説明

塗布用洗浄剤組成物

【課題】衣料の衿や袖口汚れ等の頑固な皮脂汚れに対して高い洗浄効果を有する塗布用洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)下記一般式(a1)で示される非イオン界面活性剤、(b)陰イオン界面活性剤、(c)陽イオン界面活性剤を含有する塗布用洗浄剤組成物であって、(a)+(b)+(c)=40〜90質量%であり、(a)/〔(b)+(c)〕質量比が0.5〜5であり、(b)/(c)質量比が0.3〜2.5である塗布用洗浄剤組成物。R−O−[(EO)m/(PO)n]−H(a1)〔式中、RはC8〜20の炭化水素基、EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基、m及びnは平均付加モル数であり、mは14〜22、nは1〜5である。“/”はEOとPOはランダム付加体でもブロック付加体でも何れでも良く、EOとPOの付加順序は問わない。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布用洗浄剤組成物に関し、更には、汚れ部分に直接塗布して使用する、衣料等の繊維製品用の塗布用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
衿袖や食べこぼし等の頑固な汚れは、通常の洗濯では十分に汚れを落としきれなかったり、シミになってしまったりする場合がある。これらの汚れに対して、液体洗浄剤を直接塗布し、部分的に洗剤濃度を上げることで洗浄性が高まることは知られている。
【0003】
液体洗剤における洗浄力の向上は当業界における重要な課題の一つであり、界面活性剤をはじめとする配合成分や組成等から種々の提案がなされている。特許文献1には面積0.2mm2〜6mm2の開口からなる吐出口と非多孔質性の吐出された液体洗浄剤組成物の塗り延ばし面とを具備する容器に液体洗浄剤組成物を充填した容器入り塗布用洗剤、が記載されており、該容器に充填される液体洗浄剤組成物として、炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基を有し炭素数エチレンオキシ基の平均付加モル数が4〜16且つプロピレンオキシ基の平均付加モル数が1〜5である非イオン界面活性剤を主基材とし、グリコール系溶剤及び水を含有する組成物が開示されている。また特許文献2にはスルホン酸基を又はその塩を有する蛍光増白剤、特定範囲の臨界ミセル濃度を有する4級アンモニウム塩及び非イオン界面活性剤を含有する液体洗浄剤組成物が開示されており、実施例にはラウリルアルコールにエチレンオキシドを平均3モル、プロピレンオキシドを平均2モル、エチレンオキシドを平均5モルをこの順番にブロック状に付加させた非イオン界面活性剤を主基材とし、更に4級アンモニウム塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩などの陰イオン界面活性剤を併用する液体洗浄剤が、蛍光増白剤の付着率とむら付き防止に効果があることが開示されている。特許文献3には特許文献1とエチレンオキシ基の平均付加モル数が2〜14である点で相違する特定の非イオン界面活性剤と陰イオン界面活性剤とを非イオン界面活性剤/陰イオン界面活性剤=20/1〜3/1で含有し、更に、陽イオン物質として陽イオン界面活性剤を含有する高濃度タイプの液体洗浄剤組成物が記載されている。特許文献3の実施例には、前記脂肪族アルコールにエチレンオキシド(EOとする)とプロピレンオキシド(POとする)をEO−PO−EO又はEO−POなどの順序にブロック付加させた非イオン界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩などの陰イオン界面活性剤及び陽イオン界面活性剤を含有する衿汚れ洗浄力に優れる液体洗浄剤が開示されている。更に特許文献4には、前記と同様にのEO−PO−EO型非イオン界面活性剤とEO−PO型非イオン界面活性剤とを併用した非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、及びアルキルベンゼンスルホン酸/または塩を配合した衿汚れ洗浄力と柔軟性に優れる液体洗浄剤組成物が記載されている。
【0004】
特許文献1は、塗布洗浄で効果的な洗浄力を示すものであるが、更なる洗浄力の向上が望まれる。また、特許文献2〜4は、液体洗浄剤組成物を汚れに直接塗布して使用する場合の課題について特段の言及がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−269500号公報
【特許文献2】特開2001−254100号公報
【特許文献3】特開平11−241094号公報
【特許文献4】特開平11−315299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、高濃度の界面活性剤を用いる場合の結晶化や、洗濯時の水による希釈時の液晶形成によって、塗布処理に用いた洗浄剤が十分な洗浄性能を発揮しない場合があることを見出した。本発明の課題は、衣料の衿や袖口汚れ等の頑固な皮脂汚れに対して高い洗浄効果を有する塗布用洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記(a)〜(c)成分を含有する塗布用洗浄剤組成物であって、(a)成分と(b)成分と(c)成分の含有量の合計が(a)+(b)+(c)=40〜90質量%であり、(a)成分と(b)成分と(c)成分の質量比が(a)/〔(b)+(c)〕=0.5〜5であり、(b)成分と(c)成分の質量比が(b)/(c)=0.3〜2.5である塗布用洗浄剤組成物に関する。
(a)成分:下記一般式(a1)で示される非イオン界面活性剤
R−O−[(EO)m/(PO)n]−H (a1)
〔式中、Rは炭素数8〜20の炭化水素基、EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基、m及びnは平均付加モル数であり、mは14〜22、nは1〜5である。“/”はEOとPOはランダム付加体でもブロック付加体でも何れでも良く、EOとPOの付加順序は問わないことを示す。〕
(b)成分:陰イオン界面活性剤
(c)成分:陽イオン界面活性剤
【0008】
また、本発明は、上記本発明の塗布用洗浄剤組成物を塗布用容器に充填した容器入り塗布用洗浄剤に関する。
【0009】
また、本発明は、下記、工程1及び工程2を含む洗濯方法に関する。
工程1:請求項1〜3の何れか1項に記載の塗布用洗浄剤組成物を洗濯物の汚れが付着した部分に塗布する工程
工程2:前記塗布用洗浄剤組成物を塗布した洗濯物を水と混合して調製した洗浄浴を用いて、他の洗浄剤組成物を前記洗濯浴に添加せずに、前記洗濯物を洗浄する工程
【発明の効果】
【0010】
本発明の塗布用洗浄剤組成物は、塗布洗浄により、繊維製品の部分汚れ、特には衣料の衿や袖口等に付着した頑固な皮脂汚れに対して高い洗浄力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<(a)成分>
本発明の塗布用洗浄剤組成物は、(a)成分として下記一般式(a1)で示す非イオン界面活性剤を含有する。
R−O−[(EO)m/(PO)n]−H (a1)
〔式中、Rは炭素数8〜20の炭化水素基、EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基、m及びnは平均付加モル数であり、mは14〜22、nは1〜5である。“/”はEOとPOはランダム付加体でもブロック付加体でも何れでも良く、EOとPOの付加順序は問わないことを示す。〕
【0012】
一般式(a1)中のRは炭素数8〜20、好ましくは9〜18の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基を表す。また、EOはエチレンオキシ基を示し、平均付加モル数mは14〜22、好ましくは16〜22である。塗布後の水への溶解性の観点からmは前記下限値以上であり、洗浄性の観点から前記上限値以下である。POはプロピレンオキシ基を示し、平均付加モル数nは1〜5、好ましくは2〜4、より好ましくは2〜3である。塗布後の水への溶解性の観点からnは前記下限値以上であり、洗浄性の観点から前記上限値以下である。本発明において一般式(I)の“/”は、EOとPOがランダム付加体でもブロック付加体でも何れでも良く、EOとPOの付加順序は問わないことを示す。
【0013】
(a)成分としては、一般式(a1−1)で表される非イオン界面活性剤を用いることで、より優れた洗浄性能、安定性を得ることができる。
1a−O−(EO)p1(PO)q(EO)p2−H (a1−1)
【0014】
一般式(a1−1)中、R1aは炭素数8〜20、好ましくは炭素数10〜16の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基を表す。一般式(a1−1)中、EOはエチレンオキシ基を示し、POはプロピレンオキシ基を示す。p1、p2、qは平均付加モル数を示し、p1+p2=14〜22、q=1〜5である。好ましくはp1+p2=16〜22、q=2〜4である。p1及びp2は同時に0になることは無い。組成物のゲル化や固体化の抑制の点からp1及びp2は、それぞれ1以上、更に5以上であることが好ましい。なお、一般式(a1−1)中のp1、p2、qと一般式(a1)中のm、nとの関係は、m=p1+p2、n=qである。
【0015】
本発明の(a)成分は、一般に知られている製造方法によって得ることができる。例えば、一般式(a1−1)の非イオン界面活性剤は、まず、原料となる炭素数8〜18の飽和もしくは不飽和の高級アルコール(R1a−OHで表される化合物)に水酸化カリウムを仕込んだ後、窒素置換し、100〜110℃、1〜7kPaで30分〜1時間脱水を行う。次いで100〜170℃、0.3〜0.6MPaでエチレンオキシドの付加を行い、次に100〜150℃、0.3〜0.7MPaの条件でプロピレンオキシドの付加を行い、再度100〜170℃、0.3〜0.7MPaの条件でエチレンオキシドを付加した後、添加した水酸化カリウムと当モル量の酸剤(酢酸、乳酸、グリコール酸等)で中和することによって得られる。なお各エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの使用量は、p1、p2、qが一般式(a1−1)中の範囲となるように、原料アルコールのモル数に応じて選定される。
【0016】
<(b)成分>
本発明の塗布用洗浄剤組成物は、(b)成分として陰イオン界面活性剤を含有する。(b)成分は、洗浄成分としての効果の向上とともに、(a)成分を用いることにより、塗布により繊維内部に吸収された洗浄剤組成物が、洗濯時に洗濯液へ拡散すること助ける。この理由として、(a)成分の分子間に(b)成分の分子が混合されることで、(b)成分の陰イオン基の電気的反発から界面活性剤分子の整列が抑制され、水の希釈時に結果として液晶形成が抑制され、繊維内でゲル化を形成しにくくなることが考えられる。
【0017】
(b)成分は、洗浄力向上の観点から、カルボキシレート型陰イオン界面活性剤〔以下、(b−1)成分という〕、及びスルホネート又はサルフェート型陰イオン界面活性剤〔以下、(b−2)成分という〕から選ばれる陰イオン界面活性剤であることが好ましい。
【0018】
(b−1)成分としては、例えば下記の(b−1−1)、(b−1−1)が挙げられる。また、(b−2)成分としては、例えば下記の(b−2−1)、(b−2−2)、(b−2−3)が挙げられる。洗浄性能、安定性、溶解性の点で、(b−1−1)、(b−2−1)、(b−2−2)が好ましく、更に(b−2−1)を含有することがより好ましい。また(b−1−1)を泡調整剤、泥分散剤等の理由で用いることができる。(b−1−1)を含有する場合は、低温安定性の点から(b)成分中、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%である。
【0019】
(b−1−1)平均炭素数8〜20、好ましくは平均炭素数9〜18より好ましくは平均炭素数10〜16の脂肪酸塩。
(b−1−2)平均炭素数8〜20、好ましくは平均炭素数9〜18より好ましくは平均炭素数10〜16の直鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコール由来のアルキル基又は分岐アルコール由来のアルキル基を有し、エチレンオキシ基の一部がプロピレンオキシ基であってもよい、平均付加モル数が1〜5のポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩
【0020】
(b−2−1)平均炭素数8〜20、好ましくは平均炭素数9〜18より好ましくは平均炭素数10〜16のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩。
(b−2−2)平均炭素数8〜20、好ましくは平均炭素数9〜18より好ましくは平均炭素数10〜16の直鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコール由来のアルキル基又は分岐アルコール由来のアルキル基を有し、エチレンオキシ基の一部がプロピレンオキシ基であってもよい、平均付加モル数が1〜5のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩
(b−2−3)平均炭素数8〜20、好ましくは平均炭素数9〜18より好ましくは平均炭素数10〜16のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル塩。
【0021】
(b)成分を構成する塩はナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、アルカノールアミン塩、及びマグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩などを挙げることができるが、特に安定性の観点から、ナトリウムもしくはカリウム塩、又はモノエタノールアミン塩であることが好ましい。陰イオン界面活性剤は、液体洗浄剤組成物中には酸型で添加して、系内でアルカリにより中和してもよい。
【0022】
<(c)成分>
本発明の塗布用洗浄剤組成物は、(c)成分として陽イオン界面活性剤を含有する。(c)成分の陽イオン界面活性剤としては、第4級アンモニウム型界面活性剤及び/又は3級アミン型界面活性剤が好ましく、更にはエーテル結合、(ポリ)オキシアルキレン基、エステル基、又はアミド基で分断されていてもよい炭素数が6〜22炭化水素基を1つ有する第4級アンモニウム型界面活性剤及び/又は3級アミン型界面活性剤が好ましい。具体的には、下記一般式(c−1)で表される第4級アンモニウム塩〔以下、(c−1)成分という〕が好ましい。
【0023】
【化1】

【0024】
〔式中、R1cは炭素数6〜22の炭化水素基、好ましくは直鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、R1c中に−(AO)s−を含んでも良い。AOは、エチレンオキシ基及び/又はプロピレンオキシ基であり、sはAOの平均付加モル数を表し0.1〜10であり、R2c、R3c、R4cは、それぞれ独立にメチル基、エチル基、ベンジル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、X-はハロゲンイオン、CH3SO4-又はCH3CH2SO4-である。〕
【0025】
一般式(c−1)中のR1cの炭素数は8〜20が好ましく、10〜18がより好ましく、10〜16がさらに好ましい。
【0026】
(c−1)成分の陽イオン界面活性剤としては、例えば下記(c−1−1)〜(c−1−4)が挙げられるが、(c−1−1)、(c−1−3)から選ばれる化合物を含有することがより好ましい。(c−1−1)を含有する場合(c−1)成分中の50質量%以上、更に60質量%を占めることが好ましい。
(c−1−1)R1cの炭素数が6〜22の直鎖アルキル基であり、R2c〜R4cがそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基であるアンモニウム塩。
(c−1−2)R1cの炭素数が6〜22の分岐鎖アルキル基であり、R2c〜R4cがそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基であるアンモニウム塩。
(c−1−3)R1cの炭素数が6〜22の直鎖アルキル基であり、R2cがベンジル基であり、R3c及びR4cが炭素数1〜3のアルキル基であるアンモニウム塩。
(c−1−4)R1cの炭素数が6〜22の直鎖アルキル基であり、R1c中に−(AO)s−を含み、sが1〜5であり、R2c〜R4cがそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基であるアンモニウム塩。
【0027】
<塗布用洗浄剤組成物>
本発明の塗布用洗浄剤組成物では、洗浄性能の観点から、(a)成分、(b)成分及び(c)成分で示される界面活性剤の含有量の合計が(a)+(b)+(c)=40〜90質量%であり、45〜80質量%が好ましく、50〜70質量%が特に好ましい。
【0028】
また(a)成分である非イオン界面活性剤を主たる界面活性剤として用いる。従って(a)成分と(b)成分と(c)成分の質量比は、(a)/〔(b)+(c)〕=0.5〜5であり、塗布しやすい安定な液体組成物とするために1〜5が好ましい。
【0029】
また、本発明の塗布用洗浄剤組成物では、洗浄性能及び安定性の観点から、(a)成分と(b)成分の質量比は、(a)/(b)=0.3〜9が好ましく、より好ましくは1〜9、更に好ましくは1.5〜9である。特に安定性に関しては塗布用液体洗浄剤組成物として(d)成分と(e)成分とを併用して用いる場合は(a)/(b)は前記比率にあることが好ましい。
【0030】
(a)成分の組成物中の含有量は、上記質量比を満たすよう、10〜80質量%、更に20〜50質量%の範囲から選択されることが好ましい。
【0031】
また、本発明の塗布用洗浄剤組成物では、洗浄性能、及び再汚染防止性の観点から、(b)成分と(c)成分の質量比は、(b)/(c)=0.3〜2.5、好ましくは0.5〜2、より好ましくは0.6〜1.5である。
【0032】
(c)成分は、塗布時の洗浄性能を向上させるが、再汚染の可能性があるため、配合量としては0.5〜20質量%が好ましく、より好ましくは2〜12質量%である。特に他の洗剤との併用を行わず、本発明の組成物でのみで繊維製品を洗浄する場合は、この濃度範囲であることが好ましい。
【0033】
なお(b)成分の陰イオン界面活性剤は、塩の分子量によって、その質量が異なることから、本発明では塩ではなく、酸型すなわち対イオンを水素原子イオンと仮定した時の質量を(b)成分の質量とする。また(c)成分の陽イオン界面活性剤も同様に塩の分子量によって、その質量が異なるため、対陰イオン(X-)を除いた質量を(c)成分の質量とする。
【0034】
本発明の(a)成分は、EOの付加モル数が高いことから、組成物中の(a)成分濃度を高めても水の希釈により液晶を形成しにくい性質がある。その際に(a)、(b)及び(c)成分の合計が40〜90質量%の範囲で用いることができる。その場合、主たる残部として(d)成分である水混和性有機溶剤又は該(d)成分と(e)成分である水を用いることが好ましい。特に一般式(a1−1)の非イオン界面活性剤は、全界面活性剤が50質量%以上のような高濃度時であっても結晶を形成しにくく、希釈時の液晶形成抑制にも優れる。また(b)成分との併用により結晶抑制と液晶抑制効果が更に高まるだけでなく洗浄性にも優れる。その結果として、従来よりも高い界面活性剤での塗布用洗浄剤が可能となる。更には、本発明の塗布用洗浄剤組成物は、従来の塗布洗剤と同じく、洗剤(非塗布型洗剤)との併用を排除するものではないが、少量、例えば洗濯液30Lに対して5〜15gの使用量で高い洗浄力が得られることから、他の洗剤を併用せずとも本発明の塗布用洗浄剤のみで、十分な洗浄力を得ることが可能な組成を組むことができる。全ての洗濯物の洗浄に十分な洗浄力を示すのに必要な界面活性剤〔(a)〜(c)成分等〕の全量を本発明の塗布用洗浄剤組成物中に配合したとしても、洗濯液中で界面活性剤の繊維からの溶出が容易であり、従来の塗布洗剤とは異なり、他の一般洗剤を併用する必要がなくなる。
【0035】
<その他の成分>
以下、本発明の塗布用洗浄剤組成物が含有できる成分について説明する。
【0036】
<(d)成分>
本発明の塗布用洗浄剤組成物は、(d)成分として水混和性有機化合物を5〜40質量%含有することが好ましい。これにより、液状の組成物が容易に得られ、洗濯時に水に接触したときの液晶の形成によるゲル化形成を抑制し易くなる。
【0037】
本発明でいう水混和性有機溶剤とは、25℃のイオン交換水1Lに50g以上溶解するもの、すなわち、溶解の程度が50g/L以上である溶剤を指す。
【0038】
(d)成分としては、水酸基及び/又はエーテル基を有する水混和性有機溶剤が好ましい。水混和性有機溶剤としては、(d−1)エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルカノール類、(d−2)プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのグリコール類、(d−3)ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどのポリグリコール類、(d−4)ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メチルグリセリンエーテル、2−メチルグリセリンエーテル、1,3−ジメチルグリセリンエーテル、1−エチルグリセリンエーテル、1,3−ジエチルグリセリンエーテル、トリエチルグリセリンエーテル、1−ペンチルグリセリルエーテル、2−ペンチルグリセリルエーテル、1−オクチルグリセリルエーテル、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのアルキルエーテル類、(d−5)2−フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、平均分子量約480のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、2−ベンジルオキシエタノール、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等の芳香族エーテル類が挙げられる。なお芳香族エーテル類において、モノ、ジ又はトリエチレングリコールモノブチルエーテルは、フェノールにエチレンオキシドを1〜3モル付加させたオキシエチレン基の付加モル数の異なる混合物として配合してもよく、その場合は未反応のフェノールは除去する。
【0039】
(d)成分は、組成物の粘度調整剤、ゲル化抑制剤として有効であり、上記の(d−1)アルカノール類、(d−2)グリコール類、(d−4)アルキルエーテル類、(d−5)芳香族エーテル類から選ばれる1種以上が好ましく、より好ましくは(d−2)グリコール類、(d−4)アルキルエーテル類、(d−5)芳香族エーテル類から選ばれる1種以上を含有することで、より効果的に組成物の粘度調整、ゲル化抑制を達成できる。具体的な好ましい成分としては、エタノール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、2−フェノキシエタノール(エチレングリコールモノフェニルエーテルとも言う)、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテルから選ばれる1種以上である。
【0040】
(d)成分の含有量は、(a)、(b)及び(c)成分を液状にする量、好ましくは組成物の粘度が後述の範囲となる量で含有してもよい。また、後述の(e)成分である水を含有する場合、(d)成分の含有量は、組成物中、5〜40質量%が好ましく、10〜35質量%がより好ましく、10〜25質量%が特に好ましい。また、安定性、溶解性の観点から、(a)成分、(b)成分、及び(c)成分の合計と(d)成分との質量比〔(a)+(b)+(c)〕/(d)は1.8〜9が好ましく、2.3〜9がより好ましく、2.3〜5.7が更に好ましい。
【0041】
<(e)成分>
本発明の塗布用洗浄剤組成物は、(e)成分として、水を5〜40質量%、更に10〜30質量%含有することが好ましい。水はイオン交換水などの組成に影響しないものを用いることが好ましい。
【0042】
<(f)成分>
本発明の塗布用洗浄剤組成物は、(f)成分として(a)成分、(b)成分、及び(c)成分以外の界面活性剤〔以下、(f)成分という〕を本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0043】
(f)成分として、次の(f−1)は、洗浄力を更に高める上で含有することが好ましい。
(f−1):下記一般式(f1)で示される非イオン界面活性剤
f1−O−(EO)r−H (f1)
〔式中、Rf1は炭素数8〜20の直鎖の炭化水素基であり、EOはエチレンオキシ基、rは平均付加モル数であり、r=2〜5である。〕
【0044】
(f−1)は、本発明の塗布用洗浄剤組成物中に好ましくは1〜10質量%、より好ましくは2〜8質量%含有される。
【0045】
また、本発明の塗布用洗浄剤組成物は、(f)成分として、下記(f−2)及び(f−3)を含有することができる。
【0046】
(f−2):その他の非イオン界面活性剤。
例えば、下記(f−2−1)及び(f−2−2)が挙げられる。
(f−2−1)次の一般式で表されるアルキル又はアルケニル多糖界面活性剤。
f21−(ORf22xy
〔式中、Rf21は直鎖又は分岐鎖の炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基、Rf22は炭素数2〜4のアルキレン基、Gは炭素数5又は6の還元糖に由来する残基、xは平均値0〜6の数、yは平均値1〜10の数を示す。〕
(f−2−2)脂肪酸アルカノールアミド、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド。
【0047】
(f−3)両性界面活性剤
例えば、炭素数10〜18のアルキル基を有するスルホベタイン又はカルボベタインを挙げることができる。
【0048】
(f)成分の含有量は、本発明の塗布用洗浄剤組成物中、好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である。なお、(f)成分のうち非イオン界面活性剤(f−1)を用いることが好ましく、その場合は、前記(a)成分と合わせて、[(a)+(f−1)]/[(b)+(c)]として(a)/[(b)+(c)]の質量比の範囲内に入ることが好ましい。
【0049】
<(g)成分>
本発明の塗布用洗浄剤組成物には、アルカリ剤〔以下、(g)成分という〕を配合することが好ましい。アルカリ剤は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などの他に、液体洗浄剤では一般的なアルカノールの炭素数が2〜4の1〜3つのアルカノール基を有するアルカノールアミンをあげることができる。このうちアルカノールはヒドロキシエチル基であるものが好ましい。アルカノール基以外は水素原子であるが、炭素数4以下、特には2以下のアルキル基であってもアルカリ剤として使用することができる。本発明ではアルカノールアミンは分子量が150未満の化合物である。アルカノールアミンとしては、2−アミノエタノール、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、イソプロパノールアミン混合物(モノ、ジ、トリの混合物)等のアルカノールアミン類が挙げられる。本発明ではモノエタノールアミン、トリエタノールアミンがより好ましく、モノエタノールアミンが最も好ましい。
【0050】
(g)成分は、後述する組成物のpHをアルカリ性にする濃度で含有することが好ましい。
【0051】
なお、アルカノールアミンは、組成物の安定性及び洗浄性への影響があるため、本発明では陰イオン化合物の対イオンも考慮してカウントするものとする。また分子量150未満のアルカノールアミンを、モノエタノールアミンと仮定した上で、(g’)成分として規定し、組成物中の含有量が好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは1〜7質量%である。
【0052】
<(h)成分>
本発明の塗布用洗浄剤組成物は、キレート剤〔以下、(h)成分という〕を含有することができる。(h)成分のキレート剤は、例えば、(h1)ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジエンコル酸等のアミノポリ酢酸又はこれらの塩、(h2)ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチル酒石酸等の有機酸又はこれらの塩、(h3)アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、これらのアルカリ金属又は低級アミン塩、等が挙げられる。本発明では前記(b)成分であげたアルカノールアミンを塩とすることが好ましく、酸で配合し系中でアルカリ剤によって中和した塩であってもよい。
【0053】
(h)成分の組成物中の配合割合は、酸型とみなした場合に0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜4質量%、更に好ましくは0.1〜3質量%である。
【0054】
本発明の塗布用洗浄剤組成物には、次の(i)〜(xii)に示す成分を本発明の効果を損なわない程度で配合することができる。
(i)ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、カルボキシメチルセルロース、重量平均分子量5000以上のポリエチレングリコール、無水マレイン酸−ジイソブチレン共重合体、無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、及び特開昭59−62614号公報の請求項1〜21(1頁3欄5行〜3頁4欄14行)記載のポリマーなどの再汚染防止剤及び分散剤
(ii)ポリビニルピロリドン等の色移り防止剤
(iii)過酸化水素、過炭酸ナトリウム又は過硼酸ナトリウム等の漂白剤
(iv)テトラアセチルエチレンジアミン、特開平6−316700号の一般式(I−2)〜(I−7)で表される漂白活性化剤等の漂白活性化剤
(v)セルラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ等の酵素
(vi)ホウ素化合物、カルシウムイオン源(カルシウムイオン供給化合物)、ビヒドロキシ化合物、蟻酸等の酵素安定化剤
(vii)蛍光染料、例えばチノパールCBS(商品名、チバスペシャリティケミカルズ製)やホワイテックスSA(商品名、住友化学社製)として市販されている蛍光染料
(viii)ブチルヒドロキシトルエン、ジスチレン化クレゾール、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウム等の酸化防止剤
(ix)パラトルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、メタキシレンスルホン酸、安息香酸塩(防腐剤としての効果もある)などの可溶化剤
(x)特表平11−513067号公報に記載されているゲル化防止重合体、特には重量平均分子量が600〜5000、さらには1000〜4000のポリプロピレングリコール又はポリエチレングリコール。なお重量平均分子量は光散乱法を用いて決定することができ、ダイナミック光散乱光度計(DLS−8000シリーズ、大塚電子株式会社製等)により測定することができる。
(xi)オクタン、デカン、ドデカン、トリデカンなどのパラフィン類、デセン、ドデセンなどのオレフィン類、塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタンなどのハロゲン化アルキル類、D−リモネンなどのテルペン類などの水非混和性有機溶剤。
(xii)その他、色素、香料、抗菌防腐剤、シリコーン等の消泡剤
【0055】
(a)成分が液状である場合は、本発明の組成物は(b)及び(c)成分並びに他の成分との混合物として液状で得ることができるが、溶解性や安定性の点から(d)成分を併用することが好ましく、特には(d)成分と(e)成分とを含有することが好ましい。
【0056】
以下に本発明の塗布用洗浄剤組成物中、前記任意成分を配合する場合の指標としての濃度を示すが、本効果を損なわない程度に適宜調整され、配合に適さない場合は除外される。
(i)の再汚染防止剤及び分散剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(ii)の色移り防止剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(iii)の漂白剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(vi)の漂白活性化剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(v)の酵素の含有量は0.001〜2質量%が好ましい。(vi)の酵素安定化剤の含有量は0.001〜2質量%が好ましい。(vii)の蛍光染料の含有量は0.001〜1質量%が好ましい。(viii)の酸化防止剤の含有量は0.01〜2質量%が好ましい。(ix)の可溶化剤は0.1〜2質量%が好ましい。(x)のポリアルキレングリコール系ゲル化防止重合体は0.01〜2%が好ましい。(xi)の水非混和性有機溶剤は0.001〜2質量%が好ましい。(xii)のその他の成分は、公然に知られている成分でよく、濃度も公知の濃度で配合することができる。
【0057】
なお、上記任意成分のうち(ix)、(x)、(xi)は洗浄剤組成物の安定性に影響を及ぼすのでその配合及び配合濃度には注意を要する。
【0058】
本発明の塗布用洗浄剤組成物のpH(JIS Z 8802の7.2)は、洗浄性能、安定性の点から5〜11、特には6〜10(25℃)が好ましい。
【0059】
本発明の塗布用洗浄剤組成物は流動性のある液体であることが好ましく、20℃における粘度は、取り扱いの容易さの点で10〜500mPa・sが好ましく、50〜400mPa・sがより好ましく、80〜300mPa・sが更に好ましく、100〜300mPa・sが最も好ましい。(d)成分や可溶化剤によりこのような範囲になるように調整することが好ましい。
【0060】
また本発明の洗浄剤組成物は、水による希釈時に、ゲル化や高粘度化が起こらない組成物であることが好ましい。特には希釈工程にて得られる希釈液の粘度が10℃において1500mPa・s以下である液体洗浄剤組成物が好ましい。実質的には、20倍以下の希釈率で測定すればよく、洗浄剤組成物をイオン交換水で0を超え20倍の範囲で希釈値を違えた複数のサンプルの液状性から判断することができる。具体的には、10℃の液体洗浄剤組成物と10℃のイオン交換水とを、下記式で示される濃度範囲となるように、5質量%刻みで混合した計19サンプル全ての粘度が10℃において1500mPa・s以下であることが好ましい。
〔(塗布用洗浄剤組成物の質量)/(塗布用洗浄剤組成物の質量+イオン交換水の質量)〕×100=5〜95質量%
【0061】
本発明において粘度はB型粘度計により測定する。ローターは粘度に合ったものを選択する。回転数60r/minで回転し、回転開始から60秒後の粘度を液体洗浄剤組成物又は希釈液の粘度とする。
【0062】
本発明の塗布用洗浄剤組成物は、塗布用容器として知られている容器に充填して使用されることが好ましく、容器は、押圧により容器内部から液体洗浄剤組成物を吐出するスクイズタイプ、ローラーや球が回転することで内部の液体洗浄剤組成物を塗布するロールオンタイプ、ポンプ機能を備えたポンプタイプ(トリガー式が好ましい)が挙げられる。また、特開平11−269500号公報に記載されているような、吐出口と、非多孔質性の吐出された液体洗浄剤組成物の塗り延ばし面とを具備する、塗布用の容器に充填して使用することも好ましい。
【0063】
従って本発明は、下記(a)〜(c)成分を含有する塗布用洗浄剤組成物であって、(a)成分と(b)成分と(c)成分の含有量の合計が(a)+(b)+(c)=40〜90質量%であり、(a)成分と(b)成分と(c)成分の質量比が(a)/〔(b)+(c)〕=0.5〜5であり、(b)成分と(c)成分の質量比が(b)/(c)=0.3〜2.5である塗布用洗浄剤組成物を塗布用容器に充填した塗布容器入り塗布用洗浄剤もまた提供するものである。
(a)成分:下記一般式(a1)で示される非イオン界面活性剤
R−O−[(EO)m/(PO)n]−H (a1)
〔式中、Rは炭素数8〜20の炭化水素基、EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基、m及びnは平均付加モル数であり、mは14〜22、nは1〜5である。“/”はEOとPOはランダム付加体でもブロック付加体でも何れでも良く、EOとPOの付加順序は問わないことを示す。〕
(b)成分:陰イオン界面活性剤
(c)成分:陽イオン界面活性剤
【0064】
なお、上記塗布容器入り塗布用洗浄剤に充填される、塗布用洗浄剤組成物に関しては、前述した塗布用洗浄剤組成物にの詳細な説明に記載した好ましい要件がそのまま適応される。
【0065】
本発明の塗布用洗浄剤組成物は、水への溶解性及び洗浄性能が高いため、他の洗浄剤を併用せずとも、塗布処理した洗濯物と塗布処理していない洗濯物の両方を一緒に洗浄することが可能である。よって、本発明により、下記工程1及び工程2を含む洗濯方法が提供される。
下記、工程1及び工程2を含む洗濯方法。
工程1:請求項1〜3の何れか1項に記載の塗布用洗浄剤組成物を洗濯物の汚れが付着した部分に塗布する工程
工程2:前記塗布用洗浄剤組成物を塗布した洗濯物を水と混合して調製した洗浄浴を用いて、他の洗浄剤組成物を前記洗濯浴に添加せずに、前記洗濯物を洗浄する工程
【0066】
工程2では、本発明の塗布用洗浄剤組成物を塗布した洗濯物と共に、本発明の塗布用洗浄剤組成物を塗布していない他の洗濯物を洗濯することができる。また、工程2では、工程1で用いた塗布用洗浄剤組成物(本発明の塗布用洗浄剤組成物を塗布した洗濯物に由来する前記組成物)の濃度が洗浄浴中1.7〜0.2g/Lであることが好ましい。この濃度となるように、工程1での組成物の塗布量、組成物を塗布した洗濯物の量、及び水の量等を調整することが好ましい。また、工程2での浴比が10以上の場合、濯ぎ工程を1回のみ行うことが好ましい。(a)成分のうち、一般式(a1−1)で示される非イオン界面活性剤は濯ぎ性に優れるため、濯ぎ工程を1回のみ行う場合に好ましい。
【実施例】
【0067】
表1に記載の液状の塗布用洗浄剤組成物を調製し、組成物の25℃のpHを7.5に調整した。得られた液体洗浄剤組成物の20℃における粘度は80〜300mPa・sの範囲にあった。下記評価方法に従って、洗浄力の評価を行った。結果を表1に示した。
【0068】
[洗浄力評価]
<人工汚染布の調製>
下記組成の人工汚染液を布に付着して人工汚染布を調製した(詳細は特開平7−270395号公報の実施例参照)。人工汚染液の布への付着は、グラビアロールコーターを用いて人工汚染布を布に印刷することで行った。人工汚染液を布に付着させ人工汚染布を作製する工程は、グラビアロールのセル容積58cm3/cm2、塗布速度1.0m/min、乾燥温度100℃、乾燥時間1分で行った。布は木綿金巾2003布(谷頭商店製)を使用した。
【0069】
〔人工汚染液の組成〕
ラウリン酸 0.44質量%
ミリスチン酸 3.09質量%
ペンタデカン酸 2.31質量%
パルミチン酸 6.18質量%
ヘプタデカン酸 0.44質量%
ステアリン酸 1.57質量%
オレイン酸 7.75質量%
トリオレイン 13.06質量%
パルミチン酸n−ヘキサデシル 2.18質量%
スクアレン 6.53質量%
卵白レシチン液晶物 1.94質量%
鹿沼赤土 8.11質量%
カーボンブラック 0.01質量%
水道水 バランス(合計100質量%)
【0070】
<洗浄方法>
6cm×6cmに裁断された前記人工汚染布5枚に、1枚当たり40μlの塗布用液体洗浄剤組成物を塗布する。液体洗浄剤組成物が塗布された人工汚染布は、20℃で4°DHの水を600ml入れた、かき混ぜ式洗浄力試験機(株式会社上島製作所製、商品名:ターゴトメータ)用ビーカーに、投入された。投入後、5分静置させた後、かき混ぜ式洗浄力試験機に設置して、回転数85rpm、洗浄時間10分、温度20℃の条件下で洗浄し、下記の方法で洗浄率を求めた。
【0071】
<洗浄率の測定>
汚染前の原布及び洗浄前後の汚染布の550nmにおける反射率を自記色彩計(株式会社島津製作所製)にて測定し、次式によって洗浄率(%)を求め、5枚の洗浄率の測定平均値を洗浄力として示した。
洗浄率(%)=〔(洗浄後の汚染布の反射率−洗浄前の汚染布の反射率)/(原布の反射率−洗浄前の汚染布の反射率)〕×100
【0072】
【表1】

【0073】
表に記載の成分は下記のものである。なお、表1中では、便宜的にf−iとf−iiを(a)成分とみなして(a)+(b)+(c)、(a)/〔(b)+(c)〕を示した。
・a−1:炭素数10〜14の直鎖1級アルコールにエチレンオキシド(以下、EOと表記する)を平均9モル、プロピレンオキシド(以下、POと表記する)を平均2モル、EOを平均9モルの順にブロック付加させたもの。すなわち一般式(a1−1)においてR1aが酸素原子と結合する第一炭素原子を有する炭素数10〜14の直鎖アルキル基であり、p1=9、q=2、p2=9の化合物。
・a−2:炭素数10〜14の直鎖1級アルコールにEOを平均8モル、POを平均2モル、EOを平均8モルの順にブロック付加させたもの。すなわち一般式(a1−1)においてR1aが酸素原子と結合する第一炭素原子を有する炭素数10〜14の直鎖アルキル基であり、p1=8、q=2、p2=8の化合物。
・a−3:炭素数10〜14の直鎖1級アルコールにEOを平均7モル、POを平均2モル、EOを平均7モルの順にブロック付加させたもの。すなわち一般式(a1−1)においてR1aが酸素原子と結合する第一炭素原子を有する炭素数10〜14の直鎖アルキル基であり、p1=7、q=2、p2=7の化合物。
【0074】
・b−2−1−1:炭素数10〜14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(表の濃度は酸としての濃度。組成物内でアルカノールアミン塩で中和)
・b−1−1−1:ルナックMY−98(商品名;平均炭素数14.0)(ヤシ油系脂肪酸;花王株式会社製)
【0075】
・c−1−1−1:平均炭素数10の直鎖アルキルトリメチルアンモニウムクロライド
・c−1−1−2:平均炭素数12の直鎖アルキルトリメチルアンモニウムクロライド
・c−1−1−3:平均炭素数18の直鎖アルキルトリメチルアンモニウムクロライド
【0076】
・f−1−1:エマルゲン105〔商品名、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(花王(株))、一般式(f1)において、Rf1が炭素数12の直鎖アルキル基であり、r=4の化合物、なお酸素原子に結合するRf1の炭素原子は第1級炭素原子である。〕
・f−i:炭素数10〜14の直鎖1級アルコールにEOを平均16モル付加させたもの。便宜的に一般式(f1)の構造でみると、Rf1が酸素原子と結合する第一炭素原子を有する炭素数10〜14の直鎖アルキル基であり、r=16の化合物に相当する。
・f−ii:炭素数10〜14の直鎖1級アルコールにEOを平均21モル付加させたもの。便宜的に一般式(f1)の構造でみると、Rf1が酸素原子と結合する第一炭素原子を有する炭素数10〜14の直鎖アルキル基であり、r=21の化合物に相当する。
【0077】
表1の実施例に記載の塗布用液体洗浄剤を特開平11−269500号公報に記載されている塗布用容器に充填したものは、繊維製品に直接塗布し易く使い勝手に優れる。更に該塗布用液体洗浄剤組成物を実用衣料の衿や袖の汚れに対し5〜10gを直接塗布して、洗濯を行うと、他の洗剤を併用しない場合であっても、衿汚れへの塗布性に優れ、且つ塗布以外の汚れに対しても優れた洗浄力を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(c)成分を含有する塗布用洗浄剤組成物であって、(a)成分と(b)成分と(c)成分の含有量の合計が(a)+(b)+(c)=40〜90質量%であり、(a)成分と(b)成分と(c)成分の質量比が(a)/〔(b)+(c)〕=0.5〜5であり、(b)成分と(c)成分の質量比が(b)/(c)=0.3〜2.5である塗布用洗浄剤組成物。
(a)成分:下記一般式(a1)で示される非イオン界面活性剤
R−O−[(EO)m/(PO)n]−H (a1)
〔式中、Rは炭素数8〜20の炭化水素基、EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基、m及びnは平均付加モル数であり、mは14〜22、nは1〜5である。“/”はEOとPOはランダム付加体でもブロック付加体でも何れでも良く、EOとPOの付加順序は問わないことを示す。〕
(b)成分:陰イオン界面活性剤
(c)成分:陽イオン界面活性剤
【請求項2】
(c)成分が下記一般式(c1)で表される第4級アンモニウム塩である、請求項1記載の塗布用洗浄剤組成物
【化1】


〔式中、R1cは炭素数6〜22の炭化水素基であり、R1c中に−(AO)s−を含んでも良い。AOは、エチレンオキシ基及び/又はプロピレンオキシ基であり、sはAOの平均付加モル数を表し0.1〜10であり、R2c、R3c、R4cは、それぞれ独立にメチル基、エチル基、ベンジル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、X-はハロゲンイオン、CH3SO4-又はCH3CH2SO4-である。〕
【請求項3】
更に、(d)成分として水混和性有機化合物を5〜40質量%含有する請求項1又は2に記載の塗布用洗浄剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の塗布用洗浄剤組成物を塗布用容器に充填した容器入り塗布用洗浄剤。
【請求項5】
下記、工程1及び工程2を含む洗濯方法。
工程1:請求項1〜3の何れか1項に記載の塗布用洗浄剤組成物を洗濯物の汚れが付着した部分に塗布する工程
工程2:前記塗布用洗浄剤組成物を塗布した洗濯物を水と混合して調製した洗浄浴を用いて、他の洗浄剤組成物を前記洗濯浴に添加せずに、前記洗濯物を洗浄する工程

【公開番号】特開2012−87227(P2012−87227A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235760(P2010−235760)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】