説明

塗装ブース設備

【課題】湿式洗浄方式に対する優位性や有利性の一層高い塗装ブース設備を提供する。
【解決手段】室間開口11を通じて塗装作業室1に連通させたフィルタ室4に円筒周面部を濾材により形成した円筒状フィルタユニット6を内装し、この円筒状フィルタユニット6の内部をその回転を許しながら吸引排気路21を通じた吸引排気により負圧状態に保つ構造にし、この円筒状フィルタユニット6における濾材の外表面に粉状被覆剤からなる通気性を有する濾過用被覆層Sを形成する被覆層形成手段T、及び、浮遊塗料ミストmの捕集で塗料蓄積した被覆層Sを円筒状フィルタユニット6の濾材から剥離させて回収する回収手段29,32を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車ボディなどの塗装を行う塗装ブース設備に関し、詳しくは、被塗物を液状塗料の噴霧により塗装する塗装作業室と、この塗装作業室からの排気中に含まれる浮遊塗料ミストを捕集して排気を浄化する乾式フィルタユニットとを備える塗装ブース設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗装作業室からの排気中に含まれる浮遊塗料ミスト(即ち、被塗物に対する噴霧塗料のうち被塗物に塗着せずに排気とともに塗装作業室から排出される塗料ミスト)を捕集して排気を浄化するには、塗装作業室からの排気を洗浄水とともに絞り流路(ベンチュリ)に高速通過させて排気と洗浄水とを強制的に気液接触させることで排気中の塗料ミストを洗浄水に捕捉させる湿式洗浄方式が広く使用されている。
【0003】
また、この湿式洗浄方式に代え、浮遊塗料ミストを含む塗装作業室からの排気を乾式フィルタに通過させることで、その塗料ミストを乾式フィルタにより捕集して排気を浄化する乾式フィルタ方式も提案され一部において使用されている(特許文献1及び2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−76889号公報
【特許文献2】実公昭52−20525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記した湿式洗浄方式では次の問題があった。
・排気を洗浄水とともに絞り流路に高速通過させるため排気系の圧力損失(換言すれば排気抵抗)が大きく排気用送風機に高出力のものを要するとともに排気用送風機の消費動力が大きい。
・洗浄水を排気とともに絞り流路に高速通過させて分散状態で排気に接触させるため騒音が大きい。
・塗料ミストを捕集した洗浄水の処理に大きな処理水槽及びその処理水槽に対するポンプなどの種々の付帯装置を要し設備が大型化する。
・使用済み洗浄水から分離回収した捕集塗料分は含水率が大きく、また凝集用の薬品なども含んでおり、それの後処理負担が大きい。
・排気と洗浄水との気液接触による塗料ミスト捕集のため塗料ミストを捕集して浄化した排気は湿度が極めて高く、この湿度の高い浄化排気を塗装作業室の換気用空気などとして再利用するには相当の除湿を要し、その除湿に要する消費動力が大きい。
【0006】
一方、前記した従来の乾式フィルタ方式では湿式洗浄方式で生じる上記の如き問題を解消するのに有効であるものの、粘着性を有する捕集塗料ミストの付着によりフィルタ濾材が早期に目詰まりするため頻繁なフィルタ交換が必要となり、メンテナンスの負担が大きい問題があった。
【0007】
また、乾式フィルタを洗浄により再生して継続使用することも考えられるが、粘着性をもってフィルタ濾材に付着した塗料分を効率的に除去するには薬剤を混合した洗浄液が大量に必要となり、このため、程度の差こそあれ湿式洗浄方式と同種の問題が生じる。
【0008】
これらの実情に鑑み、本発明の主たる課題は、基本的には乾式フィルタ方式を採用しながらも合理的な捕集回収方式を採ることにより、乾式フィルタ方式で生じる上記の如き問題を効果的に解消することができて、湿式洗浄方式に対する優位性や有利性が一層高い塗装ブース設備を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
・本発明の第1特徴構成は塗装ブース設備に係り、その特徴は、
被塗物を液状塗料の噴霧により塗装する塗装作業室と、この塗装作業室からの排気中に含まれる浮遊塗料ミストを捕集して排気を浄化する乾式フィルタユニットとを備える塗装ブース設備であって、
前記塗装作業室に対し室間開口を通じて連通させたフィルタ室を設け、
円筒周面部を濾材により形成した円筒状フィルタユニットを前記乾式フィルタユニットとして前記フィルタ室に内装し、
この円筒状フィルタユニットをその円筒形状の中心軸芯周りで駆動手段により回転させるとともに、この回転を許容する状態で円筒状フィルタユニットの内部に吸引排気路を連通させて、この吸引排気路を通じた吸引排気により円筒状フィルタユニットの内部を負圧状態に保つ構造にし、
前記円筒状フィルタユニットにおける前記濾材の外表面に粉状の被覆剤からなる通気性を有する濾過用の被覆層を形成する被覆層形成手段、及び、浮遊塗料ミストの捕集で塗料蓄積した前記被覆層を前記円筒状フィルタユニットの前記濾材から剥離させて回収する回収手段を設けてある点にある。
【0010】
つまり、この構成によれば、吸引排気路を通じた吸引排気により円筒状フィルタユニットの内部を負圧状態(即ち、外部に比べて低い圧力状態)に保つから、円筒状フィルタユニットの円筒周面部に吸引作用が生じて、その吸引作用により塗装作業室の室内気が室間開口を通じ排気としてフィルタ室に流入し、その流入排気は被覆層形成手段により円筒状フィルタユニットにおける円筒周面部の濾材外表面に形成した粉状被覆剤からなる上記濾過用の被覆層及び濾材をその順に通過して円筒状フィルタユニットの内部に吸入される。
【0011】
この吸入過程において、塗装作業室からの排気中に含まれる浮遊塗料ミストは濾材外表面の被覆層により捕捉されて排気中から分離捕集され、これにより、塗料ミストが直接に濾材に付着して付着塗料により濾材が目詰まりすることを防止した状態で排気を浄化することができる。
【0012】
このように浄化された排気は濾材を通過し円筒状フィルタユニットの内部を経て吸引排気路を通じ所定の排出部に排出される。また、この吸引排気路を通じた吸引排気により円筒状フィルタユニットの内部が負圧状態に保たれることで、円筒状フィルタユニットの回転に対しても粉状被覆剤からなる被覆層は円筒状フィルタユニットにおける円筒周面部の濾材外表面に安定的に保持される。
【0013】
しかも、円筒状フィルタユニットの円筒周面部に濾材及び被覆層を設けることから、一般的な平板状の乾式フィルタユニットに比べフィルタユニットをコンパクトにしながら大きな濾過面積を確保することができ、さらに、平板状のフィルタユニットやバッグフィルタなどでは多くの場合、捕集物の分布に偏りが生じるが、上記構成によれば駆動手段により円筒状フィルタユニットをその円筒形状の中心軸芯周りで回転させるから、フィルタ室に流入する排気気流の偏流等が原因で塗料ミスト捕集量に偏りが生じること(即ち、後述の回収手段により剥離回収する被覆層の塗料蓄積量が円筒状フィルタユニットの円周方向において差のあるものとなること)を効果的に抑止することができ、これらのことが相俟って、排気系の圧力損失(排気抵抗)の増大による動力ロスや塗料ミスト捕集量が少ないままで被覆層を剥離回収してしまう無駄を回避することができて、塗料ミスト捕集運転の運転効率を効果的に高めることができる。
【0014】
上記の如き塗料ミスト捕集において捕集塗料の蓄積量がある程度大きくなった被覆層は回収手段により円筒状フィルタユニットの濾材から剥離させて回収するが、もともと被覆層は粉状の被覆剤からなるから、この剥離による回収は極めて容易であり、そして、被覆層を剥離回収した後の濾材外表面に再度、被覆層を被覆層形成手段により形成することで、乾式フィルタユニットである円筒状フィルタユニットを容易に再生更新して継続使用することができる。
【0015】
即ち、上記構成によれば、先述の如き湿式洗浄方式における問題を効果的に解消することができ、また、頻繁なフィルタ交換が必要となったりフィルタ洗浄に薬剤を混合した洗浄液が大量に必要になるなどの従来の乾式フィルタ方式で生じる問題も効果的に解消することができ、さらには上記の如くフィルタユニットをコンパクト化するとともに、塗料ミスト捕集運転の運転効率を効果的に高めることができ、これらのことから、これまで一般的に用いられている湿式洗浄方式に対する優位性や有利性が一層高い優れた塗装ブース設備とすることができる。
【0016】
なお、円筒状フィルタユニットに代え、濾材をコンベア状(キャタピラ状)に回動させるフィルタユニットを採用して、その濾材外表面に粉状被覆剤からなる濾過用の被覆層を形成する方式も考えられるが、この場合、円筒状フィルタユニットをその円筒形状の中心軸芯周りで回転させるのに比べて、濾材をコンベア状(キャタピラ状)に回動させるための構造が複雑になり設備の簡素化の面で上記構成に比べ劣ったものとなる。
【0017】
また、このコンベア方式のフィルタユニットでは、濾材により囲まれるユニット内部空間を負圧状態にするのに断面形状が円である円筒状フィルタユニットに比べ圧力分布に偏りが生じ易くて濾材表面の吸引力を均一にすることが難しく、このため、塗料ミスト捕集運転の運転効率面でも上記構成に比べ劣ったものになる。
【0018】
上記構成の実施において被覆層の形成剤とする粉状被覆剤には、石灰、酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化バリウム、粉体塗料、二酸化チタンや酸化鉄などの顔料、草木灰など、粉状のもので化学的に安定なものであれば種々のものを採用することができる。
【0019】
また、粉状被覆剤として、それ自身があるいはそれによる形成被覆層が塗料ミストの溶剤液分を吸収する吸液性(水性塗料ミストの場合は吸水性や吸湿性)を備えるようなものを用いれば、捕集した塗料ミストの粘着性を一層効果的に低下させることができて、回収被覆層の後処理を一層容易にするなど取り扱い面で一層有利になる。
【0020】
使用する粉状被覆剤によっては、濾材の外表面に形成する被覆層に水噴霧や蒸気噴霧を行うなどして被覆層に僅かな水分を含ませ、これにより塗料ミストの捕捉性や濾材外表面における被覆層の保持性あるいは回収時における被覆層の剥離性などを高めるようにしてもよい。
【0021】
濾材外表面に被覆層を形成する被覆層形成手段及び捕集塗料が蓄積した被覆層を濾材から剥離させる回収手段には夫々、種々の形式・構造のものを採用することができ、また、それら被覆層形成手段及び回収手段は、塗料ミスト捕集運転を停止した状態で被覆層の剥離回収及び形成(再形成)を行なう方式のもの、あるいは、塗料ミスト捕集運転を行ないながら円筒状フィルタユニットの円筒周面部における被覆層の回収及び形成(再形成)を部分的かつ順次に行なう方式、あるいは、それら方式を組み合わせた方式など、運用方式面でも種々の方式のものを採用することができる。
【0022】
フィルタ室に内装する円筒状フィルタユニットは1ユニットに限られるものではなく、複数の円筒状フィルタユニットを並列的に配置してフィルタ室に内装してもよい。
【0023】
複数の円筒状フィルタユニットをフィルタ室に内装する場合、被覆層形成手段及び回収手段は夫々、複数の円筒状フィルタユニットについて兼用のものにしてもよく、また、各別のものにしてもよい。
【0024】
・本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記被覆層形成手段は、前記円筒状フィルタユニットの回転に伴いその回転方向における特定位置で前記濾材の外表面に前記被覆層を連続的に形成する構成にしてある点にある。
【0025】
つまり、この構成によれば、円筒状フィルタユニットの回転に伴いその回転方向の特定位置において、円筒状フィルタユニットの円筒周面部における濾材の外表面に被覆層を円周方向で順次に連続して形成していくから、即ち、円筒状フィルタユニットの回転を利用して円筒状フィルタユニットの円筒周面部に被覆層を形成するから、円筒状フィルタユニットの全体について未だ被覆層が形成されていない状態、あるいは、捕集塗料が蓄積した被覆層を円筒状フィルタユニットの全体について剥離回収した状態から被覆層を新たに形成ないし再形成する場合にしても、例えば円筒状フィルタユニットの回転を停止した状態で円筒状フィルタユニットの全体に被覆層を形成するのに比べ、被覆層形成手段を簡略なものにしながら被覆層を容易にかつ能率良く形成することができる。
【0026】
また特に、この構成によれば、円筒状フィルタユニットの回転に伴いその回転方向の特定位置において塗料蓄積被覆層を回収手段により順次に連続して剥離回収しながら、それに続いて、その剥離回収済みの部分に新たな被覆層を被覆層形成手段により順次に再形成していくといったことも可能になり、この場合には、被覆層形成手段を簡略なものにしながら被覆層を容易にかつ能率良く形成し得ることに加え、塗料ミスト捕集運転を行いながら被覆層の更新(換言すれば、フィルタユニットの再生)を行なうことができて、塗装ブース設備の稼動効率を一層効果的に高めることもできる。
【0027】
・本発明の第3特徴構成は、第2特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記被覆層形成手段として、粉状被覆剤を浮遊離散が自在な状態に堆積させた被覆剤堆積層を前記円筒状フィルタユニットの回転方向における特定位置で前記濾材の外表面に近接させた状態に配置してある点にある。
【0028】
つまり、この構成によれば、上記特定位置において円筒状フィルタユニットの円筒周面部における吸引作用(即ち、内部を負圧状態にすることにより生じる吸引作用)により被覆剤堆積層における粉状被覆剤を浮遊離散させて濾材の外表面に付着させる形態で、円筒状フィルタユニットの回転に伴い被覆層を円筒状フィルタユニットの円周方向で順次に連続して形成していくことができるから、即ち、円筒状フィルタユニットの回転のみならず吸引作用も利用した状態で被覆層を連続的に形成するから、設備構成を一層簡素化することができる。
【0029】
・本発明の第4特徴構成は、第3特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記被覆剤堆積層をそれに対する気体の吹き付けにより流動床化する被覆層形成促進用の気体吹き付け手段を設けてある点にある。
【0030】
つまり、この構成によれば、円筒状フィルタユニットの円筒周面部における吸引作用だけで被覆剤堆積層の粉状被覆剤を浮遊離散させるとともに濾材の外表面に付着させて被覆層を形成するのに比べ、上記気体吹き付けによる流動床化により粉状被覆剤の濾材外表面への付着を促進することができ、これにより、円筒状フィルタユニットの吸引作用を利用した被覆層の形成を一層効率的かつ確実なものにすることができる。
【0031】
・本発明の第5特徴構成は、第3又は第4特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記室間開口を通じ前記フィルタ室に流入した前記塗装作業室からの排気気流を案内して、その案内気流により前記被覆剤堆積層の粉状被覆剤を舞い上がらせる被覆層形成促進用の気流案内手段を設けてある点にある。
【0032】
つまり、この構成によれば、上記排気気流の案内により被覆剤堆積層の粉状被覆剤を舞い上がらせて濾材外表面への粉状被覆剤の付着を促進するから、円筒状フィルタユニットの吸引作用を利用した被覆層の形成を設備構成の簡素化も図りながら一層効率的かつ確実なものにすることができる。
【0033】
本発明の第6特徴構成は、第2特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記被覆層形成手段として、前記円筒状フィルタユニットの回転方向における特定位置で前記濾材の外表面に粉状被覆剤を吹き付ける又は振りかける被覆剤送出手段を設けてある点にある。
【0034】
つまり、この構成によれば、上記特定位置で濾材の外周面に吹き付けた又は振りかけた粉状被覆剤を円筒状フィルタユニットの円筒周面部における吸引作用により濾材外表面に保持していく形態で、円筒状フィルタユニットの回転に伴い被覆層を円筒状フィルタユニットの円周方向で順次に連続して形成していくことができるから、円筒状フィルタユニットの回転を利用した被覆層の形成において粉状被覆剤の吹き付け量の設定や振りかけ量の設定を行うことで均一な被覆層を確実かつ安定的に形成することができる。
【0035】
本発明の第7特徴構成は、第1〜第6特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記被覆層形成手段として又は前記被覆層形成手段に対する補助手段として、前記室間開口を通じ前記フィルタ室に流入する前記塗装作業室からの排気気流に対し粉状被覆剤を噴出して混合する被覆剤噴出混合手段を設けてある点にある。
【0036】
つまり、この構成によれば、上記被覆剤噴出混合手段により塗装作業室からの排気気流に混合させた粉状被覆剤と排気中における浮遊塗料ミストとの接触により浮遊塗料ミストの溶剤液分(水性塗料では水分)を吸収させて、排気中における浮遊塗料ミストの粘着性を低減することができ、これにより、フィルタ室各部などへの浮遊塗料ミストの付着堆積を効果的に抑止することができてメンテナンス負担を軽減することができる。
【0037】
そしてまた、この排気気流中に混合した粉状被覆剤を排気とともに円筒状フィルタユニットにおける円筒周面部の吸引作用によりその円筒周面部の濾材外表面に至らせて、その粉状被覆剤を濾材外表面に堆積させることで、被覆剤噴出混合手段を被覆層形成手段として濾材外表面に被覆層を形成する、又は、被覆剤噴出混合手段を被覆層形成手段の補助手段として被覆層形成手段による被覆層形成を補助する、ないしは、被覆層形成手段により既に形成してある被覆層を増強することもできる。
【0038】
なお、被覆剤噴出混合手段による上記の如き被覆剤混合をもって円筒状フィルタユニットの濾材外表面に新たな被覆層を形成する場合、少なくとも被覆層形成当初は塗装作業室での塗装作業を休止して塗装作業室からの排気に塗料ミストが含まれない状態にするのが望ましい。
【0039】
・本発明の第8特徴構成は、第1〜第7特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記円筒状フィルタユニットの回転に伴い前記被覆層の外表面に摺接掻き取り作用させて被覆層を均厚化するスクレーパ装置を設けてある点にある。
【0040】
つまり、この構成によれば、円筒状フィルタユニットの回転に伴い上記スクレーパ装置を円筒状フィルタユニットの円筒周面部における濾材外表面の被覆層に対し順次に連続して摺接掻き取り作用させて、円筒状フィルタユニットの円筒周面部における被覆層の全体を容易に適切な均厚状態にすることができ、これにより、排気系の圧力損失を低く保った状態の効率良い塗料ミスト捕集運転を一層安定的かつ確実に実現することができる。
【0041】
・本発明の第9特徴構成は、第1〜第8特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記回収手段は、前記円筒状フィルタユニットの回転に伴いその回転方向における特定位置で塗料蓄積状態の前記被覆層を前記濾材から剥離させる構成にしてある点にある。
【0042】
つまり、この構成によれば、円筒状フィルタユニットの回転に伴いその回転方向の特定位置において、円筒状フィルタユニットの円筒周面部における濾材の外表面から塗料蓄積被覆層(塗料ミスト捕集で捕集塗料が蓄積した被覆層)を円周方向で順次に連続して剥離回収していくから、即ち、円筒状フィルタユニットの回転を利用して円筒状フィルタユニットの円筒周面部における塗料蓄積被覆層を剥離回収するから、捕集塗料が蓄積した被覆層を円筒状フィルタユニットの全体について一旦全て剥離回収してしまう場合にしても、例えば円筒状フィルタユニットの回転を停止した状態で円筒状フィルタユニットの全体について塗料蓄積被覆層を剥離回収するのに比べ、回収手段を簡略なものにしながら塗料蓄積被覆層を容易にかつ能率良く剥離回収することができる。
【0043】
また特に、この構成によれば、円筒状フィルタユニットの回転に伴いその回転方向の特定位置において塗料蓄積被覆層を回収手段により順次に連続して剥離回収しながら、それに続いて、その剥離回収済みの部分に新たな被覆層を被覆層形成手段により順次に再形成していくといったことも可能になり、この場合には、回収手段を簡略なものにしながら塗料蓄積被覆層を容易にかつ能率良く剥離回収し得ることに加え、塗料ミスト捕集運転を行いながら被覆層の更新(換言すればフィルタユニットの再生)を行なうことができて、塗装ブース設備の稼動効率を一層効果的に高めることもできる。
【0044】
・本発明の第10特徴構成は、第9特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記回収手段は、前記円筒状フィルタユニットの回転方向における特定位置で開口縁を前記濾材の内表面に近接又は接触させた被覆層剥離用の作用開口を備える内部仕切室と、この内部仕切室から前記作用開口を通じて前記濾材の内表面に被覆層剥離用の気体を吹き付ける又は被覆層剥離用気体のパルス波を付与する剥離用気体操作手段とを備える構成にしてある点にある。
【0045】
つまり、この構成によれば、上記特定位置において開口縁を濾材内表面に近接又は接触させた作用開口を通じ内部仕切室から濾材の内表面に気体を吹き付ける又は気体パルス波を付与することにより濾材外表面の被覆層を剥離させる形態で、円筒状フィルタユニットの回転に伴い塗料蓄積被覆層を円筒状フィルタユニットの円周方向で順次に連続して剥離回収していくことができる。
【0046】
即ち、上記作用開口を濾材内周面に近接又は接触させた状態での円筒状フィルタユニット内部からの濾材内表面に対する気体吹き付けや気体パルス波の付与により濾材外表面の塗料蓄積被覆層を効率良く剥離させることができ、これにより、円筒状フィルタユニットの回転を利用して被覆層の剥離回収を行なうことと相俟って、捕集塗料が蓄積した被覆層を一層容易にかつ能率良く剥離回収することができる。
【0047】
そしてまた、これら気体吹き付けや気体パルス波の付与は円筒状フィルタユニットの内部に設ける内部仕切室で行なうから、それら気体吹き付けや気体パルス波の付与が吸引排気路による円筒状フィルタユニット内部の負圧化に影響することを回避することができ、これにより、円筒状フィルタユニットの円筒周面部のうち上記特定位置(即ち、内部仕切室の作用開口位置)以外の部分の濾材外表面を吸引作用させて塗料ミスト捕集を上記の如き塗料蓄積被覆層の剥離回収と併行する場合にも良好な塗料ミスト捕集を行なうことができる。
【0048】
・本発明の第11特徴構成は、第9又は第10特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記回収手段は、前記円筒状フィルタユニットの回転方向における特定位置で開口縁を前記濾材の外表面に近接させた受入開口を備える外部仕切室と、この外部仕切室から前記受入開口を通じて濾材上の前記被覆層に被覆層剥離用の気体吸引力を作用させる剥離用気体吸引手段とを備える構成にしてある点にある。
【0049】
つまり、この構成によれば、上記特定位置において開口縁を濾材外表面に近接させた受入開口を通じ外部仕切室から濾材外表面上の被覆層に気体吸引力を作用させることにより被覆層を濾材外表面から剥離させる形態で、円筒状フィルタユニットの回転に伴い塗料蓄積被覆層を円筒状フィルタユニットの円周方向で順次に連続して剥離回収していくことができる。
【0050】
即ち、上記受入開口を濾材外表面に近接させた状態での外部仕切室からの気体吸引により濾材外表面の塗料蓄積被覆層を効率良く剥離させることができ、これにより、円筒状フィルタユニットの回転を利用して被覆層の剥離回収を行なうことと相俟って、捕集塗料が蓄積した被覆層を一層容易にかつ能率良く剥離回収することができる。
【0051】
そしてまた、この構成によれば、剥離した塗料蓄積被覆層を受入開口を通じ外部仕切室に受け入れるから、回収した塗料蓄積被覆層の後処理も一層容易にすることができ、特に剥離用気体吸引手段により外部仕切室に作用させる気体吸引力を利用して外部仕切室の回収被覆層を外部仕切室から搬出するようにすれば、回収した塗料蓄積被覆層の後処理をさらに容易にすることができる。
【0052】
なお、内部仕切室の作用開口に対し外部仕切室の受入開口を濾材及び被覆層を挟んで正対させる構成にして第10特徴構成と第11特徴構成とを併行実施すれば、円筒状フィルタユニットの回転に伴う塗料蓄積被覆層の剥離回収を一層効率的かつ確実なものにすることができる。
【0053】
また、内部仕切室の作用開口に対し外部仕切室の受入開口を濾材及び被覆層を挟んで正対させる構成を採用する場合は、内部仕切室の作用開口を通じて濾材の内表面に被覆層剥離用の気体を吹き付ける又は被覆層剥離用気体のパルス波を付与する剥離用気体操作手段と、外部仕切室の受入開口を通じて濾材上の被覆層に被覆層剥離用の気体吸引力を作用させる剥離用気体吸引手段とのうち、いずれか一方を他方に兼用機能させる形態して省略するようにしてもよい。
【0054】
・本発明の第12特徴構成は、第1〜第11特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記円筒状フィルタユニットを、その回転軸芯が前記室間開口の開口面に対して平行姿勢又は傾斜姿勢となるユニット姿勢で前記室間開口を通じて前記塗装作業室に臨む位置に配置し、
前記円筒状フィルタユニットの回転に伴いその回転方向における特定位置で前記濾材の外表面に前記被覆層を連続的に形成する形式の前記被覆層形成手段を、前記円筒状フィルタユニットに対して前記室間開口の形成位置とは反対側に配置するとともに、
前記円筒状フィルタユニットの回転に伴いその回転方向における特定位置で塗料蓄積状態の前記被覆層を前記濾材から連続的に剥離させる形式の前記回収手段を、前記円筒状フィルタユニットに対して前記室間開口の形成位置とは反対側で前記被覆層形成手段の被覆層形成位置に対して円筒状フィルタユニット回転方向の上手側近傍に位置する状態に配置してある点にある。
【0055】
つまり、この構成によれば、塗料ミスト捕集運転を行いながら、円筒状フィルタユニットの回転に伴いその回転方向の特定位置において塗料蓄積被覆層を上記回収手段により順次に連続して剥離回収するとともに、それに続いて、その剥離回収済みの部分に新たな被覆層を上記被覆層形成手段により順次に再形成して被覆層を更新することができ、これにより、塗装ブース設備の稼動効率を一層効果的に高めることができる。
【0056】
そして、被覆層形成手段及び回収手段を上記の如く円筒状フィルタユニットに対して前記室間開口の形成位置とは反対側に配置するから、円筒状フィルタユニットの円筒周面部のうち室間開口を通じて塗装作業室からフィルタ室に流入する排気中の浮遊塗料ミストを捕捉し易い部分、即ち、円筒状フィルタユニットの円筒周面部のうち室間開口の形成位置側の部分(換言すれば、室間開口を通じて塗装作業室に臨む側の部分)を面積的に極力有効に活用する形態で排気中塗料ミストの捕集を行なうことができ、これにより、塗料蓄積被覆層の剥離回収及びそれに続く被覆層の再形成と併行して実施する塗料ミスト捕集における塗料ミスト捕集効率を高くすることができる。
【0057】
なお、上記構成の実施において室間開口を通じ塗装作業室に臨む位置に配置する円筒状フィルタユニットは1ユニットに限られるものでなく、複数の円筒状フィルタユニットを室間開口を通じ塗装作業室に臨ませる位置で並列配置するようにしてもよい。
【0058】
・本発明の第13特徴構成は、第12特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記室間開口の開口縁部に、その室間開口を通じて前記フィルタ室に流入する前記塗装作業室からの排気気流を前記円筒状フィルタユニットの円筒周面部のうち前記室間開口に臨む側の部分に向けて集合させる状態に案内する排気集合用の気流案内手段を設けてある点にある。
【0059】
つまり、この構成によれば、円筒状フィルタユニットの円筒周面部のうち室間開口に臨む側の周面部分(即ち、排気気流とともに流入する塗料ミストを受け止め易い部分)に塗装作業室からの排気気流を集合させるから、そのような集合案内を行なわない場合に比べ円筒状フィルタユニットよる排気中浮遊塗料ミストの捕集を一層効果的かつ効率的なものにすることができる。
【0060】
また、塗装作業室からの排気気流を上記の如く集合案内することにより、フィルタ室各部への塗料ミストの付着堆積も効果的に低減することができる。
【0061】
・本発明の第14特徴構成は、第12又は第13特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記塗装作業室の底部に前記室間開口を形成して、前記円筒状フィルタユニットを前記室間開口の直下に配置し、
前記被覆層形成手段及び前記回収手段を前記円筒状フィルタユニットの下方側に配置してある点にある。
【0062】
つまり、この構成によれば、円筒状フィルタユニットの円筒周面部のうち室間開口に臨む側の周面部分が室間開口の直下から室間開口に臨む部分(即ち、円筒状フィルタユニットの円筒周面部における上部側の部分)になるから、前述の如く室間開口に臨む周面部分において塗料ミストを効率的に捕集するにあたり、排気中の浮遊塗料ミストに作用する重力も寄与させることができ、これにより、塗料ミストの捕集効率を一層高めることができる。
【0063】
・本発明の第15特徴構成は、第1〜第14特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
内部を前記フィルタ室とするフィルタユニットケースを、その内部に配置した前記円筒状フィルタユニットとともに又はその内部に配置した前記円筒状フィルタユニットを使用位置に残置した状態で前記塗装作業室における前記室間開口から離れた位置に離脱移動させるための移動補助手段を設けてある点にある。
【0064】
つまり、この構成によれば、上記移動補助手段によりフィルタユニットケースを塗装作業室における前記室間開口から離れた位置に容易に離脱移動させることができ、そして、この離脱移動により、フィルタユニットケースの内部(即ち、フィルタ室内部)に対する清掃や点検捕集等のメンテナンス、並びに、フィルタユニットケースとともに移動させた又はフィルタユニットケースの移動に対し使用位置に残置させた円筒状フィルタユニットに対する清掃や点検捕集等のメンテナンスを、支障他物の少ない開放された状態下で容易に能率良く行なうことができる。
【0065】
なお、上記移動補助手段はフィルタユニットケースに取り付けたキャスタ、フィルタユニットケースの移動を案内する案内レールや案内溝、あるいは、駆動力によりフィルタユニットケースを移動させる移動用の駆動手段など、フィルタユニットケースの上記離脱移動を補助するものであれば、どのようなものであってもよい。
【0066】
・本発明の第16特徴構成は、第1〜第15特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
複数の前記円筒状フィルタユニットを前記塗装作業室の長手方向に一列状又は複数列状に並べて配置してある点にある。
【0067】
つまり、この構成によれば、塗装作業室がトンネル状のものなどである場合、塗装作業室における長手方向各部からの排気中に含まれる塗料ミストを、列状に並べて配置した複数の円筒状フィルタユニットのうちの最寄の円筒状フィルタを用いて捕集する設備形態にすることができ、これにより、例えば、塗装作業室における長手方向各部からの排気をダクトを通じ一箇所に集めてその排気中塗料ミストをフィルタユニットにより捕集するといった設備形態に比べ設備の全体構成を簡略化することができる。
【0068】
また、塗装作業室からの排気を円筒状フィルタユニットに導く過程での設備各部への塗料ミストの付着堆積も少なくすることができて、メンテナンス負担も効果的に低減することができる。
【0069】
・本発明の第17特徴構成は、第16特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記塗装作業室をその長手方向において塗装条件が互いに異なる複数の区分室に区分し、
前記塗装作業室の長手方向に列状に並べて配置する複数の前記円筒状フィルタユニットの夫々を前記区分室ごとの専用フィルタユニットとして前記区分室ごとに個別に対応させて配置してある点にある。
【0070】
つまり、この構成によれば、使用塗料が異なるなど塗装条件が互いに異なる複数の区分室夫々からの排気中に含まれる塗料ミストをそれら区分室に個別に対応させた専用の円筒状フィルタユニットで捕集するから、回収手段により剥離回収した塗料蓄積被覆層や回収被覆層の蓄積塗料(捕集塗料)に対し各塗装条件に応じた後処理を各別に施すことを容易にすることができる。
【0071】
また、回収被覆層の蓄積塗料を再利用する場合には、塗装条件が異なる塗料の交じり合いも回避することができて、塗料の再利用も容易にすることができる。
【0072】
・本発明の第18特徴構成は、第1〜第17特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記室間開口を通じて前記フィルタ室に流入する前記塗装作業室からの排気中に含まれる浮遊塗料ミスト数の変化を検出するミスト数変化検出手段を設けるとともに、
このミスト数変化検出手段の検出情報に基づき、前記排気中の浮遊塗料ミスト数の変化に応じて前記円筒状フィルタユニットの回転速度を調整する制御手段を設けてある点にある。
【0073】
つまり、この構成によれば、円筒状フィルタユニットの回転にかかわらず排気中塗料ミスト数の変化が原因で円筒状フィルタユニットの円周方向において回収手段による被覆層剥離回収時における塗料ミスト捕集量に偏りが生じること(換言すれば、回収手段により剥離回収する被覆層の塗料蓄積量が円筒状フィルタユニットの円周方向において差のあるものとなること)を、制御手段による上記回転速度の調整をもって効果的に抑止することができる。
【0074】
即ち、このことにより排気系の圧力損失(排気抵抗)の増大による動力ロスや塗料ミスト捕集量が少ないままで被覆層を剥離回収してしまう無駄を一層効果的に回避することができて、塗料ミスト捕集運転の運転効率を一層効果的に高めることができる。
【0075】
なお、上記構成の実施においては、ミスト数変化検出手段の検出情報に基づく円筒状フィルタユニットの回転速度調整を、ミスト数変化検出手段の検出情報に基づき吸引排気路における吸引排気量を調整することと組み合わせて実施するようにしてもよい。
【0076】
また、ミスト数変化検出手段は排気中の浮遊塗料ミスト数や浮遊塗料ミスト濃度を直接的に計測する検出方式のものに限らず、塗装機の運転状態や自動塗装作業の実施プログラムなどに基づき排気中における浮遊塗料ミスト数の変化を間接的に検出する方式を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】塗装ブース設備の横断面図
【図2】塗装ブース設備の縦断面図
【図3】濾材張設部の拡大断面図
【図4】別実施形態を示す塗装ブース設備の横断面図
【図5】別実施形態を示す塗装ブース設備の縦断面図
【図6】その他の別実施形態を示す塗装ブース設備の概略横断面図
【図7】その他の別実施形態を示す塗装ブース設備の概略横断面図
【図8】その他の別実施形態を示す塗装ブース設備の概略横断面図
【発明を実施するための形態】
【0078】
図1は塗装ブース設備を示し、この塗装ブース設備では、トンネル状の塗装作業室1を形成する塗装ブース2の下方にその塗装作業室1からの排出空気である排気EA中に含まれる浮遊塗料ミストm(被塗物Wに塗着せずに排気EAとともに塗装作業室1から排出される塗料ミスト)を除去する塗料ミスト除去装置3を設けてある。塗料ミスト除去装置3は、内部をフィルタ室4とするフィルタユニットケース5(以下、ユニットケースと略称する)を塗装作業室1の下方に配設し、このフィルタ室4に乾式の円筒状フィルタユニット6(以下、フィルタユニットと略称する)を内装したものである。
【0079】
塗装作業室1の天井部には、そのほぼ全面にわたらせて天井フィルタ7を張設してあり、この天井フィルタ7を通じて天井裏部の給気チャンバ8から塗装作業室1に温湿度を調整した換気用空気SAを下向き層流状に吹き出し供給し、塗装作業室1では、この換気用空気SAの吹き出し供給下で塗装作業を行なう。給気チャンバ8には換気用空気SAの温湿度調整を行なう空調機9から給気ダクト10を通じて給気ファンFsにより換気用空気SAが供給される。
【0080】
図2に示すように、被塗物W(本例では自動車ボディ)の搬送方向に延びるトンネル状の塗装作業室1は、その長手方向である被塗物搬送方向において複数の区画室1aに区画してあり、塗料ミスト除去装置3としてのユニットケース5及びそれに内装のフィルタユニット6は各区画室1aに対し個別に対応させて設けてある。
【0081】
ユニットケース5の内部フィルタ室4は塗装作業室1の底部に形成した室間開口11を通じて塗装作業室1の各区画室1aに連通させてあり、具体的にはフィルタ室4の上面部のほぼ全面を開口部11bとして、このフィルタ室4の上面開口部11bと各区画室1aの底部に形成した排気口としての開口部11aとを上下に正対させた状態で、それら開口部11a,11bどうしを伸縮自在な継手12により接続することで各区画室1aに対し各フィルタ室4を個別に連通させてある。
【0082】
室間開口11の横幅寸法L2は塗装作業室1の横幅寸法L1の60%〜80%程度にし、フィルタユニット6はその円筒形状の中心軸芯Pが塗装作業室1の長手方向に向くユニット姿勢で室間開口11の直下に配置し、その直径Dは室間開口11の横幅寸法L2の70%〜80%程度にしてある。すなわち、円筒状フィルタユニット6はその中心軸芯Pが室間開口11の開口面に対し平行姿勢となるユニット姿勢で室間開口11を通じて塗装作業室1の各区画室1aに臨む位置に配置してある。
【0083】
フィルタユニット6は、モータ(図示省略)及びそれに連結した減速機13を駆動手段として、円筒形状の中心軸芯P周りで図中矢印の示す方向に回転させるようにしてあり、フィルタユニット6の回転軸14はユニットケース5の底板台車部5aに立設した支持脚15により軸受16を介して支持してある。
【0084】
また、フィルタユニット6は、その両端部6a(具体的には両端開口の周縁部)をユニットケース5の前後壁5b,5c(塗装ブース長手方向で対向する側壁)に対し摺接させる状態で回転させるようにユニットケース5に内装し、フィルタユニット6の両端部6aないしユニットケース5の前後壁5b,5cには、フィルタユニット6の回転を許しながらフィルタユニット6の両端部6aとユニットケース5の前後壁5b,5cとの間の隙間をシールするシール部材17を設けてある。
【0085】
フィルタユニット6の円筒周面部は通気性の濾材18により形成してあり、具体的には(図3参照)、網状材からなる円筒状基体19をその中心軸部に配置した回転軸14に対しスポーク部材20により連結固定し、この円筒状基体19の外周面部に濾材18を張設してフィルタユニット6を形成してある。
【0086】
塗装作業室1の下方でその長手方向に一列状に並ぶ状態に配置されるユニットケース5の隣り合うものどうしの間の夫々には、排気ファンFeに接続した吸引排気路としての排気ダクト21を配置し、各ユニットケース5の前壁5b及び後壁5cの夫々には、フィルタユニット6の両端開口を通じてフィルタユニット内部の上部域に開口させた前後排気口22a,22bを形成し、これら前後排気口22a,22bは夫々、それらに隣接する最寄りの排気ダクト21に短ダクト21aを通じて連通させてある。
【0087】
つまり、この塗装ブース設備では、円筒周面部に濾材18を張設するとともに両端開口をユニットケース5の前後壁5b,5cにより閉塞した状態にあるフィルタユニット6の内部を排気ファンFeによる排気ダクト21を通じた吸引排気により負圧状態にすることで、フィルタ室4においてフィルタユニット6の円筒周面部に吸引作用を生じさせ、これにより、天井フィルタ7からの換気用空気SAの吹き出し供給に伴い、塗装作業室1の各区画室1aにおける室内空気を室間開口11を通じ作業室排気EAとしてフィルタ室4に吸引排気しながら、塗装作業室1の各区画室1aにおいて塗装作業を行なう。
【0088】
そして、フィルタ室4に流入する各区画室1aからの排気EAを濾材18に通過させてフィルタユニット6の内部に吸入する過程で、各区画室1aからの排気EA中に含まれる浮遊塗料ミストmを濾材18により捕集(厳密には後述の被覆層Sにより捕集)して、排気ダクト21に導く作業室排気EAを浄化する。なお、このように浄化した排気EAは塗装作業室1に吹き出し供給する換気用空気SAの一部として再利用するのが望ましい。
【0089】
23は塗装作業を行なう塗装ロボットであり、回転霧化式の静電塗装機など液体塗料の噴霧により被塗物Wを塗装する塗装機23aを塗装ロボット23のアーム先端部に装備してある。また、24は被塗物Wを搬送する搬送装置であり、この搬送装置24により順次搬送する被塗物Wを塗装作業室1の各区画室1aにおいて所要の塗装条件で塗装する。
【0090】
塗装作業室1の各区画室1aからの排気EAに含まれる塗料ミストmをフィルタユニット6により捕集するのに、この塗装ブース設備では、フィルタユニット6における濾材18の外表面に粉状被覆剤xからなる濾過用の被覆層Sを予め形成しておくようにしてあり、フィルタ室4には、フィルタユニット6の回転に伴いその回転方向における特定位置で濾材18の外表面に被覆層Sを連続的に形成する被覆層形成手段T、及び、フィルタユニット6の回転に伴いその回転方向における特定位置で塗料蓄積状態の被覆層Sを濾材18の外表面から連続的に剥離回収する回収手段29,32を設けてある。
【0091】
具体的には被覆層形成手段として、粉状被覆剤xを浮遊離散が自在な状態に堆積させた被覆剤堆積層Tを被覆剤容器25に収容した状態でフィルタユニット6の濾材18に近接させてフィルタユニット6の最下部下方(即ち、フィルタユニット6に対して室間開口11の形成位置とは反対側)に配置し、フィルタユニット6の円筒周面部における吸引作用により被覆剤堆積層Tにおける粉状被覆剤xを浮遊離散させて被覆剤堆積層Tに臨む濾材外表面部分に付着させることで、フィルタユニット6の回転に伴いその最下部において濾材18の外表面に粉状被覆剤xからなる被覆層Sを連続的に形成する。
【0092】
被覆剤容器25の底部には、被覆剤堆積層Tをそれに対する気体吹き付けにより流動床化する被覆層形成促進用の気体吹き付け手段として、空気送給路26を通じ供給される圧縮空気Aを被覆剤容器25の底板25aに形成した多数の微細孔を通じて被覆剤容器25の内部に下方から吹き込む空気吹き込みチャンバ27を設け、この空気吹き込みによる被覆剤堆積層Tの流動床化により被覆剤堆積層Tを用いた被覆層形成を促進する。
【0093】
被覆剤容器25は、その容器周壁25bの先端部をフィルタユニット6の濾材外表面に対し近接させて容器内部領域をフィルタ室4における容器外部領域と仕切る構造にしてあり、これにより、空気吹き込みチャンバ27からの吹き込み空気Aをフィルタユニット6の円筒周面部のうち被覆剤容器25の内部に臨む濾材部分のみを通じてフィルタユニット6の内部に吸引する形態にして上記被覆層形成の一層の効率化を図ってある。
【0094】
また、被覆剤容器25の容器周壁25bのうちフィルタユニット6の回転方向下手側に位置する部分の先端部近傍には、上記の如き被覆層形成においてフィルタユニット6の回転に伴い形成被覆層Sの外表面に摺接掻き取り作用して形成被覆層Sを均厚化するスクレーパ装置28を設けてある。なお、このスクレーパ装置28により掻き取った粉状被覆剤xは落下により被覆剤容器25に戻すようにするのがよい。
【0095】
回収手段としては、被覆剤容器25のフィルタユニット回転方向における上手側近傍箇所でフィルタユニット6の内部に内部仕切室29を設けるとともに、開口縁を濾材18の内表面に近接又は接触させる被覆層剥離用の作用開口29aを内部仕切室29に形成し、この作用開口29aを通じて空気送給路30からの送給圧縮空気Aを濾材18の内表面に吹き付ける剥離用気体操作手段としての空気ノズル31を内部仕切室29の室内に設けてある。
【0096】
また、同じく被覆剤容器25のフィルタユニット回転方向における上手側近傍箇所でフィルタユニット6の外部に外部仕切室32を設けるとともに、開口縁を内部仕切室29の作用開口29aに対し濾材18及び被覆層Sを挟んで正対させる状態で濾材18の外表面に近接させる受入開口32aを外部仕切室32に形成し、この受入開口32aを通じてフィルタユニット6の回転に伴い被覆層Sに対し掻き取り作用して被覆層Sを剥離させる剥離用スクレーパ装置34を外部仕切室30の室内に設けてある。
【0097】
また同図に示す如く、この受入開口32aを通じて濾材18上の被覆層Sに空気吸引力を作用させる剥離用気体吸引手段としての空気吸引路33を外部仕切室32に接続するようにしてもよい。
【0098】
つまり、フィルタユニット6の最下部において被覆剤堆積層Tからの粉状被覆剤xの吸引により濾材18の外表面に連続的に形成した被覆層Sをフィルタユニット6の連続的ないしは間欠的な回転によりその回転方向に移動させながら、塗装作業室1の各区画室1aからの排気EAを被覆層S及び濾材18を通じてフィルタユニット6の内部に吸引する過程で、その排気EA中に含まれる塗料ミストmを濾材18上の被覆層Sにより捕捉して捕集し、これにより、粘着性を有する塗料ミストmが濾材18に直接に付着堆積することを防止した状態(図3参照)で塗料ミストmを捕集する。
【0099】
そして、排気中塗料ミストmの捕集が進むフィルタユニット6における円筒周面部の上側半部領域(即ち、フィルタユニット6の円筒周面部のうち室間開口11を通じて各区画室1aに臨む部分の領域)を経て被覆層Sにおける捕集塗料の蓄積が進むことに対し、フィルタユニット6の回転に伴い内部仕切室29及び外部仕切室32の配設位置において、内部仕切室29の作用開口29aを通じたフィルタユニット内部側からの空気ノズル31による空気吹き付けと外部仕切室32内でのスクレーパ装置34による掻き取りとにより、また、前記吸引排気路33を設ける場合には外部仕切室32の受入開口32aを通じたフィルタユニット外部側からの空気吸引路33による空気吸引とにより、塗料蓄積が進んだ被覆層Sを濾材18から剥離させて外部仕切室30に回収し、これに続き、被覆剤堆積層Tの配設位置で濾材18上の被覆層除去部分に被覆層Sを再度形成して更新することで、フィルタユニット6を継続的に使用する。
【0100】
回収タンクとしての外部仕切室32に回収した使用済みの被覆剤xは適宜、外部仕切室32から取り出して処理するが、外部仕切室32に接続した空気吸引路33を回収被覆剤xの搬出路に兼用して、空気吸引路33による空気吸引により回収被覆剤xを空気吸引路33を通じ所定箇所へ空気搬送するようにしてもよい。
【0101】
各区画室1aにおける室間開口11(11a)の周縁底壁部1sは、排気集合用の気流案内手段として室間開口11の側ほど低位となる傾斜底壁にしてあり、これにより、室間開口11を通じてフィルタ室4に流入する各区画室1aからの排気気流EAをフィルタユニット6の円筒周面部のうち室間開口11に臨む側の部分(即ち、排気中塗料ミストmが捕集されやすい部分)に向け集合させて塗料ミスト捕集効率を高める。
【0102】
また、この塗装ブース設備では、塗装ロボット23及び塗装機23a等の自動制御により自動塗装作業を行なう制御盤35において、その自動塗装作業のプログラムに基づき各区画室1aからの排気EA中に含まれる塗料ミスト数の変化を監視するとともに、その監視結果に基づき塗料ミスト数の変化に応じて各区画室1aに対するフィルタユニット6の回転速度を排気中塗料ミスト数が増加するほど増速させる方向で自動調整するようにしてあり、これにより、フィルタユニット6の継続使用において回収時における被覆層Sの捕集塗料蓄積量が適度となる状態を維持する。
【0103】
つまり、この制御盤35は、室間開口11を通じてフィルタ室4に流入する塗装作業室1からの排気EA中に含まれる浮遊塗料ミスト数の変化を検出するミスト数変化検出手段、及び、その検出情報に基づき排気EA中の浮遊塗料ミスト数の変化に応じて円筒状フィルタユニット6の回転速度を調整する制御手段を構成する。
【0104】
ユニットケース5の底板台車部5aには、ユニットケース5の移動を容易にする移動補助手段として移動輪36(キャスタ)を設けてあり、フィルタ室4やフィルタユニット6などに対するメンテナンス時には継手12による区画室1a側との接続を解除するとともにストッパ(図示省略)を解除した状態でユニットケース5を側方から押し操作又は引き操作することで、移動輪36の転動によりユニットケース5を内部のフィルタユニット6とともに室間開口11から離れた位置に容易に離脱移動させることができ、また、メンテナンス終了後はユニットケース5を内部のフィルタユニット6とともに室間開口11の直下の使用位置へ容易に復帰移動させることができる。
【0105】
また、フィルタ室4の内部に配置する被覆剤容器25にも移動輪37を設けてあり、被覆剤容器2に対する被覆剤補充や清掃等のメンテナンス時には、この移動輪37の転動により被覆剤容器25をフィルタ室4においてフィルタユニット6の最下部下方からユニットケース5の点検口箇所などへ容易に移動させることができる。
【0106】
なお、被覆剤容器25の容器周壁25bは適度な柔軟性を備える可撓材で形成して、被覆材容器25の移動等で容器周壁25bがフィルタユニット6に干渉する状態になっても容器周壁25bの柔軟性によりその干渉をやり過ごすことができるようにしてもよい。
【0107】
また、被覆剤容器25への被覆剤xの補充は搬送用ブロアの発停や弁の開閉などにより管路等を通じて行なえるようにしてもよい。
【0108】
〔別実施形態〕
次に本発明の別実施形態を列記する。
【0109】
塗装作業室1は前述の如くその長手方向において複数の区画室1aに区画したものに限らず、単純な一室構成のものであってもよい。
【0110】
円筒状フィルタユニット6はその円筒周面部を濾材18により形成するものであれば、その組み立て構造などの具体的構造は前述の実施形態で示した構造に限らず種々の構成変更が可能である。
【0111】
また、円筒状フィルタユニット6の回転を許容しながらダクト構成などの吸引排気路21を円筒状フィルタユニット6の内部に連通させる具体的接続構造も前述の実施形態で示した構造に限らず種々の構成変更が可能である。
【0112】
前述の実施形態では、円筒状フィルタユニット6をその回転軸芯Pが塗装作業室1の長手方向(被塗物搬送方向)に沿うユニット姿勢で配置したが、これに代え、図4、図5に示す如く、円筒状フィルタユニット6をその回転軸芯Pが塗装作業室1の長手方向とは直交する横向きのユニット姿勢で配置してもよい。
【0113】
円筒状フィルタユニット6における濾材18の外表面に粉状被覆剤xからなる通気性濾過用の被覆層Sを形成する被覆層形成手段は、前述の実施形態で示した如く被覆材堆積層Tを円筒状フィルタユニット6の円筒周面部に近接させて配置する方式に限らず、種々の形成方式・構造のものを採用することができ、例えば、図6に示す如き被覆剤吹き付けノズル38を設けるなど、円筒状フィルタユニット6の回転方向における特定位置で濾材18の外表面に粉状被覆剤xを吹き付ける又は振り掛ける被覆剤送出手段を設け、この被覆材送出手段を被覆層形成手段として被覆層Sを形成するようにしてもよい。
【0114】
また、図7に示す如き混合用の被覆剤噴出ノズル39を設けるなど、室間開口11を通じフィルタ室4に流入する塗装作業室1からの排気気流に対し粉状被覆剤xを噴出して混合する被覆剤噴出混合手段を設け、この被覆剤噴出混合手段39を被覆層形成手段として又は被覆層形成手段に対する補助手段として被覆層Sの形成又は増強を行なうようにしてもよい。
【0115】
なお、この被覆剤噴出混合手段39から噴出させる粉状被覆剤xは、排気EA中への混合により排気中塗料ミストmの溶剤液分を吸収して塗料ミストmの粘着性を低下させる性状を備えるものが望ましい。
【0116】
これら被覆剤送出手段や被覆剤噴出混合手段を設ける場合、その具体構造は図6、図7に示す構造に限らず種々の構成変更が可能である。
【0117】
被覆層形成手段として前述のごとき被覆剤堆積層Tを配備する場合、室間開口11を通じフィルタ室4に流入した塗装作業室1からの排気気流EAを案内して、その案内気流EAにより被覆剤堆積層Tの粉状被覆剤xを舞い上がらせる被覆層形成促進用の気流案内手段を設け、これにより、被覆層形成を促進するようにしてもよい。
【0118】
また、被覆剤堆積層Tをそれに対する気体の吹き付けにより流動床化する被覆層形成促進用の気体吹き付け手段を設ける場合、その気体吹き付け手段の具体的構造は、前述の如く被覆剤容器25の底板に多数形成した微細孔を通じて空気を被覆剤容器25の内部に下方から吹き込む構造に限らず、種々の構成変更が可能である。
【0119】
浮遊塗料ミストmの捕集で塗料蓄積した被覆層Sを円筒状フィルタユニット6の濾材18から剥離させて回収する回収手段は、前述の実施形態で示した如く内部仕切室29の作用開口29aを通じて濾材18の内周面に空気を吹き付ける方式や、スクレーパ装置34を濾材外表面の被覆層Sに対し掻き取り作用させる方式、あるいは、外部仕切室32の受入開口32aを被覆層Sに対して吸引作用させる方式などに限らず、種々の剥離方式・構造のものを採用することができ、また、内部仕切室29からの気体吹き付けに代え、内部仕切室29の作用開口29aを通じて濾材18の内周面に気体パルス波を付与する方式を採用するなどしてもよい。
【0120】
円筒状フィルタユニット6をその回転軸芯Pが室間開口11の開口面に対して平行姿勢又は傾斜姿勢となるユニット姿勢で室間開口11を通じて塗装作業室1に臨む位置に配置する構成を採用する場合、室間開口11を塗装作業室1の側壁部に形成して、この側壁部の室間開口11を通じて円筒状フィルタユニット6を塗装作業室1に臨ませるようにしてもよい。
【0121】
前述の実施形態では1つの区画室1aに対し1つの円筒状フィルタユニット6を装備する構成にしたが、これに代え、1つの区画室1a又は1つの塗装作業室1に対して図8に示す如く2以上の複数の円筒状フィルタユニット6を回転半径方向に並列配置して装備する構成や、回転軸芯方向に直列的に並べて装備する構成を採用してもよい。
【0122】
また、複数の円筒状フィルタユニット6の塗装作業室1の長手方向に列状に並べた配置する場合、前述の実施形態の如く複数の円筒状フィルタユニット6を1列状に並べて配置するに代え、同図8に示す如く複数の円筒状フィルタユニット6を2列状や3列以上の複数列に並べて配置するようにしてもよい。
【0123】
前述の実施形態ではフィルタユニットケース5を内部の円筒状フィルタユニット6とともに室間開口11から離れた位置へ離脱移動させる構成にしたが、内部の円筒状フィルタユニット6は使用位置に残置した状態でフィルタユニットケース5のみを室間開口11から離れた位置に離脱移動させるようにしてもよい。
【0124】
その他、本発明による塗装ブース設備の実施にあたり、各部の設備構成は前述の実施形態で示した構成に限らず種々の構成変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明による塗装ブース設備は、自動車ボディの塗装に限らずバンパーなどの自動車部品の塗装や家電製品のケーシングの塗装、あるいは、加工前の鋼板の塗装など種々の物品の塗装を行う塗装設備に適用することができる。
【符号の説明】
【0126】
W 被塗物
1 塗装作業室
EA 排気
m 塗料ミスト
11 室間開口
4 フィルタ室
18 濾材
6 円筒状フィルタユニット
P 中心軸芯,回転軸芯
13 駆動手段
21 吸引排気路
x 粉状被覆剤
S 被覆層
T 被覆層形成手段、被覆剤堆積層
29 回収手段、内部仕切室
32 回収手段、外部仕切室
27 被覆層形成促進用の気体吹き付け手段
38 被覆剤送出手段
39 被覆剤噴出混合手段
28,34 スクレーパ装置
29a 被覆層剥離用の作用開口
31 剥離用気体操作手段
32a 受入開口
33 剥離用気体吸引手段
1s 排気集合用の気流案内手段
36 移動補助手段
35 ミスト数変化検出手段,制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物を液状塗料の噴霧により塗装する塗装作業室と、この塗装作業室からの排気中に含まれる浮遊塗料ミストを捕集して排気を浄化する乾式フィルタユニットとを備える塗装ブース設備であって、
前記塗装作業室に対し室間開口を通じて連通させたフィルタ室を設け、
円筒周面部を濾材により形成した円筒状フィルタユニットを前記乾式フィルタユニットとして前記フィルタ室に内装し、
この円筒状フィルタユニットをその円筒形状の中心軸芯周りで駆動手段により回転させるとともに、この回転を許容する状態で円筒状フィルタユニットの内部に吸引排気路を連通させて、この吸引排気路を通じた吸引排気により円筒状フィルタユニットの内部を負圧状態に保つ構造にし、
前記円筒状フィルタユニットにおける前記濾材の外表面に粉状の被覆剤からなる通気性を有する濾過用の被覆層を形成する被覆層形成手段、及び、浮遊塗料ミストの捕集で塗料蓄積した前記被覆層を前記円筒状フィルタユニットの前記濾材から剥離させて回収する回収手段を設けてある塗装ブース設備。
【請求項2】
前記被覆層形成手段は、前記円筒状フィルタユニットの回転に伴いその回転方向における特定位置で前記濾材の外表面に前記被覆層を連続的に形成する構成にしてある請求項1記載の塗装ブース設備。
【請求項3】
前記被覆層形成手段として、粉状被覆剤を浮遊離散が自在な状態に堆積させた被覆剤堆積層を前記円筒状フィルタユニットの回転方向における特定位置で前記濾材の外表面に近接させた状態に配置してある請求項2記載の塗装ブース設備。
【請求項4】
前記被覆剤堆積層をそれに対する気体の吹き付けにより流動床化する被覆層形成促進用の気体吹き付け手段を設けてある請求項3記載の塗装ブース設備。
【請求項5】
前記室間開口を通じ前記フィルタ室に流入した前記塗装作業室からの排気気流を案内して、その案内気流により前記被覆剤堆積層の粉状被覆剤を舞い上がらせる被覆層形成促進用の気流案内手段を設けてある請求項3又は4記載の塗装ブース設備。
【請求項6】
前記被覆層形成手段として、前記円筒状フィルタユニットの回転方向における特定位置で前記濾材の外表面に粉状被覆剤を吹き付ける又は振り掛ける被覆剤送出手段を設けてある請求項2記載の塗装ブース設備。
【請求項7】
前記被覆層形成手段として又は前記被覆層形成手段に対する補助手段として、前記室間開口を通じ前記フィルタ室に流入する前記塗装作業室からの排気気流に対し粉状被覆剤を噴出して混合する被覆剤噴出混合手段を設けてある請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗装ブース設備。
【請求項8】
前記円筒状フィルタユニットの回転に伴い前記被覆層の外表面に摺接掻き取り作用させて被覆層を均厚化するスクレーパ装置を設けてある請求項1〜7のいずれか1項に記載の塗装ブース設備。
【請求項9】
前記回収手段は、前記円筒状フィルタユニットの回転に伴いその回転方向における特定位置で塗料蓄積状態の前記被覆層を前記濾材から剥離させる構成にしてある請求項1〜8のいずれか1項に記載の塗装ブース設備。
【請求項10】
前記回収手段は、前記円筒状フィルタユニットの回転方向における特定位置で開口縁を前記濾材の内表面に近接又は接触させた被覆層剥離用の作用開口を備える内部仕切室と、この内部仕切室から前記作用開口を通じて前記濾材の内表面に被覆層剥離用の気体を吹き付ける又は被覆層剥離用気体のパルス波を付与する剥離用気体操作手段とを備える構成にしてある請求項9記載の塗装ブース設備。
【請求項11】
前記回収手段は、前記円筒状フィルタユニットの回転方向における特定位置で開口縁を前記濾材の外表面に近接させた受入開口を備える外部仕切室と、この外部仕切室から前記受入開口を通じて濾材上の前記被覆層に被覆層剥離用の気体吸引力を作用させる剥離用気体吸引手段とを備える構成にしてある請求項9又は10記載の塗装ブース設備。
【請求項12】
前記円筒状フィルタユニットを、その回転軸芯が前記室間開口の開口面に対して平行姿勢又は傾斜姿勢となるユニット姿勢で前記室間開口を通じて前記塗装作業室に臨む位置に配置し、
前記円筒状フィルタユニットの回転に伴いその回転方向における特定位置で前記濾材の外表面に前記被覆層を連続的に形成する形式の前記被覆層形成手段を、前記円筒状フィルタユニットに対して前記室間開口の形成位置とは反対側に配置するとともに、
前記円筒状フィルタユニットの回転に伴いその回転方向における特定位置で塗料蓄積状態の前記被覆層を前記濾材から連続的に剥離させる形式の前記回収手段を、前記円筒状フィルタユニットに対して前記室間開口の形成位置とは反対側で前記被覆層形成手段の被覆層形成位置に対して円筒状フィルタユニット回転方向の上手側近傍に位置する状態に配置してある請求項1〜11のいずれか1項に記載の塗装ブース設備。
【請求項13】
前記室間開口の開口縁部に、その室間開口を通じて前記フィルタ室に流入する前記塗装作業室からの排気気流を前記円筒状フィルタユニットの円筒周面部のうち前記室間開口に臨む側の部分に向けて集合させる状態に案内する排気集合用の気流案内手段を設けてある請求項12記載の塗装ブース設備。
【請求項14】
前記塗装作業室の底部に前記室間開口を形成して、前記円筒状フィルタユニットを前記室間開口の直下に配置し、
前記被覆層形成手段及び前記回収手段を前記円筒状フィルタユニットの下方側に配置してある請求項12又は13記載の塗装ブース設備。
【請求項15】
内部を前記フィルタ室とするフィルタユニットケースを、その内部に配置した前記円筒状フィルタユニットとともに又はその内部に配置した前記円筒状フィルタユニットを使用位置に残置した状態で前記塗装作業室における前記室間開口から離れた位置に離脱移動させるための移動補助手段を設けてある請求項1〜14のいずれか1項に記載の塗装ブース設備。
【請求項16】
複数の前記円筒状フィルタユニットを前記塗装作業室の長手方向に一列状又は複数列状に並べて配置してある請求項1〜15のいずれか1項に記載の塗装ブース設備。
【請求項17】
前記塗装作業室をその長手方向において塗装条件が互いに異なる複数の区分室に区分し、
前記塗装作業室の長手方向に列状に並べて配置する複数の前記円筒状フィルタユニットの夫々を前記区分室ごとの専用フィルタユニットとして前記区分室ごとに個別に対応させて配置してある請求項16記載の塗装ブース設備。
【請求項18】
前記室間開口を通じて前記フィルタ室に流入する前記塗装作業室からの排気中に含まれる浮遊塗料ミスト数の変化を検出するミスト数変化検出手段を設けるとともに、
このミスト数変化検出手段の検出情報に基づき、前記排気中の浮遊塗料ミスト数の変化に応じて前記円筒状フィルタユニットの回転速度を調整する制御手段を設けてある請求項1〜17のいずれか1項に記載の塗装ブース設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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