説明

堆肥化促進剤および堆肥化促進方法

【課題】家畜の排泄物(糞尿)を処理する際に適用する際に、発酵時の悪臭成分(アンモニアおよびアミン類)の発生を抑制して環境を保護する。
【解決手段】Bacillus sp. F0016、Bacillus sp. F0018、Bacillus subtilis JAM2001およびStreptococcus themophilus D0013からなる群から選択される1種以上の菌株を用いた培養液でぼかしを作製する。このぼかしを排泄物に添加して発酵させる。ぼかしに含まれる特定の菌株の消臭作用により、発酵時の悪臭成分(アンモニアおよびアミン類)の発生が抑制される。ぼかしに含まれる特定の菌株の発酵促進作用により、発酵が促進されて排泄物が短時間で発酵するとともに、含水率が低減して良質な肥料が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜の排泄物(糞尿)を処理する際に適用するに好適な、堆肥化促進剤および堆肥化促進方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、畜産業においては、家畜の排泄物を処理すべく、これを発酵させて肥料化している(例えば、特許文献1参照)。ところが、この排泄物の発酵時にアンモニアが発生し、周囲の環境を悪臭で汚染するという問題があった。
【0003】
そこで、アンモニアの発生を抑制すべく、Bacillus sp. TAT105株やBacillus sp. TAT112株などの菌株を利用して、家畜の排泄物を処理する手法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−95771号公報
【特許文献2】特開2001−103962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これでは、アンモニアの発生を抑制することはできても、アンモニア以外の悪臭成分(例えば、アミン類など)の発生抑制効果があるか否か明らかではない。さらに、排泄物の発酵に長時間(約1〜2週間)を要するため、多量の排泄物を処理しきれず、また、堆肥の含水率が高く、良質な肥料を作ることができないという課題は、いずれも未解決のままである。
【0005】
本発明は、こうした不都合を解消することが可能な、堆肥化促進剤および堆肥化促進方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
まず、請求項1に係る発明は、Bacillus sp. F0016、Bacillus sp. F0018、Bacillus subtilis JAM2001およびStreptococcus themophilus D0013からなる群から選択される1種以上の菌株の菌体および/または培養液を含むことを特徴とする。ここで、「菌体および/または培養液」とは、菌体と培養液のいずれか一方または双方を意味する。
また、請求項2に係る発明は、Bacillus sp. F0016、Bacillus sp. F0018、Bacillus subtilis JAM2001およびStreptococcus themophilus D0013からなる群から選択される1種以上の菌株の培養液に、抗酸化性および殺菌性をもつ安定剤と、多孔質の坦持体とが混合されていることを特徴とする。
また、請求項3に係る発明は、請求項2に記載の堆肥化促進剤を用いて、ぼかしを作製し、このぼかしを使って排泄物を発酵させることを特徴とする。
また、請求項4に係る発明は、前記排泄物の発酵時間は、1時間以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ぼかしに含まれる特定の菌株の消臭作用により、発酵時の悪臭成分(アンモニアおよびアミン類)の発生を抑制して環境を保護することが可能となる。しかも、ぼかしに含まれる特定の菌株の発酵促進作用により、発酵を促進して排泄物を短時間で発酵させるとともに、含水率を低減させて良質な肥料を作ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、ここでは培養液を用いる場合について説明するが、培養液に代えて菌体を用いることも可能である。
【0009】
<第1の実施形態>
Bacillus sp. F0016およびBacillus sp. F0018の2種の菌株を用いる場合は、まず、それぞれの菌株を単独で培養した後、これら2種の培養液を混合して混合菌培養液を調製する。なお、Bacillus sp. F0016は、(独)産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託番号FERM P−20201号として寄託されている。同様に、Bacillus sp. F0018は、(独)産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託番号FERM P−20202号として寄託されている。
【0010】
すなわち、Bacillus sp. F0016を用いた培養液を調製すべく、このBacillus sp. F0016をGYP寒天培地(培地組成:ポリペプトン5g/L、酵母エキス2.5g/L、ブドウ糖1g/L、寒天15g/L、pH7.0)に接種し、温度50℃で2日間にわたって培養する。そして、そのコロニーを白金耳で掻き取り、GYP−1液体培地(培地組成:ポリペプトン5g/L、酵母エキス2.5g/L、ブドウ糖1g/L、pH7.0)に接種する。これを1日間にわたって温度50℃、回転数100rpmで振とう培養して、前培養液を得る。その後、この前培養液を本培養液(GYP−1液体培地)に1.5%(質量百分率)加え、2日間にわたって温度50℃、回転数100rpmで振とう培養する。
【0011】
他方、Bacillus sp. F0018を用いた培養液を調製すべく、このBacillus sp. F0018をGYP寒天培地(培地組成:ポリペプトン5g/L、酵母エキス2.5g/L、ブドウ糖1g/L、寒天15g/L、pH9.0)に接種し、温度50℃で2日間にわたって培養する。そして、そのコロニーを白金耳で掻き取り、GYP−2液体培地(培地組成:ポリペプトン5g/L、酵母エキス2.5g/L、ブドウ糖1g/L、炭酸カルシウム10g/L、pH7.0)に接種する。これを1日間にわたって温度50℃、回転数100rpmで振とう培養して、前培養液を得る。その後、この前培養液を本培養液(GYP−2液体培地)に1.5%(質量百分率)加え、2日間にわたって温度50℃、回転数100rpmで振とう培養する。
【0012】
そして、これら2種の培養液を混合する。すると、混合菌培養液が得られる。
【0013】
次に、この混合菌培養液に、抗酸化性と抗菌性を持つ安定剤(例えば、アスコロビンサン、トコフェロールなど)と、多孔質の坦持体(例えば、ゼオライト粉末、バーミキュライト粉末およびカオリン粉末等のいずれか)とを混合する。すると、堆肥化促進剤が得られる。さらに、この堆肥化促進剤を用いて、ぼかしを作製する。具体的には、堆肥化前の使用済み敷き料に完熟堆肥を適量混合して、含水率50〜60%の敷き料混合物を調製する。そして、この敷き料混合物に混合菌培養液を(1〜2)×10-3 の比率(敷き料混合物の質量に対する混合菌培養液の容積の割合)で添加し、菌をこの環境になじませて増殖させる。すると、ぼかしが得られる。
【0014】
最後に、このぼかしを使って排泄物を発酵させるべく、発酵槽に排泄物を入れ、この排泄物にぼかしを添加する。このときの添加率は、排泄物10トンに対して、ぼかし1トンとする。
【0015】
すると、ぼかしに含まれるBacillus sp. F0016およびBacillus sp. F0018の消臭作用により、発酵時の悪臭成分(アンモニアおよびアミン類)の発生が抑制されるため、周囲の環境が悪臭汚染から保護される。また、ぼかしに含まれるBacillus sp. F0016およびBacillus sp. F0018の発酵促進作用により、排泄物の発酵が促進され、排泄物が短時間で発酵するとともに、堆肥の含水率が低減し、良質な肥料が得られる。
【0016】
<第2の実施形態>
Bacillus sp. F0016を単独で用いる場合は、まず、この菌株の培養液を調製する。それには、Bacillus sp. F0016をStandard寒天平板培地(培地組成:ペプトン0.5%、酵母エキス0.25%、グルコース0.1%、寒天1.5%)に接種し、温度50℃で2日間にわたって培養する。そして、そのコロニーを白金耳で掻き取り、GYP−1液体培地(培地組成:ポリペプトン5g/L、酵母エキス2.5g/L、ブドウ糖1g/L、pH7.0)に接種する。これを1日間にわたって温度50℃、回転数100rpmで振とう培養して、前培養液を得る。その後、この前培養液を本培養液(GYP−1液体培地)に1.5%(質量百分率)加え、2日間にわたって温度50℃、回転数100rpmで振とう培養する。すると、培養液が得られる。
【0017】
次に、第1の実施形態と同様にして、この培養液に安定剤および坦持体を混合して堆肥化促進剤を得た後、この堆肥化促進剤を用いて、ぼかしを作製する。
【0018】
最後に、このぼかしを使って排泄物を発酵させるべく、発酵槽に排泄物を入れ、この排泄物にぼかしを添加する。
【0019】
すると、ぼかしに含まれるBacillus sp. F0016の消臭作用により、発酵時の悪臭成分(アンモニアおよびアミン類)の発生が抑制されるため、周囲の環境が悪臭汚染から保護される。また、ぼかしに含まれるBacillus sp. F0016の発酵促進作用により、排泄物の発酵が促進され、排泄物が短時間で発酵するとともに、堆肥の含水率が低減し、良質な肥料が得られる。
【0020】
<第3の実施形態>
Bacillus sp. F0018を単独で用いる場合は、まず、この菌株の培養液を調製する。それには、Bacillus sp. F0018をStandard寒天平板培地(培地組成:ペプトン0.5%、酵母エキス0.25%、グルコース0.1%、寒天1.5%)に接種し、温度50℃で2日間にわたって培養する。そして、そのコロニーを白金耳で掻き取り、GYP−1液体培地(培地組成:ポリペプトン5g/L、酵母エキス2.5g/L、ブドウ糖1g/L、pH7.0)に接種する。これを1日間にわたって温度50℃、回転数100rpmで振とう培養して、前培養液を得る。その後、この前培養液を本培養液(GYP−1液体培地)に1.5%(質量百分率)加え、2日間にわたって温度50℃、回転数100rpmで振とう培養する。すると、培養液が得られる。
【0021】
次に、第1の実施形態と同様にして、この培養液に安定剤および坦持体を混合して堆肥化促進剤を得た後、この堆肥化促進剤を用いて、ぼかしを作製し、さらに、このぼかしを使って排泄物を発酵させる。
【0022】
すると、ぼかしに含まれるBacillus sp. F0018の消臭作用により、発酵時の悪臭成分(アンモニアおよびアミン類)の発生が抑制されるため、周囲の環境が悪臭汚染から保護される。また、ぼかしに含まれるBacillus sp. F0018の発酵促進作用により、排泄物の発酵が促進され、排泄物が短時間で発酵するとともに、堆肥の含水率が低減し、良質な肥料が得られる。
【0023】
<第4の実施形態>
Bacillus subtilis JAM2001を単独で用いる場合は、まず、この菌株の培養液を調製する。なお、Bacillus subtilis JAM2001は、(独)産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託番号FERM BP−1108号として寄託されている。
【0024】
それには、Bacillus subtilis JAM2001を培地(培地組成:Bacto peptone5g、Beef extract3g、土壌抽出液1L)に接種し、温度50℃で2日間にわたって培養する。そして、そのコロニーを白金耳で掻き取り、GYP−1液体培地(培地組成:ポリペプトン5g/L、酵母エキス2.5g/L、ブドウ糖1g/L、pH7.0)に接種する。これを1日間にわたって温度50℃、回転数100rpmで振とう培養して、前培養液を得る。その後、この前培養液を本培養液(GYP−1液体培地)に1.5%(質量百分率)加え、2日間にわたって温度50℃、回転数100rpmで振とう培養する。すると、培養液が得られる。
【0025】
次に、第1の実施形態と同様にして、この培養液に安定剤および坦持体を混合して堆肥化促進剤を得た後、この堆肥化促進剤を用いて、ぼかしを作製し、さらに、このぼかしを使って排泄物を発酵させる。
【0026】
すると、ぼかしに含まれるBacillus subtilis JAM2001の消臭作用により、発酵時の悪臭成分(アンモニアおよびアミン類)の発生が抑制されるため、周囲の環境が悪臭汚染から保護される。また、ぼかしに含まれるBacillus subtilis JAM2001の発酵促進作用により、排泄物の発酵が促進され、排泄物が短時間で発酵するとともに、堆肥の含水率が低減し、良質な肥料が得られる。
【0027】
<第5の実施形態>
Streptococcus themophilus D0013を単独で用いる場合は、まず、この菌株の培養液を調製する。なお、Streptococcus themophilus D0013は、(独)産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託番号FERM P−19718号として寄託されている。
【0028】
それには、Streptococcus themophilus D0013をGYP寒天培地(培地組成:Glucose20g、酵母エキス10g、ポリペプトン10g、Na-acetate10g、SaltB5mL、agar15g、D.W.930mL)およびMRS培地(培地組成:MRS粉末66.2g、D.W.934mL)に接種し、温度50℃で2日間にわたって培養する。そして、そのコロニーを白金耳で掻き取り、GYP−1液体培地(培地組成:ポリペプトン5g/L、酵母エキス2.5g/L、ブドウ糖1g/L、pH7.0)に接種する。これを1日間にわたって温度50℃、回転数100rpmで振とう培養して、前培養液を得る。その後、この前培養液を本培養液(GYP−1液体培地)に1.5%(質量百分率)加え、2日間にわたって温度50℃、回転数100rpmで振とう培養する。すると、培養液が得られる。
【0029】
次に、第1の実施形態と同様にして、この培養液に安定剤および坦持体を混合して堆肥化促進剤を得た後、この堆肥化促進剤を用いて、ぼかしを作製し、さらに、このぼかしを使って排泄物を発酵させる。
【0030】
すると、ぼかしに含まれるStreptococcus themophilus D0013の消臭作用により、発酵時の悪臭成分(アンモニアおよびアミン類)の発生が抑制されるため、周囲の環境が悪臭汚染から保護される。また、ぼかしに含まれるStreptococcus themophilus D0013の発酵促進作用により、排泄物の発酵が促進され、排泄物が短時間で発酵するとともに、堆肥の含水率が低減し、良質な肥料が得られる。
【実施例1】
【0031】
Bacillus sp. F0016およびBacillus sp. F0018の2種の菌株を用いた堆肥化促進剤を使用して、フィールド試験に先立って室内実験を行った。
【0032】
すなわち、培養液2種類に安定剤および坦持体を混合した堆肥化促進剤をそれぞれ100mL(対照区は水100mL)調製し、水分60%に調整した糞尿敷料(豚舎から採取した。)10kgに加えた。十分に攪拌し、ポリバケツに入れた。保温・保湿のために、湿ったタオルを被せて試験を開始した。室温25℃で放置した。試験開始直後、1日後および4日後に、臭気測定およびpH測定を行った。温度変化は温度センサーを糞尿敷料の中心に設置し、経時的変化を測定した。なお、臭気測定においては、糞尿敷料発酵物200gを臭気測定用ボトルに詰めて密閉し、それらを25℃で2時間静置した後、検知管(北川式)を用いてボトル中のアンモニアとアミン類の濃度を測定した。また、pH測定は、糞尿敷料発酵物2gを18mLの蒸留水で懸濁し、pHメーターで行った。
【0033】
その結果、温度変化については、図1に示すとおり、対照区は試験開始から26〜27時間後に温度上昇のピークに達したのに対して、培養液を添加した2つのサンプルは6〜8時間後に温度上昇のピークに達した。また、培養液を添加した場合は、温度の上昇速度が対照区に比べて高かった。以上の結果から、培養液を添加することによって堆肥化が促進されたと考えられる。
【0034】
また、臭気測定については、図2に示すとおり、アンモニアの濃度に顕著な変化は見られなかった。しかし、アミン類の濃度は、図3に示すとおり、開始直後で対照区が900ppmであったのに対し、培養液を添加した場合は300ppm以下であった。その後、1日目および4日目も測定を行ったが、250ppm以下を維持していた。以上の結果から、培養液を添加することによってアミン類が抑制されたと考えられる。
【実施例2】
【0035】
Bacillus sp. F0016およびBacillus sp. F0018の2種の菌株を用いた堆肥化促進剤を使用して、豚舎においてフィールド試験を行った。
【0036】
すなわち、養豚終了時点の糞尿で汚染された敷料1tをユンボを用いてよく攪拌した。その後、2等分して、500kgあたり2種類の培養液に安定剤および坦持体を混合した堆肥化促進剤を250mLずつ計500mL(対照区は培養液の代わりに水を500mL)添加した。その後、攪拌したものを山積みにし、中心部分に温度センサーを取り付けた。臭気測定は室内試験と同じ方法で行った。
【0037】
その結果、温度変化については、図4に示すとおり、対照区は73℃まで上昇したのに対して、培養液を添加した場合は79℃まで上昇した。また、温度の上昇速度も培養液を添加した場合の方が、対照区よりも速いことが分かった。また、図4において、曲線と横軸で囲まれた面積で表される積算値、すなわち換算総発熱量は、培養液を添加した場合の方が大きくなっている。以上の結果より、培養液を添加することによる堆肥化の促進効果は極めて大きいといえる。
【0038】
また、臭気測定については、図5および図6に示すとおり、アンモニア、アミン類の両臭気濃度を8日間測定した結果、試験開始から2日目にアンモニアの濃度が対照区よりも高かったものの、総じてアンモニア、アミン類とも臭気が抑えられていることが分かった。
【実施例3】
【0039】
Bacillus sp. F0016およびBacillus sp. F0018の2種の菌株を用いた堆肥化促進剤を使用して、鶏舎においてフィールド試験を行った。本試験では「細谷式鶏糞発酵槽」を用いた。
【0040】
すなわち、この発酵槽は、図7に示すように、投入口から出口まで約100mあり、敷き料等が攪拌されながら、一日あたり7mずつ移動する構造となっている。攪拌発酵槽に投入する前に2種類の培養液を環境に馴染ませ、増殖させる為にぼかしを調製した。その後、発酵槽に1日あたり約450kgずつ投入した。
【0041】
そして、発酵槽内の2地点A、Bで温度を測定した。ここで、A地点とは、図7に示すように、投入口から約14m付近にあり、投入口から2日後に到達する位置である。B地点とは投入口から24m付近であり、A地点からさらに1.5日後に到達する位置である。
【0042】
また、現場大気中の発酵温度が最も高い2地点C、Dで臭気(アンモニア、アミン類)を測定した。臭気測定においては、鶏糞発酵物70gを臭気測定用ボトルに詰めて密閉した。それらをサンプリング時の状態に近づけるために、70℃の温水に2時間浸した。その後、25℃で2時間静置した後、検知管(北川式)を用いてボトル中のアンモニアとアミン類の濃度を測定した。
【0043】
さらに、発酵終了地点、つまりビニールハウスの出口付近で含水率を測定した。
【0044】
そして、温度測定の結果、図8に示すように、7月22日の混合菌培養液を投入後、7月25〜31日に鶏糞発酵物はA、B両測定地点で60℃を超えた。特にB地点では70℃を超えることもあった。8月上旬はA、B両測定地点で、50℃前後まで温度が下がった。鶏糞投入時に戻し堆肥を用いて水分調整したところ、8月12日以降は65℃以上を保ち続けた。
【0045】
また、臭気測定の結果、図9および図10に示すように、現場大気に対する臭気測定の結果、顕著な抑制効果は見られなかった。しかし、本発明の方法で最も温度が高かった地点の鶏糞発酵物自体の臭気濃度を測定した結果、図11に示すように、アンモニアは1118ppmから352ppmへ、アミン類は1461ppmから360ppmへ大幅に減少した。
【0046】
さらに、含水率測定の結果、堆肥化終了地点の鶏糞堆肥について、試験区の含水率が23.54%で、対照区の27.20%に比べて水分が少なくなった。また、粒径が小さく、良質な堆肥となった。
【実施例4】
【0047】
Bacillus subtilis JAM2001を用いて、NA培地で大小コロニーを培養した(35℃、2日間)。これらのコロニーを前培養するため、滅菌水で懸濁させ、製造培地に懸濁液を1滴加え、温度25℃、回転数98rpmで振とう培養した。次に、本培養に移行し、24時間後、前培養液の濁度(OD660nm)を測定し、本培養液の濁度(OD660nm)が0.01になるように前培養液に接種した。接種してから24時間経過後の培養液を試験液とし、開始まで冷蔵保存した。
【0048】
消臭試験を実施すべく、豚舎の敷き料200gを敷き詰め、培養液10mLを噴霧した。噴霧してから1時間経過後と24時間経過後に、アンモニアおよびアミン類の濃度を検知器で測定した。
【0049】
その結果、アンモニアについては、図12および図13に示すように、対照区ではアンモニアの濃度が経時的に増加したのに対して、培養液を添加したサンプルではアンモニアの濃度が経時的に減少し、1時間経過後と24時間経過後のいずれにおいても対照区より低い濃度となった。一方、アミン類については、図14および図15に示すように、対照区ではアミン類の濃度が経時的に増加したのに対して、培養液を添加したサンプルではアミン類の濃度が経時的に減少し、1時間経過後と24時間経過後のいずれにおいても対照区より低い濃度となった。
【0050】
また、堆肥の粒径分布を求めたところ、図16に示すように、粒径2mm未満のものが、対照区では18%しかなかったのに対して、試験区では23%(つまり、対照区の1.28倍)も存在する結果となった。この点からも、良質な堆肥が得られたことになる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】温度の経時変化を示すグラフである。
【図2】アンモニア濃度の経時変化を示すグラフである。
【図3】アミン類濃度の経時的変化を示すグラフである。
【図4】温度の経時変化を示すグラフである。
【図5】アミン類濃度の経時変化を示すグラフである。
【図6】アンモニア濃度の経時的変化を示すグラフである。
【図7】発酵槽を示す模式図である。
【図8】温度の経時変化を示すグラフである。
【図9】アンモニア濃度の経時的変化を示すグラフである。
【図10】アミン類濃度の経時変化を示すグラフである。
【図11】アンモニアおよびアミン類の臭気濃度を示す棒グラフである。
【図12】アンモニア濃度の経時的変化を示すグラフである。
【図13】アンモニア濃度の経時的変化を示すグラフである。
【図14】アミン類濃度の経時的変化を示すグラフである。
【図15】アミン類濃度の経時的変化を示すグラフである。
【図16】堆肥の粒径分布を示す棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Bacillus sp. F0016、Bacillus sp. F0018、Bacillus subtilis JAM2001およびStreptococcus themophilus D0013からなる群から選択される1種以上の菌株の菌体および/または培養液を含むことを特徴とする堆肥化促進剤。
【請求項2】
Bacillus sp. F0016、Bacillus sp. F0018、Bacillus subtilis JAM2001およびStreptococcus themophilus D0013からなる群から選択される1種以上の菌株の培養液に、抗酸化性および殺菌性をもつ安定剤と、多孔質の坦持体とが混合されていることを特徴とする堆肥化促進剤。
【請求項3】
請求項2に記載の堆肥化促進剤を用いて、ぼかしを作製し、
このぼかしを使って排泄物を発酵させることを特徴とする堆肥化促進方法。
【請求項4】
前記排泄物の発酵時間は、1時間以上であることを特徴とする請求項3に記載の堆肥化促進方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−131431(P2006−131431A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−319094(P2004−319094)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(595175301)株式会社応微研 (28)
【Fターム(参考)】