塗布材押出容器
【課題】機能的な構成を備え且つ無理抜きに対応できる構成の雌螺子部材を備える。
【解決手段】回転止め116が、充填部材104及び雌螺子部材105の両部材を回転可能に軸線方向に係合するという機能的な構成を備え、且つ、内筒105b内周の雌螺子105jに対応する雄螺子及びスリット105nに対応する突部を外周に有するピンと、外筒105a内周と内筒105b外周との間の環状空間105yに対応する環状凸部を先端に備えた中型を、外筒105a外周に対応する形状を内周に有する外型の一方側から挿入し、型間の隙間に樹脂を流し固化後に離型する際に、中型を一方側に引き抜いてからピンを引き抜くことで、内筒105bのスリット105nにより内筒105bが径方向外側に広がり、この時、ピンより先に中型を引き抜くことで内筒105bが径方向外側に広がることを妨げず、雌螺子105jを破損せずにピンを引き抜ける雌螺子部材105を備える。
【解決手段】回転止め116が、充填部材104及び雌螺子部材105の両部材を回転可能に軸線方向に係合するという機能的な構成を備え、且つ、内筒105b内周の雌螺子105jに対応する雄螺子及びスリット105nに対応する突部を外周に有するピンと、外筒105a内周と内筒105b外周との間の環状空間105yに対応する環状凸部を先端に備えた中型を、外筒105a外周に対応する形状を内周に有する外型の一方側から挿入し、型間の隙間に樹脂を流し固化後に離型する際に、中型を一方側に引き抜いてからピンを引き抜くことで、内筒105bのスリット105nにより内筒105bが径方向外側に広がり、この時、ピンより先に中型を引き抜くことで内筒105bが径方向外側に広がることを妨げず、雌螺子105jを破損せずにピンを引き抜ける雌螺子部材105を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布材を押し出して使用するための塗布材押出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗布用充填物を押し出して使用するための塗布用充填物押出容器として、以下の特許文献1の技術が知られている。この特許文献1に記載の技術は、筒状を成して先端に吐出口を有し塗布用充填物が充填された充填部材と、充填部材と軸線周り回転方向に係合すると共に軸線方向に係合し一体化された本体筒と、外周面に雄螺子を有し前進することにより塗布用充填物を押し出し吐出口から吐出させる移動体と、移動体の雄螺子と螺合する雌螺子を内周面に有し、本体筒と回転方向及び軸線方向に係合し一体化された雌螺子部材(螺子筒)と、移動体の内部形状と回転方向に係合すると共に軸線方向に移動可能に係合する外部形状を有する軸体を備えて移動体と回り止め部を構成し、且つ、本体筒と相対回転可能に軸線方向に係合する操作筒と、を具備し、容器後部を構成する操作筒と容器前部を構成する充填部材とが相対回転されると、雌螺子部材の雌螺子及び移動体の雄螺子より成る螺合部が働き移動体が前進し容器内の塗布材が容器先端の開口から出現するものである。そして、このように雌螺子部材は、移動体の雄螺子と螺合する雌螺子を内周面に有し、移動体を移動させる機能を有するものである。
【0003】
この雌螺子部材は、円筒形状を成し同軸に配置された外筒及び内筒と、これらを連結する連結部とを一体に備え、内筒は外筒内に配置されると共に外筒に対して軸線方向に短尺とされ、連結部は、円環状を成して外筒の先端部と内筒の先端部を連結し、内筒内には、その内周面の先端側から軸線方向の途中まで延びる雌螺子が形成され、外筒と内筒との間で連結部より後方側に、当該後方側に開放される円環状の空間を有する構成とされている。
【0004】
そして、このような雌螺子部材は、一般的に、樹脂による射出成形により製造される。この射出成形にあっては、円柱状に構成され、内筒内周面の雌螺子に対応する雄螺子を外周面に有するコアピン(金型;内型)と、円柱状に構成され、外筒内周面と内筒外周面との間の上記空間に対応する円環状の凸部を先端面の周縁に備えると共に内筒内周面の雌螺子より後方側の部分に対応する凸部を先端面の中央に備えた内型(金型)と、外筒外周面に対応する形状を内周面に有する外型(金型)と、を用意し、型間の隙間に溶融樹脂を流し固化後に離型して上記雌螺子部材を得る方法が一般的に採られる。
【特許文献1】特開2006−136421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記射出成形にあっては、離型の際にコアピンを軸線方向に引き抜くと、所謂無理抜きとなって雌螺子部材の雌螺子が破損してしまう。従って、コアピンを回して抜くことになるが、時間がかかり、製造コストが高くなる。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、無理抜きに対応できる構成の雌螺子部材を備えると共に機能的な構成を備えた塗布材押出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による塗布材押出容器は、容器内に雌螺子部材及び移動体を備え、容器前部と容器後部との相対回転により、雌螺子部材の内周面に設けられた雌螺子及び移動体の外周面に設けられた雄螺子より成る螺合部が働き移動体が前進し容器内の塗布材が容器先端の開口から出現する塗布材押出容器において、容器前部を構成し、塗布材が充填された充填部材と、移動体に対し軸線周りに同期して回転すると共に軸線方向に移動可能に係合し、且つ、容器後部に対し軸線周り回転方向と軸線方向に係合し一体化された回転止め部材と、を具備し、雌螺子部材は、外筒と、この外筒と略同軸を成して内側に配置されその一部又は全部が外筒内に位置する内筒と、を一体に形成して成るものであり、外筒と内筒との間には、軸線方向の一方側に開放される空間部が環状に設けられ、内筒は、その内周面に設けられ、軸線方向の一方側から形成されて軸線方向に延びる雌螺子と、径方向の内外を連通して軸線方向に延び一方側に開放されたスリットと、を備え、外筒は、その外周面に、充填部材と軸線周りに同期して回転する係合部を備え、回転止め部材は、充填部材を相対回転可能に軸線方向に係合する前側の係合部と、雌螺子部材の外筒を相対回転可能に軸線方向に係合する後側の係合部と、を有することを特徴としている。
【0008】
このような塗布材押出容器によれば、移動体に対し軸線周りに同期して回転すると共に軸線方向に移動可能に係合し、且つ、容器後部に対し軸線周り回転方向と軸線方向に係合し一体化された回転止め部材が、その前側の係合部によって、容器前部を構成し塗布材が充填された充填部材を相対回転可能に軸線方向に係合すると共に、その後側の係合部によって、雌螺子が内周面に設けられると共にスリットが一方側に開放されるように設けられた内筒及び外筒を備える雌螺子部材のその外筒を、相対回転可能に軸線方向に係合し、このように、回転止め部材が、充填部材及び雌螺子部材の両部材を相対回転可能に軸線方向に係合するという機能的な構成を備えた塗布材押出容器を提供できる。また、例えば、内筒内周面の雌螺子に対応する雄螺子及びスリットに対応する突部を外周面に有するコアピン(内型)と、外筒内周面と内筒外周面との間の環状の空間部に対応する環状の凸部を先端部に備えた中型とを、外筒外周面に対応する形状を内周面に有する外型の一方側から挿入し、型間の隙間に溶融樹脂を流し固化後に離型する際に、中型を一方側に引き抜いてからコアピンを引き抜くことで、内筒のスリットにより内筒が径方向外側に広がり、このとき、コアピンより先に中型を引き抜くことによって内筒が径方向外側に広がることを妨げず、雌螺子を破損すること無くコアピンを引き抜くことができるという雌螺子部材の成形方法を採用できるようになるため、無理抜きに対応できる構成の雌螺子部材を備えた塗布材押出容器を提供できる。
【0009】
ここで、容器後部及び回転止め部材としては、具体的には、容器後部は、その底部に軸線方向に延びるように突設された係合爪片を有し、回転止め部材は、その底部が、係合爪片により容器後部に対し軸線方向に係合すると共に軸線周り回転方向に係合する構成が挙げられる。
【0010】
また、回転止め部材を構成する円筒部は、スリットが設けられて可撓性を有していると、例えばキャップをした状態で容器を先端側から落下する等し外的衝撃が加わった場合に、上記可撓性により衝撃が緩和され、充填部材や回転止め部材の抜け、各部の破損が防止されるようになる。
【発明の効果】
【0011】
このように本発明による塗布材押出容器によれば、機能的な構成を備えると共に、無理抜きに対応できる構成の雌螺子部材を備えた塗布材押出容器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明による塗布材押出容器の好適な実施形態について図1〜図14を参照しながら説明する。なお、各図において、同一の要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る塗布材押出容器の各状態を示す縦断面図、図3及び図4は、本体筒及び回転止め部材を示す各図、図5及び図6は、回転止め部材を示す各図、図7〜図10は、雌螺子部材を示す各図、図11及び図12は、雌螺子部材の成形方法を説明するための各図である。
【0014】
ここでは、塗布材として、例えば、リップグロス、リップ、アイカラー、アイライナー、美容液、洗浄液、ネールエナメル、ネールケア溶液、ネールリムーバー、マスカラ、アンチエイジング、ヘアーカラー、頭髪用化粧料、オーラルケア、マッサージオイル、角栓ゆるめ液、ファンデーション、コンシーラー、スキンクリーム、マーキングペン等の筆記用具等のインク、液状の医薬品、泥状物等を始めとした液状や、ゼリー状、ゲル状、ペースト状を含む練り状等の半固体や軟固形状等を用いることが可能である。
【0015】
図1及び図2に示すように、塗布材押出容器200は、容器後部を構成する本体筒101と、容器前部を構成する充填部材104とを外形構成として具備し、容器内に、回転止め部材116、雌螺子部材105、移動体106、ピストン107を概略備えている。
【0016】
具体的には、本体筒101は、図3に示すように、有底筒状に構成され、その底部に、前方に向かって突出する係合爪片101aを備えている。この係合爪片101aは、本体筒101の底部に軸線周り周方向に沿って四等配の位置に設けられ、この係合爪片101aの先端部には、半径方向外側に膨出する爪部101cが回転止め部材116を装着するためのものとして設けられている。係合爪片101aの根元部分の半径方向外側の底部には、半径方向外側に広がると共に軸線方向後方へ向かって凹む凹部101bが設けられ、係合爪片101aは、半径方向に可撓性を有する構成とされている。
【0017】
回転止め部材116は、例えば合成樹脂等の可撓性材を用い射出成形により一体に形成されたものであり、図5及び図6に示すように、有底筒状に構成された本体部116xと、この本体部116xの底部中央に、先端側に向かうように立設された軸体116yと、を備える構成とされている。
【0018】
本体部116xの後半部は、円筒部116zとされ、その底部116rには、本体筒101の係合爪片101aの進入を可能とすると共に、係合爪片101aを回転止め部材116の軸線周り回転方向に係合するための開口116aが、係合爪片101aに対応する位置に開口されている。
【0019】
また、本体部116xには、その底部116rの周縁の位置であって対向する一対の開口116a,116aを両側から挟む位置から、平行状態で内方に延びるスリット116bが四個設けられると共に、隣接するスリット116bに挟まれた底部部分116cを円筒部116zから軸線方向に離隔するように底部部分116cより前側に設けられて当該隣接するスリット116bに連設される切欠状部116dを有している。この底部部分116cは、底部116r周縁における底部部分116c及びスリット116bを除く部分116pによって軸線方向に可撓性を有するように支持された半島部とされる。この半島部116cの後端面の周縁部には、後方に突出する円弧状凸部116sが設けられている。
【0020】
また、図6に示すように、本体部116xの円筒部116zの軸線方向中程の内周面には、内側(軸心側)に突出し軸線方向に延びる突条であるクリック歯116fが、周方向に沿って複数設けられている。このクリック歯116fは、雌螺子部材105と軸線周り回転方向にクリック係合するためのものである。
【0021】
また、本体部116xの前半部の後部周壁には、その内周面に、前側の円環状段差面116gが設けられると共に、この前側の円環状段差面116gより後方の位置に後側の円環状段差面116hが設けられ、本体部116xの内周面は、円環状段差面116g,116hを介して後方に行くに従い小径とされている。また、本体部116xの前半部の後部周壁には、内外を連通する前側の開口116iが一対対向して設けられると共に、この一対の前側の開口116iの後側に離間する位置に内外を連通する後側の開口116jが一対対向して設けられている。前側の開口116iは、その後端面が前側の円環状段差面116gの一部と面一で繋がるように開口され、後側の開口116jは、その後端面が後側の円環状段差面116hの一部と面一で繋がるように開口されている。
【0022】
また、前側の開口116iの先端側の内縁に沿う周壁部分には、内側(軸心側)に張り出す前側の円弧状凸部(係合部)116kが設けられ、後側の開口116jの先端側の内縁に沿う周壁部分には、内側に張り出す後側の円弧状凸部116mが設けられている。前側の円弧状凸部116kは、充填部材104を相対回転可能に軸線方向に係合する前側の係合部であり、後側の円弧状凸部116m及び後側の円環状段差面116hは、雌螺子部材105を相対回転可能に軸線方向に係合する後側の係合部である。
【0023】
軸体116yは、周方向に沿って複数設けられ軸線方向に延びる突条116eが回り止め部(回り止め機構)150の一方を構成する回り止めとされる。
【0024】
そして、図3に示すように、本体筒101に対して、回転止め部材116が内挿され、図4に示すように、本体筒101の底部に対して回転止め部材116の円弧状凸部116sが当接した状態で、図3及び図4に示すように、本体筒101の係合爪片101aが内側(軸心側)に撓みながら爪部101cが回転止め部材116の開口116aに進入し当該爪部101cが回転止め部材116の開口116aを通過すると係合爪片101aはその可撓性に応じて元の位置に戻り、爪部101cが、回転止め部材116の底部116rの前側の面に密着して回転止め部材116を軸線方向に係合すると共に係合爪片101aが回転止め部材116の開口116aに軸線周り回転方向に係合し、これにより、回転止め部材116は、本体筒101に同期回転可能且つ軸線方向離脱不能に装着されて一体化されている。
【0025】
ここで、回転止め部材116の半島部116cは、回転止め部材116に切欠状部116d及びスリット116bを設けることで、軸線方向に可撓性を有する構成であるため、本体筒101の爪部101cにより本体筒101側にガタツキ無く押えられている。
【0026】
移動体106は、図1に示すように、略円筒形状に構成され、先端側の外周面に鍔部106aを備えると共に、この鍔部106aより後側の外周面に、螺合部(螺合機構)109の一方を構成する雄螺子106bを軸線方向に沿って有し、且つ、内周面に、放射状に内側に突出するように複数配置されて軸線方向に延びる突条106dを、回り止め部(回り止め機構)150の他方を構成する回り止めとして有している。
【0027】
この移動体106は、回転止め部材116の軸体116yに外挿され、その突条106dが回転止め部材116の軸体116yの突条116e,116e間に進入して軸線周り回転方向に係合し、回転止め部材116に同期回転可能且つ軸線方向移動可能に装着されている。
【0028】
ピストン107は、移動体106の先端部にピストン支持部材108を介して軸線方向移動不能に装着されている。
【0029】
雌螺子部材105は、本実施形態の特徴を成すもので、例えば合成樹脂等の可撓性材を用い射出成形により一体に形成されたものであり、図7〜図10に示すように、略円筒形状に構成された外筒105aと、この外筒105aと略同軸を成して外筒105aの先端側の内側に配置され略円筒形状に構成された内筒105bと、外筒105aの先端側及び内筒105bの後端に連設されてこれらを連結する円環状の連結部105xと、を一体に具備している。これにより、外筒105aと内筒105bとの間には、軸線方向の一方側(図示左側)に開放される空間部105yが円環状に設けられた状態とされている。
【0030】
雌螺子部材105の外筒105aの先端部の外周面には、軸線方向に延びる突条(係合部)105fが、充填部材104に軸線周り回転方向に係合するためのものとして周方向に沿って複数設けられている。
【0031】
また、雌螺子部材105の内筒105bには、径方向の内外を連通しその先端が軸線方向の一方側(前側)に開放されて軸線方向に延びその後端が他方側に開放されたスリット105nが、軸線を挟んだ両側に一対設けられている。このスリット105n,105nより二分割された内筒105bの前半部の内周面には、螺合部(螺合機構)109の他方を構成する雌螺子105jが軸線方向の一方側から形成され、スリット105n,105nにより半円弧状に分けられるようにして設けられている。
【0032】
また、雌螺子部材105の外筒105aの軸線方向中程の外周面には、回転止め部材116の後側の円弧状凸部116m及び後側の円環状段差面116hに軸線方向に係合するための鍔部105cが設けられ、この鍔部105cより後側の外周面には、図1に示すOリング111を装着するための溝部105mが設けられている。
【0033】
また、雌螺子部材105の外筒105aの溝部105mより後側は、クリック歯105sを有する円筒部105tとされている。具体的には、軸線方向に延びその横断面形状が登り傾斜と下り傾斜を有する山型とされたクリック歯105sを有するクリック歯ベース105qが、円筒部105tの周方向に沿って複数設けられた開口105pにそれぞれ配置されて、開口105p周面から突出する支持部105rにより半径方向に可撓性を有するように支持される構成とされている。
【0034】
そして、この雌螺子部材105は、図1に示すように、移動体106に外挿されると共に回転止め部材116に内挿され、その内筒105bの雌螺子105jが移動体106の雄螺子106bに螺合した状態で、その内筒105bの先端面が移動体106の鍔部106aの後端面に突き当てられ、その外筒105aの鍔部105cが回転止め部材116の後側の円弧状凸部116m及び後側の円環状段差面116hとの間に進入し回転止め部材116に軸線方向に係合することで、回転止め部材116に相対回転可能且つ軸線方向移動不能に装着されている。この状態で、雌螺子部材105のクリック歯105sと回転止め部材116のクリック歯116fとは、軸線周り回転方向にクリック係合可能な状態とされている。すなわち、雌螺子部材105の円筒部105t及び回転止め部材116の円筒部116zは、軸線方向に重なり合ってクリック歯105s,116f同士がクリック係合するオーバーラップ区間を軸線方向に有する構成とされている。これらのクリック歯105s,116fは、本体筒101と充填部材104との一方向及び他方向への相対回転を許容するものである、
【0035】
そして、雌螺子部材105の溝部105mにはOリング111が嵌着され、このOリング111により、雌螺子部材105に連結される充填部材104と回転止め部材116に連結される本体筒101には、より良い回転抵抗が発生する。
【0036】
充填部材104は、円筒形状を成すと共に先端が閉じられる形状とされ、内部の充填領域104xに塗布材Lが充填されている。この充填部材104の先端部の外面が塗布部とされ、この塗布部に、内外を連通する吐出口(開口)104cが設けられている。
【0037】
この充填部材104の後端部には、回転止め部材116の前側の円弧状凸部116kに軸線方向に係合するための環状溝部104aが設けられている。また、充填部材104の後端部の内周面には、軸線方向先端側へ所定長に亘って延び周方向に沿って凹凸が密に並設されるローレット104eが、雌螺子部材105の突条105fに軸線周り回転方向に係合するものとして設けられている。
【0038】
この充填部材104は、その後部が、回転止め部材116に内挿されると共に雌螺子部材105の先端部に外挿され、そのローレット104eに雌螺子部材105の突条105fが軸線周り回転方向に係合することで、雌螺子部材105に対し同期回転可能に装着されると共に、その環状溝部104aが回転止め部材116の前側の円弧状凸部116kに対し軸線方向に係合することで、回転止め部材116に相対回転可能且つ軸線方向移動不能に装着されている。すなわち、充填部材104及び雌螺子部材105は、本体筒101に対し相対回転可能且つ軸線方向移動不能とされている。そして、回転止め部材116の先端には、キャップ110が着脱可能に装着され、このキャップ110により充填部材104が覆われ保護されている。
【0039】
そして、雌螺子部材105の雌螺子105j及び移動体106の雄螺子106bにより螺合部(螺合機構)109が構成され、回転止め部材116の突条116e及び移動体106の突条106dにより回り止め部(回り止め機構)150が構成され、雌螺子部材105のクリック歯105s、回転止め部材116のクリック歯116f及び回転止め部材116の可撓性を有する支持部105rによりクリック機構が構成されている。
【0040】
このように構成された塗布材押出容器200にあっては、使用者によりキャップ110が取り外されて本体筒101と充填部材104とが繰り出し方向に相対回転されると、螺合部109の螺合作用が作動し、回り止め部150との協働により、図2に示すように、移動体106及びピストン107が前進し、充填部材104の吐出口104cから塗布材Lが吐出し出現して使用状態にされる。
【0041】
この移動体106の前進時にあっては、雌螺子部材105のクリック歯105sと回転止め部材116のクリック歯116fが回転方向の係止及びその解除を繰り返して、クリック感が生じ、相対回転の度合いや移動体106の前進具合が使用者に感知され、当該クリック感により塗布材Lを適度に押し出すことができ塗布材Lの出し過ぎが防止される。
【0042】
使用後にあって、本体筒101と充填部材104とが繰り戻し方向へ相対回転されると、螺合部109の螺合作用が働き、回り止め部150との協働により、移動体106及びピストン107が後退する。
【0043】
この移動体106の後退時にあっては、雌螺子部材105のクリック歯105sと回転止め部材116のクリック歯116fが回転方向の係止及びその解除を繰り返して、クリック感が生じ、相対回転の度合いや移動体6の後退具合が使用者に感知され、当該クリック感により移動体106の戻し過ぎが防止される。なお、この移動体106の後退により、充填部材104の吐出口104cより内側に所定の空間が形成される。
【0044】
そして、充填部材104内に塗布材Lが残っている場合には、この塗布材Lを使用状態とすべく、使用者により再度本体筒101と充填部材104とが繰り出し方向に相対回転され、以降は上記と同様な動作となり、このような動作が繰り返される。
【0045】
次に、上記構成を有する雌螺子部材105の成形方法について、図11及び図12を参照しながら説明する。先ず、図11及び図12に示すように、以下の金型、すなわち、円柱状に構成され、内筒105bの内周面の雌螺子105jに対応し軸線方向に延びる半円弧状の雄螺子170a,170a、及び、これらの雄螺子170a,170aの周方向間に位置してスリット105nに対応し軸線方向に延びる凸部170bを、先端部の外周面に有する内型である第1のコアピン170と、外筒105aの内周面と内筒105bの外周面との間の円環状の空間部105yに対応する円環状の凸部180aを先端部に備えた中型180と、連結部105xより他方側(図示右側)の外筒105aの内周面に対応する形状を外周面に有すると共に、先端側の中央に、内筒105bの雌螺子105jより他方側の内周面に対応する円柱状の凸部190aを有すると共に、この凸部190aの外周面に設けられてスリット105nに対応し軸線方向に延びる凸部190bを有する第2のコアピン190と、外筒105aの外周面に対応する形状を内周面に有する外型(不図示)と、を用意する。
【0046】
なお、図が煩雑になるのを避けるために、図11及び図12にあっては、外型及び樹脂硬化後の成形品が省略されている。
【0047】
そして、図11に示すように、第1のコアピン170及び中型180を外型の一方側から挿入し、第2のコアピン190を、外型の一方側とは軸線方向反対側の他方側から挿入してコアピン170,190同士を突き合わせる。このとき、図12に示すように、第1のコアピン170の先端面の中央に凹設された横断面円形形状の凹部170xと第2のコアピン190の先端面の中央に突設された円柱状の突部190xとが嵌合し、コアピン170,190同士が正確に位置決めされる。
【0048】
この状態では、図11に示すように、第1のコアピン170の雄螺子170aの先端面と第2のコアピン190の凸部190aの先端面とが当接すると共に、第1のコアピン170の凸部170bの先端面と第2のコアピン190の凸部190bの先端面とが当接し、第1のコアピン170の雄螺子170aの外周面、第2のコアピン190の凸部190aの外周面、中型180の凸部180aの内周面で囲まれる領域、且つ、第1のコアピン170の凸部170b及び第2のコアピン190の凸部190bを除く領域には、内筒105bを成形するための空間が形成され、中型180の凸部180aの先端面と第2のコアピン190との間には、連結部105xを成形するための空間が形成され、中型180の凸部180aの外周面、第2のコアピン190の外周面と外型の内周面との間には、外筒105aを成形するための空間が形成される。
【0049】
次いで、型間の隙間である上記空間に溶融樹脂を流し固化後に離型する。この離型の手順は、中型180を一方側に引き抜き、その後、図12に示すように、第1のコアピン170を一方側に引き抜くと共に、第2のコアピン190を他方側に引き抜き、外型を離型する。
【0050】
そして、第1のコアピン170を一方側に引き抜く際にあっては、既に中型180が一方側に引き抜かれていて、内筒105bが径方向外側に広がることを妨げないため、内筒105bのスリット105n(図9参照)により内筒105bが径方向外側に広がり、雌螺子105jを破損すること無く第1のコアピン170を引き抜くことができる。
【0051】
このように、本実施形態においては、雌螺子部材105が、外筒105aと、この外筒105aと略同軸を成して内側に位置する内筒105bと、を一体に形成して成るものとされ、外筒105aと内筒105bとの間に、軸線方向の一方側に開放されて環状を成す空間部105yと、内筒105bの内周面に設けられて、軸線方向の一方側から形成されて軸線方向に延びる雌螺子105jと、径方向の内外を連通して軸線方向に延び一方側に開放されたスリット105nと、を備える構成とされているため、前述した成形方法、すなわち、外筒105aと内筒105bとの間の環状の空間部105yに対応する中型180を一方側に引き抜いた後、内筒105bの一方側に開放されたスリット105nによる弾性を利用して、内筒105bの雌螺子105jに対応する雄螺子170aを有する第1のコアピン170を一方側に引き抜く方法が採用され、このように、第1のコアピン170より先に中型180を引き抜くことによって、内筒105bが径方向外側に広がることを妨げずに雌螺子105jを破損すること無く第1のコアピン170を引き抜くことができ、従って、製造コストを低減でき生産性を高めることができる新規構成の雌螺子部材105を備えた塗布材押出容器200を提供できる。
【0052】
また、雌螺子部材105にあっては、図8に示すように、スリット105nの他方側の端部、及び、外筒105a及び内筒105bに連設されてこれらを一体とする連結部105xが、雌螺子105jの他方側の端部より他方側に位置しているため、第1のコアピン170を一方側に引き抜く際のスリット105nによる内筒105bの径方向外側への広がりが促進され、一層雌螺子105jを破損すること無く第1のコアピン170を容易に引き抜くことができる。
【0053】
なお、本実施形態では、内筒105bの一部(先端部より後側の部分)が外筒105a内に位置し内筒105bの先端部が外筒105aから突出しているが、内筒105bの全部が外筒105a内に位置していても良い。
【0054】
また、クリック歯105s,116fをラチェット歯とし、移動体106を繰り出す一方向への相対回転のみを許容するようにしても良い。
【0055】
図13は、他の回転止め部材を示す斜視図、図14は、図13に示す回転止め部材の破断正面図である。
【0056】
この回転止め部材126が、図5及び図6に示した回転止め部材116と違う点は、本体部116xの円筒部116zに、螺旋状スリット126aを設けてバネ126bを構成し、その底部126rを可撓性を有するように支持した点である。なお、この回転止め部材126は、先の回転止め部材116と同様に、例えば合成樹脂等の可撓性材を用い射出成形により一体に形成されている。
【0057】
この回転止め部材126を有する塗布材押出容器によれば、例えばキャップ110をした状態で容器を先端側から落下する等し外的衝撃が加わった場合に、上記バネ126bによる引張方向又は圧縮方向の可撓性によって衝撃が緩和され、充填部材104や回転止め部材126の抜け、塗布材Lの漏れ、各部の破損が防止される。
【0058】
因みに、上記実施形態にあっては、雌螺子部材105の回転止めを構成する突条105fと雌螺子105jとを、空間部105yを間に介在させることにより、半径方向に重ねて配置できるため、雌螺子部材105の全長を短くでき容器全体を短くできるという効果もある。
【0059】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、雄螺子、雌螺子は、間欠的に配される突起群又は螺旋状且つ間欠的に配される突起群のように螺子山と同様な働きをするものであっても良く、また、螺合突起は、連続する螺子山であっても良い。
【0060】
また、クリック歯は、鈍角三角形、鋭角三角形、直角三角形、二等辺三角形、半球形状等、クリック感やラチェット機能に応じて種々の形状を選択することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態に係る塗布材押出容器の初期状態を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す塗布材押出容器の移動体が最大に前進したときの縦断面図である。
【図3】図1及び図2に示す塗布材押出容器の本体筒及び回転止め部材の破断分解斜視図である。
【図4】図1及び図2に示す塗布材押出容器の本体筒及び回転止め部材の破断斜視図である。
【図5】図1及び図2中の回転止め部材を示す斜視図である。
【図6】図5に示す回転止め部材の破断斜視図である。
【図7】図1及び図2中の雌螺子部材を示す斜視図である。
【図8】図7に示す雌螺子部材の縦断斜視図である。
【図9】図7に示す雌螺子部材の破断斜視図である。
【図10】図7に示す雌螺子部材の左側面図である。
【図11】図7に示す雌螺子部材の成形金型を成形位置にセットした状態図である。
【図12】図11の状態から成形金型を離型する様子を示す斜視図である。
【図13】他の回転止め部材を示す斜視図である。
【図14】図13に示す回転止め部材の破断正面図である。
【符号の説明】
【0062】
101…本体筒(容器後部)、101a…係合爪片、104…充填部材(容器前部)、104a…充填部材の係合部(前側の係合部に対する係合部)、104c…容器先端の開口、105…雌螺子部材、105a…外筒、105b…内筒、105c…雌螺子部材の係合部(後側の係合部に対する係合部)、105f…雌螺子部材の係合部(充填部材と同期回転)、105j…雌螺子部材の雌螺子、105n…雌螺子部材のスリット、105x…雌螺子部材の連結部、105y…空間部、106…移動体、106b…移動体の雄螺子、109…螺合部、116,126…回転止め部材、116h,116m…回転止め部材の係合部(後側の係合部)、116k…回転止め部材の係合部(前側の係合部)、116r…回転止め部材の底部、116z…回転止め部材の円筒部、126a…回転止め部材のスリット、126b…回転止め部材の圧縮バネ、200…塗布材押出容器、L…塗布材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布材を押し出して使用するための塗布材押出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗布用充填物を押し出して使用するための塗布用充填物押出容器として、以下の特許文献1の技術が知られている。この特許文献1に記載の技術は、筒状を成して先端に吐出口を有し塗布用充填物が充填された充填部材と、充填部材と軸線周り回転方向に係合すると共に軸線方向に係合し一体化された本体筒と、外周面に雄螺子を有し前進することにより塗布用充填物を押し出し吐出口から吐出させる移動体と、移動体の雄螺子と螺合する雌螺子を内周面に有し、本体筒と回転方向及び軸線方向に係合し一体化された雌螺子部材(螺子筒)と、移動体の内部形状と回転方向に係合すると共に軸線方向に移動可能に係合する外部形状を有する軸体を備えて移動体と回り止め部を構成し、且つ、本体筒と相対回転可能に軸線方向に係合する操作筒と、を具備し、容器後部を構成する操作筒と容器前部を構成する充填部材とが相対回転されると、雌螺子部材の雌螺子及び移動体の雄螺子より成る螺合部が働き移動体が前進し容器内の塗布材が容器先端の開口から出現するものである。そして、このように雌螺子部材は、移動体の雄螺子と螺合する雌螺子を内周面に有し、移動体を移動させる機能を有するものである。
【0003】
この雌螺子部材は、円筒形状を成し同軸に配置された外筒及び内筒と、これらを連結する連結部とを一体に備え、内筒は外筒内に配置されると共に外筒に対して軸線方向に短尺とされ、連結部は、円環状を成して外筒の先端部と内筒の先端部を連結し、内筒内には、その内周面の先端側から軸線方向の途中まで延びる雌螺子が形成され、外筒と内筒との間で連結部より後方側に、当該後方側に開放される円環状の空間を有する構成とされている。
【0004】
そして、このような雌螺子部材は、一般的に、樹脂による射出成形により製造される。この射出成形にあっては、円柱状に構成され、内筒内周面の雌螺子に対応する雄螺子を外周面に有するコアピン(金型;内型)と、円柱状に構成され、外筒内周面と内筒外周面との間の上記空間に対応する円環状の凸部を先端面の周縁に備えると共に内筒内周面の雌螺子より後方側の部分に対応する凸部を先端面の中央に備えた内型(金型)と、外筒外周面に対応する形状を内周面に有する外型(金型)と、を用意し、型間の隙間に溶融樹脂を流し固化後に離型して上記雌螺子部材を得る方法が一般的に採られる。
【特許文献1】特開2006−136421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記射出成形にあっては、離型の際にコアピンを軸線方向に引き抜くと、所謂無理抜きとなって雌螺子部材の雌螺子が破損してしまう。従って、コアピンを回して抜くことになるが、時間がかかり、製造コストが高くなる。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、無理抜きに対応できる構成の雌螺子部材を備えると共に機能的な構成を備えた塗布材押出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による塗布材押出容器は、容器内に雌螺子部材及び移動体を備え、容器前部と容器後部との相対回転により、雌螺子部材の内周面に設けられた雌螺子及び移動体の外周面に設けられた雄螺子より成る螺合部が働き移動体が前進し容器内の塗布材が容器先端の開口から出現する塗布材押出容器において、容器前部を構成し、塗布材が充填された充填部材と、移動体に対し軸線周りに同期して回転すると共に軸線方向に移動可能に係合し、且つ、容器後部に対し軸線周り回転方向と軸線方向に係合し一体化された回転止め部材と、を具備し、雌螺子部材は、外筒と、この外筒と略同軸を成して内側に配置されその一部又は全部が外筒内に位置する内筒と、を一体に形成して成るものであり、外筒と内筒との間には、軸線方向の一方側に開放される空間部が環状に設けられ、内筒は、その内周面に設けられ、軸線方向の一方側から形成されて軸線方向に延びる雌螺子と、径方向の内外を連通して軸線方向に延び一方側に開放されたスリットと、を備え、外筒は、その外周面に、充填部材と軸線周りに同期して回転する係合部を備え、回転止め部材は、充填部材を相対回転可能に軸線方向に係合する前側の係合部と、雌螺子部材の外筒を相対回転可能に軸線方向に係合する後側の係合部と、を有することを特徴としている。
【0008】
このような塗布材押出容器によれば、移動体に対し軸線周りに同期して回転すると共に軸線方向に移動可能に係合し、且つ、容器後部に対し軸線周り回転方向と軸線方向に係合し一体化された回転止め部材が、その前側の係合部によって、容器前部を構成し塗布材が充填された充填部材を相対回転可能に軸線方向に係合すると共に、その後側の係合部によって、雌螺子が内周面に設けられると共にスリットが一方側に開放されるように設けられた内筒及び外筒を備える雌螺子部材のその外筒を、相対回転可能に軸線方向に係合し、このように、回転止め部材が、充填部材及び雌螺子部材の両部材を相対回転可能に軸線方向に係合するという機能的な構成を備えた塗布材押出容器を提供できる。また、例えば、内筒内周面の雌螺子に対応する雄螺子及びスリットに対応する突部を外周面に有するコアピン(内型)と、外筒内周面と内筒外周面との間の環状の空間部に対応する環状の凸部を先端部に備えた中型とを、外筒外周面に対応する形状を内周面に有する外型の一方側から挿入し、型間の隙間に溶融樹脂を流し固化後に離型する際に、中型を一方側に引き抜いてからコアピンを引き抜くことで、内筒のスリットにより内筒が径方向外側に広がり、このとき、コアピンより先に中型を引き抜くことによって内筒が径方向外側に広がることを妨げず、雌螺子を破損すること無くコアピンを引き抜くことができるという雌螺子部材の成形方法を採用できるようになるため、無理抜きに対応できる構成の雌螺子部材を備えた塗布材押出容器を提供できる。
【0009】
ここで、容器後部及び回転止め部材としては、具体的には、容器後部は、その底部に軸線方向に延びるように突設された係合爪片を有し、回転止め部材は、その底部が、係合爪片により容器後部に対し軸線方向に係合すると共に軸線周り回転方向に係合する構成が挙げられる。
【0010】
また、回転止め部材を構成する円筒部は、スリットが設けられて可撓性を有していると、例えばキャップをした状態で容器を先端側から落下する等し外的衝撃が加わった場合に、上記可撓性により衝撃が緩和され、充填部材や回転止め部材の抜け、各部の破損が防止されるようになる。
【発明の効果】
【0011】
このように本発明による塗布材押出容器によれば、機能的な構成を備えると共に、無理抜きに対応できる構成の雌螺子部材を備えた塗布材押出容器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明による塗布材押出容器の好適な実施形態について図1〜図14を参照しながら説明する。なお、各図において、同一の要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る塗布材押出容器の各状態を示す縦断面図、図3及び図4は、本体筒及び回転止め部材を示す各図、図5及び図6は、回転止め部材を示す各図、図7〜図10は、雌螺子部材を示す各図、図11及び図12は、雌螺子部材の成形方法を説明するための各図である。
【0014】
ここでは、塗布材として、例えば、リップグロス、リップ、アイカラー、アイライナー、美容液、洗浄液、ネールエナメル、ネールケア溶液、ネールリムーバー、マスカラ、アンチエイジング、ヘアーカラー、頭髪用化粧料、オーラルケア、マッサージオイル、角栓ゆるめ液、ファンデーション、コンシーラー、スキンクリーム、マーキングペン等の筆記用具等のインク、液状の医薬品、泥状物等を始めとした液状や、ゼリー状、ゲル状、ペースト状を含む練り状等の半固体や軟固形状等を用いることが可能である。
【0015】
図1及び図2に示すように、塗布材押出容器200は、容器後部を構成する本体筒101と、容器前部を構成する充填部材104とを外形構成として具備し、容器内に、回転止め部材116、雌螺子部材105、移動体106、ピストン107を概略備えている。
【0016】
具体的には、本体筒101は、図3に示すように、有底筒状に構成され、その底部に、前方に向かって突出する係合爪片101aを備えている。この係合爪片101aは、本体筒101の底部に軸線周り周方向に沿って四等配の位置に設けられ、この係合爪片101aの先端部には、半径方向外側に膨出する爪部101cが回転止め部材116を装着するためのものとして設けられている。係合爪片101aの根元部分の半径方向外側の底部には、半径方向外側に広がると共に軸線方向後方へ向かって凹む凹部101bが設けられ、係合爪片101aは、半径方向に可撓性を有する構成とされている。
【0017】
回転止め部材116は、例えば合成樹脂等の可撓性材を用い射出成形により一体に形成されたものであり、図5及び図6に示すように、有底筒状に構成された本体部116xと、この本体部116xの底部中央に、先端側に向かうように立設された軸体116yと、を備える構成とされている。
【0018】
本体部116xの後半部は、円筒部116zとされ、その底部116rには、本体筒101の係合爪片101aの進入を可能とすると共に、係合爪片101aを回転止め部材116の軸線周り回転方向に係合するための開口116aが、係合爪片101aに対応する位置に開口されている。
【0019】
また、本体部116xには、その底部116rの周縁の位置であって対向する一対の開口116a,116aを両側から挟む位置から、平行状態で内方に延びるスリット116bが四個設けられると共に、隣接するスリット116bに挟まれた底部部分116cを円筒部116zから軸線方向に離隔するように底部部分116cより前側に設けられて当該隣接するスリット116bに連設される切欠状部116dを有している。この底部部分116cは、底部116r周縁における底部部分116c及びスリット116bを除く部分116pによって軸線方向に可撓性を有するように支持された半島部とされる。この半島部116cの後端面の周縁部には、後方に突出する円弧状凸部116sが設けられている。
【0020】
また、図6に示すように、本体部116xの円筒部116zの軸線方向中程の内周面には、内側(軸心側)に突出し軸線方向に延びる突条であるクリック歯116fが、周方向に沿って複数設けられている。このクリック歯116fは、雌螺子部材105と軸線周り回転方向にクリック係合するためのものである。
【0021】
また、本体部116xの前半部の後部周壁には、その内周面に、前側の円環状段差面116gが設けられると共に、この前側の円環状段差面116gより後方の位置に後側の円環状段差面116hが設けられ、本体部116xの内周面は、円環状段差面116g,116hを介して後方に行くに従い小径とされている。また、本体部116xの前半部の後部周壁には、内外を連通する前側の開口116iが一対対向して設けられると共に、この一対の前側の開口116iの後側に離間する位置に内外を連通する後側の開口116jが一対対向して設けられている。前側の開口116iは、その後端面が前側の円環状段差面116gの一部と面一で繋がるように開口され、後側の開口116jは、その後端面が後側の円環状段差面116hの一部と面一で繋がるように開口されている。
【0022】
また、前側の開口116iの先端側の内縁に沿う周壁部分には、内側(軸心側)に張り出す前側の円弧状凸部(係合部)116kが設けられ、後側の開口116jの先端側の内縁に沿う周壁部分には、内側に張り出す後側の円弧状凸部116mが設けられている。前側の円弧状凸部116kは、充填部材104を相対回転可能に軸線方向に係合する前側の係合部であり、後側の円弧状凸部116m及び後側の円環状段差面116hは、雌螺子部材105を相対回転可能に軸線方向に係合する後側の係合部である。
【0023】
軸体116yは、周方向に沿って複数設けられ軸線方向に延びる突条116eが回り止め部(回り止め機構)150の一方を構成する回り止めとされる。
【0024】
そして、図3に示すように、本体筒101に対して、回転止め部材116が内挿され、図4に示すように、本体筒101の底部に対して回転止め部材116の円弧状凸部116sが当接した状態で、図3及び図4に示すように、本体筒101の係合爪片101aが内側(軸心側)に撓みながら爪部101cが回転止め部材116の開口116aに進入し当該爪部101cが回転止め部材116の開口116aを通過すると係合爪片101aはその可撓性に応じて元の位置に戻り、爪部101cが、回転止め部材116の底部116rの前側の面に密着して回転止め部材116を軸線方向に係合すると共に係合爪片101aが回転止め部材116の開口116aに軸線周り回転方向に係合し、これにより、回転止め部材116は、本体筒101に同期回転可能且つ軸線方向離脱不能に装着されて一体化されている。
【0025】
ここで、回転止め部材116の半島部116cは、回転止め部材116に切欠状部116d及びスリット116bを設けることで、軸線方向に可撓性を有する構成であるため、本体筒101の爪部101cにより本体筒101側にガタツキ無く押えられている。
【0026】
移動体106は、図1に示すように、略円筒形状に構成され、先端側の外周面に鍔部106aを備えると共に、この鍔部106aより後側の外周面に、螺合部(螺合機構)109の一方を構成する雄螺子106bを軸線方向に沿って有し、且つ、内周面に、放射状に内側に突出するように複数配置されて軸線方向に延びる突条106dを、回り止め部(回り止め機構)150の他方を構成する回り止めとして有している。
【0027】
この移動体106は、回転止め部材116の軸体116yに外挿され、その突条106dが回転止め部材116の軸体116yの突条116e,116e間に進入して軸線周り回転方向に係合し、回転止め部材116に同期回転可能且つ軸線方向移動可能に装着されている。
【0028】
ピストン107は、移動体106の先端部にピストン支持部材108を介して軸線方向移動不能に装着されている。
【0029】
雌螺子部材105は、本実施形態の特徴を成すもので、例えば合成樹脂等の可撓性材を用い射出成形により一体に形成されたものであり、図7〜図10に示すように、略円筒形状に構成された外筒105aと、この外筒105aと略同軸を成して外筒105aの先端側の内側に配置され略円筒形状に構成された内筒105bと、外筒105aの先端側及び内筒105bの後端に連設されてこれらを連結する円環状の連結部105xと、を一体に具備している。これにより、外筒105aと内筒105bとの間には、軸線方向の一方側(図示左側)に開放される空間部105yが円環状に設けられた状態とされている。
【0030】
雌螺子部材105の外筒105aの先端部の外周面には、軸線方向に延びる突条(係合部)105fが、充填部材104に軸線周り回転方向に係合するためのものとして周方向に沿って複数設けられている。
【0031】
また、雌螺子部材105の内筒105bには、径方向の内外を連通しその先端が軸線方向の一方側(前側)に開放されて軸線方向に延びその後端が他方側に開放されたスリット105nが、軸線を挟んだ両側に一対設けられている。このスリット105n,105nより二分割された内筒105bの前半部の内周面には、螺合部(螺合機構)109の他方を構成する雌螺子105jが軸線方向の一方側から形成され、スリット105n,105nにより半円弧状に分けられるようにして設けられている。
【0032】
また、雌螺子部材105の外筒105aの軸線方向中程の外周面には、回転止め部材116の後側の円弧状凸部116m及び後側の円環状段差面116hに軸線方向に係合するための鍔部105cが設けられ、この鍔部105cより後側の外周面には、図1に示すOリング111を装着するための溝部105mが設けられている。
【0033】
また、雌螺子部材105の外筒105aの溝部105mより後側は、クリック歯105sを有する円筒部105tとされている。具体的には、軸線方向に延びその横断面形状が登り傾斜と下り傾斜を有する山型とされたクリック歯105sを有するクリック歯ベース105qが、円筒部105tの周方向に沿って複数設けられた開口105pにそれぞれ配置されて、開口105p周面から突出する支持部105rにより半径方向に可撓性を有するように支持される構成とされている。
【0034】
そして、この雌螺子部材105は、図1に示すように、移動体106に外挿されると共に回転止め部材116に内挿され、その内筒105bの雌螺子105jが移動体106の雄螺子106bに螺合した状態で、その内筒105bの先端面が移動体106の鍔部106aの後端面に突き当てられ、その外筒105aの鍔部105cが回転止め部材116の後側の円弧状凸部116m及び後側の円環状段差面116hとの間に進入し回転止め部材116に軸線方向に係合することで、回転止め部材116に相対回転可能且つ軸線方向移動不能に装着されている。この状態で、雌螺子部材105のクリック歯105sと回転止め部材116のクリック歯116fとは、軸線周り回転方向にクリック係合可能な状態とされている。すなわち、雌螺子部材105の円筒部105t及び回転止め部材116の円筒部116zは、軸線方向に重なり合ってクリック歯105s,116f同士がクリック係合するオーバーラップ区間を軸線方向に有する構成とされている。これらのクリック歯105s,116fは、本体筒101と充填部材104との一方向及び他方向への相対回転を許容するものである、
【0035】
そして、雌螺子部材105の溝部105mにはOリング111が嵌着され、このOリング111により、雌螺子部材105に連結される充填部材104と回転止め部材116に連結される本体筒101には、より良い回転抵抗が発生する。
【0036】
充填部材104は、円筒形状を成すと共に先端が閉じられる形状とされ、内部の充填領域104xに塗布材Lが充填されている。この充填部材104の先端部の外面が塗布部とされ、この塗布部に、内外を連通する吐出口(開口)104cが設けられている。
【0037】
この充填部材104の後端部には、回転止め部材116の前側の円弧状凸部116kに軸線方向に係合するための環状溝部104aが設けられている。また、充填部材104の後端部の内周面には、軸線方向先端側へ所定長に亘って延び周方向に沿って凹凸が密に並設されるローレット104eが、雌螺子部材105の突条105fに軸線周り回転方向に係合するものとして設けられている。
【0038】
この充填部材104は、その後部が、回転止め部材116に内挿されると共に雌螺子部材105の先端部に外挿され、そのローレット104eに雌螺子部材105の突条105fが軸線周り回転方向に係合することで、雌螺子部材105に対し同期回転可能に装着されると共に、その環状溝部104aが回転止め部材116の前側の円弧状凸部116kに対し軸線方向に係合することで、回転止め部材116に相対回転可能且つ軸線方向移動不能に装着されている。すなわち、充填部材104及び雌螺子部材105は、本体筒101に対し相対回転可能且つ軸線方向移動不能とされている。そして、回転止め部材116の先端には、キャップ110が着脱可能に装着され、このキャップ110により充填部材104が覆われ保護されている。
【0039】
そして、雌螺子部材105の雌螺子105j及び移動体106の雄螺子106bにより螺合部(螺合機構)109が構成され、回転止め部材116の突条116e及び移動体106の突条106dにより回り止め部(回り止め機構)150が構成され、雌螺子部材105のクリック歯105s、回転止め部材116のクリック歯116f及び回転止め部材116の可撓性を有する支持部105rによりクリック機構が構成されている。
【0040】
このように構成された塗布材押出容器200にあっては、使用者によりキャップ110が取り外されて本体筒101と充填部材104とが繰り出し方向に相対回転されると、螺合部109の螺合作用が作動し、回り止め部150との協働により、図2に示すように、移動体106及びピストン107が前進し、充填部材104の吐出口104cから塗布材Lが吐出し出現して使用状態にされる。
【0041】
この移動体106の前進時にあっては、雌螺子部材105のクリック歯105sと回転止め部材116のクリック歯116fが回転方向の係止及びその解除を繰り返して、クリック感が生じ、相対回転の度合いや移動体106の前進具合が使用者に感知され、当該クリック感により塗布材Lを適度に押し出すことができ塗布材Lの出し過ぎが防止される。
【0042】
使用後にあって、本体筒101と充填部材104とが繰り戻し方向へ相対回転されると、螺合部109の螺合作用が働き、回り止め部150との協働により、移動体106及びピストン107が後退する。
【0043】
この移動体106の後退時にあっては、雌螺子部材105のクリック歯105sと回転止め部材116のクリック歯116fが回転方向の係止及びその解除を繰り返して、クリック感が生じ、相対回転の度合いや移動体6の後退具合が使用者に感知され、当該クリック感により移動体106の戻し過ぎが防止される。なお、この移動体106の後退により、充填部材104の吐出口104cより内側に所定の空間が形成される。
【0044】
そして、充填部材104内に塗布材Lが残っている場合には、この塗布材Lを使用状態とすべく、使用者により再度本体筒101と充填部材104とが繰り出し方向に相対回転され、以降は上記と同様な動作となり、このような動作が繰り返される。
【0045】
次に、上記構成を有する雌螺子部材105の成形方法について、図11及び図12を参照しながら説明する。先ず、図11及び図12に示すように、以下の金型、すなわち、円柱状に構成され、内筒105bの内周面の雌螺子105jに対応し軸線方向に延びる半円弧状の雄螺子170a,170a、及び、これらの雄螺子170a,170aの周方向間に位置してスリット105nに対応し軸線方向に延びる凸部170bを、先端部の外周面に有する内型である第1のコアピン170と、外筒105aの内周面と内筒105bの外周面との間の円環状の空間部105yに対応する円環状の凸部180aを先端部に備えた中型180と、連結部105xより他方側(図示右側)の外筒105aの内周面に対応する形状を外周面に有すると共に、先端側の中央に、内筒105bの雌螺子105jより他方側の内周面に対応する円柱状の凸部190aを有すると共に、この凸部190aの外周面に設けられてスリット105nに対応し軸線方向に延びる凸部190bを有する第2のコアピン190と、外筒105aの外周面に対応する形状を内周面に有する外型(不図示)と、を用意する。
【0046】
なお、図が煩雑になるのを避けるために、図11及び図12にあっては、外型及び樹脂硬化後の成形品が省略されている。
【0047】
そして、図11に示すように、第1のコアピン170及び中型180を外型の一方側から挿入し、第2のコアピン190を、外型の一方側とは軸線方向反対側の他方側から挿入してコアピン170,190同士を突き合わせる。このとき、図12に示すように、第1のコアピン170の先端面の中央に凹設された横断面円形形状の凹部170xと第2のコアピン190の先端面の中央に突設された円柱状の突部190xとが嵌合し、コアピン170,190同士が正確に位置決めされる。
【0048】
この状態では、図11に示すように、第1のコアピン170の雄螺子170aの先端面と第2のコアピン190の凸部190aの先端面とが当接すると共に、第1のコアピン170の凸部170bの先端面と第2のコアピン190の凸部190bの先端面とが当接し、第1のコアピン170の雄螺子170aの外周面、第2のコアピン190の凸部190aの外周面、中型180の凸部180aの内周面で囲まれる領域、且つ、第1のコアピン170の凸部170b及び第2のコアピン190の凸部190bを除く領域には、内筒105bを成形するための空間が形成され、中型180の凸部180aの先端面と第2のコアピン190との間には、連結部105xを成形するための空間が形成され、中型180の凸部180aの外周面、第2のコアピン190の外周面と外型の内周面との間には、外筒105aを成形するための空間が形成される。
【0049】
次いで、型間の隙間である上記空間に溶融樹脂を流し固化後に離型する。この離型の手順は、中型180を一方側に引き抜き、その後、図12に示すように、第1のコアピン170を一方側に引き抜くと共に、第2のコアピン190を他方側に引き抜き、外型を離型する。
【0050】
そして、第1のコアピン170を一方側に引き抜く際にあっては、既に中型180が一方側に引き抜かれていて、内筒105bが径方向外側に広がることを妨げないため、内筒105bのスリット105n(図9参照)により内筒105bが径方向外側に広がり、雌螺子105jを破損すること無く第1のコアピン170を引き抜くことができる。
【0051】
このように、本実施形態においては、雌螺子部材105が、外筒105aと、この外筒105aと略同軸を成して内側に位置する内筒105bと、を一体に形成して成るものとされ、外筒105aと内筒105bとの間に、軸線方向の一方側に開放されて環状を成す空間部105yと、内筒105bの内周面に設けられて、軸線方向の一方側から形成されて軸線方向に延びる雌螺子105jと、径方向の内外を連通して軸線方向に延び一方側に開放されたスリット105nと、を備える構成とされているため、前述した成形方法、すなわち、外筒105aと内筒105bとの間の環状の空間部105yに対応する中型180を一方側に引き抜いた後、内筒105bの一方側に開放されたスリット105nによる弾性を利用して、内筒105bの雌螺子105jに対応する雄螺子170aを有する第1のコアピン170を一方側に引き抜く方法が採用され、このように、第1のコアピン170より先に中型180を引き抜くことによって、内筒105bが径方向外側に広がることを妨げずに雌螺子105jを破損すること無く第1のコアピン170を引き抜くことができ、従って、製造コストを低減でき生産性を高めることができる新規構成の雌螺子部材105を備えた塗布材押出容器200を提供できる。
【0052】
また、雌螺子部材105にあっては、図8に示すように、スリット105nの他方側の端部、及び、外筒105a及び内筒105bに連設されてこれらを一体とする連結部105xが、雌螺子105jの他方側の端部より他方側に位置しているため、第1のコアピン170を一方側に引き抜く際のスリット105nによる内筒105bの径方向外側への広がりが促進され、一層雌螺子105jを破損すること無く第1のコアピン170を容易に引き抜くことができる。
【0053】
なお、本実施形態では、内筒105bの一部(先端部より後側の部分)が外筒105a内に位置し内筒105bの先端部が外筒105aから突出しているが、内筒105bの全部が外筒105a内に位置していても良い。
【0054】
また、クリック歯105s,116fをラチェット歯とし、移動体106を繰り出す一方向への相対回転のみを許容するようにしても良い。
【0055】
図13は、他の回転止め部材を示す斜視図、図14は、図13に示す回転止め部材の破断正面図である。
【0056】
この回転止め部材126が、図5及び図6に示した回転止め部材116と違う点は、本体部116xの円筒部116zに、螺旋状スリット126aを設けてバネ126bを構成し、その底部126rを可撓性を有するように支持した点である。なお、この回転止め部材126は、先の回転止め部材116と同様に、例えば合成樹脂等の可撓性材を用い射出成形により一体に形成されている。
【0057】
この回転止め部材126を有する塗布材押出容器によれば、例えばキャップ110をした状態で容器を先端側から落下する等し外的衝撃が加わった場合に、上記バネ126bによる引張方向又は圧縮方向の可撓性によって衝撃が緩和され、充填部材104や回転止め部材126の抜け、塗布材Lの漏れ、各部の破損が防止される。
【0058】
因みに、上記実施形態にあっては、雌螺子部材105の回転止めを構成する突条105fと雌螺子105jとを、空間部105yを間に介在させることにより、半径方向に重ねて配置できるため、雌螺子部材105の全長を短くでき容器全体を短くできるという効果もある。
【0059】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、雄螺子、雌螺子は、間欠的に配される突起群又は螺旋状且つ間欠的に配される突起群のように螺子山と同様な働きをするものであっても良く、また、螺合突起は、連続する螺子山であっても良い。
【0060】
また、クリック歯は、鈍角三角形、鋭角三角形、直角三角形、二等辺三角形、半球形状等、クリック感やラチェット機能に応じて種々の形状を選択することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態に係る塗布材押出容器の初期状態を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す塗布材押出容器の移動体が最大に前進したときの縦断面図である。
【図3】図1及び図2に示す塗布材押出容器の本体筒及び回転止め部材の破断分解斜視図である。
【図4】図1及び図2に示す塗布材押出容器の本体筒及び回転止め部材の破断斜視図である。
【図5】図1及び図2中の回転止め部材を示す斜視図である。
【図6】図5に示す回転止め部材の破断斜視図である。
【図7】図1及び図2中の雌螺子部材を示す斜視図である。
【図8】図7に示す雌螺子部材の縦断斜視図である。
【図9】図7に示す雌螺子部材の破断斜視図である。
【図10】図7に示す雌螺子部材の左側面図である。
【図11】図7に示す雌螺子部材の成形金型を成形位置にセットした状態図である。
【図12】図11の状態から成形金型を離型する様子を示す斜視図である。
【図13】他の回転止め部材を示す斜視図である。
【図14】図13に示す回転止め部材の破断正面図である。
【符号の説明】
【0062】
101…本体筒(容器後部)、101a…係合爪片、104…充填部材(容器前部)、104a…充填部材の係合部(前側の係合部に対する係合部)、104c…容器先端の開口、105…雌螺子部材、105a…外筒、105b…内筒、105c…雌螺子部材の係合部(後側の係合部に対する係合部)、105f…雌螺子部材の係合部(充填部材と同期回転)、105j…雌螺子部材の雌螺子、105n…雌螺子部材のスリット、105x…雌螺子部材の連結部、105y…空間部、106…移動体、106b…移動体の雄螺子、109…螺合部、116,126…回転止め部材、116h,116m…回転止め部材の係合部(後側の係合部)、116k…回転止め部材の係合部(前側の係合部)、116r…回転止め部材の底部、116z…回転止め部材の円筒部、126a…回転止め部材のスリット、126b…回転止め部材の圧縮バネ、200…塗布材押出容器、L…塗布材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に雌螺子部材及び移動体を備え、容器前部と容器後部との相対回転により、前記雌螺子部材の内周面に設けられた雌螺子及び前記移動体の外周面に設けられた雄螺子より成る螺合部が働き前記移動体が前進し容器内の塗布材が容器先端の開口から出現する塗布材押出容器において、
前記容器前部を構成し、前記塗布材が充填された充填部材と、
前記移動体に対し軸線周りに同期して回転すると共に軸線方向に移動可能に係合し、且つ、前記容器後部に対し軸線周り回転方向と軸線方向に係合し一体化された回転止め部材と、を具備し、
前記雌螺子部材は、
外筒と、
この外筒と略同軸を成して内側に配置されその一部又は全部が前記外筒内に位置する内筒と、を一体に形成して成るものであり、
前記外筒と前記内筒との間には、軸線方向の一方側に開放される空間部が環状に設けられ、
前記内筒は、
その内周面に設けられ、軸線方向の前記一方側から形成されて軸線方向に延びる前記雌螺子と、
径方向の内外を連通して軸線方向に延び前記一方側に開放されたスリットと、を備え、
前記外筒は、
その外周面に、前記充填部材と軸線周りに同期して回転する係合部を備え、
前記回転止め部材は、
前記充填部材を相対回転可能に軸線方向に係合する前側の係合部と、
前記雌螺子部材の外筒を相対回転可能に軸線方向に係合する後側の係合部と、を有することを特徴とする塗布材押出容器。
【請求項2】
前記容器後部は、その底部に軸線方向に延びるように突設された係合爪片を有し、
前記回転止め部材は、その底部が、前記係合爪片により前記容器後部に対し軸線方向に係合すると共に軸線周り回転方向に係合することを特徴とする請求項1記載の塗布材押出容器。
【請求項3】
前記回転止め部材を構成する円筒部は、スリットが設けられて可撓性を有することを特徴とする請求項1又は2記載の塗布材押出容器。
【請求項1】
容器内に雌螺子部材及び移動体を備え、容器前部と容器後部との相対回転により、前記雌螺子部材の内周面に設けられた雌螺子及び前記移動体の外周面に設けられた雄螺子より成る螺合部が働き前記移動体が前進し容器内の塗布材が容器先端の開口から出現する塗布材押出容器において、
前記容器前部を構成し、前記塗布材が充填された充填部材と、
前記移動体に対し軸線周りに同期して回転すると共に軸線方向に移動可能に係合し、且つ、前記容器後部に対し軸線周り回転方向と軸線方向に係合し一体化された回転止め部材と、を具備し、
前記雌螺子部材は、
外筒と、
この外筒と略同軸を成して内側に配置されその一部又は全部が前記外筒内に位置する内筒と、を一体に形成して成るものであり、
前記外筒と前記内筒との間には、軸線方向の一方側に開放される空間部が環状に設けられ、
前記内筒は、
その内周面に設けられ、軸線方向の前記一方側から形成されて軸線方向に延びる前記雌螺子と、
径方向の内外を連通して軸線方向に延び前記一方側に開放されたスリットと、を備え、
前記外筒は、
その外周面に、前記充填部材と軸線周りに同期して回転する係合部を備え、
前記回転止め部材は、
前記充填部材を相対回転可能に軸線方向に係合する前側の係合部と、
前記雌螺子部材の外筒を相対回転可能に軸線方向に係合する後側の係合部と、を有することを特徴とする塗布材押出容器。
【請求項2】
前記容器後部は、その底部に軸線方向に延びるように突設された係合爪片を有し、
前記回転止め部材は、その底部が、前記係合爪片により前記容器後部に対し軸線方向に係合すると共に軸線周り回転方向に係合することを特徴とする請求項1記載の塗布材押出容器。
【請求項3】
前記回転止め部材を構成する円筒部は、スリットが設けられて可撓性を有することを特徴とする請求項1又は2記載の塗布材押出容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−78174(P2009−78174A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330133(P2008−330133)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【分割の表示】特願2007−93508(P2007−93508)の分割
【原出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(591147339)株式会社トキワ (141)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【分割の表示】特願2007−93508(P2007−93508)の分割
【原出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(591147339)株式会社トキワ (141)
【Fターム(参考)】
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