説明

基質特異性拡張型β−ラクタマーゼの検出方法および同定方法

本明細書で開示された実施形態は、基質特異性拡張型β−ラクタマーゼ遺伝子を有する微生物を検出および/または同定するための組成物に関する。具体的には、本明細書では、バクテリアのCTX−M配列を検出するためのオリゴヌクレオチド、プローブ、およびオリゴヌクレオチド、プローブを含有するキットを提供する。CTX−M型基質特異性拡張型β−ラクタマーゼ遺伝子を含む基質特異性拡張型β−ラクタマーゼ遺伝子を有する微生物を検出および/または増幅するための方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2009年2月19日にLippeらによって出願された、「基質特異性拡張型β−ラクタマーゼの検出方法および同定方法」と題した米国仮出願第61/153,954号明細書の優先権を主張し、その内容は参照によって全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(配列表の参照)
本出願は、電子形式の配列表と共に出願されている。配列表は、2010年2月18日に作成された15.2KBのサイズでGENOM.097VPC.txtと題したファイルとして提供される。配列表の電子形式の情報は、参照によって全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
本明細書で開示された実施形態は、分子診断、特に基質特異性拡張型β−ラクタマーゼ(ESBL)、特にCTX−M遺伝子を有する微生物を検出および同定するために使用される診断に関する。
【背景技術】
【0004】
β−ラクタマーゼは、β−ラクタム系の薬剤に対する耐性を付与する。これらの酵素は、例えば、ペニシリン、セファロスポリン系、セファマイシン系およびカルバペネム系(エルタペネム)のようなβ−ラクタム系抗生物質のβ−ラクタム環を破壊する。これらの抗生物質はその分子構造内に共通の要素、すなわちβ−ラクタムとして知られる4元素環を有する。ラクタマーゼ酵素はその環を切断して開環し、抗生物質分子の抗バクテリア特性を不活性化する。
【0005】
基質特異性拡張型β−ラクタマーゼ(ESBL)はますます、世界中で起っている院内感染の原因となっており、憂慮すべきことに、地域での感染発生の原因にもなっている。(Rossoliniら、2008年、CMI)。ESBLは、オキシイミノ側鎖を備えた基質拡張型セファロスポリンを加水分解するβ−ラクタマーゼである。これらのセファロスポリン系として、セフォタキシム、セフトリアキソンおよびセフタジジムならびにオキシイミノ−モノバクタム系アズトレオナムが挙げられる。この様に、ESBLはこれらの抗生物質および関連するオキシイミノ−β−ラクタムに対する耐性を付与する。最もよく知られているESBLは、TEM−1、TEM−2またはSHV−1遺伝子由来であり、これらのβ−ラクタマーゼの活性部位周辺のアミノ酸配置を変化させる変異を含む。このことによって、これらの酵素による加水分解に対して感受性のあるβ−ラクタム系抗生物質のスペクトルを拡大させている。
【0006】
TEMおよびSHVの古くからのバリアント、例えばTEMおよびSHVのようなバリアントは、ヨーロッパの大部分に影響を及ぼした後、実際に急速にアメリカ合衆国中に拡大しているが、一方で新型ESBL、CTX−Mは南アメリカ、地中海および東ヨーロッパの国々に蔓延している(Govindenら、2007年、AJB)。セフォタキシムに対する高い活性からその名前が認められた最新のものは、1980年代後半に日本、ヨーロッパおよびアルゼンチンで、最も具体的には1989年にドイツで観察された(Naasら、2008年、CMI)。それは全ての群の中で最も成功した群であると考えられている(Rasmussen&Hoiby 2004年、CJM)。その出現はバクテリア感染を治療するためにセフトリアキソンおよび/またはセフォタキシムの使用が増加した結果と考えられ、その起源はクライベラ(Kluyvera)属の仲間に常在する染色体上の遺伝子に由来することが知られている。ワールドワイドウェブアドレスlahey.org/Studiesでアクセス可能であるLahey Clinicウェブサイトによると、今日までに、5つの系統群(CTX−M−1、2、8、9および25)に分類される85種類を上回るCTX−M派生種が報告されている。
【0007】
CTX−M耐性遺伝子は腸内細菌科(Enterobacteriaceae)で発見され、プラスミドを介して種間を容易に伝播することができる。CTX−M遺伝子を有するクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、大腸菌(Escherichia coli)等を含む腸内細菌科の生物種は、尿路感染症の主因と考えられている。また、エンテロバクター・クロカエ(Enterobacter clocae)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、ならびにクレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)の様な他の腸内細菌科の生物種も、CTX−M遺伝子を有することができる。CTX−M耐性株を検出することは、病院において他の患者からの隔離を必要とするため、および感染に対する主な治癒法としてカルバペネム系しか残されていないため、極めて重要である。
【0008】
最近まで、株の耐性を知る唯一の方法は、手作業で抗微生物感受性試験を実施することであった。感受性試験には、結果を得るための時間量(すなわち48時間〜96時間)を含む多くの欠点がある。最初に、試験者は標本からバクテリア株を単離する必要があり、これには最高で48時間かかる可能性があり;次に生化学的同定に進むが、これに更に18時間〜24時間かかり、次いで手作業による抗微生物感受性試験に進むが、これも最高で24時間がかかる可能性がある。結果を得ることが遅れることに加えて、手作業による試験方法はまた、抗生物質ディスクの保存が不適切なために再現性を欠くこと、不適切な拡散をする抗生物質ディスクもあること、およびこの工程を一般化することが欠如していること等、他の問題も有している。
【0009】
偽陰性の結果によって、医療実施者が不適切な抗生物質の治療方式(例えば、ESBL感染した個人を第3世代セファロスポリンまたはアズトレオナムで治療すること)を設計してしまう可能性があるので、ESBL検出の特異性および正確性は重大である。このことは、被治癒者に不必要な危険性をもたらし、また医療施設(例えば病院)内における交互的なコンタミネーションの確率も増大させる。ESBLを産生する株が提唱される限界点で第3世代または第4世代セファロスポリンを用いても、その全てに対してin vitro耐性を示さない場合には、ESBL産生腸内細菌科は最終的に臨床的に耐性を有するという結果となりうるので、臨床検査標準協会(Clinical and Laboratory Standard Institute(CLSI))は、それらをペニシリン系、セファロスポリン系およびアズトレオナムに対して耐性を持つと報告することを推奨している(CLSI、M100−S18)。CTX−M耐性遺伝子を保有する生物にはより新規のセファロスポリン系およびアズトレオナムを加水分解する能力があるため、それらの検出を更に困難にしている。CLSIの指針は、初期スクリーニングおよび確認試験の両方で使用した薬剤によっては、CTX−Mを産生する株の存在を誤診する怖れを提起している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本明細書で開示される実施形態は、ESBL(例えば、CTX−M耐性遺伝子)を有するバクテリアを検出および同定するために使用される他の方法と比較して利点を提供し、改善された特異性、より短い期間で結果を入手すること、およびESBLを検出するために、例えば、アガロースゲル電気泳動のような追加的な工程を実施する必要性がなくなることが挙げられる(Lartigueら、2004年、FEMS ML;Pitoutら、2004年、JCM;Pitoutら、2007年、CMI)。更に、本明細書で開示された実施形態は、本明細書で開示した方法および組成物が、例えば米国特許出願公開第20070248954号明細書に記載されたアッセイの開発時点では知られていなかったCTX−M遺伝子の新規に発見されたアイソフォームを検出および同定するために特に設計されているという点で、報告されたCTX−Mを含むESBLをその他の検出方法よりも利点を提供する。米国特許第20070248954号明細書で開示された方法は、新規に発見されたCTX−Mアイソフォームの配列と完全には相補性を示さないプライマーを使用するが、このことは特異性を損なうか、または偽陰性の結果もたらす可能性さえある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
抗生物質耐性を付与するCTX−M遺伝子を含むESBLの迅速で感度の高い検出のための組成物および方法を提供する。本組成物は、試料中のCTX−M核酸および/または他のESBL核酸の存在を検出する際に使用するオリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブセットを含む。これらのプライマーおよびプローブセットは、増幅方法(例えば、PCR、特に定量PCR)で使用することができ、試験試料中、特に患者試料中におけるESBL遺伝子の存在を検出するための増幅方法で使用するキットにパッケージ化することができ、それによって該遺伝子が検出されると、その試料がESBLを有するバクテリアを含むことを示す。
【0012】
したがって、一実施形態では、本発明は、配列番号1〜24で記載された配列の少なくとも10個の連続したヌクレオチドを含む、それらから本質的に成る、またはそれらから成るオリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブを提供する。本明細書で開示されるプライマーおよび/またはプローブは、標本中における基質特異性拡張型β−ラクタマーゼ(例えば、CTX−M)を有する微生物の存在を検出および/または同定する方法で使用することができる。
【0013】
更に、試料中のESBL遺伝子(例えば、CTX−M)の検出に有用なキットを提供し、ここで該キットは本明細書で開示されている実施形態による組成物を含む。幾つかの実施形態では、該キットはポリメラーゼに基づく増幅反応(例えば、PCRまたはQPCR)で提供される組成物の使用説明書を含むことができる。
【0014】
他の実施形態は:基質特異性拡張型β−ラクタマーゼ(例えば、CTX−M)の存在を分析する標本から試料を採取して、標準的PCR条件下で試料を増幅プライマーセットに接触させるステップであって、ここで前記増幅プライマーセットは少なくとも1対のプライマー対を含み、ここで前記プライマーセットが1つ以上のユニバーサル塩基を有するプライマーを含み、ここで前記プライマー対は基質特異性拡張型β−ラクタマーゼ遺伝子(例えば、CTX−M)内の標的配列に隣接する核酸とハイブリダイズし、および、ここで前記プライマー対によって標的増幅産物が生じるステップ;標的増幅産物を生成するプライマーの伸長のための試薬および条件を提供し;および、標的増幅産物の存在および/または量を決定する、検出方法に関する。
【0015】
本発明はまた、本明細書に開示される実施形態によるプライマーおよびプローブの使用に関し、ただし、該プライマーまたは該プローブは配列番号1〜24で定義された配列のいずれかによる配列を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】4つの群にクラスター化された全てのCTX−M遺伝子の系統樹であり、クレブシエラ・オキシトカは外集団である。
【図2】CTX−M−1群(ctxm1−616F/配列番号1)(ctxm1−740R/配列番号2)(ctxm1/2−657B/配列番号5)を検出するための、本明細書に開示されるプライマーの位置を示したシーケンスアラインメントの図である。以前に開示された増幅プライマー(CTXM1−F3/配列番号40)(CTXM1−R2/配列番号41)も示されている。示されている参照配列は、全てのCTX−M−1配列のアラインメントによるコンセンサス配列である。示されているコンセンサス配列は、配列番号48に対応する。
【図3】CTX−M−2群(ctxm2−609F/配列番号3)(ctxm2−776R/配列番号4)(ctxm1/2−657B/配列番号5)を検出するための、本明細書に開示されるプライマーの位置を示したシーケンスアラインメントの図である。以前に開示された増幅プライマー(TOHO1−2F/配列番号42)(TOHO1−1R/配列番号43)も示されている。示されている参照配列は、全てのCTX−M−2配列のアラインメントからのコンセンサス配列である。示されているコンセンサス配列は、配列番号49に対応する。
【図4】CTX−M−8群(ctxm8−119R/配列番号7)(ctxm8−7F/配列番号6)(ctxm8/9−42B/配列番号10)を検出するための、本明細書に開示されるプライマーの位置を示したシーケンスアラインメントの図である。以前に開示された増幅プライマー(CTXM825F/配列番号44)(CTXM825/配列番号45)も示されている。示されている参照配列は、全てのCTX−M−8配列のアラインメントによるコンセンサス配列である。示されているコンセンサス配列は、配列番号50に対応する。
【図5】CTX−M−9群(ctxm9−7F/配列番号8)(ctxm9−117R/配列番号9)(ctxm8/9−42B/配列番号10)を検出するための、本明細書に開示されるプライマーの位置を示したシーケンスアラインメントの図である。以前に開示された増幅プライマー(CTXM914F/配列番号46)(CTXM914R/配列番号47)も示されている。示されている参照配列は、全てのCTX−M−9配列のアラインメントによるコンセンサス配列である。示されているコンセンサス配列は、配列番号51に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で開示されている実施形態は、拡張型または基質特異性拡張型β−ラクタマーゼ(ESBL)を有する微生物の効率的で特異的な検出および/または同定のための組成物および方法に関する。
【0018】
本明細書では、用語「拡張型または基質特異性拡張型β−ラクタマーゼ」または「ESBL」とは、ペニシリン系、第1世代、第2世代および第3世代セファロスポリン系ならびにアズトレオナム(しかし、セファマイシン系とカルバペネム系は除く)に対して、これらの抗生物質を加水分解することによってバクテリア耐性を付与することができ、クラブラン酸等のβ−ラクタマーゼ阻害剤によって阻害されるラクタマーゼであるβ−ラクタマーゼを意味する。当業者であれば、用語「ESBL」は、ワールドワイドウェブアドレス、lahey.org/Studiesにおいて、Lahey Clinicウェブサイトに列挙されている全てのESBLを含み、しかしこれに限定されることなく、現在知られている、または将来において発見される全ての基質特異性拡張型β−ラクタマーゼを包含することは認識するであろう。したがって、ESBLという用語は、SHV型(すなわち、スルフヒドリル変形型(sulfhydryl variable type))、TEM型、TOHO型およびCTX−M型のESBLを包含する。
【0019】
幾つかの実施形態では、組成物およびアッセイは、CTX−M β−ラクタマーゼを検出および同定するために使用される。CTX−M酵素は、以前に詳細に概略が述べられている(Bonnet,R.ら(2004年)、Growing group of extended−spectrum beta−lactamases:the CTX−M enzymes.、Antimicrob.Agents Chemother.第48巻:1〜14頁)。幾つかの例示的で非限定的なCTX−M β−ラクタマーゼの特性は以下の通りである:セフォタキシムのMICは耐性範囲(64μg/mlよりも大きい)内であり、一方、セフタジジムのMICは通常は明らかに感受性のある範囲(2〜8μg/ml)内である。しかし、幾つかのCTX−M型ESBLは実際にセフタジジムを加水分解し、セファロスポリン(MICは高く、256μg/mlもある)に対する耐性を寄与することができる。アズトレオナムのMICは可変的である。CTX−M型β−ラクタマーゼはセフェピムを加水分解するが、セフェピムのMICは他のESBL型を産生するバクテリアにおいて観察されるものよりも高い。タゾバクタムは、CTX−M型β−ラクタマーゼに対してクラブラン酸よりも約10倍高い阻害活性を示す。バクテリアの中には、CTX−M型ESBLおよびSHV型ESBLの両方、またはCTX−M型ESBLおよびAmpC型β−ラクタマーゼの両方を有する可能性があり、このことは抗生物質耐性の表現型を変化させる可能性がある。
【0020】
本明細書で開示した実施形態は、CTX−M−1〜CTX−M−82として同定された1種以上のCTX−M β−ラクタマーゼを含み、表1に列挙されたバクテリア株で発見されたCTX−M型β−ラクタマーゼの幾つかまたは全てを含む、CTX−M β−ラクタマーゼの迅速な検出および/または同定を可能にする。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
【表3】

【0024】
(標本および試料)
本明細書で開示した実施形態は、標本中のESBLを検出および/または同定するために使用することができる。本明細書で使用される様に、用語「標本(specimen)」とは、哺乳類のサンプル、具体的にはヒトのサンプルを含む実質的に任意の生物種の体液(血液、尿、血清、リンパ液、唾液、肛門および膣分泌物、汗、腹膜液、胸膜液、滲出液、腹水、膿性分泌物、洗浄液、排泄液、ブラシ細胞診標本、生検組織、移植片医学装置、感染したカテーテル、膿、バイオフィルムおよび精液を含むが、これらに限定されない)を含むが、これらに限定されない1つまたは任意数の供給源からの臨床的標本または試料、および本発明での使用が見出されている環境試料(空気試料、農業試料、水試料および土壌試料を含むが、これらに限定されない)を表す。更に、試料は食品加工から採取することができ、投入試料(例えば、穀粒、ミルクまたは動物の死体)、加工の中間工程の試料、ならびに消費者に提供される最終食品を含むことができる。幾つかの実施形態では、本明細書で記載される方法およびアッセイは、標本を更に操作することなく、試料または臨床標本に直接実施することができる。幾つかの実施形態では、標本を操作する(例えば培養し、核酸を抽出するために処理し、もしくは精製し、伸長する)か、または他の操作を行う。
【0025】
(プライマーおよびプローブ)
幾つかの実施形態では、標本または試料は、増幅プライマーセットと接触させることができる。幾つかの実施形態では、標本または試料はプローブと接触させることができる。本明細書で用いられている様に、用語「プライマー」および「プローブ」は、オリゴヌクレオチドまたは核酸が含まれるが、これらに限定されない。用語「プライマー」および「プローブ」は、ヌクレオチドだけではなくヌクレオチドアナログである分子を包含する。本明細書で用いられる様に、ヌクレオチドおよびポリヌクレオチドとは、ポリデオキシリボヌクレオチド(2−デオキシ−D−リボースを含有する)、ポリリボヌクレオチド(D−リボースを含有する)、プリンまたはピリミジン塩基のN−もしくはC−グリコシドである任意の他種のポリヌクレオチド、非ヌクレオチド骨格を含有するその他のポリマー、例えば、ポリアミド(例えば、ペプチド核酸(PNA))およびポリモルホリノ(Anti−Virals,Inc.,Corvallis,Oreg.からNEUGENE(登録商標)ポリマーとして市販されている)、ならびに、配列の中に例えばDNAやRNAで見出されている様な塩基対および塩基スタッキングを可能にする核酸塩基を含むことを条件とした他の合成された配列特異的核酸ポリマーを含む他のポリマーの一般名である。
【0026】
幾つかの実施形態では、本明細書で開示される「プライマー」または「プローブ」は、ロックド核酸(LNA)を含有することができる。「ロックド核酸(LNA)」とは、リボースの2位の酸素が4位の炭素と結合しているメチレン架橋を含有するリボヌクレオチドである(図27参照)。Braasch D.A.およびCorey,D.R.(2001年)、Locked nucleic acids(LNA);fine−tuning the recognition of DNA and RNA.、Chem.Biol.、第8巻、1〜7頁、は、LNAの概説を提供している。この論文は、本明細書においてその全体を参照により明示的に組み込まれる。LNAは、例えば、Proligo,Boulder,Colo.、USAから市販されている。また、ホスホロチオエートは当業者には知られており、例えば、MWG−Biotech AG、Ebersberg、Germanyから注文できる。したがって、幾つかの実施形態では、本明細書で開示される「プライマー」または「プローブ」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれよりも多いLNAを含むことができる。
【0027】
ヌクレオチドおよびポリヌクレオチドという用語は、例えば、3’−デオキシ−2’,5’−DNA、オリゴデオキシリボヌクレオチドN3’→P5’ホスホラミデート、2’−O−アルキル置換RNA、2本鎖および1本鎖DNA、ならびに2本鎖および1本鎖RNA、DNA:RNAハイブリッド、およびPNAとDNAまたはRNAのハイブリッドを含む。また、この用語は既知の修飾型も含み、例えば当該技術分野で既知の標識、メチル化、「キャップ」、天然に生じる1つ以上のヌクレオチドのアナログによる置換、ヌクレオチド間の修飾[例えば、荷電していない結合を有するもの(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホラミデート、カルバメート等)、負に荷電した結合を有するもの(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)および正に荷電した結合を有するもの(例えば、アミノアルキルホスホラミデート、アミノアルキルホスホトリエステル)、例えば蛋白質(ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リシン等を含む)のようなペンダント部分構造を含有するもの、インターカレーター(例えば、アクリジン、ソラーレン等)を有するもの、キレート剤(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属等)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を有するもの(例えば、α−アノマー核酸等)]、ならびに非修飾型のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0028】
本明細書で用いられる様に、用語「ヌクレオシド」および「ヌクレオチド」とは、既知のプリンおよびピリミジン塩基だけでなく、修飾された他の複素環塩基を含有する部分構造を含むことが出来ることが理解されるであろう。そのような修飾には、メチル化プリンまたはピリミジン、アシル化プリンまたはピリミジン、または他の複素環が含まれる。また、修飾されたヌクレオシドまたはヌクレオチドは、糖の部分構造に修飾を含み、例えば、1つ以上のヒドロキシル基がハロゲン、脂肪族基で置換されているか、またはエーテル、アミン等として官能化されていてもよい。ヌクレオチドまたはポリヌクレオチドに対する他の修飾として、それぞれの相補的ピリミジンもしくはプリンと水素結合を形成するプリンもしくはピリミジン塩基上の官能基を再配置、付加、置換、そうでなければ変化させることが挙げられる。結果としてもたらされる修飾されたヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、他のそのような修飾ヌクレオチド単位とは塩基対を形成することができるが、A、T、C、GまたはUとは形成することができない。例えば、グアノシン(2−アミノ−6−オキシ−9−β−D−リボフラノシル−プリン)は修飾されて、イソグアノシン(2−オキシ−6−アミノ−9−β−D−リボフラノシル−プリン)を形成することができる。そのような修飾によって、もはやシトシンとの標準的な塩基対を効率よく形成しないヌクレオシド塩基がもたらされる。しかしながら、シトシン(1−β−D−リボフラノシル−2−オキシ−4−アミノ−ピリミジン)を修飾してイソシトシン(1−β−D−リボフラノシル−2−アミノ−4−オキシ−ピリミジン)を形成すると、結果としてグアノシンと効率よく塩基対を形成しないが、イソグアノシンと塩基対を形成できる修飾ヌクレオチドがもたらされる。イソシトシンはSigma Chemical Co.(St.Louis,Mo.)から入手可能であり;イソシチジンは、Switzerら(1993年)Biochemistry、第32巻、10489〜10496頁、およびその論文で引用された参考文献に記載された方法によって調製することができ;2’−デオキシ−5−メチル−イソシチジンはTorら(1993年)J.Am.Chem.Soc.、第115巻、4461〜4467頁、およびそこに引用された参考文献に記載された方法によって調製することができ;イソグアニンヌクレオチドは上記のSwitzerら(1993年)、およびMantschら(1993年)Biochem.、第14巻、5593〜5601頁、またはCollinsらによって米国特許第5,780,610号明細書に記載された方法を使用して調製することができる。κおよびπと表される非天然塩基対は、Piccirilliら(1990年)Nature、第343巻、33〜37頁に記載された2,6−ジアミノピリミジンおよびその相補体(1−メチルピラゾロ[4,3]−ピリミジン−5,7−(4H,6H)−ジオン)の合成方法によって合成してもよい。特有の塩基対を形成する他のそのような修飾ヌクレオチド単位は、Leachら(1992年)J.Am.Chem.Soc.、第114巻、3675〜3683頁、および上記のSwitzerらに記載されているか、または当業者には明らかである。
【0029】
好ましくは、増幅プライマーセットは、ユニバーサル塩基を含有する少なくとも1個、2個、3個または4個またはそれよりも多いプライマーおよび/またはプローブを含む。本明細書で用いられる様に、用語「ユニバーサル塩基」とは、A、T、CおよびGから選択される1つよりも多いヌクレオチドとハイブリダイズすることができるヌクレオチドアナログを言う。幾つかの実施形態では、ユニバーサル塩基はデオキシイノシン、3−ニトロピロール、4−ニトロインドール、6−ニトロインドール、5−ニトロインドールから成る群から選択してもよい。好ましくは、ユニバーサル塩基はデオキシイノシンである。幾つかの実施形態では、増幅プライマーセットおよび本明細書で開示したプローブは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれよりも多いユニバーサル塩基を有する少なくとも1種のプライマーおよび/またはプローブが含まれる。
【0030】
プライマーおよび/またはプローブの長さは、好ましくは10〜45ヌクレオチド長である。例えば、プライマーおよびまたはプローブの長さは、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、またはそれよりも長いヌクレオチド長であってよい。プライマーおよび/またはプローブは、例えば、固相支持体に結合した形態、液体および凍結乾燥体を含む任意の適切な形態で提供することができる。幾つかの実施形態では、プライマーおよび/またはプローブは標的核酸配列に対して、オリゴヌクレオチドの全体長に渡ってハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含む。そのような配列は、互いに関して「完全に相補的である」ということができる。オリゴヌクレオチドが本明細書の核酸配列に関して「実質的に相補的である」という場合、その2つの配列は完全に相補的であるか、またはこれらはハイブリダイゼーションする際にミスマッチを形成してもよいが、以下に議論されるようなストリンジェント条件下もしくは標準的PCR条件下でハイブリダイズする能力を保持している。本明細書で用いられる様に、用語「標準的PCR条件」には、例えば、本明細書に開示される任意のPCR条件、または例えば、PCR 1:A Practical Approach、M.J.McPherson、P.QuirkeおよびG.R.Taylor編、(著作権)2001年、Oxford University Press、Oxford、England、およびPCR Protocols:Current Methods and Applications、B.White編、(著作権)1993年、Humana Press、Totowa、NJ.に記載されるような、当該技術分野において既知のPCR条件が含まれる。
【0031】
本明細書で用いられる様に、「実質的に相補的である」という用語は、2つの核酸間(例えば、捕捉プローブと標的配列との相補的領域)の相補性、および/または捕捉プローブのリンカー配列と競合的核酸の相補的領域との間の相補性を意味する。相補性は完全である必要はなく、2種類の核酸間に塩基対のミスマッチは任意数存在してもよい。しかしながら、変異の数が余りにも多いために、ハイブリダイゼーション条件の中で最もストリンジェントでない条件でさえもハイブリダイゼーションが起こらない場合、その配列は実質的に相補的な配列ではない。本明細書において2つの配列が「実質的に相補的である」というとき、その配列は選択された反応条件下でハイブリダイズするのに充分に互いに相補的であることを意味する。特異性を実現するために充分な核酸の相補性とハイブリダイゼーションのストリンジェンシーとの関係は当該技術分野において既知であり、配列のアイデンティティー、融点、およびハイブリダイゼーション条件に関しては、以下に更に記載されている。したがって、実質的に相補的な配列は、本明細書で記載される任意の検出方法で使用することができる。ハイブリダイゼーション条件が、例えば、標的配列と非標的配列とを識別できるのに充分である限り、そのようなプローブは、例えば完全に相補的でもよく、または1個から多数のミスマッチを含有していてもよい。したがって、実質的に相補的な配列は、参照配列と比較して、アイデンティティー(%)が100、99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、89、85、80、75またはそれ未満、またはその間の任意の数の範囲である配列を意味することができる。
【0032】
本明細書で定義される様に、「ストリンジェント条件」または「高ストリンジェント条件」とは、この様に識別される:(1)洗浄するために、低イオン強度および高温(例えば50℃で0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム)を用い;(2)ハイブリダイゼーションの際に、例えばホルムアミド、例えば42℃で50%(体積/体積)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウムバッファー pH6.5と、750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムとを混和したものの様な変性剤を用い、または(3)42℃で50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075M クエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理したサケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%硫酸デキストランを用い、55℃で0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)、および42℃で50%ホルムアミド中で洗浄し、続いて55℃でEDTAを含有する0.1×SSCを含む高ストリンジェントな洗浄を行う。
【0033】
「中程度のストリンジェント条件」は、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、New York:Cold Spring Harbor Press、1989年によって記載されている様に定義することができ、前述したものより低いストリンジェントの洗浄溶液およびハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度および%SDS)の使用を含む。中程度のストリンジェント条件の一例は、20%ホルムアミド、5×SSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%硫酸デキストラン、および20mg/ml変性せん断サケ精子DNAを含む溶液で、37℃で一晩インキュベートし、続いてフィルターを約37〜50℃で、1×SSC中で洗浄することである。当業者であれば、プローブ長等の要素に適合するために、必要に応じて温度、イオン強度等をどの様に調節できるかを認識するであろう。
【0034】
(プライマー対)
幾つかの実施形態では、増幅プライマーセットは1以上、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15またはそれ以上のプライマー対を含む。本明細書で用いられる様に、用語「プライマー対」とは、標的核酸(例えば、ESBLをコードする核酸、例えば、CTX−M遺伝子またはそれらの断片等)の反対側の鎖に個々にハイブリダイズする2個のプライマーを意味することができ、それぞれのプライマーは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で3’末端が伸長して標的増幅産物を形成することができる。プライマー対は、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを含むことができる。
【0035】
幾つかの実施形態では、本明細書で開示される組成物および方法は、CTX−M遺伝子にハイブリダイズする少なくとも1組の増幅プライマーを含むプライマー対を含む。例えば、本明細書で開示される組成物および方法は、表1に列挙されるバクテリア由来のCTX−M β−ラクタマーゼを検出および/または同定するために使用することができる。幾つかの実施形態では、組成物および方法は、表1に列挙された全てのバクテリア由来のCTX−M β−ラクタマーゼを集合的に検出および同定することを可能にする複数の増幅プライマーを含む。幾つかの実施形態では、本明細書で開示された組成物および方法は、CTX−M−1、CTX−M−2、CTX−M−8、CTX−M−9およびCTX−M−25から選択される少なくとも2つのCTX−M群由来のCTX−M核酸の核酸に集合的にハイブリダイズし、前記CTX−M核酸を増幅するプライマー対を含む。CTX−M−1の検出および同定に有用なプライマーは、例えば、配列番号1、2、5、11、12、13、14、32および33、またはそれらの相補体の少なくとも10個の連続したヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチド、あるいは、配列番号1、2、5、11、12、13、14、32および33、またはそれらの相補体に実質的に相補的で、および/またはストリンジェント条件下でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含む。
【0036】
CTX−M−2の検出および同定に有用なプライマーとして、配列番号3、4、5、15、16、17、18、32および33またはそれらの相補体の少なくとも10個の連続した核酸を有するオリゴヌクレオチド、あるいは、配列番号3、4、5、15、16、17、18、32および33、またはそれらの相補体に実質的に相補的で、および/またはストリンジェント条件下でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドが挙げられる。CTX−M−8の検出および同定に有用なプライマーとして、配列番号6、7、10、19、20、21、22、27、28および31、またはそれらの相補体の少なくとも10個の連続した核酸を有するオリゴヌクレオチド、あるいは、配列番号3、4、5、15、16、17、18、32および33、またはそれらの相補体に実質的に相補的で、および/またはストリンジェント条件下でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドが挙げられる。CTX−M−9の検出および同定に有用なプライマーとして、配列番号8、9、10、23、24、25、26、29、30および31、またはそれらの相補体の少なくとも10個の連続した核酸を有するオリゴヌクレオチド、あるいは、配列番号8、9、5、10、23、24、25、26、29、30および31、またはそれらの相補体に実質的に相補的で、および/またはストリンジェント条件下でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドが挙げられる。当業者であれば、幾つかの実施形態は、本明細書で開示されたプライマー対の任意の組み合わせが含まれること、例えば、配列番号1および2、配列番号3および4、配列番号6および7、配列番号8および9、配列番号27および28、ならびに配列番号29および30のプライマー対の組み合わせが含まれることを理解するであろう。幾つかの実施形態では、組成物および方法は、配列番号1〜10から成る、これらから本質的に成る、またはこれらを含むプライマーおよびプローブ、あるいは、配列番号1〜10の少なくとも10、11、12、13、14、15またはそれ以上の連続したヌクレオチドを有するプライマーおよびプローブ、あるいは配列番号1〜10またはそれらの相補体に実質的に相補的であり、ストリンジェント条件下でハイブリダイズするプライマーおよびプローブを含む。幾つかの実施形態では、組成物および方法は、配列番号1〜5および27〜31から成る、これらから本質的に成る、またはこれらを含むプライマーおよびプローブ、あるいは、配列番号1〜5および27〜31の少なくとも10、11、12、13、14、15またはそれ以上の連続したヌクレオチドを有するプライマーおよびプローブ、あるいは配列番号1〜5および27〜31またはそれらの相補体に実質的に相補的であり、ストリンジェント条件下でハイブリダイズするプライマーおよびプローブを含む。
【0037】
幾つかの実施形態では、組成物および方法は、例えばPCT公開第08/124670号に開示されたように、例えばカルバペネマーゼ遺伝子の検出用を含む、追加的な配列の検出および/または同定のためのプライマーおよび/またはプローブを含む。幾つかの実施形態では、本明細書で開示した組成物および方法は、配列番号34および35またはそれらの相補体の少なくとも10個の連続したヌクレオチドを有するプライマーを含む。幾つかの実施形態では、本明細書で開示された組成物および方法は、配列番号37および38またはそれらの相補体の少なくとも10個の連続したヌクレオチドを有するプライマーを含む。幾つかの実施形態では、本明細書で開示された組成物および方法は、配列番号34および35の配列またはそれらの相補体の配列に実質的に相補的で、および/またはストリンジェント条件下でハイブリダイズするプライマーを含む。幾つかの実施形態では、本明細書で開示された組成物および方法は、配列番号37および38の配列またはそれらの相補体に実質的に相補的で、および/またはストリンジェント条件下でハイブリダイズするプライマーを含む。
【0038】
本明細書で開示された幾つかの実施形態では、組成物および/または方法は1つ以上のプライマーを含むことができ、ここで該プライマーは配列番号1〜22の配列、またはそれらの相補体の少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25またはそれよりも多く連続した核酸を含む。
【0039】
【表4】

【0040】
【表5】

【0041】
(プローブ)
幾つかの実施形態では、プローブは検出可能な標識を含むことができる。対象物に対する標識として、直接的に検出可能および間接的に検出可能な放射性ラベル、または蛍光色素のような非放射性標識が挙げられる。直接的に検出可能な標識とは、1種以上の追加的な化学物質と相互作用させることなく、直接的に検出可能なシグナルを提供する標識である。直接的に検出可能な標識の例として、蛍光標識が挙げられる。間接的に検出可能な標識とは、1種以上の追加的な要素と相互作用して検出可能なシグナルを提供する標識である。この後者の実施形態では、標識は共同して作用して検出可能なシグナルを提供する2つ以上の化学物質を含むシグナル生成系の要素である。間接的に検出可能な標識の例として、ビオチンまたはジゴキシゲニンが挙げられ、それらは蛍光色素またはアルカリホスファターゼのような酵素と組み合わされた適切な抗体によって検出することができる。多くの好ましい実施形態では、標識は直接的に検出可能な標識である。特定の対象物に対する直接的に検出可能な標識として、蛍光標識が挙げられる。本明細書で開示された実施形態での用途が見出される蛍光標識は、蛍光色素部分構造を含有する。対象物に対する具体的な蛍光色素として:キサンテン色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、2−[(エチルアミノ)−3−(エチルイミノ)−2−7−ジメチル−3H−キサンテン−9−イル]安息香酸エチルエステルモノヒドロクロリド(R6G)(約500〜560nmの範囲の波長で応答照射を放射する)、1,1,3,3,3’,3’−ヘキサメチルインドジカルボシアニンイオダイド(HIDC)(約600〜660nmの範囲の波長で応答照射を放射する)、6−カルボキシフルオレセイン(一般的に、略語FAMおよびFとして知られている)、6−カルボキシ−2’,4’,7’,4,7−ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン(JOEまたはJ)、N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRAまたはT)、6−カルボキシ−X−ローダミン(ROXまたはR)、5−カルボキシローダミン−6G(R6G5またはG5)、6−カルボキシローダミン−6G(R6G6またはG6)およびローダミン110のようなフルオレセインおよびローダミン色素;シアニン色素(例えば、Cy3、Cy5およびCy7色素);クマリン(例えば、ウンベリフェロン);ベンジミド色素(例えば、Hoechst33258);フェナントリジン色素(例えば、テキサスレッド);エチジウム色素;アクリジン色素;カルバゾール色素;フェノキサジン色素;ポルフィリン色素;ポリメチン色素(例えば、Cy3(約540から580nmの範囲の波長で応答照射を放射する)、Cy5(約640から680nmの範囲の波長で応答照射を放射する)等のようなシアニン色素);BODIPY色素およびキノリン色素、が挙げられる。対象物に対する特定の蛍光色素としては:ピレン、クマリン、ジエチルアミノクマリン、FAM、フルオレセインクロロトリアジニル、フルオレセイン、R110、エオジン、JOE、R6G、HIDC、テトラメチルローダミン、TAMRA、リサミン、ROX、ナフトフルオレセイン、テキサスレッド、ナフトフルオレセイン、SYBRグリーン、Cy3およびCy5等が挙げられる。
【0042】
好ましい実施形態では、本明細書で開示された組成物および方法は、分子ビーコンプローブ、TAQMAN(登録商標)プローブ、またはSCORPION(登録商標)プローブを含む。例えば、幾つかの実施形態では、本明細書で開示された組成物および方法は、1つ以上の分子ビーコンプローブを含み、ただし、該プローブは配列番号5、10、31、32または33の配列、例えば、配列番号25、26、27、28、32および/または33のいずれか1つで示したようなプローブを含む。
【0043】
ccagcgTATGGYACCACCAACGATATCGCGGcgctgg(配列番号5)
cgaggcGCGGCGCTGGARAAAAGCAGgcctcg(配列番号10)
cgcgatcACACGACCGGCAACCACCGCAgatcgcg(配列番号36)
cgcgatcGCTGCCGCTGTGCTGGCTCGgatcgcg(配列番号39)
cggcgatAAGCARAGTGAAACGCAAAAGatcgccg(配列番号31)
cCaCcaAcgaTatcgCg(配列番号32)
TGGYACCACCAACGATATCGCGGT(配列番号33)
【0044】
幾つかの実施形態では、例えば配列番号25〜28および32〜33といったプローブは、FAM蛍光色素消光分子およびDABCYL消光剤を使用して標識される。幾つかの実施形態では、プローブはTAQMAN(登録商標)プローブ、分子ビーコンプローブまたはSCORPION(登録商標)プローブである。幾つかの実施形態では、1つ以上の増幅プライマーは、例えばSYBRグリーン等のような蛍光部分構造で標識してもよい。
【0045】
本明細書で開示されたプライマーおよびプローブ配列は、5’または3’末端に更にヌクレオチドを含めるために改変してもよい。同様にして、幾つかの実施形態では、プライマーおよびプローブ配列は、配列内に置換されたヌクレオチドを有することによって改変してもよい。プライマーおよびプローブ配列は、それぞれの標的核酸配列に特異的にハイブリダイズするのに充分な相補性を含有しなければならないことが認識される。このようにして、少なくとも1、2、3、4、または約5個までのヌクレオチドが置換されてもよい。
【0046】
配列番号32および33はいずれも、CTX−M群1および2に特異的である。幾つかの実施形態では、プローブ配列番号32は5個のロックド核酸(LNA)を含有することができる。幾つかの実施形態では、配列番号33はTAQMAN(登録商標)プローブである。幾つかの実施形態では、配列番号33は1つ以上のディジェネレート塩基を含有し、CTX−M1およびCTX−M2の双方に対して(例えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下および/または標準的なPCR条件下で)特異的にアニールする。
【0047】
本明細書で開示された実施形態のプライマーの作成に使用できる化学合成方法として、Narangら(1979年)Methods in Enzymology、第68巻、90頁に記載されたホスホトリエステル法、Brownら(1979年)Methods in Enzymology、第68巻、109頁によって開示されたホスホジエステル法、Beaucageら(1981年)Tetrahedron Letters、第22巻、1859頁によって開示されたジエチルホスホラミデート法、および米国特許第4,458,066号明細書に記載された固相支持体法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
また、本明細書で開示された実施形態の合成オリゴヌクレオチドプライマーを調製するための自動化オリゴヌクレオチド合成機の使用も意図される。
【0049】
(アニーリングおよび特異的結合)
幾つかの実施形態では、標的核酸配列へのプライマーおよび/またはプローブの結合またはアニーリングは、ハイブリダイゼーションによって達成される。当業者であれば、特異的ハイブリダイゼーションは、標的または参照核酸配列に対して少なくとも実質的に相補的である配列を選択することによって達成されることは理解するであろう。これは、オリゴヌクレオチド標的核酸配列がオリゴヌクレオチド配列の完全長に渡る塩基対を含む。そのような配列は、互いに関して「完全に相補的」であるということができる。オリゴヌクレオチドが本明細書の核酸配列に関して「実質的に相補的である」という場合、その2つの配列は完全に相補的であるか、またはこれらはハイブリダイゼーションの際にミスマッチを形成してもよいが、しかし以下に議論されるようにストリンジェント条件下もしくは標準的PCR条件下でハイブリダイズする能力を保持している。
【0050】
幾つかの実施形態では、試料または標本は、増幅プライマーセットおよびプローブと接触させる。好ましくは、増幅プライマーおよびプローブは単一の一連の条件下(すなわち、以下に議論される標準的PCR条件を含むストリンジェント条件下)で標的核酸にハイブリダイズする。本明細書で用いられる様に、プローブの長さおよび/または核酸組成に応じて、用語「ストリンジェント条件」、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件は変化してもよく(例えば、塩濃度は約1M未満、より一般的には約500mM未満、好ましくは約200mM未満)、ハイブリダイゼーション温度は、例えば、0℃の低さから22℃を上回るまで、約30℃を上回るまで、および(この場合が最も多いが)約37℃を上回る範囲でよい。断片が長くなればなるほど、特異的なハイブリダイゼーションのために高いハイブリダイゼーション温度を必要とする可能性がある。幾つかの要素がハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を及ぼすので、パラメータの組み合わせることは単一の要素の絶対的な尺度を設けることよりも重要である。したがって、用語「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、例として以下のいずれか、または両方の条件をいうことができる:a)約45℃で6×SSC、次いで65℃で0.2×SSC、0.1% SDSで1回以上洗浄すること、およびb)400mM NaCl、40mM PIPES pH6.4、1mM EDTAで、50℃または70℃で12〜16時間、その後洗浄すること。幾つかの実施形態では、用語「ストリンジェント条件」とは、標準的PCR条件を意味することができる。
【0051】
幾つかの実施形態では、試料または標本を増幅プライマーセットと標準的PCR条件下で接触させる。臨床微生物学へ応用される標準的PCR条件を含むPCR技術の概説については、Kluwer Academic;Dordrecht、Bostonによって出版されたSingleton P.著、DNA Methods in Clinical Microbiology(2000年);White,B.A.編、Molecular Cloning to Genetic Engineering、Methods in Molecular Biology 第67巻、Humana Press、Totowa(1997年);および「PCR Methods and Applications」1991年〜1995年(Cold Spring Harbor Laboratory Press)を参照。「PCR条件」の非限定的な例として、本明細書で引用された参考文献で開示されている条件が挙げられ、例えばアニーリング温度が72℃で、50mM KCl、10mM Tris−HCl(pH9.0)、0.1% Triton X−100、2.5mM MgCl;またはアニーリング温度が59℃で、4mM MgCl、100mM Tris(pH8.3)、10mM KCl、5mM (NHSO、0.15mg BSA、4%トレハロース;またはアニーリング温度が55℃で、50mM KCl、10mM Tris−HCl(pH9.0)、0.1% Triton X−100、2.5mM MgCl等がある。
【0052】
幾つかの実施形態では、本明細書で開示された方法には、PCR(例えば、QPCR)に基づいた、CTX−M核酸のようなESBLの、本明細書で記載されたプライマーおよびプローブを使用した増幅ならびに検出法が含まれる。様々な実施形態では、本明細書で開示した方法は、ESBL(例えば、CTX−M)の存在を、生理学的範囲内で存在するバクテリア濃度(すなわち、バクテリアに感染した対象から収集した試料中のバクテリア濃度)で検出することができる。この様にして、ESBL(例えば、CTX−M)の存在を検出するために、バクテリア集団を単離、濃縮、または拡張(例えば、培養)する必要なく、試料を直接的にスクリーニングすることができる。様々な実施形態では、本明細書で開示した方法は、バクテリア濃度が約1×10CFU/ml、約1×10CFU/ml、約1×10CFU/mlまたは約1×10CFU/mlである試料からESBLの存在を検出することができる。
【0053】
当該技術分野において、種々のPCRまたはQPCRプロトコールは多数知られており、本明細書で以下に例示されており、およびそれらは試料中のCTX−Mを含むESBLを検出するために本明細書に記載された組成物を用いて使用するために直接的に適用するか、または適合させることができる。
【0054】
一般的に、PCRでは、標的ポリヌクレオチド配列は、少なくとも1個のオリゴヌクレオチドプライマーまたはオリゴヌクレオチドプライマー対との反応によって増幅する。プライマー(複数可)は、標的核酸の相補領域にハイブリダイズし、DNAポリメラーゼはプライマー(複数可)を伸長して標的配列を増幅する。ポリメラーゼに基づいた核酸増幅産物を提供するのに充分な条件下では、あるサイズの核酸断片が反応産物(増幅産物である標的ポリヌクレオチド配列)の優位を占める。増幅サイクルを反復して、単一の標的ポリヌクレオチド配列の濃度を増加させる。該反応は、PCR用に通常使用される任意のサーモサイクラーで実施することができる。しかしながら、リアルタイム蛍光測定能を有するサイクラ−が好ましく、例えば、SMARTCYCLER(登録商標)(Cepheid、Sunnyvale、CA)、ABI PRISM 7700(登録商標)(Applied Biosystems、Foster City、CA)、ROTOR−GENE(登録商標)(Corbett Research、Sydney、Australia)、LIGHTCYCLER(登録商標)(Roche Diagnostics Corp、Indianapolis、IN)、ICYCLER(登録商標)(Biorad Laboratories, Hercules, CA)およびMX4000(登録商標)(Stratagene、La Jolla、CAである。
【0055】
幾つかの実施形態は、定量PCR(QPCR)(リアルタイムPCRとも言われる)を含む方法を提供する。QPCRは、定量的な測定値を提供し、また時間およびコンタミネーションを減少させるという利点も提供する。本明細書で用いられる様に、「定量PCR」(または「リアルタイムPCR」)とは、反応産物を繰り返してサンプリングする必要なく、増幅を起こしながらPCR増幅の進行状況を直接的にモニターすることをいう。QPCRにおいては、反応産物が生成してバックグラウンドレベルと比較してシグナルが増加することを手掛かりに追跡されるため(ただし、反応がプラトーに達する前)、反応産物はシグナル機構(例えば、蛍光)を通じてモニターすることができる。蛍光の検出可能レベルまたは「閾値」レベルを達成する為に必要なサイクル数(本明細書では、サイクル閾値または「CT」と表される)は、PCR工程の開始における増幅可能な標的の濃度によって直接的に変化し、シグナル強度を測定することによってリアルタイムに試料における標的核酸量の測定を提供することを可能にする。
【0056】
幾つかの実施形態では、PCR増幅によって生じた伸長産物を検出するために、標識プローブを使用することができる。本明細書で開示された配列を含む標識プローブを利用する任意のプローブ形式を使用してもよく、例えば、SCORPION(登録商標)プローブ、sunriseプローブ、TAQMAN(登録商標)プローブ、または当該技術分野で既知であるか、もしくは本明細書の他の場所に記載されている様な分子ビーコンプローブを使用することができる。幾つかの実施形態では、プローブは、約0.01μM、0.02μM、0.03μM、0.04μM、0.05μM、0.06μM、0.07μM、0.08μM、0.09μM、0.1μM、0.11μM、0.12μM、0.13μM、0.14μM、0.15μM、0.16μM、0.17μM、0.18μM、0.19μM、0.2μM、0.21μM、0.22μM、0.23μM、0.24μM、0.25μM、0.26μM、0.27μM、0.28μM、0.29μM、0.3μM、0.31μM、0.32μM、0.33μM、0.34μM、0.35μM、0.36μM、0.37μM、0.38μM、0.39μM、0.4μM、0.42μM、0.46μM、0.48μM、0.5μMまたはそれよりも高い濃度、あるいはそれらの間の任意の濃度で使用することができる。幾つかの実施形態では、反応には、約0.1μMの配列番号32および/または約0.3μMの配列番号33を含めることができる。
【0057】
PCR反応を設定する方法は当業者には周知である。反応混合物は最小限、適切な緩衝液、塩等と組み合わせて鋳型となる核酸(以下に記載した様に、ネガティブコントロールの場合は除く)およびオリゴヌクレオチドプライマーおよび/またはプローブ、ならびに適切な濃度の核酸ポリメラーゼを含む。本明細書で用いられている様に、「核酸ポリメラーゼ」とは、ヌクレオシド三リン酸の重合を触媒する酵素をいう。一般的に、該酵素は、標的配列にアニールしたプライマーの3’末端での合成を開始し、合成が終結するまで鋳型に沿って5’方向へ進むことができる。適切な濃度として、本明細書で記載された方法において、この反応を触媒する濃度が含まれる。本明細書で開示された方法において有用な既知のDNAポリメラーゼとして、例えば、大腸菌DNAポリメラーゼI、T7 DNAポリメラーゼ、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)(Tth)DNAポリメラーゼ、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)DNAポリメラーゼ、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)DNAポリメラーゼ、サーマス・アクアティクス(Thermus aquaticus)(Taq)DNAポリメラーゼおよびパイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)(Pfu)DNAポリメラーゼが挙げられる。
【0058】
前記の構成成分に加えて、本発明の方法の反応混合物は、プライマー、プローブおよびデオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)を含む。
【0059】
一般的に反応混合物は更に、4種の天然に生じるヌクレオシド塩基、すなわち、dATP、dTTP、dCTPおよびdGTPに対応する4種類の異なるdNTPを含んでよい。本明細書で開示された幾つかの実施形態では、各dNTPは典型的には、約10〜5000μM、一般的に約20〜1000μM、約100〜800μM、または約300〜600μMの範囲の量で存在する。
【0060】
本明細書で開示された実施形態の方法の第1ステップで調製された反応混合物は、更に1価イオン源、2価陽イオン源、および緩衝剤を含む水溶性緩衝液を含む。例えば、塩化カリウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウム、グルタミン酸カリウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等の様な、任意の都合の良い1価イオン源を使用することができる。2価の陽イオンは、マグネシウム、マンガン、亜鉛等でよく、ただし該陽イオンは典型的にはマグネシウムである。任意の都合の良いマグネシウム陽イオン源を用いてもよく、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム等が含まれる。緩衝液中に存在するマグネシウムの量は、0.5〜10mMの範囲であってもよく、約1〜約6mM、または約3〜約5mMの範囲であってもよい。緩衝液中に存在してもよい代表的な緩衝剤または塩として、Tris、Tricine、HEPES、MOPS等が挙げられ、緩衝剤の量は典型的に約5〜150mM、一般的に約10〜100mM、より一般的には約20〜50mMの範囲であり、ある好ましい実施形態では、緩衝剤は約6.0〜9.5pHの範囲(例えば、約6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0または9.5)を提供するのに充分な量で存在してもよい。緩衝液中に存在してもよい他の薬剤として、EDTA、EGTA等のようなキレート剤が挙げられる。幾つかの実施形態では、反応混合物は、BSA等を含んでもよい。
【0061】
反応混合物の調製において、任意の都合の良い順序で様々な構成成分を混ぜ合わせてよい。例えば緩衝液は、プライマー、ポリメラーゼと混ぜ合わせ、次いで鋳型となる核酸と混ぜ合わせてもよく、または様々な構成成分の全てを同時に混ぜ合わせて反応混合物を生成してもよい。
【0062】
あるいは、市販のプレミックス試薬を製造者の説明書に従って本明細書に開示された方法で利用してもよく、または反応条件を改善するために改変してもよく(例えば、必要に応じて、緩衝液濃度、陽イオン濃度、またはdNTP濃度を改変する)、例えば、TAQMAN(登録商標)Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)、OMNIMIX(登録商標)またはSMARTMIX(登録商標)(Cepheid)、IQ™Supermix(Bio−Rad Laboratories)、LIGHTCYCLER(登録商標)FastStart(Roche Applied Science、Indianapolis、IN)またはBRILLIANT(登録商標) QPCR Master Mix(Stratagene、La Jolla、CA)が含まれる。
【0063】
反応混合物を調製後、反応混合物はプライマー伸長反応条件(「ポリメラーゼに基づいた核酸増幅産物を提供するのに充分な条件」)、すなわち、ヌクレオチドを追加することによるポリメラーゼを媒介するプライマー伸長を、鋳型鎖を鋳型として用いながらプライマー分子の末端まで可能にする条件にかけてもよい。多くの実施形態では、プライマー伸長反応条件は増幅条件であり、その条件には複数回の反応サイクルが含まれ、ここで各反応サイクルは:(1)変性ステップ、(2)アニーリングステップ、および(3)重合ステップを含む。反応サイクルの数は実施される適用例に応じて変化するが、一般的に少なくとも15回、より一般的には少なくとも20回、60回くらい多いかそれより多くてもよく、異なるサイクルの数は通常約20〜40回の範囲でよい。約25回、一般的には約30回よりも多く実施される方法では、酵素によるプライマー伸長に適した条件が維持されるように、反応混合物に追加的なポリメラーゼを導入することが都合良い、または望ましい場合がある。
【0064】
変性ステップは、反応混合物を高温まで加熱し、反応混合物中に存在する任意の2重鎖の核酸、またはハイブリダイズした核酸が解離するのに充分な時間、反応混合物を高温で維持することを含む。変性のために、反応混合物の温度は通常、約85〜100℃、一般的には約90〜98℃、より一般的には約93〜96℃の範囲の温度に上昇させ、約3〜120秒の範囲の時間、一般的に約3秒間維持する。
【0065】
変性に続いて、反応混合物はプライマーが反応混合物中に存在する鋳型となる核酸(もし存在するならば)にアニールするのに充分な条件、および鋳型としてハイブリダイズされる核酸を用いて5’から3’の方向へプライマーが伸長するようにヌクレオチドをプライマーの末端まで重合させるのに充分な条件、すなわち、酵素によるプライマー伸長産物の生成に充分な条件にかけることができる。この実施形態では、アニーリング工程および伸長工程は同一ステップで起こる。これらの条件を達成するために反応混合物の温度を下げるが、その温度は一般的に、最適な効率および特異性を提供するように選択され、それは通常は約50〜75℃の範囲、一般的には約55〜70℃の範囲、より一般的には約60〜68℃の範囲、より具体的には60℃の周辺でありうる。アニーリング条件は、約15秒〜30分、一般的には約20秒〜5分、または約30秒〜1分の範囲、または約30秒の時間、維持してもよい。
【0066】
このステップは所望により、各ステップの温度および時間の長さを変化させ、最適化した、各々のアニーリングステップおよび伸長ステップの1つを含んでいてもよい。2ステップアニーリングおよび伸長では、アニーリングステップは前記のように進めることが可能である。プライマーを鋳型となる核酸にアニーリングした後、反応混合物は更に、前述のようにヌクレオチドがプライマー末端まで重合することを提供するのに充分な条件にかけることができる。重合化条件を達成するために、反応混合物の温度は典型的には約65〜75℃、通常は約67〜73℃の範囲に上昇または維持してもよく、および約15秒〜20分、一般的には約30秒〜5分間の範囲の時間維持してもよい。
【0067】
幾つかの実施形態では、サイクルは、1回のみ実施される95℃で15分間の最初の変性を含むことができ、その後に95℃で1秒間の変性ステップ、および60℃で25秒間のアニーリング/伸長ステップが続く。この2ステップサイクルは、複数回(例えば、約45回)反復してもよい。幾つかの実施形態では、最後の伸長ステップを72℃で10分間追加してもよい。
【0068】
幾つかの実施形態では、サイクルは、95℃での15分間の最初の変性ステップを含むことができ、95℃で1秒間の変性、60℃で9秒間のアニーリングおよび72℃で9秒間の伸長のその後複数回(例えば、約45回)が続く。最後の伸長ステップを72℃で10分間追加してもよい。
【0069】
前記の変性、アニーリングおよび重合のサイクルは、一般的にはサーマルサイクラ−として知られている自動化装置を使用して実施することができる。使用できるサーマルサイクラ−は本明細書の他の場所に記載され、ならびに米国特許第5,612,473号明細書、同第5,602,756号明細書、同第5,538,871号明細書および同第5,475,610号明細書に記載されており、それらの開示は本明細書に参照によって組み込まれる。
【0070】
また、本明細書で開示された方法は、標的核酸配列を検出するための非PCRベースの用途で使用してもよく、このような標的は固相支持体に固定することができる。核酸配列の固相支持体への固定方法は当業界では既知であり、Ausubelら編(1995年)Current Protocols in Molecular Biology(Greene Publishing and Wiley−Interscience、NY)、および製造者によって提供されているプロトコール(例えばメンブレンについては、Pall Corporation、Schleicher & amp、Schuell;磁気ビーズについては、Dynal;培養用プレートには、Costar、Nalgenunc;ビーズアレイプラットホームについては、LuminexおよびBecton Dickinson;本明細書で開示された実施形態で有用な他の支持体については、CPG Inc.)に記載されている。
【0071】
核酸増幅の分野における当業者であれば、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写ベース増幅システム(TAS)、自己支持配列複製(3SR)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)および分岐DNA法(bDNA)(Persingら、(1993年)Diagnostic Molecular Microbiology:Principles and Applications(American Society for Microbiology、Washington、DC))のような、他の迅速な増幅方法を知っている。本明細書で開示された実施形態の範囲は、PCRによる増幅法を使用することに限定されず、むしろ本明細書で開示された実施形態の配列を用いて、ESBL抗生物質耐性遺伝子(複数可)(例えば、CTX−M遺伝子)を検出および/または定量するために有用であり得る任意の迅速な核酸増幅方法、または任意の他の手法を含む。
【0072】
更に、様々な試薬の正確な量について変更すること、ならびに同様な増幅または検出/定量結果をもたらすPCRの為の条件について、もしくは他の好適な増幅手法(例えば、緩衝液の条件、サイクル回数等)についての変更をすることは当業者には既知であり、均等(equivalent)であると考えられる。一実施形態では、本発明のQPCR検出は、試料中の50コピー未満(好ましくは、25コピー未満、より好ましくは15コピー未満、更により好ましくは10コピー未満)の標的核酸(すなわち、CTX−M遺伝子を含むESBL核酸)を検出する感度を有する。一実施形態では、非特異的な増幅によるバックグラウンドを減少させることでPCR反応を改善し、望まれる伸長産物の増幅を増加させる為に、ホットスタートPCR反応を(例えば、ホットスタートTaq DNAポリメラーゼを使用して)実行する。
【0073】
(コントロール)
幾つかの実施形態では、本明細書で開示されたPCRまたはQPCR反応は、様々なコントロールを含むことができる。そのようなコントロールは「鋳型なし」のネガティブコントロールを含めることができ、ここでは、プライマー、緩衝液、酵素(複数可)および他の必要な試薬(例えば、塩化マグネシウム、ヌクレオチド)に試験試料を添加することなくサイクルは実施される。既知の標的核酸を含むポジティブコントロールも並行して実施することができる。幾つかの実施形態では、ポジティブコントロールおよびネガティブコントロールの双方を増幅反応に含めることができる。1回の反応には、ポジティブコントロール、ネガティブコントロール、もしくは試料鋳型のいずれかが含まれてもよく、または、1回の反応に試料鋳型およびポジティブコントロールの双方が含まれてもよい。
【0074】
また、「鋳型なし」のコントロールに加えて、ネガティブコントロールは反応中に非特異的標的核酸が含まれた増幅反応も含んでよく、またはネガティブコントロールは試験試料を添加しない(核酸抽出から増幅調製までの)試料調製ステップ(例えば、各ステップでは試験試料を使用しないか、またはCTX−MのようなESBLを含まないことが知られている試料を使用する)の幾つか、または全てを使用して調製された試料であってもよい。
【0075】
ポジティブおよびネガティブコントロールは、試験試料がESBLの有無で分類されるパラメータの設定に有用である。
【0076】
例えば、QPCR反応では、ESBL(例えば、CTX−M)がポジティブコントロール試料中で検出されるサイクル閾値は、試料を「陽性」として分類する閾値を設定するために使用することができ、対象のESBL(例えば、CTX−M)がネガティブコントロール試料中で検出されるサイクル閾値は、試料を「陰性」として分類する閾値を設定するために使用することができる。1回の反応から得られたCTを各々のコントロールに使用することができ、または複製した試料の中央値または平均値を使用することもできる。更に別の実施形態では、古典的な対照値を使用してもよい。ネガティブおよびポジティブコントロールそれぞれの最小検出レベルは、典型的には複数回の反応に渡る平均CTの95%信頼区間の下端に設定される。この値は、診断アッセイの要求に応じて調節することができる。
【0077】
好ましくは、PCRコントロールは、同一の試薬を使用して、同一の増幅反応で、試験試料と同時に実施するべきである。
【0078】
幾つかの実施形態では、標的増幅産物の同定および/または量を決定することを提供する。プライマー伸長または増幅産物の同定は、(例えば)サザンブロットアッセイを含む標準的な分子的技術を使用して確認することができる。サザンブロットアッセイでは、増幅産物は電気泳動によって分離し、メンブレン(すなわち、ニトロセルロース、ナイロン等)にトランスファーし、オリゴヌクレオチドプローブまたは対象となる核酸配列の任意の部分と反応させる。次に、検出を可能にするためにプローブを修飾する。修飾方法は、放射性標識されたヌクレオチド、または任意数の非放射性標識(例えば、ビオチン)の組み込むものであってよい。サザンブロットアッセイで使用するオリゴヌクレオチドプローブは核酸配列に由来し、したがってCTX−M核酸に特異的であり、配列番号5、10、31、32および33に示されている配列を含むブローブであってよい。サザンブロットアッセイで使用するプローブは、日常的で標準的な方法を使用して調製することができる。例えば、プローブは、当該技術分野において既知の日常的な技術を使用して単離し、クローニングし、および制限することができ、または本明細書で既に記載した化学的合成法を使用して作成することができる。
【0079】
あるいは、増幅産物はドットブロット分析を使用して検出することができる。ドットブロット分析には、オリゴヌクレオチドプローブ(例えば、以前に記載したもの)をニトロセルロース、またはビーズ(例えば、ポリスチレンビーズ、磁性ビーズ、または非磁性ビーズ等があるが、これらに限定されない)、反応トレイの壁、ストリップ(例えば、ニトロセルロースストリップがあるが、これに限定されない)、試験管のような固相支持体(これらに限定されない)に固着させることが含まれる。標識した増幅産物を含有する試料を添加し、反応させ、結合しなかった試料を除去するために洗浄し、標識して、プローブに結合した増幅産物を当該技術分野において既知の日常的な技術を使用して可視化する。プライマー伸長産物または増幅産物を確認するためのよりストリンジェントな方法は、当該技術分野でよく知られている技術を使用した直接的な配列決定法によるものである。
【0080】
(キット)
本明細書ではまた、本明細書で記載された方法を実施するために必要な構成要素を含有する「キット」を提供する。このようなキットは、1つ以上のチューブまたはバイアルのような容器を、内部に密接に収容するように区分された運搬容器を含むことができる。容器の1つは、本明細書で開示された少なくとも1種の非標識の、または検出可能な標識されたプライマーまたはプローブを含有してもよい。プライマーまたはプライマー類は凍結乾燥形態、または必要に応じて適切な緩衝液中に存在してもよい。1つ以上の容器は、PCR反応で使用する1種以上の酵素または試薬を含有してもよい。これらの酵素は、凍結乾燥状態で、もしくは適切なバッファー中に、それ自体単独で、または既に混合した状態で存在してもよい。
【0081】
結局キットは、例えば、緩衝液、抽出試薬、酵素、ピペット、プレート、核酸、ヌクレオシド三リン酸、濾紙、ゲル素材、トランスファー素材、オートラジオグラフィー用品のような、本明細書に開示された方法を実施するために必要な全ての追加的な構成要素を含むことができる。
【0082】
好ましくは、キットは:(a)標識されたオリゴヌクレオチド(ここでキットは、例えばEMBL(例えば、CTX−M遺伝子)をコードするヌクレオチド配列にハイブリダイズする2種以上の識別可能なオリゴヌクレオチドを含む);および、(b)高いフィデリティーを有する増幅(例えばQPCRのようなPCR反応)において、提供された標識されたオリゴヌクレオチド(複数可)を使用するための説明書、を少なくとも含む。一実施形態では、2種の識別可能なオリゴヌクレオチドは、配列番号1〜24から成る群から選択されてもよい。
【0083】
幾つかの実施形態では、キットは、本明細書で開示された方法で調製された反応混合物に必要な、または含むことが都合がよい、およひ/または望ましい追加的な試薬を含み、そのような試薬には:1種以上のポリメラーゼ;水溶性緩衝液(キットの構成成分として調製されているか、または存在しているかのどちらかであり、該成分の1種以上は予め混合されているか、または全成分が別々に存在してもよい)等、が含まれる。キットの様々な試薬成分は、別々の容器に存在してもよく、または全てが鋳型の核酸と混ぜ合わせるための試薬混合物中に予め混ぜ合わせられていてもよい。
【0084】
前記の成分に加えて、幾つかの実施形態では、キットはまた、本明細書で開示された方法を実施するための説明書を含むこともできる。これらの説明書は様々な形態でキットに存在してもよく、1種以上の説明書がキット内に存在してもよい。これらの説明書が存在できる1つの形態は、適切な媒体または基板(例えば、キットのパッケージ内、パッケージ挿入体等にある、情報が印刷されている1枚の紙または複数の紙)に印刷された情報として、である。更に別の手段は、情報が記録された、コンピューターで読み取り可能である媒体、例えばフロッピー(登録商標)ディスク、CD等である。存在し得る更に別の手段は、離れた場所にある情報にインターネットを通じてアクセスすることで使用できるウェブサイトアドレスである。任意の都合の良い手段がキットに存在してもよい。
【0085】
以下のそれぞれの参照文献の開示は、本明細書においてその全体を参照によって組み込まれる。
(文献)
1.Rasmussen、およびBush 1997年、Carbapenem−Hydrolizing β−Lactamases、Antimicrob.Agents Chemother、第41巻、223〜232頁
2.Woodfordら、2004年、Outbreak of Klebsiella pneumoniae Producing a New Carbapenem−Hydrolyzing Class A β−Lactamase,KPC−3,in a New York Medical Center.、Antimicrob.Agents Chemother、第48巻、4793〜4799頁
3.Yigitら、2001年、Novel Carbapenem−Hydrolyzing β−Lactamase,KPC−1,from a Carbapenem−Resistant Strain of Klebsiella pneumoniae.、Antimicrob.Agents Chemother、第45巻、1151〜1161頁
4.Manual of Microbiology、第8版、PR Murray、EJ Baron、JH Jorgensen、MA Pfaller、およびRH Yolken編、ASM Press、ワシントンDC、2003年
5.Clinical and Laboratory Standard Institute、2008年、Performance Standards for Antimicrobial Susceptibity Testing、第18回Information Supplement M100−S18、Clinical and Laboratory Standard Institute、Wayne、ペンシルバニア州
6.Dieffenbach、およびDveksler、2003年、PCR Primer、A Laboratory Manual、CSHL Press、520頁
7.Devor,E.J.、2005年、Locked Nucleic Acids(LNAs)、Molecular Genetics and Bioinformatics、Integrated DNA technologies
【0086】
本明細書で記載され請求される発明は、本明細書に開示される特定の実施形態が本発明の幾つかの態様についての例示として意図したものであるため、これらの実施形態による範囲によって限定されるべきではない。任意の均等な実施は、本発明の範囲内であることを意図する。実際に、本明細書に示され記載された実施形態の改変に加え、様々な改変をすることは、当業者には上の記載から明らかであろう。付記する特許請求の範囲は、その様な改変を包含することを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標本中のCTX−M基質特異性拡張型β−ラクタマーゼを有する微生物の存在を検出および/または同定するための方法であって、
CTX−M遺伝子の存在を分析するための標本から試料を採取するステップと、
標準的PCR条件下で前記試料を増幅プライマーセットに接触させるステップであり、ここで前記増幅プライマーセットは少なくとも1対のプライマー対を含み、ここで前記プライマーセットは1つ以上のユニバーサル塩基を有するプライマーを含み、ここで前記プライマー対はCTX−M基質特異性拡張型β−ラクタマーゼ遺伝子内の標的配列に隣接する核酸にハイブリダイズし、および、ここで前記プライマー対は標的増幅産物を生成するステップと、
前記標的増幅産物を生成するプライマーの伸長のための試薬および条件を提供するステップと、
前記標的増幅産物の存在および/または量を決定するステップであり、前記標的増幅産物の存在が前記CTX−M遺伝子の存在を示すステップと
を含む方法。
【請求項2】
更に前記試料を、前記標的増幅産物にハイブリダイズする少なくとも1つのプローブと接触させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記増幅プライマーセットが複数の増幅プライマー対を含み、ここで前記複数の増幅プライマー対は少なくとも2種類のCTX−M遺伝子の核酸に集合的にハイブリダイズし、前記少なくとも2種類のCTX−M遺伝子の核酸の存在下で前記標的増幅産物を生成し、前記少なくとも2種類のCTX−M遺伝子はCTX−M−1、CTX−M−2、CTX−M−8、CTX−M−9およびCTX−M−25から成る群より選択される少なくとも2種類のCTX−M群由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の増幅プライマー対が、CTX−M−1、CTX−M−2、CTX−M−8、CTX−M−9およびCTX−M−25の群に由来するCTX−M遺伝子の核酸に集合的にハイブリダイズし、前記CTX−M遺伝子の核酸の存在下で標的増幅産物を生成する、請求項5に記載の方法。
【請求項5】
前記増幅プライマーセットが複数の増幅プライマー対を含み、ここで前記複数の増幅プライマー対はCTX−Mアイソフォーム1〜82に集合的にハイブリダイズし、CTX−Mアイソフォーム1〜82の存在下で標的増幅産物を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記増幅プライマーセットが複数の増幅プライマー対を含み、ここで前記複数の増幅プライマー対は、表1に列挙されたバクテリア株由来のそれぞれのCTX−M核酸に集合的にハイブリダイズし、前記CTX−M核酸の存在下で標的増幅産物を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記プローブが分子ビーコンプローブ、TAQMAN(登録商標)蛍光プローブ、およびscorpion蛍光プローブから成る群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
更に、標準的PCR条件下で、少なくとも2種類のCTX−M群標的増幅産物に由来する前記標的増幅産物にハイブリダイズする少なくとも1つのプローブと前記試料を接触させるステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記試料を1種類以上のプローブと接触させるステップを更に含む方法であって、ここで前記1つ以上のプローブが標準的PCR条件下で、CTX−M群CTX−M−1、CTX−M−2、CTX−M−8、CTX−M−9およびCTX−M−25由来の前記標的増幅産物に集合的にハイブリダイズする、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記試料を1種類以上のプローブと接触させるステップを更に含む方法であって、前記1または複数のプローブが、標準的PCR条件下で、CTX−M群CTX−M−1、CTX−M−2、CTX−M−8、CTX−M−9およびCTX−M−25由来の前記標的増幅産物に集合的にハイブリダイズする、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記増幅プライマーセットが少なくとも2種類のプライマーを含み、各プライマーが、
CYGCTTCCTGGGTTGTGG (配列番号1);
TTGRGGCTGGGTGAAGTAAG (配列番号2);
GGTMTGCCGAAATSWTGG (配列番号3);
CGCAGCCAGAAHATCCCGAC (配列番号4);
TGTRTGCSCAGGCGAACG (配列番号6);
GTAGAGCGTCTGTGYGTTATCG (配列番号7);
TTTATGCGCAGACGAGTG (配列番号8);
AAAGCACCTGCGTATTATCT (配列番号9)
または、それらの相補体から成る群から選択される少なくとも12個の連続したヌクレオチドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
更に、前記試料を少なくとも1つのプローブと接触させることを含み、ここで前記少なくとも1つのプローブは、配列番号5、配列番号10、配列番号31、配列番号32、および配列番号33から成る群より選択される少なくとも12個の連続したヌクレオチドを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記増幅プライマーセットが少なくとも2種類のプライマーを含み、ここで各プライマーは、
CYGCTTCCTGGGTTGTGG (配列番号1);
TTGRGGCTGGGTGAAGTAAG (配列番号2);
GGTMTGCCGAAATSWTGG (配列番号3);
CGCAGCCAGAAHATCCCGAC (配列番号4);
TGTRTGCSCAGGCGAACG (配列番号27);
GTAGAGCGTCTGTGYGTTATCG (配列番号28);
TTTATGCGCAGACGAGTG (配列番号29);
AAAGCACCTGCGTATTATCT (配列番号30)
または、それらの相補体から成る群から選択される少なくとも12個の連続したヌクレオチドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
更に、前記試料を少なくとも1つのプローブと接触させることを含み、ここで前記少なくとも1つのプローブは、配列番号5、配列番号10、配列番号31、配列番号32および配列番号33から成る群から選択される少なくとも12個の連続したヌクレオチドを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
標本中のCTX−M基質特異性拡張型β−ラクタマーゼを有する微生物の存在を検出および/または同定するためのキットであって、
増幅プライマーセットを含み、ここで前記増幅プライマーセットは少なくとも1対のプライマー対を含み、および、ここで前記プライマーセットはユニバーサル塩基を含む1種類以上のプライマーを含み、ここで前記少なくとも1対のプライマー対はCTX−M基質特異性拡張型β−ラクタマーゼ遺伝子内の、またはその部分を含む標的配列に隣接した核酸にハイブリダイズするキット。
【請求項16】
前記標的配列にハイブリダイズする少なくとも1つのプローブを更に含む、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
前記増幅プライマーセットが複数の増幅プライマー対を含み、ここで前記複数の増幅プライマー対は、標準的PCR条件下で、少なくとも2種類のCTX−M遺伝子の核酸に集合的にハイブリダイズし、前記少なくとも2種類のCTX−M遺伝子の核酸の存在下で標的増幅産物を生成することができ、前記少なくとも2種類のCTX−M遺伝子はCTX−M−1、CTX−M−2、CTX−M−8、CTX−M−9およびCTX−M−25から成る群から選択される少なくとも2種類のCTX−M群由来である、請求項15に記載のキット。
【請求項18】
前記複数の増幅プライマー対が、標準的PCR条件下で、CTX−M−1、CTX−M−2、CTX−M−8、CTX−M−9およびCTX−M−25群に由来するCTX−M遺伝子の核酸に集合的にハイブリダイズし、前記CTX−M遺伝子の核酸の存在下で標的増幅産物を生成することができる、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記増幅プライマーセットが複数の増幅プライマー対を含み、ここで前記複数の増幅プライマー対は、標準的PCR条件下で、CTX−Mアイソフォーム1〜82に集合的にハイブリダイズし、CTX−Mアイソフォーム1〜82の存在下で標的増幅産物を生成することができる、請求項15に記載のキット。
【請求項20】
前記プローブが分子ビーコンプローブ、TAQMAN(登録商標)蛍光プローブおよびscorpion蛍光プローブから成る群より選択される、請求項23に記載のキット。
【請求項21】
標準的PCR条件下で、少なくとも2種類のCTX−M群標的増幅産物に由来する前記標的増幅産物にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプローブを更に含む、請求項17に記載のキット。
【請求項22】
1種類以上のプローブを更に含むキットであって、ここで前記1種類以上のプローブは、標準的PCR条件下で、CTX−M群CTX−M−1、CTX−M−2、CTX−M−8、CTX−M−9およびCTX−M−25由来の前記標的増幅産物に集合的にハイブリダイズすることができる、請求項19に記載のキット。
【請求項23】
前記増幅プライマーセットが少なくとも2種類のプライマーを含み、ここで各プライマーは、
CYGCTTCCTGGGTTGTGG (配列番号1);
TTGRGGCTGGGTGAAGTAAG (配列番号2);
GGTMTGCCGAAATSWTGG (配列番号3);
CGCAGCCAGAAHATCCCGAC (配列番号4);
TGTRTGCSCAGGCGAACG (配列番号6);
GTAGAGCGTCTGTGYGTTATCG (配列番号7);
TTTATGCGCAGACGAGTG (配列番号8);
AAAGCACCTGCGTATTATCT (配列番号9)
または、それらの相補体から成る群より選択される少なくとも12個の連続したヌクレオチドを含む、請求項15に記載のキット。
【請求項24】
少なくとも1つのプローブを更に含むキットであって、ここで前記少なくとも1つのプローブが、配列番号5、配列番号10、配列番号31、配列番号32および配列番号33から成る群より選択される少なくとも12個の連続したヌクレオチドを含む、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
前記増幅プライマーセットが少なくとも2種類のプライマーを含み、ここで各プライマーは、
CYGCTTCCTGGGTTGTGG (配列番号1);
TTGRGGCTGGGTGAAGTAAG (配列番号2);
GGTMTGCCGAAATSWTGG (配列番号3);
CGCAGCCAGAAHATCCCGAC (配列番号4);
TGTRTGCSCAGGCGAACG (配列番号27);
GTAGAGCGTCTGTGYGTTATCG (配列番号28);
TTTATGCGCAGACGAGTG (配列番号29);
AAAGCACCTGCGTATTATCT (配列番号30)
または、それらの相補体から成る群より選択される少なくとも12個の連続したヌクレオチドを含む、請求項15に記載のキット。
【請求項26】
少なくとも1つのプローブを更に含むキットであって、ここで前記少なくとも1つのプローブは、配列番号5、配列番号10、配列番号31、配列番号32、および配列番号33から成る群より選択される少なくとも12個の連続したヌクレオチドを含む、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
カルバペネマーゼ遺伝子内の、またはその部分を含む標的配列に隣接した核酸にハイブリダイズする増幅プライマー対を更に含む、請求項15に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−518414(P2012−518414A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551261(P2011−551261)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/024832
【国際公開番号】WO2010/096723
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(511202861)ジェネオーム サイエンシズ、 インク. (1)
【Fターム(参考)】