説明

塗工装置

【課題】比較的ロール径が小さくかつ軸方向長さの塗工ロールと、該塗工ロールに対して当接作用するドクターブレードを備える塗工装置において、塗工ロールのベンドによる変位を殆ど生じさせないようにして均一かつ良好な塗工が行える塗工装置を提供する。
【解決手段】塗工液2を収容する液槽1と、塗工液2に一部が浸漬するように配置され、外周面に付着させた塗工液2を上部側に接して走行するウェブ5に対し塗膜2aを形成する塗工ロール3と、塗工ロール3の外周面に対し当第1の接作用するドクターブレード7とを備え、塗工ロール3の軸心より下方側で上方向きに当接作用するドクターブレード8を含む複数段のドクターブレード7,8を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周面に付着する塗工液量を調整するためのドクターブレードを備える塗工ロール式の塗工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、グラビア印刷等に使用する塗工装置として、外周面に付着する塗工液量を調整するためのドクターブレードを備える塗工ロールを用い、塗工液への浸漬により外周面に付着した塗工液量をドクターブレードにより調整した後、該ロールと逆方向に走行するウェブの面に転移塗布して塗膜を形成する塗工ロール式の塗工装置が知られている。
【0003】
かかる塗工装置の塗工ロールとしては、塗工対象のウェブの種類や目的に応じて異なるが、ロール幅詰まり軸方向長さが2m以上にもなり、かつロール径が100mmまでの比較的径小のロールを使用する場合もある。かかる塗工ロールは、比較的径小でかつ軸方向長さが長いこともあって、図4のように、両端部で軸支して支持した状態においては、ロール3自体の自重により中央部が下方側に変位し、所謂ベンドが生じることが避けられない。このベンドによる変位bは200ミクロンを超える場合があり、そのため、この塗工ロール3によってウェブの面に形成される塗膜の厚みが不均一になる等、塗工状態に影響を及ぼす虞がある。
【特許文献1】特開平5−96218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題を解決して、比較的ロール径が小さくかつ軸方向長さの長い塗工ロールと、該塗工ロールに対し当接作用するドクターブレードを備える塗工装置において、塗工ロールのベンドによる変位を殆ど生じさせないようにして均一かつ良好な塗工が行える塗工装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
塗工液を収容する液槽と、該液槽内の塗工液に一部が浸漬するように配置され、外周面に付着させた塗工液を上部側に摺接して走行するウェブに対し塗膜を形成する塗工ロールと、該塗工ロールの外周面に対し当接作用するドクターブレードとを備える塗工装置において、前記ドクターブレードとして、前記塗工ロールの軸心より下方側で上方向きに当接作用するドクターブレードを含んでなることを特徴とする。
【0006】
前記の塗工装置において、前記塗工ロールに対し当接作用するドクターブレードとして、該塗工ロール軸心より上方の位置で該塗工ロールの塗工液付着量を調整するために当接作用する第1のドクターブレードと、前記塗工ロールの軸心より下方側で上方向きに当接作用する第2のドクターブレードとが設けられてなるものとすることができる。
【0007】
前記の塗工装置において、前記塗工ロールの外周面に対し上方向きに当接作用するドクターブレードが、液槽内の塗工液中に浸漬して設けられてなるものとすることができる。
【0008】
前記の各塗工装置において、前記上方向きに当接作用するドクターブレードが塗工ロールの軸心に対して実質的に垂直方向に当接するように設けられてなるものとするのが好ましい。また、前記塗工ロールが、被塗工物のウェブの走行方向に対し逆方向に回転するものが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の塗工装置によれば、ロール径が100mm以下で、ロール幅つまりは軸方向長さが2m以上にもなる細長の塗工ロールであっても、前記上方向きのドクターブレードの当接作用による支え効果で、該塗工ロールの自重による変位つまりベンドの発生を抑制でき、ひいては、該塗工ロールによる塗膜の厚みを全体として均一化でき、良好な塗工を施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次ぎに本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0011】
図1は本発明の塗工装置の要部の概略説明図、図2は同要部の拡大断面図、図3は他の実施例を示す要部の断面図である。
【0012】
図において、符号1は例えばグラビア印刷用の印刷インキ等の塗工液2を収容する液槽、符号3は前記液槽1内の塗工液2に下部側部分が浸漬して回転するアプリケータロールとしての塗工ロールであり、該塗工ロール3の回転により前記塗工液2を外周面に付着させて上部側に給送するように設けられている。この塗工ロール3は、ステンレス、鉄等の金属製のロールであり、被塗工物である後述するウェブの種類や幅によっても異なるが、主としてロール径が100mm以下、ロール幅つまり軸方向長さが2m以上の比較的細長のロール体からなる。この塗工ロール3は、ロール両端の軸部において軸受(図示せず)により支持されて、前記軸部より下方側のロール部分が塗工液2に浸漬して回転駆動可能に支持される。
【0013】
符号5は被塗工物である合成樹脂フィルムや紙或いは金属箔その他の基材としてのウェブであり、前記塗工ロール3と対をなすバックアップロールあるいはガイドロール6により前記塗工ロール3の上部側周面に摺接して前記塗工ロール3の回転方向とは逆方向に走行するように設けられており、前記塗工ロール3との摺接部分において、該塗工ロール3の回転により外周面に付着して給送される塗工液2が該ウェブ5の摺接側の表面(下面)に塗布され塗膜2aが形成されるようになっている。
【0014】
前記塗工ロール3における前記塗工液2の付着面側の部分には、前記ウェブ5の摺接部分に至るまでの間に、該ロール外周面に対し当接作用することで余分な塗工液2を掻き落とすようにして塗工液2の付着量や付着位置を制限し調整する金属製の第1のドクターブレード7が設けられており、これにより、前記ウェブ5における塗膜2aの形成位置や膜厚等を調整し設定できるようになっている。
【0015】
本発明の場合には、通常の働きをする前記第1のドクターブレード7とは別に、前記塗工ロール3の軸心より下方側において斜め上方を含む上方に向かって当接作用する金属製の第2のドクターブレード8が配されており、全体として複数段のドクターブレードを備えている。前記第2のドクターブレード8は、通常のドクターブレードの場合と同様に、塗工ロール3の塗工液付着側の外周面に対し上方向きに当接作用することで、ロール外周面に付着する塗工液2の掻き落とし作用を行うとともに、前記塗工ロール3の自重による軸方向中央部の撓み変形つまりベンドを抑制する役目を果たすように設けられている。
【0016】
前記第2のドクターブレード8は、塗工ロール3の軸心より下方側の位置であればよいが、実施上は、塗工ロール3のベンド抑制のための支えの効果の点から、ロール外周面における下半部のうち、前記軸心を含む水平面の位置から30°以上下方の位置に当接作用するように設けておくのが望ましい。また、前記第2のドクターブレード8は、図2のように塗工液2の液面より上方で塗工ロール3の塗工液付着側に対し当接作用させるように設けるほか、図3のように、前記液槽1内の塗工液2中で塗工ロール3に対し上方向きに当接作用するように設けることもできる。
【0017】
なお、前記第2のドクターブレード8を、前記塗工ロール3の外周面における塗工液の非付着側に当接作用させるように設けるのは、ドクターブレードとしての塗工液の掻き落とし作用を果たさないことになる上、刃物鋼等の金属製のドクターブレードと前記塗工ロールとが塗工液を介さずに金属同士の接触になり、塗工ロール3が損傷する等の問題が生じるので、好ましいものではない。
【0018】
さらに、図示していないが、前記第1のドクターブレード7と前記第2のドクターブレード8とは、いずれか一方もしくは双方を複数並設して実施することもできる。また、前記塗工ロール3の軸心より下方側に設ける1もしくは複数の第2のドクターブレード8が、前記第1のドクターブレードを兼ねる構成とすることもできる。
【0019】
前記いずれの場合にも、前記第8のドクターブレード8については、前記塗工ロール3の軸心に対して実質的に垂直方向(軸心に対し若干ずれた方向を含む)に当接作用するように設けておくのが、前記塗工ロール3のベンド抑制の効果の点から特に好ましい。
【0020】
上記した実施例の塗工装置によれば、被塗工物である合成樹脂フィルムや紙その他の基材としてのウェブ5を前記塗工ロール3の上部に摺接させて走行させ、同時に液槽1内の塗工液2に下部を浸漬させた前記塗工ロール3を回転させて塗工を行う。すなわち、前記塗工ロール3の回転により、前記塗工液2が該ロール外周面に付着して持ち上げられて、前記ウェブ5が摺接走行している上部側に給送されるが、この際、前記塗工ロール3の外周面の、特に前記塗工液2の付着側部分に当接作用している前記第2のドクターブレード8及び第1のドクターブレード7による掻き落とし作用で、ロール外周面に付着している塗工液2の余分を掻き落とし、必要量の塗工液2を前記ウェブ5が摺接走行している部分に給送し、該塗工ロール3に摺接走行しているウェブ5に塗工液2を転移させ塗膜2aを形成する。
【0021】
そして、本発明の塗工装置においては、前記塗工ロール3の軸心より下方側で上方向きに当接作用するドクターブレード、すなわち前記第2のドクターブレード8を備えているので、該ドクターブレード8による支えの効果により、両端部で軸支されている前記塗工ロール3が自重で下方に撓み変形するベンドを抑制でき、ベンドの変位がきわめて小さいものになり、均一な膜厚の塗膜を形成できる。
【0022】
例えば、ロール径62mm、軸方向長さが1500mmの塗工ロール3を両端部で軸支した場合、従来の塗工装置では、該塗工ロール自体の自重で中央部で250ミクロンものベンドによる変位が生じたが、塗工ロール3に対し上方向きに当接作用する第2のドクターブレード8を備えている本発明の場合は、前記ベンドの変位量は10ミクロン以下になり、殆どベントが生じないものとなった。特に、前記の効果は、第2のドクターブレード8が塗工ロール3の下方側に配されている場合ほど顕著なものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の塗工装置は、例えばグラビア印刷用の塗工装置に限らず、他のドクターブレードを備える塗工装置、特には、ロール径が100mm以下、ロール幅つまり軸方向長さが2m以上の保持長さの塗工ロールを用いる場合に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の塗工装置の要部の概略説明図である。
【図2】同要部の拡大断面図である。
【図3】本発明の他の実施例を示す要部の断面図である。
【図4】塗工ロールのベント現象の説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1…液槽、2…塗工液、2a…塗膜、3…塗工ロール、5…ウェブ、6…ガイドロール、7…第1のドクターブレード、8…第2のドクターブレード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗工液を収容する液槽と、該液槽内の塗工液に一部が浸漬するように配置され、外周面に付着させた塗工液を上部側に摺接して走行するウェブに対し塗膜を形成する塗工ロールと、該塗工ロールの外周面に対し当接作用するドクターブレードとを備える塗工装置において、前記ドクターブレードとして、前記塗工ロールの軸心より下方側で上方向きに当接作用するドクターブレードを含んでなることを特徴とする塗工装置。
【請求項2】
前記塗工ロールに対し当接作用するドクターブレードとして、該塗工ロール軸心より上方の位置で該塗工ロールの塗工液付着量を調整するために当接作用する第1のドクターブレードと、前記塗工ロールの軸心より下方側で上方向きに当接作用する第2のドクターブレードとが設けられてなる請求項1に記載の塗工装置。
【請求項3】
前記塗工ロールの外周面に対し上方向きに当接作用するドクターブレードが、液槽内の塗工液中に浸漬して設けられてなる請求項1又は2に記載の塗工装置。
【請求項4】
前記上方向きに当接作用するドクターブレードが塗工ロールの軸心に対して実質的に垂直方向に当接するように設けられてなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗工装置。
【請求項5】
前記塗工ロールが、被塗工物のウェブの走行方向に対し逆方向に回転するものよりなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−22938(P2010−22938A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187532(P2008−187532)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000240341)株式会社ヒラノテクシード (58)
【Fターム(参考)】