説明

塗液の塗布装置および口金の移載装置

【課題】
取り回しが極めて困難な大重量、長尺口金の取り付け、取り外しを口金の破損等させることなく短時間で容易に行うことができ、かつ、口金を所定の位置に高精度に再現性良く取り付けることができることから、生産性が良く、塗液を高品位に塗布することが容易な塗液の塗布装置を提供する。
【解決手段】
基板を固定するテーブルと、該基板に塗液を塗布する口金と、該口金を基板に対面させて支持する口金ホルダーと、該テーブルと該口金ホルダーとを3次元的に相対移動させる移動手段とを備えた塗液の塗布装置であって、
該口金ホルダーは、該口金を下方から支持する支持部と該口金を上方から該口金ホルダー内部に導入する際に該口金の長手方向または幅方向の位置を規制するガイド部材を有し、該口金は、該口金を該口金ホルダー上方から内部に導入する際に該ガイド部材と当接する被ガイド部材を有することを特徴とする塗液の塗布装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗液の塗布装置に関する。特に、プラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」と略称することもある。)に代表されるディスプレイパネル、液晶用カラーフィルター(LCM)、光学フィルタ、プリント基板、半導体の塗液を塗布するような分野に使用可能であり、例えばPDP製造工程における、ガラス基板など被塗布対象物表面にストライプパターンを形成するにあたって好適に用いられる塗液の塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にPDPは、前面板と背面板の間に形成された放電空間内で放電を生じさせることで、キセノンガスから波長147nmを中心とする紫外線を生じ、この紫外線が蛍光体を励起することによって表示が可能となる。R(赤)、G(緑)、B(青)に発光する蛍光体を塗り分けた放電セルを駆動回路によって発光させることにより、フルカラー表示に対応できる。
【0003】
このPDPには、電極が放電空間に露出している直流型(DC型)と、絶縁層で覆われている交流型(AC型)の2タイプがある。AC型は、表示電極/誘電体層/保護層を形成した前面ガラス板と、アドレス電極/誘電体層/リブ層/蛍光体層を形成した背面ガラス板とを貼り合わせ、ストライプ状あるいは格子状の隔壁で仕切られた放電空間内にHe-Xe、または、Ne-Xeの混合ガスを封入した構造を有している。R、G、Bの各蛍光体層は、粉末状の蛍光体粒子を主成分とする蛍光体ペーストが、背面板に形成された色毎に一方向に延びる隔壁により形成された凹部に充填されてなる。このような構造のものを高い生産性と高品質で製造するには、蛍光体を一定のパターン状に塗り分ける技術が重要となる。
【0004】
この種の塗布工程には、従来、スクリーン印刷が使用されていたが、近年においては、複数の吐出孔を有する口金を使用し、この口金を背面板と対向させ、相対的に移動させながら、蛍光体ペーストを凹部に充填する方法が検討、提案されている(特許文献1参照)
この方法では、吐出孔が略一直線上に設けられた口金(ノズル)と背面板を一回の相対移動で背面板に形成された所望の全ての凹部に塗布している。つまり、背面板サイズに対応した長さの口金で全幅を一括塗布している。
【0005】
近年、ディスプレイパネルの大型化が進んでおり、それに従い口金も大型化する必要があり、具体的には1mの長さを超える長尺口金となる。
【0006】
一般的に、口金はステンレス鋼で作られており、その重量は数十〜数百kgとなる。
【0007】
このような大重量、長尺口金は、取り回しが極めて困難であり、塗布装置の所定の位置に口金を取り付ける際、取り付け部や周辺部材へぶつけてしまい口金が破損することが問題であった。
【0008】
そもそも、口金は非常に高精度に加工されていることから、小さな傷がついても塗布不良が発生するし、傷の修復を行うとしても、莫大な手間や時間、費用を要し、大きな損失を被ることが問題であった。
【0009】
長尺口金の取り付け部の詳細を示した方法として、上述のような多数の吐出孔を有する口金ではないが、たとえばスリットダイの保持手段を工夫し、スリットダイのスリットと基板表面との間のクリアランスを均一に保つ方法が提案されている。(特許文献2参照)
特許文献2の方法も、取り回しが極めて困難な大重量、長尺口金であるため口金を支持部へ載置する際、支持部や周辺部材へぶつけてしまい、前述と同様の問題を生じる。
また、特許文献2では、クリアランスを均一に保つことを目的としているが、例えば、口金を周辺部材へぶつけた結果、口金の各支持面に傷がつきヘコミやバリが発生した場合、各支持面の高さが変わってしまったり、もしくは、支持部との接触具合が変わることでクリアランスが均一にならず、その結果、塗布不良という重大なが欠点が発生することが問題であった。
【0010】
また、特許文献1、2とも、口金自身が極めて高精度に加工されているため、非常に高価なものである。したがって、作業者は大重量、長尺口金という理由以外に、口金の取り回しを慎重に行うことになり、その結果、作業時間が必要以上に長くなり、生産性の低下にもつながることが問題であった。
【0011】
それに加え、口金を装置へ取り付ける際、取り付け精度や取り付け再現性が悪いことも問題となる。特許文献1、2では、口金取り付け方法の詳細な記載はないが、口金と取り付け部周辺にある何らかの部材との隙間の範囲で、口金の位置は毎回変わることが伺える。
塗布を行うためには、口金の位置をはじめ、基板等それぞれの位置を計測、記憶し、塗布装置を制御するためのパラメータとして用いる。
【0012】
したがって益々、高精度な塗布が要求されている現在、口金や基板の位置合わせはカメラ等用いた画像処理で行うことが一般的であるが、その場合、カメラの視野範囲に被対象部が入る必要がある。カメラを用いてミクロンオーダーの測定を行う場合、一般的にはその視野範囲は、せいぜい〜数mmである。
【0013】
そこで、カメラの視野範囲から口金の位置がずれてしまうと、口金の被対象部がカメラ視野から外れる可能性がある。
【0014】
この場合、その都度カメラを再スキャンしたり、もしくは手動により被対象部を探す操作が必要になるなど、余分な操作が増えてしまい、生産性の大幅な低下をまねくことが問題であった。
【特許文献1】特開2003−251257号公報
【特許文献2】特開2001−259500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、取り回しが極めて困難な大重量、長尺口金の取り付け、取り外しを口金の破損等させることなく短時間で容易に行うことができ、かつ、口金を所定の位置に高精度に再現性良く取り付けることができることから、生産性が良く、塗液を高品位に塗布することが容易な塗液の塗布装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明に係る塗布装置は、
基板を固定するテーブルと、該基板に塗液を塗布する口金と、該口金を基板に対面させて支持する口金ホルダーと、該テーブルと該口金ホルダーとを3次元的に相対移動させる移動手段とを備えた塗液の塗布装置であって、該口金ホルダーは、該口金を下方から支持する支持部と該口金を上方から該口金ホルダー内部に導入する際に該口金の長手方向または幅方向の位置を規制するガイド部材を有し、該口金は、該口金を該口金ホルダー上方から内部に導入する際に該ガイド部材と当接する被ガイド部材を有する。
【0017】
また、前記ガイド部材または前記被ガイド部材のいずれか一方がコロを有し、他方が前記口金を上方から前記口金ホルダー内部に導入する際に該コロに当接する当接面を有していることが好ましい。
【0018】
また、前記口金は、長手方向または幅方向に位置基準部を有しており、前記口金ホルダーは、前記口金を載置した状態で該位置基準部と接触することで該口金の位置決めを行う位置決め部材を有し、かつ、該位置決め部材を該位置基準部へ押し当て接触させる押し当て手段を有することが好ましい。
【0019】
また、前記口金を上方から前記口金ホルダー内部に導入する際には前記ガイド部材と前記被ガイド部材が当接し、該口金が該口金ホルダー内に載置された状態においては該ガイド部材と該被ガイド部材が当接しないように構成されていることが好ましく、
また、前記口金が前記口金ホルダー内に載置された状態において前前記ガイド部材と前記被ガイド部材間の距離が前記位置基準部と前記位置決め部材間の距離より大きくなるよう構成することが好ましい。
【0020】
そして、上記目的を達成するために、本発明に係る移載装置は、
前記ガイド部材を保持し前記口金を吊り下げる機能を有する保持手段、該保持手段を上下方向に移動させる昇降手段および該移載装置全体を水平方向に移動可能とする移載装置移動手段を有することが好ましく、
また、前記移載装置移動手段の他に、前記口金が少なくとも前記位置基準部と前記位置決め部材間の距離の範囲で前記口金を長手方向または幅方向への移動を可能とするスライド機構を備えていることが好ましく、
また、前記支持部にかかる前記口金の荷重を軽減する荷重バランス調整機構を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、基板を固定するテーブルと、該基板に塗液を塗布する口金と、該口金を基板に対面させて支持する口金ホルダーと、該テーブルと該口金ホルダーとを3次元的に相対移動させる移動手段とを備えた塗液の塗布装置であって、該口金ホルダーは、該口金を下方から支持する支持部と該口金を上方から該口金ホルダー内部に導入する際に該口金の長手方向または幅方向の位置を規制するガイド部材を有し、該口金は、該口金を該口金ホルダー上方から内部に導入する際に該ガイド部材と当接する被ガイド部材を有するので、大重量、長尺口金でも口金ホルダーに容易に載置することができる。したがって、口金の交換作業が短時間で済み、生産性が向上する。
【0022】
また、口金を周辺部材にぶつけずに破損なく装置に取り付けることができるので、支持面に傷がつくこともない。したがって、口金と基板とのクリアランスを口金全長に渡って均一に維持でき、塗液を高品位に塗布することができる。
【0023】
また、好ましくは、前記口金は、長手方向または幅方向に位置基準部を有し、前記口金ホルダーは、前記口金を載置した状態で該位置基準部と接触することで該口金の位置決めを行う位置決め部材を有し、かつ、該位置決め部材を該位置基準部へ押し当て接触させる押し当て手段を有する。この場合、口金の位置決めを高精度かつ再現性良くできる。したがって、塗布を行うときに口金の位置を計測する工程が短時間で済むため、生産性が大幅に向上する。
【0024】
また、本発明の口金の移載装置は、移載装置移動手段の他に、前記口金が少なくとも前記位置基準部と前記位置決め部材間の距離の範囲で前記口金を長手方向または幅方向への移動を可能とする、スライド機構を備えることが好ましく、さらに好ましくは、前記移載装置は、前記口金を前記支持部に載置された状態において、前記支持部にかかる前記口金の荷重を軽減する荷重バランス調整機構を備えることが好ましい。この場合、口金の支持面と口金ホルダーの支持部との摩擦を低減させて、スムーズに位置決めすることができる。したがって、口金の支持面および、または口金ホルダーの支持部に摩擦による擦り傷などのダメージを与えることがないので、両者とも良好な表面状態を長期間にわたり維持することができ、その結果、口金と基板とのクリアランスを長期間に渡って均一に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の塗布装置は、
基板を固定するテーブルと、該基板に塗液を塗布する口金と、該口金を基板に対面させて支持する口金ホルダーと、前記テーブルと前記口金とを3次元的に相対移動させる移動手段とを備えるもので、たとえば、プラズマディスプレイパネル用部材における蛍光体塗布工程に特に好ましく適用することができるものである。すなわち、赤、緑、青の3種類のいずれかの色に発光する蛍光体粉末を含む蛍光体ペーストをプラズマディスプレイパネル用基板に塗布する際に好適に用いることができる。
【0026】
図1に、本発明の一実施態様に係る塗液の塗布装置の概略斜視図を示し、図2に、その側面図を示す。図3は口金が載置された口金ホルダーの正面図である。
【0027】
図3に示すように、口金ホルダー1は、口金2を下方から支持する支持部3と、口金2を移載装置6で口金ホルダー1内に載置するとき、口金2を案内し長手方向の位置を規制するガイド部材16a,16b、口金2を案内し幅方向の位置を規制するガイド部材17a,17bを有し、口金2は、それぞれのガイド部材16a,16b,17a,17bにガイドされる被ガイド部材18を有している。
ここで、長手方向とは図1に示したY方向のことを指し、幅方向とはX方向のことを指している。
【0028】
図2に示すように、移載装置6は口金2を口金ホルダー1内部に導入するための移載台車である。移載装置6は、被ガイド部材18を保持し口金2を吊り下げる機能を有する保持手段30と保持手段30を上下方向に移動させる昇降手段48および移載装置6全体を水平方向に移動可能とする移載装置移動手段49を有している。
【0029】
ここで、移載装置移動手段49が台車のような機能を持つことで水平方向に移動可能とすると、たとえば口金2を運搬するための台車を兼ねることができるため好ましいが、塗布装置の周辺設備として口金ホルダー1の上方に常設されていても良い。
【0030】
保持手段30に吊り下げられた口金2は、口金ホルダー1の形状や周辺部材との位置関係によっては、上下方向のみならず上下方向斜めに移動可能とするような昇降手段48としてもも良い。
【0031】
上下方向に移動させる機構としては、所定の重量物を移動させることができるなら、油圧式や電動式などいかなるものであって良い。
【0032】
口金ホルダー1は、口金2の長手方向に関して、中央位置および該中央位置から口金2の長手方向両端に向かって等間隔に離れた少なくとも2箇所の位置に口金2を下方から支持する支持部3を有している。
【0033】
ここで、支持部は、口金2のたわみが最小になるように、その数量や配置はいかなるようにしても良い。また、たわみは基板4に対しての相対的なたわみであることが好ましい。
【0034】
長手方向ガイド部材16a,16bは、口金2の長手方向をガイドするガイド部材で、幅方向ガイド部材17a,17bは口金2の幅方向をガイドするガイド部材である。
【0035】
図3のように、口金2の長手方向において、長手方向ガイド部材16a,16bを一組としてこれを両側に設けることで、口金2を略水平状態を保ちながらガイドできる。しかし、たとえば、口金2を上下移動させるストロークが小さい場合や、少々斜めになっても良い場合など、必要に応じて片側のみとしても良い。
【0036】
また別の手段として、左側に口金の長手方向の位置を規制するガイド部材16aのみを設け、右側に口金の長手方向の位置を規制するガイド部材16bのみとすることでも、口金2を長手方向にガイドできる。
【0037】
図4(a)は、図2の口金ホルダー部の詳細図、(b)はその正面図であり、口金2を口金ホルダー1内の支持部3へ載置を開始するときの図である。
【0038】
これら図に示すように、移載装置6に取り付けられた保持手段30は被ガイド部材18を保持しながら口金2を口金ホルダー1へ載置していく。たとえば、保持手段30に設けたクランプピン19で被ガイド部材18に形成されたバーを保持することが好ましい。こうすることで、被ガイド部材18をガイド機能と保持手段30による口金保持機能とを兼ね備えることができる。したがって、口金2に別途、保持手段30に保持されるめのアイボルトなどが不要となる。クランプピン19以外の手段として、クレーンに用いるフックや、ボルトによる締結で被ガイド部材18を保持しても良い。
【0039】
被ガイド部材18は、ボルト(図示しない)により口金2に取り外し可能に構成されているが、口金自身の少なくとも一部分を被ガイド部材として一体形成してもよい。
【0040】
ガイド部材16a,16b,17a,17bは、コロを有している。被ガイド部材18は、コロに当接する部分である当接面20a、20b、28a、28bを有しているが、逆にガイド部材に当接面を有し、被ガイド部材にコロを有しても良く、口金や口金ホルダーの形状により、どちらにするか適宜決定すればよ良い。
【0041】
コロは、ローラ状のものが好ましいが、ボール状であっても良い。ローラ状やボール状のように、回転可能なガイド部材とすることで、摩擦によるガイド時の発塵を抑えることが可能となる。発塵の影響が問題ない場合は、すべり軸受けのような低摩擦摺動によるガイド部材であっても良く、その場合ガイド部材は樹脂製や無給油プレートなどであることが好ましい。
【0042】
また、口金2の長手方向をガイドする長手方向ガイド部材16a,16bは、少なくとも2つであることが好ましい。たとえば、所定の位置に配置した2つのコロの間で、当接面20a、20bをガイドすることが好ましい。
【0043】
口金2の幅方向においても同様であり、口金2の幅方向をガイドする幅方向ガイド部材17a,17bは、少なくとも2つであることが好ましく、たとえば、所定の位置に配置した2つのコロの間で、当接面28a,28bをガイドすることが好ましい。
【0044】
このとき、当接面20a,20b,28a,28bはガイド部材16a,16b,17a,17bと少なくとも1つ当接されていることが好ましい。しかし、口金2が口金ホルダー1や周辺部材にぶつからない範囲であれば、この限りではなく、ガイド部材16a,16b,17a,17bと当接面20a、20b、28a、28bの間に隙間を設けることも可能である。
【0045】
以上のような構成とすることで、口金2を口金ホルダー1や周辺部材へぶつけて破損等させることなく、短時間で容易に口金ホルダー1内の支持部3に載置することができる。
【0046】
図5〜図12(a)は、図2の口金ホルダー部の詳細図、(b)はその正面図であり口金2を口金ホルダー1内の支持部3へ載置し、固定するまでの手順を示した図である。
【0047】
これら図を用いて、口金2を口金ホルダー1内の支持部3に載置し、所定の位置へ高精度に固定する手順を以下に説明していく。
【0048】
まず、図4はたとえば口金2を保管している保管棚から移載装置6で口金を運搬して、口金ホルダ1上方に移動してきた状態の図である。
【0049】
このとき、作業者は被ガイド部材18がガイド部材16aと16bの間に入るように移載装置6を操作する。
【0050】
このとき、被ガイド部材18がガイド部材16a,16bの一部分とぶつかる可能性もあるが、少々の傷がついてもガイドの性能に悪影響を及ぼすことはない。また、口金2自体はは、どこにもぶつからない状態であるため、作業者は被ガイド部材18とガイド部材16a,16bだけに注意を払えばよいので、容易に作業を行える。
【0051】
また、移載装置6の下部床面に、移載装置移動手段49と接触しながら移載装置6を位置決めするためのガイドレール(図示しない)を設けることも好ましい。移載装置6がガイドレールに沿いながら進むことで、おのずと被ガイド部材18がガイド部材16aと16bの間に入るように、予めガイドレールの位置を調整しておけば良い。
【0052】
そして、被ガイド部材18がガイド部材16aと16bの間に入ったら、当接面28aがガイド部材17aに当接するまで移載装置6を押し込む。
【0053】
次に、口金2を下方向に下降させていくが、このとき移載装置6の位置が動かないように移載装置移動手段49に台車ストッパ等の固定手段(図示しない)を設け、有効にしておくことが好ましい。
【0054】
図5(a)(b)は、図4(a)(b)から口金2を下方へ移動開始した状態を示した図である。
【0055】
幅方向において、ガイド部材16a,16bが被ガイド部材18の当接面20a,20bをガイドしている。一方、幅方向においても、ガイド部材17a,17bが被ガイド部材18の当接面28a,28bをガイドしているため、口金2は長手方向、および幅方向において、口金ホルダー1や周辺部材にぶつかることなくスムーズに下降できる。また、それぞれのガイド部材16a,16b,17a,17bは、回転可能なローラ状であるため発塵もない。
【0056】
図6(a)(b)は、図5(a)(b)からさらに口金2を下方へ移動し、支持部3へ口金を載置した状態を示した図である。
【0057】
このとき、口金2の下降速度は低速であることが好ましい。なぜなら、高速だと口金2の支持面29と支持部3が接触したとき、衝撃が大きくなりお互いの面に傷が付く可能性があるためである。
【0058】
図7(a)(b)は、図6(a)(b)から移載装置6の昇降手段48を下降させた状態を示した図である。
【0059】
口金2の支持面29が支持部3と接触しても、移載装置6の昇降手段48はさらに下降を続ける。
【0060】
つまり、移載装置6の保持手段30が被ガイド部材18を保持しているクランプピン19から離れることで、はじめて口金2の全重量が口金ホルダー1の支持部3にかかり、載置が完了されたことになる。
【0061】
このとき、移載装置6の保持手段30が下がりすぎて、被ガイド部材18上部に再接触することがないように、保持手段30の最低下降位置として、移載装置6の昇降手段48に下限ストッパを設けることが好ましい。
【0062】
続いて、口金2を所定の位置へ高精度に固定する手順を以下に説明していく。
【0063】
図7(a)(b)において、口金2は、長手方向と幅方向に高精度に仕上げられた位置基準部37a,37bを有している。
【0064】
口金ホルダー1は、長手方向の基準位置である長手方向位置決め部材38aと、幅方向の基準位置である、幅方向位置決め部材38bを有している。
【0065】
また、口金2の位置基準部37a,37bをそれぞれの位置決め部材38a,38bへ移動させ、押し当てるための、押し当て手段39a,39bを有している。
【0066】
位置基準部37a,37bは口金2から塗液が吐出される範囲や位置と対応がとれるように設計されていることが好ましい。また、複数台の口金がある場合、それぞれのバラツキも小さい方が好ましい。そうすることで、複数台のうち、どの口金を取り付けても口金ホルダー1内の口金2の位置は極めて高精度に取り付けることができるからである。
【0067】
ここで、位置基準部37a,37bは、表面が仕上げられた別部材を口金に貼り付けても良い。
【0068】
また、形状は口金2の位置が正確に出るのであれば、平面や曲面、V字形等、いかなる形状であっても良い。
【0069】
また、経年変化や傷などにより位置基準面にヘコミやバリ、カエリが出ないよう、表面硬度を向上させておくことが好ましい。
【0070】
材質は、スティール製が好ましいが、目的としている位置決め精度により、樹脂やセラミック等、いかなる材料であっても良い。
【0071】
位置決め部材38a,38bは、口金2の位置を最終的に決定するものであるため、口金ホルダー1に強固に固定されていることが好ましい。位置基準部37a,37bと接触する部分の形状は、相手が面なら点接触する方が精度良く位置決めできるので先端が球面であることが好ましい。
【0072】
しかし、目的としている位置決め精度により、この限りではなく、面同士の接触でも良いし、材質もいかなるものであっても良い。
【0073】
また、この状態において、ガイド部材16a,16b,17a,17bと被ガイド部材18の当接が解除されることが好ましい。このとき、それぞれのガイド部材とそれぞれの当接面20a,20b,28a,28bの隙間は、口金2の位置基準部37a,37bが位置決め部材38a,38bまで移動する距離以上であることが好ましい。
【0074】
このようにすることで、口金2を押し当て手段39a,39bで押しても被ガイド部材18とガイド部材16a,16b,17a,17bはどこも接触していないため、摩擦による発塵を防止することができる。
【0075】
解除する方法としては、被ガイド部材18の当接面20a,20b,28a,28bにくぼみ部36a,36bを形成することで、隙間を設けることが好ましい。また、くぼみ部36a,36bの高さ方向の寸法は小さい方が好ましい。載置する直前までガイドした方が狙い通りの位置に載置できるからである。
【0076】
その他、解除する方法としては、ガイド部材16a,16b,17a,17bおよび、または、被ガイド部材18がそれぞれ当接しなよう、少なくとも一方を退避可能に構成しても良い。この場合、エアーシリンダーやモータ等のアクチュエータによりガイド部材16a,16b,17a,17bを退避させることが好ましい。
【0077】
図8(a)(b)は、図7(a)(b)から口金2をそれぞれの位置決め部材38a,38bへ押し当てる前の状態を示した図である。
【0078】
この時、移載装置6が有する口金荷重バランス調整機構40を動作させ、支持部3にかかる口金2の荷重を低減させることが好ましい。なぜなら、支持面29と支持部3との摩擦を低減できることから、摺動による傷が抑制できるからである。
【0079】
具体的には、口金荷重バランス調整機構40が動作するときは、図7で示したように、被ガイド部材18からクランプピン19が離れている状態から、図8で示すように保持手段30が上昇し、被ガイド部材18からクランプピン19が再度接触し、口金2を上方へ引き上げる力が作用する。この力は、口金重量より小さいことが好ましい。なぜなら、口金重量より大きい力だと、口金2が支持部3から浮上し、移載装置6により口金2が吊り下げられる状態となるからである。
【0080】
なお、ここでいう口金重量は荷重バランス調整機構40より口金2側に取り付けられている部材一式の重量をいう。
【0081】
荷重バランス調整機構40は、エアーシリンダーや油圧シリンダー、バネなど、力学的に荷重を発生させることができるものであればいかなるものであっても良いが、エアーシリンダーだと圧縮空気圧を変化させることで荷重を調整できることから、好ましく適用される。
【0082】
また、荷重バランス調整機構40は、図4に示した状態において既に動作させておいてもよく、この場合、口金2が支持部3に載置されてもクランプピン19は被ガイド部材18と離れずに、接触したままとなる。
【0083】
つまり、荷重バランス調整機構40を動作させるタイミングはいつでも良く、特に限定されるものではない。
【0084】
図9(a)(b)は、図8(a)(b)から口金2を幅方向位置決め部材38bへ押し当てた状態を示した図である。
【0085】
図9(a)において、幅方向押し当て手段39bで口金2を押し、位置基準部37bを位置決め部材38bへ押し当てる。このとき、当接面28aにくぼみ部36bが形成されているので、ガイド部材17aと被ガイド部材18がぶつかることなく口金2を押し当てることができる。
【0086】
また、このとき図9(b)においても、当接面20a,20bにくぼみ部36aが形成されているので、ガイド部材16a,16bと被ガイド部材18がぶつかることなく口金2を押し当てることができるため、該部分での発塵を防止することができる。
【0087】
同時に、移載装置6は、口金2の長手方向および、または、幅方向の移動を可能にするスライド機構45を有することが好ましい。
【0088】
そうすることで、大重量の口金を位置決め部材38a,38bへ低摩擦でスムーズに移動させることができ、押し当て手段39a,39bの力を小さくできる。
たとえば、押し当て手段39a,39bにエアーシリンダーを用いた場合、コンパクトなエアーシリンダーを適用することができるため、装置の大型化を防げる。
【0089】
また、荷重バランス調整機構40で、支持部3にかかる荷重を小さくして、支持部の摩擦を低減させているにもかかわらず、移載装置6にスライド機構45がないと、押し当て手段39a,39bで口金2を押すとき、口金2の移動を妨げることになり、口金の動きがこじることも考えられる。その結果、支持部の摩擦が増えたり、傷が付く可能性が高くなる。したがって、移載装置6にたとえば、フリーベアリング46などのコロを有するスライド機構45とすることで、低摩擦で容易に口金を長手方向および、または、幅方向へ移動させることが可能となる。スライド機構には、樹脂や無給油プレートなどを用いた摺動形であっても良いし、ゴムのように自由に弾性変形することで、長手方向および、または幅方向に少しでも口金2を移動可能とするものであっても良く、移動させる口金の重量などに応じて、いかなるものを用いても良い。
【0090】
また、スライド機構45が移動可能な方向は、口金の長手方向および、または幅方向であることが好ましいが、必要とする方向だけにスライド可能とすることでも良い。
【0091】
また、スライド機構45には、保持手段30を常時、スライドストローク範囲の中立位置に移動させる軽度な力がかかるような、自動調芯機構が備わっていることが好ましい。
なぜなら、スライドのストロークエンドで口金を載置してしまうと、押し当て手段39a,39bで口金2を押してもそれ以上動くことができないからである。したがって、自動調芯機構を備え、保持手段30は常時、ストロークの中立位置にいることで、口金を移動させるストロークを確保できるようになる。
【0092】
自動調芯機構は、バネなどを用いて常時中立位置になるように、バネ力を付勢したもので実現できる。その他、磁石の吸引、反発力を利用することも可能であり、その方式はいかなるものにも限定されない。
【0093】
なお、押し当て手段39bは、押し当て完了後、押しつけを解除することが好ましい。
【0094】
図10(a)(b)は、図9(a)(b)から口金2を長手方向位置決め部材38aへ押し当てた状態を示した図である。
【0095】
図10(b)において、長手方向押し当て手段39aで口金2を押し、位置基準部37aを位置決め部材38aへ押し当てる。このとき、当接面20bにくぼみ部36aが形成されているので、ガイド部材16aと被ガイド部材18がぶつかることなく口金2を押し当てることができる。
【0096】
また、このとき図10(a)においても、当接面28aにくぼみ部36bが形成されているので、ガイド部材17aと被ガイド部材18がぶつかることなく口金2を押し当てることができるため、該部分での発塵を防止することができる。
【0097】
同時に、前述と同様に移載装置6は、口金2の長手方向および、または、幅方向の移動を可能にするスライド機構45を有することが好ましい。
【0098】
なお、押し当て手段39bは、押し当て完了後、その動作を解除することが好ましい。
【0099】
ここで、押し当て手段の作動順序について述べると、作動順序や回数は特に限定されるものではないが、(1)口金2の幅方向を押し当て手段39bで押した後、押し当て手段39bを解除。その後、(2)長手方向押し当て手段39aで押し、解除。その後、(3)再度口金2の幅方向を押し当て手段39bで押すという手順であることが好ましい。
(1)と(2)で位置決めがほとんど完了しているが、(2)で口金2の長手方向に移動させたために、幅方向に若干のずれが起こる可能性があるので、(3)で再度、押すことで口金2の位置精度がさらに向上する。
【0100】
また、長手方向押し当て手段39aは口金2の位置基準面の反対面を押すように口金ホルダー1に構成した。しかし、長手方向押し当て手段39aが押す位置は、口金2がスムーズに移動できる位置なら特に限定されるものではなく、たとえば、被ガイド部材18の一部を押すような位置に配置しても良いし、移載装置6の保持手段30の一部に配置し、被ガイド部材18を押すようにしても良い。
【0101】
図11(a)(b)は、図10(a)(b)から荷重バランス調整機構40を解除した状態を示した図である。
【0102】
以上説明した手順で、口金2の長手方向および幅方向の位置が高精度に載置できたので、移載装置6と口金2を切り離す。
【0103】
そのために、荷重バランス調整機構40を解除し、被ガイド部材18からクランプピン19を離す。
【0104】
このとき、押し当て手段39a,39bの少なくとも一方を再度、動作させておくことが好ましい。つまり、口金2の位置がずれないよう押し当て手段39aおよび、または39bで口金2を押さえつけておくことが好ましい。
【0105】
図12(a)(b)は、図11(a)(b)から移載装置6を退避させた状態を示した図であるクランプピン19を抜き、移載装置6を上方へ移動する。
【0106】
その後、口金2を固定する。
【0107】
図13は、図12(b)に示した口金ホルダーおよび口金のZ−Z断面図である。支持部3は、口金2を固定するための固定手段47を有していることが好ましい。固定手段47を有する支持部3の位置や数量は、口金2のたわみが最も少なくなるような位置であればいかなる箇所であっても良い。固定手段47は口金2を支持部3へ上から押さえるように固定するのが好ましく、たとえば安価で確実に固定できるボルトが好ましい。
【0108】
このとき、押し当て手段39bを解除せずに、口金2を固定手段47で締結すれば、口金2の位置がずれる心配がなく、確実に固定することが可能となるので好ましい。
【0109】
また、押し当て手段39a,39bは、塗布している最中に常時押し当て状態であっても良い。たとえば塗布中に塗布装置の振動などの影響で口金2も振動し、塗布の状態が振動によるムラを生じた場合、押し当て手段39a,39bで口金2自身を押し付けることで、振動を抑制することが可能となるからである。
【0110】
またこの場合、押し当て手段39a,39bの押し当て力は、調整可能であることが好ましい。たとえば、押し当て動作時は、口金2が動く力に調整しておき、塗布している最中に常時押し当て状態のときは、小さい力にしておくことで、押し当て手段39a,39bが口金2や口金ホルダー1へおよぼす力が小さくなり、塗布中における、口金2や口金ホルダー1の変形が小さく抑えることが可能となるからである。
【0111】
以上の手順により、口金2を口金ホルダー1や周辺部材へぶつけて破損等させることなく、短時間で容易に口金ホルダー1内の支持部3に載置することができ、口金2を所定の位置に高精度に再現性良く固定することができる。
【0112】
また、口金2を口金ホルダー1や周辺部材へぶつけて、口金2の各支持面29に傷がつき、ヘコミやバリが発生し、各支持面29の高さが変わってしまったり、もしくは、支持部3との接触具合が変わることがないので、口金2と基板4表面との間のクリアランスを均一に維持できるので、塗布不良等の重大な欠点が発生せず、高品位な塗布を容易に行えることができる。
【0113】
次に、本発明に係る塗液の塗布装置の全体構成を説明する。
【0114】
図1において、基板4はテーブル7の上に載置され、テーブル7に設けた吸着装置(図
示略)により吸着して固定される。なお、基板4には塗布領域68がある。テーブル7は、その中心を軸として、回転を可能とするθ軸部材(図示しない)により支持されている。このθ軸部材は、X軸駆動部12上に設けられたリニアガイド11a、11bなどで構成されたY軸駆動部11に搭載され、テーブル7がリニアガイド11a、11bに沿って機台13のY軸方向に移動するとともに、θ軸部材を中心として回動する。X軸駆動部12は、機台13上に設けられたリニアガイド12a、12bなどによって構成され、テーブル7がリニアガイド12a、12bに沿って機台13のX軸方向に移動する。これらX軸駆動部12およびY軸駆動部11は互いに直交するように調整されている。X軸駆動部12は、基板4に塗液を塗布するための、口金2と基板4の相対移動手段であって、塗布動作においてはテーブル7をX軸方向に移動させる。
【0115】
機台13の中央部上方には、X軸駆動部12によって移動するテーブル7が通過するように門型の支持台14が、X軸と直交する形で設けられている。支持台14の下流側(図面における奥側)には、リニアガイド15a、15bによって構成されたZ軸駆動部15が設けられている。口金ホルダー1は、その両端がリニアガイド15a、15bによって支持され、リニアガイド15a、15bに沿ってテーブル7の面に対して垂直方向に移動する。口金ホルダー1には塗液を吐出する口金2が、機台13のY軸方向中央を基準にして取り付けられる。
【0116】
ここで、本発明に係る装置に用いられる口金について説明する。
【0117】
図14は、図1に示した口金2のY方向における縦断面図を示しており、図15は口金2のX方向における縦断面図を示している。口金2は、塗液55を溜める塗液溜め部52と、塗液55を吐出する吐出開口部53と、塗液溜め部52に塗液55を供給するための塗液供給口54を有する。吐出開口部53は、口金2の幅方向に直線状に配列された複数の吐出孔56からなる。塗液供給口54は、塗液溜め部52に挿入された、パイプ57の先端に開口した孔である。また、図1の支持台14の口金上方には、塗液溜め部52の塗液の液面高さを検出するための液面センサ58が取り付けられており、液面高さを計測することができるように構成されている。
【0118】
口金は、塗布領域68のサイズに合わせて選択されるが、本実施形態においては塗布領域68に形成された全ての溝(凹部)に対して1回の塗布動作で塗液を付与できるよう、溝に対応した数、ピッチで吐出孔が略一直線状に配列されている。すなわち、本実施形態は、プラズマディスプレイの背面板に塗液を付与する装置であり、口金2はR、G、Bのいずれかの蛍光体粉末を含んだ塗液が塗布される溝に対応した数、ピッチで吐出孔を有している。
【0119】
口金2には、塗液を供給するための配管が接続され、この配管の反対側先端部には、塗液の供給をコントロールする開閉バルブ41を介して塗液タンク43が接続される。塗液タンク43には所定圧力の気体圧力源44が配管を介して接続されている。また、口金2には、吐出孔から塗液を吐出させるための気体圧力を供給する配管が接続され、この配管の反対側先端部は気体圧力の切換バルブ42を介して所望圧力の気体圧力源44に接続されている。切換バルブ42は三方弁であり、塗液溜め部52、気体圧力源44にそれぞれ接続されるほか、切り換えることで大気に開放されるように構成されている。
【0120】
口金2への塗液供給は、切換バルブ42を大気開放にした状態で開閉バルブ41を開くことにより行い、塗液溜め部52の上部に空間を残す形で塗液を所定量供給する。続いて、塗液の吐出は切換バルブ42を気体圧力源44に切り換えて、この空間に気体圧力を供給することにより行われる。
【0121】
基板への塗布工程は、口金2の塗液溜め部52に塗液を供給する工程と、塗布領域に塗液を塗布する工程を有し、それらをたとえば交互に繰り返す。塗布領域に塗液を塗布する工程では、一回の工程で、塗液溜め部52内の塗液のうち一部(所定量)を使って塗布領域1面に塗布する。これにより、塗液溜め部52内の液面高さ(吐出孔から液面までの距離)は一定高さ下降するため、次の塗液供給工程で塗液を所定量供給(補給)し、液面を所定の高さ(塗液量)にする。
【0122】
そして、支持台14の上流側(図面における手前側)の側面には、基板4の塗布領域68の位置を計測する第1の位置センサとしてカメラ21、23が取り付けられ、かつ、塗布領域68の基準溝の位置を計測する第2の位置センサとしてカメラ22が取り付けられている。これらのカメラは、それぞれ、支持台14のY軸方向に独立して移動可能となるように、XおよびZ軸方向の微調整機構を介してY1搬送部24、Y3搬送部26、Y2搬送部25に取り付けられている。このY1〜Y3搬送部は、リニアガイド14a、14bによって構成され、カメラ21,22,23は、Y軸方向に移動した場合においてもテーブル面からの高さが一定になるよう構成されている。また、各カメラはモニタテレビに接続され視野の画像を表示できるように構成されている。
【0123】
さらに、本実施形態においては、コンピュータなどにて構成される制御部31と、サーボモーターなどで構成される移動駆動部34が設けられている。制御部31は、移動制御部33を有し、移動制御部33は移動駆動部34を介して塗布装置の動作を制御し、基板4と口金2とを、X方向に相対移動させる。また制御部31は、塗布条件を入力表示するタッチパネル部を備えた供給制御部32を有し、口金2への塗液の供給、口金からの塗液の吐出を制御する。
【0124】
続いて、塗液を塗布する基板について説明する。図16は、基板4を上から見た一例を示す図である。基板4には塗布領域68がある。塗布領域68のそれぞれには、塗布方向にのびる直線状のリブ35が全面に渡り所定間隔で形成され、リブの間に溝(凹部)を形成している。なお、図示しないが、背面板としての基板の輝度向上、消費電力低減といった性能向上のためには、該リブ間に溝を分断する横リブを形成してもよい。塗布領域68の四隅付近には、基板面に形成されたリブパターンとの位置関係を示すアライメントマークA1〜A4が設けられている。このアライメントマークは、塗布領域のリブパターンを形成するときに一緒に作成される。これにより、リブパターンとアライメントマークの位置関係が精度良く形成される。アライメントマークは、A1とA3を結ぶ直線がリブのパターンと平行になるように、また、A1とA2を結ぶ直線がリブのパターンと直交するように設けられる。そして、本実施形態においては、基準溝位置(基準凹部)を各塗布領域の中央の溝位置(凹部)とする。アライメントマークの間隔XA,YAおよび各塗液塗布溝の基準溝とアライメントマークの距離Ysは基板情報として制御部31に与える。
【0125】
次に、この基板と口金との位置合わせについて説明する。図17は、上述の装置に上述の基板を配置した状態を示す部分上面図(a)および部分正面図(b)である。X軸駆動部12の上流側端面には、口金2の位置を検出する位置センサとしてカメラ27が、機台のY軸方向中央の位置に取り付けられている。また、口金2のそれぞれの下面(吐出孔面)には、一列に並べられた吐出孔の中央近傍に、基板の基準溝(基準凹部)と位置あわせする基準吐出孔の位置を示すマークMが付されている。従って、X軸を操作することにより、カメラ27によって口金2の基準孔の位置を計測し、それぞれのX軸、Y軸座標を記憶させる。
【0126】
マークMからそれぞれの位置基準部37a、37bまでの距離Ym、Xmは高精度な寸法となっており、口金2が複数台ある場合、全ての口金間において、該Ym、Xmの各寸法バラツキを極力小さくすることで、どの口金を載置しても、高精度な位置に載置できるようにしている。
【0127】
そして、基板4においては、機台13のY軸方向中央を基準にしてあらかじめ基板情報に基づき位置決めしたカメラ21、23の位置に、テーブルのX軸を操作して下流側2個のアライメントマークA1、A2を移動させ、各々の位置を計測する。さらに、カメラ22により基板の基準溝のY軸方向の位置を計測する。なお、カメラ21,22,23,27の相対位置情報はあらかじめ制御部31に与えておく。こうして求めた口金2の基準吐出孔の位置座標と、塗布領域68の基準溝位置座標を基に、テーブルのY軸、θ軸を動作させて、各塗布領域において基板と口金各々の相対位置合わせを行う。
このように、Y軸方向において、塗布領域の基準溝を中央に、そして口金の基準孔も中央にすることで、基板4の歪みや口金2の加工精度による位置ずれ誤差を半減でき、塗布領域68に形成された全ての溝中心に対向して、口金2の吐出孔を位置合わせできる。
続いて塗布動作について説明する。塗布を開始する場合は、まず、口金2の塗液溜め部内に塗液を供給する。塗液の供給は前述したように図1の切換バルブ42を大気開放にした状態で開閉バルブ41を開いて、所定の量に達するまで供給する。次に、基板搭載に移る。
この動作は口金2内への塗液供給と並行して行うことが可能で、そうすることで口金2
への塗液供給の待ち時間を少なくすることができる。
【0128】
テーブル7を上流側端部に移動する。Y軸およびθ軸は中央ゼロの位置でテーブル面のほぼ中央に外部移載機により塗布する基板4を搭載し、塗布方向にのびるリブがテーブルのX軸方向とほぼ平行となる状態にして吸着固定する。外部移載機は例えば多軸のロボットを用い、ロボットのアームで基板4をテーブル7上部に横持ちする。テーブル7には複数の昇降可能なピンを設け、このピンを上昇して基板を受け取り、アームを退避させてピンを下降することにより基板をテーブル面に受け取る。
【0129】
次に、塗布領域68に塗液55を塗布する動作に入る。まず、基板位置決めを行う。テーブル7を移動させて、塗布領域68のアライメントマークA1、A2をカメラ21、23の視野に入れる。次に、カメラ21の視野中心を基準にアライメントマークA1のX、Y方向のずれ量を求める。また、カメラ23の視野中心からアライメントマークA2のX、Y方向のずれ量を求める。この2つのX軸方向のずれ量とアライメントマークの間隔YAから基板の傾きと、傾きを修正したときのアライメントマークA1の移動量を求める。
算出した結果に応じ、テーブルのθ軸を回転して基板の傾きを修正し、X、Y軸を移動してカメラ21の視野中心にアライメントマークA1を位置合わせする。
【0130】
この時点で、カメラ22の視野内には塗布領域68の塗液塗布溝の基準溝が観測されるので、溝の中心位置を判断し、テーブル7のY軸を移動することで、口金2の基準孔と塗布領域68の塗液塗布溝の基準溝中心とのY軸方向の位置を合わせる。
【0131】
位置決めが終わると塗液の塗布動作に移る。口金2の塗液溜め部内への塗液供給が完了していることを確認し(未完の場合は待つ)、テーブル7のX軸を塗布領域68の位置決め位置から下流方向に予めプログラムした速度で移動させる。X軸座標が、あらかじめ設定された塗液吐出位置になったら口金2から塗液を吐出し、吐出停止位置になれば吐出を停止する。この塗液の吐出および停止は、図1に示した切換バルブ42により行う。
【0132】
これで塗布領域68への塗液55の塗布が終了したことになる。なお、塗布が終わった口金を基板から離間させることで、吐出孔周辺の残存塗液が基板面に付着するのを防止できる。
【0133】
塗布を終了すると、基板排出に移る。基板4の排出はテーブル7を下流端に移動し、吸着した基板4を解除し、ピンを上昇して移載機により取り出す。移載機は上流側の基板搬入と下流側の排出専用に各1台配置することで、基板排出中に次に塗布する基板が準備できるので、基板搬入から排出までの時間を短縮することができる。基板4を排出した時点で一連の動作が終了する。連続して基板4に塗布する場合には、上記塗液供給から開始する。
【0134】
なお、上述した態様は、口金を固定し、テーブル(基板)を移動することで塗液を基板に塗布する態様であったが、口金を移動し、テーブル(基板)を固定することで塗液を基板に塗布しても同様の効果が得られる。
【実施例】
【0135】
<実施例1>
図1、2、3に示す口金ホルダー、塗布装置、移載装置を用いて、口金の載置を行った。
口金は長さが990mm、重量は45kgであり、上面に被ガイド部材をボルトで取り付けた。
【0136】
口金ホルダーには、口金の長手方向の位置を規制するガイド部材としてφ40mmのローラガイドを計4箇所設置し、幅方向のガイド部材としてφ30mmローラガイドを計8箇所設置した。移載装置は、台車を改造したものであり、油圧式で昇降可能となっている、
移載装置に備えたスライド機構には、フリーベアリングを用い、自動調芯機構には磁石の吸着力を用いた。
【0137】
移載装置で吊り下げた口金を口金ホルダー上方へ移動させていく。このとき、被ガイド部材が口金の長手方向の位置を規制するガイド部材の間に入るように移動させていく。
【0138】
口金は、口金ホルダーや周辺部材とぶつかることがなく、長手方向ガイド部材を目安に移載装置を移動させればよいので、容易に移動を終え、被ガイド部材が口金の長手方向の位置を規制するガイド部材の間に入れることができた。
【0139】
次に、移載装置の台車が移動しないようストッパをかけ、口金を下降させた。
被ガイド部材が、各ガイド部材にガイドされながら下降し、作業開始から、僅か2分程度で支持部に口金の載置を完了した。
【0140】
ここで、荷重バランス調整機構であるエアーシリンダーを作動させた。
【0141】
なお、荷重バランス機構に吊り下げられている荷重は、スライド機構15kg+口金45kgであるので、荷重バランス調整機構で40kgの力を発生させた。その結果、20kgの荷重が支持部に付与された。
【0142】
この状態から、幅方向への押し当て手段であるエアーシリンダーを作動させた後、長手方向押し当て手段であるエアーシリンダーを作動させた。
【0143】
スライド機構のフリーベアリングで滑らかにスライドし、口金は非常にスムーズに位置決め部材へ押し付けられた。また、この時点で、ガイド部材と被ガイド部材の当接が解除されているので、当該部分での摩擦による発塵は確認されなかった。
【0144】
その後、長手方向押し当て手段を解除し、さらに、幅方向への押し当て手段を作動させ、解除せずにそのままの状態にした。
【0145】
このとき、塗布装置のカメラで口金のマークMを確認したところ、ほぼモニター画面中央に位置していた。
【0146】
次に、荷重バランス調整機構を解除し、移載装置を退避させた。
【0147】
その後、固定手段であるボルトを用いて、両端4箇所の支持部で固定した。
【0148】
ことのき、塗布装置のカメラで口金のマークMを確認したところ、先ほどと変化なく、ほぼモニター画面中央に位置していた。
【0149】
次に、この状態で、口金の吐出孔が開口している面の真直度を測定した。
真直度は、市販の精密高さ測定器『ミツトヨ製 574シリーズ ハイトマチック HDF−N』を用いて、塗布機のテーブル面から吐出孔面までの距離を、口金の長手方向の片方の端部から7mm入ったところを1点目として、そこから等間隔(61mm)で計17点で測定した。そして、両端の測定点(1点目と17点目)を基準(ゼロ)とした時、他の測定点において最も大きな値を真直度とした。
【0150】
結果、真直度は6μmで、口金面とテーブル面の間隔は、口金中央付近が一番広い傾向になった。
【0151】
更に、上記口金と同サイズの、別の口金を口金ホルダーに搭載し、上記と同様に口金ホルダーに載置した。
【0152】
塗布装置のカメラで口金のマークMを確認したところ、先ほどと同じく、ほぼモニター画面中央に位置していた。
【0153】
真直度を測定したところ、4μmで、口金面とテーブル面の間隔は、口金中央付近が一番広い傾向になった。
【0154】
以上より、口金をぶつけることなく、短時間で容易に口金ホルダーへの載置を終えることができ、また、口金の取り付け、取り外しを繰り返しても口金を再現性よく固定できることがわかる。
<比較例1>
全てのガイド部材を取り外し、それ以外は実施例1と同様にして口金の載置を行ったところ、口金の支持面が口金ホルダーの上部と接触した。
そのまま、移載装置の位置を修正し、さらに口金を下降させたところ、長手方向位置決め部材と口金の下面が接触した。
【0155】
再度、移載装置の位置を修正し、口金を支持部に載置後、押し当て手段を動作させ口金の位置決めを行った。
【0156】
移載装置の位置を何度も修正したため、ここまでの間、10分以上の時間を要していた。
【0157】
ここで、真直度を測定したところ、40μmと悪化し、口金面とテーブル面の間隔は、口金中央付近が一番狭い傾向になった。
【0158】
この後、口金を取り外し、支持面を観察したところ、支持面の表面に口金ホルダーとの接触で生じた大きなバリが発生していた。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明は、プラズマディスプレイパネルの塗布装置に限らず、液晶用カラーフィルター(LCM)の塗布装置などにも応用することができ、その応用範囲がこれらに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】本発明の一実施態様に係る塗液の塗布装置の概略斜視図である。
【図2】図1に示した塗液の塗布装置の側面図である。
【図3】本発明の塗布装置に用いる口金ホルダーの一例正面図である。
【図4】口金を口金ホルダー内に導入開始する様子を示したの拡大図である。
【図5】口金を口金ホルダー内に載置し、固定するまでの手順を示した拡大図である。
【図6】口金を口金ホルダー内に載置し、固定するまでの手順を示した拡大図である。
【図7】口金を口金ホルダー内に載置し、固定するまでの手順を示した拡大図である。
【図8】口金を口金ホルダー内に載置し、固定するまでの手順を示した拡大図である。
【図9】口金を口金ホルダー内に載置し、固定するまでの手順を示した拡大図である。
【図10】口金を口金ホルダー内に載置し、固定するまでの手順を示した拡大図である。
【図11】口金を口金ホルダー内に載置し、固定するまでの手順を示した拡大図である。
【図12】口金を示した口金ホルダー内に載置し、固定するまでの手順を示した拡大図である。
【図13】図12に示した口金ホルダーおよび口金のX方向断面図である。
【図14】図1に示した口金のY方向断面図である。
【図15】図1に示した口金のX方向断面図である。
【図16】図1の装置に搭載された基板の上面図である。
【図17】図1の装置の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0161】
1 口金ホルダー
2 口金
3 支持部
4 基板
6 移載装置
7 テーブル
11 Y軸駆動部
11a、11b リニアガイド
12 X軸駆動部
12a,12b リニアガイド
13 機台
14 支持台
14a,14b リニアガイド
15 Z軸駆動部
15a,15b リニアガイド
16a,16b ガイド部材
17a,17b ガイド部材
18 被ガイド部材
19 クランプピン
20a,20b 当接面
21 カメラ
22 カメラ
23 カメラ
24 Y1搬送部
25 Y2搬送部
26 Y3搬送部
27 カメラ
28a,28b 当接面
29 支持面
30 保持手段
31 制御部
32 供給制御部
33 移動制御部
34 移動駆動部
35 リブ
36a,36b くぼみ部
37a,37b 位置基準部
38a,38b 位置決め部材
39a,39b 押し当て手段
40 荷重バランス調整機構
41 開閉バルブ
42 切換バルブ
43 塗液タンク
44 気体圧力源
45 スライド機構
46 フリーベアリング
47 固定手段
48 昇降手段
49 移載装置移動手段
52 塗液溜め部
53 吐出開口部
54 塗液供給口
55 塗液
56 吐出孔
57 パイプ
58 液面センサ
68 塗布領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を固定するテーブルと、該基板に塗液を塗布する口金と、該口金を基板に対面させて支持する口金ホルダーと、該テーブルと該口金ホルダーとを3次元的に相対移動させる移動手段とを備えた塗液の塗布装置であって、該口金ホルダーは、該口金を下方から支持する支持部と該口金を上方から該口金ホルダー内部に導入する際に該口金の長手方向または幅方向の位置を規制するガイド部材を有し、該口金は、該口金を該口金ホルダー上方から内部に導入する際に該ガイド部材と当接する被ガイド部材を有することを特徴とする塗液の塗布装置。
【請求項2】
前記ガイド部材または前記被ガイド部材のいずれか一方がコロを有し、他方が前記口金を上方から前記口金ホルダー内部に導入する際に該コロに当接する当接面を有していることを特徴とする請求項1に記載の塗液の塗布装置。
【請求項3】
前記口金は、長手方向または幅方向に位置基準部を有しており、前記口金ホルダーは、前記口金を載置した状態で該位置基準部と接触することで該口金の位置決めを行う位置決め部材を有し、かつ、該位置決め部材を該位置基準部へ押し当て接触させる押し当て手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載の塗液の塗布装置。
【請求項4】
前記口金を上方から前記口金ホルダー内部に導入する際には前記ガイド部材と前記被ガイド部材が当接し、該口金が該口金ホルダー内に載置された状態においては該ガイド部材と該被ガイド部材が当接しないように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塗液の塗布装置。
【請求項5】
前記口金が前記口金ホルダー内に載置された状態において前記ガイド部材と前記被ガイド部材間の距離が前記位置基準部と前記位置決め部材間の距離より大きくなるよう構成したことを特徴とする請求項4に記載の塗液の塗布装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の塗液の塗布装置に用いる口金の移載装置であって、前記被ガイド部材を保持し前記口金を吊り下げる機能を有する保持手段、該保持手段を上下方向に移動させる昇降手段および該移載装置全体を水平方向に移動可能とする移載装置移動手段を有することを特徴とする口金の移載装置。
【請求項7】
前記移載装置移動手段の他に、前記口金が少なくとも前記位置基準部と前記位置決め部材間の距離の範囲で前記口金を長手方向または幅方向への移動を可能とするスライド機構を備えていることを特徴とする請求項6に記載の口金の移載装置。
【請求項8】
前記支持部にかかる前記口金の荷重を軽減する荷重バランス調整機構を備えていることを特徴とする請求項6または7のいずれかに記載の口金の移載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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