説明

塗布液供給装置及びインクジェット記録装置

【課題】装置を汚さずに塗布液を安定供給することができる塗布液供給装置及びインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】凹部102を有する空間形成ブロック100を塗布ローラ34の外周面に当接させることにより、塗布ローラ34の外周面上に処理液保持空間Sを形成し、この処理液保持空間Sに処理液を循環供給することにより、回転する塗布ローラ34の外周面に所定の膜厚で処理液を供給する。空間形成ブロック100は、枠状に形成された当接部104を介して塗布ローラ34に当接され、当接部104には、塗布ローラ34の回転方向上流側の部位に溝110が形成される。塗布されずに空間形成ブロック100に戻る処理液は、この溝110を介して処理液保持空間Sに回収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布液供給装置及びインクジェット記録装置に係り、特に塗布ローラに塗布液を供給する塗布液供給装置及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インク滴を吐出して画像を形成するインクジェット記録装置では、複数色のインクを用いてカラー画像を形成すると、カラーブリードが発生するという問題がある。また、普通紙などの高浸透性の記録媒体に画像を形成すると、フェザリングが発生するという問題がある。
【0003】
このようなカラーブリードやフェザリングは、画像の品位を低下させることから、種々の防止策が提案されている。その一つとして、あらかじめ記録媒体の上にインクと反応して、その色材を凝集又は不溶化させる処理液を塗布し、この処理液が塗布された記録媒体の上にインク滴を吐出して画像を形成する方法が知られている。この方法において、処理液の塗布は、塗布ローラ又はインクジェットヘッドを用いて行われ、周面に処理液が付与された塗布ローラを記録媒体に当接させて、又は、インクジェットヘッドから記録媒体に向けて処理液を吐出させて、記録媒体に処理液を塗布している。
【0004】
そして、特許文献1には、塗布ローラに処理液を供給する機構として、塗布ローラの外周面に塗布液保持部材を当接させ、この塗布液保持部材によって塗布ローラの外周面上に形成される空間(塗布液保持空間)に処理液を供給して、塗布ローラに処理液を供給する機構が記載されている。この機構によれば、塗布ローラは、回転することにより、その外周面が塗布液保持空間に保持された処理液に接触して、外周面に処理液が供給される。
【特許文献1】特開2007−117806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、塗布ローラによって記録媒体に処理液を塗布する場合、通常、塗布ローラは、記録媒体の搬送面から離間させて待機させておき、記録媒体の搬送タイミングに合せて、記録媒体に押圧当接される。
【0006】
しかしながら、特許文献1では、待機時に塗布ローラを回転させていないため、塗布ローラへの処理液の供給が安定せず、この結果、記録媒体に塗布される処理液にムラが発生するという欠点がある。
【0007】
その一方で、待機時に塗布ローラを回転させていると、塗布液保持部材から供給された処理液が、そのまま塗布液保持部材に戻るため、塗布液保持部材に戻る部分に液溜まりが発生し、それが脇からこぼれて装置を汚すという欠点がある。すなわち、塗布液保持部材は、塗布ローラの外周面に密着して設けられているため、塗布ローラに処理液が残存していると、塗布液保持部材に戻る際に塗布液保持部材の縁部で掻き取られ、それが脇からこぼれて、装置が汚れるという欠点がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、装置を汚さずに塗布液を安定供給することができる塗布液供給装置及びインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、前記目的を達成するために、回転しながら媒体に当接されて、媒体に塗布液を塗布する塗布ローラに塗布液を供給する塗布液供給装置において、前記塗布ローラの外周面に当接される空間形成部材であって、前記塗布ローラに当接される面に前記塗布ローラの幅方向にわたって凹部が形成されるとともに、該凹部の周縁を囲うようにして枠状の当接部が突出して設けられ、該当接部を前記塗布ローラの外周面に当接させて、前記塗布ローラの外周面で前記凹部の開口部分を覆うことにより、前記塗布ローラの外周面上に幅方向にわたって塗布液保持空間を形成する空間形成部材と、前記空間形成部材の当接部に形成される溝であって、前記塗布ローラの回転方向上流側の部分に前記塗布ローラの回転方向に沿って形成される溝と、前記空間形成部材に形成され、前記塗布液保持空間内に塗布液を供給する塗布液供給口と、前記塗布液供給口から前記塗布液保持空間内に塗布液を供給する塗布液供給手段と、を備えたことを特徴とする塗布液供給装置を提供する。
【0010】
請求項1に係る発明によれば、塗布ローラの外周面に空間形成部材を当接させることにより、塗布ローラの外周面上に幅方向にわたって塗布液保持空間が形成され、この塗布液保持空間に塗布液供給口から塗布液を供給することにより、塗布ローラの外周面に塗布液が供給される。すなわち、空間形成部材によって形成される塗布液保持空間に塗布液を供給すると、供給された塗布液が塗布ローラの外周面に接触した状態で塗布液保持空間内に保持される。したがって、この状態で塗布ローラを回転させると、塗布ローラの外周面が連続的に塗布液に接触し、塗布ローラの外周面に連続的に塗布液が供給される。
【0011】
一方、空間形成部材の当接部には、塗布ローラの回転方向上流側の部分に塗布ローラの回転方向に沿って溝が形成されているため、塗布ローラを媒体に当接させずに回転させたとしても、空間形成部材に戻る塗布液を溝から塗布液保持空間内に回収することができ、装置を汚すことがない。すなわち、塗布ローラが残存している場合であっても、溝から塗布液保持空間内に回収することができるので、空間形成部材に戻る部分に液溜まりが発生することがなく、常に清浄な状態で塗布液を供給し続けることができる。
【0012】
また、このように媒体に当接させずに塗布ローラを回転させても装置を汚すことがないため、媒体に対する塗布前に塗布ローラを回転させた状態で待機させておくことができ、塗布ムラのない安定した塗布を行うことができる。
【0013】
請求項2に係る発明は、前記目的を達成するために、前記塗布ローラの回転方向に対して、前記空間形成部材の下流側に設けられ、前記塗布ローラの外周面に供給された塗布液が所定の幅になるように、前記塗布ローラに供給された塗布液の両端部を払拭する一対のスキージを有することを特徴とする請求項1に記載の塗布液供給装置を提供する。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、塗布液保持空間を通過することによって塗布ローラの外周面に供給された塗布液は、一対のスキージを通過することにより、その両端部が払拭され、所定の幅に調整される。これにより、塗布ローラに対して所望の供給幅で塗布液を供給することができる。また、これにより、媒体に対して所望の塗布幅で塗布液を塗布することができる。
【0015】
請求項3に係る発明は、前記目的を達成するために、前記一対のスキージは、前記塗布ローラの幅方向に沿って移動可能に設けられることを特徴とする請求項2に記載の塗布液供給装置を提供する。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、一対のスキージが塗布ローラの幅方向に沿って移動可能に設けられる。これにより、塗布ローラに対する塗布液の供給幅を任意に調整することができる。また、これにより、媒体に対して任意の塗布幅で塗布液を塗布することができる。
【0017】
請求項4に係る発明は、前記目的を達成するために、前記空間形成部材には、前記塗布液保持空間内に供給された塗布液を回収する塗布液回収口が形成され、前記塗布液供給手段は、前記塗布液供給口と前記塗布液回収口を介して前記塗布液保持空間に塗布液を循環供給することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載の塗布液供給装置を提供する。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、塗布液保持空間に塗布液が循環供給される。これにより、塗布液保持空間に塗布液を安定して供給することができる。
【0019】
請求項5に係る発明は、前記目的を達成するために、前記塗布ローラの回転方向に対して、前記塗布液供給口が前記塗布液回収口の上流側に設けられることを特徴とする請求項4に記載の塗布液供給装置を提供する。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、塗布ローラの回転方向に対して、塗布液供給口が塗布液回収口の上流側に設けられる。これにより、塗布液保持空間内に塗布ローラの回転方向に沿った流れが発生し、塗布液を安定供給することができる。
【0021】
請求項6に係る発明は、前記目的を達成するために、前記塗布液供給手段は、循環供給する塗布液の循環量が調整可能であることを特徴とする請求項4又は5に記載の塗布液供給装置を提供する。
【0022】
請求項6に係る発明によれば、循環供給する塗布液の循環量が調整できる。これにより、塗布ローラに供給する塗布液の厚さ(膜厚)を調整することができ、媒体に塗布する塗布液の膜厚を調整することができる。
【0023】
請求項7に係る発明は、前記目的を達成するために、前記塗布液供給手段は、循環供給する塗布液の循環圧力が調整可能であることを特徴とする請求項4又は5に記載の塗布液供給装置を提供する。
【0024】
請求項7に係る発明によれば、循環供給する塗布液の循環圧力を調整することができる。これにより、塗布ローラに供給する塗布液の膜厚を調整することができ、媒体に塗布する塗布液の膜厚を調整することができる。
【0025】
請求項8に係る発明は、前記目的を達成するために、インクと反応して、その色材を凝集又は不溶化させる機能を有する塗布液を塗布ローラによって媒体に塗布し、該塗布液が塗布された媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット記録装置において、請求項1〜7のいずれか一に記載の塗布液供給装置を備え、該塗布液供給装置で前記塗布ローラに塗布液を供給することを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
【0026】
請求項8に係る発明によれば、インクと反応して、その色材を凝集又は不溶化させる機能を有する塗布液を媒体に塗布して画像を形成するインクジェット記録装置において、装置を汚すことなく、安定して塗布液を塗布することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、装置を汚さずに塗布液を安定供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、添付図面に従って本発明に係る塗布液供給装置及びインクジェット記録装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0029】
図1は、本発明が適用されたインクジェット記録装置の一実施形態の概略構成を示す側面断面図である。
【0030】
同図に示すように、本実施の形態のインクジェット記録装置10は、所定サイズに裁断された用紙(カット紙)にインク滴を吐出して画像を形成するインクジェット記録装置であり、用紙12を給紙する給紙部20と、給紙部20から給紙された用紙12にインクの色材を凝集させる機能を有する液体(処理液)を塗布する処理液塗布部(塗布装置)30と、処理液が塗布された用紙12にインク滴を吐出して画像を形成する画像形成部40と、画像が形成された用紙12を排紙する排紙部50とを備えて構成されている。
【0031】
給紙部20は、用紙12がセットされる給紙カセット22と、給紙カセット22にセットされた用紙12を給送する給送ローラ24とを備えて構成されている。
【0032】
給紙カセット22は、インクジェット記録装置10の本体10Aに着脱自在に設けられている。用紙12は、この給紙カセット22内に積層された状態でセットされる。
【0033】
給送ローラ24は、所定位置にセットされた給紙カセット22の上方に配置されている。この給送ローラ24は、半月状に形成されており、図示しないモータに駆動されて回転する。
【0034】
給紙カセット22にセットされた用紙12は、この給送ローラ24が回転することにより、上から順に一枚ずつ所定の搬送経路に向けて給紙される。
【0035】
給紙部20から給紙された用紙12は、円弧状に形成された搬送路26を走行し、その途中に設けられた処理液塗布部30で処理液が塗布される。
【0036】
処理液塗布部30は、インクと反応して、その色材を凝集又は不溶化させる処理液(塗布液)を用紙12の表面(画像形成面)に塗布する。この処理液塗布部30は、バックアップローラ32と、塗布ローラ34と、処理液供給ユニット36とを備えて構成されている。
【0037】
バックアップローラ32と塗布ローラ34は、搬送路26を挟んで互いに対向して配置されている。用紙12は、このバックアップローラ32と塗布ローラ34との間を挟持されながら搬送され、その搬送過程で塗布ローラ34の表面(外周面)に供給された処理液が転写されて、画像形成面に処理液が塗布される。
【0038】
バックアップローラ32は、用紙12の用紙幅以上の幅(軸方向の長さ)をもって形成されており、その両端部を図示しないフレームに軸受を介して回動自在に支持されている。このバックアップローラ32を支持するフレームは、塗布ローラ34に対して所定のストロークで進退移動自在に設けられており、図示しない付勢手段(たとえば、バネなど)によって塗布ローラ34に向けて付勢されている。
【0039】
また、バックアップローラ32は、その表面(外周面)に撥液処理が施されており(たとえば、テフロン(登録商標)によるコーティングなど)、処理液が付着しにくい構成とされている。
【0040】
塗布ローラ34は、バックアップローラ32の幅とほぼ同じ幅(軸方向の長さ)で形成されており、その両端部を図示しないフレームに軸受を介して回動自在に支持されている。
【0041】
この塗布ローラ34を支持するフレームは、バックアップローラ32に対して進退移動自在に設けられており、図示しないアクチュエータ(たとえば、シリンダなど)に駆動されて所定の当接位置と待機位置との間を移動する。塗布ローラ34は、このフレームが当接位置に移動すると、バックアップローラ32の表面に押圧当接される。また、待機位置に移動すると、バックアップローラ32から離間する。
【0042】
また、この塗布ローラ34を支持するフレームには、図示しないモータが搭載されており、塗布ローラ34は、このモータに駆動されて回転(本例では時計回りに回転)する。用紙12は、この塗布ローラ34が回転することにより、搬送路26に沿って搬送される。
【0043】
処理液供給ユニット36は、塗布ローラ34の表面(外周面)に所定の厚さ(膜厚)をもって処理液を供給する。なお、この処理液供給ユニット36の具体的な構成については、後に詳述する。
【0044】
搬送路26に沿って搬送される記録用紙12は、バックアップローラ32と塗布ローラ34との間を通過する際、その表面(画像形成面)に塗布ローラ34が当接され、これにより、その表面に処理液が塗布される。
【0045】
処理液が塗布された用紙12は、画像形成部40に搬送され、その表面にインク滴が吐出されて画像が形成される。この画像形成部40は、プラテン42と、第1搬送ローラ対44と、第2搬送ローラ対46と、インク吐出ユニット48とを備えて構成される。
【0046】
プラテン42は、水平に設置されている。円弧状の搬送路26を搬送された用紙12は、このプラテン42の上に載置される。
【0047】
第1搬送ローラ対44と第2搬送ローラ対46は、このプラテン42の上に載置された用紙12を搬送する。
【0048】
第1搬送ローラ対44は、駆動ローラ44Aと従動ローラ44Bとで構成されており、プラテン42の搬送方向上流部に設置されている。この第1搬送ローラ対44を構成する駆動ローラ44Aと従動ローラ44Bは、プラテン42を挟んで上下に対向して配置されており、それぞれその両端部を装置本体10Aに設けられた図示しない軸受に回動自在に支持されている。また、駆動ローラ44Aには、図示しないモータが連結されており、駆動ローラ44Aは、このモータに駆動されて回転する。
【0049】
円弧状の搬送路26を搬送された用紙12は、プラテン42の上に載置され、この第1搬送ローラ対44の駆動ローラ44Aと従動ローラ44Bとの間に供給される。そして、この第1搬送ローラ対44の駆動ローラ44Aと従動ローラ44Bに挟持されて、プラテン42の上を搬送される。
【0050】
第2搬送ローラ対46は、駆動ローラ46Aと従動ローラ46Bとで構成され、プラテン42の搬送方向下流部に設置される。この第2搬送ローラ対46を構成する駆動ローラ46Aと従動ローラ46Bは、プラテン42を挟んで上下に対向して配置されており、それぞれその両端部を装置本体10Aに設けられた図示しない軸受に回動自在に支持されている。また、駆動ローラ46Aには、図示しないモータが連結されており、駆動ローラ46Aは、このモータに駆動されて回転する。
【0051】
プラテン42の上を搬送された用紙12は、この第2搬送ローラ対46の駆動ローラ46Aと従動ローラ46Bとの間に供給される。そして、この第2搬送ローラ対46の駆動ローラ46Aと従動ローラ46Bとに挟持されて、後段の排紙部50に向けて搬送される。
【0052】
インク吐出ユニット48は、プラテン42の上を搬送される用紙12の上にシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、クロ(K)の4色のインク滴を吐出して、用紙12の表面にカラー画像を形成する。
【0053】
このインク吐出ユニット48は、色ごとに個別にインクジェットヘッド(図示せず)を備えており、各色のインク滴は、対応するインクジェットヘッドから個別に吐出される。すなわち、シアンのインク滴はシアン用のインクジェットヘッド、マゼンタのインク滴はマゼンタ用のインクジェットヘッド、イエロのインク滴はイエロ用のインクジェットヘッド、クロのインク滴はクロ用のインクジェットヘッドから個別に吐出される。
【0054】
ここで、各色のインクジェットヘッドは、それぞれフルライン型のインクジェットヘッドで構成されており、そのインク吐出面(インクを吐出する面)に形成されたノズル列(インク滴を吐出するノズル(インク吐出口)の列)からインク滴を吐出して、用紙12の表面に画像を形成する。このノズル列は、用紙12に対応した幅で形成されている。すなわち、用紙12に設定された画像形成領域(インク滴を吐出させて、画像を形成する領域)の全幅をカバーできる長さで形成されている。
【0055】
また、各インクジェットヘッドは、それぞれそのノズル列が、用紙12の搬送方向(副走査方向)と直交するように配置され、そのインク吐出面が、プラテン42との間に所定のクリアランスを持つように配置されている。
【0056】
さらに、各インクジェットヘッドは、用紙12の搬送方向の上流側から順に所定の間隔をもって所定の色順で配置される。たとえば、用紙12の搬送方向の上流側からシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、クロ(K)の順で各色のインクジェットヘッドに配置されている。
【0057】
プラテン42の上を搬送される用紙12は、このインク吐出ユニット48の下を通過する際、各インクジェットヘッドからインク滴が吐出されて、その表面に画像が形成される。
【0058】
ここで、用紙12は、その表面にあらかじめ処理液が塗布されているため、用紙12の表面にインク滴が着弾すると、そのインク滴は、処理液の作用で色材が凝集する。これにより、ブリード等の発生を効果的に防止することができる。すなわち、凝集処理剤層の上にインク滴が着弾すると、そのインク滴は、飛翔エネルギーと表面エネルギーとのバランスにより、凝集処理剤層の上に所定の接触面積で着弾する。凝集反応は、インク滴が凝集処理剤上に着弾した直後に開始されるが、その反応はインク滴と凝集処理剤層との接触面から開始する。凝集反応は接触面近傍のみで起こり、インク着弾時の接触面積のまま付着力を得た状態でインク内の色材が凝集されるため、色材移動が抑止される。したがって、このインク滴に隣接して他のインク滴が着弾しても、先に着弾したインクの色材は、すでに凝集化しているので、後から着弾するインクとの間で色材同士が混合せず、ブリードが抑止される。
【0059】
なお、本例では、インクを吐出するためのインクジェットヘッドをフルライン型のインクジェットヘッドで構成しているが、いわゆるシリアル型(シャトル型)のインクジェットヘッド(インクジェットヘッドを主走査方向に往復動作させる方式のインクジェットヘッド)で構成することもできる。
【0060】
また、本例では、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、クロ(K)の4色のインクを使用して画像を形成しているが、使用するインクの色や色数の組み合わせについては、これに限定されるものではない。必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インク等を追加して用いてもよい。たとえば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能である。また、各色のインクジェットヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0061】
なお、インク液としては、着色剤としての顔料、樹脂ポリマー、分散剤や界面活性剤等を含有したものが用いられる。
【0062】
排紙部50は、排紙トレイ52を備えている。画像形成部40で表面にインク滴が吐出されて画像が形成された用紙12は、画像形成部40の第2搬送ローラ対46に搬送されて、排紙トレイ52に排出される。
【0063】
図2は、本実施形態のインクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0064】
同図に示すように、インクジェット記録装置10は、通信インターフェース60、システムコントローラ62、画像メモリ64、給紙制御部66、処理液塗布制御部68、画像形成制御部70等を備えている。
【0065】
通信インターフェース60は、ホストコンピュータ80から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。ホストコンピュータ80から送出された画像データは、この通信インターフェース60を介してインクジェット記録装置10に取り込まれる。
【0066】
画像メモリ64は、通信インターフェース60を介して入力された画像を一時的に記憶する記憶手段であり、システムコントローラ62を通じてデータの読み書きが行われる。
【0067】
システムコントローラ62は、インクジェット記録装置10の各部を制御する制御部であり、CPU、ROM、RAM等を備えて構成されている。このシステムコントローラ62は、所定の制御プログラムに従ってインクジェット記録装置10の各部を制御する。ROMには、このシステムコントローラ62が実行する制御プログラムが格納されている。
【0068】
給紙制御部66は、システムコントローラ62からの指令に応じて給紙部20を構成する各部の駆動を制御する。
【0069】
処理液塗布制御部68は、システムコントローラ62からの指令に応じて処理液塗布部30を構成する各部の駆動を制御する。
【0070】
画像形成制御部70は、システムコントローラ62からの指示に従って画像形成部40を構成する各部の駆動を制御する。
【0071】
以上のように構成されたインクジェット記録装置10による画像の形成処理は、次のように行われる。
【0072】
用紙12がセットされた給紙カセット22を装置本体10Aにセットし、給送ローラ24を回転させると、給紙カセット22の最上段に位置する用紙12が、搬送路26に向けて給送される。
【0073】
給紙カセット22から給送された用紙12は、円弧状の搬送路26に沿って搬送され、その搬送過程で処理液塗布部30を通過することにより、その表面(画像形成面)に処理液が塗布される。すなわち、処理液塗布部30を通過する際、その表面に処理液が供給された塗布ローラ34が当接され、これにより、その表面に処理液が塗布される。
【0074】
処理液が塗布された用紙12は、搬送路26からプラテン42の上に送り出される。プラテン42の上に送り出された用紙12は、第1搬送ローラ対44によってプラテン42の上を搬送され、その搬送過程でインク吐出ユニット48からインク滴が吐出され、表面に画像が形成される。
【0075】
表面に画像が形成された用紙12は、第2搬送ローラ対46によって搬送され、排紙トレイ52の上に排出される。
【0076】
このように、本実施の形態のインクジェット記録装置10では、処理液塗布部30であらかじめ用紙12の上にインクと反応して、その色材を凝集又は不溶化させる処理液(塗布液)を塗布し、この処理液が塗布された用紙12の上にインク滴を吐出して画像を形成する。これにより、カラーブリード等のない高品位な画像を形成することができる。
【0077】
図3は、処理液塗布部の構成示す側面図である。上記のように、処理液塗布部30は、バックアップローラ32と、塗布ローラ34と、塗布ローラ34に処理液を供給する処理液供給ユニット36とを備えて構成されている。
【0078】
処理液供給ユニット36は、塗布ローラ34の外周面に当接されて、その外周面上に幅方向にわたって処理液保持空間Sを形成する空間形成ブロック100と、その空間形成ブロック100によって形成される処理液保持空間Sに供給する処理液が貯留される処理液タンク120と、処理液タンク120に貯留された処理液を処理液保持空間Sに循環供給するポンプ130とを備えて構成されている。
【0079】
図4〜図8は、それぞれ空間形成ブロック100の構成を示す側面断面図、側面図、正面図、上面図、平面断面図である。
【0080】
図4〜図8に示すように、空間形成ブロック100は、塗布ローラ34の幅(軸方向の長さ)とほぼ同じ幅(長手方向の長さ)を有する直方体状に形成されており、塗布ローラ34の軸と平行に設けられている。この空間形成ブロック100の正面(塗布ローラ34に当接される面)には、矩形状の凹部102が形成されている。そして、その凹部102の周縁を囲うようにして、枠状の当接部104が所定量突出して形成されている。
【0081】
凹部102は、塗布ローラ34の幅方向にわたって形成されており(その長手方向が塗布ローラ34の軸と平行になるように形成されている)、空間形成ブロック100の先端面から所定の深さをもって形成されている。また、その四隅の辺及び底面のコーナー部が円弧状に形成されている。
【0082】
当接部104は、この凹部102の周縁を囲うようにして設けられており、空間形成ブロック100の先端面から所定量突出して形成されている。この当接部104は、塗布ローラ34の外周面に密着できるように、塗布ローラ34の外周面に倣って形成されている。すなわち、その先端のなす面が、塗布ローラ34の周面形状に対応して形成されており、塗布ローラ34の外周面と同じ曲率で形成されている。これにより、空間形成ブロック100を塗布ローラ34の外周面に当接させた際、塗布ローラ34の外周面に隙間なく(後述する溝の部分を除く)当接させることができる。
【0083】
また、当接部104は、その先端が断面円弧状に形成されている。これにより、空間形成ブロック100を塗布ローラ34の外周面に当接させた際、塗布ローラ34の外周面に線で接触するようになり、塗布ローラ34を回転させた際に受ける摩擦が低減される。
【0084】
また、この当接部104は、空間形成ブロック100に一体的に形成されている。これにより、塗布ローラ34を回転させた際に受ける摩擦によって、破損するのが防止される。空間形成ブロック100は、この当接部104を含めて全体が、たとえば、樹脂によって一体成形される。
【0085】
処理液保持空間Sは、この空間形成ブロック100の当接部104を塗布ローラ34の外周面に当接させることにより形成される。すなわち、この空間形成ブロック100の当接部104を塗布ローラ34の外周面に当接させると、その空間形成ブロック100の正面部に形成された凹部102の開口が、塗布ローラ34の外周面によって覆われ、これにより、塗布ローラ34の外周面状に密閉された処理液保持空間Sが形成される。この処理液保持空間Sは、塗布ローラ34の幅方向にわたって形成され、両端を除く幅方向のほぼ全域に接して形成される。後述するように、処理液は、この処理液保持空間Sの幅(=当接部104の幅)をもって塗布ローラ34に供給される。
【0086】
空間形成ブロック100の背面(当接部104が形成された面と反対側の面)には、処理液保持空間Sに対する処理液の供給口(処理液供給口)106と回収口(処理液回収口)108とが形成されている。処理液は、この処理液供給口106から凹部102内に供給される(処理液保持空間Sに供給される)。また、凹部102内に供給された処理液は、循環させるため、処理液回収口108から回収される。
【0087】
この処理液供給口106と処理液回収口108は、ともに空間形成ブロック100の幅方向の中央(凹部102に対しても幅方向の中央)に形成されており、塗布ローラ34の回転方向に対して、処理液供給口106が上流側に設けられている。本例では、塗布ローラ34が時計回りに回転し、塗布ローラ34の右斜め下の位置(ほぼ4時の位置)に空間形成ブロック100が当接されることから、上方(上流側)に処理液供給口106、下方(下流側)に処理液回収口108が形成されている。
【0088】
このように空間形成ブロック100に形成された処理液供給口106は、図8に示すように、空間形成ブロック100の内部において、その流路106Aが末広がりに形成されている。すなわち、凹部102の幅方向の全域に処理液が供給されるように、その流路106Aの先端が台形状(又は三角形状)に形成されている。これにより、中央の一カ所から供給される処理液を幅方向に満遍なく供給することができる。
【0089】
処理液回収口108についても同様に、その流路108Aが、理液保持ブロック100の背面側から見て末広がりに形成(凹部102側から見た場合は先細りに形成)されており、凹部102の幅方向の全域から満遍なく処理液を回収できるようにされている。
【0090】
また、処理液供給口106は、その流路106Aの出口部において、処理液回収口108側の壁面の縁部106aが円弧状に形成されており、また、処理液回収口108は、その流路108Aの入口部において、処理液供給口106側の壁面の縁部108aが円弧状に形成されている。このように、上下に並列して配置される処理液供給口106と処理液回収口108の出口側の縁部106aと入口側の縁部108aを互いに円弧状に形成することにより、処理液の循環供給時に処理液をスムーズに循環供給することができる。すなわち、処理液供給口106から供給された処理液を処理液回収口108に向けてスムーズに流すことができる。これにより、処理液保持空間S内で処理液の流れを乱すことなく、安定して処理液を供給することができる。特に本例では、塗布ローラ34の回転方向に対して、処理液供給口106が上流側に設置されており、塗布ローラ34の回転方向に沿って処理液が流れるので、より安定した状態で処理液を循環供給することができる。
【0091】
さて、塗布ローラ34への処理液の供給は、空間形成ブロック100を塗布ローラ34の外周面に当接させ、その当接部に形成される処理液保持空間Sに処理液を供給することにより行われる。すなわち、処理液保持空間Sに対して処理液供給口106と処理液回収口108とから処理液を循環供給し、この状態で塗布ローラ34を回転させることにより、回転する塗布ローラ34の外周面が、処理液保持空間Sを通過する際、その処理液保持空間Sに保持された処理液に接して、塗布ローラ34の外周面に処理液が供給される。
【0092】
ところで、塗布ローラ34を用紙12に当接させずに回転させると、塗布ローラ34に供給された処理液は、そのまま空間形成ブロック100に戻ることとなる。
【0093】
一方、上記のように、空間形成ブロック100は、塗布ローラ34の外周面に当接され、塗布ローラ34の外周面に密着されている。
【0094】
このため、処理液が用紙12に塗布されずに、そのまま空間形成ブロック100に戻ると、空間形成ブロック100の当接部104の上流側の部位(塗布ローラ34の軸と平行な部位であって、塗布ローラ34の回転方向の上流側の部位)104Aで掻き取られ、その部位に液溜まりを発生させる。また、用紙12に塗布した場合であっても、塗布ローラ上に処理液が残存している場合には、同様に空間形成ブロック100に戻る際、空間形成ブロック100の当接部104の上流側の部位104Aで掻き取られ、その部位に液溜まりを発生させる。このようにして発生した液溜まりは、やがて空間形成ブロック100の両脇から漏れ、装置を汚すこととなる。
【0095】
このため、本実施の形態の空間形成ブロック100には、図4、6、7に示すように、当接部104の上流側の部位104Aに幅方向に沿って多数の溝110が一定ピッチで形成されている。この溝110は、断面矩形状に形成されており、塗布ローラ34の回転方向に沿って形成されている。
【0096】
用紙12に塗布されずにそのまま空間形成ブロック100に戻された処理液や、塗布後に塗布ローラ34に残存する処理液は、空間形成ブロック100の当接部104の上流側の部位104Aで掻き取られ、この溝110から処理液保持空間S内に回収される。これにより、空間形成ブロック100の上流側の部位に液溜まりが生じて、装置が汚れるのを防止することができる。
【0097】
空間形成ブロック100は、以上のように構成される。
【0098】
なお、この空間形成ブロック100は、塗布ローラ34を支持するフレームに取り付けられ、塗布ローラ34に対して進退移動自在に支持される。そして、そのフレームとの間に介在させたバネ112に付勢されて、塗布ローラ34の外周面に所定の押圧力で押圧当接される。
【0099】
また、本例において、空間形成ブロック100は、図3に示すように、塗布ローラ34の右斜め下の位置(ほぼ4時の位置)に当接され、この位置に処理液保持空間Sを形成する。
【0100】
処理液タンク120は、装置本体内の所定位置に設置されており、処理液保持空間Sに供給する処理液が貯留される。
【0101】
図3に示すように、この処理液タンク120には、処理液の供給口122と処理液の回収口124とが形成されている。空間形成ブロック100に形成された処理液供給口106は、この処理液タンク120の供給口122に処理液供給配管126を介して連通されている。また、空間形成ブロック100に形成された処理液回収口108は、この処理液タンク120の回収口124に処理液回収配管128を介して連通されている。
【0102】
処理液タンク120に貯留された処理液は、処理液供給配管126を介して空間形成ブロック100の処理液供給口106に供給され、この処理液供給口106から処理液保持空間Sに供給される。そして、処理液保持空間Sに供給された処理液は、空間形成ブロック100の処理液回収口108から回収され、処理液回収配管128を介して処理液タンク120に戻される。すなわち、処理液は循環供給される。
【0103】
ポンプ130は、処理液供給配管126の途中に設けられており、このポンプ130を駆動することにより、処理液が循環供給される。上述したシステムコントローラ62は、処理液塗布制御部68を介して、このポンプ130の駆動を制御し、その循環量、及び、循環圧力を制御する。そして、この循環量、及び/又は、循環圧力を制御することにより、塗布ローラ34に供給する処理液の厚さ(膜厚)を制御する。
【0104】
なお、処理液回収配管128には、バルブ132が設けられており、このバルブ132を閉じることにより、循環させずに、処理液保持空間S内に処理液を保持させることができる。
【0105】
以上のように構成された本実施の形態の処理液塗布部30の作用は次のとおりである。
【0106】
まず、空間形成ブロック100を塗布ローラ34の外周面に当接させ、塗布ローラ34の外周面上に処理液保持空間Sを形成する。上記のように、空間形成ブロック100は、その背面をバネ112に付勢されて、塗布ローラ34の外周面上に押圧当接される。なお、本例では、塗布ローラ34の右斜め下の位置(ほぼ4時の位置)に空間形成ブロック100が当接され、この位置に処理液保持空間Sが形成される。
【0107】
次に、形成された処理液保持空間Sに処理液を供給する。まず、バルブ132を閉じ、この状態でポンプ130を駆動して、処理液タンク120から空間形成ブロック100に処理液を送液する。処理液タンク120から送液された処理液は、空間形成ブロック100の処理液供給口106より処理液保持空間S内に供給され、処理液保持空間S内に貯留される。
【0108】
この際、本実施の形態の空間形成ブロック100は、処理液保持空間Sを形成する凹部102の四隅の辺及び底面のコーナー部が円弧状に形成されるとともに、処理液供給口106の出口側の縁部106aと処理液回収口108の入口側の縁部108aとが円弧状に形成されているため、気泡を発生させることなく、処理液保持空間S内に処理液を供給することができる。
【0109】
送液開始から所定時間経過すると、ポンプ130による送液が停止される。これにより、処理液保持空間S内に処理液が所定量貯留される。なお、この貯留量は、必ずしも満タンにする必要はなく、処理液保持空間S内に空気が残った状態にすることがこのましい。これにより、空間形成ブロック100に戻った処理液を溝110から処理液保持空間S内にスムーズに回収することができる。
【0110】
以上のようにして処理液保持空間S内に処理液が貯留されると、次に、塗布ローラ34が回転駆動され、塗布ローラ34に処理液が供給される。
【0111】
まず、バルブ132を閉じ、ポンプ130を停止した状態で塗布ローラ134が所定の回転速度で回転駆動される。このようにして、塗布ローラ134が回転駆動されると、塗布ローラ134の表面に処理液が供給される。すなわち、塗布ローラ134は、回転することにより、その外周面が処理液保持空間Sを通過し、その通過時に外周面が処理液保持空間Sに貯留された処理液に接触して、外周面に処理液が付与される。
【0112】
なお、この初期回転時において、塗布ローラ34を支持するフレームは、待機位置に位置しており、塗布ローラ34はバックアップローラ32に対して離間している。このため、塗布ローラ34に供給された処理液は、空間形成ブロック100にそのまま戻ることとなる。
【0113】
空間形成ブロック100に戻った処理液は、空間形成ブロック100の当接部の上流側の部位104Aで塗布ローラ34の表面から一部掻き取られる。そして、その掻き取られた処理液は、当該部位104Aに形成された溝110から処理液保持空間Sに回収される。このため、空間形成ブロック100の当接部の上流側の部位104Aに処理液が溜まることはなく、空間形成ブロック100から処理液が漏れることもない。したがって、処理液を塗布しなくても(バックアップローラ32から離間させた状態であっても)、クリーンな状態を保って塗布ローラ34を回転させることができる。
【0114】
このように、処理液保持空間Sに処理液が所定量貯留されたら、塗布ローラ34を回転させることにより、塗布ローラ34に処理液を供給する。そして、処理液の供給が安定したところで(塗布ローラ34が所定回数回転したところで)、バルブ132を開き、ポンプ130を駆動して、処理液保持空間Sに処理液を循環供給する。
【0115】
以上により、塗布準備が完了する。この後、実際の画像記録に伴う用紙12への処理液の塗布が行われる。
【0116】
処理液の塗布は、用紙12の搬送タイミングに合せて、塗布ローラ34を用紙12に対して進退移動させることにより行われる。すなわち、用紙12は、所定の搬送路26を通って搬送されるので、用紙12が、塗布部(バックアップローラ32に対して移動した塗布ローラ34が、バックアップローラ32に当接する部位)を通過するのに合せて、塗布ローラ34を進退移動させることにより行われる。具体的には、あらかじめ用紙12に設定された処理液塗布領域の先端が、塗布部に到達したら、塗布ローラ34が用紙12に当接され、処理液塗布領域の後端が、塗布部に到達したら、塗布ローラ34が用紙12から離される。これにより、用紙12にあらかじめ設定された処理液塗布領域に処理液が塗布される。
【0117】
なお、この処理液塗布領域は、処理液による凝集又は不溶化作用を確実に行わせるため、画像形成領域よりも広く設定される。この処理液塗布領域の幅は、塗布ローラ34に供給された処理液の幅(供給幅)で規定され、この供給幅は、処理液保持空間Sの幅(=当接部104の幅)によって規定される。
【0118】
このように、処理液の塗布は、用紙12の搬送タイミングに合せて、塗布ローラ34を用紙12に対して進退移動させることにより行われる。
【0119】
なお、このように塗布ローラ34を用紙12に当接させることにより、塗布ローラ34に供給された処理液は、用紙12に転写されて付与されるが、必ずしもそのすべてが転写されるわけではなく、外周面に残存する場合もある。
【0120】
しかしながら、このように処理液が塗布ローラ34の外周面に残存した場合であっても、本実施の形態の処理液供給ユニット36では、空間形成ブロック100に戻った残存処理液を溝110から処理液保持空間S内に回収することができるので、処理液溜まりを発生させることなく、クリーンな状態で使用することができる。
【0121】
また、本実施の形態では、処理液を循環供給させることにより、処理液保持空間S内に塗布ローラ34の回転方向に沿った流れを発生させているので、空間形成ブロック100に戻る処理液を、その流れに乗せて効率よく処理液保持空間S内に回収することができる。
【0122】
なお、処理液は、用紙12に塗布されることにより、処理液保持空間Sからなくなるが、上記のように、本実施の形態の処理液供給ユニット36では、処理液を循環供給させているため、常に処理液保持空間Sに一定の処理液を満たすことができる。これにより、塗布ローラ34に対して、常に安定した処理液の供給を行うことができる。
【0123】
また、本実施の形態の処理液供給ユニット36は、塗布ローラ34を空回し(用紙12に当接させずに回転)しても、装置を汚すことがないので、待機中(塗布時以外)に塗布ローラ34を回転させておくことができる。
【0124】
これにより、塗布ローラ34に対して常に安定した状態で処理液を供給することができる。また、これにより、用紙12に対しても、塗布ムラを発生させることなく、常に安定して処理液を塗布することができる。
【0125】
また、このように待機中も塗布ローラ34を回転させて、連続的に処理液を供給しておくことにより、ローラ表面で処理液が乾燥して、増粘や析出等の不具合が発生するのを防止することができる。
【0126】
さらに、このように待機中も塗布ローラ34を回転させて、連続的に処理液を供給しておくことにより、塗布間隔が開いた場合であっても、次回塗布時に迅速に対応して、処理液を塗布することができる。すなわち、待機中に塗布ローラ34を回転させていない場合、塗布間隔が開くと、次回塗布時に塗布ローラ34への処理液の供給を安定させるため、複数回塗布ローラ34を回転させる必要があるが、本実施の形態の処理液供給ユニット36は、待機中に塗布ローラ34を回転させているため、いきなり用紙12に当接させても、安定して用紙12に処理液を塗布することができる。これにより、全体の処理時間(プリント生成時間)も短縮することができる。
【0127】
なお、本実施の形態では、待機中に塗布ローラ34を連続的に回転させることとしているが、塗布ローラ上での処理液の増粘や析出等の不具合が発生しない限度において、断続的に回転(一定周期で回転又はランダムに回転)させる構成とすることもできる。また、塗布時と待機時とで塗布ローラ34の回転速度を変える構成とすることともできる。
【0128】
なお、インクジェット記録装置10の電源オフ時には、塗布ローラ34の回転も停止されるが、インクジェット記録装置10の電源オフ時にも塗布ローラ34を回転(湿潤回転)させるようにしてもよい(必要に応じて処理液も循環供給)。この場合、たとえば、装置本体内にバッテリを設け、このバッテリから供給される電力で塗布ローラ34等を駆動する構成にする。また、この場合、塗布ローラ34は、必ずしも連続させて回転させる必要はなく、塗布ローラ上での処理液の増粘や析出等の不具合が発生しない限度において、断続的に回転させる構成とすることもできる。
【0129】
長期待機時等の塗布不要時についても同様に塗布ローラ34を回転させるようにしてもよい。
【0130】
また、本実施の形態では、処理液を循環供給するようにしているが、循環させずに適宜処理液保持空間Sに処理液を供給する構成にしてもよい。この場合、凹部102内に処理液の貯留量を検出するセンサを設け、このセンサからの出力に応じて処理液保持空間Sに処理液を供給するようにしてもよい。
【0131】
なお、処理液を循環供給する場合においても、凹部102内に処理液の貯留量を検出するセンサを設け、このセンサからの出力に応じて、処理液保持空間S内に一定の処理液が貯留されるように、処理液の循環供給量を調整するようにしてもよい。
【0132】
また、本実施の形態のように、処理液を循環供給する場合において、処理液の循環量又は循環圧力を制御できるように構成し、この処理液の循環量又は循環圧力を制御して、塗布ローラ34に供給する処理液の厚さ(膜厚)を調整できるようにしてもよい。これにより、用紙12の種類に応じて塗布する膜圧を調整して塗布することができ、高品位な画像を形成することができるようになる。たとえば、浸透性媒体や非浸透性媒体等、記録媒体に対する処理液の浸透に関する情報に基づいて、適切に処理液を塗布することができるようになる。
【0133】
図9は、処理液塗布部の第2の実施の形態の構成示す側面図である。
【0134】
本実施の形態の処理液塗布ユニット200は、さまざまな用紙幅の用紙に対応して処理液を適切に塗布できるように、塗布ローラ34に供給する処理液の供給幅を変えられるようにしている。
【0135】
なお、供給幅の調整機構を有する点以外は、上述したインクジェット記録装置10における処理液塗布部30の構成と同じなので、ここでは、この供給幅の調整機構の構成についてのみ説明する。
【0136】
図9に示すように、本実施の形態の処理液塗布ユニット200には、一対のスキージ210R、210Lが備えられている(図9では片側のスキージ210Lのみ図示)。この一対のスキージ210R、210Lは、塗布ローラ34の回転方向に対して、空間形成ブロック100の当接部の下流側に設置されており、塗布ローラ34の外周面の両端部に当接して設けられている。
【0137】
処理液保持空間Sを通過することによって、塗布ローラ34の表面に供給された処理液は、この一対のスキージ210R、210Lの間を通過することにより、処理液の両端部分が所定範囲で除去されて、所定の供給幅に調整される。
【0138】
この一対のスキージ210R、210Lの下方位置には回収トレイ212が備えられており、スキージ210R、210Lで除去された処理液は、この回収トレイ212で回収される。
【0139】
回収トレイ212に回収された処理液は、回収配管214を介して処理液タンク120に戻されて再利用される。この回収配管214には、回収ポンプ216とフィルタ218が設置されており、回収トレイ212に回収された処理液は、回収ポンプ216で送液されて処理液タンク120に戻される。そして、その処理液タンク120に戻される際、フィルタ218を通過することにより、ゴミや異物等が除去される。
【0140】
なお、回収トレイ212は、塗布ローラ34を支持するフレーム(図示せず)に取り付けられ、塗布ローラ34とともに移動する。
【0141】
図10はスキージ210R、210Lの駆動部の構成を示す平面図である。
【0142】
同図に示すように、一対のスキージ210R、210Lは、それぞれ矩形の平板状に形成されており、塗布ローラ34の軸と平行に配設されている。そして、その幅(塗布ローラ34の軸方向の長さ)は、塗布ローラ34の幅の半分よりも長く形成されている。したがって、両者の端部同士を突き合わせて並べると、その全長は塗布ローラ34の幅以上に形成される(図11参照)。なお、両者の端部同士を突き合わせた場合、塗布ローラ34に供給された処理液は、すべてスキージ210R、210Rで取り除かれることとなる。
【0143】
また、この一対のスキージ210R、210Lは、塗布ローラ34の軸方向の中心に対して左右対称に配設されており、それぞれその先端部が塗布ローラ34の外周面に当接されている。
【0144】
上記のように、スキージ210R、210Lは、塗布ローラ34の回転方向に対して、空間形成ブロック100の下流側に設置されており、この空間形成ブロック100の下流側において、塗布ローラ34の外周面に当接されている。
【0145】
なお、この当接位置は、特に限定されるものではなく、塗布ローラ34の回転方向に対して、空間形成ブロック100の下流側であって、塗布部の上流側に当接されていればよい。すなわち、塗布部の前で当接されていればよい。これにより、空間形成ブロック100から供給された処理液を塗布ローラ34に供給する前に、その幅を調整することができる。
【0146】
一対のスキージ210R、210Lは、それぞれ塗布ローラ34の軸方向に沿って移動自在に設けられており、このスキージ210R、210Lの位置を変えることにより、塗布ローラ34に供給する処理液の幅(供給幅)が変えられる。このスキージ210R、210Lは、次の機構によって、その設置位置が動かされる。
【0147】
図10に示すように、塗布ローラ34を支持するフレーム(図示せず)には、塗布ローラ34の軸と平行にベース220が取り付けられている。このベース220の上には、塗布ローラ34の軸と平行にガイド棒222とネジ棒224が配設されている。
【0148】
ガイド棒222は、その両端部がベース220に設けられたブラケット220R、220Lに固定して設けられている。
【0149】
一方、ネジ棒224は、その両端部が、ブラケット220R、220Lに設けられた図示しない軸受に軸支されて、回動自在に設けられている。
【0150】
ガイド棒222には、一対のスライダ226R、226Lがスライド自在に設けられている。一対のスキージ210R、210Lは、このスライダ226R、226Lに取り付けられており、このスライダ226R、226Lが、ガイド棒222に沿って移動することにより、塗布ローラ34の軸に沿って移動する。
【0151】
また、このスライダ226R、226Lには、それぞれ雌ネジ部228R、228Lが設けられており、この雌ネジ部228R、228Lが、ネジ棒224に螺合されている。したがって、このネジ棒224を回転させると、雌ネジ部228R、228Lの作用でスライダ226R、226Lが移動し、この結果、スキージ210R、210Lが移動する。
【0152】
ここで、このネジ棒224に形成されるネジ山は、軸方向の中心を境にして左右で逆方向に形成されており、この結果、ネジ棒224を回転させると、スライダ226R、226Lは、互いに逆方向に移動する。すなわち、常に塗布ローラ34の軸方向の中心に対して左右対称の関係を保ちながら、互いに近づく方向、又は、互いに離れる方向に移動する。これにより、スキージ210R、210Lも常に塗布ローラ34の軸方向の中心に対して左右対称の関係を保ちながら、互いに近づく方向、又は、互いに離れる方向に移動する。
【0153】
ネジ棒224の一端には、一方のブラケット220Rに設けられたスキージ駆動モータ230が連結されており、ネジ棒224は、このスキージ駆動モータ230に駆動されることにより、正方向又は逆方向に回転する。
【0154】
スキージ210R、210Lの駆動部は、以上のように構成される。
【0155】
次に、本実施の形態の処理液塗布ユニット200による処理液の供給、塗布動作について説明する。
【0156】
塗布ローラ34に対する処理液の供給動作は、上述した実施の形態の処理液塗布部30と同じである。すなわち、処理液保持空間Sに処理液を循環供給させ、塗布ローラ34を回転させることにより行われる。これにより、処理液保持空間Sを通過する塗布ローラ34の外周面に処理液が供給される。
【0157】
処理液保持空間Sを通過することによって塗布ローラ34の外周面に供給された処理液は、処理液保持空間Sを通過後、一対のスキージ210R、210Lの間を通過することにより、その一対のスキージ210R、210Lによって、両端部の所定範囲が取り除かれる。これにより、所定の幅に調整される。
【0158】
このスキージ210R、210Lは、塗布部の上流側に設置されているため、塗布ローラ34に供給された処理液は、この調整後の幅で用紙12に転写され、塗布される。
【0159】
このように、本実施の形態の処理液塗布ユニット200は、塗布ローラ34に対する処理液の供給幅を調整することができる。これにより、さまざまな用紙幅の用紙に対応して処理液を適切に塗布することができる。
【0160】
なお、処理液の供給幅は、一対のスキージ210R、210Lの間隔によって規定され、この間隔を調整することで、任意の幅に調整することができる。
【0161】
この間隔の設定は、ユーザが指示した値に設定することもできるが、給紙部20に用紙の種類を自動で判別する手段が設けられている場合には、この判別手段から情報に基づいて自動で設定することが好ましい。
【0162】
なお、本実施の形態では、一対のスキージ210R、210Lの間隔を無段階で調整することができるので、任意の幅で塗布することができる。
【0163】
また、本実施の形態のスキージ210R、210Lは、十分に長く形成されているため、図11に示すように、両者を互いに突き合わせて合体させることにより、塗布ローラ34に供給された処理液をすべて取り除くことができる。そして、この機能を利用することにより、塗布ローラ34のクリーニングを行うことができる。
【0164】
このスキージ210R、210Lを用いた塗布ローラ34のクリーニングは、電源オフ時や長期待機時等の塗布不要時に実施することが好ましい。たとえば、塗布不要時は、一対のスキージ210R、210Lを互い突き合わせて合体させ、この状態で塗布ローラ34を所定量回転させた後、塗布ローラ34の回転を停止させる。これにより、表面の処理液を取り除いた状態で塗布ローラ34を待機させることができ、待機中に塗布ローラ34の表面で処理液が固化、付着するのを防止することができる。なお、この待機中に塗布ローラ34を回転させておいてもよい。
【0165】
なお、本実施の形態では、このようなクリーニング機能を持たせるために、スキージ210R、210Lの長さを塗布ローラ34の幅の半分より長く設定しているが、図12に示すように、スキージ210R’、210L’の長さは、塗布ローラ34の幅の半分よりも短く設定することもできる。
【0166】
なお、このように短いスキージ210R’、210L’を用いた場合であっても、塗布ローラ34のクリーニングは行うことができる。すなわち、スキージ210R’、210L’を幅方向に往復移動させながら、塗布ローラ34を回転させることにより、ほぼ全域にわたって塗布ローラ34をクリーニングすることができる。この場合、処理液の供給を停止(ポンプ130を停止)し、空間形成ブロック100を所定量(2mm程度)離間させた状態で塗布ローラ34を回転させ、スキージ210R’、210L’を幅方向に往復移動させる。
【0167】
このように短いスキージ210R’、210L’を用いた場合であっても、塗布ローラ34のクリーニングは行うことができる。また、このように短いスキージ210R’、210L’を用いることにより、装置のコンパクト化を図ることができる。
【0168】
なお、本実施の形態では、一対のスキージを一本のネジ棒で同時に動作させるように構成しているが、各スキージを独立して動作させるようにしてもよい。この場合、片側のスキージのみを移動させて、幅の調整を行ってもよいし、また、片側のスキージのみを移動させて、クリーニングを行ってもよい。
【0169】
また、上記実施の形態では、空間形成ブロック100の当接部104の上流側の部位104Aに形成する溝110を断面矩形状(長方形状)に形成しているが、この溝の形状は、これに限定されるものではない。この他、たとえば、図13に示すように、断面正方形状(同図(a))や断面三角形状(同図(b))、断面半円形状(同図(c))に形成してもよい。
【0170】
なお、このように形成する各溝110の幅と高さについては、1mm〜5mmの範囲で適宜設定することが好ましい。1mm以下にすると、処理液の乾燥により、析出で溝詰まりを起こしたときに、回復に時間がかかるためであり、また、5mm以上にすると、異物の混入が防止できない、処理液保持空間Sに貯留された処理液の乾燥防止効果が低くなる、塗布ローラ34の退避時等に液漏れが発生するという不具合が生じるからである。
【0171】
また、隣り合う溝の形成間隔は、10mm〜50mmの範囲で適宜設定することが好ましい。
【0172】
なお、上記実施の形態では、インクジェット記録装置において、所定の処理液を用紙に塗布する場合を例に説明したが、本発明の適用は、これに限定されるものではない。塗布ローラを用いて液体を媒体に塗布する塗布装置全般に適用することができる。
【0173】
また、上記実施の形態では、用紙に処理液を塗布する場合を例に説明したが、処理液を塗布する対象(媒体)は、特にこれに限定されるものではない。普通紙、インク受容層を備えた記録媒体、あるいは加工紙などの表裏方向に通気性のある記録シート、OHP等の非通気性の柔軟媒体である樹脂シート等、種々の媒体を対象にすることができる。
【0174】
また、上記実施の形態では、用紙の片面にのみ画像を形成するインクジェット記録装置に本発明を適用した場合を例に説明したが、用紙の両面に画像を形成するインクジェット記録装置にも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】本発明が適用されたインクジェット記録装置の一実施形態の概略構成を示す側面断面図
【図2】インクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図である
【図3】処理液塗布部の構成示す側面図
【図4】空間形成ブロックの構成を示す側面断面図
【図5】空間形成ブロックの構成を示す側面図
【図6】空間形成ブロックの構成を示す正面図
【図7】空間形成ブロックの構成を示す上面図
【図8】空間形成ブロックの構成を示す平面断面図
【図9】処理液塗布部の第2の実施の形態の構成示す側面図
【図10】スキージの駆動部の構成を示す平面図
【図11】スキージの駆動部の構成を示す平面図
【図12】スキージの駆動部の他の実施の形態の構成を示す平面図
【図13】溝の他の実施の形態の構成を示す上面図
【符号の説明】
【0176】
10…インクジェット記録装置、12…用紙、20…給紙部、30…処理液塗布部、32…バックアップローラ、34…塗布ローラ、36…処理液供給ユニット、40…画像形成部、50…排紙部、62…システムコントローラ、100…空間形成ブロック、102…凹部、104…当接部、104A…当接部の上流側の部位、106…処理液供給口、108…処理液回収口、110…溝、112…バネ、120…処理液タンク、126…処理液供給配管、128…処理液回収配管、130…ポンプ、132…バルブ、200…処理液塗布部、210R、210L…スキージ、212…回収トレイ、214…回収配管、216…回収ポンプ、218…フィルタ、S…処理液保持空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転しながら媒体に当接されて、媒体に塗布液を塗布する塗布ローラに塗布液を供給する塗布液供給装置において、
前記塗布ローラの外周面に当接される空間形成部材であって、前記塗布ローラに当接される面に前記塗布ローラの幅方向にわたって凹部が形成されるとともに、該凹部の周縁を囲うようにして枠状の当接部が突出して設けられ、該当接部を前記塗布ローラの外周面に当接させて、前記塗布ローラの外周面で前記凹部の開口部分を覆うことにより、前記塗布ローラの外周面上に幅方向にわたって塗布液保持空間を形成する空間形成部材と、
前記空間形成部材の当接部に形成される溝であって、前記塗布ローラの回転方向上流側の部分に前記塗布ローラの回転方向に沿って形成される溝と、
前記空間形成部材に形成され、前記塗布液保持空間内に塗布液を供給する塗布液供給口と、
前記塗布液供給口から前記塗布液保持空間内に塗布液を供給する塗布液供給手段と、
を備えたことを特徴とする塗布液供給装置。
【請求項2】
前記塗布ローラの回転方向に対して、前記空間形成部材の下流側に設けられ、前記塗布ローラの外周面に供給された塗布液が所定の幅になるように、前記塗布ローラに供給された塗布液の両端部を払拭する一対のスキージを有することを特徴とする請求項1に記載の塗布液供給装置。
【請求項3】
前記一対のスキージは、前記塗布ローラの幅方向に沿って移動可能に設けられることを特徴とする請求項2に記載の塗布液供給装置。
【請求項4】
前記空間形成部材には、前記塗布液保持空間内に供給された塗布液を回収する塗布液回収口が形成され、
前記塗布液供給手段は、前記塗布液供給口と前記塗布液回収口を介して前記塗布液保持空間に塗布液を循環供給することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載の塗布液供給装置。
【請求項5】
前記塗布ローラの回転方向に対して、前記塗布液供給口が前記塗布液回収口の上流側に設けられることを特徴とする請求項4に記載の塗布液供給装置。
【請求項6】
前記塗布液供給手段は、循環供給する塗布液の循環量が調整可能であることを特徴とする請求項4又は5に記載の塗布液供給装置。
【請求項7】
前記塗布液供給手段は、循環供給する塗布液の循環圧力が調整可能であることを特徴とする請求項4又は5に記載の塗布液供給装置。
【請求項8】
インクと反応して、その色材を凝集又は不溶化させる機能を有する塗布液を塗布ローラによって媒体に塗布し、該塗布液が塗布された媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット記録装置において、
請求項1〜7のいずれか一に記載の塗布液供給装置を備え、該塗布液供給装置で前記塗布ローラに塗布液を供給することを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−226240(P2009−226240A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71169(P2008−71169)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】