説明

塗布具

【課題】 薬液等の塗布を手を汚すことなく簡単にかつ衛生的に行うことができ、漏れや乾燥等によって使用不可能となることがない塗布具を提供することである。
【解決手段】
軸体12の端部に塗布液含浸部13を設けた塗布液含浸綿棒20と、前記塗布液含浸部13を収容する凹部21、およびこの凹部21から連続し塗布液含浸部13に隣接する軸体12を収容する溝部23が形成されたカップ部材14と、このカップ部材14の開口面上に配置して凹部21内を密封する被覆フィルム15とを備え、前記軸体12が収容された溝部23の少なくとも一部に前記凹部21内を密封するためのシール材が充填されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消毒、殺菌、治療といった医療用、化粧用、機械部品または電子部品の清掃用等の種々の薬液を塗布するための塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、軸体の一端に脱脂綿を巻き付け、これに消毒剤等の薬液を含浸させて、外傷部や咽喉などの患部に塗布することが行われている。しかし、脱脂綿の巻き付けや、これに上記のような薬液を含浸させる作業は煩雑であるため、事前に軸体の一端に脱脂綿等の繊維集合体を取り付け、これに薬液を含浸させたものを非通気性フィルムにて一本ずつ密封包装することが提案されている。この塗布具を使用すると、包装を解いて、軸体を指でつまんで、そのまま患部に薬液を塗布することができる。
【0003】
しかし、このような塗布具は、製造後の保管や輸送中に外部から圧力が加わったり、温度変化等により、繊維集合体から薬液が染み出しやすいという問題がある。このため、染み出した薬液が軸体の表面に付着し、軸体を取り出す際に手を汚すおそれがあった。
このような問題を解決するために、塗布液含浸部のみを密封包装することが提案されている(例えば、下記特許文献1,2参照)。
【0004】
しかし、これら従来の密封方法では、包装体から突出している軸体の周囲を完全にシールすることが難しく、塗布液含浸部のみの包装では気密性を長期間にわたって維持するのは困難であった。気密性が維持できないと、軸体を伝って薬液が外部に漏れだすおそれがあり、また、薬液が蒸発して塗布液含浸部が乾燥してしまう結果、塗布具として使用不可能となることもある。さらに、医療用など滅菌性等が重要視される用途では、包装体を開封して塗布液含浸部を取り出すときに、この塗布液含浸部が包装体の表面や端部などに接触して汚染されないことが求められる。しかし、前述した従来の密封方法では、包装体から塗布液含浸部を取り出す際に包装体の表面等に接触することが少なからずあった。
【0005】
【特許文献1】特開平11−47191号公報
【特許文献2】特開2000−237235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の課題は、薬液等の塗布を手を汚すことなく簡単にかつ衛生的に行うことができ、漏れや乾燥等によって使用不可能となることがない塗布具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成からなる。すなわち、
(1)軸体の端部に塗布液含浸部を設けた塗布液含浸綿棒と、前記塗布液含浸部を収容する凹部、およびこの凹部から連続し塗布液含浸部に隣接する軸体を収容する溝部が形成されたカップ部材と、このカップ部材の開口面上に配置して凹部内を密封する被覆フィルムとを備え、前記軸体が収容された溝部の少なくとも一部に前記凹部内を密封するためのシール材が充填されている、ことを特徴とする塗布具。
(2)前記軸体には、この軸体の軸方向と直交する方向に突設する突起部が設けられ、前記溝部には、前記突起部を収容する突起収容部が設けられている前記(1)記載の塗布具。
(3)前記突起部は、突起収容部内に収容されたときにカップ部材の開口面より上面に突出しない形状である前記(2)の塗布具。
(4)前記シール材が前記突起収容部に充填されている前記(2)または前記(3)記載の塗布具。
(5)前記シール材が接着剤である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の塗布具。
(6)前記カップ部材の外にある前記軸体につまみ部が設けられている前記(1)〜(5)のいずれかに記載の塗布具。
(7)前記溝部は前記凹部からその外縁に向かって上向きに傾くように形成されている前記(1)〜(6)のいずれかに記載の塗布具。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被覆フィルムおよびシール材によって綿棒の塗布液含浸部を密封できるので、軸体を伝って薬液が外部に漏れだしたり、含浸された塗布液が蒸発して乾燥したりすることがなく、したがって、例えば長期間高温下で保管した場合であっても漏れや乾燥等によって使用不可能となることがない、という効果がある。また、綿棒の使用時には、カップ部材から被覆フィルムを剥離し、カップ部材から綿棒を取り出す、という2工程からなる簡単な操作によって、塗布液等により手を汚すことなく綿棒を取り出すことができ、しかも、塗布液含浸部が被覆フィルムの表面や端部に接触することなく綿棒を取り出すことができるので、塗布液含浸部が汚染されるのを防いで衛生的に使用することができる、という効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一実施形態にかかる塗布具を図1〜図3に基づいて説明する(以下、この図1〜図3に示す実施形態を「本実施形態」と称する)。図1は本発明にかかる塗布具の一実施形態を示す分解斜視図であり、図2はその側面図であり、図3は、図2のX−X線断面およびY−Y線断面を各々示した模式図である。
【0010】
塗布具11は、軸体12の端部に塗布液含浸部13を設けた塗布液含浸綿棒20と、前記塗布液含浸部13を収容するカップ部材14と、このカップ部材14を密封するための被覆フィルム15とからなる。
【0011】
カップ部材14には、塗布液含浸部13を収容する凹部21と、この凹部21から連続し塗布液含浸部13に隣接する軸体12を収容する溝部23とが形成されている。このようなカップ部材14は、通常、プラスチック素材を成形して作製することができるが、これに限定されるものではない。
【0012】
前記凹部21の形状は、塗布液含浸部13を完全に収容できるような形状であればよく、特に限定されるものではないが、本実施形態においては、図1に示すように、凹部21の開口部周囲に鍔部22を備えている。これにより、被覆フィルム15の接合面が大きくなって接合が容易になり、気密性の維持がより確実になる。
【0013】
前記溝部23は、軸体12を完全に収容することのできる形状であればよい。詳しくは、軸体12が収容されたときに軸体12がカップ部材14(溝部23)の開口面より上面に突出しないこと(好ましくは、軸体12が収容された状態においてカップ部材14(溝部23)の開口面と軸体12上面とが略同一面にあること)を実現しうる形状であればよい。
【0014】
本実施形態においては、前記軸体12には、この軸体12の軸方向と直交する方向に突設する突起部12aが設けられ、前記溝部23には、前記突起部12aを収容する突起収容部23aが設けられている。これにより、カップ部材14に対する綿棒20の位置決めを行なうことができ、例えば製造時にカップ部材14から綿棒20が抜け落ちたり、塗布液含浸部13が凹部21の内面に接触したりする等の不都合を回避することができる。突起部12aと突起収容部23aを設ける場合、前記突起部12aは、突起収容部23a内に収容されたときにカップ部材14の開口面より上面に突出しない形状であることが好ましい。より好ましくは、突起部12aを突起収容部23aに収容した状態で突起部12aの上面がカップ部材14の開口面と略同一面となるような形状であるのがよい。
【0015】
本実施形態においては、前記溝部23は、図2に示すように、前記凹部21からその外縁に向かって上向きに傾くように形成されている。これにより、塗布液含浸部13はカップ材14の凹部21に先をやや下向きにして収容されることになるので、開封して綿棒20を取り出すときに、この塗布液含浸部13がカップ部材14や被覆フィルム15の表面や端部などに接触しにくくなり、より確実に汚染を防止することができる。
【0016】
前記軸体12が収容された溝部23の少なくとも一部には、前記凹部21内を密封するためのシール材(不図示)が充填されている。このシール材により、カップ部材14から突出する軸体12の周囲は完全にシールされ、さらにカップ部材14の上部は被覆フィルム15で覆われるので、本発明においては凹部21内を確実に密封することが可能となるのである。つまり、従来のように、突出する棒状の軸体をシート状である熱融着性フィルム等で挟み熱融着させるようにした場合、軸体の周囲に僅かな隙間が生じることになるが、本発明のように軸体12を溝部23に収容し、かつ、前述のシール材によって、軸体12と溝部23の少なくとも一部との隙間および軸体12と被覆フィルム15の少なくとも一部との隙間を閉塞しておくことにより、高い気密性を実現することができるのである。
本実施形態においては、前記シール材として接着剤が使用されており、軸体12と溝部23とが接合されている。なお、本実施形態はシール材として接着剤を使用したものであるが、シール材としては、気密性を付与しうる材料であればよく、例えば、接着剤、粘着剤、各種天然樹脂または合成樹脂等を採用することができる。中でも、接着剤が、軸体12を固定する働きをもなす点で好ましく、特にホットメルト接着剤がより好ましい。ホットメルト接着剤としては、具体的には、EVA系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等を主成分とするものが挙げられる。
【0017】
軸体12には突起部12aが、溝部23には突起収容部23aが設けられている本実施形態においては、前記シール材が前記突起収容部23aに充填されている形態、すなわち突起部12aと突起収容部23aとの隙間がシール材(不図示)で閉塞されている形態がよい。前述した突起部12aと突起収容部23aとが設けられた形態においては、突起部12a以外の軸体12と突起収容部23a以外の溝部23との断面は図3(a)に示すようになっており、他方、突起部12aと突起収容部23aとの断面は図3(b)に示すようになっている。ここで、シール材は、図3(a)に示す断面(突起部12a以外の軸体12と突起収容部23a以外の溝部23との隙間)には存在せず、図3(b)に示す断面における突起部12aと突起収容部23aとの隙間(突起部12aの下側と突起収容部23aの上側との間)に存在する(但し、シール材は図示せず)。なお、シール材が突起部12a以外の軸体12と突起収容部23a以外の溝部23との隙間に存在していても、本発明の効果を損なうものではない。
【0018】
被覆フィルム15は、前記カップ部材14の開口面上に配置され、カップ材14の外縁と接合されることにより凹部21内を密封している。本実施形態においては、前述した鍔部22がカップ材14の外縁となる。
【0019】
本実施形態において、被覆フィルム15は、アルミニウム箔等の金属箔にポリエチレンフィルム等の熱融着性フィルムをラミネートしたものである。被覆フィルム15としては、このような非通気性フィルムが好ましい。非通気性フィルムとしては、塗布液の揮散を長期にわたって防止しうるものであれば使用可能であり、本実施形態のものに制限はされない。
【0020】
被覆フィルム15のカップ材14への接合には、熱融着性フィルムである被覆フィルム15の周縁を加熱加圧して熱融着させる方法を採用することができる。なお、被覆フィルム15が熱融着性を有さないフィルムであれば、鍔部22に接着剤や粘着剤を塗布してシールする方法を採用すればよい。いずれの場合も、被覆フィルム15とカップ材14の外縁との接合部分は、強く引っ張ると開封可能な程度にシールされているのが好ましい。
【0021】
なお、被覆フィルム15の接合に際しては、密封性を損なわない範囲で、図1に示すように、被覆フィルム15の一部15a(好ましくは角部)を敢えてカップ部材14の鍔部22に接合しない状態にしておいてもよい。これにより、塗布具11を開封する際に該一部15aをつかんで被覆フィルム15を容易に剥がすことができるようになる。
【0022】
本実施形態においては、軸体12としてプラスチック軸が用いられる。この場合、前記カップ部材14の外にある前記軸体12(つまり、軸体12の持ち手側)に該軸体12をねじるためのつまみ部12bが設けられていることが好ましい。このつまみ部12bを持ち、軸体12をねじって回転させることにより、溝部23に接着された綿棒20を容易に取り出すことができる。
なお、軸体12は、プラスチック軸に限定されるものではなく、例えば、紙軸、木軸、金属軸等も使用可能である。軸体12の太さ(外径)は特に限定されず、使用時に折れない程度の強度を有し、かつ使用時に持ちやすい太さであるのがよい。また、軸体12の長さも特に限定されるものではなく、使いやすい長さに任意に設定することができる。
【0023】
塗布液含浸部13としては、塗布液を含浸できかつ塗布しうるものであれば使用可能であり、例えばプラスチック発泡体、繊維集合体が挙げられ、さらに不織布や織布(例えばガーゼ)を軸体12に巻き付けたものであってもよい。繊維集合体としては、種々の天然繊維(綿、絹、羊毛等)、再生繊維(レーヨン、キュブラ等)または合成繊維(ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維等)が挙げられるが、特に脱脂綿等の綿繊維が好適に使用される。これらの繊維は略球形ないし楕円形の塊状に形成され、必要に応じて接着剤にて軸体12に止着されている。
塗布液含浸部13の太さ(外径)および長さは特に限定されず、必要量の塗布液を十分に含浸できる大きさであればよい。
【0024】
塗布具11を開封するには、被覆フィルム15を剥がした後、例えば、軸体12を摘んで上下方向に軽く動かすか、前記つまみ部12bを持ち、軸体12をねじって回転させることにより、綿棒20を溝部23から取り出すようにすればよい。
【0025】
塗布液含浸部13に含浸される塗布液としては、用途や使用目的に応じて適宜選択され、例えば医療用薬液、化粧液または機械部品、電子部品等を清掃するための清掃液等の薬液が挙げられ、さらに身体や衣類等の汚れを落とすための有機溶剤や水等の洗浄液であってもよい。
【0026】
医療用薬液としては、消毒、殺菌又は治療を目的とした薬液が挙げられ、例えばアクリノール、塩酸アルキルジアミンエチルグリシン、エタノール、過酸化水素、グルタラール、クレゾール、グルコン酸クロルヘキシジン、次亜塩素酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ポピドンヨード、マーキュロクロム、ヨードチンキなどの消毒薬が挙げられる。これらの薬剤は液体である限りそのまま塗布液含浸部13に含浸させてもよく、あるいは水等の溶剤に溶解させて塗布液含浸部13に含浸させてもよい。
【0027】
化粧液としては、例えばアロエエキス、コラーゲン、ローション、ベビーオイル、ベビーローション、ヨモギエキス、ヘチマエキスおよび米糖エキス等の植物抽出エキスや各種香料等が挙げられる。また、その他にも除光液やクレンジング液などを使用してもよい。これらの化粧液は液体である限りそのまま塗布液含浸部13に含浸させてもよく、あるいは水等に溶解させて塗布液含浸部13に含浸させてもよい。
【0028】
上記清掃液としては、例えばアセトン、アルコール等の有機溶剤や、機械用油などが挙げられる。
本実施形態においては、軸体12の一端に塗布液含浸部13が形成されているが、軸体12の両端に塗布液含浸部13を形成し、両端の塗布液含浸部13に各々カップ部材14を設けるようにすることもできる。
【0029】
本実施形態においては、凹部21の開口部周囲に鍔部22が設けられているが、実質的に鍔部22を有さない形態であってもよい。この形態の場合、被覆フィルム15の接合面が小さくなるので、例えば、凹部14の側面もしくは底面をも含めて凹部21の開口部周囲を被覆フィルム15でラッピングすればよい。
【0030】
塗布具11は、例えば、次のようにして作製することができる。すなわち、まず、軸体12の端に塗布液含浸部13を形成して綿棒20を作製し、その塗布液含浸部13に所望の塗布液を含浸させる。次いで、カップ部材14の溝部23の一部にシール材を充填し、その中に、塗布液含浸部13に塗布液を含んだ綿棒20の軸体12をのせるように、塗布液含浸部13をカップ部材14の凹部21内に収容する。その後、カップ部材14の凹部21と溝部23との両方を塞ぐように被覆フィルム15を載せてシールすることにより、塗布具11は得られる。なお、シール材は、カップ部材14の溝部23に綿棒20の軸体12を収容したのちに、その軸体12の上から充填するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態にかかる塗布具を示す分解斜視図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】(a)図2のX−X線断面を示す模式図である。 (b)図2のY−Y線断面を示す模式図である。
【符号の説明】
【0032】
11 塗布具
12 軸体
12a 突起部
12b つまみ部
13 塗布液含浸部
14 カップ部材
15 被覆フィルム
15a 被覆フィルムの一部
20 塗布液含浸綿棒
21 凹部
22 外縁部
23 溝部
23a 突起収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体の端部に塗布液含浸部を設けた塗布液含浸綿棒と、前記塗布液含浸部を収容する凹部、およびこの凹部から連続し塗布液含浸部に隣接する軸体を収容する溝部が形成されたカップ部材と、このカップ部材の開口面上に配置して凹部内を密封する被覆フィルムとを備え、
前記軸体が収容された溝部の少なくとも一部に前記凹部内を密封するためのシール材が充填されている、ことを特徴とする塗布具。
【請求項2】
前記軸体には、この軸体の軸方向と直交する方向に突設する突起部が設けられ、前記溝部には、前記突起部を収容する突起収容部が設けられている請求項1記載の塗布具。
【請求項3】
前記突起部は、突起収容部内に収容されたときにカップ部材の開口面より上面に突出しない形状である請求項2記載の塗布具。
【請求項4】
前記シール材が前記突起収容部に充填されている請求項2または3記載の塗布具。
【請求項5】
前記シール材が接着剤である請求項1〜4のいずれかに記載の塗布具。
【請求項6】
前記カップ部材の外にある前記軸体につまみ部が設けられている請求項1〜5のいずれかに記載の塗布具。
【請求項7】
前記溝部は前記凹部からその外縁に向かって上向きに傾くように形成されている請求項1〜6のいずれかに記載の塗布具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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