説明

塗工装置

【課題】ウエブに塗工液を塗工する前に、皺の発生を防止できる塗工装置を提供する。
【解決手段】ダイ12と、ダイ12の搬入側(上流側)に配された拡布装置14とを有し、拡布装置14は、ウエブWを支持するバックアップロール16と、バックアップロール16の上面に配され、ウエブWの両耳部にそれぞれ配され、回転方向がウエブWの走行方向に対し、下流側ほど外側に向いている左右一対の拡布ロール18,18とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状のウエブに塗工液を塗工する塗工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、搬送中のウエブに発生する皺を伸ばすために、乾燥装置の入口及びその乾燥機内に、皺を伸ばす装置が配されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、塗工液を塗工した後のウエブを安定して搬送させるために、搬送するウエブに弛みが生じないように付与する手段が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−098186号公報
【特許文献2】特開2008−284528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、乾燥機内部や塗工後においてウエブの皺の発生を防止したとしても、塗工前に既にウエブに皺が発生していると、皺状のウエブに塗工液が塗工されることとなり、目的の塗工厚で塗工できなかったり、不良製品になったりするという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、ウエブに塗工液を塗工する前に、皺の発生を防止できる塗工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上流から下流へ走行する長尺状のウエブの少なくとも一方の面に、塗工液を塗工する塗工手段と、前記塗工手段の上流側に配された拡布手段と、を有し、前記拡布手段は、前記ウエブの搬送路に配され、前記ウエブを支持するバックアップロールと、前記バックアップロールと前記ウエブを挟むように配され、かつ、前記ウエブの両耳部にそれぞれ配され、回転方向が前記ウエブの走行方向に対し下流側ほど外側に向いて傾斜している左右一対の拡布ロールと、を有することを特徴とする塗工装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、拡布手段によりウエブを幅方向に拡布して、皺の発生を防止した後に塗工液を塗工できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態1の塗工装置の側面図である。
【図2】同じくの塗工装置の平面図である。
【図3】実施形態2の塗工装置の側面図である。
【図4】実施形態3の塗工装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態の塗工装置10について図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
以下、本発明の実施形態1の塗工装置10について図1及び図2に基づいて説明する。
【0011】
(1)塗工装置10の構造
図1に示すように、本実施形態の塗工装置10は、水平に上流から下流へ搬送されるウエブWの搬送路上の下方に塗工液を塗工するためのダイ12が配置され、このダイ12のウエブWの搬入側(上流側)において拡布装置14が配されている。ウエブWとしては、フィルム、金属箔、紙、布帛などであり、例えば2〜70m/分で走行される。
【0012】
ダイ12は、水平に搬送されるウエブWの下面に塗工液を吐出するものであり、このダイ12によって一定の塗工厚で塗工液が塗工される。
【0013】
拡布装置14は、搬送路の下方に配されたバックアップロール16と、搬送路の上方に配された左右一対の拡布ロール18,18とよりなる。
【0014】
バックアップロール16は、例えば、鉄などの金属製のロールであって、ウエブWの走行と共に回転する。
【0015】
拡布ロール18は、図2に示すように、ウエブWの両耳部にそれぞれ左右一対設けられ、ウエブWの走行に追随して回転する。拡布ロール18の回転方向Bは、ウエブWの走行方向Aに対しθ°それぞれ外方に傾斜している。すなわち、左右一対の拡布ロール18,18は、走行方向の下流側ほど外側にそれぞれ配置されて回転する。θ°としては、0°<θ<=20°である。なお、回転方向Bとは、ウエブWと拡布ロール18とが接触している部分の方向である。拡布ロール18の材質は、ゴム製又は合成樹脂製であり、幅は8〜10mmである。拡布ロール18は、図1に示すように、支持枠20に回転自在に取り付けられている。支持枠20は回転手段である回転テーブル22によって、上記したθ°の回転を行なうことができる。また、回転テーブル22は、エアシリンダーよりなる押圧部24によって支持され、拡布ロール18をバックアップロール16の回転軸17の方向Cに一定の圧力(例えば4kg)で押圧する。これによって、走行するウエブWは拡布ロール18とバックアップロール16との間に挟まれた状態で拡布されて皺を伸ばされながら走行する。バックアップロール16と拡布ロール18とによって挟まれているウエブWの高さは、ダイ12の吐出口34の高さと同一の高さに設定しておく。これによって、拡布装置14によって皺が伸ばされたウエブWが、新たに皺が発生することなくダイ12の吐出口34に至る。
【0016】
回転テーブル22、押圧部24は保持部26によってそれぞれ支持され、この保持部26は、拡布装置14の本体28に回転自在に固定されている。これによって、拡布ロール18が不要な場合には待機位置に待機させることができる。
【0017】
(2)塗工装置10の動作状態
次に、塗工装置10の動作状態について説明する。
【0018】
ウエブWの搬送路の下面にバックアップロール16、ダイ12を配置する。そしてウエブWを走行させ、次に、本体28に対し保持部26を回転させて接近させ、拡布ロール18を待機位置からウエブWの上面に接触させる。
【0019】
ウエブWが走行すると、左右一対の拡布ロール18,18は追随して回転し、図2に示すように、ウエブWを両側に拡布するように作用する。これによって、ウエブWに発生している皺が伸ばされ、その状態でダイ12がウエブWの下面に塗工液を塗工する。
【0020】
(3)効果
本実施形態によれば、左右一対の拡布ロール18,18によって拡布され、皺が伸ばされたウエブWの下面に塗工液をダイ12が塗工するため、皺のない状態で精度のよい塗工が可能となる。
【0021】
また、回転テーブル22を回転させることにより、拡布ロール18の回転角θを調整できるため、ウエブWを幅方向にあまり引っ張り状態にならないように皺を伸ばすことができる。
【実施例2】
【0022】
次に、本発明の実施形態2の塗工装置10について図3に基づいて説明する。
【0023】
実施形態1の塗工装置10では、拡布装置14は1個だけであったが、本実施形態ではダイ12の搬入側(上流側)に連続して2個の拡布装置14を設けている。
【0024】
この場合に、ウエブWの搬送路は、水平に一直線でなく、上流側の搬送路は、上流側程下方に傾斜するように配されて上流側のバックアップロール16を通過し、この傾斜は下流側のバックアップロール16で水平方向となる。これによって、下流側の拡布装置14における拡布ロール18の部分と、上流側の拡布装置14における拡布ロール18の部分とのそれぞれにおいて、ウエブWの走行方向に張力が働くようになるため、それぞれの部分で皺を精度良く伸ばすことができる。
【実施例3】
【0025】
次に、本発明の実施形態3の塗工装置10について図4に基づいて説明する。
【0026】
本実施形態においても、実施形態2と同様に搬送路に沿って複数の拡布装置14が設けられている。それに加えて、左右一対の拡布ロール18,18の中央部分に、押圧ロール30を有している。この押圧ロール30は、1台目の拡布装置14においては、図4に示すように、平面から見て右側に傾斜して配され、2台目の拡布装置14では左側に傾斜して配され、3台目の拡布装置14では右側に傾いて配置されている。すなわち、走行方向に対し下流側ほど外側に向く場合と内側に向く場合とが交互になるように押圧ロール30が配されている。
【0027】
これによって、幅の広いウエブWであって、その中央部分で皺が発生して場合でも、その皺を伸ばすことができる。
【0028】
なお、本実施形態では中央の押圧ロール30を1個だけ設けたが、これに加えて複数個、所定間隔毎に配してもよい。
【0029】
また、押圧ロール30は、外側又は内側に傾斜せず、走行方向に沿って配置しても皺を伸ばすことができる。
【変更例】
【0030】
上記実施形態では、塗工装置10における塗工手段としてダイ12を設けたが、これに代えて他の塗工手段でもよく、例えば、回転する塗工ローラであってもよく、毛細管現象を利用した塗工ノズル、リップコータ型塗工装置であってもよい。
【0031】
また、上記実施形態では、ウエブWの下面にダイ12を配したが、これに限らず上面に塗工手段を配してもよく、さらに、上下面両側に塗工手段を配して両面同時塗工を行なってもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、ウエブWを水平方向に走行させたが、これに限らず垂直方向や傾斜した状態で走行させてもよい。
【0033】
また、上記実施形態では、ウエブWの片面に塗工する直前に拡布装置14を配置したが、これに限らず、ウエブWの下面に塗工した後に、この拡布装置14を上面に配置して、塗工後でもウエブWの皺を取り除くことができる。
【0034】
また、上記実施形態では、ウエブWの片面に塗工した場合について説明したが、これに限らず、ウエブWの両面塗工する場合に、その塗工直前に上記実施形態の拡布装置14を配置すれば、ウエブWの皺を取り除き両面塗工を行うことができる。
【0035】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
10・・・塗工装置、12・・・ダイ、14・・・拡布装置、16・・・バックアップロール、18・・・拡布ロール、20・・・支持枠、22・・・回転テーブル、24・・・押圧部、26・・・保持部、28・・・本体、30・・・押圧ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流から下流へ走行する長尺状のウエブの少なくとも一方の面に、塗工液を塗工する塗工手段と、
前記塗工手段の上流側に配された拡布手段と、
を有し、
前記拡布手段は、
前記ウエブの搬送路に配され、前記ウエブを支持するバックアップロールと、
前記バックアップロールと前記ウエブを挟むように配され、かつ、前記ウエブの両耳部にそれぞれ配され、回転方向が前記ウエブの走行方向に対し下流側ほど外側に向いて傾斜している左右一対の拡布ロールと、
を有することを特徴とする塗工装置。
【請求項2】
前記拡布手段が、前記搬送路に沿って前記塗工手段まで複数配されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の塗工装置。
【請求項3】
前記拡布手段は、前記拡布ロールに加えて、前記ウエブを押圧する押圧ロールを有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の塗工装置。
【請求項4】
前記拡布手段が、前記搬送路に沿って前記塗工手段まで複数配され、
前記各拡布手段は、前記拡布ロールに加えて、前記ウエブの中央部を押圧する押圧ロールをそれぞれ有し、
前記各押圧ロールは、前記走行方向に対し下流側ほど外側に向く場合と、内側に向く場合とが交互になるように配されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の塗工装置。
【請求項5】
前記拡布手段は、前記拡布ロールを回転自在に支持する支持枠と、
前記支持枠を前記走行方向に対し傾斜するように回転させる回転手段と、
前記拡布ロールを前記バックアップロールの回転軸方向に押圧する押圧手段と、
を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の塗工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−91560(P2013−91560A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235713(P2011−235713)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000240341)株式会社ヒラノテクシード (58)
【Fターム(参考)】