説明

塗布体およびそれを用いた塗布容器

【課題】
光触媒微粒子を含んだ液剤の塗付性が良好な、塗布体および塗布容器を提供する。
【解決手段】
光触媒の微粒子とバインダー成分と触媒および溶媒とを含むガラス用親水性コーティング溶液を塗布する塗布体であって、フェルトと前記フェルト表面を被覆した不織布とからなる塗布体または吸水性を有する繊維を含む塗布体、および、前記塗布体と、一つの開口部を有する容器本体と、前記開口部に接続され前記塗布体を保持するホルダと、からなるガラス用親水性コーティング溶液塗布容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガラスなどの基材に、親水性コーティング溶液を塗布する塗布体および塗布容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車の窓ガラスに塗布し、雨の中で視界を確保するための親水剤が用いられており、その親水性を向上させるために特開2001−89706(特許文献1)で開示されたように、光触媒による親水機能を持つ酸化チタンなどの微粒子が配合されるようになってきている。
【0003】
従来の発明では、産業用途として、光触媒微粒子を含んだ液体を基材に塗布し加熱乾燥する方法が主であり、一般の使用者が常温下で容易に塗布しようとした場合、特開2001−29795(特許文献2)に示すようにエアゾールを用いて均一に吹きかけるか、特開2001−89706(特許文献3)に示すように不織布に含浸させて塗布する方法が出願されている。
【0004】
しかしながら、エアゾールの方法では、周囲への飛散による白化や周囲の基材の劣化が問題となり、不織布に含浸させた場合は一方向へ均一に塗布することが必要であり、乱雑に塗布すれば白化や性能劣化を招くという問題が生じていた。
【0005】
車のガラスへは、撥水剤も頻繁に利用されているが、その一般的な塗布方法としては、実開平6−85258公報(特許文献4)で開示されたものがあり、光触媒微粒子を含んだ液体についても、こういった液体容器にフェルトを一体化させた容器を使用しての塗布が、作業上好ましいと考えられた。
【0006】
【特許文献1】特開2001−89706号公報
【特許文献2】特開2001−29795号公報
【特許文献3】特開2001−89706号公報
【特許文献4】実開平6−85258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来の塗布容器を用いて光触媒微粒子を含んだ液体をガラスなどの基材に塗布しようとすると、流出孔から流出した液体をフェルトで塗り広げる際に、一旦容器から吐出されて基材に付着した光触媒微粒子を、フェルト表面の繊維がかきとってしまう場合がある。
【0008】
また上述の従来の塗布容器に用いられるフェルトを構成する繊維は、ポリエステルなどの化学繊維が一般的であるが、これらの繊維は吸水性に乏しい。そのため、フェルト表面近傍は光触媒微粒子を含んだ液体が少なく、いったん粒子がかきとられると再度付着することは容易でない。そのため、光触媒微粒子を含んだ液体を塗り広げる作業を行っても、部分的に光触媒微粒子が付着していない箇所が発生し、結果として光触媒による親水性能が十分に発揮されない場合がある。
【0009】
本発明は、上述した従来のフェルトの問題を解決するものであり、金属酸化物等の微粒子を含むコーティング溶液使用時の塗布性が良好な塗布体およびに塗布容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明においては、フェルトなど液の保持性がよい塗布体の表面すなわち被塗布物に接する面を、天然系繊維の不織布で被覆した。
【0011】
また本発明においては、塗布体のフェルトを構成する成分の一つに吸水性を有する繊維を用いた。
【0012】
この塗布容器は、外蓋を外し液体容器を押すと、内容液が内キャップの貫通孔を通過しホルダの流出孔を通って、塗布体の中心に開けた貫通孔の内側から流出する。
【0013】
使用者が流出した液体を塗布体で塗り延ばすように広げていくと、流出した液体の一部は基材に付着し、残りは塗布体の内部に保持され徐々に表面側へ浸透していく。これを繰り返すことで基材への塗布が完了し、溶剤が揮発していくことで液剤の製膜が始まる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の塗布体は、光触媒など微粒子を含んだ親水性コーティング液の塗布に関し、従来の微粒子のない溶液と同様に容易に作業することができ、しかも粒子の基材への付着量を確保できるため、安定した機能性を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明における一つの実施の形態を図1によって説明する。塗布体は貫通孔1−1aを持つ塗布体本体1−1の表面に不織布2が接合されている。塗布体本体1は液の保持性が高く適当な硬さを有することが必要なため、フェルトあるいは硬質のスポンジから作製される。ここでいうフェルトとは、羊毛や化学繊維などを絡み合わせて成形したものを総じて示している。不織布2はコットンあるいは再生セルロースなど天然系繊維の不織布が好適で、ニードルプレスや、熱可塑性樹脂を用いた熱溶着、接着剤、両面テープで塗布体本体1と接合している。
【0016】
天然系繊維の不織布は、ポリエステルなどの一般的な化学繊維と比べ繊維そのものが吸水性に優れるため塗布体表面近傍においてコーティング溶液の保持性が高まる。さらには、天然系不織布の繊維は一般的な化学繊維と比べ柔らかいため、本発明の塗布体を用いることによりかきとり性が低下し、かきとられた場合でも、塗布体表面の不織布がコーティング液に富んでいるため再付着しやすい。
【0017】
なお塗布体本体1に軟質のスポンジなどを用いると、押圧した際に液が大量に放出されてしまい塗布が均一にできず、また表面に化繊系の不織布を用いると、繊維が鋭利なため微粒子をかきとりやすく性能上好ましくない。
【0018】
本発明における別の実施の形態を図2によって説明する。塗布体は貫通孔2−1aを持つ塗布体本体2−1は、構成成分として吸水性を有する繊維を含んでいる。吸水性を有する繊維がコーティング溶液を吸収することによって、繊維が膨潤し柔らかくなることから、本発明の塗布体を用いることによりかきとり性が低下し、かきとられた場合でも、塗布体表面近傍に存在する吸水性を有する繊維がコーティング溶液の吸収し、塗布体表面近傍がコーティング液に富んでいるため再付着しやすくなる。
【0019】
本発明に用いる吸水性を有する繊維は、吸水性が高く柔らかいことが望ましいため、吸水性高分子繊維、コットン、再生セルロース繊維があげられる。
【0020】
本発明の塗布体を用いた塗布容器の一例を図3によって説明する。この発明の塗布容器は可撓性で押圧可能なプラスチック製の容器本体3−5と、貫通孔3−4aをもつプラスチック製の内キャップ3−4と、塗布体3−2と、上方に塗布体3−2を保持可能なプラスチック製のホルダ3−3と、封止栓3−1aをもつプラスチック製の外キャップ3−1とから構成され、容器本体3−5の開口部に内キャップ3−4を挿着し、その上からホルダ3−3および塗布体3−2を嵌着し、さらに、その上から外キャップ3−1を冠着したものである。
【0021】
そして、容器本体3−5は、有底筒状で、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂をブロー成形法などで成形したものであり、首部にホルダ3−3を嵌着するための嵌合ネジ部3−5aを設けてある。
【0022】
内キャップ3−4は、塗布容器を使用するときに、内容液が不用意に飛散することを防ぐために使用するものであり、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂を射出成形法などで成形するもので、周壁の外側3−4bおよびフランジ3−4cの下面で容器本体3−1と密接し、周壁の内側3−4bおよびフランジ3−4cの天面でホルダ3−3と密接する構造になっている。底面には液体の流出のための貫通孔3−4aが成形されている。
【0023】
ホルダ3−3は、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂を射出成形法などで成形するもので、上部外周に外キャップ3−1との嵌合ネジ部3−3a、天面には塗布体3−2を保持する複数の突起3−3bを、下方には容器本体3−5との嵌合ネジ部3−3cと内キャップ3−4との密接用の周壁を設けるものであり、また中央に容器本体3−5と通ずる流出孔3−3dが開けられている。
【0024】
外キャップ3−1はポリプロピレン、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂を射出成形法などで成形するもので、外周内面にホルダ3−3との嵌合ネジ部3−1b、天面内側にはホルダ3−3との勘合時にホルダの流出孔3−3dを密閉する突起3−1aを設けている。
【0025】
塗布体3−2はホルダの突起部3−3bに嵌込保持され、非使用時は外キャップ3−1をホルダ3−3に冠着し、同時に外キャップ3−1の突起3−1aが流出孔3−3dを密閉する。
【0026】
次に本発明によって得られた効果を実施例にてさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
ポリエステルを主成分とした市販のフェルトに、不織布(旭化成製ベンリーゼTS100)をニードルプレスで張り付け、直径50mm厚さ7mmの円盤状に切り抜いて塗布体を作製した。石原産業製ST−K15光触媒コーティング剤を10倍希釈したものをコーティング溶液、塗布対象の基材を市販のソーダライムガラス板とし、図4に示した手順で塗布を行った。
【0028】
塗布後、ソーダライムガラス板にBLBライトを用いて0.5mW/cm2の紫外線を24hr以上照射し光触媒を十分に活性化させたのち、ソーダライムガラス板上に純水を噴霧し、光触媒超親水性が発現した幅を測定し、その結果を表1に示した。
【0029】
(実施例2)
フェルトを構成する成分として、吸水性高分子繊維10wt%、レーヨン50wt%を含むフェルトを、直径50mm厚さ7mmの円盤状に切り抜いて塗布体を作製し、実施例1と同様の条件で、ソーダライムガラス板上にコーティング溶液を塗布、紫外線照射を行い、光触媒超親水性が発現した幅を測定し、その結果を表1に示した。
【0030】
(比較例)
実施例1と同じ市販のフェルトを用いて、不織布を被覆せずにそのまま直径50mm厚さ7mmの円盤状に切り抜いて塗布体を作製した以外は、実施例1と同様の条件で、ソーダライムガラス板上にコーティング溶液を塗布、紫外線照射を行い、光触媒超親水性が発現した幅を測定し、その結果を表1に示した。
【0031】
【表1】

【0032】
表1に示した結果より、実施例1のように塗布体表面を不織布で被覆することによって、または実施例2のようにフェルトの構成成分として吸水性を有する繊維を用いることによって、紫外線照射によって光触媒超親水性が発現した幅が、塗布体で塗布した幅と同一になった。本発明によって得られた塗布体が、かきとり性が少なく光触媒微粒子の塗布性が良好であることがわかった。一方比較例のように市販のフェルトを塗布体として用いた場合、紫外線照射によって光触媒超親水性が発現した幅が塗布体で塗布した幅より小さくなっている。また液量を増やしても同様な結果になっていることから、塗布した光触媒微粒子をフェルト表面の繊維がかきとってしまい、部分的に光触媒微粒子が付着していない箇所が発生し、塗布体としては不十分な性能であることがわかった。
【0033】
実施例2に用いたフェルトにおいては、吸水性高分子繊維、レーヨン以外の構成成分にポリエステル、アクリルのいずれを用いても同様の良好な結果が得られた。
【0034】
本明細書に記載した塗布体の形状ならびに容器は、一例を示したに過ぎず、それに制約されるものではない。また本実施例においては光触媒微粒子を例に効果を説明したが、シリカやアルミナなど親水性を呈する微粒子はもちろんのこと、機能性微粒子の塗布に最適な発明であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の請求項1に示される塗布体の断面図
【図2】本発明の請求項2に示される塗布体の断面図
【図3】本発明の容器上部の断面図
【図4】本発明実施例のコーティング手順を示した図
【符号の説明】
【0036】
1−1:塗布体本体
1−1a:貫通孔
1−2:不織布
2−1:塗布体本体
2−1a:貫通孔
3−1:外キャップ
3−2:塗布体
3−3:ホルダ
3−4:内キャップ
3−5:容器本体
3−1a:突起
3−1b:勘合ネジ部
3−2a:貫通孔
3−3a:勘合ネジ部
3−3b:突起
3−3c:勘合ネジ部
3−3d:流出孔
3−4a:貫通孔
3−4b:周壁
3−4c:フランジ
3−5a:勘合ネジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス用の光触媒コーティング液を塗布する塗布体であって、前記塗布体はフェルトと、前記フェルト表面を被覆した不織布と、からなり、前記不織布はコットンまたは再生セルロースを含んでなることを特徴とする塗布体。
【請求項2】
前記フェルト表面に前記不織布を接合してなる、請求項1に記載の塗布体。
【請求項3】
前記光触媒コーティング液が、光触媒の微粒子と、バインダー成分と、触媒および溶媒と、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の塗布体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗布体と、一つの開口部を有する容器本体と、前記開口部に接続され前記塗布体を保持するホルダと、からなることを特徴とするガラス用の親水性コーティング溶液塗布容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−168294(P2008−168294A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25872(P2008−25872)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【分割の表示】特願2002−57105(P2002−57105)の分割
【原出願日】平成14年3月4日(2002.3.4)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】