説明

塗料組成物およびゴムシール部材

【課題】固着防止効果が高く、耐油性に優れ、低摩擦な被膜を表面に有する耐熱、耐油性ゴムシール部材、およびこの表面被膜を形成するための塗料組成物の提供を目的とする。
【解決手段】 ゴム弾性体の表面に塗布される塗料組成物であって、シリコーン成分と、熱硬化性樹脂成分と、これらシリコーン成分および熱硬化性樹脂成分から選ばれた少なくとも1つの成分と反応し得る官能基を有する硬化剤と、フッ素樹脂微粒子およびシリコーン微粒子から選ばれた少なくとも1つの微粒子とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固着防止効果および耐油性に優れ、摩擦係数の低い被膜を表面に有する自動車などに使用されるパッキンなどのシール部材、およびこの表面被膜を形成するための塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に使用されるゴムシール部材は使用環境が厳しいため、耐熱性、耐薬品性が要求される場合が多い。特に耐油性が求められる場合はニトリルゴム(以下NBRという)、アクリルゴム、フッ素ゴムなどが使用され、耐油性と耐熱性を必要とされる場合は、アクリルゴムやフッ素ゴムを使用することが一般的である。また、これらの合成ゴムは一般的に硬度が低く、その表面が粘着質であるため、シール部材が相手側へ固着してしまうという問題がある。その一例として自動車のオイルフィルターが挙げられる。
オイルフィルター用シール部材には、従来から耐熱性、耐油性に優れるアクリルゴムが使用されている。しかし、このアクリルゴムは、合成ゴムの中でも粘着性が高く、相手材であるエンジンブロックと固着しやすく、かつ、他の合成ゴムに比較し、機械的強度に劣るため、オイルフィルター交換時にエンジンブロックにシール部材の全部、あるいは一部が固着、残留するという問題がある。
【0003】
この固着の問題を解決する方法として、シリコーン樹脂又はシリコーンゴムからなる固着防止層をシランカップリング剤によりアクリルゴム製のシール部材に化学的に結合させるものがある(特許文献1を参照)。シランカップリング剤が添加されたシリコーン樹脂又はシリコーンゴムの溶液をシール部材に塗布し、焼成することで生ずる縮合反応によって、シール部材と化学的に結合するものである。
【特許文献1】特許第2690003号公報
【0004】
しかしながら、近年、地球環境を守るため、ガソリン、エンジンオイルなどの漏れを防止するゴムシール部材にはより高い気密性が要求されている。より高い気密性を確保するためにはシール部材をより圧縮変形させ、高い圧縮代を設けることが有効であるため、合成ゴム製シール部材が使用されているが、ゴムシール部材に耐薬品性が不足する場合、ゴムシール部材がガソリンやエンジンオイルにより、膨潤あるいは溶解し、気密性を保持できなくなる場合がある。
【0005】
また、圧縮代を確保するためには、締め付け時のゴム表面の摩擦抵抗を低減する必要がある。摩擦抵抗が高いまま締め付けた場合、ゴムのよじれやゴムの摩耗が発生し、反ってシール性を損ねることがある。また、高い圧縮代を設けることでシール部材の相手側への接触圧力が高まり、前述したような固着の問題が発生する。
【0006】
特許文献1に記載のシリコーン樹脂又はシリコーンゴムからなる固着防止層は、固着防止効果はあるものの摩擦係数が高く、何らかのオイルまたはグリースなどの潤滑油をシール面に塗布し、組み付け作業が行なわれている。また、シリコーン系ポリマーであるがために、耐油性に乏しく、また、接着性に乏しく、接着性を確保するためにシランカップリング剤を使用しなければならないという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、固着防止効果が高く、耐油性に優れ、低摩擦な被膜を表面に有する耐熱、耐油性ゴムシール部材、およびこの表面被膜を形成するための塗料組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ゴムシール部材表面に固着を防止し、かつ、低摩擦係数を有し、耐油性にも優れた被膜を形成することを目的に研究を重ねた結果、樹脂成分と、硬化剤と、フッ素樹脂微粒子および/またはシリコーン微粒子とを含む塗料組成物を得て、この塗料組成物より形成される被膜をゴムシール部材表面に形成することによりその目的が達成され、上記した課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の塗料組成物は、ゴム弾性体の表面に塗布される塗料組成物であって、シリコーン成分と、熱硬化性樹脂成分と、これらシリコーン成分および熱硬化性樹脂成分から選ばれた少なくとも1つの成分と反応し得る官能基を有する硬化剤と、フッ素樹脂微粒子およびシリコーン微粒子から選ばれた少なくとも1つの微粒子とを含むことを特徴とする。
また、本発明の他の塗料組成物は、シリコーン変性熱硬化性樹脂成分と、このシリコーン変性熱硬化性樹脂成分と反応し得る官能基を有する硬化剤と、フッ素樹脂微粒子およびシリコーン微粒子から選ばれた少なくとも1つの微粒子とを含むことを特徴とする。
また、本発明の他の塗料組成物は、シリコーン成分と、熱硬化性樹脂成分と、シリコーン変性熱硬化性樹脂成分と、これらシリコーン成分、熱硬化性樹脂成分およびシリコーン変性熱硬化性樹脂成分から選ばれた少なくとも1つの成分と反応し得る官能基を有する硬化剤と、フッ素樹脂微粒子およびシリコーン微粒子から選ばれた少なくとも1つの微粒子とを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明のゴムシール部材は、上記塗料組成物より形成される表面被膜を有するゴムシール部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のゴムシール部材は、本発明の塗料組成物より形成される表面被膜を有するので、耐熱性、耐油性に優れ、シール部材と相手側との固着を防止することができる。また、低摩擦性能を有するので、高い圧縮代を得ることができ、気密性に優れたシール材が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に使用できる樹脂成分としての熱硬化性樹脂は、後述する硬化剤と反応し得る官能基を有する熱硬化性樹脂が使用できる。また、該官能基同士が反応して硬化する熱硬化性樹脂を使用できる。好ましい熱硬化性樹脂としては、接着性に優れたアクリル系樹脂をはじめとした水酸基を有するポリオール類やエポキシ樹脂類等が挙げられる。
【0012】
水酸基を有するポリオールとしては、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂、水酸基含有フッ素樹脂、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオール等の低分子のポリオール成分、あるいは熱可塑性ウレタン樹脂のいずれか1種類以上を用いることができる。水酸基含有フッ素樹脂はフッ素原料としてフッ素含有量が違う場合があるが、4フッ化エチレン、3フッ化塩化エチレンなどを使用したフッ素含有量が多いものが好ましい。これら水酸基を有するポリオールは、多数の市販品があり、それらを使用することができる。
【0013】
以下に具体例を例示する。
(1)アクリルポリオール
アクリディックA−801−P、A−811、A−817、A−823、A−837、A−848、A−814、A−810−45、44−127、52−614、57−773、A−829、55−129(以上、大日本インキ化学工業製)、アデカニューエースF15−20、F7−37、F18−62、F7−68、F13−35、Y52−13、L4−71、YG−108、YG−226、Y96−20、YG−240、F21−79、YT−650(以上、旭電化工業製)、UA−902、UA−905、UA−906(以上、武田薬品工業製)、デスモフェンA165BA/X、A365BA、A565X(以上、住化バイエルウレタン製)
(2)ポリエステルポリオール
バーノック11−408、D−210−80、D−161、J−517、D−128−60、13−438−60、D−131−60、D−142−60、D6−520、DE−140−70、D9−316、DT−1140−70、D6−439、D7−800、D−210−80、D−161(以上、大日本インキ化学工業製)、U−53、U−502、U−25(以上、武田薬品工業製)、ニッポラン1100、4009、4070(以上、日本ポリウレタン工業製)、デスモフェン670、1100、1300、181X(以上、住化バイエルウレタン製)
(3)ポリエーテルポリオール
アデカポリエーテルP−400、P−700、P−1000、P−2000、P−3000、BPX−33、BPX−55、T−400(以上、旭電化工業製)、E−550、E−551(以上、武田薬品工業製)、デスモフェン550U(以上、住化バイエルウレタン製)
(4)水酸基含有フッ素樹脂
ルミフロンLF−200、LF−400、LF−600(以上、旭硝子製)、セフラルコートA−600N、A−650X、A−402B(以上、セントラル硝子製)、フルオネートK−702、703、704、705(以上、大日本インキ化学工業製)、ゼッフルGK−510(ダイキン工業製)
(5)ポリテトラメチレンエーテルグリコール
PTMG1000、2000(以上、三菱化学製)、PTG−1000、2000(以上、保土ヶ谷化学工業製)
(6)ポリカーボネートジオール
ニッポラン981、980R(以上、日本ポリウレタン工業製)、プラクセルCD205、CD210(ダイセル化学工業製)
(7)ポリカプロラクトンジオール
プラクセル210N、220N(以上、ダイセル化学工業製)
(8)熱可塑性ウレタン樹脂
ニッポラン5033、5037、5109、5128、5196(以上、日本ポリウレタン工業製)
【0014】
本発明に熱硬化性樹脂として使用できるエポキシ樹脂には、ビスフェノールAタイプ、Fタイプなどの芳香族環を含むエポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、異節環型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂など、様々なエポキシ樹脂が使用可能である。ゴムシール部材への接着、追従性を考慮し、ゴム変性、ウレタン変性等により柔軟性を持たせたエポキシ樹脂なども使用できる。
以下に具体例を例示する。
エピコート828、1001、871(以上、ジャパンエポキシレジン製)、EP−4901、EPU−1395、EPR−4026、EPR−1508(以上、旭電化工業製)、YR−450、YR−207(以上、東都化成製)
【0015】
本発明に使用できるシリコーン成分は、シリコーン樹脂、シリコーンオイル、これらの混合物が使用できる。これらのシリコーン成分は、後述する硬化剤と反応し得る官能基を有するシリコーン成分が好ましく使用できる。また、該官能基同士が反応して硬化するシリコーン成分を使用できる。
【0016】
官能基を有するシリコーンオイルは表面の摩擦を低減し、また、固着を防止する目的で配合される。一般的に反応性シリコーンオイルとして公知のものが使用できる。アルコール変性、アミノ変性、エポキシ変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、カルビノール変性シリコーンオイルなどが例示できる。また、官能基の位置により、側鎖(変性)型、両末端(変性)型、片末端(変性)型などあるが、本発明においてはこれらの官能基を有したシリコーンオイルを使用することができる。好ましくは両末端型、あるいは、片末端型である。
【0017】
特に片末端反応性シリコーン成分は、熱硬化性樹脂等と反応し、被膜表面にシリコーンの特徴を付与することができるので好ましい。片末端反応性シリコーン成分は下記式(1)および(2)で表され、式(1)および(2)の反応性基の一例としては式(3)で表される。
【化1】

式(1)および(2)において、Rはシリコーンの非反応性末端を表し、式(3)において、R’としては、例えば、−C36OC24−、−C36OCH2C(CH2−)225、−C36−等が挙げられる。また、式(1)における数平均分子量としては800〜20000が好ましい。
【0018】
以下にシリコーン成分の具体例を例示する。
KF−8012、X−22−163B、X−22−162C、X−22−160AS、KF−6002、KF−6003、X−22−170DX、X−22−173DX、X−22−174DX、X−24−8201、X−22−2426、X−22−2404、X−22−176DX(以上、信越化学工業製)、BY16−853C、BY16−752、BY16−750(以上、東レダウコーニングシリコーン製)、TSF4771、TSF4750(以上、東芝シリコーン製)、サイラプレーンFM−3321、FM−4421、FM−7725、FM−0421、FM−DA21、FM−DA26、FM−0721、FM−0725、TM−0701(以上、チッソ製)
【0019】
本発明に使用できる樹脂成分としてのシリコーン変性熱硬化性樹脂は、片末端にメタクリル基を有するシリコーンマクロモノマーをラジカル重合して得られるシリコーングラフトアクリル樹脂やシリコーングラフトフッ素樹脂を好適に使用することができる。シリコーン変性熱硬化性樹脂は公知の技術により調製することができる。例えば、特開平4−175309、特開2000−80135、特開2000−119354(シリコーングラフトフッ素樹脂)、特開2000−119355(シリコーングラフトフッ素樹脂)、特開2000−136221(シリコーングラフトアクリル樹脂)、特開2000−136222(シリコーングラフトアクリル樹脂)、特開2001−151831などに記載の方法により調製できる。また市販品を使用できる。
【0020】
以下に具体例を例示する。
(1)シリコーングラフトアクリル樹脂
X−22−8004、X−22−8053、X−22−8095X(以上、信越化学工業製)、サイマックUS−210、US−270(以上、東亞合成製)、ZX−036(以上、富士化成工業製)
(2)シリコーングラフトフッ素樹脂
ZX−007C(以上、富士化成工業製)
【0021】
本発明に使用できる硬化剤は、上記樹脂成分等と反応し得る官能基を有する硬化剤であれば使用できる。また、硬化剤は、熱硬化性樹脂成分、シリコーン成分、シリコーン変性熱硬化性樹脂成分に含まれる官能基に対応して配合される。例えば、水酸基を有する熱硬化性樹脂であれば官能基としてのイソシアネート基を有するイソシアネート化合物など、エポキシ樹脂であれば官能基としてのアミノ基を有するアミン系硬化剤、または官能基としての酸無水物基を有する酸無水物系硬化剤などを使用することができる。
イソシアネート化合物としては、TDI(トリレンジイソシアネート)、MDI(4,4’ジフェニルメタンジイソシアネート)、NDI(1,5−ナフタレンジイソシアネート)、TODI(トリジンイソシアネート)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)等のポリイソシアネート成分のいずれか1種以上もしくはその変性体あるいは誘導体であるウレタンアダクトタイプ、ビュレットタイプ、ブロックイソシアネートタイプ等から1種以上を組み合わせ、使用することができる。また、硬化反応を制御するために有機錫化合物などウレタン樹脂に通常使用される触媒を添加することもできる。
【0022】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、脂肪族アミン、脂環および環状アミン、芳香族アミン、ポリアミノアミド、変性ポリアミンであるエポキシ化合物付加ポリアミン、マイケル付加ポリアミン、マンニッヒ付加ポリアミンなど、酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタン、第三アミン化合物、イミダゾール化合物、イソシアネート化合物などの従来公知のエポキシ樹脂の各種硬化剤を使用することができる。好ましくは、ゴム変性やウレタン変性のポリアミドアミンである。また、無水メチルハイミック酸などの酸無水物を使用するこができる。
【0023】
本発明に使用できるフッ素樹脂微粒子としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル等を使用することができる。好ましくは、ポリテトラフルオロエチレンである。使用するフッ素樹脂粒子の粒径は、特に限定しないが、平均粒径で0.05〜20μm程度が好ましく、特に10μm以下が好ましい。20μmをこえるとシール部材の気密性が失われることがある。本発明においてフッ素樹脂微粒子は、固着防止効果と表面の摩擦低減に寄与するものと考えられる。
【0024】
本発明に使用できるシリコーン微粒子は、公知の材料を使用することができる。一般的にはシリコーンレジンパウダー、シリコーンゴムパウダーなどが知られているが、アクリル・シリコーン共重合体の微粒子などシリコーン成分を含む微粒子を使用することができる。好ましくはシリコーンゴムパウダー、アクリル・シリコーン共重合体の微粒子であり、平均粒径で0.05〜20μm程度が好ましく、特に5μm以下が好ましい。20μmをこえるとシール部材の気密性が失われることがある。
本発明においてシリコーン微粒子は、低摩擦性、離型性、耐寒性、応力緩和によるヒビ割れ防止効果があると考えられる。
【0025】
本発明の塗料組成物における固形分の配合割合としては、樹脂成分とその硬化剤とシリコーン成分とを合わせた樹脂100重量部に対して、シリコーン成分は0.3〜10重量部が好ましく、更に好ましくは1〜5重量部である。樹脂成分としては、熱硬化性樹脂成分、シリコーン変性熱硬化性樹脂成分、およびこれらの混合樹脂成分が挙げられる。シリコーン成分が0.3重量部未満の場合、固着防止効果が小さく、10重量部をこえると被膜強度が低下し、耐摩耗性が低下する場合がある。官能基を有する熱硬化性樹脂と官能基を有するシリコーン成分と硬化剤の配合量は、それぞれの官能基当量に合わせ、配合することが好ましい。
例えば、水酸基を有するポリオールと水酸基を有するシリコーンオイル、イソシアネート化合物を混合使用する場合、水酸基を有するシリコーングラフトアクリル樹脂とイソシアネート化合物を混合使用する場合は、水酸基(−OH)とイソシアネート基(−NCO)との当量比で1.0:0.8〜1.5の範囲が好ましく、1.0:0.95〜1.2の範囲が特に好ましい。上記当量比が1.0:0.8未満の場合、耐薬品性の低下を生ずることがあり、1.0:1.5をこえると被膜のゴムシール部材への追従性が低下することがある。エポキシ樹脂と硬化剤を混合使用する場合は、エポキシ樹脂のエポキシ当量と硬化剤の活性水素当量の当量比が1.0±0.1程度であることが好ましい。
【0026】
フッ素樹脂微粒子および/またはシリコーン微粒子の配合割合は、上記樹脂成分とその硬化剤とを合わせた樹脂100重量部に対して、総量で10〜200重量部が好ましく、特に好ましくは、20〜150重量部である。なお、シリコーン微粒子の配合量はバインダー樹脂100重量部に対して、1〜100重量部が好ましく、5〜40重量部が特に好ましい。
【0027】
本発明の塗料組成物は、上記固形分成分を溶媒に溶解または分散させて得られる。溶媒としては、有機溶媒、水その他限定されないが、使用する樹脂の溶解性、相溶性を考慮して使用する。有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、n−ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、ミネラルスピリット等の脂肪族,脂環族炭化水素類等を挙げることができ,これらの溶媒は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
また、本発明の塗料の樹脂固形分は特に制限されるものではなく、用途、塗装方法によって適宜選択されるが、通常5〜80重量%とすることが好ましい。本発明の塗料における硬化条件も特に制限されないが、通常、室温〜250℃の範囲で1分間〜7日間程度の硬化条件により塗装できる。さらに本発明の塗料は必要に応じて各種添加剤、例えば、染料、補強剤、顔料、分散剤、レベリング剤、界面活性剤、シランカップリング剤などを使用することができる。
【0029】
本発明のゴムシール部材は、上記塗料組成物を塗布・乾燥させて得られる被膜を有する。
被膜を形成する被着体としてのゴムシール部材の材質としては、天然ゴム、合成ゴムが挙げられる。合成ゴムとしは、クロロプレンゴム、アクリルゴム、NBR、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム等の熱加硫ゴムやオレフィン系、スチレン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系などの熱可塑性のエラストマー等が挙げられるが、アクリルゴム、NBR、フッ素ゴムが特に好ましい。
【0030】
ゴムシール部材の使用用途としては、油、ガソリンなどをシールするパッキンなどが挙げられるが、具体的にはオイルフィルターパッキンやフューエルキャップパッキンなど内燃機に関連するシール部材が好ましい。
【0031】
本発明のゴムシール部材を作製するにあたっては、例えば被膜を形成する塗料組成物を調製し、スプレーガンなど一般的な塗装、塗工装置により塗装し、硬化させる方法が容易であるが、被膜をより均一に形成できれば特に方法は問わない。被膜は、80〜230℃で30〜60分でゴムシール部材に応じた硬化条件であれば、特に限定されない。但し、ゴムシール部材の耐熱温度を考慮する必要がある。例えば、フッ素ゴムの場合は硬化条件の上限温度は230℃、アクリルゴムは180℃、NBRは150℃程度とすることが好ましい。
また、被膜の厚さは、3〜50μmが好ましく、5〜30μmが特に好ましい。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を具体例を上げて説明するが、これらの具体例は、本発明の理解のために記載するものであって、本発明を限定するものではない。
各実施例および比較例で使用した材料は以下の通りである。なお、表1および表2において、例えば、熱硬化性樹脂1は下記「熱硬化性樹脂:」の欄の「1.ポリエステルポリオール樹脂」を表す。
(A)樹脂成分
熱硬化性樹脂:
1.ポリエステルポリオール樹脂(住化バイエルウレタン製、デスモフェン670BA)
2.アクリルポリオール樹脂(大日本インキ化学工業製、アクリディックA−811)
3.ポリテトラメチレンエーテルグリコール樹脂(三菱化学製、PTMG1000)
4.水酸基含有フッ素樹脂(旭硝子製、ルミフロンLF−601)
5.水酸基含有フッ素樹脂(ダイキン工業製、ゼッフルGK−510)
6.ゴム変性エポキシ樹脂(旭電化工業製、アデカレジンEPR−21)
シリコーン成分:
1.片末端変性シリコーンオイル(信越化学工業製、X−22−176DX)
2.片末端変性シリコーンオイル(チッソ製、サイラプレーンFM−0421)
3.片末端変性シリコーンオイル(チッソ製、サイラプレーンFM−DA26)
4.片末端変性シリコーンオイル(信越化学工業製、X−22−173DX)
シリコーン変性熱硬化性樹脂:
1.シリコーングラフトフッ素樹脂(富士化成工業製、ZX−007C)
2.シリコーングラフトアクリル樹脂(富士化成工業製、ZX−036)
3.シリコーングラフトアクリル樹脂(東亞合成製、サイマックUS−210)
(B)硬化剤
1.ヘキサメチレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業製、コロネートHK)
2.ウレタンアダクトイソシアネート(大日本インキ化学工業製、DN−955)
3.ゴム変性ポリアミドアミン(旭電化工業製、アデカハードナーEH3995)
(C)樹脂微粒子成分
フッ素樹脂微粒子
1.ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子(住友スリーエム製、ダイニオンTF−9207)
シリコーン微粒子
1.シリコーンゴムパウダー(信越化学工業製、KMP−594)
2.アクリル・シリコーン共重合体微粒子(日信化学工業製、シャリーヌR170S)
比較例に用いた成分
シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニングシリコーン、SR−2306)
二硫化モリブデン(ダイゾー製、M−5)
黒鉛(富士黒鉛工業製、BF−3A)
シランカップリング剤(信越化学工業製、KBM803)
【0033】
実施例1
ポリエステルポリオール樹脂(住化バイエルウレタン製、デスモフェン670BA)を62.3重量部、および片末端変性シリコーンオイル(信越化学工業製、X−22−176DX)2.9重量部を有機溶媒(トルエン/メチルエチルケトン=1/1)で希釈し、その中にポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子(住友スリーエム製、ダイニオンTF−9207)50.0重量部およびシリコーンゴムパウダー(信越化学工業製、KMP−594)30.0重量部を均一になるように分散した後、硬化触媒としてジブチル錫0.12重量部とヘキサメチレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業製、コロネートHK)34.8重量部とを加え、均一に攪拌して塗料組成物を得た。この塗料組成物の固形分(測定条件:105℃×2時間)は、25重量%であった。
【0034】
得られた塗料組成物を用いてゴムシール部材に対応する試験片を作製して以下の方法で評価した。
試験片の作製
調製された塗料組成物をアクリルゴムあるいはフッ素ゴムの試験片(70×35×2mm、硬度Hs65°)にエアスプレーで塗膜厚が10μmになる様にコーティングし、80℃×30時間の硬化条件で焼付処理を行ない、その後室温で2日間放置した。
摩擦摩耗試験
上記の試験片を使用し、摩擦摩耗試験機 HEIDON TYPE14(新東科学(株)製)を用い、動摩擦係数を測定する。試験条件は、荷重100gf、速度10mm/sec、相手材はSUJ−2(φ3/8インチ)とした。
【0035】
固着試験
試験片の被膜面とSPCC−SB(相手材)を2MPaで圧着し、恒温層に所定の温度×時間、雰囲気下で放置後、25℃に冷却し、固着状態を確認した。温度条件は150℃(アクリルゴムの試験片を使用)、180℃(フッ素ゴムの試験片を使用)でそれぞれ72時間とした。雰囲気は乾燥状態と油(エンジンオイル5W−30 ダイハツ工業(株)純正)浸漬状態とした。固着状態の判断基準は、試験片と相手材を引き離す際に、外的な力を必要としないものを◎、外的な力をほとんど必要とせず容易に引き離せる状態を○、少々固着しているがある程度容易に引き離せる状態を△、引き離しが容易ではないか、または、引き離し後に相手材に被膜の一部が移着しているものを×と判定した。評価結果を表1に示す。
【0036】
実施例2〜実施例15
表1に示す組成に従って、熱硬化性樹脂、シリコーン変性熱硬化性樹脂、シリコーン成分、硬化剤、フッ素樹脂微粉末、シリコーン樹脂微粉末を配合し、実施例1に準じて塗料組成物を得た。硬化条件は、それぞれの最適硬化条件で行ない、実施例1と同一の評価をした。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
比較例1〜6
表2の組成に従い、実施例1の溶媒を用いて、実施例1の方法に準じて塗料組成物を調製し、実施例1と同一の評価を行ない、結果を表2に示す。なお、比較例1、3、4はフッ素樹脂同様固体潤滑剤として知られる二硫化モリブデン、黒鉛を配合した。
【0039】
【表2】

【0040】
表1および表2に示すように各実施例は、各比較例よりも動摩擦係数および固着試験特性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の塗料組成物を塗布、乾燥させたゴムシール部材は、耐熱性、耐油性に優れ、摩擦係数の低い被膜が形成され、固着防止効果が高いという効果がある。その結果、高い気密性が要求される自動車用パッキンなどのシール部材に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム弾性体の表面に塗布される塗料組成物であって、該樹脂塗料は、シリコーン成分と、熱硬化性樹脂成分と、これらシリコーン成分および熱硬化性樹脂成分から選ばれた少なくとも1つの成分と反応し得る官能基を有する硬化剤と、フッ素樹脂微粒子およびシリコーン微粒子から選ばれた少なくとも1つの微粒子とを含むことを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
ゴム弾性体の表面に塗布される塗料組成物であって、該樹脂塗料は、シリコーン変性熱硬化性樹脂成分と、このシリコーン変性熱硬化性樹脂成分と反応し得る官能基を有する硬化剤と、フッ素樹脂微粒子およびシリコーン微粒子から選ばれた少なくとも1つの微粒子とを含むことを特徴とする塗料組成物。
【請求項3】
ゴム弾性体の表面に塗布される塗料組成物であって、該樹脂塗料は、シリコーン成分と、熱硬化性樹脂成分と、シリコーン変性熱硬化性樹脂成分と、これらシリコーン成分、熱硬化性樹脂成分およびシリコーン変性熱硬化性樹脂成分から選ばれた少なくとも1つの成分と反応し得る官能基を有する硬化剤と、フッ素樹脂微粒子およびシリコーン微粒子から選ばれた少なくとも1つの微粒子とを含むことを特徴とする塗料組成物。
【請求項4】
表面被膜を有するゴムシール部材であって、前記表面被膜は請求項1、請求項2または請求項3記載の塗料組成物より形成される被膜であることを特徴とするゴムシール部材。

【公開番号】特開2006−152169(P2006−152169A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−346878(P2004−346878)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(594143433)アクロス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】