塗布装置および移動体
【課題】塗料の塗布に適した塗布装置の提供
【解決手段】塗布装置10は、ベース部材11と、ベース部材11に取り付けられたスポンジ12と、ベース部材11側からスポンジ12に塗料を供給する供給ポンプ13とを備えている。スポンジ12は、供給ポンプ13が塗料を供給する部分22に供給ポンプ13から供給された塗料が溜まる窪み31が形成されている。かかる塗布装置10は、クローラ型壁面吸着走行装置1000のような移動体に取り付けられるのに適している。
【解決手段】塗布装置10は、ベース部材11と、ベース部材11に取り付けられたスポンジ12と、ベース部材11側からスポンジ12に塗料を供給する供給ポンプ13とを備えている。スポンジ12は、供給ポンプ13が塗料を供給する部分22に供給ポンプ13から供給された塗料が溜まる窪み31が形成されている。かかる塗布装置10は、クローラ型壁面吸着走行装置1000のような移動体に取り付けられるのに適している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗布装置および移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な床面はもちろんのこと、垂直な壁面などを自由に走行して各種作業を行うための作業ロボットとして、左右一対のクローラを床面又は壁面に吸着させて走行するクローラ型壁面吸着走行装置が提案されている。例えば、特開2007−30852号には、フレームの前後にそれぞれ回転自在に左右一対のスプロケットを取り付け、斯かるスプロケットに無端チェーンを巻き掛けたクローラ型壁面吸着走行装置が記載されている。無端チェーンは、床面又は壁面に対して密着し得る吸着パッドを先端に取り付けたベローズを備えている。そして、走行に伴い床面又は壁面に当接するベローズを真空引きして、当該ベローズの吸着パッドを走行壁面に吸着させる構造を備えている。
【特許文献1】特開2007−30852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
かかるクローラ型壁面吸着走行装置は、例えば、壁面などの検査や塗装に用いることが検討されている。また、クローラ型壁面吸着走行装置は、人の手で作業がし難い場所に用いることが予定されているため、塗料を塗るスペースの養生が難しい場合があり、塗料の飛散や液たれを防止したい。しかし、このようなクローラ型壁面吸着走行装置に用いるのに適した塗布装置は確立されていない。ペンキなどの塗料を壁面に塗布する場合には、一般的には、例えば、ローラやスプレーを用いて塗料を壁面に塗布或いは吹き付けることが行なわれている。しかし、ローラを用いて塗料を塗布する場合には、ローラは特にローラの端部から塗料がたれることがある。また、ローラを用いて塗料を塗布する場合には、壁面に凹凸があるような場合に上手く塗料を塗れない場合がある。また、スプレーによって塗料を吹き付ける場合には、塗料が飛散する可能性が高く、特に風が強い場所での使用が難しい。また、上述したクローラ型壁面吸着走行装置が用いられる用途では、人の手で修正作業を行なえない場合もある。このため、出来る限り修正作業が不要な塗布手段を採用したい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る塗布装置は、スポンジに含浸させた塗料を塗布する塗布装置であって、ベース部材と、ベース部材に取り付けられたスポンジと、ベース部材側からスポンジに塗料を供給する供給ポンプとを備えている。スポンジは、供給ポンプが塗料を供給する部分に供給ポンプから供給された塗料が溜まる窪みが形成されている。
【発明の効果】
【0005】
この塗布装置によれば、スポンジは、供給ポンプが塗料を供給する部分に供給ポンプから供給された塗料が溜まる窪みが形成されており、常時適量の塗料を含浸させることができる。また、当該窪みに、供給ポンプで塗料を供給するので、スポンジの外表面に塗料を滲み出させることができる。このように適量の塗料を含浸させたスポンジによって、塗料を塗布するので、垂直壁面に対しても塗料の飛散を防止しつつ塗布することができる。また、スポンジの弾性変形によって、壁面の凹凸に対しても上手く塗料を塗ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の一実施形態に係る塗布装置を図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0007】
本発明の一実施形態に係る塗布装置10は、図1に示すように、ベース部材11と、スポンジ12と、供給ポンプ13とを備えている。また、この実施形態では、塗布装置10は、図2に示すように、移動体1000に取り付けられている。また、塗布装置10は、スポンジ12から垂れる塗料を受ける受け部21を備えている。この実施形態では、受け部21は、移動体1000に取り付けられたときに、スポンジの下側に受け部21が配設されるように、配設されている。この実施形態では、受け部は、スポンジ12から垂れる塗料を受ける容器で構成されており、移動体1000の走行時に、塗布面1に当らない形状になっている。
【0008】
ベース部材11は、スポンジ12を取り付ける部材である。この実施形態では、ベース部材11は、複数の板材を重ねている。ベース部材11の片面には、スポンジ12が取り付けられている。また、ベース部材11には、スポンジ12に塗料を供給する配管を繋げる穴22が形成されている。ベース部材11のスポンジ12よりも後部には、受け部21が取り付けられている。
【0009】
スポンジ12は、供給ポンプ13が塗料を供給する部分に供給ポンプ13から供給された塗料が溜まる窪み31が形成されている。この実施形態では、窪み31は、スポンジ12が、ベース部材11に取り付けられた状態で、塗料が供給される穴22に連通する位置に当該窪み31が形成されている。さらに、この塗布装置10では、スポンジ12は、ベース部材11に取り付けられる側とは反対側の面が凸曲面32で形成されている。
【0010】
この実施形態では、スポンジ12は、塗料が含浸し多孔質材料であり、塗料を塗るのに適した所要の柔らかさを備えている。この実施形態では、ポリウレタンフォーム製のスポンジを用いている。
【0011】
供給ポンプ13は、スポンジ12に塗料を供給する装置である。この実施形態では、供給ポンプ13は、塗料を供給するポンプで構成されており、ベース部材11の穴22に繋がれた配管23を通じて、ベース部材11側からスポンジ12に塗料を供給する。また、この実施形態では、供給ポンプ13は、塗料に圧力を掛けて塗料を供給している。
【0012】
この塗布装置10は、供給ポンプ13から配管を通じて塗料がスポンジ12に供給される。スポンジ12では、窪み31に塗料が溜まり、スポンジ12全体に適当な量の塗料が含浸する。窪み31に、供給ポンプ13で圧力を掛けて塗料を供給するので、スポンジの外表面に塗料を滲み出させることができる。そして、当該スポンジ12に塗料を含浸させ、図3に示すように、当該スポンジ12を塗布面1に摺り付けることによって、塗料を塗布面1に塗布することができる。
【0013】
塗料は、供給ポンプ13から供給され、スポンジ12に形成された窪み31に溜まり、当該窪み31からスポンジ12全体に含浸している。スポンジ12に含浸する塗料は、当該窪み31に溜まった塗料が適宜含浸することによって補充される。供給ポンプ13から供給される塗料が多過ぎる場合は、当該窪み31に塗料が溜まることよってスポンジ12に含浸する塗料を調整することができる。このため、スポンジ12に供給する塗料の調整が容易である。また、スポンジ12に塗料が含浸しているので、風が強い屋外で使用される場合でも塗料の飛散を防止できる。また、スポンジ12は、適当な柔らかさを備えている。このため、ベース部材11によって、スポンジ12を塗布面に押し付けることによって、多少の凹凸がある塗布面1にも塗料を塗布することができる。
【0014】
例えば、ローラでは、壁面に5ミリ程度の凹凸があると、上手く塗料を塗れない場合があるが、この実施形態では、壁面に5ミリ程度の凹凸があっても上手く塗料を塗ることができる。また、壁面の凹凸の段差が大きい場合には、柔らかいスポンジ12或いは厚めのスポンジ12を用いるとよい。
【0015】
この塗布装置10は、移動体1000に取り付ける場合に限らず、例えば、柄の先端に取り付けて、壁面にスポンジ12を押し当てるようにして用いることができる。この実施形態では、塗布装置10は、図2に示すように、移動体1000に取り付けている。以下、塗布装置10を移動体1000に取り付ける構造を説明する。
【0016】
この実施形態では、塗布装置10は、図2および図3に示すように、移動体1000の後部に、動作機構51と押付機構52を介して取り付けられている。動作機構51は、移動体1000の後部において、塗布装置10を左右に振れ動かす機構である。押付機構52は、スポンジ12を塗布面1に当接させる機構である。
【0017】
この実施形態では、図3に示すように、押付機構52は、移動体1000と動作機構51を構成する部材との間の連結部分に設けられている。当該連結部分は、図4に示すように、移動体1000に対して動作機構51が上下に回動できるようにヒンジ54が取り付けられている。また、ヒンジ54の両側で、移動体1000側の部材56と動作機構51側の部材57とが対向している。押付機構52は、ばね61と電動シリンダを内蔵したシリンダ62とを備えている。ばね61は移動体1000側の部材56と動作機構51側の部材57との間に圧縮した状態で配設されている。シリンダ62は動作機構51側の部材57に取り付けられている。そして、シリンダ62のピストンロッド63は、移動体1000側の部材56に形成された貫通穴64に貫通しており、ピストンロッド63の貫通した先端部にはストッパ65が取り付けられている。
【0018】
この押付機構52は、図3に示すように、電動シリンダの作用によってシリンダ62を縮めると、ストッパ65が移動体1000側の部材56に当たる。そして、シリンダ62が取り付けられた動作機構51が、移動体1000側の部材56に引き付けられる。これによって、ヒンジ54を中心として、動作機構51が上方に回動し、スポンジ12が塗布面1から引き上げられる。すなわち、移動体1000は、スポンジ12を塗布面1から離した状態で、移動することができる。
【0019】
また、電動シリンダの作用によってシリンダ62を伸ばすことによって、ストッパ65が移動体1000側の部材56から離れる。この際、常時、ばね61の作用によって、移動体1000側の部材56と動作機構51側の部材57との間隔が広げられる。これによって、ヒンジ54を中心として、動作機構51が下方に回動し、スポンジ12が塗布面1に押し当てられる。なお、この際、ストッパ65は、ストッパ65が移動体1000側の部材56から離れており、ばね61の作用によって、スポンジ12は、常時、塗布面1に押し当てられる。このばね61の作用によって、移動体1000の走行時に移動体1000のフレームが上下に動いても、スポンジ12は常時塗布面1に押し当てられる。
【0020】
次に、動作機構51を説明する。この動作機構51は、図5に示すように、ヒンジ66を介して片材71〜74を平行四辺形に組んだ平行リンク70を備えている。当該平行リンク70の前側のリンク71には、上述した押付機構52を介して移動体1000の後端部に連結されている。また、当該平行リンク70の後側のリンク72には、上述した塗布装置10が取り付けられている。塗布装置10は、図3に示すように、スポンジ12が下(塗料を塗布する塗布面)に向くように、かつ、受け部21が後側になるように取り付けられている。
【0021】
動作機構51は、第1リンク76と、第2リンク77と、モータ78(アクチュエータ)とを備えている。モータ78は、動作機構51の平行リンク70の右側のリンク74に取り付けられている。第1リンク76の一端の回転軸76aは、右側のリンク74に固定されており、当該回転軸76aは、モータ78から駆動力を受けて回転する。第2リンク77は、第1リンク76の先端と平行リンク70の後側のリンク72にそれぞれ回動自在に連結されている。この動作機構51は、モータ78から駆動力を受けて、第1リンク76が回転すると、図6に示すように、第1リンク76の回転軸76aと、第2リンク77が平行リンク70の後側のリンク72に取り付けられた位置との間で、第2リンク77がクランク機構のように作用する。この動作に応じて、平行リンク70は、後側のリンク72が左右に振れ動く。この実施形態では、平行リンク70の後側のリンク72は、前側のリンク71に対して平行な状態が維持される。このため塗布装置10は、左右に動く動作において、常時、受け部21を後側に向けた状態で維持される。
【0022】
この実施形態では、移動体1000は、図2および図3に示すように、複数のクローラ板101を無端チェーン状に連結し、前後左右のスプロケット102、103に掛け回したクローラ機構105を備えている。各クローラ板101は吸着部106を備えており、塗料を塗布する塗布面1に吸着しながら移動する。このように、移動体1000は、クローラ型壁面吸着走行装置で構成されている。当該クローラ型壁面吸着走行装置1000は、スプロケット103を駆動させるアクチュエータ107を駆動させクローラ機構105を回転させつつ、壁面1に接地したクローラ板101の吸着部106を壁面に吸着させることによって、例えば、垂直な壁面1に吸着しながら進むことができる。上述した押付機構52は、かかるクローラ型壁面吸着走行装置1000のフレーム110に連結されている。
【0023】
この実施形態では、移動体1000は、垂直な壁面に塗料を塗布する場合には、移動体1000を上、塗布装置10を下にして、各クローラ板101は吸着部106を備えており、壁面1に吸着させながら移動する。この際、この実施形態では、塗布装置10には、スポンジ12の後部に、スポンジ12から垂れる塗料を受ける受け部21を備えている。さらに、この実施形態では、スポンジ12は、ベース部材11に取り付けられる側とは反対側の面(壁面に摺り付けられる面)が凸曲面32で形成されている。凸曲面32は、後側(下側)が壁面1から立ち上がっている。塗料がある程度の粘性を有している場合には、スポンジ12の表面の余剰な塗料は、スポンジ12に沿って垂れる。このため、塗料をスポンジ12から受け部21に導くことができる。なお、この実施形態では、受け部21には、供給ポンプ13に塗料戻し通路24が配管されており、受け部21で受けた塗料を供給ポンプ13から再供給することができるように構成されている。
【0024】
このように、この実施形態では、塗布装置10は、ベース部材11側からスポンジ12に塗料を供給する供給ポンプ13を備え、スポンジ12は、供給ポンプ13が塗料を供給する部分に供給ポンプ13から供給された塗料が溜まる窪み31が形成されている。当該窪み31に塗料が溜まることよってスポンジ12に含浸する塗料が調整することができる。また、供給ポンプ13から供給する塗料に圧力を掛けることができる。これにより、スポンジ12の表面に塗料を滲み出させることができる。
【0025】
このため、スポンジ12に供給する塗料の調整が容易である。また、スポンジ12に塗料が含浸しているので、風が強い屋外で使用される場合でも塗料の飛散を防止できる。このため、この塗布装置10は、スプレーによる塗料の吹き付けよりも優位である。また、ローラでは、端部から余剰な塗料がたれる場合があるが、この実施形態では、塗布装置10は、スポンジ12に塗料を保持することができることに加え、スポンジ12に塗料が溜まる窪み31が形成されている。これにより、供給ポンプ13による塗料の供給量を適宜調整するなどして、塗料がたれないように調整することが容易である。
【0026】
また、スポンジ12は、適当な柔らかさを備えている。このため、ベース部材11によって、スポンジ12を塗布面に押し付けることによって、多少の凹凸がある塗布面1にも塗料を塗布することができる。このため、ローラによる塗布に比べて優位である。
【0027】
この塗布装置10は、上述したクローラ型壁面吸着走行装置1000のような移動体に取り付けられる塗布装置として好適である。すなわち、かかるクローラ型壁面吸着走行装置1000は、塗布装置を取り付ける際、走行時にフレーム110が上下に挙動する。このため、ローラやスプレーでは上下の挙動により斑が生じやすい。この塗布装置10は、上述した押付機構52のばね61で、クローラ型壁面吸着走行装置1000の走行時の上下の挙動に追従して塗布装置10が上下に動くこと、および、塗布する部分がスポンジ12で構成されており、ある程度、スポンジ12が弾性変形することができる。このため、クローラ型壁面吸着走行装置1000が走行時の上下の挙動にしても、塗布面1に上手く塗料を塗布することができる。また、この塗布装置10は、上述した動作機構51や押付機構52を組み合わせることによって、クローラ型壁面吸着走行装置1000よりも幅の広い領域に上手く塗料を塗布することができる。
【0028】
以上、本発明の一実施形態に係る塗布装置10および移動体1000を説明したが、本発明に係る塗布装置および移動体は、上述した実施形態に限定されない。
【0029】
例えば、塗布装置10は、スポンジの形状、例えば、スポンジに形成される窪みの形状などに種々の変更ができる。また、供給ポンプは、供給する塗料の量を適当に調整できる調整装置を備えているとよい。また、供給する塗料の量を適当に制御する制御装置を備えているとよい。制御装置は、例えば、スポンジに含浸する塗料の量を検知するセンサを設け、当該センサで検知された塗料の含浸量に応じて、スポンジに供給する塗料の量を調整する制御を行なうとよい。例えば、供給ポンプを操作できるように構成するとともに、スポンジ表面の塗料の状態を観察できるようにカメラを取り付け、カメラの画像を見ながら供給ポンプで供給する塗料の量を操作できるように構成してもよい。
【0030】
また、塗布装置10を動作させる動作機構や、塗布装置10のスポンジを塗布面に押し付ける押付機構は、上述した実施形態に限定されない。
【0031】
例えば、動作機構および押付機構についての他の実施形態を説明する。なお、当該他の実施形態の説明において、上述した実施形態と同じ作用を奏する部材および部位には、同じ符号を付している。
【0032】
当該他の実施形態では、移動体1000は、図7および図8に示すように、上述したクローラ型壁面吸着走行装置が用いられている。また、塗布装置10の構成も同様である。
【0033】
この実施形態では、動作機構51aは、図9および図10に示すように、第1リンク81と、第2リンク82と、第1アクチュエータ83、第2アクチュエータ84と、取付部材85を備えている。押付機構52aは、平行リンク90と、ばね91と、アクチュエータ92を備えている。
【0034】
動作機構51aの取付部材85は、移動体1000のフレーム110の後部に取り付けられている。第1リンク81は、一端が取付部材85の後端部に回転自在に取り付けられている。当該一端の回転軸81aは、第1アクチュエータ83(モータ)によって回転する。第1リンク81の他端には、第2リンク82が回転自在に取り付けられている。第2リンク82の回転軸82aは、第2アクチュエータ84によって回転する。
【0035】
この動作機構51aは、図11に示すように、第1アクチュエータ83と第2アクチュエータ84が協働して動作することにより、動作機構51aは、左右に大きく振れ動く。動作機構51aの第2リンク82には、さらに押付機構52aを介して塗布装置10が取り付けられており、塗布装置10は左右に大きく振り動かされる。この実施形態では、移動体としてのクローラ型壁面吸着走行装置1000は、垂直な壁面を走行できるが、垂直な壁面を走行する際には、押付機構52aおよび塗布装置10は、自重によって、常時塗布装置10が下になる。かかる動作機構51aによれば、クローラ型壁面吸着走行装置1000の位置に対して、塗布装置10の位置を大きく振り動かすことができ、また、第1アクチュエータ83と、第2アクチュエータ84の回動角を制御することにより、適切な位置に塗布装置10を移動させることができる。このため、例えば、部分的に塗料を塗布するような用途に好適である。
【0036】
次に、押付機構52aを説明する。
【0037】
押付機構52aは、動作機構51aの第2リンク82に取り付けられている。押付機構52aは平行リンク90を備えている。平行リンク90は、ヒンジ97を介して片材93〜96を平行四辺形に組んでいる。平行リンク90は、図8に示すように、側面視において、平行四辺形になるように配設されており、前後のリンク93、94と、上下のリンク95、96で構成されている。この実施形態では、ばね91は、平行リンク90の前側のリンク93の下部と、後側のリンク94の上部の間に引っ張られた状態で配設している。さらに、アクチュエータ92は、電動シリンダで構成されている。アクチュエータ92は、下側のリンク96の後部にヒンジ97を介して取り付けた取付座98にシリンダ部分92aが取り付けられている。そして、ピストンロッド92bが前側のリンク93の上部に形成された貫通穴99を貫通しており、ピストンロッド92bの貫通した先には、ストッパ92cが取り付けられている。平行リンク90の後側のリンク94には、塗布装置10を取り付ける取付部材10aが取り付けられている。
【0038】
この押付機構52aは、図11に示すように、アクチュエータ92でピストンロッド92bを伸ばし、ストッパ92cを平行リンク90の前側のリンク93から離すと、ばね91の作用によって、平行リンク90が変形する。ばね91は、図10に示すように、平行リンク90の前側のリンク93の下部と後側のリンク94の上部の間に引っ張られた状態で配設されている。このため、平行リンク90は、ばね91の弾性反力の作用によって、前側のリンク93の下部と後側のリンク94の上部の間隔が狭められるように変形する。かかるばね91の作用によって、平行リンク90は、図11に示すように、後側のリンク94が下に押し下げられる。これにより、後側のリンク94に取り付けられた塗布装置10のスポンジ12を、塗布面1に押し付けることができる。
【0039】
これに対して、アクチュエータ92でシリンダを縮めると、図12に示すように、ストッパ92cが平行リンク90の前側のリンク93の上部に当接する。そして、このアクチュエータ92の作用によって、ばね91の弾性反力の作用に抗して、取付座98が取り付けられた下側のリンク96の後部と、前側のリンク93の上部との間隔が狭められる。かかるアクチュエータ92の作用によって、平行リンク90の後部を上方に押し上げることができる。これにより、後側のリンク94に取り付けられた塗布装置10のスポンジ12を塗布面1から離すことができる。
【0040】
このように、動作機構と押付機構についても種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係る塗布装置を示す側面図。
【図2】本発明の一実施形態に係る塗布装置をクローラ型壁面吸着走行装置に取り付けた状態を示す平面図。
【図3】本発明の一実施形態に係る塗布装置をクローラ型壁面吸着走行装置に取り付けた状態を示す側面図。
【図4】本発明の一実施形態に係る塗布装置をクローラ型壁面吸着走行装置に取り付ける取付構造を示す側面図。
【図5】本発明の一実施形態に係る塗布装置をクローラ型壁面吸着走行装置に取り付ける取付構造を示す平面図。
【図6】本発明の一実施形態に係る塗布装置をクローラ型壁面吸着走行装置に取り付ける取付構造の動作状態を示す平面図。
【図7】塗布装置をクローラ型壁面吸着走行装置に取り付けた状態について、本発明の他の実施形態を示す平面図。
【図8】塗布装置をクローラ型壁面吸着走行装置に取り付けた状態について、本発明の他の実施形態を示す側面図。
【図9】塗布装置をクローラ型壁面吸着走行装置に取り付ける取付構造について、本発明の他の実施形態を示す平面図。
【図10】塗布装置をクローラ型壁面吸着走行装置に取り付ける取付構造について、本発明の他の実施形態を示す側面図。
【図11】塗布装置をクローラ型壁面吸着走行装置に取り付ける取付構造の動作状態について、本発明の他の実施形態を示す平面図。
【図12】押付機構の動作状態について、本発明の他の実施形態を示す側面図。
【図13】押付機構の動作状態について、本発明の他の実施形態を示す側面図。
【符号の説明】
【0042】
1 塗布面(壁面)
10 塗布装置
11 ベース部材
12 スポンジ
13 供給ポンプ
21 受け部
22 穴(供給ポンプが塗料を供給する部分)
31 窪み(塗料が溜まる窪み)
32 凸曲面
51、51a 動作機構
52、52a 押付機構
1000 移動体(クローラ型壁面吸着走行装置)
【技術分野】
【0001】
本発明は塗布装置および移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な床面はもちろんのこと、垂直な壁面などを自由に走行して各種作業を行うための作業ロボットとして、左右一対のクローラを床面又は壁面に吸着させて走行するクローラ型壁面吸着走行装置が提案されている。例えば、特開2007−30852号には、フレームの前後にそれぞれ回転自在に左右一対のスプロケットを取り付け、斯かるスプロケットに無端チェーンを巻き掛けたクローラ型壁面吸着走行装置が記載されている。無端チェーンは、床面又は壁面に対して密着し得る吸着パッドを先端に取り付けたベローズを備えている。そして、走行に伴い床面又は壁面に当接するベローズを真空引きして、当該ベローズの吸着パッドを走行壁面に吸着させる構造を備えている。
【特許文献1】特開2007−30852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
かかるクローラ型壁面吸着走行装置は、例えば、壁面などの検査や塗装に用いることが検討されている。また、クローラ型壁面吸着走行装置は、人の手で作業がし難い場所に用いることが予定されているため、塗料を塗るスペースの養生が難しい場合があり、塗料の飛散や液たれを防止したい。しかし、このようなクローラ型壁面吸着走行装置に用いるのに適した塗布装置は確立されていない。ペンキなどの塗料を壁面に塗布する場合には、一般的には、例えば、ローラやスプレーを用いて塗料を壁面に塗布或いは吹き付けることが行なわれている。しかし、ローラを用いて塗料を塗布する場合には、ローラは特にローラの端部から塗料がたれることがある。また、ローラを用いて塗料を塗布する場合には、壁面に凹凸があるような場合に上手く塗料を塗れない場合がある。また、スプレーによって塗料を吹き付ける場合には、塗料が飛散する可能性が高く、特に風が強い場所での使用が難しい。また、上述したクローラ型壁面吸着走行装置が用いられる用途では、人の手で修正作業を行なえない場合もある。このため、出来る限り修正作業が不要な塗布手段を採用したい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る塗布装置は、スポンジに含浸させた塗料を塗布する塗布装置であって、ベース部材と、ベース部材に取り付けられたスポンジと、ベース部材側からスポンジに塗料を供給する供給ポンプとを備えている。スポンジは、供給ポンプが塗料を供給する部分に供給ポンプから供給された塗料が溜まる窪みが形成されている。
【発明の効果】
【0005】
この塗布装置によれば、スポンジは、供給ポンプが塗料を供給する部分に供給ポンプから供給された塗料が溜まる窪みが形成されており、常時適量の塗料を含浸させることができる。また、当該窪みに、供給ポンプで塗料を供給するので、スポンジの外表面に塗料を滲み出させることができる。このように適量の塗料を含浸させたスポンジによって、塗料を塗布するので、垂直壁面に対しても塗料の飛散を防止しつつ塗布することができる。また、スポンジの弾性変形によって、壁面の凹凸に対しても上手く塗料を塗ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の一実施形態に係る塗布装置を図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0007】
本発明の一実施形態に係る塗布装置10は、図1に示すように、ベース部材11と、スポンジ12と、供給ポンプ13とを備えている。また、この実施形態では、塗布装置10は、図2に示すように、移動体1000に取り付けられている。また、塗布装置10は、スポンジ12から垂れる塗料を受ける受け部21を備えている。この実施形態では、受け部21は、移動体1000に取り付けられたときに、スポンジの下側に受け部21が配設されるように、配設されている。この実施形態では、受け部は、スポンジ12から垂れる塗料を受ける容器で構成されており、移動体1000の走行時に、塗布面1に当らない形状になっている。
【0008】
ベース部材11は、スポンジ12を取り付ける部材である。この実施形態では、ベース部材11は、複数の板材を重ねている。ベース部材11の片面には、スポンジ12が取り付けられている。また、ベース部材11には、スポンジ12に塗料を供給する配管を繋げる穴22が形成されている。ベース部材11のスポンジ12よりも後部には、受け部21が取り付けられている。
【0009】
スポンジ12は、供給ポンプ13が塗料を供給する部分に供給ポンプ13から供給された塗料が溜まる窪み31が形成されている。この実施形態では、窪み31は、スポンジ12が、ベース部材11に取り付けられた状態で、塗料が供給される穴22に連通する位置に当該窪み31が形成されている。さらに、この塗布装置10では、スポンジ12は、ベース部材11に取り付けられる側とは反対側の面が凸曲面32で形成されている。
【0010】
この実施形態では、スポンジ12は、塗料が含浸し多孔質材料であり、塗料を塗るのに適した所要の柔らかさを備えている。この実施形態では、ポリウレタンフォーム製のスポンジを用いている。
【0011】
供給ポンプ13は、スポンジ12に塗料を供給する装置である。この実施形態では、供給ポンプ13は、塗料を供給するポンプで構成されており、ベース部材11の穴22に繋がれた配管23を通じて、ベース部材11側からスポンジ12に塗料を供給する。また、この実施形態では、供給ポンプ13は、塗料に圧力を掛けて塗料を供給している。
【0012】
この塗布装置10は、供給ポンプ13から配管を通じて塗料がスポンジ12に供給される。スポンジ12では、窪み31に塗料が溜まり、スポンジ12全体に適当な量の塗料が含浸する。窪み31に、供給ポンプ13で圧力を掛けて塗料を供給するので、スポンジの外表面に塗料を滲み出させることができる。そして、当該スポンジ12に塗料を含浸させ、図3に示すように、当該スポンジ12を塗布面1に摺り付けることによって、塗料を塗布面1に塗布することができる。
【0013】
塗料は、供給ポンプ13から供給され、スポンジ12に形成された窪み31に溜まり、当該窪み31からスポンジ12全体に含浸している。スポンジ12に含浸する塗料は、当該窪み31に溜まった塗料が適宜含浸することによって補充される。供給ポンプ13から供給される塗料が多過ぎる場合は、当該窪み31に塗料が溜まることよってスポンジ12に含浸する塗料を調整することができる。このため、スポンジ12に供給する塗料の調整が容易である。また、スポンジ12に塗料が含浸しているので、風が強い屋外で使用される場合でも塗料の飛散を防止できる。また、スポンジ12は、適当な柔らかさを備えている。このため、ベース部材11によって、スポンジ12を塗布面に押し付けることによって、多少の凹凸がある塗布面1にも塗料を塗布することができる。
【0014】
例えば、ローラでは、壁面に5ミリ程度の凹凸があると、上手く塗料を塗れない場合があるが、この実施形態では、壁面に5ミリ程度の凹凸があっても上手く塗料を塗ることができる。また、壁面の凹凸の段差が大きい場合には、柔らかいスポンジ12或いは厚めのスポンジ12を用いるとよい。
【0015】
この塗布装置10は、移動体1000に取り付ける場合に限らず、例えば、柄の先端に取り付けて、壁面にスポンジ12を押し当てるようにして用いることができる。この実施形態では、塗布装置10は、図2に示すように、移動体1000に取り付けている。以下、塗布装置10を移動体1000に取り付ける構造を説明する。
【0016】
この実施形態では、塗布装置10は、図2および図3に示すように、移動体1000の後部に、動作機構51と押付機構52を介して取り付けられている。動作機構51は、移動体1000の後部において、塗布装置10を左右に振れ動かす機構である。押付機構52は、スポンジ12を塗布面1に当接させる機構である。
【0017】
この実施形態では、図3に示すように、押付機構52は、移動体1000と動作機構51を構成する部材との間の連結部分に設けられている。当該連結部分は、図4に示すように、移動体1000に対して動作機構51が上下に回動できるようにヒンジ54が取り付けられている。また、ヒンジ54の両側で、移動体1000側の部材56と動作機構51側の部材57とが対向している。押付機構52は、ばね61と電動シリンダを内蔵したシリンダ62とを備えている。ばね61は移動体1000側の部材56と動作機構51側の部材57との間に圧縮した状態で配設されている。シリンダ62は動作機構51側の部材57に取り付けられている。そして、シリンダ62のピストンロッド63は、移動体1000側の部材56に形成された貫通穴64に貫通しており、ピストンロッド63の貫通した先端部にはストッパ65が取り付けられている。
【0018】
この押付機構52は、図3に示すように、電動シリンダの作用によってシリンダ62を縮めると、ストッパ65が移動体1000側の部材56に当たる。そして、シリンダ62が取り付けられた動作機構51が、移動体1000側の部材56に引き付けられる。これによって、ヒンジ54を中心として、動作機構51が上方に回動し、スポンジ12が塗布面1から引き上げられる。すなわち、移動体1000は、スポンジ12を塗布面1から離した状態で、移動することができる。
【0019】
また、電動シリンダの作用によってシリンダ62を伸ばすことによって、ストッパ65が移動体1000側の部材56から離れる。この際、常時、ばね61の作用によって、移動体1000側の部材56と動作機構51側の部材57との間隔が広げられる。これによって、ヒンジ54を中心として、動作機構51が下方に回動し、スポンジ12が塗布面1に押し当てられる。なお、この際、ストッパ65は、ストッパ65が移動体1000側の部材56から離れており、ばね61の作用によって、スポンジ12は、常時、塗布面1に押し当てられる。このばね61の作用によって、移動体1000の走行時に移動体1000のフレームが上下に動いても、スポンジ12は常時塗布面1に押し当てられる。
【0020】
次に、動作機構51を説明する。この動作機構51は、図5に示すように、ヒンジ66を介して片材71〜74を平行四辺形に組んだ平行リンク70を備えている。当該平行リンク70の前側のリンク71には、上述した押付機構52を介して移動体1000の後端部に連結されている。また、当該平行リンク70の後側のリンク72には、上述した塗布装置10が取り付けられている。塗布装置10は、図3に示すように、スポンジ12が下(塗料を塗布する塗布面)に向くように、かつ、受け部21が後側になるように取り付けられている。
【0021】
動作機構51は、第1リンク76と、第2リンク77と、モータ78(アクチュエータ)とを備えている。モータ78は、動作機構51の平行リンク70の右側のリンク74に取り付けられている。第1リンク76の一端の回転軸76aは、右側のリンク74に固定されており、当該回転軸76aは、モータ78から駆動力を受けて回転する。第2リンク77は、第1リンク76の先端と平行リンク70の後側のリンク72にそれぞれ回動自在に連結されている。この動作機構51は、モータ78から駆動力を受けて、第1リンク76が回転すると、図6に示すように、第1リンク76の回転軸76aと、第2リンク77が平行リンク70の後側のリンク72に取り付けられた位置との間で、第2リンク77がクランク機構のように作用する。この動作に応じて、平行リンク70は、後側のリンク72が左右に振れ動く。この実施形態では、平行リンク70の後側のリンク72は、前側のリンク71に対して平行な状態が維持される。このため塗布装置10は、左右に動く動作において、常時、受け部21を後側に向けた状態で維持される。
【0022】
この実施形態では、移動体1000は、図2および図3に示すように、複数のクローラ板101を無端チェーン状に連結し、前後左右のスプロケット102、103に掛け回したクローラ機構105を備えている。各クローラ板101は吸着部106を備えており、塗料を塗布する塗布面1に吸着しながら移動する。このように、移動体1000は、クローラ型壁面吸着走行装置で構成されている。当該クローラ型壁面吸着走行装置1000は、スプロケット103を駆動させるアクチュエータ107を駆動させクローラ機構105を回転させつつ、壁面1に接地したクローラ板101の吸着部106を壁面に吸着させることによって、例えば、垂直な壁面1に吸着しながら進むことができる。上述した押付機構52は、かかるクローラ型壁面吸着走行装置1000のフレーム110に連結されている。
【0023】
この実施形態では、移動体1000は、垂直な壁面に塗料を塗布する場合には、移動体1000を上、塗布装置10を下にして、各クローラ板101は吸着部106を備えており、壁面1に吸着させながら移動する。この際、この実施形態では、塗布装置10には、スポンジ12の後部に、スポンジ12から垂れる塗料を受ける受け部21を備えている。さらに、この実施形態では、スポンジ12は、ベース部材11に取り付けられる側とは反対側の面(壁面に摺り付けられる面)が凸曲面32で形成されている。凸曲面32は、後側(下側)が壁面1から立ち上がっている。塗料がある程度の粘性を有している場合には、スポンジ12の表面の余剰な塗料は、スポンジ12に沿って垂れる。このため、塗料をスポンジ12から受け部21に導くことができる。なお、この実施形態では、受け部21には、供給ポンプ13に塗料戻し通路24が配管されており、受け部21で受けた塗料を供給ポンプ13から再供給することができるように構成されている。
【0024】
このように、この実施形態では、塗布装置10は、ベース部材11側からスポンジ12に塗料を供給する供給ポンプ13を備え、スポンジ12は、供給ポンプ13が塗料を供給する部分に供給ポンプ13から供給された塗料が溜まる窪み31が形成されている。当該窪み31に塗料が溜まることよってスポンジ12に含浸する塗料が調整することができる。また、供給ポンプ13から供給する塗料に圧力を掛けることができる。これにより、スポンジ12の表面に塗料を滲み出させることができる。
【0025】
このため、スポンジ12に供給する塗料の調整が容易である。また、スポンジ12に塗料が含浸しているので、風が強い屋外で使用される場合でも塗料の飛散を防止できる。このため、この塗布装置10は、スプレーによる塗料の吹き付けよりも優位である。また、ローラでは、端部から余剰な塗料がたれる場合があるが、この実施形態では、塗布装置10は、スポンジ12に塗料を保持することができることに加え、スポンジ12に塗料が溜まる窪み31が形成されている。これにより、供給ポンプ13による塗料の供給量を適宜調整するなどして、塗料がたれないように調整することが容易である。
【0026】
また、スポンジ12は、適当な柔らかさを備えている。このため、ベース部材11によって、スポンジ12を塗布面に押し付けることによって、多少の凹凸がある塗布面1にも塗料を塗布することができる。このため、ローラによる塗布に比べて優位である。
【0027】
この塗布装置10は、上述したクローラ型壁面吸着走行装置1000のような移動体に取り付けられる塗布装置として好適である。すなわち、かかるクローラ型壁面吸着走行装置1000は、塗布装置を取り付ける際、走行時にフレーム110が上下に挙動する。このため、ローラやスプレーでは上下の挙動により斑が生じやすい。この塗布装置10は、上述した押付機構52のばね61で、クローラ型壁面吸着走行装置1000の走行時の上下の挙動に追従して塗布装置10が上下に動くこと、および、塗布する部分がスポンジ12で構成されており、ある程度、スポンジ12が弾性変形することができる。このため、クローラ型壁面吸着走行装置1000が走行時の上下の挙動にしても、塗布面1に上手く塗料を塗布することができる。また、この塗布装置10は、上述した動作機構51や押付機構52を組み合わせることによって、クローラ型壁面吸着走行装置1000よりも幅の広い領域に上手く塗料を塗布することができる。
【0028】
以上、本発明の一実施形態に係る塗布装置10および移動体1000を説明したが、本発明に係る塗布装置および移動体は、上述した実施形態に限定されない。
【0029】
例えば、塗布装置10は、スポンジの形状、例えば、スポンジに形成される窪みの形状などに種々の変更ができる。また、供給ポンプは、供給する塗料の量を適当に調整できる調整装置を備えているとよい。また、供給する塗料の量を適当に制御する制御装置を備えているとよい。制御装置は、例えば、スポンジに含浸する塗料の量を検知するセンサを設け、当該センサで検知された塗料の含浸量に応じて、スポンジに供給する塗料の量を調整する制御を行なうとよい。例えば、供給ポンプを操作できるように構成するとともに、スポンジ表面の塗料の状態を観察できるようにカメラを取り付け、カメラの画像を見ながら供給ポンプで供給する塗料の量を操作できるように構成してもよい。
【0030】
また、塗布装置10を動作させる動作機構や、塗布装置10のスポンジを塗布面に押し付ける押付機構は、上述した実施形態に限定されない。
【0031】
例えば、動作機構および押付機構についての他の実施形態を説明する。なお、当該他の実施形態の説明において、上述した実施形態と同じ作用を奏する部材および部位には、同じ符号を付している。
【0032】
当該他の実施形態では、移動体1000は、図7および図8に示すように、上述したクローラ型壁面吸着走行装置が用いられている。また、塗布装置10の構成も同様である。
【0033】
この実施形態では、動作機構51aは、図9および図10に示すように、第1リンク81と、第2リンク82と、第1アクチュエータ83、第2アクチュエータ84と、取付部材85を備えている。押付機構52aは、平行リンク90と、ばね91と、アクチュエータ92を備えている。
【0034】
動作機構51aの取付部材85は、移動体1000のフレーム110の後部に取り付けられている。第1リンク81は、一端が取付部材85の後端部に回転自在に取り付けられている。当該一端の回転軸81aは、第1アクチュエータ83(モータ)によって回転する。第1リンク81の他端には、第2リンク82が回転自在に取り付けられている。第2リンク82の回転軸82aは、第2アクチュエータ84によって回転する。
【0035】
この動作機構51aは、図11に示すように、第1アクチュエータ83と第2アクチュエータ84が協働して動作することにより、動作機構51aは、左右に大きく振れ動く。動作機構51aの第2リンク82には、さらに押付機構52aを介して塗布装置10が取り付けられており、塗布装置10は左右に大きく振り動かされる。この実施形態では、移動体としてのクローラ型壁面吸着走行装置1000は、垂直な壁面を走行できるが、垂直な壁面を走行する際には、押付機構52aおよび塗布装置10は、自重によって、常時塗布装置10が下になる。かかる動作機構51aによれば、クローラ型壁面吸着走行装置1000の位置に対して、塗布装置10の位置を大きく振り動かすことができ、また、第1アクチュエータ83と、第2アクチュエータ84の回動角を制御することにより、適切な位置に塗布装置10を移動させることができる。このため、例えば、部分的に塗料を塗布するような用途に好適である。
【0036】
次に、押付機構52aを説明する。
【0037】
押付機構52aは、動作機構51aの第2リンク82に取り付けられている。押付機構52aは平行リンク90を備えている。平行リンク90は、ヒンジ97を介して片材93〜96を平行四辺形に組んでいる。平行リンク90は、図8に示すように、側面視において、平行四辺形になるように配設されており、前後のリンク93、94と、上下のリンク95、96で構成されている。この実施形態では、ばね91は、平行リンク90の前側のリンク93の下部と、後側のリンク94の上部の間に引っ張られた状態で配設している。さらに、アクチュエータ92は、電動シリンダで構成されている。アクチュエータ92は、下側のリンク96の後部にヒンジ97を介して取り付けた取付座98にシリンダ部分92aが取り付けられている。そして、ピストンロッド92bが前側のリンク93の上部に形成された貫通穴99を貫通しており、ピストンロッド92bの貫通した先には、ストッパ92cが取り付けられている。平行リンク90の後側のリンク94には、塗布装置10を取り付ける取付部材10aが取り付けられている。
【0038】
この押付機構52aは、図11に示すように、アクチュエータ92でピストンロッド92bを伸ばし、ストッパ92cを平行リンク90の前側のリンク93から離すと、ばね91の作用によって、平行リンク90が変形する。ばね91は、図10に示すように、平行リンク90の前側のリンク93の下部と後側のリンク94の上部の間に引っ張られた状態で配設されている。このため、平行リンク90は、ばね91の弾性反力の作用によって、前側のリンク93の下部と後側のリンク94の上部の間隔が狭められるように変形する。かかるばね91の作用によって、平行リンク90は、図11に示すように、後側のリンク94が下に押し下げられる。これにより、後側のリンク94に取り付けられた塗布装置10のスポンジ12を、塗布面1に押し付けることができる。
【0039】
これに対して、アクチュエータ92でシリンダを縮めると、図12に示すように、ストッパ92cが平行リンク90の前側のリンク93の上部に当接する。そして、このアクチュエータ92の作用によって、ばね91の弾性反力の作用に抗して、取付座98が取り付けられた下側のリンク96の後部と、前側のリンク93の上部との間隔が狭められる。かかるアクチュエータ92の作用によって、平行リンク90の後部を上方に押し上げることができる。これにより、後側のリンク94に取り付けられた塗布装置10のスポンジ12を塗布面1から離すことができる。
【0040】
このように、動作機構と押付機構についても種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係る塗布装置を示す側面図。
【図2】本発明の一実施形態に係る塗布装置をクローラ型壁面吸着走行装置に取り付けた状態を示す平面図。
【図3】本発明の一実施形態に係る塗布装置をクローラ型壁面吸着走行装置に取り付けた状態を示す側面図。
【図4】本発明の一実施形態に係る塗布装置をクローラ型壁面吸着走行装置に取り付ける取付構造を示す側面図。
【図5】本発明の一実施形態に係る塗布装置をクローラ型壁面吸着走行装置に取り付ける取付構造を示す平面図。
【図6】本発明の一実施形態に係る塗布装置をクローラ型壁面吸着走行装置に取り付ける取付構造の動作状態を示す平面図。
【図7】塗布装置をクローラ型壁面吸着走行装置に取り付けた状態について、本発明の他の実施形態を示す平面図。
【図8】塗布装置をクローラ型壁面吸着走行装置に取り付けた状態について、本発明の他の実施形態を示す側面図。
【図9】塗布装置をクローラ型壁面吸着走行装置に取り付ける取付構造について、本発明の他の実施形態を示す平面図。
【図10】塗布装置をクローラ型壁面吸着走行装置に取り付ける取付構造について、本発明の他の実施形態を示す側面図。
【図11】塗布装置をクローラ型壁面吸着走行装置に取り付ける取付構造の動作状態について、本発明の他の実施形態を示す平面図。
【図12】押付機構の動作状態について、本発明の他の実施形態を示す側面図。
【図13】押付機構の動作状態について、本発明の他の実施形態を示す側面図。
【符号の説明】
【0042】
1 塗布面(壁面)
10 塗布装置
11 ベース部材
12 スポンジ
13 供給ポンプ
21 受け部
22 穴(供給ポンプが塗料を供給する部分)
31 窪み(塗料が溜まる窪み)
32 凸曲面
51、51a 動作機構
52、52a 押付機構
1000 移動体(クローラ型壁面吸着走行装置)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スポンジに含浸させた塗料を塗布する塗布装置であって、
ベース部材と、
前記ベース部材に取り付けられたスポンジと、
前記ベース部材側からスポンジに塗料を供給する供給ポンプとを備え、
前記スポンジは、前記供給ポンプが塗料を供給する部分に供給ポンプから供給された塗料が溜まる窪みが形成されている、塗布装置。
【請求項2】
前記スポンジは、ベース部材に取り付けられる側とは反対側の面が凸曲面で形成されている、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記塗布装置は、前記スポンジの下側に、スポンジから垂れる塗料を受ける受け部を備えている、請求項1又は2に記載の塗布装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載の塗布装置が取り付けられた移動体であって、
前記塗布装置は、移動体の後部に左右に振れ動く動作機構を取り付け、当該動作機構に前記スポンジを下に向けて取り付けられている、移動体。
【請求項5】
請求項1から3の何れかに記載の塗布装置が取り付けられた移動体であって、
前記塗布装置は、前記スポンジを下に向けて取り付けられており、当該取付部には、前記スポンジを下に押さえる押付機構を備えている、移動体。
【請求項6】
前記塗布装置は、前記スポンジの後部に、スポンジから垂れる塗料を受ける受け部を備えている、請求項4又は5に記載の移動体。
【請求項7】
前記移動体は、複数のクローラ板を無端チェーン状に連結し、前記前後左右のスプロケットに掛け回したクローラ機構を備え、
前記クローラ板に吸着部を備えており、塗料を塗布する塗布面に吸着しながら移動するクローラ型壁面吸着走行装置である、請求項4から6の何れかに記載の移動体。
【請求項1】
スポンジに含浸させた塗料を塗布する塗布装置であって、
ベース部材と、
前記ベース部材に取り付けられたスポンジと、
前記ベース部材側からスポンジに塗料を供給する供給ポンプとを備え、
前記スポンジは、前記供給ポンプが塗料を供給する部分に供給ポンプから供給された塗料が溜まる窪みが形成されている、塗布装置。
【請求項2】
前記スポンジは、ベース部材に取り付けられる側とは反対側の面が凸曲面で形成されている、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記塗布装置は、前記スポンジの下側に、スポンジから垂れる塗料を受ける受け部を備えている、請求項1又は2に記載の塗布装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載の塗布装置が取り付けられた移動体であって、
前記塗布装置は、移動体の後部に左右に振れ動く動作機構を取り付け、当該動作機構に前記スポンジを下に向けて取り付けられている、移動体。
【請求項5】
請求項1から3の何れかに記載の塗布装置が取り付けられた移動体であって、
前記塗布装置は、前記スポンジを下に向けて取り付けられており、当該取付部には、前記スポンジを下に押さえる押付機構を備えている、移動体。
【請求項6】
前記塗布装置は、前記スポンジの後部に、スポンジから垂れる塗料を受ける受け部を備えている、請求項4又は5に記載の移動体。
【請求項7】
前記移動体は、複数のクローラ板を無端チェーン状に連結し、前記前後左右のスプロケットに掛け回したクローラ機構を備え、
前記クローラ板に吸着部を備えており、塗料を塗布する塗布面に吸着しながら移動するクローラ型壁面吸着走行装置である、請求項4から6の何れかに記載の移動体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−66509(P2009−66509A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236961(P2007−236961)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(503452867)有限会社ピノキオ (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(503452867)有限会社ピノキオ (10)
【Fターム(参考)】
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