説明

塗料供給装置

【課題】焼き付きの発生防止と、撹拌に要するエネルギーの低減を図る。
【解決手段】タンク(塗料供給源)80から塗装ガン81に至る塗料の供給路82に設けた撹拌機構Mは、塗料を流通させる筒状部材10と、筒状部材10内で回転することにより塗料を撹拌する撹拌部材50と、撹拌部材50を、磁力により筒状部材10の内周面と非接触の状態で回転駆動させる駆動手段70とを備えている。撹拌部材50が筒状部材10と非接触で回転するので、撹拌部材50を高速回転させても、焼き付きは起きない。撹拌対象となるのは、タンク80内に貯留されている多量の水性塗料ではなく、撹拌機構Mを通過する少量の水性塗料だけなので、撹拌部材50を回転させるのに要するエネルギーは少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、自然環境を考慮して水性塗料が多用されている。水性塗料は、塗装ガンから微粒化された状態で噴出されてから被塗物に塗着するまでの間、水分の蒸発率が低いため、水分含有率の高い低粘度の水性塗料を用いた場合には、被塗面に塗着した塗料が自重で流れ落ちることが懸念される。そのため、水性塗料は、水分含有量を少なくしておくことが望ましい。ところが、水分の割合を減らすと粘度が高くなるため、今度は、塗装ガンから噴出する際に塗料が微粒化し難くなるという不具合が生じる。
そこで、水分割合を低くしたままで粘度を低下させる手段として、特許文献1に記載されているように、水性塗料が貯留されているタンク内で水性塗料を撹拌することにより、水性塗料が有するチクソトロピー性を利用して、粘度を下げることが考えられる。
【特許文献1】特開2003−181263公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
チクソトロピー性を利用して粘度低下の効果を得るためには、撹拌機を少なくとも3,000rpm程度の高速度で回転駆動する必要があるが、このような高速回転で駆動した場合、撹拌機を支持する回転軸と軸受との間で接触摩擦による焼き付きを起こす虞がある。
しかも、塗料供給源内には多量の水性塗料が貯留されているので、この多量の水性塗料を撹拌するためには、撹拌機を駆動するのに要するエネルギーが大きくなり、コストアップを招くという問題もある。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、焼き付きの発生防止と、撹拌に要するエネルギーの低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、塗料を塗料供給源から塗装ガンに供給する供給路と、前記供給路の途中に設けられた撹拌機構とを備え、前記撹拌機構は、塗料を流通させるための撹拌空間を有する筒状部材と、前記筒状部材内に回転可能に設けられ、撹拌片を塗料の流通方向と交差する方向に回転させることで前記撹拌空間内の塗料を撹拌する撹拌部材と、前記撹拌部材を、磁力により前記筒状部材の内周面とは非接触の状態を保って回転駆動させる駆動手段とを備えている構成としたところに特徴を有する。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記駆動手段は、前記筒状部材の外部において、前記撹拌部材と同軸状に回転駆動する駆動部材と、前記駆動部材に一体回転可能に設けられた駆動側磁石と、前記撹拌部材に一体回転可能に設けられた従動側磁石とを備え、前記駆動側磁石と前記従動側磁石との間の磁気吸引力により、前記撹拌部材が前記駆動部材と一体となって回転するようになっているところに特徴を有する。
【0006】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記撹拌空間内における前記撹拌片より上流側の近傍位置には、塗料の流通を許容する流通孔と、塗料の流通を遮断する遮断部とが周方向に隣り合うように設けられているところに特徴を有する。
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のものにおいて、前記撹拌空間のうち前記撹拌片が回転移動する領域が、撹拌室として区画されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
<請求項1の発明>
撹拌部材が筒状部材の内周面と非接触で回転するので、撹拌部材を高速で回転させても、焼き付きが起きる虞がない。しかも、撹拌対象となるのは、塗料供給源内に貯留されている多量の水性塗料の全体ではなく、撹拌機構を通過する少量の水性塗料だけで済むので、撹拌部材を回転させるのに要するエネルギーが少なくて済む。
【0008】
<請求項2の発明>
駆動部材を回転駆動して撹拌部材を回転させると、撹拌空間内では、撹拌片が回転して塗料を剪断するように撹拌し、この撹拌作用によって塗料が撹拌される。撹拌機構における塗料の通過時間が短くても、駆動部材の回転速度、即ち撹拌片の回転速度を高めることにより、塗料を充分に撹拌することができる。
また、筒状部材内に収容されている撹拌部材に回転力を伝える手段としては、撹拌部材に一体回転するように設けた伝達部材を筒状部材の外部へ貫通させ、この伝達部材に回転力を付与する構造も考えられるが、このように回転する伝達部材が筒状部材を貫通する構造の場合、伝達部材の貫通部分の隙間に浸入した塗料が、高粘度化して固着し、そのために撹拌部材の回転に支障を来たすことが懸念される。これに対し本発明では、撹拌部材に回転力を付与する手段として、磁力を利用しているので、上記のような塗料の高粘度化に起因する撹拌部材の回転不良を回避することができる。
【0009】
<請求項3の発明>
塗料は、流通孔内を流れる間に概ね層流状となり、流通孔を通過した直後に、撹拌片によって流れをほぼ直角に横切るように剪断されつつ撹拌されるので、撹拌片による剪断効果が高く、塗料を良好に撹拌することができる。
<請求項4の発明>
撹拌室においては、撹拌片からの撹拌力を受けた塗料が外部に逃げ難いので、効率良く撹拌することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図9を参照して説明する。本実施形態の塗料供給装置は、タンク80(本発明の構成要件である塗料供給源)内に貯留されている水性塗料(以下、塗料という)を塗装ガン81に供給するための供給路82と、供給路82の途中に設けられた撹拌機構Mとを備えて構成されている。撹拌機構Mは、塗料が有するチクソトロピー性を利用して、塗料を撹拌することによりその塗料の粘度を低下させるためのものである。本実施形態では、供給路82のうち撹拌機構Mから塗装ガン81までの流路82Bの長さを、10m以下の寸法に設定している。
【0011】
撹拌機構Mは、筒状部材10と撹拌部材50と駆動手段70とを備えて構成される。筒状部材10は、その内部に塗料を流通させるための撹拌空間15を有している。撹拌部材50は、筒状部材10内に回転可能に設けられ、撹拌片61を塗料の流通方向と交差する方向に回転させることで撹拌空間15内の塗料を撹拌する。駆動手段70は、撹拌部材50を、磁力により筒状部材10の内周面とは非接触の状態を保って回転駆動させるものであり、筒状部材10の外部において、撹拌部材50と同軸状に回転駆動する駆動ギヤ30(本発明の構成要件である駆動部材)と、駆動ギヤ30に一体回転可能に設けられた駆動側磁石35と、撹拌部材50に一体回転可能に設けられた従動側磁石53とを備えて構成されている。
【0012】
<筒状部材10>
筒状部材10は、非磁性材料からなる円筒状の筒体11と、筒状の上部支持体12と、筒状の下部支持体13とからなる。筒体11は軸線を上下方向に向けており、筒体11の上面の開口部に上部支持体12が同心状に嵌合され、筒体11の下面の開口部に下部支持体13が同心状に嵌合されている。かかる筒状部材10は、上部ベース板40と下部ベース板41との間で上下に挟まれた状態で固定して支持されている。この筒状部材10の内部空間のうち概ね上半分領域は収容空間14となっており、概ね下半分領域は撹拌空間15となっている。
【0013】
撹拌空間15内には、3枚の区画板16と2つのスペーサ20が上下方向に交互に重ねられて設けられている。区画板16は、筒体11の軸線と直角な円板状をなし、筒体11の内周に径方向及び周方向のガタ付きなく嵌合されて固定されている。スペーサ20は、円筒状をなし、筒体11の内周に径方向のガタ付きなく嵌合されて固定されている。区画板16には、周方向に等角度間隔を空けた円形をなす4つの流通孔17と、区画板16と同心円形をなすとともに4つの流通孔17と連通する中心孔18とが上下に貫通して形成されている。また、区画板16のうち流通孔17及び中心孔18以外の4つの残留領域は、楔状(略三角形状)をなす遮断部19となっている。3つの区画板16はスペーサ20により上下に間隔を空けるように位置決めされている。また、3つの区画板16は、周方向において流通孔17同士が同じ位置となるように、換言すると流通孔17同士が上下に対応するように配置されている。流通孔17においては、筒体11内に流入した塗料が下向きに流通するようになっている。また、遮断部19においては、塗料の流通が遮られるようになっている。そして撹拌空間15内には、この3つの区画板16により筒状部材10の回転軸方向に区画された2室の撹拌室21が、スペーサ20と同じ高さに設けられている。
【0014】
さらに、筒体11の下端面と下部支持体13との間には、筒体11の軸線と直角な平板状をなす軸受板22が挟まれている。軸受板22には、その中心から偏心した位置であって周方向に間隔を空けた複数の切欠孔23が上下に貫通して形成されており、軸受板22の中心には軸受部24が形成されている。
【0015】
上部支持体12には、軸線を上下方向に向けた筒状の流入側継手25が固着され、下部支持体13には、軸線を上下方向に向けた筒状の流出側継手26が固着されている。流入側継手26の上向きに開口する流入口24aには、供給路82におけるタンク80側の流路82Aの下流端が接続され、流出側継手26の下向きに開口する流出口25aには、供給路82における塗装ガン81側の流路82Bの上流端が接続されている。流入口24aは上部支持体12の中心孔18を介して撹拌空間15の上端に連通し、流出口25aは下部支持体13の中心孔18を介して撹拌空間15の下端に連通している。流入口24aから筒状部材10内に供給された塗料は、筒状部材10内を下方へ(筒状部材10の軸線とほぼ平行に)流れ、流出口25aから筒状部材10外へ流出するようになっている。
【0016】
<駆動ギヤ30>
上部支持体12の外周には、筒状部材10と同心の円筒形をなす非磁性材料からなる駆動ギヤ30が、ベアリング31により、上下方向(駆動ギヤ30の軸線方向)への相対移動を規制され、且つ筒状部材10と同軸の回転を許容された状態で支持されている。駆動ギヤ30は、円筒形のギヤ本体32と、同じく円筒形の磁石保持体33とをボルト34により一体回転可能に組み付けたものであり、磁石保持体33には、偶数数の駆動側磁石35が、周方空に間隔を空け、且つ磁石保持体33の内周面にN極とS極が交互に並ぶように取り付けられている。これらの駆動側磁石35は、筒状部材10の筒体11の外周面に対して接近して対向しており、駆動ギヤ30が回転するのに伴ない、これら複数の駆動側磁石35が筒体11の外周面に沿って回転移動するようになっている。
【0017】
上部ベース板40には、モータ42が固定されている。モータ42の下向きの出力軸43には、出力ギヤ44が一体回転するように固着されている。この出力ギヤ44は上記駆動ギヤ30に噛み合わされており、モータ42が回転すると、そのモータ42の回転力が出力ギヤ44を介して駆動ギヤ30に伝達され、駆動ギヤ30が回転駆動するようになっている。
【0018】
<撹拌部材50>
筒状部材10の内部空間(撹拌空間15)には、撹拌部材50が収容されている。撹拌部材50は、非磁性材料からなり、略上半分領域が円形の磁石保持部51となっており、略下半分領域が概ね円形をなす撹拌機能部59となっている。磁石保持部51の外径は筒体11の内径よりも僅かに小さい寸法とされ、磁石保持部51には、その外周を凹ませた形態の保持空間52が駆動側磁石35と同じ数だけ形成されている。この複数の保持空間52には、駆動側磁石35と対応する複数の従動側磁石53が、外周面側にN極とS極が交互に並ぶように収容されている。尚、従動側磁石53は、保持空間52の開口部に取り付けたカバー54により塗料と接触しないように覆い隠されている。
【0019】
磁石保持部51内には、磁石保持部51と同心の円形であって磁石保持部51の上端面に開口する導入孔55が形成されている。磁石保持部51の下端部は、外径を同心状に小さくした小径部56となっている。この小径部56には、その外周面から中心に向かって径方向に穿孔した形態の4つの連通孔57が形成されており、各連通孔57は、小径部56の中心において導入孔55の下端と連通している。また、磁石保持部51の上端面には、導入孔55を包囲するように4枚の平板状をなす、羽根板58が上方へ突出するように形成されている。各羽根板58の板面は、概ね径方向に沿っているため、撹拌部材50が回転すると羽根板58がその板面と略直角に回転移動するようになっている。
【0020】
撹拌機能部59は、磁石保持部51と同心であって小径部56よりも外径の小さい円柱状の支持脚部60と、この支持脚部60の外周に形成した複数の撹拌片61とからなる。支持脚部60の上端が磁石保持部51の小径部56の下端面に連なることで、撹拌機能部59と磁石保持部51とが一体的に回転するようになっている。支持脚部60の下端には、ボール62が、その略上半分領域を埋設する形態で固着されている。撹拌片61は、撹拌部材50の軸線方向(上下方向)に間隔を空けた2箇所に分けて合計8片配置されており、上側の4片の撹拌片61は周方向に等角度間隔を空けて配置され、下側の4片の撹拌片61も周方向に等角度間隔を空けて配置されている。また、各撹拌片61は平板状をなしているが、その板面は、支持脚部60の外周上において螺旋状をなすように斜めを向いている。換言すると、撹拌片61の板面は、支持脚部60の軸線方向に対して僅かに斜めに傾いている。
【0021】
かかる撹拌部材50は、ボール62を軸受部24の上面に当接させることによるスラスト軸受機構により、筒体11(筒状部材10)内において筒状部材10及び駆動ギヤ30と略同心の姿勢を保ちつつ筒体11と同軸状に自由回転し得るように支持されている。このボール62と軸受部24との接触形態は点接触(接触面積が微少)なので、撹拌部材50が高速回転しても、ボール62と軸受部24との間に生じる摩擦抵抗は小さく抑えられ、焼き付きが生じることはない。かかる撹拌部材50の磁石保持部51(小径部56を含む)は、筒体11内の磁石収容空間14内に収容され、N極を外周側に向けている従動側磁石53は、S極を内周側に向けている駆動側磁石35に対して同じ高さで対応し、S極を外周側に向けている従動側磁石53は、N極を内周側に向けている駆動側磁石35に対して同じ高さで対応している。そして、これらの対応する駆動側磁石35と従動側磁石53との間に生じる径方向の磁気吸引力により、撹拌部材50が駆動ギヤ30と一体となって回転するようになっている。また、この駆動側磁石35と従動側磁石53の間に生じる磁気吸引力は、周方向において等角度間隔で作用するので、撹拌部材50は傾くことなく筒体11と同心の姿勢を保つとともに、撹拌部材50の外周と筒状部材10の内周面とは非接触の状態を保つ。この非接触状態は、撹拌部材50が回転している状態においても、回転が停止している状態においても保持される。
【0022】
一方、撹拌機能部59は、撹拌空間15内に収容され、支持脚部60は、3つの中心孔18を貫くように位置している。上段側の撹拌片61は、上側のスペーサ20と対応する高さ(最も上の区画板16と中央高さの区画板16との間の高さ)の撹拌室21内に水平方向に回転し得るように収容され、下段側の撹拌片61は、下側のスペーサ20と対応する高さ(中央高さの区画板16と最も下の区画板16との間の高さ)の撹拌室21内に水平方向に回転し得るように収容されている。この状態では、撹拌片61よりも上側(塗料の流れ方向における上流となる側)の近傍位置に、塗料の下向きの流通を許容する流通孔17と、塗料の流通を遮断する遮断部19とが周方向に隣り合うように位置していることになる。 <実施形態の作用及び効果>
次に、本実施形態の作用を説明する。
図示しないポンプによりタンク80から塗装ガン81に向けて供給された塗料は、撹拌機構Mを通過する間に撹拌されることにより、粘度が低下する。撹拌の際には、まず、モータ42により駆動ギヤ30を回転させ、筒状部材10内で撹拌部材50を回転させておき、この状態で、流入口24aから筒状部材10の収容空間14の上端部に塗料を供給する。供給された塗料は、撹拌部材50の導入孔55に流入し、連通孔57を通って撹拌部材50外へ流出し、撹拌空間15内において、最上段の区画板16の流通孔17、上側のスペーサ20で囲まれた撹拌室21、中央高さの区画板16の両通空間、下側のスペーサ20で囲まれた撹拌室21、最下段の区画板16の流通孔17を順に通り、軸受板22の切欠孔23を通過した後、流出口25aから筒状部材10(撹拌空間15)の外部へ(塗装ガン81に向けて)流出される。
【0023】
塗料が撹拌室21を通過する間、塗料が流れる方向(筒状部材10の軸線と平行な方向)に対してほぼ直角な水平方向に回転移動している複数の撹拌片61が、塗料の流れをほぼ直角に横切る。これにより、塗料は、撹拌片61により剪断されるように撹拌され、チクソトロピー性により粘度が低下する。
以下、本実施形態の撹拌機構Mを用いた実験の結果を説明する。タンク80内に、主剤と水分の混合比が4.3であって、温度が24℃である水性の塗料を貯留して撹拌している状態では、その塗料の粘度は28.8秒(FC#4)であった。このタンク80内の塗料を撹拌機構Mに供給し、撹拌済みの塗料の粘度を測定すると、塗料の粘度は21.5秒(FC#4)に低下した。このときの、撹拌部材50の回転速度は、3,000rpmであり、塗料の流量は、200ml/secであった。また、この撹拌済みの塗料の粘度21.5秒(FC#4)は、撹拌機構Mから吐出後、約5分間、維持された。
【0024】
また、撹拌空間15内における撹拌片61よりも上流側近傍位置には、塗料の流通を許容する流通孔17と、塗料の流通を遮断する遮断部19とが周方向に隣り合うように設けられている。これにより、塗料は、流通孔17内を流れる間に概ね層流状となり、流通孔17を通過した直後に、撹拌片61によって流れをほぼ直角に横切るように剪断されつつ撹拌されるので、撹拌片61による剪断効果が高く、塗料が良好に撹拌される。
しかも、撹拌片61が回転移動する領域は、撹拌室21として区画されているので、撹拌室21においては、撹拌片61からの撹拌力を受けた塗料が撹拌室21の外部に逃げ難くなっている。これにより、塗料を効率良く撹拌することができる。
【0025】
また、チクソトロピー性を利用して塗料の粘度を低下させるためには、塗料を少なくとも1,000rpm以上の高速で撹拌する必要があるが、もし、この撹拌装置における回転機構が周面同士を接触させるメカニカル軸受構造である場合には、500rpm程度の低速度で軸受に焼き付きが発生する虞がある。
これに対し、本実施形態のでは、撹拌部材50が筒状部材10の内周面と非接触で回転するので、撹拌部材50を、10,000rpmといった高速で長時間回転させ続けても、焼き付きが起きる虞がない。しかも、撹拌対象となるのは、タンク80内に貯留されている多量の塗料の全体ではなく、撹拌機構Mを通過する少量の塗料だけで済むので、撹拌部材50を回転させるのに要するエネルギーが少なくて済む。
【0026】
また、駆動ギヤ30を回転駆動して撹拌部材50を回転させると、撹拌空間15内では、撹拌片61が回転して塗料を剪断するように撹拌し、この撹拌作用によって塗料が撹拌される。撹拌機構Mにおける塗料の通過時間が短くても、駆動ギヤ30の回転速度、即ち回転する撹拌片61の周速度を高めることにより、塗料を充分に撹拌することができる。
【0027】
また、筒状部材10内に収容されている撹拌部材50に回転力を伝える手段としては、撹拌部材に一体回転するように設けた伝達部材を筒状部材の外部へ貫通させ、この伝達部材に回転力を付与する構造も考えられるが、このように回転する伝達部材が筒状部材を貫通する構造の場合、伝達部材の貫通部分の隙間に浸入した塗料が、高粘度化して固着し、そのために撹拌部材の回転に支障を来たすことが懸念される。これに対し本実施形態では、撹拌部材50に回転力を付与する手段として、磁力を利用しているので、上記のような塗料の高粘度化に起因する撹拌部材50の回転不良を回避することができる。
【0028】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では撹拌片よりも上流側近傍位置に、塗料の流通を許容する流通孔と、塗料の流通を遮断する遮断部とを周方向に隣り合うように設け、流通孔内を概ね層流状に流れた塗料が流通孔を通過した直後に、撹拌片が概ね層流状の塗料を横切るようにしたが、本発明によれば、このような流通孔と遮断部を設けない構成としてもよい。
(2)上記実施形態では撹拌片を塗料の流通方向に間隔を空けて複数設けたが、本発明によれば、撹拌片は、塗料の流通方向における1箇所のみに設けてもよい。
(3)上記実施形態では複数の撹拌片と複数の遮断部(流通孔)を塗料の流通方向において交互に配置したが、本発明によれば、撹拌片と遮断部(流通孔)のうち少なくともいずれか一方は1つだけとしてもよい。
(4)上記実施形態では撹拌片を撹拌部材の外周面に設けたが、本発明によれば、撹拌部材を筒状にしてその内周に撹拌片を設けてもよい。
(5)上記実施形態では流通孔と遮断部の数を4つずつとしたが、本発明によれば、これらの数は、3つ以下でもよく、5つ以上でもよい。
(6)上記実施形態ではタンク内に貯留されている水性塗料を塗装ガンに供給する場合について説明したが、本発明は、主剤と硬化剤を混合して得られた二液塗料を塗装ガンに供給する場合にも適用できる。
(7)上記実施形態では塗料が水性塗料でるあ場合について説明したが、本発明は、塗料が溶剤系の塗料である場合にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施形態1の断面図
【図2】筒状部材を構成する筒体の断面図
【図3】筒体の平面図
【図4】回転部材を構成する磁石保持体の断面図
【図5】撹拌部材の正面図
【図6】撹拌部材の断面図
【図7】撹拌部材の平面図
【図8】撹拌部材の底面図
【図9】全体概略図
【符号の説明】
【0030】
M…撹拌機構
10…筒状部材
15…撹拌空間
17…流通孔
19…遮断部
21…撹拌室
30…駆動ギヤ(駆動部材)
35…駆動側磁石
50…撹拌部材
53…従動側磁石
61…撹拌片
70…駆動手段
80…タンク(塗料供給源)
81…塗装ガン
82…供給路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を塗料供給源から塗装ガンに供給する供給路と、
前記供給路の途中に設けられた撹拌機構とを備え、
前記撹拌機構は、
塗料を流通させるための撹拌空間を有する筒状部材と、
前記筒状部材内に回転可能に設けられ、撹拌片を塗料の流通方向と交差する方向に回転させることで前記撹拌空間内の塗料を撹拌する撹拌部材と、
前記撹拌部材を、磁力により前記筒状部材の内周面とは非接触の状態を保って回転駆動させる駆動手段とを備えていることを特徴とする塗料供給装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、
前記筒状部材の外部において、前記撹拌部材と同軸状に回転駆動する駆動部材と、
前記駆動部材に一体回転可能に設けられた駆動側磁石と、
前記撹拌部材に一体回転可能に設けられた従動側磁石とを備え、
前記駆動側磁石と前記従動側磁石との間の磁気吸引力により、前記撹拌部材が前記駆動部材と一体となって回転するようになっていることを特徴とする請求項1記載の塗料供給装置。
【請求項3】
前記撹拌空間内における前記撹拌片より上流側の近傍位置には、塗料の流通を許容する流通孔と、塗料の流通を遮断する遮断部とが周方向に隣り合うように設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の塗料供給装置。
【請求項4】
前記撹拌空間のうち前記撹拌片が回転移動する領域が、撹拌室として区画されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の塗料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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