説明

塑性加工木材製造装置及びその製造方法

【課題】 木材の圧縮加工における加工時間を短縮すると共に、加工後に膨らみ変形を生じない安定した品質の製品を得ること。
【解決手段】 加熱プレス盤100Aの内部空間IS内に載置された補助板SB上の木材NWが加熱圧縮され、内部空間ISが密閉状態に所定時間保持されている間に、木材NWに元々含まれている水分が蒸気圧となって内部空間ISを介して木材NWの周囲面、更には内部とで通過自在となることで、木材NWが均一に固定化される。この後、木材NWが加熱圧縮され固定化後にそれまでのプレス圧が短い時間外され、その表面温度が多少低下したとしても膨らみ変形の発生を遅らせることができることとなり、直ちに冷却プレス盤100Bにて冷却圧縮されることで膨らみ変形を生じることのない安定した品質の塑性加工木材PW1を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材を圧縮成形することで硬度を高めることができる塑性加工木材製造装置及びその製造方法に関し、例えば、住宅の床材等の建材として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
従来、プレス加工する際に木材の周囲を密閉し、木材に含まれる水分をその木材中に閉じ込めたうえで高温高圧で加熱圧縮処理すると、顕著な回復抑制効果が現われて、もはや元の厚みには戻らないことが知られている。ところが、このような木材を、処理後に直ちにプレス機から取り出すと、木材中に含まれていた高温高圧の蒸気圧の作用によって、この木材の表面にパンクと呼ばれる膨らみ変形が発生し易いという不具合があった。これに対処するため、従来は、木材の熱処理後にプレス状態を維持したままプレス機を冷却することで塑性加工木材(圧縮木材)を製造するしかなかった。しかしながら、このような工程の繰返しでは、プレス機の再加熱に伴う無駄なエネルギの消費と共に、時間も要するという問題が生じていた。
【0003】
そこで、特許文献1では、エネルギや時間を多大に消費することなしに、加熱圧縮した木材の表面における膨らみ変形の発生を防止することを目的として、木材を加熱プレス処理により圧縮して密閉空間に閉込め、木材中の水分を加圧蒸気圧化させて圧縮変形状態に固定させた後、プレス状態を維持したまま密閉空間内を減圧させる技術が示されている。これによれば、木材中に含まれる蒸気圧が密閉空間内に放出されるため、加熱プレス処理後に木材を加熱状態のまま熱プレス機から取出してもその表面における膨らみ変形の発生が防止されるとある。
【特許文献1】特開平8−90516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあるように、木材中に含まれている高温高圧の蒸気圧は密閉空間内を減圧するだけでは瞬時に抜けきることは難しく、依然として、木材の木口面から離れた中央部分では均一化されておらず、特に、厚板材では加熱プレス処理後の膨らみ変形を完全に抑えることは無理であり、多少でも膨らみ変形が生じると製品としての品質が低下するという問題があった。特に、厚み30〔mm〕以下の床材等の木材板の場合には、加熱プレス処理後の膨らみ変形が板材全体の曲がり面となって表出する場合があり、板材としての品質が低下するという問題があった。
【0005】
そこで、この発明はかかる不具合を解決するためになされたもので、木材の圧縮加工における加工時間を短縮できると共に、加工後に変形が生じることのない安定した品質の製品を製造可能な塑性加工木材製造装置及びその製造方法の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の塑性加工木材製造装置は、複数に分割された構造体によって対向する圧縮面を有する内部空間を形成し、前記内部空間の体積を変化させることにより加熱圧縮自在な加熱プレス盤と、前記加熱プレス盤の所定温度の内部空間内に載置された厚み30〔mm〕以下の木材の木目の長さ方向に対して垂直方向に所定圧力で圧縮し、前記内部空間を密閉状態に保持し、所定時間経過後にそれを開放する加熱圧縮加工制御手段と、前記加熱圧縮加工制御手段で前記内部空間が密閉状態に保持されているとき、前記内部空間を介して前記木材の周囲面の高温高圧の蒸気圧を制御し、前記蒸気圧制御により前記木材を仮固定化する蒸気圧制御手段と、複数に分割された構造体によって対向する圧縮面を形成し、前記圧縮面間の距離を変化させることにより冷却圧縮自在な冷却プレス盤と、前記加熱プレス盤から取り出された前記蒸気圧制御により仮固定化した前記木材を前記冷却プレス盤に直ちに載置し、その加熱圧縮された面を所定温度及び所定圧力で強制冷却圧縮し、前記木材を定着して所定時間経過後に開放し、固定化した塑性加工木材とする冷却圧縮加工制御手段とを具備するものである。
【0007】
ここで、本発明を実施する場合の複数に分割された構造体で対向する圧縮面を有して内部空間を形成する加熱プレス盤及び冷却プレス盤は、単純に上下に2分割した上下プレス盤構造体、上下プレス盤と枠体とからなる構造体等、複数の構造体によって構成できる。
また、木材の木目の長さ方向に対して垂直方向に加熱圧縮するとは、木材の木口面以外の板目面または柾目面を加熱圧縮することにより、少なくとも木口面の面積を小さくすることを意味し、加熱プレス盤による加熱圧縮の方向性を特定するものである。なお、木材の加熱圧縮する面は、木材の種類等も考慮され好ましい加熱圧縮の方向が選定される。
そして、本発明を実施する場合の蒸気圧制御手段は、加熱圧縮加工制御手段で密閉状態に保持されているときの内部空間を介して木材の周囲面として圧縮面側の表面、更にはその内部とで出入りする高温高圧の蒸気圧を供給、排出するように制御するものであればよい。また、前記蒸気圧制御により前記木材の仮固定化するとは、加熱プレス盤で加熱圧縮された体積状態を維持できるものであればよく、そのために、表面のみ乾燥状態とすべく、一時的に加熱圧縮加工制御手段で密閉状態に保持されているときの内部空間の蒸気圧を放出し、低圧加熱する技術も含むものである。
更に、本発明を実施する場合の冷却圧縮加工制御手段は、加熱圧縮加工制御手段で加工終了して取り出された前記蒸気圧制御により前記木材の仮固定化した前記木材を前記冷却プレス盤に直ちに載置し、加熱プレス盤で加熱圧縮された面の状態を保持したまま、前記木材を定着する強制冷却圧縮に移行できるように制御するものであればよい。
なお、本発明の概略は、前述したように、加熱圧縮加工制御手段では木材の加熱圧縮を、蒸気圧制御手段では当該木材の仮固定化を、冷却圧縮加工制御手段では当該木材の定着を行い、全体で固定化を完了した塑性加工木材を得るものである。
【0008】
請求項2の塑性加工木材製造装置は、請求項1に記載の要件に加えて、前記加熱プレス盤には、少なくとも一方の圧縮面側に、前記木材に食い込む程度の所定の断面形状からなる凸状部が形成されているものである。
ここで、本発明を実施する場合の木材に食い込む程度の所定の断面形状からなる凸状部とは、加熱圧縮された木材に加工歪が入らず、また、製品としての品質を損なわない程度の断面形状が望ましく、できる限り多くの凸状部を形成することが好ましい。殊に、木材に食い込み、その食い込ませた位置に至る木材の位置までを内部空間と同様の温度及び圧力状態、湿度(蒸気圧)状態とするものであるから、その食い込む程度は、木材の厚みがそれ程ない場合には、浅い構造であってもよい。
なお、加熱プレス盤における少なくとも一方の圧縮面側に形成された凸状部とは、本発明の実施の形態によっては、両方の圧縮面側に凸状部が形成される場合があることを意味する。
【0009】
請求項3の塑性加工木材製造装置は、請求項1に記載の要件に加えて、前記加熱プレス盤には、少なくとも一方の圧縮面側に、前記内部空間と連通する所定の断面形状からなる凹状部が形成されているものである。
ここで、本発明を実施する場合の内部空間と連通する所定の断面形状からなる凹状部とは、加熱圧縮される木材の圧縮面を内部空間と同様の温度及び圧力状態、湿度(蒸気圧)状態とするものであるから、加熱圧縮された木材に加工歪が入らず、また、製品としての品質を損なわない程度の断面形状であればよく、木材の繊維方向やそれと交差する方向等にできる限り多くの凹状部を形成することが好ましい。また、本発明を実施する場合の凹状部は、換言すれば、加熱プレス盤の木材の圧縮面に形成された溝部であり、断面形状としてはU字形状、V字形状、台形形状等で製品となる塑性加工木材を取外し易い形状であればよい。
なお、加熱プレス盤における少なくとも一方の圧縮面側に形成された凹状部とは、本発明の実施の形態によっては、両方の圧縮面側に凹状部が形成される場合があることを意味する。
【0010】
請求項4の塑性加工木材製造装置は、請求項1に記載の要件に加えて、前記加熱プレス盤には、少なくとも一方の圧縮面側に、前記木材との間に隙間を形成する隙間形成部材が配設されているものである。
ここで、本発明を実施する場合の木材との間に隙間を形成する隙間形成部材とは、加熱圧縮される木材の圧縮面を内部空間と同様の温度及び圧力状態、湿度(蒸気圧)状態とするものであるから、加熱圧縮された木材に加工歪が入らず、また、製品としての品質を損なわない程度の表面凹凸形状であればよく、木材の圧縮面に対してできる限り多くの隙間を形成することが好ましい。
なお、加熱プレス盤における少なくとも一方の圧縮面側に配設された隙間形成部材とは、本発明の実施の形態によっては、両方の圧縮面側に隙間形成部材が配設される場合があることを意味する。
【0011】
請求項5の塑性加工木材製造装置は、請求項1に記載の要件に加えて、前記木材が前記加熱プレス盤による加熱圧縮の加工開始から前記冷却プレス盤による強制冷却圧縮することによって定着に至る加工終了までを通して、それらと熱伝導率が同等以上の材質からなる搬送補助具上に載置された状態で加工されるものである。
ここで、本発明を実施する場合の加熱プレス盤による加熱圧縮の加工開始から強制冷却圧縮することによって定着する冷却プレス盤による加工終了までを通してとは、木材が加熱圧縮から定着に至る冷却圧縮まで1つの搬送補助具上に載置された状態のまま加工されることを意味するものである。
また、本発明を実施する場合の搬送補助具は、加熱プレス盤の内部空間内に木材の圧縮面全体を当接させた状態で載置でき、加熱プレス盤から取り出してそのまま冷却プレス盤に載置可能な寸法からなり、その外周縁に外部から把持して取り出し、かつ、受け渡し作業をし易くするため、例えば、部分的な段差や把持するための孔等が形成されていることが好ましい。
なお、本発明を実施する場合の搬送補助具としては、熱伝導率が加熱プレス盤や冷却プレス盤と同等以上で、木材の製品としての品質を損なわない程度の表面精度、かつ、プレス耐強度を具備するものであればよい。
【0012】
請求項6の塑性加工木材製造方法は、複数に分割された構造体によって対向する圧縮面を有する内部空間を形成し、前記内部空間の体積を変化させることにより加熱圧縮自在な加熱プレス盤で、前記内部空間内に載置された厚み30〔mm〕以下の木材の木目の長さ方向に対して垂直方向に所定温度及び所定圧力で加熱圧縮し、前記内部空間を密閉状態に保持し、所定時間経過後にそれを開放する加熱圧縮加工制御工程と、前記加熱圧縮加工制御工程で前記内部空間が密閉状態に保持されているとき、前記内部空間を介して前記木材の周囲面の高温高圧の蒸気圧を制御し、前記蒸気圧制御により前記木材を仮固定化する蒸気圧制御工程と、複数に分割された構造体によって対向する圧縮面を形成し、前記圧縮面間の距離を変化させることにより冷却圧縮自在な冷却プレス盤に、前記加熱プレス盤から取り出された前記蒸気圧制御により仮固定化した前記木材を直ちに載置し、その加熱圧縮された面を所定温度及び所定圧力で強制冷却圧縮し、前記木材を定着して所定時間経過後に開放し、固定化した塑性加工木材とする冷却圧縮加工制御工程とからなるものである。
ここで、本発明を実施する場合の複数に分割された構造体で対向する圧縮面を有して内部空間を形成する加熱プレス盤及び冷却プレス盤は、単純に上下に2分割した上下プレス盤構造体、上下プレス盤と枠体とからなる構造体等、複数の構造体によって構成できる。
また、木材の木目の長さ方向に対して垂直方向に加熱圧縮するとは、木材の木口面以外の板目面または柾目面を加熱圧縮することにより、少なくとも木口面の面積を小さくすることを意味し、加熱プレス盤による加熱圧縮の方向性を特定するものである。なお、木材の加熱圧縮面は、木材の種類等も考慮され好ましい加熱圧縮の方向が選定される。
そして、本発明を実施する場合の蒸気圧制御工程は、加熱圧縮加工制御工程で密閉状態に保持されているときの内部空間を介して木材の周囲面として圧縮面側の表面、その内部とで出入りする高温高圧の蒸気圧が増加されるように制御するものであればよい。また、蒸気圧制御により木材の固定化を促進するとは、加熱プレス盤で加熱圧縮された体積状態を維持できるものであればよく、そのために、表面のみ乾燥状態とすべく一時的に加熱圧縮加工制御工程で密閉状態に保持されているときの内部空間の蒸気圧を放出する技術も含むものである。
更に、本発明を実施する場合の冷却圧縮加工制御工程は、加熱圧縮加工制御工程で加工終了して取り出された蒸気圧制御により前記木材を仮固定化し、木材が直ちに載置されることで、加熱プレス盤で加熱圧縮された面の状態を保持したまま、前記木材を定着する強制冷却圧縮に移行できるように制御するものであればよい。
【0013】
請求項7の塑性加工木材製造方法は、請求項6に記載の要件に加えて、前記加熱プレス盤には、少なくとも一方の圧縮面側に、前記木材に食い込む程度の所定の断面形状からなる凸状部が形成されているものである。
ここで、本発明を実施する場合の木材に食い込む程度の所定の断面形状からなる凸状部とは、木材に食い込み、その食い込ませた位置に至る木材の位置までを内部空間と同様の温度及び圧力状態、湿度(蒸気圧)状態とするものであるから、加熱圧縮された木材に加工歪が入らず、また、製品としての品質を損なわない程度の断面形状であればよく、できる限り多くの凸状部を形成することが好ましい。また、その食い込む程度は、木材の厚みがそれ程ない場合には、浅い構造であってもよい。
なお、加熱プレス盤における少なくとも一方の圧縮面側に形成された凸状部とは、本発明の実施の形態によっては、両方の圧縮面側に凸状部が形成される場合があることを意味する。
【0014】
請求項8の塑性加工木材製造方法は、請求項6に記載の要件に加えて、前記加熱プレス盤には、少なくとも一方の圧縮面側に、前記内部空間と連通する所定の断面形状からなる凹状部が形成されているものである。
ここで、本発明を実施する場合の内部空間と連通する所定の断面形状からなる凹状部とは、加熱圧縮される木材の圧縮面を内部空間と同様の温度及び圧力状態、湿度(蒸気圧)状態とするものであるから、加熱圧縮された木材に加工歪が入らず、また、製品としての品質を損なわない程度の断面形状であればよく、木材の繊維方向やそれと交差する方向等にできる限り多くの凹状部を形成することが好ましい。また、本発明を実施する場合の凹状部は、換言すれば、加熱プレス盤の木材の圧縮面に形成された溝部であり、断面形状としてはU字形状、V字形状、台形形状等で製品となる塑性加工木材を取外し易い形状であればよい。
なお、加熱プレス盤における少なくとも一方の圧縮面側に形成された凹状部とは、本発明の実施の形態によっては、両方の圧縮面側に凹状部が形成される場合があることを意味する。
【0015】
請求項9の塑性加工木材製造方法は、請求項6に記載の要件に加えて、前記加熱プレス盤には、少なくとも一方の圧縮面側に、前記木材との間に隙間を形成する隙間形成部材が配設されているものである。
ここで、本発明を実施する場合の木材との間に隙間を形成する隙間形成部材とは、加熱圧縮される木材の圧縮面を内部空間と同様の温度及び圧力状態、湿度(蒸気圧)状態とするものであり、その結果として、加熱圧縮された木材に加工歪が入らず、また、製品としての品質を損なわない程度の表面凹凸形状であればよく、木材の圧縮面に対してできる限り多くの隙間を形成することが好ましい。
なお、加熱プレス盤における少なくとも一方の圧縮面側に配設された隙間形成部材とは、本発明の実施の形態によっては、両方の圧縮面側に隙間形成部材が配設される場合があることを意味する。
【0016】
請求項10の塑性加工木材製造方法は、請求項6に記載の要件に加えて、前記木材が前記加熱プレス盤による加熱圧縮による加工開始から前記冷却プレス盤による定着に至る加工終了まで通して、それらと熱伝導率が同等以上の材質からなる搬送補助具上に載置された状態で加工されるものである。
ここで、本発明を実施する場合の加熱プレス盤による加熱圧縮による加工開始から冷却プレス盤による定着に至る加工終了までを通してとは、木材が加熱圧縮から冷却圧縮まで1つの搬送補助具上に載置された状態のまま加工されることを意味するものである。
また、本発明を実施する場合の搬送補助具は、加熱プレス盤の内部空間内に木材の圧縮面全体を当接させた状態で載置でき、加熱プレス盤から取り出してそのまま冷却プレス盤に載置可能な寸法からなり、その外周縁に外部から把持して取り出し易くするため、例えば、部分的な段差や把持するための孔等が形成されていることが好ましい。
なお、本発明を実施する場合の搬送補助具としては、熱伝導率が加熱プレス盤や冷却プレス盤と同等以上で、木材の製品としての品質を損なわない程度の表面精度、かつ、プレス耐強度が要求される。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の塑性加工木材製造装置によれば、複数に分割された構造体によって形成される対向する圧縮面を有する内部空間の体積が変化されることにより加熱圧縮自在な加熱プレス盤で、加熱圧縮加工制御手段によって所定温度の内部空間内に載置された厚み30〔mm〕以下の木材の木目の長さ方向に対して垂直方向に所定圧力で加熱圧縮し、内部空間が密閉状態に保持された状態とし、その後、蒸気圧制御により前記木材の仮固定化をし、それが開放される。即ち、前記内部空間が密閉状態に保持されているときに、蒸気圧制御手段によって内部空間を介して木材の周囲面における高温高圧の蒸気圧が制御され、その蒸気圧制御により前記木材の仮固定化がされる。そして、冷却圧縮加工制御手段では、加熱プレス盤から取り出された前記蒸気圧制御により仮固定化された木材が、複数に分割された構造体によって対向する圧縮面が形成された冷却プレス盤に直ちに載置され、木材の加熱圧縮された面が強制冷却圧縮され、前記木材を定着し、所定時間経過後に開放される。
【0018】
つまり、加熱圧縮加工制御手段によって加熱プレス盤の内部空間内に載置された木材が木目の長さ方向に対して垂直方向に加熱圧縮され、内部空間が密閉状態に保持され、このときの内部空間を介して木材の周囲面における高温高圧の蒸気圧が蒸気圧制御手段によって制御された後、蒸気圧制御により前記木材の仮固定化し、所定時間経過後に密閉状態が開放される。この蒸気圧は加熱により木材に含まれている水分が蒸発したものであり、この蒸気圧が木材の周囲面、更にはその内部と内部空間とで出入りすることで、前記蒸気圧制御により仮固定化され、木材が均一に仮固定化される。そして、加熱プレス盤から取り出された前記蒸気圧制御により仮固定化された木材は、冷却圧縮加工制御手段によって冷却プレス盤の圧縮面に直ちに載置され、加熱圧縮された面が強制冷却圧縮され、所定時間経過後、前記木材を定着した後に開放される。これにより、木材が加熱圧縮され、密閉状態で仮固定化された後、直ちに冷却圧縮されることで、木材の圧縮加工における加工時間が短縮されると共に、前記木材を仮固定化した後に、変形が生じることのない圧力状態下で冷却するから定着が安定し、それによって品質のよい固定化した塑性加工木材を製造することができる。
【0019】
請求項2の塑性加工木材製造装置では、請求項1に記載の効果に加えて、加熱プレス盤の少なくとも一方の圧縮面側に、木材に食い込む程度に所定の断面形状からなる凸状部が形成されていることによって、木材の周囲面、特に、圧縮面側の表面、更にはその内部と内部空間とで出入りする蒸気圧が増加し、木材が高効率により均一に加熱圧縮される。これにより、木材を加熱圧縮状態で蒸気圧制御により仮固定化した後、加熱プレス盤の内部空間から取り出し、前記木材を定着する冷却プレス盤で圧縮加工を行うまでの間に変形が生じることなく、かつ、圧縮状態下で前記木材を定着することにより安定した品質の固定化した塑性加工木材を製造することができる。
【0020】
請求項3の塑性加工木材製造装置では、請求項1に記載の効果に加えて、加熱プレス盤の少なくとも一方の圧縮面側に、内部空間と連通する所定の断面形状からなる凹状部が形成されていることによって、木材の周囲面、特に、圧縮面側の表面、更にはその内部と内部空間とで出入りする蒸気圧が増加されることとなり、蒸気圧制御により前記木材の仮固定化し、木材がより均一に加熱圧縮される。これにより、木材を加熱圧縮状態で蒸気圧制御により仮固定化した後、加熱プレス盤の内部空間から取り出し、前記木材を定着する冷却プレス盤で圧縮加工を行うまでの間に変形が生じることなく、かつ、圧縮状態下で前記木材を定着することにより安定した品質の固定化した塑性加工木材を製造することができる。
【0021】
請求項4の塑性加工木材製造装置では、請求項1に記載の効果に加えて、加熱プレス盤の少なくとも一方の圧縮面側に、木材との間に隙間を形成する隙間形成部材が配設されていることによって、木材の圧縮面側の表面、更にはその内部と内部空間とで出入りする蒸気圧が増加することとなり木材がより均一に加熱圧縮される。これにより、木材を加熱圧縮状態で蒸気圧制御により仮固定化した後、加熱プレス盤の内部空間から取り出し、前記木材を定着する冷却プレス盤で圧縮加工を行うまでの間に変形が生じることなく、かつ、圧縮状態下で前記木材を定着することにより安定した品質の固定化した塑性加工木材を製造することができる。
【0022】
請求項5の塑性加工木材製造装置では、請求項1に記載の効果に加えて、木材が加熱プレス盤による加工開始から冷却プレス盤による加工終了までを通して、加熱圧縮や冷却圧縮における加工時間を延ばしたり、品質を低下させたりすることのないように、熱伝導率が加熱プレス盤や冷却プレス盤と同等以上の材質からなる搬送補助具上に載置された状態のまま圧縮加工されることで、加熱プレス盤から冷却プレス盤への移動が容易となり安定した品質の塑性加工木材を製造することができる。
【0023】
請求項6の塑性加工木材製造方法によれば、複数に分割された構造体によって形成される対向する圧縮面を有する内部空間の体積が変化されることにより加熱圧縮自在な加熱プレス盤で、加熱圧縮加工制御工程によって所定温度の内部空間内に載置された厚み30〔mm〕以下の木材の木目の長さ方向に対して垂直方向に所定圧力で加熱圧縮させ、内部空間が密閉状態に保持し、蒸気圧制御により前記木材の仮固定化した所定時間経過後にそれが開放される。即ち、内部空間が密閉状態に保持されているときに、蒸気圧制御工程によって内部空間を介して木材の周囲面における高温高圧の蒸気圧が制御される。その後、前記蒸気圧制御により仮固定化する処理を行う。そして、前記木材の塑性加工状態を定着する冷却圧縮加工制御工程では、加熱プレス盤から取り出された蒸気圧制御により仮固定化した前記木材が、複数に分割された構造体によって対向する圧縮面が形成された冷却プレス盤に載置され、木材の加熱圧縮された面が強制冷却圧縮され、所定時間経過後に定着を完了して開放される。
【0024】
つまり、加熱圧縮加工制御工程によって加熱プレス盤の内部空間内に載置された厚み30〔mm〕以下の木材が木目の長さ方向に対して垂直方向に加熱圧縮され、内部空間が密閉状態に保持され、このときの内部空間を介して木材の周囲面における高温高圧の蒸気圧が蒸気圧制御工程によって制御された後、所定時間経過後に密閉状態が開放される。この蒸気圧は加熱により木材に含まれている水分が蒸発したものであり、この蒸気圧が木材の周囲面、更にはその内部と内部空間とで出入りすることで木材が均一に加熱圧縮され、その後、蒸気圧制御により前記木材の仮固定化する。そして、加熱プレス盤から取り出された蒸気圧制御により仮固定化された木材は、前記木材を定着する冷却圧縮加工制御工程によって冷却プレス盤の圧縮面に載置され、強制冷却圧縮され、所定時間経過後に定着を完了して開放される。これにより、木材が加熱圧縮された後、仮固定化され、かつ、冷却圧縮によって定着されることで、木材の圧縮加工における加工時間が短縮される。また、木材を加熱圧縮状態で蒸気圧制御により仮固定化するものであり、圧縮状態下で前記木材を定着することにより安定した品質の固定化した塑性加工木材を製造することができる。
【0025】
請求項7の塑性加工木材製造方法では、請求項6に記載の効果に加えて、加熱プレス盤の少なくとも一方の圧縮面側に、木材に食い込む程度に所定の断面形状からなる凸状部が形成されていることによって、木材の周囲面、特に、圧縮面側の表面、更にはその内部と内部空間とで出入りする蒸気圧が増加することとなり木材がより均一に加熱圧縮される。これにより、木材を加熱圧縮し、密閉状態で固定化した後、加熱プレス盤の内部空間から直ちに取り出し、前記木材を定着する冷却プレス盤に載置するという木材の圧縮加工を行っても変形を生じることなく、かつ、定着によって安定した品質の固定化した塑性加工木材を製造することができる。
【0026】
請求項8の塑性加工木材製造方法では、請求項6に記載の効果に加えて、加熱プレス盤の少なくとも一方の圧縮面側に、内部空間と連通する所定の断面形状からなる凹状部が形成されていることによって、木材の周囲面、特に、圧縮面側の表面、更にはその内部と内部空間とで出入りする蒸気圧が増加することとなり木材がより均一に高温圧縮される。これにより、木材を加熱圧縮し、密閉状態で固定化した後、加熱プレス盤の内部空間から取り出し、前記木材を定着する冷却プレス盤に載置するという木材の圧縮加工を行っても変形を生じることなく、かつ、定着によって安定した品質の固定化した塑性加工木材を製造することができる。
【0027】
請求項9の塑性加工木材製造方法では、請求項6に記載の効果に加えて、加熱プレス盤の少なくとも一方の圧縮面側に、木材との間に隙間を形成する隙間形成部材が配設されていることによって、木材の周囲面、特に、圧縮面側の表面、更にはその内部と内部空間とで出入りする蒸気圧が増加されることとなり木材がより均一に加熱圧縮される。これにより、木材を加熱圧縮した後、加熱プレス盤の内部空間から取り出し、前記木材を定着する冷却プレス盤に載置するという木材の圧縮加工を行っても変形を生じることなく、かつ、定着によって安定した品質の固定化した塑性加工木材を製造することができる。
【0028】
請求項10の塑性加工木材製造方法では、請求項6に記載の効果に加えて、木材が加熱プレス盤による加工開始から冷却プレス盤による加工終了までを通して、加熱圧縮や冷却圧縮における加工時間を延ばしたり、品質を低下させることのないように、熱伝導率が加熱プレス盤や冷却プレス盤と同等以上の材質からなる搬送補助具上に載置された状態のまま圧縮加工されることで、加熱圧縮及び仮固定化する加熱プレス盤から定着する冷却プレス盤への移動が容易となり、定着により安定した品質の固定化した塑性加工木材を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
なお、本実施の形態2以降において、実施の形態1と同一記号または同一符号は、上記実施の形態1と同一または相当する構成部分を示すものであるから、その詳細な説明を省略し、主に相違点のみ説明する。
【0030】
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1にかかる塑性加工木材製造装置の概略構成を示す断面図である。
【0031】
図1において、100は塑性加工木材製造装置であり、この塑性加工木材製造装置100は、主として、加熱圧縮を実施する加熱プレス盤100Aとこの加熱プレス盤100Aによる加熱圧縮に続いて直ちに冷却圧縮を実施する冷却プレス盤100Bとから構成されている。
このうち、加熱プレス盤100Aは、2分割された構造体によって対向する圧縮面を有する内部空間ISを形成する上プレス盤11A及び下プレス盤21Aと、内部空間ISを密閉状態とするために下プレス盤21Aの周縁部22に対向して上プレス盤11Aの周縁部12に配設されるシール部材14と、下プレス盤21Aの側面側から内部空間IS内に連通され、内部空間IS内から蒸気圧を排出するための配管口41aを有する配管41、配管41内の蒸気圧を検出する圧力計P2、その下流側のバルブV5、バルブV5に接続されたドレン配管42A等から構成されている。
【0032】
また、加熱プレス盤100Aの上プレス盤11A及び下プレス盤21A内には、それらを高温の蒸気圧を通すことによって所望の温度に昇温するための配管路13A,23Aが形成されており、これら配管路13A,23Aには蒸気供給側の配管ST1から分岐された配管ST2,ST3、蒸気排出側の配管ET1,ET2がそれぞれ接続されている。そして、蒸気供給側の配管ST1,ST2,ST3途中にはバルブV1,V2,V3、配管ST1内の蒸気圧を検出する圧力計P1が配設されており、蒸気排出側の配管ET1,ET2は、バルブV4を介してドレン配管42Aに接続されている。なお、配管ST1に蒸気圧を供給するボイラ装置、また、加熱プレス盤100Aの固定側の下プレス盤21Aに対して上プレス盤11Aを上昇/下降させ加圧するための油圧機構を含むプレス昇降装置は省略されている。ここで、本実施の形態では、加熱プレス盤100Aの上プレス盤11A及び下プレス盤21Aで形成される内部空間IS内を加熱するために高温の蒸気圧を用いているが、この他、高周波加熱、マイクロ波加熱等を用いることもできる。
また、加熱プレス盤100Aの上プレス盤11A及び下プレス盤21Aとがシール部材14を介して密閉状態となったときの内部空間ISの上下方向の寸法間隔は、塑性加工木材製造装置100により木材NWが、例えば、圧縮率60〔%〕の塑性加工木材PW1とされるときの厚み方向の仕上がり寸法に設定されている。
【0033】
一方、冷却プレス盤100Bは、2分割された構造体によって対向する圧縮面を形成する上プレス盤11B及び下プレス盤21Bから構成されている。また、冷却プレス盤100Bの上プレス盤11B及び下プレス盤21B内には、それらを低温の冷却水を通すことによって所望の温度に冷却するための配管路13B,23Bが形成されており、これら配管路13B,23Bには冷却水供給側の配管ST11から分岐された配管ST12,ST13、冷却水排出側の配管ET11,ET12がそれぞれ接続されている。そして、冷却水供給側の配管ST11,ST12,ST13の途中にはバルブV11,V12,V13が配設されており、冷却水排出側の配管ET11,ET12は、バルブV14を介してドレン配管42Bに接続されている。なお、配管ST11に冷却水を供給する冷却水供給装置、また、冷却プレス盤100Bの固定側の下プレス盤21Bに対して上プレス盤11Bを上昇/下降させ加圧するための油圧機構を含むプレス昇降装置は省略されている。
【0034】
更に、加熱プレス盤100Aから冷却プレス盤100Bへの加工途中における木材の受け渡しに関しては、本実施の形態では具体的に、ロボットを用いたロボットアームRA先端のハンドTHによる把持にて、図1に白抜矢印で示されるような経路にて行われているが、コンベア等を併用することもできる。要はできる限り素早く受け渡しが完了するような構成が好ましい。
【0035】
ここで、図2に示すように、本実施の形態の塑性加工木材製造装置100で用いられる木材NWは、原材料となる木材NWが前以って所定の長さ・幅・厚みに製材されたものであり、木材NWは板目面(木表及び木裏の2面)、柾目面(2面)、木口面(2面)とからなる。そして、木材NWは厚み30〔mm〕以下で、その木目の長さ方向に対して垂直方向となる、例えば、板目面の木裏側が搬送補助具としての補助板SB上に載置された状態のまま加熱圧縮及び冷却圧縮が実施される。この補助板SBは、加熱プレス盤100Aから冷却プレス盤100Bへの受け渡しをし易くするためのものであり、加熱プレス盤100A及び冷却プレス盤100Bの熱伝導率と同等以上で、プレス圧に耐え得る平面強度を有する金属にて形成されている。なお、補助板SBには、その外周縁に上記ロボットアームRA先端のハンドTHによる把持をし易くするための段差DLが形成されている。
【0036】
次に、塑性加工木材製造装置100により原材料の木材NWから塑性加工木材PW1を製造する工程手順について、図3(a)〜図3(f)を参照して説明する。なお、図3(a)〜図3(f)では、蒸気供給側や蒸気排出側の配管、また、冷却水供給側や冷却水排出側の配管等は省略されている。
【0037】
まず、図3(a)に示すように、塑性加工木材製造装置100における加熱プレス盤100Aの固定側の下プレス盤21Aに対して上プレス盤11Aを上昇させ、予め所定の厚み30〔mm〕以下の寸法に製材され、補助板SB上に載置された木材NWが、上プレス盤11A及び下プレス盤21Aで形成される内部空間IS内に載置される。
次に、図3(b)に示すように、補助板SB上に載置された木材NWが固定側の下プレス盤21A上に載置され、下プレス盤21Aに対して上プレス盤11Aを圧力が0.05〜0.3〔MPa:メガパスカル〕にて下降させ、木材NWの板目面の木表側に当接させる。そして、上プレス盤11Aの配管路13A及び下プレス盤21Aの配管路23Aに110〜160〔℃〕の特定温度の蒸気圧が通されることによって、内部空間IS内が110〜160〔℃〕に保持される(昇温処理時間10〜25〔min:分〕)。なお、本実施の形態の塑性加工木材製造装置100では、加熱プレス盤100Aの昇温処理時間は、連続処理されるときには周囲環境温度にもよるが、最初の立上げ時のみ長い時間が必要となる。
【0038】
次に、図3(c)に示すように、固定側の下プレス盤21Aに対して上プレス盤11Aの圧縮圧力が2〜5〔MPa〕に設定され、木材NWが上プレス盤11A及び下プレス盤21Aにて加熱圧縮される(処理時間10〜40〔min〕)。このとき、圧縮圧力が2〜5〔MPa〕は、木材NWの温度上昇に応じて徐々に圧力を大きくする。木材NWの温度上昇とは木材NWの内部温度の伝達であり、伝達時間として制御することもできる。
そして、上プレス盤11Aの周縁部12が下プレス盤21Aの周縁部22に当接すると上プレス盤11Aの周縁部12に配設されたシール部材14によって、上プレス盤11A及び下プレス盤21Aにて形成される内部空間ISが密閉状態となる。この内部空間ISの密閉状態で上プレス盤11A及び下プレス盤21Aによる圧縮圧力が保持されたまま、3〜10〔min〕間で110〜160〔℃〕の特定温度から150〜210〔℃〕の特定温度に上昇させる。
なお、本実施の形態の木材NWの圧縮率は、木材NWの板圧の変化、本実施の形態では、上プレス盤11Aの周縁部12が下プレス盤21Aの周縁部22に当接することで決まることとなる。
【0039】
そして、図3(c)に示す内部空間ISの密閉状態で、上プレス盤11A及び下プレス盤21Aの圧縮圧力が維持され、かつ、内部空間ISが150〜210〔℃〕の特定温度のまま、40〜120〔min〕間保持され、木材NWの加熱圧縮を解除したときに戻りのない塑性加工木材PW1を形成するための加熱圧縮処理が行われる。このとき、上プレス盤11A及び下プレス盤21Aで密閉状態とされている内部空間ISを介して、木材NWの周囲面とその内部で高温高圧の蒸気圧が出入り自在となっている。
なお、内部空間ISが密閉状態とされ加熱圧縮処理が行われているときに、蒸気圧制御処理として圧力計P2で内部空間ISの蒸気圧が検出され、バルブV5が適宜、開閉される。これにより、配管口41a、配管41を通って内部空間ISからドレン配管42A側に高温高圧の蒸気圧が排出されることで、木材NWの含水率に基づく余分な内部空間IS内の水分が除去され、内部空間IS内が所定の蒸気圧となるように調節される。また、必要に応じて、内部空間ISに所定の蒸気圧を供給することもできる。
【0040】
次に、内部空間ISを開放する直前に、バルブV5を開状態とすることで配管口41a、配管41を通って内部空間ISからドレン配管42A側に高温高圧の蒸気圧が排出される。この際、上プレス盤11A及び下プレス盤21Aを150〜210〔℃〕の特定温度に維持し、処理時間0.5〜15〔min〕だけ乾燥加熱を行う。この乾燥加熱によって、木材NWには自己保持能力をもたせることができ、それまでの加熱圧縮状態であったものが圧力を解除しても変形し難くなる仮固定化処理を行う。この仮固定化処理は、処理時間0.5〜15〔min〕だけ乾燥加熱を行った時、良好な結果を得たが、発明者らの実験によれば、最小搬送時間が特定されることから、これ以上の時間短縮を確認できなかったが、加熱温度及び内部空間ISの蒸気圧排出能力によって更に0.5〔min〕以下に短縮することができるものと推定される。
【0041】
次に、仮固定化処理時間0.5〜15〔min〕の後、上プレス盤11A及び下プレス盤21Aを150〜210〔℃〕の特定温度に維持するための蒸気圧も一旦、供給停止される。そして、図3(d)に示すように、加熱プレス盤100Aの上プレス盤11A及び下プレス盤21Aの温度をなるべく下げないように素早く、固定側の下プレス盤21Aに対して上プレス盤11Aを上昇させ、ロボットアームRA先端のハンドTHにより補助板SBが把持され、内部空間ISから加熱圧縮が終了された木材NWが補助板SBと共に、冷却プレス盤100Bの上プレス盤11B及び下プレス盤21Bで形成される対向する圧縮面間に搬送される。
【0042】
次に、図3(e)に示すように、下プレス盤21Bに対して上プレス盤11Bを圧力が2〜5〔MPa〕にて下降させ、木材NWの板目面の木表側に当接させる。この間の時間は、1〜3〔min〕以下であったが、その間には、木材NWを定着する冷却プレス盤に載置するという木材NWの移動を行っても、木材NWを定着開始するまでに膨らみ変形を生じることがなかった。そして、上プレス盤11Bの配管路13B及び下プレス盤21Bの配管路23Bに10〜25〔℃〕前後の常温の冷却水が通されることによって、上プレス盤11B及び下プレス盤21Bが10〜40〔℃〕前後まで冷却される(冷却処理時間30〜120〔min〕)。
そして、図3(f)に示すように、固定側の下プレス盤21Bに対して上プレス盤11Bを上昇させ、下プレス盤21B上に載置されている仕上がり品である塑性加工木材PW1が補助板SBと共に取出され、一連の処理工程が終了する。
なお、本実施の形態の塑性加工木材製造装置100では、木材NWを加工途中において、加熱プレス盤100Aで加熱圧縮した後、特定温度に維持し、特定の処理時間だけ乾燥加熱を行い、この乾燥加熱によって木材NWには自己保持能力をもたせることができ、それまでの加熱圧縮状態であったものが圧力を解除しても変形し難くなる仮固定化処理を行う。これによって従来では、如何に素早く加熱側のプレス機から冷却側のプレス機に移動させたとしても、加熱側のプレス機から取り出された加工途中の木材においては、それまでのプレス圧がなくなり、そのときの表面温度が多少でも低下することで内部の高圧蒸気による変形が発生することを防止することができなかった事項が改良できた。
【0043】
本実施の形態1の塑性加工木材製造装置100では、上プレス盤11A及び下プレス盤21Aの内部空間ISが密閉状態であるときに、内部空間ISを介して木材NWの周囲面、更には内部に高温高圧の蒸気圧が通過自在とされ、元々木材NWに含まれている水分が均一化される。その後、上プレス盤11A及び下プレス盤21Aを150〜210〔℃〕の特定温度に維持し、乾燥加熱を行うことによって、木材NWの全体が変化しようとしても蒸気圧が欠乏しているから、追随できなくなり、木材NWには自己保持能力をもたせることができ、それまでの加熱圧縮状態の仮固定化処理を行うことができる。
また、当然のことながら、一台のプレス機で加熱圧縮から冷却圧縮までを実施するのに比べて、熱エネルギや時間の無駄をなくすことができる。
このため、本実施の形態の塑性加工木材製造装置100における加熱プレス盤100A及び冷却プレス盤100Bを用いた一連の処理工程では、加熱プレス盤100Aで加熱圧縮され固定化された木材が冷却プレス盤100Bに移された後には、次の新たな木材NWを載置して、上プレス盤11A及び下プレス盤21Aに110〜160〔℃〕の蒸気圧を供給開始すれば、新たな木材NWに対する処理工程にそのまま移行させることができる。
【0044】
なお、上記実施の形態では、上プレス盤11Aと下プレス盤21Aとの2分割された構造体によって内部空間ISを形成する加熱プレス盤100Aが構成されているが、本発明を実施する場合には、これに限定されるものではなく、図4(a)に概略図を示すように、平プレス盤11aと角筒状の側壁プレス盤11bとを組み合わせ、側壁プレス盤11bに対する平プレス盤11aの側周面の摺動部にOリング14a等を配設し、平プレス盤11aと側壁プレス盤11bとを2段にて押圧する上プレス盤11A′と下プレス盤21A(配管口41a、配管41等は省略)とからなる3分割された構造体によって加熱プレス盤を構成することもできる。更に、図4(b)に概略図を示すように、平プレス盤11cと角筒状の側壁プレス盤11dとを組み合わせて、ボルト11e等にて固定するようにした上プレス盤11A″と下プレス盤21A(配管口41a、配管41等は省略)とからなる3分割された構造体によって加熱プレス盤を構成することもできる。
【0045】
[実施の形態2]
図5は本発明の実施の形態2にかかる塑性加工木材製造装置の概略構成を示す断面図、図6は図5における加熱プレス盤の上プレス盤に形成された凸状部としての突起部の詳細を示す斜視図である。
図5及び図6において、200は塑性加工木材製造装置であり、この塑性加工木材製造装置200は、主として、加熱圧縮を実施する加熱プレス盤200Aとこの加熱プレス盤200Aによる加熱圧縮に続いて直ちに冷却圧縮を実施する冷却プレス盤100Bとから構成されている。
【0046】
このうち、加熱プレス盤200Aは、2分割された構造体によって対向する圧縮面を有する内部空間ISを形成する上プレス盤110A及び下プレス盤21Aと、内部空間ISを密閉状態とするために下プレス盤21Aの周縁部22に対向して上プレス盤110Aの周縁部112に配設されるシール部材14と、木材NWの木口面以外の、例えば、板目面のうち木裏側との当接面となる上プレス盤110Aに所定の間隔で形成され、木材NWに食い込む程度に形成された所定の断面形状からなる凸状部としての複数の略円錐状の突起部15と、下プレス盤21Aの側面側から内部空間IS内に連通され、内部空間IS内から蒸気圧を排出するための配管口41aを有する配管41、配管41内の蒸気圧を検出する圧力計P2、その下流側のバルブV5、バルブV5に接続されたドレン配管42A等から構成されている。
【0047】
なお、加熱プレス盤200Aの上プレス盤110A及び下プレス盤21Aには、上記実施の形態1と同様に、それらを高温の蒸気圧を用いて加熱するための蒸気供給側及び蒸気排出側の配管路等が接続され、蒸気圧を供給するボイラ装置や油圧機構を含むプレス昇降装置等は省略されている。また、上記実施の形態1と同様、加熱プレス盤200Aの上プレス盤110A及び下プレス盤21Aで形成される内部空間IS内を加熱するためには、高温の蒸気圧を用いる方法の他、高周波加熱、マイクロ波加熱等による方法を用いてもよい。そして、冷却プレス盤100Bの上プレス盤11B及び下プレス盤21Bの構成、更に、加熱プレス盤200Aから冷却プレス盤100Bへの加工途中における木材の受け渡しに関するロボットアームRA等の構成は、上記実施の形態1と同様であるため、その詳細な説明を省略する
【0048】
また、加熱プレス盤200Aの上プレス盤110A及び下プレス盤21Bがシール部材14を介して密閉状態となったときの内部空間ISの上下方向の寸法間隔は、塑性加工木材製造装置200により木材NWが、例えば、圧縮率60〔%〕の塑性加工木材PW2とされるときの厚み方向の仕上がり寸法に設定されている。
【0049】
ここで、本実施の形態の塑性加工木材製造装置200で用いられる木材NWは、原材料となる木材が前以って所定の長さ・幅で厚み30〔mm〕以下に製材された、図2に示されたものと同じであるが、この場合には、板目面(木表及び木裏の2面)のうち木表側が加熱プレス盤200Aの下プレス盤21A上に補助板SBを介して載置される。
【0050】
次に、塑性加工木材製造装置200により原材料の木材NWから塑性加工木材PW2を製造する工程手順について、図7(a)〜図7(f)を参照して説明する。なお、図7(a)〜図7(f)では、蒸気供給側や蒸気排出側の配管、また、冷却水供給側や冷却水排出側の配管等は省略されている。
【0051】
まず、図7(a)に示すように、塑性加工木材製造装置200における加熱プレス盤200Aの固定側の下プレス盤21Aに対して上プレス盤110Aを上昇させ、予め所定の寸法に製材され、補助板SB上に載置された木材NWが、上プレス盤110A及び下プレス盤21Aで形成される内部空間IS内に載置される。
【0052】
次に、図7(b)に示すように、補助板SB上に載置された木材NWが固定側の下プレス盤21A上に載置され、下プレス盤21Aに対して上プレス盤110Aを圧力が0.05〜0.3〔MPa〕にて下降させ、木材NWの板目面の木裏側に当接させる。そして、上プレス盤110Aの配管路13A及び下プレス盤21Aの配管路23Aに150〜210〔℃〕の特定温度の蒸気圧が通されることによって、内部空間IS内が150〜210〔℃〕の特定温度に保持される(昇温処理時間10〜40〔min〕)。なお、本実施の形態の塑性加工木材製造装置200では、加熱プレス盤200Aの昇温処理時間は、連続処理されるときには周囲環境温度にもよるが最初の立上げ時のみ長い時間が必要となる。
【0053】
次に、図7(c)に示すように、固定側の下プレス盤21Aに対して上プレス盤110Aの圧縮圧力が2〜5〔MPa〕に設定され、木材NWが上プレス盤110A及び下プレス盤21Aにて加熱圧縮される(処理時間10〜40〔min〕)。そして、上プレス盤110Aの周縁部112が下プレス盤21Aの周縁部22に当接すると上プレス盤110Aの周縁部112に配設されたシール部材14によって、上プレス盤110A及び下プレス盤21Aにて形成される内部空間ISが密閉状態とされる。この内部空間ISの密閉状態で上プレス盤110A及び下プレス盤21Aによる圧縮圧力が保持されたまま、温度が3〜10〔min〕間で110〜160〔℃〕の特定温度から150〜210〔℃〕の特定温度に上昇される。なお、木材NWの圧縮率は、上プレス盤110Aの周縁部112が下プレス盤21Aの周縁部22に当接することで決まることとなる。
【0054】
そして、図7(c)に示す内部空間ISの密閉状態で、上プレス盤110A及び下プレス盤21Aの圧縮圧力が維持され、かつ、内部空間ISが150〜210〔℃〕の特定温度のまま、30〜120〔min〕間保持され、木材NWの加熱圧縮を解除したときに戻りのない塑性加工木材PW2を形成するための所謂、加熱圧縮及び仮固定化、定着が行われる。このとき、上プレス盤110Aに形成されている突起部15による空間を介して、内部空間ISと木材NWの周囲面、特に、板目面のうちの木裏側の内部とで高温高圧の蒸気圧が出入り自在となっている。
【0055】
なお、内部空間ISが密閉状態とされ固定化が行われているときに、蒸気圧制御処理として圧力計P2で内部空間ISの蒸気圧が検出され、バルブV5が適宜、開閉される。これにより、配管口41a、配管41を通って内部空間ISからドレン配管42A側に高温高圧の蒸気圧が排出または供給され、また、元の木材NWの含水率に基づく余分な内部空間IS内の水分が除去され、内部空間IS内が所定の蒸気圧となるように調節される。
【0056】
次に、内部空間ISを開放する直前に、バルブV5を開状態とすることで配管口41a、配管41を通って内部空間ISからドレン配管42A側に高温高圧の蒸気圧が排出される。この際、上プレス盤110A及び下プレス盤21Aを150〜210〔℃〕の特定温度に維持し、処理時間0.5〜15〔min〕だけ乾燥加熱を行う。この乾燥加熱によって、加熱圧縮状態の仮固定化処理を行うことができる。この際、上プレス盤110A及び下プレス盤21Aを150〜210〔℃〕の特定温度に維持する蒸気圧も一旦、供給停止してもよい。
【0057】
次に、図7(d)に示すように、加熱プレス盤200Aの上プレス盤110A及び下プレス盤21Aの温度をなるべく下げないように素早く、固定側の下プレス盤21Aに対して上プレス盤110Aを上昇させ、ロボットアームRA先端のハンドTHにより補助板SBが把持され、内部空間ISから加熱圧縮が終了された木材NWが補助板SBと共に、冷却プレス盤100Bの上プレス盤11B及び下プレス盤21Bで形成される対向する圧縮面間に載置される。
【0058】
次に、図7(e)に示すように、下プレス盤21Bに対して上プレス盤11Bを圧力が2〜5〔MPa〕にて下降させ、木材NWの板目面の木裏側に当接させる。そして、上プレス盤11Bの配管路13B及び下プレス盤21Bの配管路23Bに10〜25〔℃〕前後の常温の冷却水が通されることによって、上プレス盤11B及び下プレス盤21Bが10〜40〔℃〕前後まで冷却される(冷却処理時間30〜120〔min〕)。
【0059】
そして、図7(f)に示すように、固定側の下プレス盤21Bに対して上プレス盤11Bを上昇させ、下プレス盤21B上に載置されている仕上がり品である塑性加工木材PW2が補助板SBと共に取出され、一連の加熱圧縮、仮固定化、定着の処理工程が終了する。
【0060】
本実施の形態1の塑性加工木材製造装置200では、上プレス盤110A及び下プレス盤21Aの内部空間ISが密閉状態であるときに、内部空間ISを介して木材NWの周囲面、更には突起部15を介してその内部とで高温高圧の蒸気圧が通過自在とされ、元々木材NWに含まれている水分が均一化されることとなる。これにより、木材NWが加熱圧縮され仮固定化した後にそれまでのプレス圧が短い時間で外され、その表面温度が多少低下したとしても膨らみ変形の発生を遅らせることができ、加熱プレス盤200Aから冷却プレス盤100Bへの加工途中における木材の移動が可能となった。即ち、上プレス盤11A及び下プレス盤21Aを150〜210〔℃〕の特定温度に維持し、乾燥加熱を行うことによって、木材NWの全体が変化しようとしても蒸気圧が欠乏しているから、追随できなくなり、木材NWには自己保持能力をもたせることができ、それまでの加熱圧縮状態の仮固定化処理を行うことができる。
これによって、当然のことながら、一台のプレス機で加熱圧縮から冷却圧縮までを実施するのに比べて、熱エネルギや時間の無駄をなくすことができる。
【0061】
このため、本実施の形態の塑性加工木材製造装置200における加熱プレス盤200A及び冷却プレス盤100Bを用いた一連の加熱圧縮、仮固定化、定着処理工程では、加熱プレス盤200Aで加熱圧縮された木材NWが、木材NWを定着する冷却プレス盤100Bに移された後には、次の新たな木材NWを載置して、上プレス盤110A及び下プレス盤21Aに150〜210〔℃〕の特定温度の蒸気圧を供給開始すれば、新たな木材NWに対する固定化処理工程にそのまま移行させることができる。
【0062】
なお、上記実施の形態では、凸状部として複数の略円錐状の突起部15を用いているが、本発明を実施する場合には、これに限定されるものではなく、凸状部としては、図8(a)に斜視図、図8(b)に上面図を示すような、星形等からなる特殊な断面形状を有する突起部15aも有効であり、同様の作用効果が期待できる。
【0063】
[実施の形態3]
図9は本発明の実施の形態3にかかる塑性加工木材製造装置の概略構成を示す断面図、図10は図9における加熱プレス盤の上プレス盤に形成された凹状部としての溝部の詳細を示す斜視図である。
図9及び図10において、300は塑性加工木材製造装置であり、この塑性加工木材製造装置300は、主として、加熱圧縮を実施する加熱プレス盤300Aとこの加熱プレス盤300Aによる加熱圧縮に続いて直ちに冷却圧縮を実施する冷却プレス盤100Bとから構成されている。
【0064】
このうち、加熱プレス盤300Aは、2分割された構造体によって対向する圧縮面を有する内部空間ISを形成する上プレス盤120A及び下プレス盤21Aと、内部空間ISを密閉状態とするために下プレス盤21Aの周縁部22に対向して上プレス盤120Aの周縁部122に配設されるシール部材14と、木材NWの木口面以外の、例えば、板目面のうち木裏側との当接面となる上プレス盤120Aの凸平面16に、木材NWの繊維方向及びそれと直交する方向に所定の間隔で形成され、内部空間ISと連通する所定の断面形状からなる凹状部としての複数の略台形状の溝部17と、下プレス盤21Aの側面側から内部空間IS内に連通され、内部空間IS内から蒸気圧を排出するための配管口41aを有する配管41、配管41内の蒸気圧を検出する圧力計P2、その下流側のバルブV5、バルブV5に接続されたドレン配管42A等から構成されている。
【0065】
なお、加熱プレス盤300Aの上プレス盤120A及び下プレス盤21Aには、上記実施の形態1、2と同様に、それらを高温の蒸気圧を用いて加熱するための蒸気供給側及び蒸気排出側の配管路等が接続され、蒸気圧を供給するボイラ装置や油圧機構を含むプレス昇降装置等は省略されている。また、上記実施の形態1、2と同様、加熱プレス盤300Aの上プレス盤120A及び下プレス盤21Aで形成される内部空間IS内を加熱するためには、高温の蒸気圧を用いる方法の他、高周波加熱、マイクロ波加熱等による方法を用いてもよい。そして、冷却プレス盤100Bの上プレス盤11B及び下プレス盤21Bの構成、更に、加熱プレス盤300Aから冷却プレス盤100Bへの加工途中における木材の受け渡しに関するロボットアームRA等の構成は、上記実施の形態1、2と同様であるため、その詳細な説明を省略する
【0066】
また、加熱プレス盤300Aの上プレス盤120A及び下プレス盤21Bがシール部材14を介して密閉状態となったときの内部空間ISの上下方向の寸法間隔は、塑性加工木材製造装置300により木材NWが、例えば、圧縮率60〔%〕の塑性加工木材PW3とされるときの厚み方向の仕上がり寸法に設定されている。この仕上がり寸法は、当然のことながら、上プレス盤120Aに溝部17を形成するための凸平面16の高さも考慮されている。
ここで、本実施の形態の塑性加工木材製造装置300で用いられる木材NWは、原材料となる木材が前以って所定の長さ・幅で厚み30〔mm〕以下に製材された、図2に示されたものと同じであるが、この場合にも、上記実施の形態2と同様に、板目面(木表及び木裏の2面)のうち木表側が加熱プレス盤300Aの下プレス盤21A上に補助板SBを介して載置される。
【0067】
次に、塑性加工木材製造装置300により原材料の木材NWから塑性加工木材PW3を製造する工程手順について、図11(a)〜図11(f)を参照して説明する。なお、図11(a)〜図11(f)では、蒸気供給側や蒸気排出側の配管、また、冷却水供給側や冷却水排出側の配管等は省略されている。
まず、図11(a)に示すように、塑性加工木材製造装置300における加熱プレス盤300Aの固定側の下プレス盤21Aに対して上プレス盤120Aを上昇させ、予め所定の寸法に製材され、補助板SB上に載置された木材NWが、上プレス盤120A及び下プレス盤21Aで形成される内部空間IS内に載置される。
【0068】
次に、図11(b)に示すように、補助板SB上に載置された木材NWが固定側の下プレス盤21A上に載置され、下プレス盤21Aに対して上プレス盤120Aを圧力が0.05〜0.3〔MPa〕にて下降させ、木材NWの板目面の木裏側に当接させる。そして、上プレス盤120Aの配管路13A及び下プレス盤21Aの配管路23Aに110〜160〔℃〕の高温の蒸気圧が通されることによって、内部空間IS内が110〜160〔℃〕に保持される(昇温処理時間10〜25〔min〕)。なお、本実施の形態の塑性加工木材製造装置300では、加熱プレス盤300Aの昇温処理時間は、連続処理されるときには周囲環境温度にもよるが最初の立上げ時のみ長い時間が必要となる。
【0069】
次に、図11(c)に示すように、固定側の下プレス盤21Aに対して上プレス盤120Aの圧縮圧力が2〜5〔MPa〕に設定され、木材NWが上プレス盤120A及び下プレス盤21Aにて加熱圧縮される(処理時間10〜40〔min〕)。そして、上プレス盤120Aの周縁部122が下プレス盤21Aの周縁部22に当接すると上プレス盤120Aの周縁部122に配設されたシール部材14によって、上プレス盤120A及び下プレス盤21Aにて形成される内部空間ISが密閉状態とされる。この内部空間ISの密閉状態で上プレス盤120A及び下プレス盤21Aによる圧縮圧力が保持されたまま、温度が3〜10〔min〕間で110〜160〔℃〕の特定温度から150〜210〔℃〕の特定温度に上昇される。なお、木材NWの圧縮率は、上プレス盤120Aの周縁部122が下プレス盤21Aの周縁部22に当接することで決まることとなる。
【0070】
そして、図11(c)に示す内部空間ISの密閉状態で、上プレス盤120A及び下プレス盤21Aの圧縮圧力が維持され、かつ、内部空間ISが150〜210〔℃〕の特定温度のまま、30〜120〔min〕間保持され、木材NWの加熱圧縮を解除したときに戻りのない塑性加工木材PW3を形成するための所謂、固定化が行われる。このとき、上プレス盤120Aに形成されている溝部17による空間を介して、内部空間ISと木材NWの周囲面、特に、板目面のうちの木裏側の内部とで高温高圧の蒸気圧が出入り自在となっている。
なお、内部空間ISが密閉状態とされ加熱圧縮が行われているときに、蒸気圧制御処理として圧力計P2で内部空間ISの蒸気圧が検出され、バルブV5が適宜、開閉される。これにより、配管口41a、配管41を通って内部空間ISからドレン配管42A側に高温高圧の蒸気圧が排出されることで、元の木材NWの含水率に基づく余分な内部空間IS内の水分が除去され、内部空間IS内が所定の蒸気圧となるように調節される。
【0071】
次に、内部空間ISを開放する直前に、バルブV5を開状態とすることで配管口41a、配管41を通って内部空間ISからドレン配管42A側に高温高圧の蒸気圧が排出される。この際、上プレス盤120A及び下プレス盤21Aを150〜210〔℃〕の特定温度に維持し、処理時間0.5〜15〔min〕だけ乾燥加熱を行う。この乾燥加熱によって、加熱圧縮状態の仮固定化処理を行うことができる。この際、上プレス盤120A及び下プレス盤21Aを150〜210〔℃〕の特定温度に維持する蒸気圧も一旦、供給停止してもよい。
次に、図11(d)に示すように、上プレス盤120A及び下プレス盤21Aの温度をなるべく下げないように素早く、固定側の下プレス盤21Aに対して上プレス盤120Aを上昇させ、ロボットアームRA先端のハンドTHにより補助板SBが把持され、内部空間ISから加熱圧縮が終了され仮固定化処理された木材NWが補助板SBと共に、木材NWを定着する冷却プレス盤100Bの上プレス盤11B及び下プレス盤21Bで形成される対向する圧縮面間に搬送される。
【0072】
次に、図11(e)に示すように、下プレス盤21Bに対して上プレス盤11Bを圧力が2〜5〔MPa〕にて下降させ、木材NWの板目面の木裏側に当接させる。そして、上プレス盤11Bの配管路13B及び下プレス盤21Bの配管路23Bに10〜25〔℃〕前後の常温の冷却水が通されることによって、上プレス盤11B及び下プレス盤21Bが10〜40〔℃〕前後まで冷却される(冷却処理時間30〜120〔min〕)。
【0073】
そして、図11(f)に示すように、固定側の下プレス盤21Bに対して上プレス盤11Bを上昇させ、下プレス盤21B上に載置されている仕上がり品である塑性加工木材PW3が補助板SBと共に取出され、木材NWを定着する処理工程が終了する。
【0074】
本実施の形態の塑性加工木材製造装置300では、上プレス盤120A及び下プレス盤21Aの内部空間ISが密閉状態であるときに、内部空間ISを介して木材NWの周囲面、更には溝部17を介してその内部とで高温高圧の蒸気圧が通過自在とされ、元々木材NWに含まれている水分が均一化されることとなる。これにより、木材NWが加熱圧縮され固定化後にそれまでのプレス圧が短い時間外され、その表面温度が多少低下したとしても膨らみ変形の発生を遅らせることができることとなり、加熱プレス盤300Aから冷却プレス盤100Bへの加工途中における木材の移動が可能となった。また、当然のことながら、一台のプレス機で加熱圧縮から冷却圧縮までを実施するのに比べて、熱エネルギや時間の無駄をなくすことができる。
【0075】
このため、本実施の形態の塑性加工木材製造装置300における加熱プレス盤300A及び冷却プレス盤100Bを用いた一連の処理工程では、加熱プレス盤300Aで加熱圧縮され固定化された木材が冷却プレス盤100Bに移された後には、次の新たな木材NWを載置して、上プレス盤120A及び下プレス盤21Aに150〜210〔℃〕の特定温度の蒸気圧を供給開始すれば、新たな木材NWに対する処理工程にそのまま移行させることができる。
【0076】
ところで、上記実施の形態では、上プレス盤120Aに溝部17を形成しているが、この溝部17を形成する凸平面16は、上プレス盤120Aと一体であっても、別体を組合わせて構成するようにしてもよい。
また、上記実施の形態では、上プレス盤120Aにおいて、木材NWの繊維方向及びそれと直交する方向に所定の間隔で、上プレス盤120Aの凸平面16が角錐台状となるように切削されることで、結果として、断面形状が台形形状からなる溝部17が形成されているが、本発明を実施する場合には、これに限定されるものではなく、溝部の断面形状はU字形状、V字形状等であってもよく、要は、蒸気圧が通過し易くかつ、製品となる塑性加工木材を取外し易い形状であればよい。更に、図12に示すように、上プレス盤130Aの凸平面16aに溝部17aとして木材NWの繊維方向のみ、また、図13に示すように、上プレス盤140Aの凸平面16bに溝部17bとして木材NWの繊維方向及びそれと交差する斜め方向に所定の間隔で形成されていてもよい。
【0077】
[実施の形態4]
図14は本発明の実施の形態4にかかる塑性加工木材製造装置の概略構成を示す断面図である。
図14において、400は塑性加工木材製造装置であり、この塑性加工木材製造装置400は、主として、加熱圧縮を実施する加熱プレス盤400Aとこの加熱プレス盤400Aによる加熱圧縮に続いて直ちに冷却圧縮を実施する冷却プレス盤100Bとから構成されている。
【0078】
このうち、加熱プレス盤400Aは、2分割された構造体によって対向する圧縮面を有する内部空間ISを形成する上プレス盤150A及び下プレス盤21Aと、内部空間ISを密閉状態とするために下プレス盤21Aの周縁部22に対向して上プレス盤150Aの周縁部132に配設されるシール部材14と、木材NWの木口面以外の例えば、板目面のうち木裏側との当接面となる上プレス盤150Aに凸状部や凹状部を形成することなく接着剤等により接合させ配設させた隙間形成部材としての金網18と、下プレス盤21Aの側面側から内部空間IS内に連通され、内部空間IS内から蒸気圧を排出するための配管口41aを有する配管41、配管41内の蒸気圧を検出する圧力計P2、その下流側のバルブV5、バルブV5に接続されたドレン配管42A等から構成されている。つまり、塑性加工木材製造装置400では、上述の実施の形態2における上プレス盤110Aに形成された突起部15、または上述の実施の形態3における上プレス盤120Aの凸平面16に形成された溝部17を、上プレス盤150Aの金網18に置換えたものである。
【0079】
なお、加熱プレス盤400Aの上プレス盤150A及び下プレス盤21Aには、上記実施の形態1乃至3と同様に、それらを高温の蒸気圧を用いて加熱するための蒸気供給側及び蒸気排出側の配管路等が接続され、蒸気圧を供給するボイラ装置や油圧機構を含むプレス昇降装置等は省略されている。また、上記実施の形態1乃至3と同様、加熱プレス盤400Aの上プレス盤150A及び下プレス盤21Aで形成される内部空間IS内を加熱するためには、高温の蒸気圧を用いる方法の他、高周波加熱、マイクロ波加熱等による方法を用いてもよい。そして、冷却プレス盤100Bの上プレス盤11B及び下プレス盤21Bの構成、更に、加熱プレス盤400Aから冷却プレス盤100Bへの加工途中における木材の受け渡しに関するロボットアームRA等の構成は、上記実施の形態1乃至3と同様であるため、その詳細な説明を省略する
また、加熱プレス盤400Aの上プレス盤150A及び下プレス盤21Aとがシール部材14を介して密閉状態となったときの内部空間ISの上下方向の寸法間隔は、塑性加工木材製造装置400により木材NWが例えば、圧縮率60〔%〕の塑性加工木材PW4とされるときの厚み方向の仕上がり寸法に設定されている。この仕上がり寸法は、当然のことながら、上プレス盤150Aに金網18を配設するための高さも考慮されている。
【0080】
ここで、本実施の形態で用いられる金網18は、加熱プレス盤400Aの内部空間IS内で、上プレス盤150A及び下プレス盤21Aによる木材NWの加熱圧縮の際、大きく変形されることなく上プレス盤150Aと木材NWの板目面の木裏側との間の隙間を確実に保持し続けることができる強度を有する必要がある。
【0081】
また、本実施の形態の塑性加工木材製造装置400で用いられる木材NWは、原材料となる木材が前以って所定の長さ・幅で厚み30〔mm〕以下に製材された、図2に示されたものと同じであるが、この場合にも、上記実施の形態2、3と同様に、板目面(木表及び木裏の2面)のうち木表側が加熱プレス盤400Aの下プレス盤21A上に補助板SBを介して載置される。
図14に示すように、加熱プレス盤400Aの上プレス盤150Aに金網18を配設することで、上プレス盤150Aと木材NWの板目面の木裏側との間に隙間が形成される。したがって、加熱プレス盤400Aの上プレス盤150A及び下プレス盤21Aにて形成される内部空間ISと木材NWの周囲面、更には板目面の木裏側、その内部との間で高温高圧の蒸気圧が通過自在とされる。
【0082】
次に、塑性加工木材製造装置400により原材料の木材NWから製品としての塑性加工木材PW4を製造する工程手順について、図15(a)〜図15(f)を参照して説明する。なお、図15(a)〜図15(f)では、蒸気供給側や蒸気排出側の配管等は省略されている。
【0083】
まず、図15(a)に示すように、塑性加工木材製造装置400における加熱プレス盤400Aの固定側の下プレス盤21Aに対して上プレス盤150Aを上昇させ、予め所定の寸法に製材され、補助板SB上に載置された木材NWが、上プレス盤150A及び下プレス盤21Aで形成される内部空間IS内に載置される。
次に、図15(b)に示すように、補助板SB上に載置された木材NWが固定側の下プレス盤21A上に載置され、下プレス盤21Aに対して上プレス盤150Aを圧力が0.05〜0.3〔MPa〕にて下降させ、金網18を介して木材NWの板目面の木裏側に当接させる。そして、上プレス盤150Aの配管路13A及び下プレス盤21Aの配管路23Aに150〜210〔℃〕の特定温度の蒸気圧が通されることによって、内部空間IS内が150〜210〔℃〕の特定温度に保持される(昇温処理時間10〜25〔min〕)。なお、本実施の形態の塑性加工木材製造装置400では、加熱プレス盤400Aの昇温処理時間は、連続処理されるときには周囲環境温度にもよるが最初の立上げ時のみ長い時間が必要となる。
【0084】
次に、図15(c)に示すように、固定側の下プレス盤21Aに対して上プレス盤150Aの圧縮圧力が2〜5〔MPa〕に設定され、木材NWが上プレス盤150A及び下プレス盤21Aにて加熱圧縮される(処理時間10〜40〔min〕)。そして、上プレス盤150Aの周縁部132が下プレス盤21Aの周縁部22に当接すると上プレス盤150Aの周縁部132に配設されたシール部材14によって、上プレス盤150A及び下プレス盤21Aにて形成される内部空間ISが密閉状態とされる。この内部空間ISの密閉状態で上プレス盤150A及び下プレス盤21Aによる圧縮圧力が保持されたまま、温度が3〜10〔min〕間で110〜160〔℃〕の特定温度から150〜210〔℃〕の特定温度に上昇される。
【0085】
このとき、上プレス盤150Aに配設された金網18を介して加熱圧縮される木材NWの板目面の木裏側は、金網18に食い込んだように変形されることとなるが、金網18の空間を埋め尽くすことはなく蒸気圧が通過するための十分な空間が確保されている。なお、木材NWの圧縮率は、上プレス盤150Aの周縁部132が下プレス盤21Aの周縁部22に当接することで決まることとなる。
【0086】
そして、図15(c)に示す内部空間ISの密閉状態で、上プレス盤150A及び下プレス盤21Aの圧縮圧力が維持され、かつ、内部空間ISが150〜210〔℃〕の特定温度のまま、30〜120〔min〕間保持され、木材NWの加熱圧縮を解除するとき、内部空間ISを開放する直前に、バルブV5を開状態とし、内部空間ISから高温高圧の蒸気圧が排出される。この際、上プレス盤150A及び下プレス盤21Aを150〜210〔℃〕の特定温度に維持し、処理時間0.5〜15〔min〕だけ乾燥加熱を行う。この乾燥加熱によって、加熱圧縮状態の仮固定化処理を行う。このとき、上プレス盤150Aに配設されている金網18による空間を介して、内部空間ISと木材NW2の周囲面、特に、板目面のうちの木裏側の内部とで高温高圧の蒸気圧が出入り自在となっているから、高効率で木材NWの含水率に基づく余分な内部空間IS内の水分が除去され、内部空間IS内の蒸気が排出される。
この際、上プレス盤150A及び下プレス盤21Aを110〜160〔℃〕の特定温度に維持する程度に蒸気圧も一旦、供給停止してもよい。
【0087】
次に、図15(d)に示すように、上プレス盤150A及び下プレス盤21Aの温度を下げないように素早く、固定側の下プレス盤21Aに対して上プレス盤150Aを上昇させ、ロボットアームRA先端のハンドTHにより補助板SBが把持され、内部空間ISから加熱圧縮が終了された木材NWが補助板SBと共に、木材NWを定着する冷却プレス盤100Bの上プレス盤11B及び下プレス盤21Bで形成される対向する圧縮面間に載置される。
【0088】
次に、図15(e)に示すように、下プレス盤21Bに対して上プレス盤11Bを圧力が2〜5〔MPa〕にて下降させ、木材NWの板目面の木裏側に当接させる。そして、上プレス盤11Bの配管路13B及び下プレス盤21Bの配管路23Bに10〜25〔℃〕前後の常温の冷却水が通されることによって、上プレス盤11B及び下プレス盤21Bが10〜40〔℃〕前後まで冷却される(冷却処理時間30〜120〔min〕)。
そして、図15(f)に示すように、固定側の下プレス盤21Bに対して上プレス盤11Bを上昇させ、下プレス盤21B上に載置されている仕上がり品である塑性加工木材PW4が補助板SBと共に取出され、一連の木材NWを定着する処理工程が終了する。
なお、本実施の形態の塑性加工木材製造装置400では、木材NWを加工途中において、加熱プレス盤400Aで加熱圧縮した後、冷却プレス盤100Bに直ちに移動させ冷却圧縮するようにしている。
【0089】
本実施の形態の塑性加工木材製造装置400では、上プレス盤150A及び下プレス盤21Aの内部空間ISが密閉状態であるときに、内部空間ISを介して木材NWの周囲面、更には金網18を介してその内部とで高温高圧の蒸気圧が通過自在とされ、元々木材NWに含まれている水分が均一化されることとなる。これにより、木材NWが加熱圧縮され固定化後にそれまでのプレス圧が短い時間外され、その表面温度が多少低下したとしても膨らみ変形の発生を遅らせることができ、加熱プレス盤400Aから冷却プレス盤100Bへの加工途中における木材NWの移動が可能となった。また、当然のことながら、一台のプレス機で加熱圧縮から冷却圧縮までを実施するのに比べて、熱エネルギや時間の無駄をなくすことができる。
【0090】
このため、本実施の形態の塑性加工木材製造装置400における加熱プレス盤400A及び冷却プレス盤100Bを用いた木材NWを固定化、仮固定化、そして定着する処理工程では、加熱プレス盤400Aで加熱圧縮され固定化された木材が木材NWを定着する冷却プレス盤100Bに移された後には、次の新たな木材NWを載置して、上プレス盤150A及び下プレス盤21Aに150〜210〔℃〕の特定温度の蒸気圧を供給開始すれば、新たな木材NWに対する加熱圧縮する固定化の処理工程にそのまま移行させることができる。
なお、塑性加工木材PW4の板目面のうち木裏側が、金網18に食い込むことにより金網18のパターン形状が残ることとなるが、製品の表面側となる板目面の木表側と反対の木裏側であることから不具合が発生することはない。また、金網18のパターン形状が残る部分が、製品化する際の切削代である寸法範囲内となるように予め設定されておれば問題となることはない。更に、製品の板目面の木裏側で金網18のパターン形状が残った部分は、接着仕様のものでは接着を助ける役割を果たすこととなるため好ましく、塑性加工木材PW4の板目面の木裏側の凹凸形状は製品化に当たって問題となることもない。
【0091】
また、本実施の形態の塑性加工木材製造装置400における加熱プレス盤400Aは、一方の圧縮面側として上プレス盤150A側に、木材NWとの間に隙間を形成する隙間形成部材としての金網18が配設されているものである。
そして、本実施の形態の塑性加工木材製造装置400における木材NWは、加熱プレス盤400Aによる加工開始から冷却プレス盤100Bによる加工終了まで通して、それらと熱伝導率が同等以上の金属からなる搬送補助具としての補助板SB上に載置された状態で加工されるものである。
【0092】
このため、加熱プレス盤400Aの内部空間IS内に載置された補助板SB上の木材NWが加熱圧縮され、内部空間ISが密閉状態に所定時間保持されている間に、上プレス盤150Aの木材NWの板目面の木裏側と当接する圧縮面側に配設された木材NWとの間に隙間を形成する金網18を介して、木材NWに元々含まれている水分が蒸気圧となって内部空間ISとの間を通過自在となることで、木材NWが均一に加熱圧縮される。そして、加熱プレス盤400Aによる木材NWの加熱圧縮により仮固定化され、直ちに定着する冷却プレス盤100Bによる冷却圧縮が実施される。このように、本実施の形態の塑性加工木材製造装置400によれば、木材NWを加熱圧縮し、内部空間ISを密閉状態に所定時間保持してから仮固定化し、内部空間ISを密閉状態から開放し、加熱プレス盤400Aの内部空間ISから直ちに取り出された木材が定着する冷却プレス盤100Bにて冷却圧縮されることで膨らみ変形を生じることのない定着により、安定した品質の塑性加工木材PW4を製造することができる。
【0093】
ところで、上記実施の形態で用いられている金網18は、プレス処理における加熱圧縮に耐え得る強度を有していることは当然であるが、その線径や目の細かさ等については、木材NWの種類等や圧縮面が板目面か柾目面かが考慮され、予め実験等によって最適なものが選定される。
また、上記実施の形態では、金網18を上プレス盤150Aに接着剤等による接合にて配設するとしているが、より確実に配設するためには、例えば、上プレス盤150Aに金網18の外形形状に合わせた凹部を形成し、この凹部に金網18を嵌込んで接着等を併用して固定すれば、位置ズレ等が防止されるため作業性を向上することができる。
そして、上記実施の形態では、隙間形成部材として金網18を用いているが、本発明を実施する場合には、これに限定されるものではなく、セラミックや焼結合金等の多孔質の材料を用いることによって同様の作用効果が期待でき、また、これらの材料を用いれば、塑性加工木材PW4の板目面の木裏側に残るパターン形状を目立たなくすることもでき、作業性も向上させることができるという作用効果も得ることができる。
【0094】
なお、上記実施の形態の塑性加工木材製造装置100,200,300,400の加熱プレス盤100A,200A,300A,400Aまたは冷却プレス盤100Bは、複数に分割された構造体によって対向する圧縮面を有する内部空間ISを形成し、内部空間ISの体積を変化させるものであるが、加熱圧縮開始時点で、必ずしも内部空間ISが閉鎖されているものに限定されるものではなく、加熱圧縮開始時点で内部空間ISが開放されていてもよい。
また、上記実施の形態の塑性加工木材製造装置100,200,300,400の加熱圧縮加工制御手段は、加熱プレス盤100A,200A,300A,400Aの内部空間IS内に載置された厚み30〔mm〕以下の木材の木目の長さ方向に対して垂直方向に所定温度及び所定圧力で加熱圧縮し、内部空間ISを密閉状態に保持し、所定時間経過後にそれを開放するもので、加熱圧縮の後に内部空間ISの蒸気圧によって、その木材NWの圧縮状態を維持させようとする処理を行うものである。
【0095】
また、上記実施の形態の塑性加工木材製造装置100,200,300,400の蒸気圧制御手段は、加熱圧縮加工制御手段で内部空間ISが密閉状態に保持されているとき、内部空間ISを介して木材NWの周囲面の高温高圧の蒸気圧を供給または排出することによって蒸気圧を制御し、その蒸気圧制御により木材NWの加熱圧縮状態を仮固定化するものである。
そして、上記実施の形態の塑性加工木材製造装置100,200,300,400の冷却圧縮加工制御手段は、加熱プレス盤100A,200A,300A,400Aから取り出された蒸気圧制御により木材NWの仮固定化した木材NWを冷却プレス盤100Bに載置し、その加熱圧縮された面を所定温度及び所定圧力で強制冷却圧縮して木材NWを定着し、所定時間経過後に開放するものである。
【0096】
以上のように、上記実施の形態の塑性加工木材製造装置100,200,300,400は、複数に分割された構造体によって対向する圧縮面を有する内部空間ISを形成し、内部空間ISの体積を変化させることにより加熱圧縮自在な上プレス盤11A,110A,120A,150A及び下プレス盤21Aからなる加熱プレス盤100A,200A,300A,400Aと、加熱プレス盤100A,200A,300A,400Aの内部空間IS内に載置された厚み30〔mm〕以下の木材NWの木目の長さ方向に対して垂直方向となる木口面以外の、例えば、板目面に対して垂直方向に150〜210〔℃〕の特定温度及び2〜5〔MPa〕で加熱圧縮し、内部空間ISを密閉状態に保持し、30〜120〔min〕経過後にそれを開放する加熱圧縮加工制御手段と、前記加熱圧縮加工制御手段で内部空間ISが密閉状態に保持されているとき、内部空間ISを介して木材NWの周囲面の高温高圧の蒸気圧を制御する蒸気圧制御手段と、複数に分割された構造体によって対向する圧縮面を形成し、その圧縮面間の距離を変化させることにより冷却圧縮自在な上プレス盤11B及び下プレス盤21Bからなる冷却プレス盤100Bと、加熱プレス盤100A,200A,300A,400Aから取り出された木材を冷却プレス盤100Bに直ちに載置し、その加熱圧縮された面を10〜25〔℃〕前後の常温及び2〜5〔MPa〕で冷却圧縮し、30〜120〔min〕経過後に開放する冷却圧縮加工制御手段とを具備するものである。
また、上記実施の形態の塑性加工木材製造装置100,200,300,400における木材NWは、加熱プレス盤100A,200A,300A,400Aによる加熱圧縮の加工開始から仮固定化、定着を行う冷却プレス盤100Bによる加工終了まで通して、それらと熱伝導率が同等以上の金属からなる搬送補助具としての補助板SB上に載置された状態で加工されるものである。
【0097】
そして、上記実施の形態の塑性加工木材製造装置100,200,300,400における各手段は、作業工程として捉えることができる。即ち、複数に分割された構造体によって対向する圧縮面を有する内部空間ISを形成し、内部空間ISの体積を変化させることにより加熱圧縮自在な上プレス盤11A,110A,120A,150A及び下プレス盤21Aからなる加熱プレス盤100A,200A,300A,400Aで、内部空間IS内に載置された木材NWの木目の長さ方向に対して垂直方向となる木口面以外の例えば、板目面に対して垂直方向に150〜210〔℃〕の特定温度〔℃〕及び2〜5〔MPa〕で加熱圧縮し、内部空間ISを密閉状態に保持し、30〜120〔min〕経過後にそれを開放する加熱圧縮加工制御工程と、前記加熱圧縮加工制御工程で内部空間ISが密閉状態に保持されているとき、内部空間ISを介して木材NWの周囲面の高温高圧の蒸気圧を制御する蒸気圧制御工程と、複数に分割された構造体によって対向する圧縮面を形成し、その圧縮面間の距離を変化させることにより冷却圧縮自在な上プレス盤11B及び下プレス盤21Bからなる冷却プレス盤100Bと、加熱プレス盤100A,200A,300A,400Aから取り出された木材を冷却プレス盤100Bに直ちに載置し、その加熱圧縮された面を10〜25〔℃〕前後の常温及び2〜5〔MPa〕で冷却圧縮し、30〜120〔min〕経過後に開放する冷却圧縮加工制御工程とからなる塑性加工木材製造方法の実施の形態とすることができる。
【0098】
このため、加熱プレス盤100A,200A,300A,400Aの内部空間IS内に載置された補助板SB上の木材NWが加熱圧縮され、内部空間ISが密閉状態に所定時間保持されている間に、木材NWに元々含まれている水分が蒸気圧となって内部空間ISを介して木材NWの周囲面、更には内部に浸入拡散、排出自在となることで、木材NWが均一に加熱圧縮される。そして、加熱プレス盤100A,200A,300A,400Aによる木材NWの加熱圧縮の後、仮固定化処理され、木材NWを定着する冷却プレス盤100Bによる冷却圧縮が実施される。このように、本実施の形態の塑性加工木材製造装置100,200,300,400によれば、木材NWを加熱圧縮し、内部空間ISを密閉状態に所定時間保持し、蒸気圧制御により木材の仮固定化を促進し、内部空間ISを密閉状態から開放し、加熱プレス盤100A,200A,300A,400Aの内部空間ISから直ちに取り出された仮固定化処理された木材NWが、その木材NWを定着する冷却プレス盤100Bにて冷却圧縮されることで変形を生じることのない安定した品質の塑性加工木材PW1,PW2,PW3,PW4を製造することができる。
【0099】
ところで、上記実施の形態では、加熱プレス盤100A,200A,300A,400Aの内部空間IS内に載置された厚み30〔mm〕以下の木材NWの木目の長さ方向に対して垂直方向に所定温度及び所定圧力で加熱圧縮する場合には、加熱圧縮自在な加熱プレス盤は加熱圧縮開始時に閉じた空間を形成していないが、図4の実施の形態のように、平プレス盤11aと側壁プレス盤11bとで2段にて押圧する上プレス盤11A′を使用し、加熱圧縮開始時から閉じた空間で加熱圧縮することもできる。特に、蒸気圧を高くした方が効率よく塑性加工を行うことができるものもある。
【0100】
本発明の塑性加工木材製造装置及びその製造方法によれば、本来、杉材等で軽軟な木質材を原材料として使用でき、元の木材に対する表面のみならず板厚全体における硬度が大きく向上され、傷の付き難い塑性加工木材が製造できることとなる。そこで、本発明の塑性加工木材製造装置及びその製造方法を用いて製造された塑性加工木材は、床材や腰板材や屋内家具材、また、表面塗装して使用する住宅用外装材等、広範な用途が見込まれる。
【0101】
本発明の塑性加工木材製造装置及びその製造方法によれば、厚み30〔mm〕以下の木材NWを前提とするものであるが、本発明を実施する場合には、厳格に厚み30〔mm〕に限定されるものではなく、木目の長さ方向に対して垂直方向に表面を凹凸形状にした場合には、更に厚みを増すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】図1は本発明の実施の形態1にかかる塑性加工木材製造装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態1にかかる塑性加工木材製造装置で用いられる木材の板目面、柾目面、木口面、また、木材が加工途中で載置される搬送補助具としての補助板を示す斜視図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態1にかかる塑性加工木材製造装置の工程手順を示す説明図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態1にかかる塑性加工木材製造装置における複数に分割された構造体からなる加熱プレス盤の変形例を示す概略図である。
【図5】図5は本発明の実施の形態2にかかる塑性加工木材製造装置の概略構成を示す断面図である。
【図6】図6は図5の加熱プレス盤の上プレス盤に形成された凸状部としての突起部の詳細を示す斜視図である。
【図7】図7は本発明の実施の形態2にかかる塑性加工木材製造装置の工程手順を示す説明図である。
【図8】図8は図6の加熱プレス盤の上プレス盤に形成された突起部の変形例を示す斜視図である。
【図9】図9は本発明の実施の形態3にかかる塑性加工木材製造装置の概略構成を示す断面図である。
【図10】図10は図9の加熱プレス盤の上プレス盤に形成された凹状部としての溝部の詳細を示す斜視図である。
【図11】図11は本発明の実施の形態3にかかる塑性加工木材製造装置の工程手順を示す説明図である。
【図12】図12は図10の加熱プレス盤の上プレス盤に形成された溝部の変形例を示す斜視図である。
【図13】図13は図10の加熱プレス盤の上プレス盤に形成された溝部の他の変形例を示す上面図である。
【図14】図14は本発明の実施の形態4にかかる塑性加工木材製造装置の概略構成を示す断面図である。
【図15】図15は本発明の実施の形態4にかかる塑性加工木材製造装置の工程手順を示す説明図である。
【符号の説明】
【0103】
11A,110A,120A,150A 上プレス盤
14 シール部材
15 突起部
17 溝部
18 金網
21A 下プレス盤
100A,200A,300A,400A 加熱プレス盤
11B 上プレス盤
21B 下プレス盤
100B 冷却プレス盤
100,200,300,400 塑性加工木材製造装置
IS 内部空間
NW 木材
PW1,PW2,PW3,PW4 塑性加工木材
SB 補助板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数に分割された構造体によって対向する圧縮面を有する内部空間を形成し、前記内部空間の体積を変化させることにより加熱圧縮自在な加熱プレス盤と、
前記加熱プレス盤の内部空間内に載置された厚み30〔mm:ミリメートル〕以下の木材の木目の長さ方向に対して垂直方向に所定温度及び所定圧力で加熱圧縮し、前記内部空間を密閉状態に保持し、所定時間経過後にそれを開放する加熱圧縮加工制御手段と、
前記加熱圧縮加工制御手段で前記内部空間が密閉状態に保持されているとき、前記内部空間を介して前記木材の周囲面の高温高圧の蒸気圧を制御し、前記蒸気圧制御により前記木材を仮固定化する蒸気圧制御手段と、
複数に分割された構造体によって対向する圧縮面を形成し、前記圧縮面間の距離を変化させることにより冷却圧縮自在な冷却プレス盤と、
前記加熱プレス盤から取り出された前記蒸気圧制御により仮固定化した前記木材を前記冷却プレス盤に直ちに載置し、その加熱圧縮された面を所定温度及び所定圧力で強制冷却圧縮して前記木材を定着し、所定時間経過後に開放する冷却圧縮加工制御手段と
を具備することを特徴とする塑性加工木材製造装置。
【請求項2】
前記加熱プレス盤は、少なくとも一方の圧縮面側に、前記木材に食い込む程度の所定の断面形状からなる凸状部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の塑性加工木材製造装置。
【請求項3】
前記加熱プレス盤は、少なくとも一方の圧縮面側に、前記内部空間と連通する所定の断面形状からなる凹状部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の塑性加工木材製造装置。
【請求項4】
前記加熱プレス盤は、少なくとも一方の圧縮面側に、前記木材との間に隙間を形成する隙間形成部材が配設されていることを特徴とする請求項1に記載の塑性加工木材製造装置。
【請求項5】
前記木材は、前記加熱プレス盤での加熱圧縮による加工開始から前記冷却プレス盤による強制冷却圧縮することによって定着に至る加工終了まで通して、それらと熱伝導率が同等以上の材質からなる搬送補助具上に載置された状態で加工されることを特徴とする請求項1に記載の塑性加工木材製造装置。
【請求項6】
複数に分割された構造体によって対向する圧縮面を有する内部空間を形成し、前記内部空間の体積を変化させることにより加熱圧縮自在な加熱プレス盤で、前記内部空間内に載置された厚み30〔mm〕以下の木材の木目の長さ方向に対して垂直方向に所定温度及び所定圧力で加熱圧縮し、前記内部空間を密閉状態に保持し、所定時間経過後にそれを開放する加熱圧縮加工制御工程と、
前記加熱圧縮加工制御工程で前記内部空間が密閉状態に保持されているとき、前記内部空間を介して前記木材の周囲面の高温高圧の蒸気圧を制御し、前記蒸気圧制御により前記木材を仮固定化する蒸気圧制御工程と、
複数に分割された構造体によって対向する圧縮面を形成し、前記圧縮面間の距離を変化させることにより冷却圧縮自在な冷却プレス盤に、前記加熱プレス盤から取り出された前記蒸気圧制御により仮固定化した前記木材を直ちに載置し、その加熱圧縮された面を所定温度及び所定圧力で強制冷却圧縮して前記木材を定着し、所定時間経過後に開放する冷却圧縮加工制御工程と
からなることを特徴とする塑性加工木材製造方法。
【請求項7】
前記加熱プレス盤は、少なくとも一方の圧縮面側に、前記木材に食い込む程度の所定の断面形状からなる凸状部が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の塑性加工木材製造方法。
【請求項8】
前記加熱プレス盤は、少なくとも一方の圧縮面側に、前記内部空間と連通する所定の断面形状からなる凹状部が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の塑性加工木材製造方法。
【請求項9】
前記加熱プレス盤は、少なくとも一方の圧縮面側に、前記木材との間に隙間を形成する隙間形成部材が配設されていることを特徴とする請求項6に記載の塑性加工木材製造方法。
【請求項10】
前記木材は、前記加熱プレス盤での加熱圧縮による加工開始から前記冷却プレス盤による強制冷却圧縮することによって定着に至る加工終了まで通して、それらと熱伝導率が同等以上の材質からなる搬送補助具上に載置された状態で加工されることを特徴とする請求項6に記載の塑性加工木材製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−8053(P2007−8053A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192668(P2005−192668)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(501115689)マイウッド・ツー株式会社 (16)
【Fターム(参考)】