説明

塗料自動供給式刷毛装置

【課題】先端部に刷毛を取り付けた塗料供給体を手に持っている作業者において、上下方向・左右方向・斜め方向等を含むあらゆる方向へ手首を返す動きを充分に行って、部材の内側面や裏側面等に刷毛を無理なく当てて効率の良い塗装作業を行う塗料自動供給式刷毛装置を提供する。
【解決手段】刷毛2の内側に配置したノズル3から加圧された状態の塗料を吐出させて、刷毛2の内側から刷毛2の全体に塗料を供給する塗料自動供給式刷毛装置において、塗料供給体1の先端部に、約5°乃至45°の角度で、このうち好ましくは、約30°の角度で刷毛2を取り付ける。また、塗料供給体1の供給管部4は、混合用羽根体4Aを内蔵した攪拌槽4Bを備えている。そして、手首の返しにより刷毛2の向きを自在に変えられるよう、基端部が手の甲側に位置するように塗料供給体1を親指・中指・人差指で握み、人差指により押下式レバー8の押圧操作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として鉄塔を塗装する際に使用する刷毛装置であり、刷毛の内側に配したノズルから加圧された状態の塗料を吐出させることで、刷毛の全体に塗料を自動的に供給する塗料自動供給式刷毛装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における刷毛装置としては、例えば、特許文献1に示すように、本件の出願人自身により出願された塗料自動供給式刷毛装置が存在する。
【0003】
この刷毛装置は、図11に示すように、塗料供給体100の先端部に、ノズル101を内蔵している刷毛104を取り付け、ノズル101と手元バルブ102との間に設けた握力式レバー103の握り操作により手元バルブ102を開弁させ、加圧された状態の塗料を刷毛104内に吐出させるものである。
【0004】
そして、握力式レバー103を、指1本引き、若しくは、指2本引きの引金式構造とし、握力式レバー103を引き込み状態に保持するための短尺なグリップ部105を設け、このグリップ部105内に分岐バルブ106の各分岐接続口と各ノズル101とを接続するホース107を導入させている。
【0005】
この刷毛装置は、図11に示すように、塗料タンク108内の高粘度の塗料を加圧器109により加圧してから、エアレス装置110により高所作業場まで塗料を揚上する。そして、高所作業場に設置している分岐バルブ106を介して、複数の作業者が所持している塗料供給体100のそれぞれの刷毛104の内側に臨ませたノズル101に塗料を圧送するものである。
【特許文献1】特開2002−331264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図11に示す従来の刷毛装置は、塗料供給体100に対して、グリップ部105が略直角状態に延設され、このグリップ部105を握り込んで塗装作業を行うことから、刷毛装置を手に持っている作業者において、手首が固定されて、上下方向・左右方向・斜め方向等を含むあらゆる方向へ手首を返す動きを充分に行うことができなかった。
【0007】
そのため、部材の内側面や裏側面を塗装する場合に、刷毛の向きを変えるために、その都度、手首を含む肘や腕の全体を大きく動かしながら塗装作業を行う必要があり、刷毛装置の使い勝手が非常に悪く、塗装作業の効率性に欠ける弊害が生じていた。
【0008】
また、握力式レバー103が、指1本引き、若しくは、指2本引きの引金式構造であるため、引金のバネ強度が強いときは、作業者に疲労感が残ってしまう虞れがあった。
【0009】
さらに、従来の刷毛装置は、塗装作業の中断時等において、塗料が塗料供給体の内部で硬化し、塗料供給体が詰まってしまい、塗装作業を再度開始したときに、刷毛104内に塗料を送り込むことができない事態も生じていた。
【0010】
加えて、現状の塗料の多くは、その防食性能から、主剤と硬化剤と呼ばれる溶液を混合して用いるという複液混合型の塗料を使用するのが一般的であって、このような塗料は、主剤と硬化剤とを混合し撹拌することで化学反応が開始され硬化するように設計されている。従って、主剤と硬化剤とを一度混合すると、使用可能な時間の制約を受けることとなるため、塗料を塗布する直前に必要量だけを攪拌して混合することが肝要であるが、従来の刷毛装置は、このような点については、特に考慮されていないのが実状である。
【0011】
そこで、本発明は如上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、先端部に刷毛を取り付けた塗料供給体を手に持っている作業者において、上下方向・左右方向・斜め方向等を含むあらゆる方向へ手首を返す動きを充分に行って、部材の内側面や裏側面等に刷毛を無理なく当てて効率の良い塗装作業を行うと共に、加圧された状態の塗料をノズルから刷毛内に吐出させる際に、疲労感の少ないレバー操作を可能とし、さらに、塗料供給体の内部において、残存塗料が硬化する事態を防いだ塗料自動供給式刷毛装置を提供し、さらには、塗料の無駄を少なくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、刷毛の内側に配置したノズルから加圧された状態の塗料を吐出させて、刷毛の内側から刷毛の全体に塗料を供給する塗料自動供給式刷毛装置において、塗料供給体の先端部に、約5°乃至45°の角度で刷毛を取り付けたことで、上述した課題を解決した。
【0013】
また、塗料供給体の先端部に、約30°の角度で刷毛を取り付けたことで、同じく上述した課題を解決した。
【0014】
さらに、塗料供給体に対する刷毛の取付角度が、調節可能であることで、同じく上述した課題を解決した。
【0015】
また、塗料供給体は、ノズルに塗料を送り込む供給管部を備え、この供給管部に、複数のホース接続管を設けたことで、同じく上述した課題を解決した。
【0016】
加えて、供給管部に、2個のホース接続管を設けたことで、同じく上述した課題を解決した。
【0017】
また、一方のホース接続管は、供給管部に対して直線状に配置されていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0018】
この他、他方のホース接続管は、供給管部に対して交差状に配置されていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0019】
また、供給管部は、混合用羽根体を内蔵した攪拌槽を備えていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0020】
さらに、供給管部に、異なる色の塗料を送り込む2個の塗料供給ホースを接続したことで、同じく上述した課題を解決した。
【0021】
また、供給管部に、塗料供給ホースと洗浄用の溶剤供給ホースを接続したことで、同じく上述した課題を解決した。
【0022】
加えて、塗料供給体は、一端部が軸支されて塗料供給体に対して揺動可能に配置された押下式レバーの押圧操作により、ノズルに塗料を送り込む塗料噴出機構を備えていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0023】
また、手首の返しにより刷毛の向きを自在に変えられるよう、基端部が手の甲側に位置するように塗料供給体を親指・中指・人差指で握み、人差指により押下式レバーの押圧操作を行うことで、同じく上述した課題を解決した。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、刷毛の内側に配置したノズルから加圧された状態の塗料を吐出させて、刷毛の内側から刷毛の全体に塗料を供給する塗料自動供給式刷毛装置において、塗料供給体の先端部に、約5°乃至45°の角度で、このうち好ましくは、約30°の角度で刷毛を取り付けたことから、塗料供給体を手に持っている作業者において、手首を自由に動かすことが可能となり、上下方向・左右方向・斜め方向等を含むあらゆる方向へ手首を返す動きを充分に行って、部材の内側面や裏側面等に刷毛を無理なく当てて効率の良い塗装作業を行うことができる。
【0025】
従って、本発明によれば、部材の内側面や裏側面を塗装する場合に、刷毛の向きを変えるために、その都度、手首を含む肘や腕の全体を大きく動かしながら塗装作業を行っていた従来の刷毛装置に比較して、塗装作業の効率化を飛躍的に向上させることができる。
【0026】
また、塗料供給体に対する刷毛の取付角度が、調節可能であることから、塗装する部材の位置や角度に応じて、塗料供給体への好ましい刷毛の取付角度を適宜選択することができ、塗料供給体を手に持っている作業者において、手首を自由に動かすことが可能となり、上下方向・左右方向・斜め方向等を含むあらゆる方向へ手首を返す動きを充分に行って、部材の内側面や裏側面等に刷毛を無理なく当てて効率の良い塗装作業を行うことができる。
【0027】
さらに、塗料供給体は、ノズルに塗料を送り込む供給管部を備え、この供給管部に、複数の(例えば、2個の)ホース接続管を設けたことから、一方のホース接続管に、例えば、赤色(白色)の塗料を送り込む塗料供給ホースを接続し、他方のホース接続管に、例えば、白色(赤色)の塗料を送り込む塗料供給ホースを接続して、1つの塗料供給体において、異なる2色の塗料を用いた塗装作業を行うことができる。
【0028】
また、一方のホース接続管は、供給管部に対して直線状に配置されていることから、供給管部とホース接続管がほぼ一体となり、塗料供給体の小型化を実現して、作業者の塗装作業を容易なものとしている。
【0029】
加えて、他方のホース接続管は、供給管部に対して交差状に配置されていることから、2つのホース接続管が縦方向において重なり合い、全体が嵩張らない状態となって、作業者の塗装作業を容易なものとしている。
【0030】
また、一方のホース接続管に、塗料供給ホースを接続し、他方のホース接続管に、洗浄用の溶剤供給ホースを接続したときには、塗装作業の中断時等において、塗料が塗料供給体の内部で硬化した場合であっても、塗料供給体に溶剤を送り込むことができ、硬化した塗料を溶かして塗装作業を即座に再開することができる。さらに、溶剤を塗料供給体とこれに接続している塗料供給ホースにも送り込むことができ、塗料供給ホースの洗浄も簡単に行うことができる。
【0031】
この他、塗装作業の終了時に塗料供給体に溶剤を送り込むことで、塗料が塗料供給体や刷毛の内部で硬化する事態も防止できる。
【0032】
そして、供給管部は、混合用羽根体を内蔵した攪拌槽を備えているので、供給管部に、例えば、色の異なる2種類の塗料が送り込まれたときに、それぞれの塗料が混合用羽根体に接しながら攪拌槽を通過することで、2色の塗料が即座にかき混ぜられて斑のない混合状態となり、ノズルから混合した塗料を吐出させることができる。
【0033】
さらに、本発明に係る塗料自動供給式刷毛装置は、使用する塗料の変更(有機溶剤を用いる塗料から、有機溶剤を用いない水溶性塗料への変更)にも対応したものである。
【0034】
すなわち、現状の塗料においては、その防食性能から複数種類の液を混合して使用する塗料(複液混合型の塗料)が主流である。このとき、例えば、2種類の溶液を混合すると化学反応が始まり、特に温度の高い夏等においては、極めて短時間のうちにこれらの混合した塗料が固まってしまう。そのため、このような複液混合型の塗料においては、必要な量の塗料だけを塗布する直前に混合することが望ましい。
【0035】
具体的には、現状の複液混合型の塗料の多くは、その防食性能から主剤と硬化剤を攪拌して使用する2液製が主流となっている。
【0036】
塗料は、この主剤と硬化剤を攪拌して混合することで、化学反応が開始して固まるのである。
【0037】
従って、主剤と硬化剤を攪拌して混合すると、使用可能時間の制約を受けることになる。つまり、塗料は、主剤と硬化剤を混ぜなければ硬化することがないため、効率的に使用するためには、塗料を塗布する直前に必要量だけを攪拌して混合することが塗料を無駄にしないこととなる。
【0038】
本発明に係る塗料自動供給式塗装器は、主剤と硬化剤を別々に送り込んで、攪拌槽の中でミキシングする機能を備えている。そのため2種類の塗料が送り込まれたときに、それぞれの塗料が混合用羽根体に接しながら攪拌槽を通過することで、極めて短時間のうちに塗料が強制的に複雑にかき混ぜられて斑のない混合状態を造り出すことができる。
【0039】
その結果、2種類の塗料を混合した際の化学反応により、塗料が固まってしまう事態の発生を確実に阻止し、塗料を無駄にすることなく滑らかな塗装作業を実現できる。特に、鉄塔等の高所作業において、長いホースを介して塗料を送り込む場合であっても、その送り込みの過程において、化学反応が始まることがなく、ホース内での塗料の固まりを防止できるのである。
【0040】
すなわち、2種類の塗料を混合した際の塗料の状態と、ノズルから噴出する際の塗料の状態を全く同じにすることにより、滑らかな塗装作業を実現している。また、2種類の塗料がかき混ぜられて即座にノズルから塗料を吐出させるので、この点においても滑らかな塗装作業を実現している。
【0041】
さらに、塗料供給体は、一端部が軸支されて塗料供給体に対して揺動可能に配置された押下式レバーの押圧操作により、ノズルに塗料を送り込む塗料噴出機構を備えていることから、加圧された状態の塗料をノズルから刷毛内に吐出させるに際し、作業者にとって疲労感の少ないレバー操作が可能となる。
【0042】
この他、基端部が手の甲側に位置するように塗料供給体を親指・中指・人差指で握むことから、塗料供給体を手に持っている作業者において、手首を自由に動かすことが可能となり、上下方向・左右方向・斜め方向等を含むあらゆる方向へ手首の返しにより刷毛の向きを自在に変えることができ、部材のあらゆる方向に刷毛を無理なく当てて、効率の良い塗装作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
【0044】
本発明に係る塗料自動供給式刷毛装置は、例えば、塗料タンク内の高粘度の塗料を加圧器により加圧してから、エアレス装置により高所作業場まで塗料を揚上し、高所作業場に設置している分岐バルブを介して、複数の作業者が所持しているそれぞれの塗料供給体1の先端部に取り付けた刷毛2の内側に臨ませたノズル3に塗料を送り込むものである。
【0045】
具体的には、図1に示すように、塗料供給体1の先端部に、約5°乃至45°の角度で、このうち好ましくは、約30°の角度で刷毛2を取り付けてある。この塗料供給体1に対する刷毛2の取付角度は、調節可能である。
【0046】
また、図2に示すように、塗料供給体1は、ノズル3に塗料を送り込む供給管部4を備え、この供給管部4に、2個のホース接続管5A・5Bを設けている。
【0047】
一方のホース接続管5Aは、図2に示すように、供給管部4の後方において、供給管部4に対して直線状に配置されている。また、他方のホース接続管5Bは、供給管部4の後方において、供給管部4の下側に設けられて供給管部4に対して交差状に配置されている。
【0048】
このホース接続管5Aには、塗料供給ホース6(溶剤供給ホース7)が、例えば、ブッシュと六角ニップルを介して接続される。同様に、ホース接続管5Bにも、塗料供給ホース6(溶剤供給ホース7)が、ブッシュと六角ニップルを介して接続される。
【0049】
供給管部4の内部は、図2に示すように、フラットな状態に形成されている。この供給管部4は、特定の塗料を、他の塗料と混合させることなくノズル3から吐出させるのに好ましいものである。
【0050】
また、供給管部4は、図3に示すように、混合用羽根体4Aを内蔵した攪拌槽4Bを備えていても良い。この混合用羽根体4Aを内蔵した攪拌槽4Bは、例えば、2種類の塗料をかき混ぜて斑のない混合状態となっている塗料をノズル3から吐出させるのに好ましいものである。
【0051】
混合用羽根体4Aは、図4に示すように、2種類の塗料を一方向に回転させる羽根部4Aaと逆方向に回転させる羽根部4Abが交互に配置されている。その結果、供給管部4に送り込まれた2種類の塗料は、混合用羽根体4A(4Aa・4Ab)に接して強制的に複雑にかき混ぜられ、斑のない混合状態を造り出すことができる。
【0052】
この他、供給管部4は、図5に示すように、混合用羽根体4Aを内蔵したケース体40を備えていても良い。このケース体40は、図6・図7に示すように、筒状に形成され、先端部に噴出口41を備えている。そして、図7に示すように、ケース体40の基端部から混合用羽根体4Aを挿入し、ケース体40の基端部に塗料受け入れ片42を配置している。この塗料受け入れ片42は、塗料を受け入れるために筒状に形成されている。
【0053】
塗料供給体1は、一端部が軸支されて塗料供給体1に対して揺動可能に配置された押下式レバー8の押圧操作により、ノズル3に塗料を送り込む塗料噴出機構9を備えている。この塗料噴出機構9は、押下式レバー8の押圧の程度により、ノズル3に送り込む塗料の量を調整できるものである。
【0054】
塗料噴出機構9の具体的な構成は、図2・図3・図5に示すように、供給管部4の上方において、塗料供給体1の略中央に押下式レバー8を配置するための開放部10を凹設し、この開放部10を介して前側シリンダー11Aと後側シリンダー11Bとを配置している。そして、前側シリンダー11Aの開放部10側に面する後端開口側は、ニードル弁12をスライド可能に嵌挿させた状態としたパッキンネジ13により封止されている。
【0055】
また、供給管部4の先端開口部を前側シリンダー11Aに連通させ、この前側シリンダー11A内で前後方向にスライド可能に配置したニードル弁12が、後側シリンダー11Bに配置したニードルバネ14を介して、ノズル3に通じる前側シリンダー11Aの先端に設けた開口状の弁座15を常時閉塞するように付勢配置されている。
【0056】
すなわち、このニードル弁12の後端側には、プランジャー16を嵌挿すると共に、プランジャー16を後側シリンダー11B内に開放部10側から挿入し、後側シリンダー11Bの後端部に付設した塗料調整ネジ部17とプランジャー16との間に配したニードルバネ14の拡圧弾性力により、当該プランジャー16をニードル弁12と共に常時前方側に付勢している。
【0057】
そして、開放部10内には、押下式レバー8が、前方のノズル3側を向いた状態となるように支持ピン18を介して揺動可能に枢着され、支持ピン18の位置から下側に延設された押圧操作部19が、ニードルバネ14を嵌挿している前記プランジャー16に当接している。
【0058】
従って、押下式レバー8を人差指で下方に押圧操作することにより、押圧操作部19によってプランジャー16がニードルバネ14に抗して後側シリンダー11Bの基端寄りに押し込まれる。その結果、前側シリンダー11Aの先端に設けた弁座15が開放されて、加圧された状態の塗料が前側シリンダー11A内を通ってノズル3から吐出されるのである。
【0059】
このとき、塗料調整ネジ部17を回転させることで、押下式レバー8の押圧力を調整できる。
【0060】
例えば、塗料調整ネジ部17を回転させて押下式レバー8の押圧操作部19に当接しているプランジャー16をノズル3寄りに移動させたときには、押下式レバー8を強い力で押圧しないとノズル3から塗料が吐出しないものとなる。
【0061】
また、塗料調整ネジ部17を回転させて押下式レバー8の押圧操作部19に当接しているプランジャー16をノズル3から離れる方向に移動させたときには、押下式レバー8を僅かな力で押圧してノズル3から塗料を吐出できるものとなる。
【0062】
また、前側シリンダー11Aの弁座15の先端側には、蝶袋ナット状の連結部材20を嵌着し、この連結部材20の先端開口部に対して約30°の角度だけ屈曲してアダプター21が装着されている。このアダプター21の先端にノズル3が一体的に突出形成され、このノズル3を覆うように刷毛2が配置され、刷毛固定部22を介してアダプター21に装着される。また、ノズル3の頭部における周側面には、塗料を吐出させる複数の小孔が設けられ、このノズル3の頭部は、刷毛2中央の付け根部分より刷毛2の内部に、約5mm程度突出している。
【0063】
尚、アダプター21自体は、連結部材20に対して任意の角度に屈曲可能となるよう、不図示の可動部を介して連結されるようにしても良い。
【0064】
一方、供給管部4には、塗料供給ホース6を装着しているホース接続管5A側とは分岐した状態となるように、下側面に開口部を設けている。この開口部に、アダプター23を介して六角ニップルを取り付け、この六角ニップルに塗料供給ホース6を取り付けてある。
【0065】
こうして、塗料供給体1に接続した2本の塗料供給ホース6により、例えば、赤・白等の異なる色の塗料を、個別にノズル3に送り込むことができる。また、塗装作業終了後において、ホース接続管5Aに溶剤供給ホース7を接続し、塗料供給体1とノズル3に洗浄用の溶剤を送り込むこともできる。
【0066】
次に、以上のように構成された本発明の最良の形態について、使用・動作の一例を説明する。
【0067】
例えば、鉄塔を塗装する場合には、まず鉄塔の周囲に塗料飛散防護用のメッシュシートを張り、鉄塔の約10m間隔毎に区画棒を設け、そこに取り付けた中継用の加圧切換弁(図示せず)等を介して約10m程度の長さの塗料供給ホース6を接続し、塗料供給ホース6の先端に塗料供給体1を取り付ける。
【0068】
そして、作業前に加圧器とエアレス装置に設置された分岐バルブの絞り具合により、塗料供給体1の塗料吐出量を調節しておき、作業中においてはその状態のまま押下式レバー8を操作し、塗装作業を行う。
【0069】
この塗料は、高所作業場に揚上させるエアレス装置により、各高所に設置された8個の分岐接続口を備えた分岐バルブを介して、例えば、8人の作業者が所持する各刷毛2の内側に臨ませたノズル3に圧送される。塗料は、ノズル3の頭部から細かい噴霧状となって吐出し、刷毛2の全体に塗料が均等に付着して、鉄塔の塗装が行われる。
【0070】
この塗装作業は、作業者において、手首の返しにより刷毛2の向きを自在に変えられるよう、基端部が手の甲側に位置するように塗料供給体1を親指・中指・人差指で握み、人差指により押下式レバー8の押圧操作を行う。
【0071】
具体的には、塗装する部材が作業者の左側に位置する場合には、図8に示すように、手首を返して塗装作業を行う。また、塗装する部材が作業者の正面側に位置する場合には、図9に示すように、手首を返して塗装作業を行う。さらに、塗装する部材が作業者の右側に位置する場合には、図10に示すように、手首を返して塗装作業を行う。
【0072】
そして、異なる色の塗料を使用する場合には、ホース接続管5Aに接続している塗料供給ホース6を所定のコックにより閉止させ、ホース接続管5Bに接続している塗料供給ホース6から異なる色の塗料をノズル3に送り込む。また、塗装作業の終了後は、ホース接続管5Bに溶剤供給ホース7を接続し、塗料供給体1とノズル3に溶剤を送り込む。
【0073】
一方、ホース接続管5Bに接続している溶剤供給ホース7により、塗料供給体1に溶剤を送り込んでいる状態において、ホース接続管5Aに接続している塗料供給ホース6のコックを解放すれば、ホース接続管5Aに接続している塗料供給ホース6に溶剤を送り込むことができる。
【0074】
さらに、ホース接続管5A・5Bに塗料供給ホース6を接続し、2本の塗料供給ホース6から送り込まれた2種類の塗料を、塗料供給体1における混合用羽根体4Aを内蔵した攪拌槽4Bにより強制的に複雑にかき混ぜて斑のない混合状態とし、ノズル3に送り込むこともできる。
【0075】
前述の説明では、2種類の塗料についての例を説明したが、主剤と硬化剤という溶液を混合する場合も同様である。すなわち、ホース接続管5A・5Bに塗料供給ホース6を接続し、2本の塗料供給ホース6から送り込まれた2種類の溶液(主剤および硬化剤)を、塗料供給体1における混合用羽根体4Aを内蔵した攪拌槽4Bにより強制的に複雑にかき混ぜて一様な混合状態とし、ノズル3に送り込むことができる。
【0076】
さらに、例えば複液混合型の塗料において、主剤と硬化剤の割合(主剤:硬化剤)は、一般的に2:1〜9:1程度であるが、これらの液の混合割合を調整するには、例えばホース接続管5A・5Bに接続しているそれぞれの塗料供給ホース6のコックを調整すれば足りる。2種類の塗料を混合する場合も同様に調整可能であるから、混合量によって様々なバリエーションの色彩の塗装が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明に係る塗料自動供給式刷毛装置は、鉄塔を塗装する際に使用することに限定されず、あらゆる建造物を効率良く塗装できるものとして、広く利用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】基端部が手の甲側に位置するように塗料供給体を親指・中指・人差指で握み、人差指により押下式レバーの押圧操作を行う使用状態を示した側面図である。
【図2】塗料噴出機構を備えている塗料供給体の先端部に、刷毛を取り付けた構成を示す断面図である。
【図3】塗料供給体の供給管部に、混合用羽根体を内蔵した攪拌槽を備えている状態の断面図である。
【図4】混合用羽根体の構成を示す側面図である。
【図5】塗料供給体の供給管部に、混合用羽根体を内蔵したケース体を備えている状態の断面図である。
【図6】ケース体の構成を示す斜視図である。
【図7】ケース体の構成を示す分解斜視図である。
【図8】塗装する部材が作業者の左側に位置する場合の手首の返し状態を説明した図である。
【図9】塗装する部材が作業者の正面側に位置する場合手首の返し状態を説明した図である。
【図10】塗装する部材が作業者の右側に位置する場合手首の返し状態を説明した図である。
【図11】従来の刷毛装置の構成を示した説明図である。
【符号の説明】
【0079】
1…塗料供給体
2…刷毛
3…ノズル
4…供給管部
4A…混合用羽根体
4Aa…羽根部
4Ab…羽根部
4B…攪拌槽
5A…ホース接続管
5B…ホース接続管
6…塗料供給ホース
7…溶剤供給ホース
8…押下式レバー
9…塗料噴出機構
10…開放部
11A…前側シリンダー
11B…後側シリンダー
12…ニードル弁
13…パッキンネジ
14…ニードルバネ
15…弁座
16…プランジャー
17…塗料調整ネジ部
18…支持ピン
19…押圧操作部
20…連結部材
21…アダプター
22…刷毛固定部
23…アダプター
40…ケース体
41…噴出口
42…塗料受け入れ片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刷毛の内側に配置したノズルから加圧された状態の塗料を吐出させて、刷毛の内側から刷毛の全体に塗料を供給する塗料自動供給式刷毛装置において、塗料供給体の先端部に、約5°乃至45°の角度で刷毛を取り付けたことを特徴とする塗料自動供給式刷毛装置。
【請求項2】
塗料供給体の先端部に、約30°の角度で刷毛を取り付けた請求項1に記載の塗料自動供給式刷毛装置。
【請求項3】
塗料供給体に対する刷毛の取付角度が、調節可能である請求項1または2に記載の塗料自動供給式刷毛装置。
【請求項4】
塗料供給体は、ノズルに塗料を送り込む供給管部を備え、この供給管部に、複数のホース接続管を設けた請求項1乃至3のいずれかに記載の塗料自動供給式刷毛装置。
【請求項5】
供給管部に、2個のホース接続管を設けた請求項4に記載の塗料自動供給式刷毛装置。
【請求項6】
一方のホース接続管は、供給管部に対して直線状に配置されている請求項5に記載の塗料自動供給式刷毛装置。
【請求項7】
他方のホース接続管は、供給管部に対して交差状に配置されている請求項5に記載の塗料自動供給式刷毛装置。
【請求項8】
供給管部は、混合用羽根体を内蔵した攪拌槽を備えている請求項4乃至7のいずれかに記載の塗料自動供給式刷毛装置。
【請求項9】
供給管部に、異なる色の塗料を送り込む2個の塗料供給ホースを接続した請求項4乃至8のいずれかに記載の塗料自動供給式刷毛装置。
【請求項10】
供給管部に、塗料供給ホースと洗浄用の溶剤供給ホースを接続した請求項4乃至8のいずれかに記載の塗料自動供給式刷毛装置。
【請求項11】
塗料供給体は、一端部が軸支されて塗料供給体に対して揺動可能に配置された押下式レバーの押圧操作により、ノズルに塗料を送り込む塗料噴出機構を備えている請求項1乃至10のいずれかに記載の塗料自動供給式刷毛装置。
【請求項12】
手首の返しにより刷毛の向きを自在に変えられるよう、基端部が手の甲側に位置するように塗料供給体を親指・中指・人差指で握み、人差指により押下式レバーの押圧操作を行う請求項11に記載の塗料自動供給式刷毛装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−314950(P2006−314950A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141447(P2005−141447)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(505176682)ヨシハタ工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】