説明

塗工材

【課題】 本発明は、単に塗布するだけで壁面や天井面などの施工面に均一に、しかも
、迅速、かつ確実に作業能率よく施工することが出来るのみならず、施工後においても常に居住環境を好適に保持せしめることが出来、また、再剥離性にも優れた新しいタイプの壁装用塗工材を提供するものである。
【解決手段】 パルプ繊維水分散液と、アミドカルボニル基を有する水性樹脂と、シラノ−ル基を有するシリカ水分散液とよりなる。そして、上記アミドカルボニル基を有する水性樹脂がN−オキサゾリン系、N−ビニルピロリドン系、及びN,N−ジメチルアクリルアミド系の水性樹脂であり、シラノ−ル基を有するシリカ水分散液中のシリカ成分が鱗片状シリカである。また、ポリイソシアネ−トが配合せしめられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗工材に関し、さらに詳細には、壁面や天井面などに直接塗布して室内装飾せしめる壁紙や補強材として好適な塗工材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、室内を装飾せしめるために壁面や天井面などに壁紙が貼着されている。そして、かかる壁紙としては、価格が安く、加工特性、耐水性、防汚染性、施工性、剥離性などの点において優れている塩化ビニル樹脂製壁紙が広く知られている。
しかしながら、近年の環境問題から塩化ビニル樹脂製壁紙の燃焼時に発生する塩化水素ガスやその化粧層中に含まれる可塑剤の居住空間への揮発が問題視されているものである

【0003】
上記塩化ビニル樹脂製壁紙の問題点を解決するものとして、紙パルプ繊維を主材とするシ−ト状壁紙(特開平9−31900号公報、特開平10−204783号公報)、あるいは、和紙を主材とする壁紙(特開2002−30596号公報)が開示されている。
そして、上記壁紙は、壁面や天井面などの施工スペ−スに合わせて切断し、接着剤により貼着施工するものとされている。
【特許文献1】特開平9−31900号公報
【特許文献2】特開平10−204783号公報
【特許文献3】特開2002−30596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の壁紙は天然素材である紙パルプ繊維や和紙を主材とするものであるから、塩化ビニル樹脂製壁紙の問題点を有効に解決することが出来るものである。しかしながら、施工時においては従来の壁紙と同様に壁面や天井面などの施工スペ−スに合わせて切断し、所要の接着剤でもって貼着施工せしめるものであるから、その施工作業が非常に面倒で手間がかかるのみならず、壁面など施工面に不陸がある場合や屈曲部、あるいは隅部などにおいては確実なる貼着施工がしずらいものである。また、必然的に壁紙どうしのつなぎ面が生起するものであるから、つなぎ面における強度が得られにくいと共に、経時的につなぎ面の汚れが次第に目立つのみならず、隙間が拡大するなど外観の悪化を生じやすい。さらに、接着剤としてでんぷん糊や酢酸ビニル系、ポバ−ル系の接着剤などを使用するものであるから、経時的に変色、VOC、腐敗、カビなどを発生せしめ、ひいては、居住環境に悪影響を及ぼすのみならず、アレルギ−を誘発せしめるなどの由々しき問題を生起せしめやすいものである。
【0005】
本発明は従来の問題点を解決し、単に塗布するだけで壁面や天井面などの施工面に均一に、しかも、迅速、かつ確実に作業能率よく施工することが出来るのみならず、施工後においても常に居住環境を好適に保持せしめることが出来、また、再剥離性にも優れた従来にない新しいタイプの壁装用塗工材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の請求項1記載の発明は、パルプ繊維水分散液と、アミドカルボニル基を有する水性樹脂と、シラノ−ル基を有するシリカ水分散液とよりなることを特徴とする、塗工材を要旨とするものである。
【0007】
上記請求項1記載の塗工材は、アミドカルボニル基を有する水性樹脂がN−オキサゾリン系、N−ビニルピロリドン系、及びN,N−ジメチルアクリルアミド系の水性樹脂であり、シラノ−ル基を有するシリカ水分散液中のシリカ成分が鱗片状シリカである。また、上記請求項1記載の塗工材は、ポリイソシアネ−トが配合せしめられている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明は上述のように構成されているから、壁面や天井面などの施工面に塗布せしめるという簡単な操作でもって均一に、しかも、迅速、かつ確実に作業能率よく施工せしめることが出来るのみならず、居住環境に好適な暖みのある紙風合の壁装塗膜を形成せしめることが出来るものである。そして、特に、パルプ繊維はその水酸基部分が水性樹脂のアミドカルボニル基と水素結合して水溶性ポリマ−に覆われ、繊維同士の結合を弱めることが出来るものであるから、パルプ繊維を容易に均一に分散せしめることが出来るのみならず、シラノ−ル基を有する分散シリカの水素結合力によりパルプ繊維の水酸基と結合し、分散するパルプ繊維表面がシリカにより覆れるものであるから、非常に優れた耐水性、耐久性、耐候性、再剥離性などの特性を有するものである。また、シリカのシラノ−ル基とパルプ繊維の水酸基にイソシアネ−トを反応せしめることにより、シリカとパルプ繊維とを一体的に結合せしめてハイブリット化せしめ、塗膜の諸特性を一層改善せしめることが出来るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明におけるパルプ繊維としては、和紙や洋紙など通常の製紙に使用される化学パルプ及び機械パルプを含む木材パルプ、藁や麻繊維などからなる非木材パルプなどの公知汎用のパルプを用いる。そして、かかるパルプ繊維は、その乾燥パルプ重量に対して1000%以上の水に投入し、通常数時間かけて水分散プルプ液を調製する。このさい、かかる水分散パルプ液の調製時において、アミドカルボニル基を有する水性樹脂を添加せしめることによりパルプの水分散化時間が大幅に短縮されるのみならず、パルプ水分散液の塗工性が向上する。なお、かかる水性樹脂の量が多すぎる場合には、皮膜の耐水性が下がり、かつ、再剥離性が悪くなる。
【0010】
アミドカルボニル基を有する水性樹脂としては、N−オキサゾリン系、N−ビニルピロリドン系、及びN,N−ジメチルアクリルアミド系の水性樹脂を用いる。また、これらの外にポリ尿素、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミドなどを用いることが出来るが、水に対する任意の溶解性が必要である。そして、塗工材の乾燥後において、これらの水性樹脂は皮膜化するものであるが、皮膜形成保持能力より再溶解性をもつものが好適であり、補修、再施工等におけるパルプ繊維製塗工材の特色を活かすためである。
N−オキサゾリン系水性樹脂としては、(株)日本触媒製の「エポクロス」(登録商標
)、N−ビニルピロリドン系水性樹脂としては(株)日本触媒やBASF(株)製の「ルピスコ−ル)(登録商標)、ルビテック(登録商標)を挙げることが出来る。
アミドカルボニル基を有する水性樹脂の量は、乾燥パルプ繊維に対して0.5〜40重量%、好ましくは2.0〜25重量%であり、0.5重量%以下の場合にはパルプ繊維の解繊作業性、施工性、剥離性に悪影響を及ぼしやすく、40重量%を越える場合には表面に残存し、耐水性、耐汚染性(水に弱いため)が低下する。
【0011】
シリカとしては、従来より鱗片状シリカ、粉末状のシリカ、球状のコロイダルシリカが知られているが、上記粉末状のシリカは細かく分散させても再疑集するために分散性の面において問題があり、また、球状のコロイダルシリカはその性状からして配合する他の成分の影響を受けて液の分散安定性が悪く、鱗片状シリカに比べて改質効果が劣るものである。
このため、本願発明は、パルプ繊維との水素結合力を利用し、表面にシラノ−ル基を有する分散タイプの鱗片状シリカを使用する
本発明のシラノ−ル基を有するシリカ水分散液中のシリカとしては、分散安定性に優れ
、自己造膜性、配向性、隠蔽性などの特性に優れ、しかも、表面に化学修飾が可能な反応性の高いシラノ−ル基を有する低結晶性の鱗片状シリカを好適に使用する。そして、上記鱗片状シリカは、粉末X線回析分析法により測定した結晶型遊離珪酸の測定値が10%未満、好ましくは5%未満と極めて僅かな低結晶性の鱗片板状を呈し、その厚さが0.005〜0.5μm、好ましくは0.02〜0.3μmであり、厚さに対する鱗片板状の最長長さの比(アスペクト比)が少くとも10、好ましくは30以上、厚さに対する鱗片状板の最小長さの比が3以上、好ましくは10以上であり、また、IRスペクトルの3600〜3700、3400〜3500cm-1にはそれぞれ一つの吸収帯をもつ反応性の高いシラノ−ル基を有している。なお、かかる鱗片状シリカは、特開平11−29317号公報や特開2001−163613号公報に記載されているように、珪酸アルカリ水溶液を脱アルカリして得られるシリカゾルを出発物質とし、これをオ−トクレ−ブなどの加熱圧力容器中で加熱して水熱処理を行なうことにより生成せしめるとよい。また、シリカの分散媒としては、水;メタノ−ル、エタノ−ル、イソプロパノ−ル、n−ブタノ−ル、2−メチルプロパノ−ル、エチレングリコ−ルなどの低級アルコ−ル類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類;ジメチルアセトアミド、トルエン、キシレンアセトンなどを用いるとよい。
上記のシラノ−ル基を有する鱗片状シリカは、その鱗片形状とシラノ−ル基により擬疑集を生じやすいものであるが、シリカのシラノ−ル基と水性樹脂のアミドカルボニル基とを水素結合せしめて両者を相溶化せしめ、分散シリカ粒子を安定化せしめることが出来るものであって、これによりパルプ繊維表面への水素結合力を安定的に発揮せしめることが出来る。このように、シリカの水分散液を安定化せしめることは、混合性、安定性の点からも非常に好ましい。上述のように、液状の下においては、パルプ繊維、シラノ−ル基を有するシリカ、及びアミドカルボニル基を有する水性樹脂により安定した状態にあるが、塗工せしめたさいには水分の乾燥と下地への水の浸透と共に、水性樹脂が水と共に移行し
、パルプ繊維−シリカが互いに関係してくるものと考えられる。そして、シラノ−ル基を有する鱗片状シリカによりパルプを覆って改質し強度をアップせしめる。
さらに、塗工材におけるこれらシリカの量はパルプ繊維に対して2〜30重量部以下、好ましくは2〜20重量部である。かかる無機シリカの量が2重量部未満の場合には改質効果が得られにくく、30重量部を越える場合にはコスト的な面と、無機シリカによる白化で透明性の低下、パルプの造膜性の低下を来す(表面強度の低下)。
なお、上記無機シリカとしては、旭硝子株式会社製「サンラブリ−LFS(登録商標)
」を好適に用いることが出来る。
【0012】
通常のイソシアネ−トは水系での反応性が強く、殆んど直ちに水と反応するため、本発明におけるイソシアネ−トとしては、ポリイソシアネ−ト化合物を用い、脂肪族又は脂環式ジイソシアネ−トの無黄変タイプのものが好ましい。これらの一例としては、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネ−ト、リジンジイソシアネ−ト、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアネ−ト)、水添キシリレンジイソシアネ−ト、ジシクロヘキシルジイソシアネ−トなどを挙げることが出来る。これらの中でも、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト
、イソホロンジイソシアネ−ト、水添キシリレンジイソシアネ−トが特に好ましい。そして、かかるイソシアネ−ト化合物は親油性ソルベント、あるいは可塑剤に溶解して用いるとよく、これにより油滴中へ、又はポリマ−中にイソシアネ−ト化合物が入り、水との接触を極力さけ、かつポリマ−の被膜化および溶剤の揮発・拡散によりイソシアネ−ト成分が顕現し、混和後のポットライフが得られると共に、穏やかに皮膜中で反応することにより応力の緩和を図ることが出来る。上記相溶性ソルベントとしては、ウレタン樹脂可塑性やアクリル系樹脂の造膜剤、可塑剤などを挙げることが出来る。また、市販されている可塑剤としては、大八化学工業株式会社製の「TOP・CLP・TEP(登録商標)」を挙げることが出来る。そして、これらの組成物におけるポリイソシアネ−ト化合物の量は、パルプ繊維に対して5.0重量部以下、好ましくは0.2〜3.0重量部である。かかるポリイソシアネ−ト化合物の量が0.2重量部未満の場合には改質効果が低く、5.0重量部を越える場合にはコスト高となるのみならず、全ての架橋基を反応させる必要もないために要求される被膜性能に合せて加えるとよい。
なお、上記ポリイソシアネ−ト化合物としては、市販の日華化学株式会社製の「NKアシスト(登録商標)X−0054」を一例として挙げることが出来る。
【0013】
その他、本発明の塗工材は、必要に応じて顔料、染料、他樹脂系のエマルジョン・サスペンジョン・ディスバ−ジョン・水溶液、固形分や粘度調整のための水、表面張力調整のための乳化剤や造膜剤のような有機溶剤、ブロッキング防止剤、分散安定剤、揺変剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、界面活性剤、フィラ−、触媒、滑剤、防腐剤
、帯電防止剤、レベリング剤、抗菌剤、防かび剤等の添加剤などを配合せしめるとよい。
なお、上記バインダ−としての樹脂、例えばエマルジョンなどは出来うる限り少なくするとよい。これは、これらの樹脂を配合せしめることにより皮膜性能のアップが顕著である反面、外観、風合いの塗料化、素地への密着力が強くなり、再剥離性が大きく低下する等の不都合を生起せしめるためである。但し、補強材として使用する場合には、配合せしめるのが好ましく、また、皮膜形成後に上から塗付する方法も好ましい。
【0014】
なお、本発明は、壁面や天井面などに直接塗付して室内装飾せしめる壁紙のみならず、補強材、例えば、建築用下地材として、合板、石膏板、珪酸カルシウム板、発砲スチロ−ル板、ストレ−ト等のサイジング板の目地にシ−ルした後、本発明に係る塗工材を塗工し
、この上から水性樹脂、セメントフィラ−塗装材を含浸塗工させることにより耐水性や強度をアップせしめ、補強材としても使用することが出来るものである。
【実施例】
【0015】
以下に、本発明の一実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0016】
実施例1〜5、比較例1
パルプ繊維板紙の小片を表1に示す配合割合に基づいて添加し、パルプ繊維の解繊性を経時的に観察した。その結果を表1に併せて示す。なお、表1中、○は完全解繊を示す。
【0017】
表1から明らかな通り、アミドカルボニル基を有する水性樹脂(ポリビニルピロリドンK−30・K−90)を添加してパルプ繊維を解繊せしめた場合には、比較例1に比して短時間で完全に解繊せしめることが出来る。
【0018】
実施例6〜17、比較例2〜7
表2に示す配合割合に基づいて配合し、塗工材を調製せしめた。これを石膏板上に吹付け塗装及びロ−ラ−塗りを行い、そのスプレ−性、ロ−ラ−性について調べ、下記の基準により評価し、その結果を表2に合わせて示す。
○:良好
×:不良
【0019】
上記実施例6〜17、比較例2〜7により得られた塗工材を表面紙付き内装用石膏板上にロ−ラ−塗装を2回行い、20℃下に10時間乾燥せしめて試料を生成し、以下の試験を行なった。
【0020】
耐汚染性試験
カ−ボンブラックを0.2%加えた水に試料を浸漬し、強く絞ったガ−ゼでもって軽く表面を10回拭き、その外観を観察して下記の基準により評価し、その結果を表2に併せて示す。
◎:汚染なし
○:ほぼ汚染なし
△:若干汚染あり
×:汚染あり
【0021】
表面強度試験
試料の皮膜端部を石膏板に対して90度の角度をもってゆっくりと引剥し、皮膜の剥離状況を観察した。そして、以下の基準により評価し、その結果を表2に併せて示す。
◎:石膏板の表面紙を完全に残して剥離
○:石膏板の表面紙を若干付着せしめつつ剥離
△:石膏板の表面紙のかなりの部分を付着せしめつつ剥離
×:石膏板の表面紙を全部付着して剥離
【0022】
皮膜外観
試料の皮膜表面の外観状況を目視し、以下の基準により評価し、その結果を表2に併せて示す。
◎:パルプ塗工層に全く異常が認められない
○:パルプ塗工層に殆んど異常が認められない
△:パルプ塗工層に若干異常が認められる
×:パルプ塗工層が部分的に破損している
【0023】
表2から明らかな通り、本発明に係る実施例7〜17は、比較例2〜7に比して、塗装性、耐汚染性、表面強度、剥離性、皮膜外観性の点において優れた効果を奏することが理解出来る。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ繊維水分散液と、アミドカルボニル基を有する水性樹脂と、シラノ−ル基を有するシリカ水分散液とよりなることを特徴とする、塗工材。
【請求項2】
アミドカルボニル基を有する水性樹脂がN−オキサゾリン系、N−ビニルピロリドン系
、及びN,N−ジメチルアクリルアミド系の水性樹脂であることを特徴とする、請求項1記載の塗工材。
【請求項3】
シラノ−ル基を有するシリカ水分散液中のシリカ成分が鱗片状シリカであることを特徴徒する、請求項1及び請求項2記載の塗工材。
【請求項4】
ポリイソシアネ−トを配合せしめたことを特徴とする、請求項1〜3記載の塗工材。

【公開番号】特開2007−23226(P2007−23226A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210756(P2005−210756)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(596116879)株式会社フッコ− (1)
【出願人】(503045887)有限会社情報ネットワ−クゆうゆ (1)
【出願人】(505276177)
【Fターム(参考)】