット等との間を導通/遮断して、各電子制御ユニットへの電力供給を制御する周知の装置で、マイコンや半導体リレー等の電子部品が搭載されて所定の回路が形成される平面矩形状の配線基板2に、ヒューズが接続されるヒューズ端子を備えたバスバー3と、電子制御ユニットを繋ぐワイヤハーネスのコネクタが接続される基板コネクタ4,4・・等が組み付けられている。これらの構成部は、ワイヤハーネスやヒューズの接続部等を除いて全体が図示しない上下カバーによって覆われる。
【0009】
基板コネクタ4は、配線基板2における互いに平行な二辺に沿って対向するように、配線基板2の上下面で夫々一対ずつ設けられており、図2に示すように、コネクタの差込部となる差込孔6を後方(基板コネクタ4については取付状態での配線基板2の中央側を前方、端縁側を後方として説明する)に開口させた合成樹脂製のコネクタハウジング5と、そのコネクタハウジング5の前方側にインサート成形で一体に装着された複数の端子8,8・・とからなる。コネクタハウジング5は、下面に突出させた脚部7,7・・のネジ止めによって配線基板2に固定可能となっている。
【0010】
各端子8は、差込孔6内で後方へ突出する上端部9と、上端部9の前端から下方へ折曲してコネクタハウジング5内を下降し、コネクタハウジング5の下面際で後方へ折曲する第1折り返し部10と、第1折り返し部10の終端から後方へ延びる中間部11と、中間部11の終端から前方へ折り返す第2折り返し部12と、第2折り返し部の終端から前方斜め下向きに突出する下端部13とからなる略S字状を呈し、第1折り返し部10と中間部11、そして第2折り返し部12の前半部とがコネクタハウジング5と一体化されている。なお、端子8は、第1折り返し部10の上下方向の幅が異なることで、上端部9の高さが相違する2タイプが使用されている。また、コネクタハウジング5の下面には、脚部7の突設によって配線基板2への組み付け状態で下端部13の突出部分に所定の隙間が形成されるようになっている。
【0011】
以上の如く構成された基板コネクタ4は、配線基板2上で各端子8の下端部13を接続する個所に予め半田を供給した後、コネクタハウジング5を所定位置で配線基板2にネジ止めする。すると、下端部13がその弾性によって撓み、配線基板2を押圧する格好で導電パターン上に密着する。そして、リフロー炉で加熱して半田を溶融させれば、図3(A)に示すように基板コネクタ4の配線基板2への電気的接続が完了する。
図3(B)は、同じコネクタハウジング5に従来のコ字状の端子21を装着した基板コネクタ20の組み付け状態を示すもので、配線基板2の同じ位置で下端部を接続する場合で両者を比較すると、本形態では端子8の下端部13がコネクタハウジング5の下側後方に位置することで、コネクタハウジング5がより前方に配置されることがわかる(同図での寸法S分突出量が小さくなる)。
【0012】
このように、上記形態の基板コネクタ4によれば、端子8を、上端部9の前端から後方へ折り返す第1折り返し部10と、その第1折り返し部10の終端から後方へ延びる中間部11と、その中間部11の終端から前方へ折り返す第2折り返し部12と、その第2折り返し部12の終端から前方へ突出する下端部13とからなる略S字状として、下端部13をコネクタハウジング5の下側後方に位置させたことで、コネクタハウジング5の配線基板2から外側への突出量を抑えることができ、全体のコンパクト化が達成可能となる。また、下端部13を長く形成する必要がないため、アライメントのばらつき等による接続不良のおそれがなくなり、半田付けが適切になされる。よって、端子8の接続安定性が良好となって接続の信頼性も維持可能となる。
【0013】
特に、第2折り返し部12と下端部13とがコネクタハウジング5の下側に位置することで、コネクタハウジング5の位置が高くなって下方に比較的広いスペースを確保可能となる。このため、リフローの際に熱風が流れやすく、半田付けの確実性がより高まる上、スペースによってはコネクタハウジング5の下側に電子部品の配置も可能となる等配線基板2の設計の自由度も高くなる。
特にここでは、端子8の下端部13を前方下向きに突出させて、下端部13に、コネクタハウジング5の配線基板2への組み付け状態で配線基板2を押圧する弾性を付与したことで、組み付け時の配線基板2との密着性が高まり、より確実で安定した接続が可能となる。
【0014】
なお、上記形態の端子では、下端部を前方下側に向けて斜めに形成することで、配線基板への組み付け状態で下端部が撓んで配線基板を押圧する弾性が発現されるようにしているが、この傾斜をなくして下端部を最初から配線基板と平行に形成することもできる。また、第1、第2折り返し部の形状も上記形態に限らず、例えば第1折り返し部も半円や楕円状で折り返すようにしたり、第2折り返し部を四角形状で折り返したり等、折り返し形状やその寸法は適宜変更可能である。勿論中間部の長さも適宜選択できる。
さらに、上記形態では、端子の第1折り返し部と中間部、第2折り返し部の前半部をコネクタハウジングと一体化させているが、上端部をコネクタハウジングを貫通して前方へ突出させて残りをコネクタハウジングの外部に露出させ、コネクタハウジングの外面に沿って第1折り返し部と中間部とを形成するようにしてもよい。
【0015】
一方、基板コネクタの配線基板への固定方法としては、上記形態のネジ止めとリフローとによる他、例えば以下(1)〜(3)の方法も採用可能である。
(1)コネクタハウジングと端子とを共に半田で接続する。なお、リフローの際は別の治具によってコネクタハウジングを仮固定する必要がある。
(2)コネクタハウジングを配線基板に溶接固定した後、リフローによって端子を半田で接続する。
(3)コネクタハウジングに固定用のプレスフィット端子をインサート成形若しくは圧入固定して配線基板に差し込み固定する。端子はリフローで固定する。
【0016】
よって、コネクタハウジングの形状も上記形態に限らず、上記固定方法の選択によっては脚部をなくす等の形状変更が可能で、さらには、例えば下面において、各下端部の両サイドに前後方向の凹溝を形成して、リフロー時の熱風の通りを良好にする等の工夫も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】基板コネクタが組み付けられる電気接続箱の一例を示す斜視図である。
【図2】基板コネクタの説明図である。
【図3】基板コネクタの組み付け状態を示す説明図で、(A)は本実施の形態の基板コネクタを、(B)は従来の基板コネクタを夫々示す。
【符号の説明】
【0018】
1・・電気接続箱、2・・配線基板、4・・基板コネクタ、5・・コネクタハウジング、8・・端子、9・・上端部、10・・第1折り返し部、11・・中間部、12・・第2折り返し部、13・・下端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板上に固定され、前記配線基板の端縁側となる後方にコネクタの差込部を形成したコネクタハウジングと、そのコネクタハウジングの前方に装着され、上端部が前記差込部内に突出し、下端部が前記コネクタハウジングの外部へ突出して前記配線基板上の回路に電気的接続される端子とを備えた基板コネクタであって、
前記端子を、前記上端部の前端から後方へ折り返す第1折り返し部と、その第1折り返し部の終端から後方へ延びる中間部と、その中間部の終端から前方へ折り返す第2折り返し部と、その第2折り返し部の終端から前方へ突出する前記下端部とからなる略S字状として、前記下端部を前記コネクタハウジングの下側後方に位置させたことを特徴とする基板コネクタ。
【請求項2】
端子の下端部を前方下向きに突出させて、前記下端部に、コネクタハウジングの配線基板への組み付け状態で前記配線基板を押圧する弾性を付与した請求項1に記載の基板コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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