説明

基板検査方法、及び基板検査装置

【課題】薄板化された基板に形成されたチップの検査に要する時間を短縮する。
【解決手段】基板30を、基板30の外縁部32の少なくとも一部を保持しかつ外縁部32に囲まれる領域は非接触状態を保ちつつ所定の位置まで搬送する搬送工程と、搬送工程により生じた振動が収束するまで待機する待機工程と、基板30の少なくとも一方の面に関する何らかの情報を取得する検査工程と、を実施する基板30の検査方法であって、少なくとも待機工程が実施されている間の少なくとも一部の時間中に、基板30の表裏両面から気体42を吹き付けて、振動の収束を促進する送風工程を実施することを特徴とする基板検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板検査方法、及び基板検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の電子デバイス市場においては、MEMS(Micro Electro−Mechanical System)技術(以下、単に「MEMS」と称する。)を用いた製品が浸透しつつある。MEMSとは、例えばミクロンオーダー等の微細な構造体を作る技術であり、半導体装置の製造技術を応用している場合が多い。すなわち、成膜技術やフォトリソグラフィー法等のパターニング技術を用いて、単結晶シリコン等から成る基板上に微小な構造体を形成する場合が多い。かかる場合において、上述の基板もMEMS技術による構造体の一部に成り得るため、製造過程において薄板化される場合が多い(例えば特許文献1参照)。
【0003】
かかる薄板化された基板の場合、裏面も構造体の一部となるため、接触が制限される。したがって外観等を検査する場合、該基板の裏面全域を吸着せずに外縁部のみを吸着等により固定して、外縁部に囲まれた領域である内側領域は非接触状態に保ちつつ搬送及び検査を行なう必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−50539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の基板検査方法では、基板自体の振動が問題となる。薄板化された基板を外縁部のみを固定して搬送等を行なうと、固定されていない内側領域では振幅がμm単位の振動が生じる。そして該振動が収まるまでは検査等の実施が不可能となる。かかる振動は、基板の大型化及び薄板化が進むにつれて大きくなる傾向にある。そのため、検査の前に該振動が収まるまで待機する時間が増加し、検査に要するコストが増加するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例の基板検査方法は、基板を、上記基板の外縁部の少なくとも一部を保持しかつ上記外縁部に囲まれる領域は非接触状態を保ちつつ所定の位置まで搬送する搬送工程と、上記搬送工程により生じた振動が収束するまで待機する待機工程と、上記待機工程後に上記基板の少なくとも一方の面に関する何らかの情報を取得する検査工程と、を実施する基板検査方法であって、少なくとも上記待機工程が実施されている間の少なくとも一部の時間中に、上記基板の表裏両面から気体を吹き付けて上記振動の収束を促進する送風工程を実施することを特徴とする。
【0008】
このような基板検査方法であれば、上述の待機時間を短縮できるため、基板検査装置の利用効率を向上でき、上述のMEMS製品の製造コストを低減できる。
【0009】
[適用例2]上述の基板検査方法であって、上記搬送工程が実施されている間の少なくとも一部の時間中にも上記送風工程を実施することを特徴とする基板検査方法。
【0010】
このような基板検査方法であれば、上述の待機時間をより一層短縮できるため、基板検査装置の利用効率をより一層向上できる。したがって、上述のMEMS製品の製造コストをより一層低減できる。
【0011】
[適用例3]本適用例の基板検査装置は、基板を、上記基板の外縁部に囲まれた領域である内側領域には接触せずに保持可能な基板保持機構と、上記基板保持機構で保持された上記基板を面方向に移動させる搬送機構と、上記基板保持機構で保持された上記基板の表裏両面に気体を吹き付ける送風機構と、上記基板保持機構で保持された上記基板の少なくとも一方の面から何らかの情報を取得する検査機構と、を備えることを特徴とする。
【0012】
このような基板検査装置であれば、基板が搬送されることにより生じた(該基板の)振動を強制的に停止させることができる。したがって、振動が発生しやすい薄板化された基板を効率的に検査できる。
【0013】
[適用例4]上述の基板検査装置であって、上記送風機構は、上記表裏両面の全域に気体を吹き付ける機構であることを特徴とする基板検査装置。
【0014】
このような基板検査装置であれば、薄板化された基板の搬送時における振動の発生を低減できる。そして、発生した僅かな振動も強制的に停止させることができる。したがって、振動が発生しやすい薄板化された基板をより一層効率的に検査できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態にかかる基板検査装置の概要を示す模式斜視図。
【図2】第1の実施形態にかかる基板検査装置の検査対象である基板を示す図。
【図3】吸着台の概要を示す模式平面図。
【図4】吸着台を基板面方向から見た状態を示す外観図。
【図5】吸着台の断面を、基板の断面及び筐体の断面と共に示す模式断面図。
【図6】第2の実施形態の基板検査方法を示すタイムチャート図。
【図7】第2の実施形態の基板検査方法を示す工程図。
【図8】第3の実施形態にかかる上側送風領域が拡大された筐体を示す図。
【図9】第4の実施形態の基板検査方法を示すタイムチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0017】
(第1の実施形態)
<基板検査装置>
まず、本実施形態の基板検査装置の概要について説明する。図1は、本実施形態にかかる基板検査装置1の概要を示す模式斜視図である。
基板検査装置1は、X方向(X軸方向)に往復移動可能な第1テーブル11とY方向(Y軸方向)に往復移動可能な第2テーブル12を備えている。第2テーブル12は、基台2上に形成されたY方向に延在するレール(符号無し)上を移動する。そして第1テーブル11は、第2テーブル12上に形成されたX方向に延在するレール(符号無し)上を移動する。第1テーブル11と第2テーブル12とで、搬送機構10が構成されている。なお上述の「上」とは、Z方向(Z軸方向)における、基台2から見て第1テーブル11等が配置されている側を示している。
【0018】
第1テーブル11上には、基板30を吸着可能な吸着台7が配置されている。上述したように第1テーブル11がX方向に往復移動可能であり、第2テーブル12がY方向に往復移動可能であるため、吸着台7は基板30を保持した状態でXY平面における任意の位置に移動可能である。なお、基板検査装置1における基板30を吸着台7に移載する作業は手作業で実施する必要があるが、専用の移載装置を用いる態様も可能である。
【0019】
基台2上には、上述の搬送機構10を跨ぐように支持体15が配置されている。そして該支持体のX方向に延在する部分の略中央には、検査機構3(図5参照)の一部を収納する筐体4が配置されている。かかる検査機構3は、後述するようにカメラ5(図5参照)により基板30の表面等を撮影して、基板30に形成されたチップ31(後述する図2参照)の外観を検査できる。すなわち、本実施形態にかかる基板検査装置1は、外観検査装置である。筐体4は、支持体15に形成されたるレール(符号無し)により、Z方向の移動が可能である。以上の構成により、基板検査装置1は基板30の任意の位置における外観を検査して、良否等の判定を実施することができる。
【0020】
<基板>
次に、上述の基板検査装置1の検査対象である基板30について、図2を用いて説明する。図2(a)は、基板30の模式平面図である。図2(b)は、図2(a)のA−A’線における断面を示す、基板30の模式断面図である。図2(a)に示すように、基板30は平面視で環状の外縁部32と該外縁部に囲まれた領域である内側領域33に区画されている。なお、上記双方の領域は基板30の表裏両面に適用される概念である。
【0021】
内側領域33には、チップ31が規則的に形成されている。チップ31はMEMS技術で製造されたMEMS素子であり、立体的な構造を有している。具体的には、チップ31は、基板30の表面から若干盛り上がった凸部又は若干掘り下げられた凹部である構造体36と、基板30を貫通する孔である貫通孔35を備えている。構造体36の外観検査は、基板30の表面(上面)側から光を照射して実施することができる。一方、貫通孔35の検査は、基板30の裏面(下面)側からも光を照射して実施する必要がある。なお、隣り合うチップ31間は、スクライブライン(符号無し)又はダイシングライン(符号無し)で区切られている。
【0022】
基板30は単結晶シリコンからなる基板であり、元の厚さは625μm〜725μmである。そして図2(b)に示すように、内側領域33においては略65μmまで薄板化されている。なお、外縁部32は上述の元の厚さを保っている。
かかる薄板化は、チップ31すなわちMEMS素子の形成工程の一環である。そして本実施形態におけるMEMS素子は、一般的な半導体装置とは異なり基板30の表裏双方の面を構成要素に含んでいる。したがって、外観検査時においても表裏双方の面は共に保護される面であり、少なくともチップ31が形成されている領域については接触が不可能である。そのため基板30は、外観検査時において外縁部32のみ接触するように吸着台7に保持される。そしてかかる状態で、上述の検査機構3によりチップ31毎に外観検査される。そのため、基板30の外観検査時には、外縁部32のみを保持された状態で細かい移動が繰り返される。そしてかかる移動の際に、薄板化された内側領域33に振動が生じ得る。そして上述の外観検査は、該振動が収束するのを待って実施する必要がある。本実施形態の基板検査装置1は、かかる振動の収束に要する時間の短縮を可能とするものである。
【0023】
<吸着台と検査機構>
次に、基板検査装置1が備える基板保持機構16と送風機構20と検査機構3について、説明する。上述の機構のうち、送風機構20は基板30の表裏両面に気体42を吹き付ける機構である。そのため、基板検査装置1では、送風機構20が基板30の下方に位置する吸着台7と基板30の上方に位置する筐体4の双方に配置されている。
【0024】
検査機構3の構成要素は、主として筐体4内に収められている。ただし、上述したように、基板30に形成された貫通孔35の外観を検査する際には、基板30の裏面側から光を照射する必要がある。そのため、検査機構3は吸着台7に配置された光源(後述する下部光源14)も構成要素に含んでいる。以下、かかる基板保持機構16と送風機構20と検査機構3の構成について、図3〜図5を参照して説明する。なお送風機構20は、基板検査装置1には含まれない圧空源21(図3等参照)を含んでいる。また、基板保持機構16の構成要素は筐体4には配置されていない。
【0025】
図3は、吸着台7の概要を示す模式平面図である。図4は、吸着台7を基板面方向から見た状態を示す外観図である。そして図5は、図3のB−B’線における吸着台7の断面を、該吸着台上に載置された基板30の断面及び筐体4の断面と共に示す模式断面図である。
【0026】
吸着台7は、吸着台本体8と透明基板9とで構成されている。吸着台本体8は、金属等の加工が容易な材料からなる。図5では一体の部材として図示しているが、複数の部材を接合して形成してもいい。透明基板9はガラスで形成されているが、アクリル等の他の透明材料を用いてもよい。
【0027】
まず、基板保持機構16について説明する。図3及び図5に示すように、吸着台7(具体的には上述の吸着台本体8)には基板30の平面形状に合せた外側の窪み(符号無し)が形成されている。そして、かかる外側の窪みの内側に、平面形状が基板30の内側領域33に略一致する内側の窪み(符号無し)が形成されている。そして外側の窪みと内側の窪みとの間の段差の部分には、吸着溝25が形成されている。
【0028】
吸着溝25は平面視で環状であり、かつ、平面視で基板30の外縁部32に収まっている。したがって吸着台7は、基板30を外縁部32のみが接触するように、すなわち内側領域33には接触することなく吸着して保持(固定)できる。吸着溝25は、真空経路18に連通している。そして真空経路18は、第1の開閉バルブ19を介して真空ポンプ等の真空源17に接続されている。したがって、基板30は、第1の開閉バルブ19の開閉により、任意に着脱可能である。真空源17と真空経路18と第1の開閉バルブ19と吸着溝25とで、基板保持機構16が構成される。
【0029】
次に、送風機構20について説明する。送風機構20は、圧空源21と送風経路22と第2の開閉バルブ23と送風孔26とで構成される機構であり、基板30に気体42を吹き付ける機構である。そして上述したように、送風機構20は吸着台7と筐体4の双方に振り分けられている。
【0030】
まず、吸着台7側の送風機構20について説明する。吸着台7側の送風孔26は、上述の内側の窪みすなわち基板30の内側領域33と重なる領域において、吸着台本体8を貫通するように形成された孔である。そして送風孔26の一部は、平面視で基板30に形成されたチップ31の貫通孔35を含むように形成されている。すなわち、吸着台7上に基板30が設置された状態において、送風孔26の中心が貫通孔35の中心と略一致し、かつ送風孔26の径が貫通孔35の径よりも大きくなるように形成されている。なおチップ31が、多数の細かい貫通孔35を有する場合においては、該多数の貫通孔35を平面視で含む大径の送風孔26を用いることもできる。
【0031】
なお、上述したように貫通孔35を平面視で含む送風孔26は一部である。それ以外の送風孔26は、内側領域33の貫通孔35が形成されていない領域に対面するように形成されている。また、貫通孔35を平面視で送風孔26内に収めるためには、基板30を吸着台7上に載置する際に位置合せが必要となる。かかる位置合せを容易に実施するために、基板30にオリフラを形成しても良い。
【0032】
吸着台7側の送風経路22は、圧空源21から上述の吸着台7側の送風孔26に至る経路である。具体的には、吸着台本体8と透明基板9との間の空間、及び圧空源21から第2の開閉バルブ23を介して上述の空間に至る配管等で構成される経路である。圧空源21は空気等を加圧可能な圧力ポンプが用いられるが、窒素等が充填された高圧ボンベを用いることもできる。
【0033】
吸着台7側の送風機構20は、第2の開閉バルブ23の開閉により、圧空源21から供給される気体42を、外縁部32が吸着されることで保持されている基板30に対して裏面側から任意のタイミングで吹き付けることができる。そして上述したように、送風孔26は上述の内側の窪み内に規則的に形成されている。そして、送風孔26の一部は貫通孔35を平面視で含まないように形成されている。また、貫通孔35を平面視で含む送風孔26も、該貫通孔と重ならない領域を有している。そのため、吸着台7側の送風機構20は、送風孔26を介して基板30の内側領域33の略全域に満遍なく気体42を吹き付けることができる。
【0034】
次に、筐体4側の送風機構20について説明する。上述したように、筐体4側の送風機構20も、(吸着台7側の送風機構20と同様に)圧空源21と送風経路22と第2の開閉バルブ23と送風孔26とで構成されている。筐体4側の送風孔26は、筐体4の底部に規則的に形成された、該底部を貫通する孔である。
【0035】
筐体4は上部にカメラ5等を内蔵しており、底部には吸着台7に保持された基板30と対向する板状部材を有している。送風孔26は、かかる底部の板状部材に形成されている。そして筐体4において、底部の板状部材とカメラ5等が内蔵された上部との間は空間になっている。かかる空間と、圧空源21から第2の開閉バルブ23を介して該空間に至る配管等が筐体4側の送風経路22である。筐体4側の送風機構20も、上述の吸着台7側の送風機構20と同様に、第2の開閉バルブ23の開閉により圧空源21から供給される気体42を、外縁部32が吸着されることで保持されている基板30に対して表面側から任意のタイミングで吹き付けることができる。
【0036】
ここで、基板30の表面側から気体42が吹き付けられる領域、すなわち筐体4側における送風孔26が形成されている領域を、上側送風領域27とする。本実施形態の基板検査装置1における上側送風領域27は、平面視で円形に近い形状である。より具体的には、六角形あるいは八角形等の形状である。ただし、本発明の実施の形態は、かかる形状に限定される物でなく、他の形状であっても基板30の表面側から気体42を吹き付ける機能を果たすことができる。
図示するように、上側送風領域27は上述の内側の窪みが形成されている領域すなわち基板30の内側領域33よりも狭い。したがって、本実施形態の基板検査装置1を用いた場合、基板30の表面側からの気体42は、該基板の内側領域33の一部領域に対して吹き付けられる。
【0037】
なお、圧空源21と第2の開閉バルブ23は、吸着台7側の送風機構20と筐体4側の送風機構20の双方の送風機構で共通である。したがって、本実施形態の基板検査装置1においては、基板30の表面側からの送風と裏面側からの送風は共通するタイミングで行われる。ただし、同時に開閉するように制御された別個の第2の開閉バルブ23を用いることもできる。
また、図3及び図4に示すように、吸着台7側の送風経路22は、真空経路18に対してZ方向に間隔を有するように形成されている。したがって、上記双方の経路は平面視では近接しているにもかかわらず、互い干渉等を起こすことなく形成されている。
【0038】
次に、検査機構3について説明する。本実施形態にかかる基板検査装置1の検査機構3は、筐体4内に配置されたカメラ5と上部光源13と半透過反射板6、そして吸着台7の下方に配置された下部光源14とで構成されている。そしてかかる構成により、基板検査装置1は、基板30を表面側から撮影して構造体36の外観を検査すると共に、貫通孔35を基板30の裏面側から検査できる。
【0039】
まず、基板30の表面側からの検査について説明する。半透過反射板6は、XY平面に対して45度傾くように配置されている。上部光源13から照射された第1の照射光43は、半透過反射板6により一部が基板30に向けて照射される。そして、基板30の表面で反射して反射光となる。そして該反射光の一部が半透過反射板6を透過してカメラ5に到達する。かかる反射光により、カメラ5はチップ31上に形成された構造体36の外観を検査できる。なお、第1の照射光43を基板30に向けて照射するために、筐体4側の送風孔26の1つは、第1の照射光43の光軸を含むように形成されている。
【0040】
次に、基板30の裏面の検査について説明する。下部光源14は平板状の光源であり、少なくとも内側領域33を平面視で含んでいる。そのため下部光源14は、基板30の裏面側から内側領域33の全域に、透明基板9を介して第2の照射光44を照射できる。そして上述したように、送風孔26は貫通孔35を平面視で含んでいる。そのため第2の照射光44は、貫通孔35内からカメラ5に向けて照射される。かかる第2の照射光44により、カメラ5はチップ31に形成された貫通孔35の外観(具体的には該貫通孔の輪郭)を検査できる。
【0041】
このように本実施形態にかかる基板検査装置1は、基板30を吸着台7で保持してXY平面上の任意の位置に移動させることができる。そして基板30の表裏両面から光を照射して、表面の構造体36等及び貫通孔35の外観を検査できる。
ここで、基板30は外縁部32を除いて薄板化されているため、上述したように、移動させることにより振動が生じる。したがって、上述の外観検査は該振動が収まるのを待って実施する必要がある。基板検査装置1は、送風機構20により、基板30の表裏両面から気体42を任意のタイミングで吹き付けることができる。そしてかかる気体42により、上述の振動を強制的に収束させることができる。すなわち上述の振動を、該振動が自然に収まるのを待つ場合に比べて、より短時間で収束させることができる。そのため、本実施形態の基板検査装置1を用いた場合、薄板化された基板30の外観検査を効率的に実施できる。したがって、製造効率を向上でき、MEMS製品等の製造コストを低減できる。
【0042】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態として、上述の基板検査装置1を用いて行なう基板検査方法について、図6、図7を参照して説明する。
図6は、本実施形態の基板検査方法を示すタイムチャート図である。本実施形態における基板30の検査工程は、基板30における検査対象のチップ31(図2参照)がカメラ5の直下に位置するように基板30を搬送する(移動させる)搬送工程と、該搬送により基板30に生じた振動が、外観検査可能なレベルに収束するまで待機する待機工程と、カメラ5を用いてチップ31外観を検査する検査工程とから成る。本図は、かかる3工程に要する時間、すなわち搬送工程期間51と待機工程期間52と検査工程期間53の夫々が実施される時間を示している。搬送工程期間51は搬送機構10が動作している期間であり、検査工程期間53は検査機構3が動作している期間である。そして上記の3工程の実施期間の合計が、1つのチップ31を検査するために要する時間であるチップ処理期間50である。
【0043】
なお、本実施形態の基板検査方法では、上記振動が収束しているか否かの判定もカメラ5を用いて行っている。したがって、待機工程期間52にもカメラ5を含む検査機構3は動作している。したがって、上記の検査工程期間53は、検査機構3により基板30の外観の検査が行われている期間を示している。
【0044】
本実施形態の基板検査方法は、上述の3工程に平行して、基板30の表裏両面に気体42を吹き付ける送風工程を実施している。図6には、該工程の実施期間すなわち送風機構20が動作している期間である送風工程期間54も図示している。本実施形態では、送風工程期間54が待機工程期間52と略一致している。すなわち搬送機構10が停止してから検査機構3による外観検査が開始されるまでの間に、送風機構20が動作している。そしてかかる送風機構20により、待機工程期間52を短縮している。
【0045】
図7は、本実施形態の基板検査方法を示す工程(断面)図であり、送風工程の効果を示す図である。以下、工程順に説明する。
図7(a)は、検査工程期間53の基板30を示している。待機工程期間52を経ているため、基板30は完全に停止した状態である。
図7(b)は、搬送工程が終了した時点の基板30を示している。上述したように1つのチップ31(図2参照)の外観検査が終了した後に、次のチップ31がカメラ5の直下に位置するように、基板30は搬送される。そして該搬送により、基板30にはZ方向(図1参照)すなわち基板面の法線方向の振動(矢印で図示)が生じる。
図7(c)は、送風工程が実施されている状態、すなわち基板30の表裏両面に気体42が吹き付けられている状態を示す図である。かかる気体42により基板30に対して表裏両面から押さえつける力が働き、上述の振動が強制的に収束させられる。すなわち基板30をそのまま放置する場合に比べて、上述の振動を短時間で収束させることができる。なお上述したように、かかる送風工程が実施されている間にもカメラ5は動作して、上記の振動の態様を撮影し観察している。
図7(d)は、振動が収束した基板30に対して第1の照射光43と第2の照射光44を照射している状態、すなわち次のチップ31を検査している状態を示す図である。
【0046】
このように、本実施形態の基板検査方法は、送風工程の実施により待機工程期間52を短縮している。上述したように、1つのチップ31を検査する時間であるチップ処理期間50は、搬送工程期間51と待機工程期間52と検査工程期間53を合計した時間である。そして搬送工程期間51と検査工程期間53は送風工程の実施によっても変化しない。そのため本実施形態の基板検査方法であれば、薄板化され、かつ裏面も構造体36の一部となる基板30の検査に要する時間を短縮でき、基板検査装置1の効率を向上できる。そのため、裏面も構造体36の一部とするMEMSを用いた製品の製造コストを低減できる。
【0047】
(第3の実施形態)
次に第3の実施形態として、上側送風領域27が拡大された基板検査装置について説明する。図8は、本実施形態にかかる基板検査装置(符号無し)が備える上側送風領域27が拡大された筐体、すなわち送風孔26が形成されている領域が拡大された筐体である第2の筐体48を、カメラ5等と共に示す図である。なお、本実施形態の基板検査装置は、第2の筐体48以外の構成要素については上記の基板検査装置1と略同一である。そこで、吸着台7等の構成要素については、図示を省略する。
【0048】
図示するように、第2の筐体48は、上部の構造については、第1の実施形態の基板検査装置1が備える筐体4と共通している。すなわち、第2の筐体48の上部は、カメラ5、半透過反射板6、及び上部光源13を収納している。かかる3つの構成要素に図示を省略した下部光源14(図5参照)を加えて、検査機構3(図5参照)が構成される点も基板検査装置1と共通している。
【0049】
そして第2の筐体48は、下部、すなわち送風孔26が形成されている部分が水平方向に拡大されている。上述したように上側送風領域27は、平面視で六角形等の円に近い形状を有している。第2の筐体48の上側送風領域27は、かかる平面形状は略維持したままで、水平方向の寸法が増大している。そして送風孔26は、第1の実施形態における密度と略同一の密度で、拡大された上側送風領域27内に形成されている。そのため、送風孔26の個数が増大している。
【0050】
上側送風領域27が拡大され、送風孔26の個数が増加しているため、本実施形態の基板検査装置は、上述の基板検査装置1に比べて、基板30の表面におけるより広い領域により多くの気体42を吹き付けることができる。そのため、上述の送風工程期間54において、上述の振動をより一層短時間で収束させることができる。そのため、本実施形態の基板検査装置を用いた場合、MEMSを用いた製品の外観検査を短時間で実施でき、製造コストをより一層低減できる。
【0051】
なお、上側送風領域27は、最大で、径が基板30の内側領域33の径(上側送風領域27の平面形状を円形とみなした場合の径)の略2倍となるまでの拡大することができる。かかる程度まで拡大すれば、内側領域33の最も端に形成されたチップ31を検査する場合においても、基板30の表面の略全域に気体42を吹き付けることができる。
【0052】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態として、送風工程期間54が延長(拡大)された基板検査方法について説明する。図9は、本実施形態の基板検査方法を示すタイムチャート図である。本実施形態の基板検査方法は、チップ処理期間50が搬送工程期間51と待機工程期間52と検査工程期間53とで構成されている点で、第2の実施形態の形成検査方法と共通している。そして本実施形態の基板検査方法は、図示するように、送風工程期間54が待機工程期間52と共に搬送工程期間51も含んでいる点に特徴がある。すなわち本実施形態の基板検査方法は、搬送機構10が動作している間も送風機構20が動作して、基板30に対して表裏両面から気体42を吹き付けている。
【0053】
上述したように、基板30における法線方向の振動は搬送工程の実施により生じる。上述の第2の実施形態の基板検査方法は、基板30の表裏両面から気体42を吹き付けることによりかかる振動の収束に要する時間を低減するものである。すなわち、振動を強制的に収束させることにより、待機工程期間52を短縮するものである。
【0054】
本実施形態の基板検査方法は、搬送工程期間51にも送風工程を実施することにより、振動の発生そのものを低減している点に特徴がある。すなわち、基板30が搬送されている間にも表裏両面から気体42を吹き付けることで、図7(b)に示す振動の振幅を減少させている。そのため、同様の送風機構20を用いた場合であっても、待機工程期間52をより一層短縮できる。したがって、チップ処理期間50をより一層短縮して、基板検査装置1の利用効率をより一層向上でき、薄板化された基板30に形成されたMEMS製品等の製造コストをより一層低減できる。
【0055】
本発明は、上述の各実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0056】
(変形例1)
上述の基板検査装置1は基板30の外観を検査する装置であった。しかし本発明の実施の形態は、カメラ5等を用いた外観検査装置のみでなく、プローバー等を用いることで基板30に形成された各チップ31の電気的な特性等も検査する検査装置にも適用できる。かかる電気的な特性を検査する場合においても、振動が収まるまで待機する待機時間を低減できるため、検査時間を低減して製造コストを低減できる。
【0057】
(変形例2)
上述の基板検査装置1、及び第3の実施形態の基板検査装置(符号無し)は、貫通孔35の検査を、基板30の裏面側から照射される第2の照射光44を用いて行っている。しかし、本発明の実施の形態は、基板30の表面側から照射される光のみを用いる基板検査装置及び基板検査方法にも適用できる。かかる場合、検査機構3の構成要素が筐体(4又は48)内に全て収まるため、基板検査装置の構成が簡略化される。
【0058】
(変形例3)
上述の第2の実施形態の基板検査方法は、送風工程を待機工程期間52に実施している。また、上述の第4の実施形態の基板検査方法は、送風工程を搬送工程期間51と待機工程期間52の双方の期間に実施している。しかし送風工程の実施期間を、他の工程が実施される期間に一致させる必要は無い。したがって送風工程を、待機工程期間52の中の一部の時間中のみに実施する形態も可能である。また送風工程を、待機工程期間52の全期間と搬送工程期間51の中の一部の時間中に実施する形態も可能である。
【0059】
(変形例4)
上述の基板検査装置1は、気体42を送風孔26すなわち局所的に形成された孔から吹き付けていた。しかし、気体42を孔ではなく、より広い領域全体から吹き付ける実施の形態も可能である。例えば吸着台7においては、吸着溝25を構成する環状の領域以外は空洞として、内側領域33の略全面に気体42を吹き付ける構成も可能である。かかる構成の基板検査装置は構造を簡略化でき、また吸着台7を軽量化できるという長所を有している。
【符号の説明】
【0060】
1…基板検査装置、2…基台、3…検査機構、4…筐体、5…カメラ、6…半透過反射板、7…吸着台、8…吸着台本体、9…透明基板、10…搬送機構、11…第1テーブル、12…第2テーブル、13…上部光源、14…下部光源、15…支持体、16…基板保持機構、17…真空源、18…真空経路、19…第1の開閉バルブ、20…送風機構、21…圧空源、22…送風経路、23…第2の開閉バルブ、25…吸着溝、26…送風孔、27…上側送風領域、30…基板、31…チップ、32…外縁部、33…内側領域、35…貫通孔、36…構造体、42…気体、43…第1の照射光、44…第2の照射光、48…第2の筐体、50…チップ処理期間、51…搬送工程期間、52…待機工程期間、53…検査工程期間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を、前記基板の外縁部の少なくとも一部を保持しかつ前記外縁部に囲まれる領域は非接触状態を保ちつつ所定の位置まで搬送する搬送工程と、前記搬送工程により生じた振動が収束するまで待機する待機工程と、前記待機工程後に前記基板の少なくとも一方の面に関する何らかの情報を取得する検査工程と、を実施する基板検査方法であって、
少なくとも前記待機工程が実施されている間の少なくとも一部の時間中に、前記基板の表裏両面から気体を吹き付けて前記振動の収束を促進する送風工程を実施することを特徴とする基板検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板検査方法であって、
前記搬送工程が実施されている間の少なくとも一部の時間中にも前記送風工程を実施することを特徴とする基板検査方法。
【請求項3】
基板を、前記基板の外縁部に囲まれた領域である内側領域には接触せずに保持可能な基板保持機構と、
前記基板保持機構で保持された前記基板を面方向に移動させる搬送機構と、
前記基板保持機構で保持された前記基板の表裏両面に気体を吹き付ける送風機構と、
前記基板保持機構で保持された前記基板の少なくとも一方の面から何らかの情報を取得する検査機構と、
を備えることを特徴とする基板検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載の基板検査装置であって、
前記送風機構は、前記表裏両面の全域に気体を吹き付ける機構であることを特徴とする基板検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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