説明

基板保持具並びにその製造方法及び製造装置

【課題】基板の全面に対して均一な処理を行えるようにした基板保持具を提供すると共に、その基板保持具を製造するための製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】長尺状の金属プレート10をプレスすることにより、金属プレート10の長手方向(X方向)に複数の波形形状を所定ピッチで形成し、波形形状における山部11および谷部12を金属プレート10の幅方向(Y方向)に沿って弓状に湾曲させた形状の基板保持具4を製造する際、金属プレート10の長手方向に沿って所定ピッチで波形形状の谷部12を1つずつ順次プレス形成していくことにより、基板9を保持する谷部12の湾曲形状と、山部11の湾曲形状とを順次形成していく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板などの基板の周縁部を保持するための基板保持具並びにその製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気ディスクの製造過程において、例えば円盤状に形成された複数枚の薄型ガラス基板を所定間隔で平行に保持する基板保持カセットが用いられることがある。すなわち、基板保持カセットは、複数枚の基板をまとめて処理槽の処理液中に浸漬して各種の処理を行うために用いられる。
【0003】
従来、この種の基板保持カセットとして、例えば特許文献1に開示されるものが知られている。この従来の基板保持カセットは、複数枚の基板の周縁部を所定間隔で保持するための4本の基板保持具を備えている。これら4本の基板保持具は、基板保持カセットにおいて平行に取り付けられ、それぞれが基板の周縁部所定箇所を保持するようになっている。また各基板保持具には、基板を受けるための受け溝が所定間隔で形成されており、それら受け溝の一部には基板の外周部を挟持するための支持凸部が設けられている。したがって、複数枚の基板は、周縁部の4箇所においてその表裏両面が支持凸部によって挟持されるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−318256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年はハードディスク装置(HDD)の小型化と記憶容量の大容量化に伴い、磁気ディスクの製造過程においては基板の周縁部にまで情報を記録できるようにすることが望まれている。しかし、上記従来技術では、基板周縁部の一部が支持凸部によって挟持されてしまうため、その挟持された部分に対して処理液による処理を適切に行うことができない。そのため、基板周縁部の少なくとも4箇所が処理不良となり、磁気記録を行うことができない部分が生じる。特に、磁気ディスクは同心円状のトラックに対して情報を記録するものであるため、その製造過程において上述したような支持凸部を有する基板保持具で基板周縁部を挟持してしまうと、その挟持された部分よりも外側には情報を記録することができなくなり、磁気ディスクの大容量化を図ることができないという問題がある。
【0006】
加えて、上記従来技術における基板保持具は、その断面の形状が略平行四辺形となっており、基板の直径方向に対して比較的大きな厚みを有している。そのため、複数枚の基板を保持した状態で基板保持カセットに左右方向又は上下方向の振動などが作用した場合、基板保持具はその衝撃を吸収することができず、基板周縁部を破損させてしまうという問題もある。
【0007】
このような従来の問題を解決するためには、第1に、基板保持具が基板の周縁部の端部だけを保持できる構造とし、しかも基板保持具と基板との接触面積をなるべく小さくすることが必要である。また第2に、複数枚の基板を保持した状態で基板保持カセットに振動などが作用した場合でも、基板保持具がその衝撃を吸収して基板を保護できる構成とすることが必要である。
【0008】
そこで本発明者は、上記第1および第2の条件を満たす基板保持具として、図9(a)に示すような基板保持具100についてまず検討した。すなわち、図9は、従来の問題を解決すべく、本発明に至る過程で案出された基板保持具100を示す図である。この基板保持具100は、長尺状金属プレート101の長手方向(X方向)に沿って略三角波状の複数の波形形状を形成したものであり、山部102と谷部103が所定ピッチで連続形成されている。また山部102及び谷部103は、金属プレート101の幅方向(Y方向)と平行な直線状に折り曲げられた折曲部となっている。そして基板保持具100は、複数の波形形状の谷部103で基板9の周縁部を保持するように構成される。図9(b)は、谷部103における基板9の保持部分を基板側方からみた拡大断面図であり、図9(c)は、谷部103における基板9の保持部分を基板正面側からにみた拡大断面図である。
【0009】
図9(b)及び(c)に示すように、この基板保持具100は、基板9の周縁部に対して端部Pの一点だけと接触して基板9を保持するものであるため、基板9との接触面積を極小化することができる。加えて、この基板保持具100は、金属プレート101によって形成されるため、基板9の直径方向に対してはその厚みが薄く、剛性の低いものとなっている。そのため、複数枚の基板を保持した状態で振動などが発生した場合でも、基板保持具100が金属プレート101の法線方向に撓むことにより、その衝撃を吸収することができ、基板9の周縁部を破損させることなく良好に保護できるという利点がある。
【0010】
しかし、その一方、基板保持具100は、図9(c)に示すように、金属プレート101の幅方向(Y方向)に関し、基板9との接触点Pの近傍領域R1に位置する谷部103が基板9の周縁部に近接した状態となっている。そのため、本発明者は、この基板保持具100が基板9を保持した状態で処理槽の処理液中に浸漬され、基板9に対する処理が行われる場合、谷部103が基板9を保持する点Pの近傍領域R1において処理液が十分に作用せず、基板9の全面に対して均一な処理が行えない可能性があることを見出した。
【0011】
そこで本発明は、従来の問題点を解決すると共に、基板の全面に対して均一な処理を行えるようにした基板保持具を提供すると共に、その基板保持具を製造するための製造方法及び製造装置を提供することを、その目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、まず第1に、本発明が解決手段として構成したところは、長尺状の金属プレートをプレス加工することにより形成され、複数枚の基板の周縁部を所定間隔で保持する基板保持具であって、前記金属プレートの長手方向に沿って複数の波形形状が前記所定間隔で形成され、前記波形形状における山部および谷部が前記金属プレートの幅方向に沿って弓状に湾曲させた形状を有し、前記谷部において基板を保持する構成であることを特徴とする点にある。
【0013】
かかる基板保持具によれば、基板との接触面積を小さくできると共に、基板保持具が撓むことによって衝撃を吸収することができるので基板を良好に保護できるという利点がある。またこれ加えて、基板を保持する谷部が弓状に湾曲した形状であるため、谷部と基板との接触点の近傍において谷部と基板との間に比較的大きな空間を得ることができるようになる。そのため、接触点の近傍においても処理液を十分に作用させることが可能となり、基板の全面に対して均一な処理を行うことができるようになる。
【0014】
また第2に、本発明が解決手段として構成したところは、長尺状の金属プレートをプレスすることにより、前記金属プレートの長手方向に複数の波形形状を所定ピッチで形成し、前記波形形状における山部および谷部を前記金属プレートの幅方向に沿って弓状に湾曲させた形状の基板保持具を製造する、基板保持具の製造方法であって、前記金属プレートの長手方向に沿って前記所定ピッチで前記波形形状の谷部を1つずつ順次プレス形成していくことにより、前記谷部の湾曲形状と前記山部の湾曲形状とを順次形成していくことを特徴とする点にある。
【0015】
かかる製造方法によれば、長尺状の金属プレートをプレスすることにより、金属プレートの長手方向に複数の波形形状を所定ピッチで形成すると共に、各波形形状における谷部および山部を金属プレートの幅方向に沿って弓状に湾曲させた形状に成型することができ、上述した基板保持具を良好に製造することができるようになる。
【0016】
ここで、上記製造方法は、前記金属プレートの一面側に、複数の波形形状が一体的に形成された受け金型を配置する工程と、前記金属プレートの他面側に、前記波形形状における1つの谷部を成型すると共にその1つの谷部に隣接する2つの山部のそれぞれ半分を成型する押圧金型を隣接させて複数配置する工程と、前記複数の押圧金型を、前記金属プレートにおける長手方向の一方向側から1つずつ順に押圧していく工程と、を有する構成とすることが好ましい。これにより、金属プレートの幅方向に沿って弓状に湾曲させた形状の山部及び谷部をより一層良好に形成することができるようになる。
【0017】
また金属プレートはチタン又はステンレス鋼で構成されることが好ましい。これにより、基板保持具が処理液によって腐食してしまうことを防止することができる。また、チタン又はステンレス鋼は比較的剛性が高いという特性があるが、上述した製造方法を採用することにより、チタン又はステンレス鋼で構成される金属プレートの幅方向に沿って弓状に湾曲させた形状の山部及び谷部を良好に形成することができるという利点がある。
【0018】
また第3に、本発明が解決手段として構成したところは、基板保持具の製造装置であって、複数の波形形状が一体的に形成されると共に、各波形形状の山部および谷部が弓状に湾曲した形状を有する受け金型と、長尺状の金属プレートを挟んで前記受け金型に対向して配置されると共に、前記波形形状における1つの谷部を成型すると共にその1つの谷部に隣接する2つの山部のそれぞれ半分を成型するために互いに隣接して配置される複数の押圧金型と、前記受け金型と前記複数の押圧金型との間に前記金属プレートを配置した状態で、前記複数の押圧金型を1つずつ、前記金属プレートにおける長手方向の一方向側から順に押圧していく押圧手段と、を備えることを特徴とする点にある。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基板の全面に対して均一な処理を行えるようにした基板保持具が提供されると共に、そのような基板保持具を良好に製造することができる製造方法及び製造装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】基板保持具を備えた基板保持カセットの一例を示す図である。
【図2】基板保持具の詳細な構造を示す図である。
【図3】基板保持具が谷部において基板を保持する状態を示す図である。
【図4】プレス加工によって基板保持具を形成する場合の金属プレートの変位を示す図である。
【図5】金属プレートのプレス加工を行う際に用いる治具を示す図である。
【図6】基板保持具を製造する製造装置の概念を示す図である。
【図7】基板保持具が成型される過程の一部を示す図である。
【図8】1つの押圧金型によって押圧された状態の金属プレートを拡大して示す一部透過拡大図である。
【図9】本発明に至る過程で案出された基板保持具の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態において互いに共通する部材には同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0022】
図1は、本発明に係る基板保持具4を備えた基板保持カセット1の一例を示す図である。この基板保持カセット1は、所定間隔を隔てて略平行に配置される一対のカセット壁2,3を備えており、それらカセット壁2,3の間に3本の基板保持具4がセットされた構成となっている。これら3本の基板保持具4は、基板保持カセット1内において、略円盤状に形成された複数枚の基板9を平行且つ所定間隔に整列させた状態で保持するものであり、例えば図1に示すように基板9の側方2箇所と下方1箇所とを保持するように基板保持カセット1に取り付けられる。また、これら3本の基板保持具4は、基板保持カセット1に取り付けられる際、基板9のどの部分を保持するかに応じて取り付け方向が変わるが、その構造は全て同じものとなっている。尚、基板9は、磁気ディスクなどに用いられる薄型のガラス基板などである。
【0023】
図2は、基板保持具4の詳細な構造を示す図であり、(a)は側面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)は(a)におけるB−B断面図である。基板保持具4は、その母材として長尺状の金属プレート10が用いられ、その金属プレート10に対してプレス加工が施されることにより、図2に示すような形状として構成される。ここで基板保持具4は、上述したように複数枚の基板9をまとめて処理槽の処理液中に浸漬して各種の処理を行う際にそれらの基板9を均等な間隔で保持するものである。そのため、母材となる金属は、耐腐食性を有するチタン又はステンレス鋼を用いることが好ましい。
【0024】
図2に示すように、この基板保持具4は、金属プレート10の長手方向(X方向)に沿って複数の波形形状が所定間隔で形成された形状を有している。つまり、基板保持具4には、その長手方向に沿って、山部11と谷部12とが交互に且つ所定ピッチで連続するように形成されている。そして基板保持具4は、複数の谷部12のそれぞれにおいて基板9の周縁部を保持する構成である。
【0025】
また基板保持具4は、その幅方向(Y方向)に関し、図2(b),(c)に示すように山部11及び谷部12並びにそれらの中間部分が弓状に湾曲した形状を有している。つまり、基板保持具4は、その幅方向両端部から中央部に向かって膨隆する波形形状を有している。したがって、山部11及び谷部12の幅方向の形状も、図2(b),(c)に示すように基板保持具4の両端部から中央部に向かって膨隆する形状となっている。
【0026】
図3は、基板保持具4が谷部12において基板9を保持する状態を示す図である。図3(a)に示すように、基板保持カセット1に設けられる3本の基板保持具4は、それぞれ波形形状の谷部12において基板9の周縁端部の一点Pと接触することにより、基板9を保持するように構成される。したがって、この基板保持具4は、基板9の周縁部との接触面積を極小化できるという利点がある。
【0027】
加えて、この基板保持具4は、基板9の径方向に関してその厚みが薄く、剛性の低いものとなっている。そのため、複数枚の基板9を保持した状態で基板保持カセット1に横方向又は縦方向の振動などが発生した場合でも、基板保持具4がその法線方向に撓むことによってその衝撃を吸収することができ、基板9の周縁部を破損させることなく良好に保護できるという利点がある。
【0028】
さらに図3(b)に示すように、この基板保持具4は、谷部12において湾曲した膨隆部分の頂部となる一点Pで基板9を保持する。そして基板保持具4の幅方向(Y方向)に関し、基板9との接触点Pの近傍領域R2においては谷部12が基板9の周縁部から次第に離反していくような形態となっている。そのため、この基板保持具4が基板9を保持した状態で処理槽の処理液中に浸漬され、基板9に対する処理が行われる場合でも、接触点P及びその近傍領域R2に対して十分な処理液を浸入させることができる。つまり、本実施形態の基板保持具4は、基板9を保持する接触点Pの近傍においても他の部分と同様に処理液を十分に作用させることが可能となり、基板9の周縁部を含む全面に対して均一な処理を行うことができるようになるという利点がある。その結果、この基板保持具4を用いて製造される磁気ディスクは、基板9の周縁部にまで情報を記録することができるようになり、記憶容量の大容量化を図ることができるようになる。
【0029】
次に上記のような基板保持具4の製造方法について説明する。図4は、プレス加工によって基板保持具4を形成する場合の金属プレート10の変位を示す図である。図4(a)に示すように、長尺状の金属プレート10に対してプレス加工を施すことにより、長手方向に沿って上述した複数の波形形状を形成する場合、金属プレート10はその長手方向に収縮する。すなわち、加工前の金属プレート10が長手方向に長さL1の長さを有しているとすると、加工後の基板保持具4は長さL2となり、変位量ΔXだけ収縮する。したがって、このような複数の波形形状を有する基板保持具4を同時に一括してプレス成形しようとすると、折れ曲がり部となる山部11及び谷部12において金属プレート10が破断してしまう。
【0030】
また基板保持具4は山部11および谷部12のそれぞれが上述したように弓状に湾曲した形状に形成されるため、図4(b)及び(c)に示すように金属プレート10はその幅方向にも収縮する。すなわち、複数の波形形状の山部11においては、図4(b)に示すように、幅方向両端部を内側に織り込むようにしてプレスされるため、幅方向両端部が変位量ΔY1だけ内側に収縮する。また同様に、複数の波形形状の谷部12においては、図4(c)に示すように、幅方向両端部を内側に織り込むようにしてプレスされるため、幅方向両端部が変位量ΔY2だけ内側に収縮する。
【0031】
ここで、図4(b)及び(c)を比較すれば判るように、谷部12の変位量ΔY2は、山部11の変位量ΔY1よりも大きくなっている。そのため、このように湾曲した山部11及び谷部12を有する複数の波形形状を同時に一括してプレス成形しようとすると、山部11及び谷部12の幅方向両端部において亀裂が生じてしまう。
【0032】
特に本実施形態では金属プレート10として、比較的剛性の高いチタン又はステンレス鋼を用いるため、これらより剛性の低い金属を用いる場合と比較すると、プレス加工時に破断や亀裂が発生しやすく、特に変位量ΔY2が大きい谷部12を2つ以上同時に形成しようとすると必ず破断や亀裂が発生する。また母材としてチタンを用いる場合は、ステンレス鋼よりも剛性が高いため、破断や亀裂の発生が顕著なものとなる。
【0033】
一方、基板保持具4は、弓状に湾曲した谷部12で基板9を保持する構造であるため、その谷部12の形状は山部11よりも高精度に成型することが求められる。加えて、複数枚の基板9に対して均一な処理を行うためには、谷部12の形成間隔が所定間隔で均等になるように、山部11よりも高い成型精度が求められる。そこで本実施形態では、金属プレート10の長手方向に沿って所定ピッチで形成される谷部12を1つずつ順次プレス形成していくことにより、谷部12の湾曲形状と山部11の湾曲形状とを順次形成していくことを特徴としている。
【0034】
図5は、金属プレート10のプレス加工を行う際に用いる治具20を示す図である。この治具20は、金属プレート10とほぼ同程度の長さを有する受け金型21と、その受け金型21に対向して配置される複数の押圧金型22と、受け金型21と複数の押圧金型22とを保持する保持具23とを備えて構成される。受け金型21の上面には、複数の波形形状21aが一体的に形成されている。この波形形状21aは、基板保持具4の裏面側に対応する形状となっており、弓状に湾曲した山部及び谷部が所定間隔で高精度に形成されたものである。
【0035】
一方、この受け金型21に対向して配置される複数の押圧金型22は、金属プレート10に形成する波形の数に応じた個数(n個)の押圧金型22(1),22(2),22(3),…,22(n)が互いに密着した状態で金属プレート10の長手方向に沿って一列に配置された構成である。各押圧金型22(1),22(2),22(3),…,22(n)の下面には、基板保持具4の1つの谷部12と、その谷部12に隣接する2つの山部11のそれぞれ半分とを成型するための波形形状22aが形成されている。つまり、複数の押圧金型22は、基板保持具4において複数の波形形状を1ピッチずつ順次形成していくように配置されている。尚、複数の押圧金型22を一列に配置した長さは、受け金型21の長さと一致する。
【0036】
保持具23は、受け金型21及び複数の押圧金型22の外形寸法に対応して上下方向に貫通する貫通孔24を有している。この保持具23の貫通孔24には、図5に示すように下方から受け金型21が挿入装着され、上方から複数の押圧金型22が挿入装着される。このとき、受け金型21と押圧金型22との間に金属プレート10が挟み込まれた状態で配置される。尚、保持具23の側面には貫通孔24に対して連通する窓部25が設けられており、この窓部25を介して金属プレート10がほぼ水平となるように設置状態を調整することが可能である。
【0037】
図6は、上記のような治具20にセットされた金属プレート10に対してプレス加工を行うことによって基板保持具4を製造する製造装置30を示す図である。この製造装置30は、上述したように金属プレート10がセットされた治具20と、その治具20を固定した状態でX方向に移動させるステージ装置31と、治具20に装着された複数の押圧金型22を1つずつ順に押圧する押圧装置32とを備えている。
【0038】
ステージ装置31は、治具20を保持するステージ35と、駆動手段として設けられたモータ33と、モータ33によって回転するボールネジ34とを備えている。ステージ35は、ボールネジ34と螺合しており、ボールネジ34が回転するとそれに伴ってX方向へ移動する。モータ33は、ボールネジ34を所定角度ずつ回転させることにより、ステージ35を所定ピッチでX方向へ移動させていく。より具体的に説明すると、モータ33は、複数の押圧金型22の1個分に相当するピッチでステージ35をX方向へと移動させていく。
【0039】
押圧装置32は、シリンダなどで構成される押圧手段36と、押圧手段36によってX軸と垂直なZ方向に沿って進退する押圧軸37と、複数の押圧金型22の上面を1つずつZ方向へ押圧する押圧板38とを備えて構成される。この押圧装置32は、ステージ装置31と同期して動作する。つまり、押圧装置32は、受け金型21と複数の押圧金型22との間に金属プレート10が配置された状態の治具20が押圧板38の下方に移動してくると、押圧手段36を動作させ、金属プレート10における長手方向の一方向側から、複数の押圧金型22を1つずつ順に押圧していくように構成される。
【0040】
図7は、基板保持具4が成型される過程の一部を示す図である。図7(a)に示すように、金属プレート10は、矢印Fで示すように最初の押圧金型22(1)が押圧されると、それに伴って若干変形する。すなわち、金属プレート10は、押圧金型22(1)によって押圧されると、未だ押圧されていない部分が治具20の内側をX方向に向かって滑り、押圧金型22(1)による押圧された部分よりも後端部分H1が若干撓んだ状態に成形される。尚、この最初の押圧金型22(1)は山部11および谷部12のいずれも成形するものではない。
【0041】
次にステージ装置31が治具20をX方向へ移動させ、2番目の押圧金型22(2)が押圧装置32によって押圧される。
【0042】
図7(b)に示すように、金属プレート10は、矢印Fで示すように2番目の押圧金型22(2)が押圧されると、それに伴って変形し、最初の谷部12と、その谷部12に続く最初の山部11の半分とが成型される。このとき、押圧金型22(2)は、谷部12を形成する部分が山部11を成形する部分よりも先に金属プレート10に接触するため、山部11よりも先に谷部12の形状を変化させていく。これにより、金属プレート10の幅方向両端部を内側に織り込むようにしながら谷部12の形状を山部11よりも先に形成していくことができる。このときもまた、金属プレート10は、押圧金型22(2)によって押圧されていない部分が治具20の内側をX方向に向かって滑っていく。そして金属プレート10は、押圧金型22(2)によって押圧される部分よりも後端部側H3を受け金型21に形成された谷部21bに向かって自由に引き込みながら変形していくようになる。そのため、金属プレート10に破断や亀裂の原因となるストレス(応力)を発生させることなく、谷部12の形状を成形していくことができるようになる。
【0043】
そして押圧金型22(2)が金属プレート10を押圧していく過程の後半において、押圧金型22(2)の山部11を成形する部分が金属プレート10に接触し、谷部12の成形と共に、山部11の半分を成形する。そして金属プレート10は、受け金型21と押圧金型22(2)とによって押圧された部分H2において1つの谷部12が形成される。
【0044】
図8は、押圧金型22(2)によって押圧された状態の金属プレート10を拡大して示す一部透過拡大図である。図8に示すように、金属プレート10は、押圧金型22(2)によって押圧されることにより、1つの谷部12を形成する。このとき形成される谷部12は、押圧金型22(2)の中央で下方に突出した谷部12を形成する部分によって十分に押圧されるため、その幅寸法Dを基板9の板厚とほぼ等しいものに成形することができる。
【0045】
また押圧金型22(2)による押圧が終了すると、図8に示すように金属プレート10における押圧金型22(2)よりも後端部分H3は、受け金型21に形成された次の山部21cの形状を包み込むように予備成形された状態となる。
【0046】
そして次に3番目の押圧金型22(3)が押圧される。このとき、押圧金型22(3)の下方においては、上述したように金属プレート10が既に山部21cの形状を包み込むように予備成形されているため、スムーズに押圧成形を行っていくことができる。そして押圧金型22(3)を押圧するときにも、上記と同様、山部11よりも先に谷部12の形状が形成されていく。そのため、金属プレート10に破断や亀裂の原因となるストレス(応力)を発生させることなく、2番目の谷部12の形状を成形することができる。この押圧金型22(3)は、最初の山部11の残り半分と、2番目の谷部12と、その谷部12に続く2番目の山部11の半分とを形成するように構成されている。尚、これ以降の押圧金型22(4)についてもこれと同様であり、1つの谷部12と、その谷部12に隣接する2つの山部11のそれぞれ半分とを形成するように構成される。
【0047】
このように本実施形態では、基板保持具4における谷部12を1つずつ形成していくことにより、金属プレート10に発生するストレス(応力)を低減しながら、弓状に湾曲した波形形状を形成していくように構成される。そのため、金属プレート10に破断などを生じさせないようにしながら基板保持具4を成型していくことが可能となっている。
【0048】
また1つの押圧金型22に対する押圧処理が終了すると、その押圧金型22を下降させた状態のままで次の押圧金型22を押圧するため、既に押圧処理が終了した押圧金型22は金属プレート10を保持することができる。そのため、複数の押圧金型22が金属プレート10を順次押圧していくときに谷部12の位置ずれを防止することができる。そしてその結果、金属プレート10に対して谷部12の位置を高精度に形成することができるようになる。特に、基板保持具4は谷部12で基板9を保持するため、その谷部12の位置にばらつきが生じると、複数枚の基板9を一定間隔で保持することができず、基板9に対する処理ムラなどが生じやすくなってしまう。しかし、本実施形態では、既に形成された谷部12が位置ずれしないように保持された状態で後続する谷部12が形成されていくため、谷部12の位置のばらつきを抑えることが可能である。
【0049】
上記のように複数の押圧金型22が位置方向から順に押圧されていく。このとき、図7(b)に示すように、金属プレート10の後端部10aは、金属プレート10に対する谷部12が1つ形成される都度、治具20の内側をX方向へと移動していく。そして最終的に最後の押圧金型22(n)が押圧されると、金属プレート10に対するプレス加工が終了し、治具20から金属プレート10を取り出すと、上述した構造の基板保持具4を得ることができる。このようにして得られる基板保持具4は、複数の波形形状を構成する山部11及び谷部12のそれぞれが弓状に湾曲した良好な形状となる。特に複数の谷部12は均等な間隔で、且つ、均一な形状に形成されるようになる。
【0050】
以上のように本実施形態においては、長尺状の金属プレート10をプレスすることにより、その金属プレート10の長手方向に複数の波形形状を所定ピッチで形成し、その波形形状における山部11および谷部12を金属プレート10の幅方向に沿って弓状に湾曲させた形状の基板保持具4を製造する際、金属プレート10の長手方向に沿って所定ピッチで波形形状の谷部12を1つずつ順次プレス形成していくことにより、谷部12の湾曲形状と山部11の湾曲形状とを順次形成していく構成である。このような構成により、金属プレート10に対して、基板9を保持するための複数の波形形状を破断させることなく形成することができるようになる。特に、波形形状の山部11及び谷部12は弓状に湾曲した形状であるが、上記のように谷部12を1つずつ順次形成していくことにより、そのような弓状に湾曲した形状を良好に形成することができるようになる。また基板9を保持する谷部12を高い精度で均等且つ均一に形成することができるという利点もある。
【0051】
また金属プレート10の母材として比較的剛性の高いチタンやステンレス鋼を用いる場合には、弓状に湾曲した山部11又は谷部12での破損が発生しやすいため、金属プレート10のプレス成形を行う際には、上述したように、波形形状における1つの谷部12と、その1つの谷部12に隣接する2つの山部11のそれぞれ半分とを順に成型していくことにより、良好に湾曲した形状の谷部12及び山部11を1つずつ成型していくことができるようになる。
【0052】
以上、本発明に関する好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した内容のものに限られるものではなく、種々の変形例が適用可能である。例えば、上記実施形態においては、金属プレートがチタン又はステンレス鋼で構成される場合を例示したが、金属プレートはそれら以外の金属によって構成されるものであっても構わない。
【符号の説明】
【0053】
1 基板保持カセット
4 基板保持具
9 基板
10 金属プレート
11 山部
12 谷部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の金属プレートをプレス加工することにより形成され、複数枚の基板の周縁部を所定間隔で保持する基板保持具であって、
前記金属プレートの長手方向に沿って複数の波形形状が前記所定間隔で形成され、前記波形形状における山部および谷部が前記金属プレートの幅方向に沿って弓状に湾曲させた形状を有し、前記谷部において基板を保持する構成であることを特徴とする基板保持具。
【請求項2】
長尺状の金属プレートをプレスすることにより、前記金属プレートの長手方向に複数の波形形状を所定ピッチで形成し、前記波形形状における山部および谷部を前記金属プレートの幅方向に沿って弓状に湾曲させた形状の基板保持具を製造する方法であって、
前記金属プレートの長手方向に沿って前記所定ピッチで前記波形形状の谷部を1つずつ順次プレス形成していくことにより、前記谷部の湾曲形状と前記山部の湾曲形状とを順次形成していくことを特徴とする基板保持具の製造方法。
【請求項3】
前記金属プレートの一面側に、複数の波形形状が一体的に形成された受け金型を配置する工程と、
前記金属プレートの他面側に、前記波形形状における1つの谷部を成型すると共にその1つの谷部に隣接する2つの山部のそれぞれ半分を成型する押圧金型を隣接させて複数配置する工程と、
前記複数の押圧金型を、前記金属プレートにおける長手方向の一方向側から1つずつ順に押圧していく工程と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の基板保持具の製造方法。
【請求項4】
前記金属プレートは、チタン又はステンレス鋼で構成されることを特徴とする請求項2又は3に記載の基板保持具の製造方法。
【請求項5】
複数の波形形状が一体的に形成されると共に、各波形形状の山部および谷部が弓状に湾曲した形状を有する受け金型と、
長尺状の金属プレートを挟んで前記受け金型に対向して配置されると共に、前記波形形状における1つの谷部を成型すると共にその1つの谷部に隣接する2つの山部のそれぞれ半分を成型するために互いに隣接して配置される複数の押圧金型と、
前記受け金型と前記複数の押圧金型との間に前記金属プレートを配置した状態で、前記複数の押圧金型を1つずつ、前記金属プレートにおける長手方向の一方向側から順に押圧していく押圧手段と、
を備えることを特徴とする基板保持具の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−107681(P2013−107681A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254603(P2011−254603)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(511283767)
【Fターム(参考)】