説明

塗布装置

【課題】 被塗布物の表面に形成された塗膜の厚みを均一化する。
【解決手段】 内部に固定された状態の被塗布物に塗布される塗布液を貯留し位置が固定された浸漬槽と、前記塗布液を貯留し昇降自在とされた昇降液槽と、両端がそれぞれ前記浸漬槽と前記昇降液槽に連通する液体用連通管とを備え、前記液体用連通管を介して前記浸漬槽と前記昇降液槽の間で前記塗布液の授受が行われ、前記昇降液槽と前記浸漬槽と前記液体用連通管に貯留された前記塗布液の合計された容量が一定の容量とされ、前記昇降液槽が昇降されたときの位置の変化に応じて前記昇降液槽と前記浸漬槽に貯留される前記塗布液のそれぞれの容量が増減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は塗布装置についての技術分野に関する。詳しくは、昇降液槽を昇降させたときの位置の変化に応じて浸漬槽と昇降液槽に貯留する塗布液のそれぞれの容量を増減させて被塗布物に塗布液を塗布して、塗膜の厚みを均一化する技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒状の基材や平板状の基板等の被塗布物の表面に塗布液を塗布する塗布装置がある。塗布装置においては、例えば、基板上に微細パターンを形成するための感光性材料であるフォトレジスト、基板の表面を改質するシランカップリング剤、基板の表面の酸化を防ぐ防錆剤等が塗布液として用いられる。
【0003】
このような塗布装置には、スピンコート方式、スプレーコート方式、ダイコート方式、浸漬方式等の各種の方式を用いて被塗布物に対して塗布液の塗布が行われるものがある。
【0004】
例えば、シリコンウェハやガラスウェハ等の平面形状の被塗布物に塗布液を塗布する場合には、スピンコート方式、スプレーコート方式、ダイコート方式が用いられる場合が多い。このような方式を用いた塗布装置においては、被塗布物に対して塗膜の厚みを均一に形成することが困難な場合がある。
【0005】
それに対して、浸漬方式を用いた塗布装置においては、浸漬槽に貯留された塗布液に被塗布物を浸漬し浸漬槽に対して相対的に被塗布物を引き上げることにより被塗布物の表面に塗膜を形成するため、塗布液の粘度や引上速度等を精密に調整することによって塗膜の厚みを均一に形成することが可能である。
【0006】
このような浸漬方式を用いた塗布装置には、浸漬された被塗布物を浸漬槽から引上装置によって引き上げて塗膜を形成するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、浸漬方式を用いた別の塗布装置には、被塗布物を保持機構によって保持し塗布液が貯留されている浸漬槽を被塗布物に対して下降させて塗膜を形成するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−326047号公報
【特許文献2】特開2004−148189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、特許文献1に記載された塗布装置にあっては、被塗布物を引き上げることによって被塗布物に塗布液を塗布するため、引上時に被塗布物が揺れてしまうと、被塗布物の表面に形成された塗膜の厚みにムラが生じるおそれがある。
【0010】
また、特許文献2に記載された塗布装置にあっては、被塗布物が浸漬されている浸漬槽を下降させることによって被塗布物に塗布液を塗布するため、浸漬槽の下降時に浸漬槽が揺れてしまうと、被塗布物の表面に形成された塗膜の厚みにムラが生じるおそれがある。
【0011】
そこで、本技術塗布装置は、上記した問題点を克服し、被塗布物の表面に形成された塗膜の厚みを均一化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
塗布装置は、上記した課題を解決するために、内部に固定された状態の被塗布物に塗布される塗布液を貯留し位置が固定された浸漬槽と、前記塗布液を貯留し昇降自在とされた昇降液槽と、両端がそれぞれ前記浸漬槽と前記昇降液槽に連通する液体用連通管とを備え、前記液体用連通管を介して前記浸漬槽と前記昇降液槽の間で前記塗布液の授受が行われ、前記昇降液槽と前記浸漬槽と前記液体用連通管に貯留された前記塗布液の合計された容量が一定の容量とされ、前記昇降液槽が昇降されたときの位置の変化に応じて前記昇降液槽と前記浸漬槽に貯留される前記塗布液のそれぞれの容量が増減されるものである。
【0013】
従って、塗布装置にあっては、位置が固定された浸漬槽と昇降自在とされた昇降液槽に連通する液体用連通管を介して浸漬槽と昇降液槽の間で塗布液の授受が行われ、浸漬槽の内部に固定された状態の被塗布物に塗布液が塗布される。
【0014】
上記した塗布装置においては、前記浸漬槽に伝達される振動を抑制する振動抑制部を設けることが望ましい。
【0015】
浸漬槽に伝達される振動を抑制する振動抑制部を設けることにより、昇降液槽が昇降されるときに発生する振動の浸漬槽への伝達が抑制される。
【0016】
上記した塗布装置においては、両端がそれぞれ前記浸漬槽と前記昇降液槽に連通し前記浸漬槽及び前記昇降液槽を外気から遮断し内部に気体が封入された気体用連通管を設けることが望ましい。
【0017】
両端がそれぞれ浸漬槽と昇降液槽に連通し浸漬槽及び昇降液槽を外気から遮断し内部に気体が封入された気体用連通管を設けることにより、浸漬槽は外気から遮断されるので、浸漬槽における塗布液が揮発されず、浸漬槽に塵埃が侵入しない。
【0018】
上記した塗布装置においては、前記昇降液槽を昇降する昇降機構を設けることが望ましい。
【0019】
昇降液槽を昇降する昇降機構を設けることにより、昇降液槽の昇降速度が制御される。
【0020】
上記した塗布装置においては、前記昇降液槽が等速で下降可能とされることが望ましい。
【0021】
昇降液槽が等速で下降可能とされることにより、浸漬槽における塗布液の底面部に対する液面の高さが昇降液槽の等速での下降に伴って等速で下降していく。
【0022】
上記した塗布装置においては、前記昇降液槽の底面積が前記浸漬槽の底面積より大きくされることが望ましい。
【0023】
昇降液槽の底面積が浸漬槽の底面積より大きくされることにより、昇降液槽の移動量が低減される。
【0024】
上記した塗布装置においては、前記液体用連通管に伝達される振動を抑制する第1の防振部を設けることが望ましい。
【0025】
液体用連通管に伝達される振動を抑制する第1の防振部を設けることにより、昇降液槽において発生する振動の浸漬槽への伝達が抑制される。
【0026】
上記した塗布装置においては、前記液体用連通管が弾性変形可能な材料によって形成され、前記液体用連通管が前記第1の防振部として設けられることが望ましい。
【0027】
弾性変形可能な材料によって形成された液体用連通管が第1の防振部として設けられることにより、液体用連通管に生じる振動が抑制される。
【0028】
上記した塗布装置においては、前記気体用連通管に伝達される振動を抑制する第2の防振部を設けることが望ましい。
【0029】
気体用連通管に伝達される振動を抑制する第2の防振部を設けることにより、昇降液槽において発生する振動の浸漬槽への伝達が抑制される。
【0030】
上記した塗布装置においては、前記気体用連通管が弾性変形可能な材料によって形成され、前記気体用連通管が前記第2の防振部として設けられることが望ましい。
【0031】
弾性変形可能な材料によって形成された気体用連通管が第2の防振部として設けられることにより、気体用連通管に生じる振動が抑制される。
【発明の効果】
【0032】
本技術塗布装置は、内部に固定された状態の被塗布物に塗布される塗布液を貯留し位置が固定された浸漬槽と、前記塗布液を貯留し昇降自在とされた昇降液槽と、両端がそれぞれ前記浸漬槽と前記昇降液槽に連通する液体用連通管とを備え、前記液体用連通管を介して前記浸漬槽と前記昇降液槽の間で前記塗布液の授受が行われ、前記昇降液槽と前記浸漬槽と前記液体用連通管に貯留された前記塗布液の合計された容量が一定の容量とされ、前記昇降液槽が昇降されたときの位置の変化に応じて前記昇降液槽と前記浸漬槽に貯留される前記塗布液のそれぞれの容量が増減される。
【0033】
従って、被塗布物に塗布液が塗布されるときに被塗布物や浸漬槽が移動されないので、被塗布物の表面に形成された塗膜の厚みを均一化することができる。
【0034】
請求項2に記載した技術にあっては、前記浸漬槽に伝達される振動を抑制する振動抑制部を設けている。
【0035】
従って、浸漬槽の振動の発生を抑制することができ、被塗布物の表面に形成された塗膜の厚みを確実に均一化することができる。
【0036】
請求項3に記載した技術にあっては、両端がそれぞれ前記浸漬槽と前記昇降液槽に連通し前記浸漬槽及び前記昇降液槽を外気から遮断し内部に気体が封入された気体用連通管を設けている。
【0037】
従って、浸漬槽における塗布液の揮発が防止されるので、揮発による塗布液の密度や粘度等の変化を防止することができ、被塗布物の表面に形成された塗膜の厚みを確実に均一化することができる。
【0038】
請求項4に記載した技術にあっては、前記昇降液槽を昇降する昇降機構を設けている。
【0039】
従って、昇降液槽の下降速度を制御できるので、被塗布物の表面に形成された塗膜の厚みを高い精度で均一化することができる。
【0040】
請求項5に記載した技術にあっては、前記昇降液槽が等速で下降可能とされている。
【0041】
従って、浸漬槽における塗布液の底面部に対する液面の高さが等速で下降されていくので、被塗布物の表面に形成された塗膜の厚みを高い精度で均一化することができる。
【0042】
請求項6に記載した技術にあっては、前記昇降液槽の底面積が前記浸漬槽の底面積より大きくされている。
【0043】
従って、昇降液槽の下方への移動量が低減されるので、塗布装置を高さ方向において小型化することができる。
【0044】
請求項7に記載した技術にあっては、前記液体用連通管に伝達される振動を抑制する第1の防振部を設けている。
【0045】
従って、昇降液槽において発生する振動の浸漬槽への伝達を抑制することができ、被塗布物の表面に形成された塗膜の厚みを確実に均一化することができる。
【0046】
請求項8に記載した技術にあっては、前記液体用連通管が弾性変形可能な材料によって形成され、前記液体用連通管が前記第1の防振部として設けられている。
【0047】
従って、第1の防振部としての専用の部分が不要となり、塗布装置の部品点数の削減及び構成の簡素化を図ることができる。
【0048】
請求項9に記載した技術にあっては、前記気体用連通管に伝達される振動を抑制する第2の防振部を設けている。
【0049】
従って、昇降液槽において発生する振動の浸漬槽への伝達を抑制することができ、被塗布物の表面に形成された塗膜の厚みを確実に均一化することができる。
【0050】
請求項10に記載した技術にあっては、前記気体用連通管が弾性変形可能な材料によって形成され、前記気体用連通管が前記第2の防振部として設けられている。
【0051】
従って、第2の防振部としての専用の部分が不要となり、塗布装置の部品点数の削減及び構成の簡素化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下に、本技術塗布装置の実施の形態について添付図面を参照して説明する(図1乃至図6参照)。
【0053】
[塗布装置の構成]
塗布装置1は、図1に示すように、位置が固定された浸漬槽2と、昇降自在にされた昇降液槽3と、浸漬槽2及び昇降液槽3に下方において連通する液体用連通管4と、浸漬槽2及び昇降液槽3に上方において連通する気体用連通管5と、昇降液槽3を昇降する昇降機構6とを備えている。
【0054】
浸漬槽2は、例えば、底面部2aと、底面部2aの外周部から上方へ突出された周面部2bと、周面部2bを上方から閉塞する蓋面部2cとを有している。浸漬槽2は、例えば、蓋面部2cが周面部2bに対して開閉可能とされている。
【0055】
浸漬槽2には塗布液100が貯留される。塗布液100としては、例えば、基材表面を改質するシランカップリング剤や離型剤、基材表面の酸化を防ぐ防錆剤、感光性材料等が用いられる。浸漬槽2には、例えば、基材表面に微細パターンを形成するために用いられる感光性材料であるフォトレジストが塗布液100として貯留される。塗布液100は揮発性及び一定の粘性を有している。
【0056】
浸漬槽2の内部には被塗布物200が固定された状態で収容される。被塗布物200は蓋面部2cが周面部2bに対して開放されて浸漬槽2の内部へ収容され又は浸漬槽2の内部から取り出される。被塗布物200としては、例えば、シリコンウェハやガラスウェハ等の平板形状の基板、電子写真方式用感光体ドラムを形成するための円筒形状の基材等がある。被塗布物200は、後述するように、浸漬槽2の内部に貯留された塗布液100に浸漬され、被塗布物200の表面に塗布液100が塗布される。
【0057】
浸漬槽2はアクティブ型の防振台7に載置されている。防振台7は浸漬槽2に伝達される振動を抑制する機能を有する振動抑制部として用いられている。
【0058】
防振台7は床等の設置面300に設置された配置台8に配置され、例えば、浸漬槽2が載置される載置台7aと載置台7aに取り付けられた振動検出センサー7bと載置台7aに取り付けられたアクチュエーター7cと図示しないコントロール部とを有する。
【0059】
振動検出センサー7bは載置台7aに伝達された振動を検出する機能を有する。アクチュエーター7cは載置台7aに振動を抑制するための力を加える機能を有する。コントロール部は振動検出センサー7bから得られた載置台7aに対する振動の情報に基づいてアクチュエーター7cの動作を制御する機能を有する。
【0060】
防振台7においては、昇降機構6の後述する駆動時に昇降機構6や昇降液槽3において発生する振動が載置台7aに伝達されたときに、振動検出センサー7bによって載置台7aの振動が検出され、振動検出センサー7bにより得られた振動の情報に基づいてコントロール部によって載置台7aに伝達された振動を打ち消すようにアクチュエーター7cの動作が制御され、載置台7aの振動が抑制される。
【0061】
なお、上記には、振動抑制部として防振台7を用いた例を示したが、振動抑制部は防振台7に限られることはない。振動抑制部は浸漬槽2に伝達される振動を抑制する機能を有していればよく、例えば、防振ゴム、コイルバネ、空気バネ、オイルダンパー等のように物性に基づいて伝達された振動を抑制するようなパッシブ型のものが用いられてもよい。
【0062】
昇降液槽3は昇降自在とされ、例えば、下面部3aと下面部3aの外周部から上方へ突出された側面部3bと側面部3bを上方から閉塞する上面部3cとを有している。昇降液槽3の下面部3aの面積は浸漬槽2の底面部2aの面積より大きくされている。昇降液槽3には塗布液100が貯留される。
【0063】
液体用連通管4は一方の端部が底面部2aに連結されて浸漬槽2に連通され、他方の端部が下面部3aに連結されて昇降液槽3に連通されている。液体用連通管4は長手方向に垂直な面の断面積が浸漬槽2の底面部2aの面積や昇降液槽3の下面部3aの面積に対して十分小さくされ、浸漬槽2側に位置する部分が配置台8及び防振台7に固定されている。液体用連通管4は、例えば、ゴム等の柔軟性を有する弾性変形可能な材料によって形成されている。なお、液体用連通管4は金属等の剛性の高い材料によって形成されていてもよい。液体用連通管4が剛性の高い材料によって形成されている場合には、例えば、液体用連通管4の所定の部分が伸縮管継手やフレキシブルホース等の屈曲性を有する部材に接続され、昇降液槽3の昇降時に当該屈曲性を有する部材が屈曲されるように構成される。
【0064】
上記したように、液体用連通管4は浸漬槽2と昇降液槽3に連通されており、液体用連通管4を介して浸漬槽2と昇降液槽3の間で塗布液100の授受が行われる。従って、浸漬槽2と昇降液槽3と液体用連通管4に貯留された塗布液100の合計された容量は一定にされている。塗布液100の合計された容量は、浸漬槽2の内部に貯留された塗布液100によって被塗布物200の全体が浸漬可能な容量より多くされている。
【0065】
なお、上記には、液体用連通管4の両端部がそれぞれ浸漬槽2の底面部2aと昇降液槽3の下面部3aとに連通されている例を示したが、液体用連通管4は両端部がそれぞれ底面部2aと下面部3aに連通された構成に限られることはない。液体用連通管4は、浸漬槽2と昇降液槽3の間での塗布液100の授受が可能な状態であれば、各端部が浸漬槽2の周面部2b又は昇降液槽3の側面部3bに連通されていてもよい。
【0066】
塗布装置1には液体用連通管4に伝達される振動を抑制する第1の防振部9が設けられている。第1の防振部9としては、液体用連通管4を固定するためのネジやリベット、接着剤等の固定部材が用いられる。なお、液体用連通管4が柔軟性を有する弾性変形可能な材料によって形成されている場合には、液体用連通管4が第1の防振部9として機能する。従って、第1の防振部9としての専用の部分が不要となり、塗布装置1の部品点数の削減及び構成の簡素化を図ることができる。
【0067】
また、液体用連通管4は配置台8に固定されているため、配置台8を第1の防振部9として構成してもよい。配置台8を第1の防振部9として構成することにより、第1の防振部9としての専用の部分が不要となり、塗布装置1の部品点数の削減及び構成の簡素化を図ることができる。
【0068】
さらにまた、液体用連通管4は防振台7にも固定されているため、防振台7も第1の防振部9として機能する。従って、防振台7が第1の防振部9としても兼用されるので、塗布装置1の小型化を図ることができる。
【0069】
気体用連通管5は一方の端部が蓋面部2cに連結されて浸漬槽2に連通され、他方の端部が上面部3cに連結されて昇降液槽3に連通されている。気体用連通管5は浸漬槽2及び昇降液槽3を外気から遮断する機能を有し、気体用連通管5の内部には空気等の気体110が封入されている。気体用連通管5は、例えば、ゴム等の柔軟性を有する弾性変形可能な材料によって形成されている。なお、気体用連通管5は金属等の剛性の高い材料によって形成されていてもよい。気体用連通管5が剛性の高い材料によって形成されている場合には、例えば、気体用連通管5の所定の部分が伸縮管継手やフレキシブルホース等の屈曲性を有する部材に接続され、昇降液槽3の昇降時に当該屈曲性を有する部材が屈曲されるように構成される。
【0070】
上記したように、気体用連通管5は浸漬槽2と昇降液槽3に連通されている。従って、気体110は気体用連通管5を介して浸漬槽2と昇降液槽3との間で移動可能とされ、浸漬槽2の内圧と昇降液槽3の内圧は略同一にされる。
【0071】
また、浸漬槽2の内圧と昇降液槽3の内圧は略同一にされているため、液体用連通管4を介して塗布液100の授受が行われる浸漬槽2と昇降液槽3においては、浸漬槽2における塗布液100の液面100aの位置と昇降液槽3における塗布液100の液面100bの位置とが昇降液槽3の移動位置に拘らず同じにされる。
【0072】
なお、上記には、気体用連通管5の両端部がそれぞれ浸漬槽2の蓋面部2cと昇降液槽3の上面部3cとに連通されている例を示したが、気体用連通管5は両端部がそれぞれ蓋面部2cと上面部3cに連通された構成に限られることはない。気体用連通管5は、浸漬槽2及び昇降液槽3を外気から遮断し内部に気体110が封入された状態であれば、各端部が浸漬槽2の周面部2b又は昇降液槽3の側面部3bに連通されていてもよい。
【0073】
塗布装置1には気体用連通管5に伝達される振動を抑制する第2の防振部10が設けられている。第2の防振部10としては、図示しない壁面や天井等に気体用連通管5を固定するためのネジやリベット、接着剤等の固定部材が用いられる。なお、気体用連通管5が柔軟性を有する弾性変形可能な材料によって形成されている場合には、気体用連通管5が第2の防振部10として機能する。従って、第2の防振部10としての専用の部分が不要となり、塗布装置1の部品点数の削減及び構成の簡素化を図ることができる。
【0074】
昇降機構6は、例えば、設置面300に設置された台座6aと、台座6aから上方へ延びる支柱6bと、支柱6bに上下方向へ移動自在に支持された設置ベース6cと、設置ベース6cを移動させるモーター等の駆動源6dと、駆動源を制御するコントローラー6eとを有している。昇降機構6はコントローラー6eによって設置ベース6cの移動方向(上下方向)や移動速度が制御され、設置ベース6cが等速かつ低速で下降可能とされている。昇降機構6の設置ベース6cには昇降液槽3が設置され、昇降機構6の動作に伴って昇降液槽3が昇降される。
【0075】
[塗布方法]
以下に、上記した塗布装置1による塗布方法について説明する(図2乃至図6参照)。
【0076】
先ず、被塗布物200に塗布液100が塗布される前の初期状態について説明する(図2参照)。
【0077】
初期状態においては、昇降液槽3の上面部3cが浸漬槽2の底面部2aと略同じ高さに位置され、昇降液槽3の略全体が浸漬槽2の下方に位置されている。
【0078】
このとき、昇降液槽3には塗布液100が十分に貯留され、昇降液槽3における塗布液100の液面100bは上面部3cに接近して位置されている。浸漬槽2には塗布液100が貯留されていない。
【0079】
また、上記したように、浸漬槽2の内圧と昇降液槽3の内圧は略同一にされているため、浸漬槽2と昇降液槽3では浸漬槽2における液面100aの位置と昇降液槽3における液面100bの位置とが昇降液槽3の移動位置に拘らず同じにされる。
【0080】
次に、浸漬槽2の蓋面部2cが開放されて被塗布物200が浸漬槽2の内部に収容され、浸漬槽2の内部に被塗布物200が固定した状態で配置される(図3参照)。
【0081】
次いで、昇降機構6の設置ベース6cに設置された昇降液槽3が昇降機構6によって上方へ移動される(図4参照)。昇降液槽3は下面部3aが浸漬槽2の蓋面部2cと略同じ高さになる位置まで上方へ移動される。
【0082】
昇降液槽3が上方へ移動されると、昇降液槽3に貯留されていた塗布液100が液体用連通管4を介して浸漬槽2に移動される。従って、浸漬槽2における底面部2aに対する液面100aの高さが上昇され、昇降液槽3における下面部3aに対する液面100bの高さが下降される。
【0083】
また、昇降液槽3が上方へ移動されたときには昇降液槽3の全体が浸漬槽2の上方に位置されるため、昇降液槽3に貯留されていた塗布液100は全て液体用連通管4又は浸漬槽2に移動され、浸漬槽2には塗布液100が充満される。従って、被塗布物200の全体が塗布液100に浸漬された状態とされる。
【0084】
続いて、昇降液槽3が、昇降機構6のコントローラー6eによる駆動源6dの制御に基づいて等速かつ低速で下降される(図5参照)。
【0085】
昇降液槽3が下降されていくと、浸漬槽2に貯留されていた塗布液100が液体用連通管4を介して昇降液槽3に移動されていく。従って、浸漬槽2における底面部2aに対する液面100aの高さが昇降液槽3の等速かつ低速での下降に伴って等速かつ低速で下降していき、昇降液槽3における下面部3aに対する液面100bの高さが等速かつ低速で上昇していく。従って、浸漬槽2における底面部2aに対する液面100aの高さが等速かつ低速で下降するのに伴って、被塗布物200の表面に上側から下側へ順に塗膜101が形成されていく。
【0086】
塗布装置1においては、昇降液槽3の下降速度に応じて被塗布物200の表面に形成される塗膜101の厚みが変化する。昇降液槽3が低速で下降されると、被塗布物200の表面に形成される塗膜101は厚みが薄くされる。
【0087】
塗布装置1においては、上記したように、昇降液槽3が等速で下降されていくため、浸漬槽2における塗布液100の底面部2aに対する液面100aの高さが等速で下降されていく。従って、被塗布物200の表面に形成された塗膜101の厚みを高い精度で均一化することができる。
【0088】
また、昇降液槽3が低速で下降されていくため、浸漬槽2における塗布液100の底面部2aに対する液面100aの高さが低速で下降されていく。従って、被塗布物200の表面に形成された塗膜101の厚みを薄くすることができる。
【0089】
さらに、上記したように、浸漬槽2が防振台7の載置台7aに載置されている。従って、昇降機構6の下降時に昇降機構6や昇降液槽3において発生する振動等の浸漬槽2への伝達が抑制され、浸漬槽2の振動の発生を抑制することができ、被塗布物200の表面に形成された塗膜101の厚みを確実に均一化することができる。
【0090】
さらにまた、昇降液槽3の下面部3aの面積が浸漬槽2の底面部2aの面積より大きくされているため、その分、昇降液槽3の下方への移動量を低減することができる。従って、塗布装置1を高さ方向において小型化することができる。
【0091】
加えて、塗布装置1には液体用連通管4に伝達される振動を抑制する第1の防振部9が設けられている。従って、昇降機構6の下降時に昇降機構6や昇降液槽3において発生する振動の浸漬槽2への伝達を抑制することができ、被塗布物200の表面に形成された塗膜101の厚みを確実に均一化することができる。
【0092】
さらに加えて、塗布装置1には気体用連通管5に伝達される振動を抑制する第2の防振部10が設けられている。従って、昇降機構6の下降時に昇降機構6や昇降液槽3において発生する振動の浸漬槽2への伝達を抑制することができ、被塗布物200の表面に形成された塗膜101の厚みを確実に均一化することができる。
【0093】
また、上記したように、液体用連通管4は長手方向に垂直な面の断面積が浸漬槽2の底面部2aの面積や昇降液槽3の下面部3aの面積に対して十分小さくされている。従って、昇降液槽3における塗布液100の振動が液体用連通管4の内部の塗布液100に伝達されるときに減衰され、浸漬槽2に貯留されている塗布液100の振動の発生を抑制することができる。
【0094】
引き続き、昇降液槽3は下降され、上面部3cが浸漬槽2の底面部2aと略同じ高さになる位置において停止される(図6参照)。
【0095】
下降された昇降液槽3が停止されたときには、昇降液槽3の略全体が浸漬槽2の下方に位置され、浸漬槽2に貯留されていた塗布液100は全て液体用連通管4又は昇降液槽3に移動され、浸漬槽2には塗布液100が貯留されていない状態になる。従って、被塗布物200の表面の全体に塗膜101が形成される。
【0096】
次いで、浸漬槽2の蓋面部2cを開放して被塗布物200を取り出し、被塗布物200に対して乾燥等の処理を行う。
【0097】
[まとめ]
以上に記載した通り、塗布装置1にあっては、位置が固定された浸漬槽2と昇降自在とされた昇降液槽3に連通する液体用連通管4を介して浸漬槽2と昇降液槽3の間で塗布液100の授受が行われ、昇降液槽3が昇降されたときの位置の変化に応じて昇降液槽3と浸漬槽2に貯留される塗布液100のそれぞれの容量が増減され、固定された状態の被塗布物200に塗布液100が塗布される。
【0098】
従って、浸漬槽2は位置が固定され被塗布物200は浸漬槽2の内部に固定された状態とされ、被塗布物200や浸漬槽2が移動されないので、被塗布物200の表面に形成された塗膜101の厚みを均一化することができる。
【0099】
また、上記した塗布装置1にあっては、両端がそれぞれ浸漬槽2と昇降液槽3に連通し浸漬槽2及び昇降液槽3を外気から遮断する気体用連通管5が設けられている。
【0100】
従って、浸漬槽2における塗布液100の揮発が防止され、揮発による塗布液100の密度や粘度等の変化を防止することができ、被塗布物200の表面に形成された塗膜101の厚みを確実に均一化することができる。
【0101】
また、浸漬槽2が外気から遮断されているので、外気に存在するほこり等の異物が被塗布物200に付着することを防止することができ、歩留まりの向上を図ることができる。
【0102】
また、上記した塗布装置1にあっては、昇降液槽3を昇降する昇降機構6を設けている。
【0103】
従って、昇降液槽3の下降速度を制御することができ、被塗布物200の表面に形成された塗膜101の厚みを高い精度で均一化することができる。
【0104】
なお、上記には、塗布装置1が気体用連通管5を備えた例を示したが、塗布装置は気体用連通管5を備えた構成に限られることはない。例えば、塗布装置は浸漬槽2と昇降液槽3が同一の気圧の状態におかれていれば、浸漬槽2と昇降液槽3が外気から遮断されていない状態とされていてもよい。
【0105】
[本技術]
なお、本技術は以下のような構成とすることができる。
【0106】
(1)内部に固定された状態の被塗布物に塗布される塗布液を貯留し位置が固定された浸漬槽と、前記塗布液を貯留し昇降自在とされた昇降液槽と、両端がそれぞれ前記浸漬槽と前記昇降液槽に連通する液体用連通管とを備え、前記液体用連通管を介して前記浸漬槽と前記昇降液槽の間で前記塗布液の授受が行われ、前記昇降液槽と前記浸漬槽と前記液体用連通管に貯留された前記塗布液の合計された容量が一定の容量とされ、前記昇降液槽が昇降されたときの位置の変化に応じて前記昇降液槽と前記浸漬槽に貯留される前記塗布液のそれぞれの容量が増減される塗布装置。
【0107】
(2)前記浸漬槽に伝達される振動を抑制する振動抑制部を設けた前記(1)に記載の塗布装置。
【0108】
(3)両端がそれぞれ前記浸漬槽と前記昇降液槽に連通し前記浸漬槽及び前記昇降液槽を外気から遮断し内部に気体が封入された気体用連通管を設けた前記(1)又は前記(2)に記載の塗布装置。
【0109】
(4)前記昇降液槽を昇降する昇降機構を設けた前記(1)から前記(3)の何れかに記載の塗布装置。
【0110】
(5)前記昇降液槽が等速で下降可能とされた前記(4)に記載の塗布装置。
【0111】
(6)前記昇降液槽の底面積が前記浸漬槽の底面積より大きくされた前記(1)から前記(5)の何れかに記載の塗布装置。
【0112】
(7)前記液体用連通管に伝達される振動を抑制する第1の防振部を設けた前記(1)から前記(6)の何れかに記載の塗布装置。
【0113】
(8)前記液体用連通管が弾性変形可能な材料によって形成され、前記液体用連通管が前記第1の防振部として設けられた前記(7)に記載の塗布装置。
【0114】
(9)前記気体用連通管に伝達される振動を抑制する第2の防振部を設けた前記(3)に記載の塗布装置。
【0115】
(10)前記気体用連通管が弾性変形可能な材料によって形成され、前記気体用連通管が前記第2の防振部として設けられた前記(9)に記載の塗布装置。
【0116】
上記した最良の形態において示した各部の具体的な形状及び構造は、何れも本技術を実施する際の具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本技術の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】図2乃至図6と共に本技術塗布装置の実施の形態を示すものであり、本図は、塗布装置の概略図である。
【図2】図3乃至図6と共に被塗布物に塗布液が塗布される工程を示すものであり、本図は、被塗布物に塗布液が塗布される前の初期状態を示す概略図である。
【図3】浸漬槽に被塗布物が固定された状態で収容された状態を示す概略図である。
【図4】昇降液槽の全体が浸漬槽に対して上側に位置し被塗布物の全体が塗布液に浸された状態を示す概略図である。
【図5】図4の状態から昇降液槽が下降され浸漬槽における塗布液の液面の高さが下降している状態を示す概略図である。
【図6】被塗布物に対する塗布液の塗布が完了された状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0118】
1…塗布装置、2…浸漬槽、3…昇降液槽、4…液体用連通管、5…気体用連通管、6…昇降機構、7…防振台、9…第1の防振部、10…第2の防振部、100…塗布液、110…気体、200…被塗布物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に固定された状態の被塗布物に塗布される塗布液を貯留し位置が固定された浸漬槽と、
前記塗布液を貯留し昇降自在とされた昇降液槽と、
両端がそれぞれ前記浸漬槽と前記昇降液槽に連通する液体用連通管とを備え、
前記液体用連通管を介して前記浸漬槽と前記昇降液槽の間で前記塗布液の授受が行われ、
前記昇降液槽と前記浸漬槽と前記液体用連通管に貯留された前記塗布液の合計された容量が一定の容量とされ、
前記昇降液槽が昇降されたときの位置の変化に応じて前記昇降液槽と前記浸漬槽に貯留される前記塗布液のそれぞれの容量が増減される
塗布装置。
【請求項2】
前記浸漬槽に伝達される振動を抑制する振動抑制部を設けた
請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
両端がそれぞれ前記浸漬槽と前記昇降液槽に連通し前記浸漬槽及び前記昇降液槽を外気から遮断し内部に気体が封入された気体用連通管を設けた
請求項1に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記昇降液槽を昇降する昇降機構を設けた
請求項1に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記昇降液槽が等速で下降可能とされた
請求項4に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記昇降液槽の底面積が前記浸漬槽の底面積より大きくされた
請求項1に記載の塗布装置。
【請求項7】
前記液体用連通管に伝達される振動を抑制する第1の防振部を設けた
請求項1に記載の塗布装置。
【請求項8】
前記液体用連通管が弾性変形可能な材料によって形成され、
前記液体用連通管が前記第1の防振部として設けられた
請求項7に記載の塗布装置。
【請求項9】
前記気体用連通管に伝達される振動を抑制する第2の防振部を設けた
請求項3に記載の塗布装置。
【請求項10】
前記気体用連通管が弾性変形可能な材料によって形成され、
前記気体用連通管が前記第2の防振部として設けられた
請求項9に記載の塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−196646(P2012−196646A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63764(P2011−63764)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】