説明

報知装置及び画像形成装置

【課題】周辺音に影響されずにユーザに対して報知音を確実に伝えることが可能な報知装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。また、鳴動パターンの変更による使い勝手の低下や混乱を来たさずに、ユーザのストレスを低減させることが可能な報知装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】機器の動作状態を聴覚認識できるように報知する報知装置であって、周波数の異なる複数の報知音を鳴動可能な鳴動部7と、報知音の周波数を決定すると共に鳴動部7を所定の鳴動パターンで鳴動させる鳴動制御部9と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、報知装置及びこれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、多くの機器において、機器の異常発生状態、動作完了状態等の動作状態をユーザが聴覚認識できるように報知音を鳴動させる報知装置が用いられている。
特に、複写機やファクシミリ装置等の画像形成装置においては、電源入力、原稿セット、動作完了等の操作ガイド時、トナー及び用紙残量の警告時、紙詰まり等の異常時等にユーザに機器の状態を報知するために、多種の報知音が用いられている。そして、報知音鳴動に起因するユーザのストレスを低減させつつ、報知音がユーザに対して確実に伝わるように以下のような工夫がなされている。
例えば、下記特許文献1には、静かな環境下ではユーザのストレスを低減させるために報知音の音を小さい音量に、騒がしい環境下ではユーザに報知音を伝え易くするために報知音を大きい音量に自動的に調整する技術が開示されている。
また、下記特許文献2には、ユーザ、特に弱視者のユーザのストレスを低減させるために、ユーザが操作をしている場合には異常状態を知らせる報知音の音量又は鳴動パターンを変更する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平11−136417号公報
【特許文献2】特開2005−99632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、報知音の音量を変更させる技術では、周辺に報知音と同じ周波数の音が存在すると、二つの音が互いに干渉し合って、報知音が周辺音と重なって紛れてしまうので、報知音がユーザに対して非常に伝わり難いものとなってしまう。
また、報知音の鳴動パターンを変更するものでは、報知音の鳴動パターン毎に意味(例えば動作状況、エラーの種類等)を持たせることが困難となり、ユーザ、特に弱視者のユーザの使い勝手を低減させてしまう。さらに、現在報知音の鳴動パターンとその意味づけが規格化されていることに鑑みると(社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会JBMS−71)、ユーザに混乱が生じる。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、周辺音に影響されずにユーザに対して報知音を確実に伝えることが可能な報知装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とするものである。また、鳴動パターンの変更による使い勝手の低下や混乱を来たさずに、ユーザのストレスを低減させることが可能な報知装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る操作装置及び画像形成装置では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
第一の発明に係る操作装置は、機器の動作状態を聴覚認識できるように報知する報知装置であって、周波数の異なる複数の報知音を鳴動可能な鳴動部と、報知音の周波数を決定すると共に鳴動部を所定の鳴動パターンで鳴動させる鳴動制御部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
また、機器の周辺音を検出するマイクロフォンと、マイクロフォンにより検出された周辺音を周波数分析する周波数分析部と、を備え、鳴動制御部が、周波数分析部の分析結果に基づいて報知音の周波数を決定することを特徴とする。
また、鳴動制御部が、周辺音のうち相対的に音の大きさが小さい周波数を、報知音の周波数として決定することを特徴とする。
【0007】
また、機器の騒音発生動作を認識する騒音発生動作認識部を備え、鳴動制御部が騒音発生動作認識部による認識結果に基づいて報知音の周波数を決定することを特徴とする。
また、鳴動制御部が、騒音発生動作認識部が認識した騒音発生動作の際の騒音の周波数と異なる周波数を報知音の周波数として決定することを特徴とする。
【0008】
また、鳴動制御部が、報知音の周波数として複数の異なる周波数を決定し、鳴動部から周波数の異なる複数の報知音が同時又は交代に鳴動するように制御することを特徴とする。
【0009】
第二の発明に係る画像形成装置は、第一の発明に係る報知装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第一の発明によれば、機器の動作状態を聴覚認識できるように報知する報知装置が、周波数の異なる複数の報知音を鳴動可能な鳴動部と、報知音の周波数を決定すると共に鳴動部を所定の鳴動パターンで鳴動させる鳴動制御部と、を備えるので、周辺音と重なって紛れることのない周波数の報知音を鳴動させて、ユーザに対して報知音を伝え易くすることが可能となる。また、鳴動パターンの変更による使い勝手の低下や混乱を来たさずに、適宜周波数を変更してユーザのストレスを低減させることも可能となる。
【0011】
また、機器の周辺音を検出するマイクロフォンと、これにより検出された周辺音を周波数分析する周波数分析部と、を備え、鳴動制御部が周波数分析部の分析結果に基づいて報知音の周波数を決定することを特徴とするものでは、実際の周辺音を検出して周辺音と重なって紛れることのない周波数を決定できるので、報知音をユーザに対して確実に伝えることが可能となる。
【0012】
そして、機器の騒音発生動作を認識する騒音発生動作認識部を備え、鳴動制御部が騒音発生動作認識部による認識結果に基づいて報知音の周波数を決定することを特徴とするものでは、機器の動作により発生する騒音と重なって紛れることのない周波数を報知音の周波数として決定するので、報知音をユーザに対してほぼ確実に伝えることが可能となる。
【0013】
第二の発明によれば、第一の発明に係る報知装置を備えるので、報知音をユーザに対して確実に伝えることが可能となり、鳴動パターンの変更による使い勝手の低下や混乱を来たさずに、ユーザのストレスを低減させることが可能な画像形成装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る複合機Aの機能構成を示すブロック図であり、図2は、複合機Aの概略的に示した機構構成図である。本複合機Aは、プリンタ、ファクシミリ装置、スキャナ及び複写機としての機能を有するものである。このような機能を有する複合機Aは、図1に示すように、操作部1、画像読取部2、画像記憶部3、通信部4、画像処理部5、印刷部6、鳴動部7、周波数分析ユニット8及び制御部9を備えている。
【0015】
操作部1は、図1に示すように、タッチパネル1a及び操作キー1bから構成されており、ユーザと本複合機Aとを関係付けるマンマシンインタフェースとして機能する。例えば、制御部9によって表示パネルに表示された操作ボタンをユーザが指等で押圧すると、面状押圧センサが押圧位置(押圧座標)を示す操作信号を制御部9に出力する。
【0016】
画像読取部2は、透明な原稿台2a、CCDセンサを備えたキャリッジ2b、モータ(不図示)を駆動源とするキャリッジ搬送機構2c、原稿台2aの上部に備えられた蓋部に取り付けられた自動原稿送り装置2d等を備えて、原稿台2a又はキャリッジ搬送機構2cの原稿Mを読み取って画像データを生成するものである。
【0017】
原稿台2aにセットされた原稿Mの場合は、まず、キャリッジ搬送機構2cにより、キャリッジ2bが原稿Mの読み取り方向に搬送される。そして、原稿Mに対して走査状に照明光を照射して、その反射光をキャリッジ2bに設けられたCCD(Charge Coupled Device)センサ(不図示)が受光することによって画像データを生成する。
また、自動原稿送り装置2dにセットされた原稿Mの場合は、モータ(不図示)を駆動源とする複数のロータ2eの回転により、原稿Mが定位置に固定されたキャリッジ2b上を通過する。そして、原稿Mに対する照明光の反射光を上記CCDセンサ(不図示)が受光することにより、原稿Mの画像データを生成する。このような構成により自動原稿送り装置2dは、複数の原稿Mの画像データを連続して生成することができる。
そして、画像読取部2は、生成した画像データを画像記憶部3に出力する。
【0018】
画像記憶部3は、ハードディスク等の外部記憶装置又は/及び半導体メモリから構成されており、制御部9から入力される制御指令に基づいて上記原稿Mの画像データを書き込む一方、当該画像データを読み出して画像処理部5に出力する。
【0019】
通信部4は、制御部9による制御の下に、LAN(Local Area Network)や電話回線を用いて外部の複合機やファクシミリ装置、あるいはPC(Personal Computer)等と通信を行う。
【0020】
画像処理部5は、画像記憶部3と共同することにより当該画像記憶部3に記憶された原稿Mの画像データ(RGB型式画像データ)に各種の画像処理を施すと共に、当該画像処理によって生成された画像データ(RGB型式画像データ)を印刷形式の画像データ(YCMK型式画像データ)に変換して印刷部6に出力する。
【0021】
印刷部6は、画像処理部5から入力された印刷形式の画像データに基づいて原稿Mの画像を印刷用紙Pに印刷するものである。この印刷部6は、例えばタンデムン方式を採用するものであり、Y(イエロー)、C(シアン)、M(マゼンダ)、K(ブラック)の各色に対応する複数の感光ドラムを中間転写ベルトに沿って並設し、レーザ光を用いて各感光ドラム上に単色のトナー画像を個別に形成し、各感光ドラム上のトナー画像を中間転写ベルトに転送(一次転写)し、さらに中間転写ベルト上の全色のトナー画像を印刷用紙Pに二次転写するものである。
このような印刷を実現するために、印刷部6は、用紙トレー6aに収納された印刷用紙Pを取り出すピックアップローラ6bや装置内で印刷用紙Pを搬送する搬送ローラ6c等が備えられる。これらのローラを回転させるモータ(不図示)は、制御部9の制御の下に駆動される。
また、印刷部6は、各ローラの回転や搬送される印刷用紙Pを検知するためのセンサ(不図示)やトナー、印刷用紙Pの残量が少量となったことを検知するためにセンサ(不図示)が備えられる。そして、これらのセンサによって、用紙詰まりや印刷用紙Pが少量であること等が検知されるとその検知信号が制御部9に供給されるようになっている。
【0022】
鳴動部7は、例えばスピーカであり、ユーザに対して複合機Aの特定の動作状態(例えば、印刷部6の用紙詰まりやFAXの受信等)を聴覚認識させるものであり、周波数の異なる複数の報知音を鳴らすことができる。
この鳴動部7は、複合機Aの側面であって印刷用紙Pの排出トレー6dの上部に取り付けられ、制御部9からの指令に基づいて、その指令に対応した周波数の報知音を鳴らす。
【0023】
周波数分析ユニット8は、複合機Aが報知音を鳴らすべき特定の動作状態になると複合機Aの周辺音を周波数分析するものであり、集音部8aと周波数分析部8bとからなる。
集音部8aは、マイクロフォンからなり、複合機Aの上面後部側に取り付けられている。そして、周辺音を電気信号に変換して周波数分析部8bに出力する。
周波数分析部8bは、FFT(First Furie Transformation)アナライザ等のスペクトルアナライザからなり、集音部8aから入力された複合機Aの周辺音に対応する電気信号(信号波形)から周辺音の周波数の成分分析を行って、単純な周波数に分解して、この結果を制御部9に出力する。
なお、この周波数分析ユニット8の動作については、後に詳しく述べる。
【0024】
制御部9は、CPU(Central Processing Unit)及びROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の内部メモリ、並びに上記操作部1から周波数分析ユニット8とのデータ授受を行う各種入出力インターフェース回路等から構成されている。制御部9は、CPUが操作部1から入力される操作指示等に基づいてROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、制御対象である操作部1から周波数分析ユニット8を全体的に制御する。
また、制御部9は、周波数分析ユニット8の分析結果に基づいて、ユーザに確実に伝えることのできる報知音の周波数を決定する。
【0025】
図3は、周波数分析ユニット8の集音部8aから入力される周辺音の信号波形を示す模式図である。
制御部9は、複合機Aが報知音を鳴らすべき特定の動作状態、例えば、電源入力、原稿セット、動作完了等の操作ガイド時、トナー及び印刷用紙Pの残量の警告時、紙詰まり等の異常時等となった場合には、制御ユニット8に対して周辺音の分析を指令する。そして、この指令を受けた集音部8aは、複合機Aの周辺音の集音を開始する。例えば、自動原稿送り装置2d、印刷部6のピックアップローラ6b及び搬送ローラ6cが動作中であり、複合機A近傍に配置された複写機のFAX受信音が鳴っている場合には、集音部8aは、図3に示すような、各動作音の周波数が複雑に重なった信号波形を検出する。そして、この検出結果を周波数分析部8bに出力する。
【0026】
周波数分析部8bは、集音部8aから入力された複雑な信号波形を高速フーリエ変換することにより、複数の単純な波形に分解する。そして、この分解された波形の各周波数と音圧レベル(音の大きさ(なお、「音の大きさ」には「音量」、「音圧」を含む))を示す信号を制御部9に出力する。
【0027】
図4は、周辺音の周波数の解析結果を示すスペクトル図である。
制御部9(鳴動制御部)は、報知音をユーザに確実に伝えるために、複合機Aの周辺音のうち相対的に音圧レベルが小さい周波数帯域Fを認定し、この周波数帯域Fの中から報知音の周波数fを決定する。例えば、図4においては、周波数帯域Fの中から中央値の周波数を報知音の周波数fとして決定する。
なお、周辺音がほとんど存在しない場合(全ての周波数において音圧レベルが所定の閾値より小さいとき)は、ユーザがストレスを感じにくい比較的に小さい周波数が決定される。さらに、音圧レベルが小さい周波数帯域が複数存在する場合には、相対的に周波数が小さい方が周波数帯域Fと認定される。
【0028】
図5は、本複合機Aの鳴動パターンを例示したものであって、図5(a)は、印刷等の作業が正常に終了した場合の鳴動パターンIであり、図5(b)は、トナー又は印刷用紙Pの残量が少量となった場合の鳴動パターンIIである。
制御部9は、周波数f及びその特定の動作状態に対応した鳴動パターンで報知音を鳴らすように、鳴動部7に対して指令する。例えば、印刷用紙Pの残量が少量となった場合には、周波数f及び図5(b)に示すような鳴動パターンIIで報知音を鳴らすように鳴動部7に指令する。
なお、このような各鳴動パターンは、内部メモリに保存されている。
【0029】
次に、本複合機Aの要部動作について、図6に示すフローチャートに沿って詳しく説明する。
まず、制御部9は、複合機Aが報知音を鳴らすべき特定の動作状態となった場合に、これを認識する(ステップS1)。例えば、用紙トレー6aのセンサから供給される信号によって、印刷用紙Pの残量が少量となった状態を認識する。
【0030】
次に、制御部9は、認識した複合機Aの動作状態に対応した鳴動パターンの情報を内部メモリから取得する。例えば、図4(b)に示すような、印刷用紙Pの残量が少量となった場合の鳴動パターンIIの情報を内部メモリから取得する(ステップS2)。
次に、周波数分析ユニット8に対して、分析開始を指令して周辺音の分析を開始する(ステップS3)。
【0031】
そして、周波数分析ユニット8は、集音部8aにより複合機Aの周辺音の集音を開始し、集音部8aが周辺音を電気信号に変換して、この信号を周波数分析部8bに出力する(ステップS4)。例えば、図3に示すような、各動作音の周波数が複雑に重なった信号波形を周波数分析部8bに出力する。
【0032】
次に、周波数分析ユニット8の周波数分析部8bは、集音部8aより入力された周辺音の信号波形を周波数分析し、分解された波形の各周波数と音圧レベルを示す信号を制御部9に出力する(ステップS5)。
【0033】
そして、制御部9は、入力された各周波数と音圧レベルを示す信号に基づいて、複合機Aの周辺音のうち相対的に音圧レベルが小さい周波数帯域Fを認定し、この周波数帯域Fの中から中間値となる周波数を報知音の周波数fとして決定する(ステップS6)。
すなわち、周辺音のうち音圧レベルが大きい周波数と同一又はほぼ同一周波数の報知音を鳴らしても、周辺音と重なって紛れて(周辺音マスキングされて)しまうので、ユーザに対して報知音を確実に伝えることができない。
例えば、図4に示すように、周辺音のうち周波数が500Hz,1800Hzであって、音圧レベルが大きい周辺音が存在するときに、周波数600Hzの報知音Hや周波数2000Hzの報知音Hを鳴らしても、音圧レベルが大きい音の周波数と報知音H,Hの周波数が近いために、報知音H,Hが周辺音と重なって紛れてしまい、ユーザに対して報知音を伝えることができない。
【0034】
そこで、音圧レベルの小さい周波数帯域Fを認定し、この中間値となる周波数fを報知音の周波数として決定する。
例えば、図4に示すような場合には、周波数帯域Fの中間値となる周波数1200Hzを報知音Hの周波数とすれば、報知音Hが音圧レベルの大きい音と重ならず、紛れてしまうことも無いので、ユーザに対して報知音を確実に伝えることができる。
【0035】
次に、制御部9は、周波数f及びステップS2において取得した所定の鳴動パターン(例えば、図4(b)に示す鳴動パターンII)で報知音を鳴らすように鳴動部7に対して指令をして、鳴動部7が周波数f及び所定の鳴動パターンで報知音を鳴らして処理を終了する(ステップS7)。
【0036】
このように、本実施形態によれば、まず集音部8aが周辺音を集音して、周波数分析部8bがこれを周波数分析する。そして、制御部9が音圧レベルの小さい周波数帯域Fを認定して、この中間値の周波数fを報知音の周波数として決定する。
このため、周辺音に含まれる音圧レベルが大きい周波数と報知音の周波数が重なって紛れることがなく、ユーザに対して報知音を確実に伝えることができる。すなわち、周辺音と重なって紛れることのない周波数で報知音を鳴らすので、ユーザに対して報知音を確実に伝えることができる。
【0037】
また、音圧レベルが小さい周波数帯域が複数存在する場合には、相対的に周波数が小さい方を周波数帯域Fとして認定するので、常に周波数が大きい報知音を鳴らすことを避けて、ユーザのストレスを低減することができる。
【0038】
さらに、報知音の鳴動パターンを変更しないので、報知音の鳴動パターン毎に意味を持たせることが可能となり、鳴動パターンの変更によってユーザの使い勝手を低減させることもないし、混乱が生じることもない。
【0039】
なお、多種の音によって構成される周辺音の環境下においては、各周波数で音圧レベルが大きく変動(スペクトル波形が激しく上下)して、周波数帯域Fを決定することが困難となる場合もあり得る。この場合は、周辺音の分析結果に基づいて報知音の周波数を仮決定し、再度報知音を含めた周辺音の分析結果から報知音の周波数を決定又は再度仮決定してもよい。
例えば、報知音の周波数を仮決定し、周波数分析結果と仮決定した周波数及び音圧レベルを比較して、仮決定した周波数の報知音が周辺音に重なって紛れて、際立っていないと判断された場合には、次点の周波数に決定又は再度仮決定をしてもよい。
【0040】
次に、本発明の第二実施形態について、図面を参照して説明する。
図7は、本実施形態に係る複合機Bの機能構成を示すブロック図である。本複合機Bは、第一実施形態に係る複合機Aと同様に、プリンタ、ファクシミリ装置、スキャナ及び複写機としての機能を有するものである。このような機能を有する複合機Bは、図示するように、操作部1、画像読取部2、画像記憶部3、通信部4、画像処理部5、印刷部6、鳴動部7及び制御部10を備えている。
なお、複合機Aと構成が異ならない点については説明を省略する。
【0041】
複合機Bは、基本的な構成は第一実施形態の複合機Aと同様であるが、本複合機Bは、周波数分析ユニット8を備えていない点、制御部10に騒音発生動作認識手段10aを備える点で異なる。
【0042】
本複合機Bでは、複合機Bにおける大きな音を発生させる動作を騒音発生動作として予め認定しておき、この騒音発生動作の状況に基づいて鳴動部7からの報知音の周波数を決定する。
すなわち、複合機Bにおいて、ユーザに対して報知音を伝えにくくするのは、例えば、キャリッジ搬送機構2c、自動原稿送り装置2d及び印刷部6の各ローラが動作中に大きな騒音が発生する場合である。そのため、これらの動作を騒音発生動作と認定した上で、これら騒音発生動作の際の騒音を予め計測して、各騒音の周波数と音圧レベルを把握する。そして、この計測値から各騒音の周波数に干渉することのない報知音の周波数を求める。さらに、上記計測された各音圧レベルと求められた周波数は、制御部10の内部メモリに保存される。
なお、これらの作業は本複合機B出荷前に行われる。
【0043】
図8は、騒音発生動作の際の騒音の周波数と報知音の周波数の関係を示した図である。
この図8に示すように、自動原稿送り装置2dの動作音の大きさ及び周波数fを計測し、計測された周波数fからこの動作音に干渉しない報知音の周波数fを求める。同様に、周波数fであるキャリッジ搬送機構2cの動作音の周波数に干渉しない報知音の周波数fが、周波数fである印刷部6の各ローラの動作音の周波数に干渉しない報知音の周波数fが求められる。
【0044】
そして、制御部10は、ある騒音発生動作の動作中に報知音を鳴らすべき特定の動作状態となった場合には、その騒音発生動作に対する周波数を内部メモリから取得し、その周波数及び所定の鳴動パターンで報知音を鳴らすように鳴動部7へ指令する。
例えば、制御部10は、自動原稿送り装置2dが動作中の場合には周波数f、キャリッジ搬送機構2cが動作中の場合には周波数f、印刷部6の各ローラが動作中の場合には周波数fの報知音を所定の鳴動パターンで鳴らすように、鳴動部7に対して指令する。
なお、騒音発生動作中でない場合には、報知音の周波数は、ユーザがストレスを感じない比較的に小さい周波数fに決定される。
また、複数の騒音発生動作が動作中の場合には、それらの騒音発生動作のうち、内部メモリに記憶された最も大きい周波数に決定される。
【0045】
次に、本複合機Bの要部動作について、図9に示すフローチャートに沿って詳しく説明する。
まず、制御部9は、複合機Bが報知音を鳴らすべき特定の動作状態となった場合に、これを認識する(ステップS11)。例えば、用紙トレー6aのセンサから供給される信号によって、印刷用紙Pの残量が少量となった状態を認識する。
【0046】
次に、制御部9は、認識した複合機Bの動作状態に対応した鳴動パターンの情報を内部メモリから取得する。例えば、印刷用紙Pの残量が少量の場合に対応した鳴動パターンIIの情報を内部メモリから取得する(ステップS12)。
【0047】
次に、複合機Bが騒音発生動作中であるか否か判断する(ステップS13)。例えば、自動原稿送り装置2dが動作中であれば、騒音発生動作中であると判断される。
【0048】
騒音発生動作中でないと判断した場合には、上記の通り予め定められた比較的に小さい周波数fの情報を内部メモリから取得する(ステップS14)。
そして、周波数f及び所定の鳴動パターンで報知音を鳴らすように鳴動部7に対して指令し(ステップS15)、鳴動部7が周波数f及び所定の鳴動パターンで報知音を鳴らして(ステップS16)、処理を終了する。
【0049】
一方、ステップS13において、騒音発生動作中であると判断された場合には、複数の騒音発生動作が行われているか判断する(ステップS17)。
【0050】
ステップS17の判断が「No」の場合には、その騒音発生動作に対応する周波数を内部メモリから取得する(ステップS18)。例えば、騒音発生動作のうち自動原稿送り装置2dのみが動作中であれば、内部メモリから周波数fを取得する。
【0051】
一方、ステップS17の判断が「Yes」の場合には、動作中の騒音発生動作にして対応して内部メモリに記憶された最も大きい周波数の情報を取得する(ステップS19)。例えば、自動原稿送り装置2dと印刷部6の各ローラが動作中であれば、内部メモリに保存した周波数f,fのうち、大きい周波数fの情報を内部メモリから取得する。
【0052】
そして、内部メモリから取得した周波数及び鳴動パターンで報知音を鳴らすように鳴動部7に対して指令し(ステップS15)、鳴動部7がその周波数及び所定の鳴動パターンで報知音を鳴らして処理を終了する(ステップS16)。
【0053】
このように、本実施形態によれば、騒音発生動作中であるか否かを判断して、騒音発生動作中であれば、その騒音と重なって紛れることのない周波数の報知音を鳴らすので、ユーザに報知音をほぼ確実に伝えることができる。
また、騒音発生動作中でない場合には、ユーザがストレスを感じにくい比較的に小さい周波数で報知音を鳴らすので、ユーザのストレスを軽減することができる。
さらに、報知音の鳴動パターンを変更しないので、報知音の鳴動パターン毎に意味を持たせることができユーザの使い勝手を低減させることもないし、ユーザに混乱が生じることもない。
【0054】
なお、上記実施形態において示した動作処理手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0055】
例えば、上記実施形態では、報知音の周波数を一つのみ決定しているが、複数の周波数を決定し、これを同時に(和音で)鳴らしてもよいし、交互に鳴らしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】第一実施形態に係る複合機Aの機能構成を示すブロック図である。
【図2】複合機Aの概略的に示した機構構成図である。
【図3】周波数分析ユニット8の集音部8aから入力される周辺音の信号波形を示す模式図である。
【図4】周辺音の周波数の解析結果を示すスペクトル図である。
【図5】複合機Aの鳴動パターンを例示したものである。
【図6】複合機Aの要部動作を示すフローチャートである。
【図7】第二実施形態に係る複合機Bの機能構成を示すブロック図である
【図8】騒音発生動作の際の騒音の周波数と報知音の周波数の関係を示した図である。
【図9】複合機Bの要部動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
1…操作部
2…画像読取部
2b…キャリッジ
2c…キャリッジ搬送機構
2d…自動原稿送り装置
2e…ロータ
6…印刷部
6b…ピックアップローラ
6c…搬送ローラ
7…鳴動部
8…周波数分析ユニット
8a…集音部
8b…周波数分析部
9,10…制御部(鳴動制御部)
10a…騒音発生動作認識部
A,B…複合機
,f,f,…騒音の周波数
,f,f,f,f…報知音の周波数
M…原稿
P…印刷用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の動作状態を聴覚認識できるように報知する報知装置であって、
周波数の異なる複数の報知音を鳴動可能な鳴動部と、
前記報知音の周波数を決定すると共に前記鳴動部を所定の鳴動パターンで鳴動させる鳴動制御部と、
を備えることを特徴とする報知装置。
【請求項2】
前記機器の周辺音を検出するマイクロフォンと、
前記マイクロフォンにより検出された周辺音を周波数分析する周波数分析部と、
を備え、
前記鳴動制御部は、前記周波数分析部の分析結果に基づいて前記報知音の周波数を決定することを特徴とする請求項1に記載の報知装置。
【請求項3】
前記鳴動制御部は、前記周辺音のうち相対的に音の大きさが小さい周波数を、前記報知音の周波数として決定することを特徴とする請求項2に記載の報知装置。
【請求項4】
前記機器の騒音発生動作を認識する騒音発生動作認識部を備え、
前記鳴動制御部は、前記騒音発生動作認識部による認識結果に基づいて前記報知音の周波数を決定することを特徴とする請求項1に記載の報知装置。
【請求項5】
前記鳴動制御部は、前記騒音発生動作認識部が認識した前記騒音発生動作の際の騒音の周波数と異なる周波数を前記報知音の周波数として決定することを特徴とする請求項4に記載の報知装置。
【請求項6】
前記鳴動制御部は、前記報知音の周波数として複数の異なる周波数を決定し、前記鳴動部から前記周波数の異なる複数の報知音が同時又は交代に鳴動するように制御することを特徴とする請求項1から5のうちいずれか一項に記載の報知装置。
【請求項7】
請求項1から6のうちいずれか一項に記載の報知装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−139628(P2009−139628A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315738(P2007−315738)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】