説明

塗材組成物

【解決手段】合成樹脂エマルジョンとして、ガラス転移温度が−10〜10℃であり、コア・シェル構造体を形成し、コア層のガラス転移温度が0℃以下であり、シェル層のガラス転移温度が30〜70℃の範囲である合成樹脂エマルジョンと充填剤と骨材を含み、前記合成樹脂エマルジョンの固形分に対して、充填剤と骨材が250〜330重量%であることで、変位を0.1mm、0.15mm、0.2mmとし、それぞれの変位を20℃、60℃、−10℃で500回の伸縮を与えることを1ステップとし、前記ステップ7は0.2mmで、20℃までの伸縮履歴に亀裂なく、耐えるもので疲労試験でステップ7を超えること。
【効果】仕上がり面に立体的又は平たんな模様を形成でき、下地及び下地間等に生じる動きに対してクラックを生じ難い耐久性塗膜を形成でき、低汚染のエマルジョン系仕上げ塗材組成物となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可とう性水性低汚染建築仕上げ塗材組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
仕上げ塗材は方法により要求性能が異なる。有機溶剤を環境面でできる限り避けるため、水系塗材が要求され、さらに意匠性の要求からJIS A6909に規定される合成樹脂エマルジョン系仕上げ塗材(JIS A6909に規定する薄塗材E、厚塗材E等)が、対象となる。このJIS A6909に規定される合成樹脂エマルジョン系仕上げ塗材でも、塗布方法により大別できる。1つは下塗りと上塗りを別々の塗材を用いて要求される役目を分けるもの、他方下塗り、上塗りを同一塗材とし塗材に要求される役目を同一塗材に担わせるものとなる。 前者は要求性能を満足させるための開発期間が短い特徴があり、後者は開発困難性が高いものの、施工時塗材種類を少なくて済み施工管理が容易なものとなる。
【0003】
カルボキシル基含有アクリル系重合体をベースとするエマルジョンと、エポキシ系樹脂と、顔料を含む組成物において、カルボキシル基含有アクリル系重合体が、−80℃〜−40℃のガラス転移温度(Tg)を有し、かつ、5〜20の酸価を有し、エポキシ系樹脂が、150〜230のエポキシ当量を有し、カルボキシル基含有アクリル系重合体に対するエポキシ系樹脂の重量比が固形分比で1/20〜1/10であり、塗料組成物中の不揮発分の全体積に対する顔料の体積割合が45〜57%であることを特徴とする水系塗料組成物で、塗料の安定性や塗膜の耐水性に優れ、更に塗膜の弾性性能にも優れた塗料組成物となることが開示されている。(特許文献1)
【0004】
基材に対し、下塗材、上塗材を順に塗装する塗装方法において、下塗材として、外層がガラス転移温度20〜100℃のカルボキシル基含有アクリル樹脂であって、内層に環状シロキサン化合物に由来するシリコーン樹脂及びガラス転移温度−60〜20℃のアクリル樹脂を含む多層構造型合成樹脂エマルション、カルボキシル基と反応可能な官能基を有する架橋剤、及び平均粒子径0.1〜100μmの無機質粉粒体を含有し、顔料容積濃度が30〜80%である下塗材を用い、1液形の材料を使用し、塗装時の作業性を改善するとともに、常温は勿論、低温下においても十分な弾性を有する塗膜を形成することが開示されている。(特許文献2)
【0005】
特定の官能基を含有するアルコキシシリル基含有アクリル共重合体、特定のポリアルキレンオキサイド鎖含有シラン化合物、特定のアルキルシリケートおよび/またはこれらの縮合物、さらに必要に応じて、添加されるアルコキシシリル基の加水分解・縮合用触媒を含有する非汚染塗料用樹脂組成物で、内部応力の発生により生じる塗膜クラックを防止し、表面硬度が高く、さらに塗膜形成直後より表面の親水性の得られる低汚染型塗膜となることが開示されている。(特許文献3)
【0006】
3級アミノ基含有アクリルポリオール、ポリアルキレンオキサイド鎖、特にポリエチレンオキサイド鎖を有するアルコキシシラン化合物、アルキルシリケート類、ポリイソシアネートを所定比率にて混合する塗料組成物で、塗膜形成直後より、該塗膜表面が親水性を呈し、降雨等により汚染物質が洗い流されるソイルリリース効果を示し、特に油性汚れの染み込み抵抗性に優れると共に、重ね塗りを行う場合にも層間密着性がよく、経時的にブリスターや割れが発生しないような塗膜を与える非汚染塗料組成物となることが開示されている。(特許文献4)
【0007】
【特許文献1】特開2005−320450号公報
【特許文献2】特開2007−125539号公報
【特許文献3】特開平9−31401号公報
【特許文献4】特開平9−157587号公報
【特許文献5】特開平9−31297号公報
【0008】
従来 豊富な意匠表現を有する仕上げ塗材では非汚染性を満足させることができず、仕上げ塗材で意匠性を付与し、その上に非汚染性塗料を塗布するもので、工程・工期が長くなるほか仕上げ塗材とその上塗り塗料との付着性と層構成での耐久性を評価する必要があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする課題は、建築仕上げ塗材のみで非汚染であり、下地材及び下地材間等に生じる動きに対してクラックを生じ難い耐久性塗膜を形成できる低汚染建築仕上げ塗材組成物の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、JIS A6909に規定される合成樹脂エマルジョン系仕上げ塗材であって、疲労試験でステップ7を超えることを特徴とするエマルジョン系仕上げ塗材組成物で、下地材及び下地材間等に生じる動きに対してクラックを生じ難い耐久性塗膜となる。
【0011】
請求項2の発明は、前記エマルジョン系仕上げ塗材組成物が、合成樹脂エマルジョンとして、ガラス転移温度が−10〜10℃であり、コア・シェル構造体を形成し、コア層のガラス転移温度が0℃以下であり、シェル層のガラス転移温度が30〜70℃の範囲である合成樹脂エマルジョンと充填剤と骨材を含み、前記合成樹脂エマルジョンの固形分に対して、充填剤と骨材が250〜330重量%であることを特徴とする請求項1記載のエマルジョン系仕上げ塗材組成物で、JIS A6909に規定される合成樹脂エマルジョン系仕上げ塗材として、必要な仕上がり面に立体的又は平たんな模様を形成でき、下地材及び下地材間等に生じる動きに対してクラックを生じ難い耐久性塗膜となり、低汚染のエマルジョン系仕上げ塗材組成物となる。
【0012】
請求項3の発明は前記合成樹脂エマルジョンのカルボキシル基を有するモノマーの含有率がコア層で5%以下であり、シェル層で5〜20重量%であり、親水化剤を含むことを特徴とする請求項1乃至2いずれかに記載のエマルジョン系仕上げ塗材組成物で、請求項1或いは請求項2の効果に、さらに低汚染の効果を高めたエマルジョン系仕上げ塗材組成物となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は仕上がり面に立体的又は平たんな模様を形成でき、下地及び下地間等に生じる動きに対してクラックを生じ難い耐久性塗膜を形成でき、低汚染のエマルジョン系仕上げ塗材組成物となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
JIS A6909に規定される合成樹脂エマルジョン系仕上げ塗材は下記のJIS A6909の定義(引用)があり、合成樹脂エマルジョン系を用いるものを言う。
a)下塗材 主として下地に対する主材の吸込み調整及び付着性を高める目的で使用するもの。
なお,上塗材には,基剤及び硬化剤を混合して使用するものがある。
b)主材 主として仕上がり面に立体的又は平たんな模様を形成する目的で使用するもの。
なお、主材には、基剤及び硬化剤、又は粉体及び混和液を混合して使用するものがある。
c)上塗材 仕上げ面の着色、光沢の付与、耐候性の向上、吸水防止などの目的で使用するもの。
なお.上塗材には、基剤及び硬化剤を混合して使用するものがある。
本発明は、上記 主材の性能を有し、上塗材を有しなくても、耐汚染性を有し、下地或いは下地間の動きに対してクラックを生じ難い耐久性塗膜となるエマルジョン系仕上げ塗材組成物である。
前記主材の役目として立体的又は平たんな模様を形成されるためには適度な粘性が必要であり、刷毛、鏝、ローラー等で容易に模様付けができ、壁、天井等の環境下形状を硬化するまで維持する必要があり、組成物としての安定性から、充填剤・骨材が必須な構成要素となる。反面、この充填剤・骨材の配合増は強度が維持できるものの伸び、耐久性では劣ることは一般的である。また、樹脂の汚染性の面では、架橋度が高い或いは硬い樹脂は汚染性が良く、柔軟性がある樹脂ほど汚染性が悪いのが一般である。これら相反する要因を本発明で解消することにある。
以下に本発明の概要を構成要素ごとに記す。
【0015】
合成樹脂エマルジョン
本発明の合成樹脂エマルジョンはコア・シェル構造を有することを特徴とする。コア・シェル重合体全体のガラス転移温度は本組成物では−10〜10℃が好ましい。このガラス転移温度(Tg)は使用するモノマー(i)のホモポリマーのガラス転移温度(Tgi)とモノマーの分率Xiとから以下の関係式で求められる。
1/Tg(コア・シェル重合体)=Σ(Xi/Tgi) Xi:モノマー(i)の分率 Tgi:モノマー(i)のTg、だたし この式の温度は絶対温度(K)
コア層のガラス転移温度は0℃以下が好ましい。シェル層のガラス転移温度は30〜70℃が好ましい。これらのガラス転移点も前記式に従う。コア層のガラス転移点で柔軟性の要素が確定され、全体のガラス転移点より、コア層・シェル層の比率も確定する。概略60重量%以上のコア比率にて、良好な弾性・耐久性が得られる。シェル層はガラス転移温度30〜70℃で、成膜性と耐汚染性が両立する。さらに汚染性においてはカルボキシル基を有するモノマーの含有率がコア層で5%以下であり、シェル層で5〜20重量%であるとさらに良好となる。前記条件で耐水性が低下せず、また、耐汚染性が良好となる。
【0016】
上記合成エマルジョンはカルボキシル基を有するモノマーの含有率とモノマー構成より、コア層はガラス転移温度が0℃以下で炭素数の大きいアルキル基を持つ(メタ)アクリレートが主となり、その外殻となるシェル層はガラス転移温度は30〜70℃で、カルボキシル基を有するモノマーの含有率が5〜20重量%となり、シェル層の形成は汎用の手法の条件で合成できる。
配合モノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを主に、カルボキシル基を有するモノマー、その他のビニル基を有するモノマーで、構成され、重合時連鎖移動剤を用いて、塗材成膜適性、粘度、粘性等にあわせ適宜重合度を合わせる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)メタクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
カルボキシル基を有するモノマーとしては(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸またはこれらジカルボン酸のモノエステル、マレイン酸モノメチルエステル、フマル酸モノエチルエステル、ジカルボン酸の酸無水物、マレイン酸無水物などが挙げられる。
ビニル基を有するモノマーとしてはスチレン等が挙げられる。
また、合成樹脂エマルジョンの耐汚染性と耐水性を高めるため、シェル層の重合体成分に対して0.05重量%〜2重量%の架橋剤を反応させることができ、この範囲では架橋による耐汚染向上効果を有し、架橋し過ぎによる成膜性不良から耐水性を損なうこともない。
これらの条件を満たす市販製品として、ウルトラゾールD22(ガンツ化成(株)、商品名)が挙げられる。
前記 架橋剤として(1)重合性二重結合を2つ以上有する単量体、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレートの共重合体。(2)カルボン酸基と反応する架橋性化合物、例えば、カルボジイミド化合物。(3)分子中に少なくとも1個のアルデヒドまたはケトン基と、少なくとも1個の重合可能な不飽和二重結合とを含有するカルボニル基含有単量体例えばヒドラジン誘導体などを挙げることができる。
【0017】
充填剤、骨材
本発明では充填剤、骨材の配合が重要な役目を果たす。また、充填剤は体質顔料、顔料を含め、90μm以下のものとする。骨材は粒径100μmより大きく専ら仕上がり面に立体的又は平たんな模様を形成する役目を担い、中でも平均粒子径が100〜500μm程度のものが作業性、伸び物性、意匠性に優れ、形状は球形に近いものを使う事で耐汚染性に優れる。
【0018】
充填剤としては水酸化アルミニウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、珪砂紛、細珪砂等が体質顔料として、組成物の粘性・塗布作業性の調整などのために配合される。中でも重質炭酸カルシウムは供給能力があり、白色であるために各種調色に好都合である。
【0019】
骨材には、珪砂、炭酸カルシウム、山砂、ガラス粉砕物、セラミック粉砕物等があり、これらは塗布方法により適正なサイズ、形状のものを適宜選定する。
【0020】
顔料には、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化第二鉄(べんがら)、クロム酸鉛(モリブデードオレンジ)黄鉛、黄色酸化鉄、等の無機系顔料から構成される。
【0021】
親水化剤
本発明の低汚染を一層効果の高めるものに、親水化剤がある。塗材表面の親水性向上に合わせて、塗膜表面の静電気を帯電し難くする。建築仕上げ塗材組成物に配合する親水化剤は全固形分中0.5〜5.0重量%使用することが好ましく、この範囲であると十分な効果が得られ、塗膜の耐水性も劣ることがない。特に0.5〜2.0重量%の範囲にあるのが好ましい。親水化剤にはアセチレングリコール化合物、アセチレングリコールポリエチレンオキサイド化合物、ショ糖、果糖を含む糖化合物又はそれらとの界面活性剤との混合物から構成される。市販の製品として サーフィノール104シリーズ、420、440、465、SE(日信化学工業(株)、商品名)等がある。
【0022】
本発明の建築仕上げ塗材組成物が実際使用する主構成成分に対して添加する成分に、高沸点溶剤、分散剤、防腐剤、防カビ剤等がある。これらは塗工される環境に応じた作業性の確保、組成物の安定性の確保及び塗膜形成後表面外観の経年変化を防ぐため配合する。
これらの添加成分は塗材組成物の固形分換算で20重量%を上限として配合できる。
【0023】
高沸点溶剤にはテキサノール、ベンジルアルコール、ブチルセロソルブ等のエステル化合物が使用され、低温での塗膜形成を容易にする。また、塗装に適した粘性とするためにはメチルセルロース、ヒドロキシエチル/メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはアクリル酸系の粘度調整材等を適量使用して調整する。
【0024】
消泡剤には変成シリカシリコーン系化合物、ポリエーテル系、鉱物油系、金属石鹸系、ポリアマイド系、変性シリコーン系、ワックスエマルジョン系、脂肪酸エステル系化合物等が使用され、塗膜中の泡を効果的に解消することができる。中でも消泡性並びに水分散性の点から変性シリコーン系が適す。
【0025】
分散剤にはノニオン系界面活性剤、ポリカルボン酸ナトリウム、ポリカルボン酸アンモニウム、有機酸エステル系、エーテル系若しくは反応系界面活性剤、アルコールエトキシ系若しくはナフタレン系無機塩などが使用され、塗料中に含まれる顔料を中心とした化合物等を効果的に分散することができる。1種、又は2種類以上を混合して使用しても良く、中でも分散が良好で環境汚染にならないポリカルボン酸ナトリウムとピロリン酸カリウム水溶液の混合物が好ましい。
【0026】
防腐剤には含ハロゲン窒素硫黄系化合物が使用され、塗料の腐敗による劣化を防ぐことができる。防カビ剤としては、有機窒素硫黄化合物、含窒素有機環状化合物、含窒素ハロゲン系化合物、特殊尿素系化合物などが使用されるが、中でも防カビ性、持続性、環境面から有機窒素硫黄化合物系が好ましい。
【0027】
以下 実施例・比較例で詳細に記し、表1に結果を記す。
【実施例1】
【0028】
合成樹脂エマルジョンとしてウルトラゾールD22(ガンツ化成(株)、商品名、ポリアクリルエステル系樹脂、Tg−9℃、コア層Tg:−15℃、シェル層Tg:50℃、固形分55%)100重量部、水道水25重量部、充填材(粒子径70μm)30重量部、骨材(粒子径200μm)130重量部、チタン白顔料10重量部、親水化剤サーフィノール440を2重量部を実施例1の塗材組成物とした。
【実施例2】
【0029】
実施例1の水道水を114重量部、サーフィノール440を8重量部とした以外同じく行い、実施例2の塗材組成物とした。
【実施例3】
【0030】
実施例1の水道水を122重量部、親水化剤を無添加とした以外同じく行い、実施例3の塗材組成物とした。
比較例1
実施例1の合成樹脂エマルジョンの代わりにヨドゾールAD199(日本NSC(株)商品名、非コアシェル構造、Tg−14℃、アクリルエステル系エマルジョン)とした以外同じに行い、比較例1とした。
【0031】
【表1】

【0032】
汚染性
H265×W150mmのフレキシブルボードに、JS−4101( アイカ工業(株)、商品名、液溶剤型塩化ゴム系シーラー)を塗布し、完全乾燥後(23℃、50% 1日静置)、下塗り材として実施例・比較例の塗材組成物を1.0kg/mとなるよう金コテで平滑に仕上げる。下塗り層が完全に乾燥した後(23℃、50% 1日静置)、上塗り材として下塗り層と同じ塗材組成物を2.0kg/mとなるよう金コテで平滑に仕上げた後、23℃、50%雰囲気下で3日乾燥させたものを試験体とする。試験体をJSTM J7601に準拠した屋外曝露台にて曝露をさせ、6ヶ月後の雨筋の付着度合いを下記5段階で評価した。
5:雨筋の付着がなく、また全体的な汚れの付着もみられない。
4:雨筋の付着が薄くあり、また全体的な汚染も僅かながら確認される。
3:雨筋の付着が薄くあり、全体的な汚染が見られる。
2:雨筋の付着が濃くあり、全体的な汚染が見られる。
1:雨筋の付着が濃くあり、全体的な汚染も濃く見られ部分的に塗膜表面が削れた状態となる。
【0033】
疲労試験
150×170mmのフレキシブルボードを図1の様に突合せ、同様に塗装表面の4隅を養生(塗材組成物が付かない様に覆う)する。その後シーラーとして塩化ゴム系シーラーJS−410、(アイカ工業(株)、商品名)を塗布して乾燥した後、実施例・比較例の塗材組成物を下塗り材として1.0kg/mコテ塗りで下塗り層を形成し、表面に前記塗材組成物を2.0kg/mコテ塗りで平滑になるように仕上げ、20℃、湿度65%の雰囲気で10日静置したものを試験体とした。
上記で作成した試験体を島津サーボパルサ((株)島津製作所社、商品名、疲労試験装置)で下記表2に示すステップ順で、ステップごとに500サイクルの伸縮を繰り返しおこなった。ステップ終了後に塗膜のピンホール、亀裂の有無を確認し、無いものはそのステップに合格し、次に進むとし、最も高いステップ数をその塗材組成物の耐疲労性ステップ数とした。この耐疲労性は下地に発生したクラックの動きに対する塗膜の抵抗性を評価するものであり、従来湿式仕上げの下地として使用されているモルタルが経時でひび割れを発生させた際、塗膜表面上へひび割れが移行するまでの抵抗力を評するものである。
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】疲労性試験試験体説明図
【符号の説明】
【0035】
1 養生部分
2 塗装部分
3 上塗り塗材組成物
4 下塗り塗材組成物
5 シーラー
6 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS A6909に規定される合成樹脂エマルジョン系仕上げ塗材であって、疲労試験でステップ7を超えることを特徴とするエマルジョン系仕上げ塗材組成物
前記疲労試験は変位を0.1mm、0.15mm、0.2mmとし、それぞれの変位を20℃、60℃、−10℃で500回の伸縮を与えることを1ステップとし、前記ステップ7は0.2mmで、20℃までの伸縮履歴に亀裂なく、耐えるものとする。
【請求項2】
前記エマルジョン系仕上げ塗材組成物が、合成樹脂エマルジョンとして、ガラス転移温度が−10〜10℃であり、コア・シェル構造体を形成し、コア層のガラス転移温度が0℃以下であり、シェル層のガラス転移温度が30〜70℃の範囲である合成樹脂エマルジョンと充填剤と骨材を含み、前記合成樹脂エマルジョンの固形分に対して、充填剤と骨材が250〜330重量%であることを特徴とする請求項1記載のエマルジョン系仕上げ塗材組成物。
【請求項3】
前記合成樹脂エマルジョンのカルボキシル基を有するモノマーの含有率がコア層で5%以下であり、シェル層で5〜20重量%であり、親水化剤を含むことを特徴とする請求項1乃至2いずれかに記載のエマルジョン系仕上げ塗材組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2009−249414(P2009−249414A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95777(P2008−95777)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】