説明

塗料組成物

【課題】塗膜表面への汚染物質の付着を抑制することができ、十分な遮熱機能を発揮することができる塗料組成物を提供する。
【解決手段】塗料用樹脂の固形分100重量部に対し、赤外線透過性粉体及び/または赤外線反射性粉体を1〜200重量部、シリケート化合物をSiO換算で0.1〜20重量部含有する構成とし、前記シリケート化合物として、炭素数1〜2の直鎖アルキル基と炭素数3以上の分岐アルキル基が、95:5〜50:50の当量比率で混在する変性シリケート化合物を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮熱性に優れた塗料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部においては、コンクリート建造物や冷房等から排出される人工放射熱などにより、都市独特の気候が作り出されている。特に夏期において都市部における屋外の温度上昇は著しく、ヒートアイランド現象と呼ばれる問題を引き起こしている。これに対し、建築物内部においては、冷房の使用によって屋内温度を下げることが頻繁に行われるが、冷房の多用は消費電力エネルギーを増加させるだけでなく、室外機からの排気によって屋外の温度上昇を助長している。
【0003】
建築物の温度上昇を抑制する方法として、屋根、屋上、外壁等の建築物外装面基材に遮熱塗料を塗装する方法が知られている。このような遮熱塗料の一例として、特許文献1には、ビヒクル及び顔料を主成分とする塗料において、粒径50μm以下の太陽熱遮蔽顔料を塗料固形分中2〜60重量%含む太陽熱遮蔽塗料組成物が記載されている。また、特許文献2には、顔料として、近赤外領域で高い太陽放射反射率を有する粒径50μm以下の赤、橙、黄、緑、青、紫系顔料のいずれか2種以上を用い、加法混色により無彩色である黒に調色した太陽熱遮蔽塗料組成物が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平1−121371号公報
【特許文献2】特開平4−255769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の如き特許文献に記載の遮熱塗料では、汚染物質に対する抵抗性が考慮されていない。特に最近は、都心や都市近郊において、自動車等からの排出ガスにより、大気中に油性の汚染物質が浮遊している状況である。これら汚染物質は、太陽光中の赤外線の吸収能が非常に高い。そのため、汚染物質が遮熱塗料の塗膜表面に付着すると蓄熱場として作用し、遮熱塗料本来の遮熱機能が損われ、塗膜の温度上昇を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、塗膜表面への汚染物質の付着を抑制することができ、十分な遮熱機能を発揮することができる塗料組成物を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記のような従来技術の問題点に鑑み鋭意研究を行った結果、塗料用樹脂と、赤外線透過性粉体及び/または赤外線反射性粉体と、特定のアルキル鎖が混在する変性シリケートとを主成分とする塗料組成物に想到し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち本発明の塗料組成物は以下の特徴を有するものである。
1.塗料用樹脂の固形分100重量部に対し、赤外線透過性粉体及び/または赤外線反射性粉体を1〜200重量部、シリケート化合物をSiO換算で0.1〜20重量部含有し、前記シリケート化合物として、
炭素数1〜2の直鎖アルキル基と炭素数3以上の分岐アルキル基が、95:5〜50:50の当量比率で混在する変性シリケート化合物
を含むことを特徴とする塗料組成物。
2.前記シリケート化合物として、
炭素数1〜2の直鎖アルキル基と炭素数3〜6の分岐アルキル基が、95:5〜50:50の当量比率で混在する変性シリケート化合物
を含むことを特徴とする1.記載の塗料組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の塗料組成物では、塗膜表面への汚染物質の付着を抑制することができ、十分な遮熱機能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0011】
本発明の塗料組成物は、塗料用樹脂と、赤外線透過性粉体及び/または赤外線反射性粉体と、変性シリケート化合物とを主成分とするものである。
【0012】
塗料用樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂等、あるいはこれらの複合系等を挙げることができる。これらは1種または2種以上で使用することができる。このような塗料用樹脂の形態としては、溶剤可溶性樹脂、非水分散性樹脂、水溶性樹脂、水分散性樹脂、無溶剤型樹脂等が挙げられる。
【0013】
このうち、溶剤可溶性樹脂及び/または非水分散性樹脂としては、非水系溶剤を媒体とするものであって、当該全溶剤のうち50重量%以上(好ましくは60重量%以上)が脂肪族炭化水素である所謂弱溶剤形樹脂が好適である。かかる弱溶剤形樹脂は、芳香族炭化水素系溶剤を主溶剤とする強溶剤形樹脂に比べ、低毒性であり、作業上の安全性が高く、さらには既存塗膜上に塗装を行った際のリフティング発生を抑制できる等の特徴を有するものである。脂肪族炭化水素としては、例えば、n−ヘキサン、n−ペンタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン等が挙げられ、この他、テルピン油やミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素系溶剤を使用することもできる。特に、トルエン、キシレンを含まず、引火点21℃以上の第2石油類に該当するものが、安全衛生上好ましい。本発明では、塗料用樹脂としてかかる弱溶剤形樹脂を使用した場合において、特に優れた効果を得ることができる。
【0014】
本発明における塗料用樹脂は架橋反応性を有するものであってもよい。塗料用樹脂が架橋反応型樹脂である場合は、塗膜の強度、耐水性、耐候性、密着性等を高めることができる。架橋反応型樹脂は、それ自体で架橋反応を生じるもの、あるいは別途混合する架橋剤によって架橋反応を生じるもののいずれであってもよい。このような架橋反応性は、例えば、水酸基とイソシアネート基、カルボニル基とヒドラジド基、エポキシ基とアミノ基、アルド基とセミカルバジド基、ケト基とセミカルバジド基、アルコキシル基どうし、カルボキシル基と金属イオン、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジン基、カルボキシル基とオキサゾリン基等の反応性官能基を組み合わせることによって付与することができる。この中でも水酸基−イソシアート基架橋反応型樹脂が好適である。
【0015】
本発明における塗料用樹脂のガラス転移温度は、通常−20〜80℃(好ましくは−10〜60℃)程度である。
【0016】
本発明組成物は、赤外線反射性粉体及び/または赤外線透過性粉体を含有する。本発明では、かかる成分を含有することにより、塗料を所望の色に着色しつつ、太陽光による塗膜の蓄熱を抑制することが可能となる。
【0017】
具体的に、赤外線反射性粉体としては、例えば、アルミニウムフレーク、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化インジウム、アルミナ、鉄クロム複合酸化物、マンガンビスマス複合酸化物、マンガンイットリウム複合酸化物等が挙げられる。
一方、赤外線透過性粉体としては、例えば、ペリレン顔料、アゾ顔料、黄鉛、弁柄、朱、チタニウムレッド、カドミウムレッド、キナクリドンレッド、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、コバルトブルー、インダスレンブルー、群青、紺青等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。一般に、赤外線反射性粉体を使用するのみでは、表出可能な色相に限界があるが、これら赤外線透過性粉体を適宜組み合わせることにより、様々な色相の塗膜を形成することが可能となる。
【0018】
本発明組成物では、赤外線反射性粉体及び/または赤外線透過性粉体を含むことにより赤外線反射率が20%以上(好ましくは40%以上、さらに好ましくは55%以上)の塗膜、または赤外線透過率が20%以上(好ましくは40%以上、さらに好ましくは55%以上)の塗膜を形成することができる。なお、ここで言う赤外線反射率とは、波長800〜2100nmの光に対する分光反射率を測定し、その平均値を算出することにより得られる値である。赤外線透過率とは、波長800〜2100nmの光に対する分光透過率を測定し、その平均値を算出することにより得られる値である。
【0019】
赤外線反射性粉体及び/または赤外線透過性粉体の混合量(両成分の合計量)は、塗料用樹脂の固形分100重量部に対し、通常1〜200重量部、好ましくは2〜100重量部である。かかる範囲内であれば、所望の色に塗料を調色することができ、塗膜の割れ防止性等においても有利な効果を得ることができる。
【0020】
本発明の塗料組成物は、シリケート化合物として、炭素数1〜2の直鎖アルキル基(以下単に「直鎖アルキル基」ともいう)と炭素数3以上の分岐アルキル基(以下単に「分岐アルキル基」ともいう)が混在する変性シリケート化合物を含むものである。本発明では、かかる変性シリケート化合物の作用により塗膜表面の親水性が高まり、塗膜表面への汚染物質の付着を抑制することができ、ひいては塗膜の遮熱性能を十分に発揮させることができる。
【0021】
変性シリケート化合物における直鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基から選ばれる1種以上が使用できる。この中でも本発明ではメチル基が好適である。
一方、分岐アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソヘプチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、イソオクチル基等が挙げられる。本発明では、この中でも炭素数3〜6の分岐アルキル基が好適であり、とりわけ炭素数4の分岐ブチル基が好適である。
【0022】
具体的に、直鎖アルキル基と分岐アルキル基を有する変性シリケートは、以下に例示する方法により製造することができる。
【0023】
(1)一般式Si(OR)(OR)(OR)(OR
(式中、R〜Rは、炭素数1〜2の直鎖アルキル基と、炭素数3以上の分岐アルキル基が混在しているものとする)で表されるテトラアルコキシシランを加水分解縮合させる。縮合方法としては公知の方法が採用でき、縮合後の平均縮合度は2〜100(好ましくは4〜20)程度とすればよい。この場合、縮合の際に他のテトラアルコキシシランを混合して縮合することもできる。上記一般式で表される化合物の具体例としては、例えば、モノイソプロポキシトリメトキシシラン、モノイソプロポキシトリエトキシシラン、モノイソブトキシトリメトキシシラン、モノイソブトキシトリエトキシシラン、ジイソブトキシジメトキシシラン等が挙げられる。
【0024】
(2)テトラメトキシシラン縮合物及び/またはテトラエトキシシラン縮合物に、炭素数3以上の分岐アルキル基を有するアルコールを反応(エステル交換反応)させる。この方法におけるアルコールとしては、例えば、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソアミルアルコール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール等が挙げられる。テトラメトキシシラン縮合物及び/またはテトラエトキシシラン縮合物としては、平均縮合度2〜100(好ましくは4〜20)程度のものを使用すればよい。
【0025】
(3)テトラメトキシシラン及び/またはテトラエトキシシランに、水、及び炭素数3以上の分岐アルキル基を有するアルコールを反応させる。この方法では、加水分解縮合反応とエステル交換反応を並行して行うことができる。加水分解縮合反応による平均縮合度は2〜100(好ましくは4〜20)程度とすればよい。アルコールとしては、上記(2)と同様の化合物が使用できる。
【0026】
本発明における変性シリケート化合物は、炭素数1〜2の直鎖アルキル基と炭素数3以上の分岐アルキル基が、通常95:5〜50:50、好ましくは90:10〜55:45、より好ましくは85:15〜60:40の当量比率で混在するものである。直鎖アルキル基と分岐アルキル基の混在比率がかかる範囲内であれば、本発明の効果を十分に発揮することができる。直鎖アルキル基と分岐アルキル基の比率が上記範囲から外れる場合は、塗膜表面の親水性発現が不十分となり、十分な耐汚染効果を得ることができない。
上記(1)〜(3)に例示した変性シリケート化合物の製造方法では、直鎖アルキル基と分岐アルキル基との当量比率が上記範囲内となるように、原料化合物の種類や量を適宜調整すればよい。
【0027】
本発明では、上記変性シリケート化合物以外のシリケート化合物を併用することもできるが、シリケート化合物全体の80重量%以上(好ましくは95重量%以上)が上記変性シリケート化合物で構成されるようにすることが望ましい。
【0028】
本発明では、上述の如き特定の変性シリケートを使用することにより、従来技術に比べシリケート化合物が少量であっても十分な親水化機能ひいては耐汚染性効果を得ることができる。そのため、形成塗膜の下地への追従性、耐割れ性等の点においても有利である。すなわち、本発明によれば、シリケート化合物を相対的に減量することが可能となり、実用上極めて有用な塗料設計を行うことができる。
【0029】
シリケート化合物の混合比率は、塗料用樹脂の固形分100重量部に対して、SiO換算で0.1〜20重量部(好ましくは0.3〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部)となる範囲内で設定すればよい。シリケート化合物の混合比率が0.1重量部未満では、塗膜に親水性が付与されないため耐汚染性が不十分となる。逆に20重量部を越える場合は、形成塗膜の下地への追従性が不十分となり、割れ等が生じやすくなる。
【0030】
なお、本発明におけるSiO換算とは、アルコキシシランやシリケートなどのSi−O結合をもつ化合物を、完全に加水分解した後に、900℃で焼成した際にシリカ(SiO)となって残る重量分にて表したものである。
一般に、アルコキシシランやシリケートは、水と反応して加水分解反応が起こりシラノールとなり、さらにシラノール同士やシラノールとアルコキシにより縮合反応を起こす性質を持っている。この反応を究極まで行うと、シリカ(SiO)となる。これらの反応は
RO(Si(OR)O)R+(n+1)HO→nSiO+(2n+2)ROH
(Rはアルキル基を示す。nは整数。)
という反応式で表される。本発明におけるSiO換算は、この反応式をもとに残るシリカ成分の量を換算したものである。
【0031】
本発明組成物では、上述の成分に加えアミン化合物を混合することができる。かかるアミン化合物を混合することにより、本発明組成物を塗り重ね(リコート)する際の密着性を高めることができる。さらに、かかるアミン化合物は、上記変性シリケート化合物との相互作用により、耐汚染性、硬化性等の物性向上にも寄与するものである。
【0032】
アミン化合物としては、例えば、エチルアミン、ジメチルアミン、ジアミルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリフェニルアミン、ジメチルドデシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ピリジン、モルホリン等のほか、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルフェニルエタノールアミン等のアルカノール基含有アミン化合物、トリエチレンジアミン(〔2,2,2〕ジアザビシクロオクタン)、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン等のアミノアルキル基含有アミン化合物、アミノメチルトリエトキシシラン、ジアミノメチルジエトキシシラン、γ−アミノイソブチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有アミン化合物等が挙げられる。
【0033】
また本発明では、アミン化合物として、ビス(2,2,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等の光安定剤を使用することもできる。
【0034】
アミン化合物としては、とりわけ、塩基解離定数pKbが3以上11以下(好ましくは4以上8以下)であるアミン化合物が好適である。このような化合物を使用することにより、リコート性、耐汚染性、硬化性等の物性をいっそう高めることができる。
【0035】
アミン化合物の混合比率は、塗料用樹脂の固形分100重量部に対し、通常0.01〜20重量部、好ましくは0.02〜5重量部である。かかる範囲内であれば、リコート性、耐汚染性、硬化性性等において十分な効果を得ることができ、ポットライフ確保等の点においても好適である。
【0036】
本発明組成物には、通常塗料に使用可能な各種添加剤を配合することも可能である。かかる添加剤としては、例えば、硬化剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、触媒、硬化促進剤、脱水剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0037】
本発明組成物は、上記各成分を構成成分とするものであれば、その形態については特に限定されないが、通常は、塗料用樹脂、赤外線透過性粉体及び/または赤外線反射性粉体を含む主剤と、変性シリケート化合物を含む硬化剤からなる2液型塗料とすることが望ましい。このような形態であれば、塗料の安定性確保、耐汚染性能の発現等の点で好適である。
塗料用樹脂が架橋反応基を有するものであって、当該反応基と反応可能な架橋剤を使用する場合、該架橋剤は硬化剤に混合すればよい。具体的に、塗料用樹脂が水酸基を有するものである場合には、イソシアネート化合物を硬化剤に混合することができる。
【0038】
本発明組成物は、屋根、屋上、外壁等の建築物外装面の表面仕上げに使用することができるものである。外装面の基材としては、特に限定されず、例えば、コンクリート、モルタル、金属、プラスチック、あるいはスレート板、押出成形板、サイディングボード等の各種ボード類等が挙げられる。本発明組成物は、このような基材を有する既存の建築物に対して塗装することができる。塗装方法としては、ハケ塗り、スプレー塗装、ローラー塗装等の方法を適宜採用することができる。各種ボード類については、予め工場等でプレコートすることもできる。
【0039】
上述の外装面基材は、何らかの表面処理層を有するものであってもよい。かかる表面処理層は、一般的にシーラー、サーフェーサー、フィラー等と呼ばれる表面処理材によって形成することができる。本発明では、赤外線反射性粉体を含有する表面処理材が好適である。このような表面処理材を用いることにより、外装面基材の蓄熱を抑制し、遮熱効果を高めることができる。
【実施例】
【0040】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0041】
(変性シリケート化合物の製造)
・変性シリケート(1)
重量平均分子量1000、平均縮合度約8、不揮発分100%、シリカ残量比率56重量%のメチルシリケート(以下「テトラアルコキシシラン縮合物(1)」という)100重量部に対して、イソブチルアルコール52重量部と、触媒としてジブチルスズジラウレート0.03重量部を添加し、混合後、75℃で8時間脱メタノール反応を行い、変性シリケート(1)を製造した。この変性シリケート(1)におけるメチル基とイソブチル基との当量比率は62:38であり、900℃にて焼成して得られたシリカ残量比率は43重量%であった。
【0042】
・変性シリケート(2)
テトラアルコキシシラン縮合物(1)100重量部に対して、n−ブチルアルコール52重量部と、触媒としてジブチルスズジラウレート0.03重量部を添加し、混合後、75℃で8時間脱メタノール反応を行い、変性シリケート(2)を製造した。この変性シリケート(2)におけるメチル基とn−ブチル基との当量比率は62:38であり、900℃にて焼成して得られたシリカ残量比率は43重量%であった。
【0043】
(主剤の製造)
・主剤(1)
非水分散形アクリルポリオール(水酸基価50KOHmg/g、重量平均分子量80000、ガラス転移温度38℃、固形分50重量%、媒体:ミネラルスピリット、脂肪族炭化水素70重量%)200重量部に対し、フタロシアニングリーン8重量部、フタロシアニンブルー3重量部、ペリレンレッド5重量部、ベンズイミダゾロンイエロー4重量部、ミネラルスピリット80重量部、アマイドワックス系増粘剤4重量部、シリコーン系消泡剤1重量部を常法にて均一に混合・撹拌することにより、主剤(1)を製造した。
【0044】
・主剤(2)
非水分散形アクリルポリオール(水酸基価50KOHmg/g、重量平均分子量80000、ガラス転移温度38℃、固形分50重量%、媒体:ミネラルスピリット、脂肪族炭化水素70重量%)200重量部に対し、フタロシアニングリーン8重量部、フタロシアニンブルー3重量部、ペリレンレッド5重量部、ベンズイミダゾロンイエロー4重量部、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(分子量508、pKb5.5)2重量部、ミネラルスピリット80重量部、アマイドワックス系増粘剤4重量部、シリコーン系消泡剤1重量部を常法にて均一に混合・撹拌することにより、主剤(2)を製造した。
【0045】
・主剤(3)
非水分散形アクリルポリオール(水酸基価50KOHmg/g、重量平均分子量80000、ガラス転移温度38℃、固形分50重量%、媒体:ミネラルスピリット、脂肪族炭化水素70重量%)200重量部に対し、フタロシアニングリーン20重量部、ミネラルスピリット80重量部、アマイドワックス系増粘剤4重量部、シリコーン系消泡剤1重量部を常法にて均一に混合・撹拌することにより、主剤(3)を製造した。
【0046】
・主剤(4)
非水分散形アクリルポリオール(水酸基価50KOHmg/g、重量平均分子量80000、ガラス転移温度38℃、固形分50重量%、媒体:ミネラルスピリット、脂肪族炭化水素70重量%)200重量部に対し、フタロシアニンブルー20重量部、ミネラルスピリット80重量部、アマイドワックス系増粘剤4重量部、シリコーン系消泡剤1重量部を常法にて均一に混合・撹拌することにより、主剤(4)を製造した。
【0047】
・主剤(5)
非水分散形アクリルポリオール(水酸基価50KOHmg/g、重量平均分子量80000、ガラス転移温度38℃、固形分50重量%、媒体:ミネラルスピリット、脂肪族炭化水素70重量%)200重量部に対し、カーボンブラック20重量部、ミネラルスピリット80重量部、アマイドワックス系増粘剤4重量部、シリコーン系消泡剤1重量部を常法にて均一に混合・撹拌することにより、主剤(5)を製造した。
【0048】
(硬化剤の製造)
・硬化剤(1)
イソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート(不揮発分100重量%、NCO含有量21重量%)40重量部に対し、ソルベッソ100(エクソンケミカル社製)40重量部、変性シリケート(1)20重量部を均一に混合することにより、硬化剤(1)を製造した。
【0049】
・硬化剤(2)
イソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート(不揮発分100重量%、NCO含有量21重量%)40重量部に対し、ソルベッソ100(エクソンケミカル社製)40重量部、変性シリケート(2)20重量部を均一に混合することにより、硬化剤(2)を製造した。
【0050】
・硬化剤(3)
イソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート(不揮発分100重量%、NCO含有量21重量%)40重量部に対し、ソルベッソ100(エクソンケミカル社製)10重量部、変性シリケート(2)50重量部を均一に混合することにより、硬化剤(3)を製造した。
【0051】
・硬化剤(4)
イソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート(不揮発分100重量%、NCO含有量21重量%)40重量部に対し、ソルベッソ100(エクソンケミカル社製)45重量部、テトラアルコキシシラン縮合物(1)15重量部を均一に混合することにより、硬化剤(4)を製造した。
【0052】
・硬化剤(5)
イソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート(不揮発分100重量%、NCO含有量21重量%)40重量部に対し、ソルベッソ100(エクソンケミカル社製)60重量部を均一に混合することにより、硬化剤(5)を製造した。
【0053】
(塗料の製造)
・塗料A
上記方法にて製造した主剤(1)と硬化剤(1)を86:14の重量比率で均一に混合して塗料Aを得た。この塗料Aにおける変性シリケート化合物の混合比率は、樹脂固形分100重量部に対してSiO換算で4.3重量部であった。また、塗料Aの乾燥塗膜(40μm)につき分光光度計(島津製作所製「UV−3100」)を用いて赤外線透過率を測定したところ、その値は69%であった。
【0054】
・塗料B
上記方法にて製造した主剤(2)と硬化剤(1)を86:14の重量比率で均一に混合して塗料Bを得た。この塗料Bにおける変性シリケート化合物の混合比率は、樹脂固形分100重量部に対してSiO換算で4.3重量部であった。また、塗料Bの赤外線透過率は69%であった。
【0055】
・塗料C
上記方法にて製造した主剤(3)と硬化剤(1)を86:14の重量比率で均一に混合して塗料Cを得た。この塗料Cにおける変性シリケート化合物の混合比率は、樹脂固形分100重量部に対してSiO換算で4.3重量部であった。また、塗料Cの赤外線透過率は65%であった。
【0056】
・塗料D
上記方法にて製造した主剤(4)と硬化剤(1)を86:14の重量比率で均一に混合して塗料Dを得た。この塗料Dにおける変性シリケート化合物の混合比率は、樹脂固形分100重量部に対してSiO換算で4.3重量部であった。また、塗料Dの赤外線透過率は72%であった。
【0057】
・塗料E
上記方法にて製造した主剤(1)と硬化剤(2)を86:14の重量比率で均一に混合して塗料Eを得た。この塗料Eにおける変性シリケート化合物の混合比率は、樹脂固形分100重量部に対してSiO換算で4.3重量部であった。また、塗料Eの赤外線透過率は69%であった。
【0058】
・塗料F
上記方法にて製造した主剤(1)と硬化剤(3)を86:14の重量比率で均一に混合して塗料Fを得た。この塗料Fにおける変性シリケート化合物の混合比率は、樹脂固形分100重量部に対してSiO換算で10.7重量部であった。また、塗料Eの赤外線透過率は69%であった。
【0059】
・塗料G
上記方法にて製造した主剤(5)と硬化剤(1)を86:14の重量比率で均一に混合して塗料Gを得た。この塗料Gにおける変性シリケート化合物の混合比率は、樹脂固形分100重量部に対してSiO換算で4.3重量部であった。また、塗料Gの赤外線透過率は2%であった。
【0060】
・塗料H
上記方法にて製造した主剤(1)と硬化剤(4)を86:14の重量比率で均一に混合して塗料Hを得た。この塗料Hにおけるシリケート化合物の混合比率は、樹脂固形分100重量部に対してSiO換算で4.3重量部であった。また、塗料Hの赤外線透過率は69%であった。
【0061】
・塗料I
上記方法にて製造した主剤(1)と硬化剤(5)を86:14の重量比率で均一に混合して塗料Iを得た。塗料Iの赤外線透過率は69%であった。
【0062】
(試験方法)
・遮熱試験
アルミニウム板に対し、エポキシ系下塗材を乾燥膜厚が30μmとなるように塗装し、標準状態(温度23℃、相対湿度50%)で8時間乾燥させた後、上記の方法によって得た各塗料を乾燥膜厚が40μmとなるように塗装し、標準状態で7日間乾燥させることにより試験体を作製した。この試験体の塗膜に対し、赤外線ランプを20cmの距離から照射し、温度上昇が平衡に達したときの試験体裏面温度を測定した。
また、同様の方法で試験体を作製した後、試験体の塗膜全面に15重量%カーボンブラック水分散ペースト液を均一に噴霧し、50℃の恒温室中に2時間放置した。その後、ソニケーターを用いて、10分間超音波洗浄を行い標準状態で24時間放置した。以上の処理を行った試験体の塗膜に対し、赤外線ランプを20cmの距離から照射し、温度上昇が平衡に達したときの試験体裏面温度を測定した。
遮熱試験の評価基準は、試験体裏面温度が70℃未満のものを○、70℃以上80℃未満のものを△、80℃以上のものを×とした。
【0063】
・曝露試験
アルミニウム板に対し、エポキシ系下塗材を乾燥膜厚が30μmとなるように塗装し、標準状態(温度23℃、相対湿度50%)で8時間乾燥させた後、上記の方法によって得た各塗料を乾燥膜厚が40μmとなるように塗装し、標準状態で7日間乾燥させることにより試験体を作製した。
この試験体を、プラスチック製波板の庇の下に設置(試験体の塗膜面に庇から流下する雨水が接触するように設置)して屋外曝露を行い、曝露1週間後及び1ヶ月後の時点での塗膜表面の接触角を測定した。なお、接触角の測定は、協和界面科学株式会社製CA−A型接触角測定装置にて行った。
【0064】
・温冷繰返し試験
300mm×150mm×6mmのスレート板に対し、エポキシ系下塗材を乾燥膜厚が30μmとなるように塗装し、標準状態で8時間乾燥した後、JIS A6909に規定の防水形複層仕上塗材E主材を乾燥膜厚が2mmとなるように塗装し、標準状態で24時間乾燥させた。次いで、上記の方法によって得た各塗料を乾燥膜厚が40μmとなるように塗装し、標準状態で7日間乾燥させることにより試験体を作製した。
以上の方法で得られた試験体について、水浸漬(23℃)18時間→−20℃3時間→80℃3時間を1サイクルとする温冷繰返し試験を合計10サイクル行った後、塗膜表面におけるひび割れ発生の有無を目視によって確認した。評価は、ひび割れが生じなかったものを「○」、わずかにひび割れが生じたものを「△」、明らかにひび割れが生じたものを「×」とした。
【0065】
(試験結果)
試験結果を表1に示す。以上の試験を実施した結果、塗料A〜Dは、総じて遮熱性能、塗膜表面の親水化機能、下地への追従性に優れる結果となった。
【0066】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料用樹脂の固形分100重量部に対し、赤外線透過性粉体及び/または赤外線反射性粉体を1〜200重量部、シリケート化合物をSiO換算で0.1〜20重量部含有し、前記シリケート化合物として、
炭素数1〜2の直鎖アルキル基と炭素数3以上の分岐アルキル基が、95:5〜50:50の当量比率で混在する変性シリケート化合物
を含むことを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
前記シリケート化合物として、
炭素数1〜2の直鎖アルキル基と炭素数3〜6の分岐アルキル基が、95:5〜50:50の当量比率で混在する変性シリケート化合物
を含むことを特徴とする請求項1記載の塗料組成物。

【公開番号】特開2007−92021(P2007−92021A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−58503(P2006−58503)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】