説明

基礎杭の構築方法、圧縮強度の推定方法

【課題】施工中にその場で、圧縮強度が適切か否を判断でき、強度が不足してもセメントミルク類が固化する前に適切な対処ができ、無駄を省き、設計強度に見合った適切な基礎杭を構築する。
【解決手段】地上でセメントミルクの温度Tcを測定し、杭穴根固め部13内の掘削残存物の温度Tdを測定する。杭穴根固め部13の底14付近で全量の3分の1のセメントミルクを吐出し、掘削ヘッド1を回転上昇させながら全量の3分の1のセメントミルクを吐出し、掘削ヘッド1を昇降して残りの3分の1を吐出する。杭穴根固め部13内のセメントミルク混合物の温度Tcを測定し、各温度から、セメントミルク混合物のセメントミルク置換率56%を得る。予め用意した「圧縮強度・置換率グラフ」で置換率0.56%のときの推定圧縮強度17.6N/mmを得る。万一、設計圧縮強度に至らなかった場合にはセメントミルクを追加注入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、杭穴底部にセメントミルク類を注入した杭穴内に既製杭等の杭穴構造物を埋設して、基礎杭を構築する方法において、杭穴底部のセメントミルク類の固化性能を推定して施工する基礎杭の構築方法及びその圧縮強度の推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
杭穴を掘削して、杭穴内に基礎杭を埋設して、基礎杭構造を構成する場合、掘削後に杭穴底部に、掘削泥土等の掘削残余物が残っており、既製杭と杭穴の一体化を図るため、杭穴底部にセメントミルクを注入撹拌してソイルセメントとしていた。また、より大きな支持力を得るためには、掘削残余物を排除するために、杭穴底から静かにセメントミルクを注入して、比重の相違を利用して掘削残余物を浮き上げて置換して、杭穴底部にセメントミルクが充填された状態を創っていた。また、この場合、より強度を高めるために、セメントミルクの濃度を濃くし又はセメントミルク量を増加し(セメント量を増す)、杭穴底部の径を軸部より大きく形成する場合もあった。
【0003】
この場合、杭穴底部のセメントミルクあるいはソイルセメントの固化強度を確認して、基礎杭構造が設計通りの性能を確保できるかどうかを、既製杭を埋設する前に、杭穴底部に充填されたセメントミルクや混合したソイルセメントを未固結試料として採取して、地上で固化させて、所定の強度を確保できるかどうか圧縮強度試験をして確認する場合があった(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−73360公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記未固結試料を採取して、圧縮試験をする方法であれば、確実に圧縮強度を確認できるが、通常圧縮強度は28日間の養生を必要とし、最低でも7日を必要としていた。従って、事後的に施工が設計通り行われていることを確かめることはできたが、万一、必要な圧縮強度が発揮できない場合には、その現場で杭穴内は既に固化しており、事後的に補強工事をするなど、対応が煩雑となる問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこでこの発明では、施工中に、杭穴内のセメントミルク類混合物の情報を地上で引き出すことにより、セメントミルク類置換率から固化強度を推定できるので、万一不都合が合った場合であっても、その場で、対応ができ、前記従来の問題点を解決した。
【0007】
即ちこの発明は、杭穴を掘削して、杭穴底内にセメントミルクを注入して、「杭穴底内残置されている掘削残余物をセメントミルク類で置換してあるいは撹拌混合し」、杭穴内に杭穴構造物を埋設して基礎杭を構築する工法において、以下のように構成することを特徴とする基礎杭の構築方法である。
(1) 予め、掘削残余物に対して、所定濃度のセメントミルク類を混入して置換し、異なる置換率のセメントミルク類混合物に対して、その混合物を固化させて、圧縮強度を測定し、「セメントミルク類置換率−圧縮強度」の対応データを準備する。
(2) 地上で、注入予定又は注入中のセメントミルク類の「温度」及び/又は「比重」を測定する。
(3) 杭穴掘削後、前記掘削残余物の「温度」及び/又は「比重」を測定する。
(4) 前記杭穴内に前記セメントミルク類を注入して前記掘削残余物と撹拌混合又は置換して、セメントミルク類混合物を生成し、該セメントミルク類混合物の「温度」及び/又は「比重」を測定する。
(5) 地上で、前記各「温度」及び/又は「比重」から、セメントミルク類混合物の置換率を推定し、前記「セメントミルク類置換率−圧縮強度」の対応データと照合して圧縮強度を推定する。
(6) 前記推定した圧縮強度が必要な圧縮強度に至らない場合には、前記杭穴内にセメントミルク類を追加注入する。
(7) 必要な圧縮強度に至らなかった場合には、前記(4)〜(6)を繰り返す。
(8) 前記推定した圧縮強度が必要な圧縮強度に至ったならば、セメントミルク類の注入を終了する。
(9) 続いて、前記杭穴構造物を下降して、前記杭穴構造物の下端部を前記杭穴の底部に埋設して、基礎杭を構築する。
【0008】
また、他の発明は、杭穴を掘削して、杭穴底内にセメントミルクを注入して、「杭穴底内残置されている掘削残余物をセメントミルク類で置換してあるいは撹拌混合し」、基礎杭を構築する工法において、セメントミルク類の圧縮強度を以下のように推定することを特徴とする圧縮強度の推定方法である。
(1) 予め、掘削残余物に対して、所定濃度のセメントミルク類を混入して置換し、異なる置換率のセメントミルク類混合物に対して、その混合物を固化させて、圧縮強度を測定し、「セメントミルク類置換率−圧縮強度」の対応データを準備する。
(2) 地上で、注入予定又は注入中のセメントミルク類の「温度」及び/又は「比重」を測定する。
(3) 杭穴掘削後、前記掘削残余物の「温度」及び/又は「比重」を測定する。
(4) 前記杭穴内に前記セメントミルク類を注入して前記掘削残余物と撹拌混合又は置換して、セメントミルク類混合物を生成し、該セメントミルク類混合物の「温度」及び/又は「比重」を測定する。
(5) 地上で、前記各「温度」及び/又は「比重」から、セメントミルク類混合物の置換率を推定し、前記「セメントミルク類置換率−圧縮強度」の対応データと照合して圧縮強度を推定する。
【0009】
前記において、セメントミルク類とは、セメントなどの水硬性材料に水を混合したものを指し、セメントミルクの他、砂を追加したセメントモルタル、砂利を追加したコンクリートも含む。
【0010】
また、前記において、杭穴構造物は主に既製杭や鉄筋篭等を指す。杭穴構造物が既製杭の場合、既製杭の埋設は、セメントミルク類としてのセメントミルクの注入が完了した後に、地上から既製杭を埋設する先堀工法、杭穴を掘削しながら既製杭を下降して、一旦既製杭を保持して根固め部を形成する中掘工法の何れにも適用できる。
【0011】
また、杭穴構造物を鉄筋篭とした場合には、セメントミルク類を、セメントミルクに砂や砂利を混合してコンクリートとし、あるいはソイルセメントとして現場造成杭に適用できる。また、同様の施工法をとる地盤改良杭の構築にも適用できる。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、セメントミルク類の温度及び/又は比重と、杭穴内の掘削残余物の温度及び/又は比重、セメントミルク類注入後のセメントミルク類混合物の温度及び/又は比重、を測定して、セメントミルク類置換率から圧縮強度を推定できる。従って、施工中にその場で、圧縮強度が適切か否を判断でき、もし、所望の圧縮強度に至らなかった場合であっても、セメントミルク類が固化する前であるので、セメントミルク類の追加注入など様々な対処が可能である。
【0013】
また、予め強度不足を見込んで、必要以上のセメントミルク類の注入をするなどの無駄を省き、設計強度に見合った適切な基礎杭を構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、この発明の実施例の根固め部の構築(第1の方法)を説明する図である。
【図2】図2は、この発明の実施例の他の根固め部の構築(第2の方法)を説明する図である。
【図3】図3は、この発明の実施例の他の根固め部の構築(第3の方法)を説明する図である。
【図4】図4は、この発明の実施例の他の根固め部の構築(第4の方法)を説明する図である。
【図5】図5は、この発明の圧縮強度−置換率 を対応させるグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.セメントミルク・泥水・混合物の温度・比重・体積
【0016】
一般に、
セメントミルク:温度Tc、比重Hc、体積Vc
掘削残余物(泥水):温度Td、比重Hd、体積Vd
未固結試料:温度Tm、比重Hm、体積Vm
とするとき、以下の式が成り立つ。ここで、未固結試料は、掘削残存物である泥水とセメントミルクとの混合物である。
Vm=Vc+Vd (式1)
Tm=(Tc×Vc+Td×Vd)/Vm (式2)
Hm=(Hc×Vc+Hd×Vd)/Vm (式3)
従って、「セメントミルク、泥水及び未固結試料の温度Tc、Td、Tm」または「セメントミルク、泥水及び未固結試料の比重Tc、Td及びTm」が分かり、かつ式1でVmに対するVc又はVdの割合が分かれば良いので、Vc+Vd=1 とすることができるので、根固め部のセメントミルクの置換率が分かる。
【0017】
2.セメントミルク置換率−圧縮強度 の測定
【0018】
予め、水セメント比W/C 60%のセメントミルクを使用して、ある杭穴内から泥と土と水が混じった泥水(掘削残存物)を採取して、混合率を変えて撹拌混合して、供試体とする。供試体の比重を測定すると共に、7日後、28日後に圧縮強度試験をした。また、各供試体で、泥水とセメントミルクの体積比から、セメントミルク置換率(即ち、セメントミルク含有率)を設定した。
その結果を下記表1に示す。
【0019】
【表1】

【0020】
3.使用する掘削ヘッド1
【0021】
(1) ヘッド本体2は、基部の下端に固定掘削刃3、3を下方に向けて突設し、基部の上端に掘削ロッドとの連結凸部4を有する。ヘッド本体2の基部は上部の直方体部に続き下方に向けて幅狭に形成され、下部が横方向に突出した膨大部を形成してある。膨大部の下面に固定掘削刃3、3が突設されている。
【0022】
(2) ヘッド本体2の基部の直方体部の正面に水平軸10、10が夫々突設され、両水平軸10に、夫々掘削腕6の上端部を回動自在に取り付ける。
掘削腕6は、上部が略鉛直に形成され、中間部はヘッド本体2の幅狭部に沿って、両掘削腕6、6が近づくように、ヘッド本体2側に向けて屈曲して形成され、下部は逆にヘッド本体2から離れるように外側下方に向けて屈曲されている。掘削腕6の上部に水平軸10が取り付けられ、下部の先端に下部に沿って外側下方に向けた掘削刃7、7が取り付けられている。
【0023】
(3) ヘッド本体2に、ヘッド本体2に接触する掘削残存物の温度を計測する温度計、ヘッド本体2に接触する掘削残存物の比重を測定する比重計が取り付けられている(図示していない)。また、温度計、比重計は、ケーブルにより又は無線により、地上の管理室内のPCにデータが送られるようになっている。また、温度計、比重計は掘削腕6に設けることもできる。
【0024】
(4) また、ヘッド本体2の下端に、セメントミルクの吐出口が形成され、地上のプラントからの操作で、水やセメントミルクなどを吐出できるようになっている。以上のようにして、掘削ヘッド1を構成する(図1)。
【0025】
(5) 使用する掘削ヘッド1は上記構造以外であっても、同様に杭穴掘削、セメントミルクの吐出が可能であれば、使用可能である(図示していない)。また、前記では掘削とセメントミルクの吐出を兼用の掘削ヘッド1を使用したが、掘削ヘッド1とは別途の撹拌吐出用のヘッドを用意して取り換えて使用することもできる(図示していない)。
【0026】
4.施工方法(基礎杭の構築方法)
【0027】
(1) 掘削ロッド10の下端に掘削ヘッド1を取り付けて、通常の方法により杭穴軸部12を掘削し、続いて杭穴軸部12の底部を拡大掘削して、杭穴根固め部13とする。この状態で、杭穴根固め部13内には、掘削残存物(掘削に使用した水と泥土などが混在した状態)が残っている。
この状態で、杭穴根固め部13内の温度を常時(または2分毎等の所定時間毎に)測定して、地上にデータを送る。
また、この状態で、掘削残存物の一部を採取して、これを地上に回収して、「掘削残存物採取物」とする。
【0028】
(2) (1)と同時に又は前後して、地上で、セメントミルク用のプラント内の吐出口付近で、貯めてあるセメントミルクの温度を測定する。この温度計測は、連続的に計測する。
【0029】
(3) 続いて、杭穴11の底14(=杭穴根固め部13の底14)に掘削ヘッド1を位置させ、掘削ヘッド1の吐出口から掘削水を放出しながら、かつ掘削ロッド10を回転しながら掘削残存物を撹拌しながら、杭穴根固め部13の上縁15付近まで掘削ヘッド1を上昇させ、引き続き掘削ヘッド1を杭穴11(杭穴根固め部13)の底14まで下げる。以上の反復工程動作をもう1回、繰り返し、掘削ヘッド1を杭穴11(杭穴根固め部13)の底14に位置させる。
【0030】
(4) 続いて、セメントミルクの吐出について説明する。吐出方法は任意であるが、例えば、以下の4つの方法の何れかを採用する。
【0031】
(a) 第1の方法(図1)では、杭穴根固め部13の底14付近で掘削ヘッド1を回転させて、吐出すべき全セメント量の3分の1量をそのまま吐出する。続いて、掘削ヘッド1を杭穴根固め部13の底14から根固め部13の上縁15まで、掘削ヘッド1を回転させながら上昇させる。この作動中に、吐出口からセメントミルク(吐出すべき全セメント量の3分の1量)を根固め部13内に注入する。
続いて、根固め部13の上縁15に位置する掘削ヘッド1を、杭穴底まで2回反復上下動させ、再度、根固め部13の上縁15に位置させる。この間で、掘削ヘッド1を回転して撹拌し、かつ吐出口からセメントミルク(吐出すべき全セメント量の3分の1量)を根固め部13内に注入する。以上で、全部のセメントミルクの注入が完了する(図1)。
【0032】
(b) 第2の方法(図2)では、第一の方法と同様に、杭穴拡底部13の底14に掘削ヘッド1を位置させ、掘削ヘッド1の吐出口から掘削水を放出しながら、かつ掘削ロッド10を回転しながら掘削残存物を撹拌しながら、杭穴根固め部13の上縁15付近まで掘削ヘッド1を上昇させ、引き続き掘削ヘッド1を杭穴拡底部13の底14まで下げる。以上の反復工程動作をもう1回、繰り返し、掘削ヘッド1を杭穴拡底部13の底14に位置させる。続いて、杭穴拡底部13付近で掘削ヘッド1を回転させて、吐出すべき全セメント量の30%量を、杭穴拡底部13の底14付近から吐出する。続いて、掘削ヘッド1を杭穴根固め部13の底14から根固め部13の上縁15まで、回転して上昇させる。この作動中に、吐出口からセメントミルク(吐出すべき全セメント量の60%の量)を杭穴根固め部13内に注入する。続いて、根固め部13の上縁15に位置する掘削ヘッド1を、杭穴根固め部13の底14まで2回反復上下動させ、再度根固め部13の上縁15に位置させる。この間で、掘削ヘッド1を回転して撹拌し、かつ吐出口からセメントミルク(吐出すべき全セメント量の10%の量)を杭穴根固め部13内に注入する。以上で、全部のセメントミルクの注入が完了する(図2)。
【0033】
(c) 第3の方法(図3)では、前記方法では、セメントミルクを注入する前の反復工程を2回繰り返したが、4回繰り返す。
【0034】
(d) 第4の方法(図4)では、前記方法の2回の反復工程の後に、根固め部13の穴底14付近で、掘削水からセメントミルクに切り換えて、反復工程と同様に、掘削ヘッド1を杭穴根固め部13の底14から根固め部13の上縁15まで往復する前処理工程動作を2回繰り返す。前処理工程動作では、反復工程と異なり、掘削水に代えてセメントミルクを吐出しながら、掘削ヘッド1を回転して撹拌する。続いて、杭穴根固め部13の底14付近で、掘削ヘッド1を回転させて、吐出すべき全セメント量の30%量を吐出する。続いて、掘削ヘッド1を杭穴根固め部13の底14から根固め部13の上縁15まで、回転させて上昇させる。この作動中に、吐出口からセメントミルク(吐出すべき全セメント量の60%量)を杭穴内に注入する。続いて、根固め部13の上縁15に位置する掘削ヘッド1を、杭穴根固め部13の底14まで2回反復上下動させ、再度根固め部13の上縁15に位置させる。この間で、掘削ヘッド1を回転して撹拌し、かつ吐出口からセメントミルク(吐出すべき全セメント量の10%量)を杭穴根固め部13内に注入する。以上で、全部のセメントミルクの注入が完了する(図4)。
【0035】
(5) 上記4つの方法の内、第1の方法〜第3の方法について、各データを下記表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
なお、表2で、B.セメントミルク温度は(プラント生成直後)地上で計測した。C.セメントミルク混合物温度は根固め部13より採取し、直ぐに地上で計測した。D.掘削残存物採取物は根固め部13より採取して、直ぐに地上で計測した。E.セメントミルク比重は(プラント生成直後)地上で計測した。F.掘削残存物採取物比重は根固め部13より採取し、直ぐに地上で計測した。G泥水比重は根固め部より採取して、地上で計測しています。
また、上記表2において、
セメントミルクの温度Tc、比重Hc、体積Vc
掘削残存物採取物の温度Td、比重Hd、体積Vd、
セメントミルク混合物の温度Tm、比重Hm、体積Vm
とすると、式1よりVmを1としたとき、1=Vc+Vdとなる。式2より
Tm=(Tc×Vc+Td×Vd)
が成り立つので、上記表2から第1の方法の場合を代入すると、
29.4=(35.4×Vc+21.9×Vd)
となり、Vc=0.56、Vd=0.44となる。よって、セメントミルク混合物のセメントミルク置換率は56%となる。
ここで、図5の圧縮強度・置換率グラフで置換率0.56%のときの圧縮強度を確認すると、17.6N/mmとなり、実際に測定した表2の未固結試料固化後の測定圧縮強度と一致する。
また、同様に第2の方法、第3の方法においても計算すると置換率は夫々81%、71%となり、図5と圧縮強度を比較すると一致する。
さらに、比重においても同様の結果が得られると推定でき、第3の方法では測定した比重より求めた置換率と、図5のグラフから推定した圧縮強度、表2の28日強度(σ28強度)と一致した。
【0038】
(6) 従って、第1の方法では、圧縮強度17.6N/mmが推定されるので、予め設定した圧縮強度(14N/mm)以上の強度が期待できるので、このまま施工しても問題が無いという判断になる。
よって、掘削ヘッド10を掘削ロッド1ともに、地上に引き上げ、通常の方法により、杭穴11内に既製杭(図示していない)を下降させて、既製杭の下端を根固め部13内に位置させ、基礎杭構造が構築される(図示していない)。
【0039】
(7) また上記において、予め設定した圧縮強度に至らなかった場合には、例えば、根固め部13の上縁15付近にある掘削ヘッド1を再度回転して撹拌しながら、根固め部13の底14に下降させる。そして、再度、吐出口からセメントミルクを根固め部13内に吐出して、セメントミルク量を増やして、上記と同様に各温度などを測定して、置換率を推定して、図5から圧縮強度を推定する。
【0040】
(8) 再度の推定圧縮強度も予め設定した圧縮強度に至らなかった場合には、再度(7)を繰り返し、予め設定した圧縮強度を満足したら、(6)のように既製杭を埋設する。
【0041】
(9) また、前記において、掘削残存物やセメントミルク混合物を採取して地上で温度や比重を測定する場合には、採取から測定開始までに時間がかかりすぎ、セメントの固化反応が始まり、温度上昇しはじめてしまうこともある。その場合には、温度上昇分を考慮する必要がある。
また、セメントミルクの固化による温度上昇が始まる前に、セメントミルクの温度測定をすることが望ましい。しかし、温度上昇が始まった場合には、温度上昇分を考慮することも可能である。
【0042】
(10) なお、前記において、比較のために、掘削残存物を採取して成型して未固結試料として圧縮強度試験をしたが、当然に不要である。また、前記において、杭穴11の底部を拡径して根固め部13としたが、杭穴軸部12と同径とすることもできる(図示していない)。
【0043】
5.他の施工方法
【0044】
(1) 前記実施態様において、掘削残存物やセメントミルク混合物を採取して地上で温度・比重を測定したデータを使用したが、掘削ヘッド1に取り付けた温度計、比重計のデータを採用することもできる。
【0045】
(2) また、前記実施態様において、温度及び比重を測定したが、何れか一方を測定すれば良い。
【0046】
(3) 前記実施例において、セメントミルク、掘削残存物及びセメントミルク混合物の温度を測定して、置換率を推定したが、セメントミルク混合物の温度変化置換率を推定することもできる。 即ち、掘削ヘッドに設置した温度、即ち根固め部内で、全量のセメントミルク注入が完了して、
根固め部13の上縁15付近に至る直前の温度:25℃
その後、30分経過後の温度:28℃、
であった。同時刻の地上でのセメントミルクプラント内でのセメントミルクの温度変化が、
30℃→35℃、
であった。100%の置換率であれば、5℃上昇し、置換率0%(セメントミルク無い)の場合であれば温度上昇が無い。従って、セメントミルク混合物の温度上昇が3℃とすれば、「3/5」の上昇率となり、置換率は、60%と推定される。図5のグラフより、圧縮強度は18N/cm
と推定できる。
【符号の説明】
【0047】
1 掘削ヘッド
2 ヘッド本体
3 固定掘削刃
4 連結凸部
6 掘削腕
7 掘削刃
8 水平軸
10 掘削ロッド
11 杭穴
12 杭穴軸部
13 杭穴根固め部
14 根固め部の底(杭穴底)
15 根固め部の上縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭穴を掘削して、杭穴底内にセメントミルクを注入して、「杭穴底内残置されている掘削残余物をセメントミルク類で置換してあるいは撹拌混合し」、杭穴内に杭穴構造物を埋設して基礎杭を構築する工法において、以下のように構成することを特徴とする基礎杭の構築方法。
(1) 予め、掘削残余物に対して、所定濃度のセメントミルク類を混入して置換し、異なる置換率のセメントミルク類混合物に対して、その混合物を固化させて、圧縮強度を測定し、「セメントミルク類置換率−圧縮強度」の対応データを準備する。
(2) 地上で、注入予定又は注入中のセメントミルク類の「温度」及び/又は「比重」を測定する。
(3) 杭穴掘削後、前記掘削残余物の「温度」及び/又は「比重」を測定する。
(4) 前記杭穴内に前記セメントミルク類を注入して前記掘削残余物と撹拌混合又は置換して、セメントミルク類混合物を生成し、該セメントミルク類混合物の「温度」及び/又は「比重」を測定する。
(5) 地上で、前記各「温度」及び/又は「比重」から、セメントミルク類混合物の置換率を推定し、前記「セメントミルク類置換率−圧縮強度」の対応データと照合して圧縮強度を推定する。
(6) 前記推定した圧縮強度が必要な圧縮強度に至らない場合には、前記杭穴内にセメントミルク類を追加注入する。
(7) 必要な圧縮強度に至らなかった場合には、前記(4)〜(6)を繰り返す。
(8) 前記推定した圧縮強度が必要な圧縮強度に至ったならば、セメントミルク類の注入を終了する。
(9) 続いて、前記杭穴構造物を下降して、前記杭穴構造物の下端部を前記杭穴の底部に埋設して、基礎杭を構築する。
【請求項2】
杭穴を掘削して、杭穴底内にセメントミルクを注入して、「杭穴底内残置されている掘削残余物をセメントミルク類で置換してあるいは撹拌混合し」、基礎杭を構築する工法において、セメントミルク類の圧縮強度を以下のように推定することを特徴とする圧縮強度の推定方法。
(1) 予め、掘削残余物に対して、所定濃度のセメントミルク類を混入して置換し、異なる置換率のセメントミルク類混合物に対して、その混合物を固化させて、圧縮強度を測定し、「セメントミルク類置換率−圧縮強度」の対応データを準備する。
(2) 地上で、注入予定又は注入中のセメントミルク類の「温度」及び/又は「比重」を測定する。
(3) 杭穴掘削後、前記掘削残余物の「温度」及び/又は「比重」を測定する。
(4) 前記杭穴内に前記セメントミルク類を注入して前記掘削残余物と撹拌混合又は置換して、セメントミルク類混合物を生成し、該セメントミルク類混合物の「温度」及び/又は「比重」を測定する。
(5) 地上で、前記各「温度」及び/又は「比重」から、セメントミルク類混合物の置換率を推定し、前記「セメントミルク類置換率−圧縮強度」の対応データと照合して圧縮強度を推定する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−127057(P2012−127057A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277110(P2010−277110)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000176512)三谷セキサン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】