説明

塗膜保護部材

【課題】種々の厚みのフランジ部に対応でき、設置時に作業者の保持が不要で作業性に優れる塗膜保護部材を提供する。
【解決手段】本発明に係る塗膜保護部材1は、鋼構造物を構成する鋼製部材に着脱可能に装着されて、前記鋼製部材の塗膜を保護する塗膜保護部材であって、平板状の本体部3と、該本体部の一辺側に形成され、本体部3に対して略90°の角度で屈曲されて延出する屈曲片部5とを有し、本体部3に前記鋼構造物に本体部3を保持させるための磁石7を備えたことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁を含む鋼構造物の製作、架設またはメンテナンス等において前記鋼構造物の構成する桁材等の部材に装着されて、該部材のクランプする際に該部材の塗膜を保護する塗膜保護部材に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼構造物、例えば橋梁の建設工事において、橋脚上に架設される桁材は、安全性、作業効率化の観点から予め塗装を完了してから架設される場合が多い。図21は架設された桁材100の斜視図である。
架設された桁材100には、図21に示すように、そのフランジ部101に親綱103を保持するための親柱105や、手摺107を保持するためのスタンション109や、あるいはチェーン110を保持するためのコの字クランプ111などが設置される。
これら、親柱105、スタンション109、及びコの字クランプ111などは、図21に示すように、フランジ部101を上下から挟むようにしてフランジ部101に保持されるものである。図22は、親柱105におけるクランプ部113を拡大して示したものであり、図23はスタンション109のクランプ部113を拡大して示したものである。
【0003】
クランプ部113は、上面側加圧アンカー115と受圧部117とを有し、上面側加圧アンカー115と受圧部117との間にフランジ部101を挟んで、上面側加圧アンカー115をネジ押圧することによって、フランジ部101を挟持する。
クランプ部113によってフランジ部101をクランプすると、フランジ部101の塗膜が剥離等して損傷するという問題がある。
【0004】
このような問題を直接解決するための部材に関しては、発明者の知る限り提案されていない。
もっとも、クランプ部113によるフランジ部101の塗膜保護ではないが、足場吊りチェーンが桁材100のフランジ部101と接触することによる塗膜の損傷を防止する目的で開発された桁材の塗膜保護構造が提案されている(特許文献1参照)。
特許文献1に提案された保護材は、フランジ辺縁板厚に嵌合される接続部と、この接続部の両側縁からフランジ部の上下両面方向へ平行に延びてフランジ部の上下両面に挟持される、一対の保持板とからなるものである(特許文献1の請求項1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3445574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された保護材は、足場吊りチェーンが桁材100のフランジ部101と接触することによる塗膜の損傷を防止するためのものであるが、これを仮に本願発明が目的としているクランプ部113によるクランプ時の保護部材として利用した場合には、以下のような問題がある。
まず、特許文献1に開示されたものは、断面がコ字状になってフランジ部101を挟持するものであるが、フランジ部101の厚みは種々のものがあるところ、断面がコ字状になっていればフランジ部101の厚みに応じたコ字のものが必要となり、そのため保護材の種類が増えるという問題がある。
また、コ字状で挟持させて保持していたとしても、強風などで外れてしまうことが考えられ、結局、作業者が手で保持しながらの作業となり、作業性が悪い。
また、特許文献1には、保護材の材質について、ウレタン樹脂などの強靭で弾力性のある合成樹脂からなっていると記載されている(特許文献1の段落[0018]参照)が、そのような材質では、上面側加圧アンカー115の爪などが貫通してしまい、塗膜の保護をすることができない。
【0007】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、種々の厚みのフランジ部に対応でき、設置時に作業者の保持が不要で作業性に優れる塗膜保護部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る塗膜保護部材は、鋼構造物を構成する鋼製部材に着脱可能に装着されて、前記鋼製部材の塗膜を保護する塗膜保護部材であって、平板状の本体部と、該本体部の一辺側に形成され、前記本体部に対して略90°の角度で屈曲されて延出する屈曲片部とを有し、前記鋼構造物に前記本体部を保持させるための磁石を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記本体部は、前記屈曲片が屈曲する側と反対側に曲げることができるように形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
(3)また、上記(2)に記載のものにおいて、前記本体部における曲げ部となる部位を境界にして、前記屈曲片部側と、該屈曲片部側の反対側のそれぞれに前記磁石が設置されていることを特徴とするものである。
【0011】
(4)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、前記屈曲片部に磁石が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
(5)また、上記(2)乃至(4)のいずれかに記載のものにおいて、前記本体部を曲げたときに形成される曲げ部は、曲げた状態で内角側に配置されて溶接ビードを避けることができるようになっていることを特徴とするものである。
【0013】
(6)また、上記(1)乃至(5)のいずれかに記載のものにおいて、前記本体部及び屈曲片部は樹脂によって形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
(7)また、上記(1)乃至(6)のいずれかに記載のものにおいて、前記本体部における前記屈曲片部が屈曲する側の面に、該面を覆う鋼板を、着脱可能に設置したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の塗膜保護部材は、鋼構造物を構成する鋼製部材に着脱可能に装着されて、前記鋼製部材の塗膜を保護する塗膜保護部材であって、平板状の本体部と、該本体部の一辺側に形成され、前記本体部に対して略90°の角度で屈曲されて延出する屈曲片部とを有し、前記鋼構造物に前記本体部を保持させるための磁石を備えたことにより、例えば桁材のフランジ部に装着する場合、フランジ部の厚みに拘わらず装着することができる。また、磁石を備えているので鋼製部材に吸着させることができ、作業性に優れる。さらに、屈曲片部が塗膜保護部材を装着している箇所を特定するマーカーとして機能し、これによってクランプする位置を容易に視認することができ、作業性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る塗膜保護部材の側面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る塗膜保護部材の平面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る塗膜保護部材を折り曲げた状態の側面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る塗膜保護部材の使用状態を説明する説明図である(その1)。
【図5】本発明の一実施の形態に係る塗膜保護部材の使用状態を説明する説明図である(その2)。
【図6】本発明の一実施の形態に係る塗膜保護部材の使用状態を説明する説明図である(その3)。
【図7】本発明の一実施の形態に係る塗膜保護部材の使用状態を説明する説明図である(その4)。
【図8】本発明の一実施の形態に係る塗膜保護部材の使用状態を説明する説明図である(その5)。
【図9】本発明の一実施の形態に係る塗膜保護部材の使用状態を説明する説明図である(その6)。
【図10】本発明の一実施の形態に係る塗膜保護部材の使用状態を説明する説明図である(その7)。
【図11】本発明の一実施の形態に係る塗膜保護部材の使用状態を説明する説明図である(その8)。
【図12】本発明の実施の形態2に係る塗膜保護部材の斜視図である。
【図13】本発明の実施の形態3に係る塗膜保護部材の側面図である。
【図14】本発明の実施の形態3に係る塗膜保護部材の平面図である。
【図15】本発明の実施の形態3に係る塗膜保護部材の他の態様の側面図である。
【図16】本発明の実施の形態3に係る塗膜保護部材の他の態様の平面図である。
【図17】本発明の実施の形態3に係る塗膜保護部材の側面図である。
【図18】本発明の実施の形態3に係る塗膜保護部材の平面図である。
【図19】本発明の実施の形態3に係る塗膜保護部材の使用方法の説明図である。
【図20】本発明の塗膜保護部材が使用される場合の説明図である。
【図21】鋼構造物の一態様として橋梁の桁材を架設した状態の説明図である。
【図22】図21に示した親柱のクランプ部の説明図である。
【図23】図21に示したスタンションのクランプ部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施の形態1]
本発明の一実施の形態に係る塗膜保護部材を、図1〜図3に基づいて説明する。なお、本実施の形態では鋼構造物の中で特に橋梁を例に挙げ、橋梁の桁材におけるフランジ部の塗膜保護を例に挙げて説明するが、本発明が対象としている鋼構造物は橋梁に限られるものではなく、また鋼製部材も橋梁の桁材に限るものでもなく、クランプされる鋼製部材を広く含む。
【0018】
本実施の形態に係る塗膜保護部材1は、図1に示すように、平板状の本体部3と、該本体部3の一辺側に形成され、前記本体部3に対して略90°の角度で屈曲されて延出する屈曲片部5とを有し、前記鋼構造物に塗膜保護部材1を保持させるための磁石7を備えたことを特徴とするものである。
以下、さらに詳細に説明する。
【0019】
<全体形状>
本実施の形態の塗膜保護部材1は、図1、図2に示すように、側面形状がL字形状をしている。
<材質>
本体部3及び屈曲片部5は連続して形成されており、樹脂材によって形成されている。樹脂材の硬度は65〜90度程度の半硬質とするが、最も好ましい硬度は80〜85度である。樹脂材の種類は特に限定されるものではなく、例えばポリプロピレン材、塩化ビニールなどを使用できる。
【0020】
<本体部>
本体部3は、図1及び図2に示すように薄い板状で矩形状に形成されている。本体部3の中央部には、屈曲片が屈曲する側の面に円弧状の溝(以下、円弧溝9という)が2本所定間隔を離して幅方向に形成されている。
円弧溝9は、図3に示すように、本体部3を屈曲する際の屈曲部11となる部位である。図3に示すように、円弧溝9を所定間隔離して形成することで、本体部3を円弧溝9で折り曲げたときに、2本の円弧溝9の間に溶接ビード121を避ける空間13を形成できるようにしている。円弧溝9で折り曲げたときに、円弧溝で挟まれた部位が内角側に配置され、それによって空間13が形成されるのである。
【0021】
なお、本実施の形態では円弧溝9は所定間隔を離して2本形成した例を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、3本以上、たとえば、3本、4本、5本、6本と円弧溝9を設けておき、屈曲部11を自由に選択できるようにしてもよい。
このようにすることで、塗膜保護の対象となるフランジ部101の突出長さに応じて適切な対応ができる。
また、溝の形状は円弧状のものに限られず、矩形状やV字状であってもよい。もっとも、円弧状にすることで、折り曲げたときに当該部位から破損しにくいという効果がある。
【0022】
本体部3には、円弧溝9の両側すなわち円弧溝9を挟んで屈曲片側とその反対側に幅方向に延びる矩形溝15が形成されている。そして、矩形溝15に板状の磁石7が設置されている。板状の磁石7の上面は本体部3と面一になっている。
【0023】
<屈曲片部>
屈曲片部5は、本体部3に連続して形成され、本体部3に対して略90°の角度で屈曲されて延出している。屈曲片部5の内面側には、板状の磁石7が設置されている。なお、本実施の形態では屈曲片部5に磁石7を設けているので、塗膜保護部材1をフランジ部101に強固に設置できる。もっとも、屈曲片部5に設ける磁石7は必須ではなく、本体部3のみに設けるようにしてもよい。
【0024】
以上のように構成された本実施の形態に係る塗膜保護部材1の使用方法を、図4〜図11に基づいて説明する。
使用方法の一例として、図4に示すように、桁材100のフランジ部101に親柱105を設置する場合において、親柱105の下部のクランプ部113でフランジ部101をクランプする際に使用する。
【0025】
図4に示す例は、箱桁の場合であり、フランジ部101の突出長さが短く、例えば100mm以下のような場合には、親柱105のクランプ部113の奥行きよりも短く、クランプ部113を奥まで挿入することができない。このような場合に問題となってくるのがフランジ部101と腹板119の間にある溶接ビード121および腹板119の側面とクランプ部113先端とが接触または干渉することである。
【0026】
このような問題を解決するため、図4に示すように、塗膜保護部材1を、円弧溝9の部分で屈曲片部5の延出側と反対側に折り曲げ、本体部3における屈曲片部側をフランジ部101下面に当接させ、本体部3における反対側を腹板119に当接させる。折り曲げ部が二箇所あることから、フランジ部101と腹板119の境界部にある溶接ビード121に本体部3が当接しないで、これを回避できる。
【0027】
上記のように本実施の形態によれば、本体部3によってフランジ部101下面、溶接ビード121、腹板119の側面を覆い、これらの部位の塗膜を保護できる。
また、屈曲片部5はフランジ部101の端面(厚み部)を覆い、当該部位の塗膜を保護する。
本実施の形態の塗膜保護部材1は、塗膜保護部材1を桁材100に当てるだけで、磁石7がフランジ部101に吸着するので、作業者が手を離しても所定の位置に塗膜保護部材1が保持される。したがって、強風下であっても、作業者による保持が不要となり円滑な作業が可能となる。
【0028】
塗膜保護部材1を装着した後で、図4に示すように、親柱105のクランプ部113を設置する。この例では、桁材100の上面はコンクリートが打設されるため、保護が必要とされず、フランジ部101の上面には塗膜保護部材1を装着していない。
【0029】
本実施の形態の塗膜保護部材1は、磁石7によって保持できるので、複数の塗膜保護部材1を必要な箇所に予め装着し、その後で親柱105等を設置することができる。その場合に、屈曲片がフランジ部101端面に延出しているので、屈曲片部5が目印となってフランジ部101上面側からでも塗膜保護部材1を装着した位置を認識することができ、この意味でも円滑な作業が可能となる。
【0030】
図5に示す例は、親柱105を設置する桁材100が鋼桁の場合のようにフランジ部101の突出長が大きい場合である。この場合は、図5に示すように、本体部3を折り曲げることなく真直ぐな状態のままで使用する。親柱105のクランプ部113をフランジ部101に奥まで挿入することができ、それ故に親柱105の固定が安定する。このように、折り曲げない場合には、本体部3の長さが長くなり、それ故にクランプ部113を奥まで挿入してもクランプ部113を全長に亘って覆うことがきるので、好ましい。
【0031】
図6は、図4と同様に箱桁のフランジ部101に親柱105を設置する場合である。図6に示す例では、箱桁の上面の塗装も保護する必要がある場合である。この場合には塗膜保護部材1を、図6に示すように、本体部3を折り曲げないでフランジ部101の上面に設置する。なお、親柱105の場合には、クランプの強度が強いので、特に上面側加圧アンカー115の受圧面積が小さい場合や、あるいは上面側加圧アンカー115に爪部を有するような場合には、本体部3の上面に薄鋼板37を設置して本体部3を保護するようにするのが好ましい。
このように本実施の形態の塗膜保護部1によれば、フランジ部101の上下面を保護する必要がある場合であっても、上下面にそれぞれ別の塗膜保護部材1を設置することが対応できるので、種々のフランジ部101の厚みに対して単一の種類のものを使用でき、フランジ部101の厚みに応じて複数種類のものを製造しなければならない従来のコ字状のものに対してコスト低減が可能である。
【0032】
図7は、図5と同様に親柱105を設置する桁材100が鋼桁の場合であって、フランジ部101の突出部の長さが長い場合である。この場合は、図7に示すように、上下の塗膜保護部材1共に折り曲げせずに伸ばした状態で使用する。そして、上面側の塗膜保護部材1の本体部3の上面には薄い鋼板を設置するのが好ましい。
【0033】
上記の説明は、親柱105を設置する場合であったが、図8〜図11は桁材100のフランジ部101にスタンション109を設置する場合である。
スタンション109を設置する場合も親柱105の場合と基本的に同様である。図8に示す例は、箱桁にスタンション109を設置する場合であって桁上面を保護する必要がない場合の例であり、図4に示した場合と同様に、本体部3を円弧溝9で折り曲げて使用する。
図9に示す例は、鋼桁にスタンション109を設置する場合であって桁上面を保護する必要がない場合の例であり、図5に示した場合と同様に、フランジ部101下面には塗膜保護部材1を折り曲げないで設置する。
図10に示す例は、箱桁にスタンション109を設置する場合であって桁上面も保護する必要がある場合の例であり、図6に示した場合と同様に、フランジ部101上面には塗膜保護部材1を折り曲げないで設置する。
【0034】
図11に示す例は、鋼桁にスタンション109を設置する場合であって桁上面も保護する必要がある場合の例であり、図7に示した場合と同様に、フランジ部101下面には塗膜保護部材1を折り曲げないで設置する。
【0035】
なお、上記の説明では親柱105、スタンション109を設置する場合について説明したが、図21に示したコの字クランプ111の場合であっても上記の親柱105と同様に使用することができる。
【0036】
[実施の形態2]
本発明の実施の形態2を図12に基づいて説明する。図12において、実施の形態1を示した図1、図2と同一部分には同一符号を付してある。
本実施の形態の塗膜保護部材21は、本体部3を2枚の板材で形成したものである。一枚は、硬度の高い硬質の樹脂材又は薄鋼板で形成し硬質板23とし、他は軟質の樹脂材で形成した軟質板25とし、軟質板25の一端側を硬質板23の一端側からベロ状に延出させたものである。
軟質板25におけるベロ状の部分によって、フランジ部101と、腹板119あるいはウェブ119との溶接部や腹板119、ウェブ119の側面を保護する。軟質板25は、湾曲させるように曲げることができるので、湾曲させて曲げたときに、溶接ビード121を避ける空間を形成できる。
なお、本実施の形態の塗膜保護部材21は、図12に示すように、屈曲片部5の内面側、硬質板23の両側部に板状の磁石7を設置している。
【0037】
[実施の形態3]
本発明の実施の形態3を、図13、図14に基づいて説明する。図13は側面図、図14は平面図である。実施の形態1、2と同一部分、相当部分には同一の符号を付してある。
本実施の形態の塗膜保護部材31は、本体部3の両側の一部を内方に折り返した折り返し部33を形成し、折り返し部33と本体部3との間にスライド溝35を形成し、該スライド溝35に薄鋼板37を挿入可能にしたものである。
【0038】
なお、本実施の形態の塗膜保護部材31は、本体部3における屈曲片部5と反対側の辺に溶接ビード121や腹板119あるいはウェブ119を保護するための部位38を、本体部3と一体的に設けている。
【0039】
本実施の形態では薄鋼板37を挿入可能にしたので、使用により薄鋼板37が変形したり、上面側加圧アンカー115の爪によって孔が形成されたりした場合には、交換することができる。
また、薄鋼板37は必ず挿入する必要はなく、例えばスタンション109のクランプ部113の受圧面積が広いような場合には、薄鋼板37を挿入しないで使用することもできる。
【0040】
本実施の形態の塗膜保護部材31は、本体部3の端部に溶接ビード121や腹板119あるいはウェブ119を保護するための部位を設けているので、図4、図6、図8、図10に示したフランジ部101の下面側に使用すればよい。
【0041】
図15、図16は本実施の形態の他の態様の塗膜保護部材31であって、本体部3に設置する板状の磁石7を、本体部3の両側に設けた例である。
【0042】
[実施の形態4]
図17〜図19は本発明の実施の形態3に係る塗膜保護部材の説明図であり、図17が側面図、図18が一部を破砕して示す底面図、図19が使用方法の説明図である。
【0043】
本実施の形態に係る塗膜保護部材41は、実施の形態3のものにおいて、本体部3における屈曲片部5と反対側の辺に溶接ビード121や腹板119あるいはウェブ119を保護するための部位を設けないようにしたものである。
【0044】
本実施の形態の塗膜保護部材41は、溶接ビード121や腹板119あるいはウェブ119を保護するための部位を設けていないので、図6、図10に示した場合のフランジ部101の上面側、あるいは図7、図9、図11の下面側に設置するようにすればよい。
また、図21に示したコの字クランプ111のようにクランプ部113のフランジ部101への挿入長さが短い場合に使用するのも好適である。なぜなら、クランプ部113のフランジ部101への挿入長さが短い場合には、クランプ部113の先端がフランジ部101と腹板119あるいはウェブ119の接合部の溶接ビードに届かないので、溶接ビードや腹板119あるいはウェブ119の側面を保護する必要がないからである。
なお、図17〜図19に示した例では、薄鋼板を保持するためのスライド溝35を本体部3の両側の辺に設けた例を示したが、スライド溝35を設ける部位はこれに限られず、屈曲片部5を設けた辺と、これに対向する辺に設けるようにしてもよい。
【0045】
上記の実施の形態では、塗膜保護部材を装着する対象となる鋼製部材として鋼構造物の鋼桁や箱桁のフランジ部101を例に挙げて説明した。
しかし、本発明の塗膜保護部材を装着する対象としている「鋼構造物を構成する鋼製部材」とは既に鋼構造物として組み立てられているものに限られず、組み立て前のH形鋼なども対象となる。この場合、例えば図20に示すようにH形鋼122を重機123で吊り下げ支持するためにクランプ部材125でH形鋼122のフランジ部101をクランプするが、このような場合にもクランプ部材125を設置する箇所に塗膜保護部材を使用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 塗膜保護部材
3 本体部
5 屈曲片部
7 磁石
9 円弧溝
11 屈曲部
13 空間
15 矩形溝
21 塗膜保護部材
23 硬質板
25 軟質板
31 塗膜保護部材
33 折り返し部
35 スライド溝
37 薄鋼板
41 塗膜保護部材
100 桁材
101 フランジ部
103 親綱
105 親柱
107 手摺
109 スタンション
111 コの字クランプ
113 クランプ部
115 上面側加圧アンカー
117 受圧部
119 腹板またはウェブ
121 溶接ビード
122 H形鋼
123 重機
125 クランプ部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼構造物を構成する鋼製部材に着脱可能に装着されて、前記鋼製部材の塗膜を保護する塗膜保護部材であって、
平板状の本体部と、該本体部の一辺側に形成され、前記本体部に対して略90°の角度で屈曲されて延出する屈曲片部とを有し、前記鋼構造物に前記本体部を保持させるための磁石を備えたことを特徴とする塗膜保護部材。
【請求項2】
前記本体部は、前記屈曲片が屈曲する側と反対側に曲げることができるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の塗膜保護部材。
【請求項3】
前記本体部における曲げ部となる部位を境界にして、前記屈曲片部側と、該屈曲片部側の反対側のそれぞれに前記磁石が設置されていることを特徴とする請求項2記載の塗膜保護部材。
【請求項4】
前記屈曲片部に磁石が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の塗膜保護部材。
【請求項5】
前記本体部を曲げたときに形成される曲げ部は、曲げた状態で内角側に配置されて溶接ビードを避けることができるようになっていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の塗膜保護部材。
【請求項6】
前記本体部及び屈曲片部は樹脂によって形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の塗膜保護部材。
【請求項7】
前記本体部における前記屈曲片部が屈曲する側の面に、該面を覆う鋼板を、着脱可能に設置したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の塗膜保護部材。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2011−157776(P2011−157776A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21749(P2010−21749)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(599159439)
【出願人】(390018245)イワキ化成株式会社 (8)
【Fターム(参考)】