説明

塗布具

【課題】塗布液に対して優れた攪拌性能を有し、廃棄時の焼却処理後の大気汚染を少なくした攪拌部材を用いた塗布具を提供する。
【解決手段】塗料、絵の具、インク、修正液、化粧料、薬剤、補修剤、コーティング剤などの、顔料を含む沈降分離性を有する塗布液と、この塗布液を撹拌する撹拌部材14とを内蔵する塗布具であって、上記撹拌部材14は、賦形性を有し焼成後高い炭素残査収率を示す組成物と、炭素粉末と、更に必要に応じて金属酸化物等の金属化合物の一種または二種以上とを混合、焼成することからなる炭素系撹拌部材から構成されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、絵の具、インク、修正液、化粧料、薬剤、補修剤、コーティング剤など用途に用いられる少なくとも顔料などを含む沈降分離性を有する塗布液と、この塗布液を攪拌する攪拌部材とを内蔵する塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、攪拌部材を内蔵するような塗布具は、塗布具の大きさ・重さなどといった形態から、一般的には廃棄され、焼却処分されている。
しかしながら、近年、このような塗布具においても、金属や樹脂など異なる材質で作られているものは、材質ごとに分別廃棄をする企業や消費者が増えている。
【0003】
このような現状において、分別廃棄の手間を不要とするため、塗布具の構造部材を全て成形用樹脂材料で構成すること、具体的には、塗布具に内蔵される撹拌部材も樹脂化することが望まれている。現実的には、全ての樹脂化が困難な場合であっても、焼却処理後の残さ量を少しでも低くするために、撹拌部材における成形樹脂成分以外の添加物の添加率(重量・容量)を低くすることが望まれている。
【0004】
そこで、少ない振り回数で塗布液の沈降物から抜け出し得る再分散機能を有し、しかも、廃棄時の焼却処理後の残さ量を少しでも低くする攪拌部材を用いた塗布具等として、例えば、成形用樹脂と、この成形用樹脂より比重が高く、粉末状の材料との配合物を成形した塗布液再分散用攪拌部材(例えば、特許文献1参照)や、成形用樹脂と、成形用樹脂より比重が高い粉末状材料又は高比重形状体とからなる攪拌部材を有し、この攪拌部材の比重を、塗布液の沈降物の比重より低くしたことを特徴とする塗布具(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び2における攪拌部材を有する各塗布具おいては、攪拌部材には金属と樹脂を用いているため、塗布液の物性に悪影響を起こす可能性があり、また、焼却処理後の残さ量も未だ多いなどの課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−276717号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開2002−254884号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、塗布液に対して化学的な反応を伴わずに安定して使用できると共に、塗布具に内蔵される攪拌部材の主成分が炭素素材であることから塗布具としての役割を終えた後に、分別することなく焼却廃棄することが可能となる環境負荷も低い塗布具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、塗料、絵の具、インク、修正液、化粧料、薬剤、補修剤、コーティング剤などに用いられる顔料を含む沈降分離性を有する塗布液と、この塗布液を撹拌する撹拌部材とを内蔵する塗布具において、撹拌部材を特定物性の材料から構成することにより、上記目的の塗布具が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(5)に存する。
(1) 少なくとも顔料を含む沈降分離性を有する塗布液と、この塗布液を攪拌する攪拌部材とを内蔵した塗布具であって、前記攪拌部材は、塗布液に侵食されない材料からなることを特徴とする塗布具。
(2) 前記塗布液に侵食させない材料は、少なくとも炭素分を含む炭素系材料からなることを特徴とする上記(1)記載の塗布具。
(3) 撹拌部材は、賦形性を有し焼成後高い炭素残査収率を示す組成物と、炭素粉末とを混合、焼成することからなる炭素系撹拌部材であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の塗布具。
(4) 撹拌部材は、賦形性を有し焼成後高い炭素残査収率を示す組成物と、炭素粉末と、金属化合の一種または二種以上とを混合、焼成することからなる炭素系撹拌部材であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の塗布具。
(5) 攪拌部材は棒状であることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の塗布具。
なお、本発明において、「炭素残査収率」とは、有機物質を不活性ガス雰囲気中で焼成した後に残る炭素分の、焼成前に対する割合をいう。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来の樹脂製の攪拌部材と比較して廃棄時の焼却処理後の大気汚染を少なく環境負荷を更に低くすることができると共に、塗布液に侵されないので、塗布液の物性に影響のない攪拌部材を内臓した塗布具が提供される。また、攪拌部材は賦形性を有し、焼成後高い炭素残査収率を示す炭素系撹拌部材から構成することにより、攪拌時に塗布具内で甲高い音が鳴るので、攪拌確認が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)〜(g)は、本発明の塗布具に内蔵される攪拌部材の各形状を斜視図態様、または、断面態様で示す図面である。
【図2】本発明における塗布具の実施形態の一例を示す縦断面図である。
【図3】図2の塗布具の全体説明図であって、(a)は一側面図、(b)は該一側面図から90°回転した他側面図、(c)はさらに他側面図から90°回転した別側面図、(d)は軸方向先端のキャップ側から見た図、(e)は軸方向後端から見た図、(f)は後方斜視図、(g)は先方斜視図である。
【図4】先端に弁体を一体成形したスプリング体に塗布体およびスポンジ体を組付けたものの説明図であって、(a)は一側面図、(b)は他側面図、(c)は縦断面図、(d)は軸方向先方から見た図、(e)は軸方向後方からみ見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の塗布具は、少なくとも顔料を含む沈降分離性を有する塗布液と、この塗布液を攪拌する攪拌部材とを内蔵した塗布具であって、前記攪拌部材は、塗布液に侵食されない材料からなることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の塗布具に内蔵する攪拌部材は、塗料、絵の具、インク、修正液、化粧料、薬剤、補修剤、コーティング剤などの用途に用いる、少なくとも顔料を含む沈降分離性を有する塗布液に侵食されない材料、すなわち、塗布液に対して化学的な反応を伴わない材料から構成されるものであり、少なくとも炭素分を含む炭素系材料から構成されることが好ましい。
本発明に用いる、少なくとも炭素分を含む炭素系材料は、少なくとも炭素粉末を含む材料を用いるものである。用いる「炭素粉末」の炭素は、炭素材、黒鉛、カーボンブラック、グラファイトなどから選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0014】
本発明に用いる上記炭素粉末は、安価であり、一般に用いられている塗料、絵の具、インク、修正液、化粧料、薬剤、補修剤、コーティング剤などの用途に用いる少なくとも顔料を含む沈降分離性を有する塗布液には、侵食されず、化学的な反応を伴わないものであり、また、塗布液の物性にも悪影響を及ぼさないものである。
これらの炭素系材料により攪拌部材を製造する方法等としては、例えば、上記炭素粉末を焼成後炭化される樹脂組成物と混合し任意の形状の成形体を形成した後、該成形体を焼成処理することにより、各形状の攪拌部材を作製する方法などが挙げられる。
【0015】
好ましい攪拌部材としては、製造性、形状保持性、塗布液に対する化学的安定性、撹拌行為に対する非破壊耐久性、焼却処理のし易さ等の点から、賦形性を有し焼成後高い炭素残査収率を示す組成物と、炭素粉末とを混合、焼成することからなる炭素系撹拌部材から構成されるものが望ましい。
この賦形性を有し焼成後高い炭素残査収率を示す組成物と、炭素粉末とを混合、焼成することから得られる具体的な炭素系撹拌部材としては、例えば、1)賦形性を有し焼成後高い炭素残査収率を示す組成物となる熱硬化性樹脂の液状組成物中に黒鉛などの炭素粉末を混合し、該混合物を、所望の攪拌部材の形状に成形し、該成形物を不活性雰囲気、非酸化性雰囲気中、又は真空中で焼成することにより、熱硬化性樹脂の液状組成物の炭素化により得られるガラス状炭素と、該ガラス状炭素中に分散した炭素粉末とを具備した炭素粉末とガラス状炭素の複合体である炭素系撹拌部材、2)賦形性を有し焼成後高い炭素残査収率を示す組成物となる無機結合材と炭素粉末とを混合し、得られた混合物を、所望の攪拌部材の形状に成形し、該成形物を、不活性雰囲気、非酸化性雰囲気中、又は真空中で焼成することにより、無機結合材の焼成物と、該焼成物中に分散した炭素粉末とを具備した炭素系撹拌部材、3)上記1)又は2)において、炭素粉末と共に、更に、金属酸化物などの金属化合物の一種または二種以上とを混合、焼成することにより、上記1)の熱硬化性樹脂の液状組成物の炭素化により得られるガラス状炭素中に分散した炭素粉末、金属酸化物等の金属化合物とを具備した炭素粉末、金属酸化物等及びガラス状炭素の複合体である炭素系撹拌部材、または、上記2)の無機結合材の焼成物中に分散した炭素粉末、金属酸化物等の金属化合物とを具備した炭素系撹拌部材、4)金属酸化物等の金属化合物や金属などの金属材料をコアとして賦形性を有し焼成後高い炭素残査収率を示す組成物となる無機結合材と炭素粉末とを混合し、得られた混合物をコアに被覆して所望の攪拌部材の形状に成形し、該成形物を不活性雰囲気、非酸化性雰囲気中、又は真空中で焼成することにより、熱硬化性樹脂の液状組成物の炭素化により得られるガラス状炭素と、該ガラス状炭素中に分散した炭素粉末とを具備した炭素粉末とガラス状炭素の複合体である炭素系撹拌部材〔後述する図1の(g)参照〕などが挙げられる。
【0016】
上記1)の炭素系撹拌部材は、賦形性を有し焼成後高い炭素残査収率を示す組成物として、例えば熱硬化性樹脂の液状組成物等を用いるものである。この熱硬化性樹脂の液状組成物とは、熱硬化性樹脂の初期重合体類や溶剤に溶解させた一種または二種以上の複合液状体である。
用いることができる熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、コプナ樹脂等が用いられ、加熱により分子間架橋を生じ三次元化して硬化し、特別の炭素前駆体化処理を行うことなく高い炭素残査収率を示すものであり、好ましくは、フラン樹脂及びフェノール樹脂である。
【0017】
用いる炭素粉末としては、上記の炭素材、黒鉛、カーボンブラック、グラファイト等から選択される少なくとも1種が挙げられ、好ましくは、前処理も容易であり経時劣化がなく安定性が高い点等から、黒鉛粉末が好ましい。
黒鉛粉末としては、例えば、黒鉛ウイスカー、高配向性熱分解黒鉛(HOPG)、キッシュ黒鉛、天然黒鉛、人造黒鉛、フラーレン、黒鉛繊維チョップ等の粉末が挙げられる。使用する黒鉛粉末の種類と量は、攪拌部材の要求特性、寸法、形状等により適宜選択され、単独でも二種以上の混合体でも使用することができるが、結晶の良く発達した鱗状黒鉛粉末を使用することが好ましい。
用いる炭素粉末の粒径は、成形性の容易なことから平均粒径が50μm以下であることが好ましい。また、炭素粉末の含有割合は、組成物全量に対して5質量%以上75質量%以下であることが好ましい。
【0018】
この賦形性を有し焼成後高い炭素残査収率を示す組成物として、熱硬化性樹脂の液状組成物と、炭素粉末とを混合、焼成することから得られる上記1)の炭素系撹拌部材の製法を詳述すると、まず、焼成後に塗布液不浸透性を示すガラス状炭素となる熱硬化性樹脂の液状組成物と黒鉛粉末などの炭素粉末とを適宜選択した後、混合機を用いて充分に分散させる。
次に、この混合体を、製膜機や押し出し成型機のような通常のプラスチック成形を行う際に使用されている成形機を用い、黒鉛微粉末などの炭素粉末を一方向に配向制御させつつ円柱形状に成形する。得られた円柱形状体は、エアオーブン中で硬化処理を施した後、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で昇温速度を制御しつつ焼成することで炭素化を終了させ、ガラス状炭素中に黒鉛粉末などの炭素粉末が一方向に配向した炭素複合体からなる上記1)の炭素系撹拌部材が得られる。
ここで、炭素化は、不活性ガス雰囲気もしくは真空下で700〜2800℃程度まで加熱昇温し行われるが、炭素化時の昇温速度が大きいと賦形体の形状が変形したり微細なクラックが生じるなどの欠陥が生じる。したがって、500℃までは毎時50℃以下、それ以降も毎時100℃以下で行うことが適切である。
【0019】
次に、上記2)の炭素系撹拌部材は、賦形性を有し焼成後高い炭素残査収率を示す組成物として、無機結合材を用いるものである。用いることができる無機結合材としては、例えば、カオリナイト系、セリサイト系、モンモリロナイト系、ベントナイト系の粘土類、ゼオライト、ケイソウ土、活性白土、シリカ、リン酸アルミニウムなどの少なくとも1種が挙げられる。また、炭素粉末としては、上記1)と同様に、炭素材、黒鉛、カーボンブラック、グラファイト等から選択され、好ましくは、黒鉛である。
【0020】
この炭素系撹拌部材の製法は、炭素粉末と、一種または二種以上の無機結合材を混合し、任意の攪拌部材の形状に成形後、炭素前駆体化処理し、得られた炭素前駆体を窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中または真空雰囲気下にて1000℃以上、好ましくは1000℃〜1300℃の温度まで加熱昇温する焼成処理により、無機結合材の焼成物とその中に均一に分散した炭素粉末とから構成される複合体となる炭素系攪拌部材が得られる。
なお、上記成形方法には、圧縮成形、押し出し成形、射出成形、真空成形等の一般的に普及している成形方法が挙げられ、圧縮成形や射出成形にて表面にパターンのある板状や、押出し成形にて丸棒や平板状に成形する等、成形形状により適宜選択使用することが好ましい。また、上述の無機結合材及び炭素粉末の混合物の性状によっても成形方法は適宜選択する。
【0021】
上記2)の炭素系攪拌部材は、簡便な工程で製造でき、安価に且つ寸法精度の良いこと、さらには材料の配合比の制御によって機械的強度を容易に調整できるものである。上記無機結合材の焼成物は含有率50質量%以上が好ましく、また、炭素粉末の総含有率は、5質量%以上であることが好ましい。また、用いる無機結合材としての粘度類の融着によって得られる成形体は、エネルギーコスト、形状管理の面で低コストであり、上記1)のガラス状炭素の出発原料であるフラン樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂と比べて安価であり、その配合比の調整によって得られるものの硬度を制御することができるという利点を持つ。
【0022】
次に、上記3)の炭素系攪拌部材は、上記1)又は2)の製法等において、炭素粉末と共に、更に、沈降分離性を有する塗布液に対して悪影響を及ぼさない金属酸化物などの金属化合物の一種または二種以上とを混合、焼成することにより得られるものであり、上記1)の炭素系撹拌部材、または、上記2)の炭素系撹拌部材の焼成時の寸法収縮を抑える効果、強度を含む耐久性、重量増加による沈降分離性を有する塗布液に対する更なる攪拌性能の向上を発揮せしめるものとなるものである。
用いることができる金属化合物としては、例えば、酸化チタン、アルミナ、シリカ、酸化鉄などの金属酸化物、また、雲母、タルク、窒化硼素、炭酸カルシウム、二硫化モリブテン、二硫化タングステンなどの一種または二種以上を、更に上記1)又は2)の混合物に混合し、上述の各製法により、上記3)の特性となる炭素系攪拌部材を得ることができる。これらの金属化合物の含有量は、上記1)又は2)の各混合物中に、50質量%以下、好ましくは、5〜40質量%であることが望ましい。
【0023】
上記4)の炭素系攪拌部材は、焼成後に塗布液不浸透性を示すガラス状炭素となる熱硬化性樹脂の液状組成物と黒鉛粉末などの炭素粉末とを適宜選択した後、混合機を用いて充分に分散させる。得られた混合物を、コアとして用いる鉄棒などの金属材料に被覆して所望の攪拌部材の形状に成形し、該成形物を不活性雰囲気、非酸化性雰囲気中、又は真空中で焼成することにより、コアに鉄などの金属材料を、その外側に熱硬化性樹脂の液状組成物の炭素化により得られるガラス状炭素と、該ガラス状炭素中に分散した炭素粉末とを具備した炭素粉末とガラス状炭素の複合体である炭素系撹拌部材〔後述する図1の(g)参照〕である。なお、コアとして用いる金属材料(高比重物)の使用量は、各形状、塗布具の用途などにより変動するものであり、後述する好ましい比重の範囲(1.1〜4)となるように調整される。
【0024】
本発明において、攪拌部材の形状、大きさ、重さ等は、塗料、絵の具、インク、修正液、化粧料、薬剤、補修剤、コーティング剤などの用途に用いる顔料を含む沈降分離性を有する塗布液の性状、この塗布液を内蔵せしめる塗布液容器体の形状、大きさ(内容積等)により、変動するものである。
攪拌部材の形状としては、沈降分離性を有する塗布液を効率よく攪拌できる形状であればよく、例えば、図1に示す各形状、例えば、(a)円柱状、(b)球状、(c)楕円体状、(d)棒状、(e)断面T状、(f)葉巻形状、(g)断面棒状内の芯部に金属材料などの高比重物を備えたもの、後述する図2に示される図示符号14の断面形状などの各形状が挙げられる他、三角柱状、四角柱状など方形形の立体柱状、直方体状、正方体状、星型状などが挙げられ、好ましくは、部材焼成の容易さと攪拌性能の向上の点から、(d)棒状であるものが望ましい。
攪拌部材の大きさは、塗布具内に収容可能かつ沈降分離性を有する塗布液を効率よく攪拌できる大きさであればよい。
攪拌部材の重さ(重量)は、沈降分離性を有する塗布液を効率よく攪拌できる重量であれば、沈降分離性を有する塗布液の比重に対して、1.1〜4となる比重の攪拌部材が好ましく、更に好ましくは、1.5〜3となる比重の攪拌部材が望ましい。
なお、上記攪拌部材の形状、大きさ、重さの調整は、用いる賦形性を有し焼成後高い炭素残査収率を示す組成物の種類、炭素粉末種、並びに、金属酸化物などの金属化合物の種類、成形方法等を適宜組み合わせることにより好適な形状、大きさ、重さとなる攪拌部材を得ることができる。
【0025】
本発明に用いる少なくとも顔料を含む沈降分離性を有する塗布液としては、塗布液の用途、例えば、塗料、絵の具、インク、修正液、化粧料、薬剤、補修剤、コーティング剤などの用途に応じて、好適な塗布液を調製することができる。
用いることができる塗布液の組成は、攪拌部材を必要とする、少なくとも顔料を含む沈降分離性を有するものであれば特に限定されず、各塗布液の用途により、好適な溶媒(有機溶剤、水)、樹脂、酸化チタンなどの無機顔料、有機顔料、染料等を含む着色剤などを好適に組み合わせることにより水性インク、油性インクなどの各用途ごとの塗布液を調製することができる。
【0026】
例えば、水性インク組成物の場合は、水に可溶でその分子内に疎水部を持つアクリル系樹脂やアクリル系樹脂エマルジョンなどを1〜20質量%と、酸化チタン5〜30質量%を少なくとも含む着色剤と、アセチレングリコール類、アセチレンアルコール類又はこれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種0.05〜2質量%と、25℃における蒸気圧が5mmHg以下の水溶性溶剤1〜20質量%と、水とを少なくとも含有する組成が挙げられる。
【0027】
本発明の塗布具の構造等としては、少なくとも顔料を含む沈降分離性を有する塗布液と、この塗布液を攪拌する塗布液に侵食されない材料からなる攪拌部材とを内蔵した構成となる塗布具であれば、塗布液容器体、攪拌部材、塗布体の構造、形状、大きさ、並びに、塗布機構などは限定されず、塗料、絵の具、インク、修正液、化粧料、薬剤、補修剤、コーティング剤などの塗布用途に応じて好適な塗布具を用いることができる。
例えば、沈降分離性を有する塗布液を収容する塗布液容器体としては、代表的なものとして筆記具形が挙げられ、また、塗布体(ペン先)が繊維束芯、連続気泡体、成形体、ボールペン型、ハケ型タイプのもの、また、少なくとも顔料を含む沈降分離性を有する塗布液を塗布体に供給する機構が弁機構を有するもの、コレクターを有する直液方式のもの、中継芯を介在して供給するもの、ハケ型タイプであれば供給機構がないものなどが挙げられ、これらの塗布液容器体、塗布体(ペン先)、塗布液供給機構などと、上述の各形状、特性を備えた攪拌部材を好適に組み合わせることにより、各塗布液の用途に応じて、好適な構造、形状等となる塗布具が選択されるものとなる。
【0028】
図2〜図4は、本発明における塗布具の具体的な実施形態の一例を示すものであり、ペン先の塗布体を押圧することにより弁体をスプリング体の弾発力に抗して開弁させて、前記塗布体に沈降分離性を有する塗布液を誘導する弁付の塗布具であり、攪拌時に塗布液に侵食されない材料からなる上記特性、各製法等により得られる攪拌部材14がバルブ内に入りこむようにすることができる弁付塗布具の形態である。
図2に示すように、弁付塗布具は、軸筒10後部の少なくとも顔料を含む沈降分離性を有する塗布液を収容するタンク12と軸筒10前部内が連通しており、該タンク12に本発明の特性を備えた断面T字状の炭素系撹拌部材14を内装すると共に、前記軸筒10前部には、先端を突出させた状態の塗布体16、塗布液流路18を開閉する弁体20および弾発力によって該弁体20を前方に付勢するスプリング体22を内部に設けており、ペン先の塗布体16を押圧することにより前記弁体20をスプリング体22の弾発力に抗して開弁させて、前記塗布体16に塗布液を誘導し、これによって、対象物に塗布液を塗布(筆記)可能にするものである。
【0029】
この形態の塗布具では、図2〜図3に示すように、後端部の閉鎖された軸筒10の後部は、その内部空間に少なくとも顔料を含む沈降分離性を有する塗布液を収容するタンク12になっており、後端部10aが段状に縮径してキャップ24を外嵌できる外径に形成されている。当該軸筒10の前端部に概略中空筒状の先軸26が嵌入されている。先軸26の後端(嵌入先端)26aは、軸筒10の中央部付近に至っており、軸筒10のタンク12内面には、リブ12aが軸方向に沿って後端から中央部付近まで複数が突出形成されている。
前記先軸26は、中央部外周にフランジ26bが形成されていて、このフランジ26b軸筒10先端部10bに当接してそれ以上軸筒10内に潜り込まないように位置決めしている。また、先軸26の前部内周に弁受け部26cが環状内向きに突出形成されていて、この弁受け部26c前記弁体20外周が当接離脱するようになっている。なお、先軸26のフランジ26b後方の外周面部には、雄ネジ部26dが形成されていて、この雄ネジ部26dが対応箇所の軸筒10の内周面部の雌ネジ部10cに螺合固定して軸筒10から先軸26が抜けないようになっている。また、フランジ26bの外周面には、スパナ等の治具が対応する平坦な切り欠きが180°の間隔を置いて形成されており、治具によってこの切り欠きを挟持して、先軸26を軸筒10に対して回転させることにより、先軸を軸筒10から取り外して、塗布液をタンク12内に注ぎ足すことがとできる。すなわち、再利用可能にする。もちろんタンク12を軸筒10と別体の装脱可能なものにしたカートリッジ式とすることもできる。
【0030】
先軸26の前端部には塗布体16を進退動可能に内装する塗布体16保持部であるクチプラ28の後部28aが嵌入している。このクチプラ28前部28bの内周面に塗布体16を進退動可能にガイドするリブ28cが形成されている。クチプラ28の前部28bは塗布体16に合わせて後部28aよりも細径に形成されており、中央部外径はフランジ状に突出して先軸26先端に当接して後部28aがそれ以上先軸26内に潜り込まないようになっている。そのクチプラ28の後部28a内には、スポンジ30が塗布体16後部と弁体20の外周を囲んで内装されている。なお、スポンジ30は先軸26の弁受け部26cの前方に位置して弁体20と弁受け部26cが開弁した際に、塗布液流路に流れた塗布液が急激に塗布体16に流れて隙間(クチプラ前部28bのリブ28c間など)から溢れ出るのを防止するため、一旦保溜し、塗布体16に安定して
インクを流し出すように調整する機能を有する。
【0031】
塗布体16は全体が概略棒状体であって、先端の先細りに丸くなり、かつ後端が切り落とされた形状を呈している。前記スプリング体22は、図2、図4に示すように、先端部に弁体20を、中央部に概略螺旋状の弾発部22aを、後部にフランジ状部32aを形成した筒状部(規制受け部)32を形成したものである。弁体20は前部20aが筒状であって、後部20bが円錐状の側面部を呈して、中央部に隔壁20cを有するものである。この後部20bの円錐状側面部が先軸26の弁受け部26cの円形開口内面に斜めに当接.離脱してインク流路18を開閉する構造である。
また、前記スプリング体22内には、前記撹拌体14が挿抜可能な空間34を設けている。つまり、後部の筒状部32から弾発部22aさらには前部の弁体20後部20bにかけて断面方向中央部に中空の空間34を形成しており、この空間34内に撹拌体14が挿脱自在に構成されている。ここで、前記撹拌部材14は、棒状であって後端部14aが他の部分よりも拡径して一部切り欠いたフランジ状に形成されている。
【0032】
スプリング体22には、後端部にその内径が前記撹拌体14の後端部14a外径よりも小さい内径の当接部からなる筒状部(規制受け部)32を一体に樹脂形成したものである。これによって、前記筒状部32は、その内側段部32bに前記撹拌体14の後端部14aを係止して、前記撹拌体14の先端部がスプリング体22先端部の弁体20(の隔壁20c)内面に当接しないように規制するものである。
また、前記スプリング体22の後端部の筒状部32は、外周面の凹凸が先軸26後端内周面の凹凸に嵌合して、スプリング体22が先軸26から抜けないようにされている。又、筒状部32の後端は外向きに拡径してフランジ状部32aになっており、先軸26に装着した際に先軸26の後端26aにフランジ状部32aが当接してそれ以上潜り込まないようにされている。さらにこのスプリング体22を先軸26に装着した状態で軸筒10内の先端部10bに装着して螺合固定したときに、インクタンク12の内周面のリブ12aによって前記フランジ状部32aは位置決めされる。つまり、当該フランジ状部32aは、先方から先軸26によって、また、後方からリブ12aによってそれぞれ挟み付けられて、軸筒10内での後端部の位置が固定され、先端部に設けられた弁体20が先後方向に進退動可能に設けられている。
前記スプリング体22の弾発部22aは、図4に示すように、横断面視で概略矩形形状を呈する四面に沿って2条の線状体を概略螺線状に整形しており、対向する二面に沿った線状体は軸方向に対してほぼ垂直に向き、また、他の対向する二面に沿った線状体は軸方向に対して斜めに向いて形成されている。また、スプリング体22は、その先端部に前記弁体20が一体に樹脂形成されたものである。
【0033】
上記塗布具の先端の先軸26からクチプラ28と塗布体16を覆って、先軸26にキャップ24が着脱自在に外嵌めされる。キャップ24は先端が閉鎖されかつ軸方向中央部の周囲が凹んだ概略椀状を呈し、後端部が先軸26のフランジ26bに当接する。なお、外側部には、クリップ24aが設けられて使用者のポケットをクリップ24aで挟んで塗布具を固定出来るようになっている。また、キャップ24の外側面部には、環状に凹部24bが形成されていて、使用者が指先で摘んで軸筒10から外しやすくしている。
【0034】
なお、本発明に係る塗布具の攪拌部材14以外の各部材は焼却処理後の残さ率の点から、樹脂素材から構成することが好適である。実施形態では、塗布体16はポリエチレンテレフタレート(PET)からなる繊維束、連続気泡体、成形体等である。また、前記軸筒10、先軸26、クチプラ28、キャップ24は、ポリプロピレン(PP)からなるものである。また、スプリング体22はポリアセタール(POM)からなり、スポンジ30は、ウレタンからなるものである。また、各部は射出成形によって形成されたものであって、軸筒10と先軸26は射出成形によって精度良く形成できるため、対向するネジ結合箇所の精度が高くなり、また、後端部10aにバリが出にくく外観品質が向上する。
【0035】
本実施形態に係る塗布具によれば、塗布具保管時には、前記塗布体16が下方に向く等しており、スプリング体22前端の弁体20がその弾発部22aの先方に向けての弾発力によって先軸26の弁受け部26cに密着して、塗布液流路18は閉鎖している(図2の状態)。一方、使用時に沈降分離性を有する塗布液を撹拌する。塗布具を振ると、本発明の特性を有する炭素系撹拌部材14がタンク12内で先後運動して沈降分離性を有する塗布液を撹拌する。この際に、前記炭素系撹拌部材14には、その後端部14aがフランジ状に拡径しているので、図3に示すように先軸26後端の筒状部32の内側段部32bに引っかかり、それ以上は弁体20側に移動しないので、衝撃によって弁体20が開弁することがない。
そして、使用者は塗布体16を机上等に押し当てて塗布体16をスプリング体22の弾発力に抗して後退させる。これにより、前記塗布体16の後端でスプリング体22前端の弁体20が先軸26の弁受け部26cから離れて、塗布液流路18が開き、スポンジ30を経由して塗布体16に塗布液が供給される。なお、炭素系撹拌部材14の後端部14aは一部切り欠いたフランジ状部であるので、該炭素系撹拌部材14がスプリング体22の空間34内に入っていても、当該後端部14aの切り欠きで空間34内への塗布液流路18が確保され塗布液の流れが途切れることが無く、スムーズな塗布・筆記が可能である。
以上の実施形態に係る弁付の塗布具によれば、炭素系攪拌部材14を、棒状であって後端部が他の部分よりも拡径して形成し、前記スプリング体22内には、前記炭素系撹拌部材14が挿抜可能な空間34を設け、軸筒10内では筒状内側段部32bが前記撹拌部材14の後端部を係止して、前記撹拌部材14の先端部がスプリング体22先端部内に当接しないように規制する規制受け部を有する。
【0036】
したがって、塗布具を振って前記撹拌部材14によって撹拌するときに、前記撹拌部材14がスプリング体22先端の内側に当たらないので、弁体20が開弁動作することが無く、塗布液の漏れや吹き出しが生じることが無い。また、スプリング体22を、その先端部に弁体20が一体に樹脂形成されたものにするので、部品点数を少なくでき、成形及び取り扱いが容易になる。また、スプリング体22には、後端部にその内径が前記撹拌部材14の後端部外径よりも小さい当接部からなる筒状部(規制受け部)32を一体に樹脂形成すれば、別付けの必要がなく、成形および取り扱いが一層しやすい。
【0037】
また、炭素系撹拌部材14を含む塗布具全体が樹脂や炭素素材で構成されているため、従来の攪拌部材を含む塗布具全体が樹脂製のものと比較して、廃棄時の焼却処理後の大気汚染も少なく、また、焼却処理後の残さ量を少ないので、環境負荷を更に低くすることができると共に、炭素系攪拌部材は沈降分離性を有する塗布液に侵されないので、塗布液の物性に影響のない攪拌部材を内臓した塗布具が提供される。
【0038】
このように構成される本発明となる塗布具では、上記実施形態に限定されるものでなく、本発明の技術思想の範囲内で種々変更することができる。塗布具に内蔵される炭素系攪拌部材が攪拌時に内壁に当たる構造とすれば、攪拌時に塗布具内で甲高い音が鳴るので、攪拌確認が容易となる構造とすることができる。
【実施例】
【0039】
次に、製造例、実施例及び比較例により、本発明を更に詳述するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0040】
〔製造例1、攪拌部材Aの調製〕
フラン樹脂(日立化成工業社製ヒタフランVF−303)60質量部と、フェノール樹脂(群栄化学工業(株)製PGグレード)20質量部との混合樹脂80重量部に、天然鱗状黒鉛粉末(日本黒鉛工業(株)製 平均粒径5μm)20重量部を添加して、十分に分散、混合した後、圧縮成形機を使用して円柱状に加熱成形した。
その後、得られた成形体を窒素ガス雰囲気下1000℃まで50時間で昇温し炭素化処理した後、真空高温炉にて更に1500℃処理を施し黒鉛とガラス状炭素の複合体である炭素製円柱状棒材(攪拌棒、φ3×20mm、比重1.9)を得た。
【0041】
〔製造例2、攪拌部材Bの調製〕
モンモリロナイト70質量部に、天然黒鉛微粉末(日本黒鉛製、平均粒径5μm)30質量部を複合した組成物、および水系用分散材3質量部に、水100質量部を添加して、ヘンシェルミキサーを用いて分散した後、表面温度を120℃に保ったミキシング用二本ロールを用いて十分に混練を繰り返して組成物を得、ペレタイザーによってペレット化し、成形用組成物を得た。このペレットをスクリュー式押出機でTダイを用い脱気を行いつつ押し出し、円柱状の成形体を得た。次に、これを窒素ガス雰囲気中において1100℃で焼成し、炭素製円柱状棒材(攪拌棒、φ3×20mm、比重3.4)を得た。
【0042】
〔製造例3、攪拌部材Cの調製〕
フラン樹脂(日立化成工業社製ヒタフランVF−303)50質量部に、天然鱗状黒鉛粉末(日本黒鉛工業(株)製 平均粒径5μm)20質量部と酸化チタン30質量部を添加して、十分に分散、混合した後、圧縮成形機を使用して円柱状に加熱成形した。
その後、得られた成形体を窒素ガス雰囲気下1000℃まで50時間で昇温し炭素化処理した後、真空高温炉にて更に1500℃処理を施し黒鉛とガラス状炭素の複合体である炭素製円柱状棒材(攪拌棒、φ3×20mm、比重2.3)を得た。
【0043】
〔製造例4(比較用)、攪拌部材Dの調製、2002−254884号公報比較例1〕
攪拌部材として、ポリブチレンテレフタレート樹脂(比重1.31)100容積%を射出成形により、円柱状攪拌部材(攪拌棒、φ3×20mm、比重1.31)を得た。
【0044】
〔製造例5(比較用)、攪拌部材Eの調製、2002−254884号公報実施例1〕
攪拌部材として、ポリブチレンテレフタレート樹脂(比重1.31)90容積%と、鉄粉末(比重7.9)10容積%とよりなる混合物を射出成形により、円柱状攪拌部材(攪拌棒、φ3×20mm、比重1.97)を得た。
【0045】
〔実施例1〜3及び比較例1〜2〕
上記製造例1〜5で得た各攪拌部材(1個)と、下記組成の塗布液(6ml)とを下記構成の塗布具に充填し、下記各評価方法により、経時安定性、再分散性、攪拌部材の焼成による残さ率を評価した。
これらの結果を下記表1に示す。
【0046】
(塗布液の組成)
下記配合組成の沈降分離性を有する塗布液を調製した。
酸化チタン〔CR−50、一次粒子径0.25μm、石原産業社製) 25質量部
スチレンアクリル樹脂(JONCRYL 62J、BASF社製) 10質量部
エチレングリコール(25℃における蒸気圧が1mmHg以下) 5質量部
アセチレンジオールの付加物〔2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのEO(5モル)+PO(2モル)付加物〕 0.5質量部
pH調整剤:トリエタノールアミン 0.5質量部
増粘剤:キサンタンガム 0.2質量部
水(精製水) 58.8質量部
この塗布液の沈降物の比重は、3.8であった。なお、本発明において、沈降物の比重とは、塗布液を密閉容器に入れ、50℃で3ヶ月間保管した後、上澄み液を除去したものの比重をいう。また、本発明において、塗布液は、上記酸化チタンを含有する水性顔料インクに限定されるものではないので、塗布液の用途、種類によって塗布液の比重及び沈降物の比重は異なる。従って、前記攪拌部材の比重は、塗布液及び沈降物の比重を考慮して適宜設計するものとなる。
【0047】
(塗布具の構成)
塗布具として、下記構成のマーキングペンを使用した。
軸筒:三菱鉛筆社製PC−5M(商品名:ポスカ(中字))軸
ペン先:直径5mm、砲弾形状のPET繊維束芯
塗布液:上記で調製した塗布液4ml
【0048】
(経時安定性の評価方法)
実施例1〜3及び比較例1、2で得た塗布具を、50℃恒温槽内にペン先上向きで3ヶ月間静置保管した後、各塗布具における塗布液の粘度及び色相の変化などが無いかについて、下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:粘度及び色相の変化はなし
○:粘度及び色相のほぼ変化はなし
△:粘度及び色相の若干変化
×:粘度、色相が大きく変化
【0049】
(再分散性の評価方法)
実施例1〜3及び比較例1、2で得た塗布具を、50℃恒温槽内にペン先上向きで3ヶ月間静置保管した。その後、各塗布具の攪拌部材が動き出す迄の、手による振り回数(5回平均)を、下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:2回以内
○:3〜5回
△:6〜10回
×:11回以上
【0050】
(残さ率の評価方法)
実施例1〜3及び比較例1、2で用いた攪拌部材を焼却処理し、その残さ率(炭素残査収率)を算出し、下記評価基準で評価した。残さ率は、下記式により算出した。
残さ率=(焼却処理後の重量/焼却処理前の重量)×100
評価基準:
◎:残さ率5%未満
○:残さ率5〜10%未満
△:残さ率10〜20%未満
×:残さ率20%以上
【0051】
【表1】

【0052】
上記表1の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1〜3は、本発明の範囲外となる比較例1,2に較べて、経時安定性、再分散性に優れると共に、攪拌部材の焼成による残さ率を極めて低いことが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の塗布具では、塗料、絵の具、インク、修正液、化粧料、薬剤、補修剤、コーティング剤などの、少なくとも顔料を含む沈降分離性を有する塗布液を対象物に塗布する各用途ごとの塗布具に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0054】
10 軸筒
12 タンク
14 撹拌部材
14a 後端部
16 塗布体
18 塗布液流路
20 弁体
22 スプリング体
22a スプリング体の弾発部
24 キャップ
26 先軸
28 クチプラ
30 スポンジ
32 筒状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも顔料を含む沈降分離性を有する塗布液と、この塗布液を攪拌する攪拌部材とを内蔵した塗布具であって、前記攪拌部材は、塗布液に侵食されない材料からなることを特徴とする塗布具。
【請求項2】
前記塗布液に侵食させない材料は、少なくとも炭素分を含む炭素系材料からなることを特徴とする請求項1記載の塗布具。
【請求項3】
撹拌部材は、賦形性を有し焼成後高い炭素残査収率を示す組成物と、炭素粉末とを混合、焼成することからなる炭素系撹拌部材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布具。
【請求項4】
撹拌部材は、賦形性を有し焼成後高い炭素残査収率を示す組成物と、炭素粉末と、金属化合物の一種または二種以上とを混合、焼成することからなる炭素系撹拌部材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布具。
【請求項5】
攪拌部材は棒状であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の塗布具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−173300(P2011−173300A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38321(P2010−38321)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】